JP2010244729A - 空気電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】高負荷運転時にも非水系電解液内の酸素拡散率を向上させて放電生成物が集中的に析出することを抑制し、高出力および高容量を実現可能な空気電気と空気電池スタックを提供する。
【解決手段】空気極と、負極と、空気極及び負極の間でイオンの伝導を担う非水系電解液が収容される電解質層とを備え、さらに、運転状況に応じて非水系電解液の温度を制御できる温度制御手段を備えた空気電池とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、温度制御手段を備えた空気電池に関する。
空気電池は、酸素を正極活物質とする電池であり、放電時には酸素を含む空気を外部から取り込んで用いる。そのため、正極および負極の活物質を電池内に有する他の一般的な電池に比べて、電池容器内に占める負極活物質の割合を大きくすることが可能である。したがって、原理的に放電できる電気容量が大きく、小型化や軽量化が容易であるという特徴を有している。また、正極活物質として用いる酸素の酸化力は強力であるため、電池起電力が比較的高い。さらに、酸素は資源的な制約がなくクリーンな材料であるという特徴も有するため、空気電池は環境負荷が小さい。このように、空気電池は多くの利点を有しており、携帯機器用電池、電気自動車用電池、ハイブリッド車用電池、燃料電池自動車用電池などへの利用が期待されている。
しかしながら、空気電池にはまだ様々な課題が残されおり、改良に向けて研究が行われている。例えば、非特許文献1には、空気電池の出力に応じて、放電容量、放電生成物の析出状態などに与える影響の調査について記載されている。
また、空気電池は低温では十分な出力を得ることができないため、特許文献1には、空気電池内の電解液温度が所定値を下回っているとき、該電解液を加熱するための手段を備える空気電池が開示されている。
特表平8−505730号公報
J.Read、「Characterization of the Lithium/Oxigen Organic Electrolyte Battery」、Journal of The Electrochemical Society、米国、The Electrochemical Society、2002年9月、第149巻、第9号、A1190−A1195
上記特許文献1に開示されている空気電池では水系電解質を用いているが、非水系電解質を用いた空気電池(特許第3515492号公報参照)では、高負荷運転時に正極(以下、「空気極」ということがある。)の空気供給側に放電生成物が集中的に析出することがある。その結果、電池内部への酸素輸送経路が閉塞され、放電容量が低下するとともに充放電効率も低下する虞があるという問題があった。かかる問題について、上記非特許文献1及び特許文献1に記載された技術では解決することができなかった。
非水系電解液を用いた空気電池の高負荷運転時に空気極の空気供給側に放電生成物が集中的に析出する要因としては、該空気極に供給された酸素が非水系電解液内に均一に拡散されていないためであると考えられる。
そこで本発明は、高負荷運転時に非水系電解液内の酸素拡散率を向上させて放電生成物が集中的に析出することを抑制し、高出力および高容量を実現可能な空気電気を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
本発明は、空気極と、負極と、空気極及び負極の間でイオンの伝導を担う非水系電解液が収容される電解質層とを備え、さらに、運転状況に応じて非水系電解液の温度を制御できる温度制御手段を備えた、空気電池である。
本発明において「運転状況に応じて非水系電解液の温度を制御できる温度制御手段」とは、非水系電解液の温度を検知できる温度検知手段と、非水系電解液の温度を任意の設定温度に調整できる温度調整手段と、空気電池の運転状況に応じて温度検知手段による検知結果に基づいて温度調整手段を作動/停止させられる制御手段と、を有する手段であれば特に限定されない。本発明において「温度検知手段」とは、直接的に非水系電解液の温度を検知する手段であっても良く、電池ケースなどを介して間接的に非水系電解液の温度を検知する手段であっても良い。したがって、温度検知手段は、非水系電解液の温度を把握できる手段であって、空気電池の使用時の環境に耐えうるものであれば良く、設置場所及び設置数は限定されない。本発明において「温度調整手段」とは、直接的に非水系電解液を加熱/冷却して非水系電解液の温度を任意の設定温度に調整する手段でも良く、電池ケースなどを加熱/冷却することで間接的に非水系電解液の温度を任意の設定温度に調整する手段であっても良い。したがって、温度調整手段は非水系電解液の温度を調整できる手段であって、空気電池の使用時の環境に耐えうるものであれば良く、設置場所及び設置数は限定されない。
上記本発明の空気電池において、温度制御手段が、非水系電解液を加熱する加熱手段を備えていることが好ましい。
上記本発明の空気電池において、温度制御手段が、高負荷運転時に非水系電解液の温度を制御できる手段であることが好ましい。ここに「高負荷運転時」とは、例えば、空気電池がハイブリッドカーに搭載された場合に、エンジンとモーターによるHV走行から充電電力でのEV走行に切り替えるときや、空気電池を搭載した車両が坂道走行などをする際など、通常時よりも大きな電力が空気電池に要求される場合を意味する。
上記本発明の空気電池において、非水系電解液を攪拌させる攪拌手段を備えていることが好ましい。
本発明において「攪拌手段」とは、非水系電解液を攪拌することができるものあり、空気電池の使用時の環境に耐え得るものであれば特に限定されない。具体例としては、磁力を有する攪拌子を電解質層内に配置して電解質層外から回転する磁界で攪拌子に動力を伝達するマグネチックスターラーや、棒状、板状、プロペラ状などの攪拌子を電解質層内に配置して電解質層外から回転軸を介して攪拌子に動力を伝達するメカニカルスターラーなどを挙げることができる。
本発明によれば、高負荷運転時に温度制御手段を用いて非水系電解液の温度を所定の設定温度まで上げ、非水系電解液内の酸素拡散率を向上させることで、放電生成物が集中的に析出することを抑制し、高出力および高容量を実現可能な空気電池を提供することができる。
また、本発明の空気電池において、非水系電解液を攪拌させる攪拌手段を備えた形態とすることによって、高負荷運転時に非水系電解液を攪拌させることで非水系電解液の温度分布が均一になり、酸素やイオンの供給が促進され、高出力で高容量維持が可能な空気電池とすることができる。
本発明の空気電池10の断面を概略的に示す図である。 本発明の空気電池に備えられる温度制御手段の制御フローの一例を概略的に示す図である。 本発明の空気電池30の断面を概略的に示す図である。 本発明の空気電池スタック50の断面を概略的に示す図である。
1.空気電池
以下、図面に示した形態例に基づいて本発明の空気電池について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の空気電池の一つの実施形態例である空気電池10の断面を概略的に示す図である。
図1に示すように、空気電池10は、空気極1と、負極3と、空気極1及び負極3の間でイオンの伝導を担う非水系電解液が収容される電解質層2と、空気層1側に配設された酸素層1aと、酸素層1a、空気極1、負極3、及び電解質層2を収容する電池ケース5と、空気電池10の運転状況に応じて非水系電解液の温度を調整できる温度制御手段とを備えている。また、酸素層1aの空気極1とは反対側に形成された空間4には、酸素含有ガスが充満している。以下、各構成について説明する。
(温度制御手段)
温度制御手段は、電解液の温度を検知できる温度検知手段20と、電解液の温度を任意の設定温度に調整できる温度調整手段(不図示)と、空気電池10の運転状況に応じ、温度検知手段20による検知結果に基づいて温度制御手段を作動/停止させられる制御手段(不図示)とを有する手段である。
本発明に用いることができる温度検知手段は、温度検知手段20aのように電解質層2内に温度検知部21aを設置し、直接的に電解液の温度を検知する手段であっても良く、温度検知手段20bのように温度検知部21bを電池ケース5などに接触させて設置し、電池ケース5などの温度を検知することで間接的に電解液の温度を検知する手段であっても良い。温度検知手段20a、20bは空気電池10の使用環境に耐えうるものであれば特に限定されず、具体例としては、熱電対などを挙げることができる。なお、図1では、温度検知手段20a及び温度検知手段20bを備える形態を例示しているが、本発明では、温度検知手段の設置場所は特に限定されず、設置数も限定されない。
温度調整手段は、空気電池10の高負荷運転時に電解液の温度を任意の設定温度になるように加熱することができる加熱手段を少なくとも備えており、必要に応じて電解液の温度を冷却する冷却手段を備えていても良い。本発明に用いることができる加熱手段及び冷却手段は、電解液の温度が任意の設定温度になるように電解液を直接的に加熱/冷却する手段でも良く、電池ケース5などを加熱/冷却することで間接的に電解液の温度を任意の設定温度に調整する手段であっても良い。温度調整手段は、空気電池10の使用時の環境に耐えうるものであれば特に限定されず、以下に例示するような公知の手段を用いることができる。
エンジンを搭載した車両などに空気電池10を用いる場合、上記加熱手段の例としては、エンジンの廃熱を電池ケース5に伝えることができる手段(例えば、ファンなど)を挙げることができる。また、上記冷却手段の例としては、外気などの冷気を電池ケース5に供給できるファンや、ラジエーターなどを挙げることができる。
空気電池10は、高負荷運転時には温度制御手段を用いて電解液の温度を所定の設定温度に上げて、電解液内の酸素拡散率を向上させることができる。電解液内の酸素拡散率が向上することにより、電極内で均一に放電反応を起こすことができ、放電生成物を均一に析出させることが可能になる。したがって、空気極1を有効に利用でき、高出力で高容量維持が可能な空気電池10とすることができる。また、電解液の温度を上げることで電解液の粘度が低下し、イオンの伝導性が向上することでも高出力で高容量維持が可能な空気電池10とすることができる。空気電池10を高負荷で運転する際の温度制御手段による電解液の温度制御方法について、図2を用いて説明する。図2は、空気電池10に備えられる温度制御手段の制御フローの一例を概略的に示す図である。
図2に示すように、空気電池10を使用(放電)している状態(S1)において、空気電池10に要求される出力Eが所定の出力Ee未満の場合(S2NO)、温度制御手段に備えられる加熱手段は作動されることなく空気電池10の運転が続行される(S6)。一方、空気電池10に要求される出力Eが所定の出力Ee以上の場合(S2YES)には、制御手段によって加熱手段が作動され(S3)電解液が加熱される。そして、温度検知手段20によって電解液の温度Tを検知し、温度Tが任意の設定温度Teに達していない場合(S4NO)は制御手段によって加熱手段が作動され続ける。加熱手段で電解液を加熱し続け、電解液の温度Tが任意の設定温度Teに達した場合(S4YES)は、制御手段によって加熱手段を停止され(S5)、空気電池10の運転が続行される(S6)。なお、S3〜S5の間も空気電池10は運転し続けている。ここで、所定の出力Eeとは、適当に決定することができる値であり、設定温度Teとは、空気電池10に用いられる触媒や電解液の種類などに応じて適宜設定される温度である。
上記した温度制御方法は、例えば、空気電池10がハイブリッドカーに搭載された場合に、エンジンとモーターによるHV走行から充電電力でのEV走行に切り替えるときや、空気電池10を搭載した車両が坂道走行などをする際に用いることができる。すなわち、空気電池10を搭載した機器の運転状況によって、空気電池10に高出力が要求される場合に上記したように電解液を任意の設定温度まで加熱することで、高負荷運転に対応することができる。
なお、空気電池10では、加熱手段によって電解液が加熱された後に、再び空気電池10に要求される出力Eが所定の出力Ee未満になった直後など、電解液の温度が必要以上に高くなっている場合には、上記した冷却手段を用いて電解液の温度を所定の温度まで下げることができる。このようにして電解液の温度を下げることで、電解液の揮発を抑制することができる。
(空気極1)
次に、空気極1について説明する。空気極1には導電性材料が含有されている。空気極1に含有される導電性材料は、導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、炭素材料等を挙げることができる。さらに、炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであっても良い。ただし、空気極1全体の厚さ方向では酸素を通すことができる程度の多孔質構造を有する。また、本発明においては、炭素材料が多孔質構造を有するものであることが好ましい。炭素材料を多孔質構造とすることによって、比表面積が大きくなり、多くの反応場を提供することができる。
多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブおよびカーボンファイバー等を挙げることができる。
空気極1における導電性材料の含有量としては、例えば10質量%〜99質量%の範囲内であることが好ましい。導電性材料の含有量が少なすぎると、反応場が減少し、電池容量の低下が生じる可能性があり、導電性材料の含有量が多すぎると、相対的に触媒の含有量が減り、充分な触媒機能を発揮できない可能性があるため、材料の密度・体積に応じて適宜対応することが好ましい。
本発明において、導電性材料は、触媒を担持していることが好ましい。かかる形態とすることによって、電極反応がよりスムーズに行われる。上記触媒の具体例としては、コバルトフタロシアニンおよび二酸化マンガン等を挙げることができる。空気極層における触媒の含有量としては、例えば、1質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。触媒の含有量が少なすぎると充分な触媒機能を発揮できない可能性があり、触媒の含有量が多すぎると相対的に導電性材料の含有量が減り、反応場が減少し、電池容量の低下が生じる可能性があるため、組み合わせる導電材料に応じて適宜決定することが好ましい。
空気極1は、少なくとも導電性材料を含有してれば良いが、さらに、導電性材料を固定化する結着材を含有することが好ましい。結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を挙げることができる。空気極層における結着材の含有量としては、特に限定されるものではないが、例えば40質量%以下、中でも1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
空気極1の厚さは、空気電池10の用途等により異なるものであるが、例えば2μm〜500μmの範囲内、中でも5μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
空気極1は、例えば、カーボンブラック、触媒、及び、結着材からなる塗料を、後述する空気極集電体の表面に、ドクターブレード法にて塗布する等の方法により作製することができる。このほか、カーボンブラック及び触媒を含む混合粉末を熱圧着する等の方法により作製することもできる。
(酸素層1a)
酸素層1aは、空間4に存在する酸素含有ガスを、空気極1へと導く機能を担う。酸素層1aは、空気極1へと導かれる酸素の通り道であり、例えば、空気極1の内部又は外面に当接して、空気極1の集電を行う空気極集電体に備えられる孔が、酸素層1aとして機能する。すなわち、酸素層1aは、空気極集電体1aと表現することもできる。
空気電池10において、空気極集電体1aは空気極1の集電を行う機能を担う。空気電池10において、空気極集電体1aの材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではない。空気極集電体1aの材料としては、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、及び、カーボン等を例示することができる。このような空気極集電体1aの形状としては、例えば、箔状、板状およびメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。中でも、集電効率に優れているという観点から、空気極集電体1aの形状はメッシュ状であることが好ましい。この場合、通常、空気極1の内部にメッシュ状の空気極集電体1aが配置される。さらに、空気電池10は、メッシュ状の空気極集電体1aにより集電された電荷を集電する別の空気極集電体(例えば箔状の集電体)を有していても良い。また、本発明においては、後述する電池ケース5が空気極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
(負極3)
次に、負極3について説明する。負極3には、金属イオンを吸蔵・放出する負極活物質が含有されている。また、負極3の内部又は外面に当接して、負極3の集電を行う負極集電体(不図示)が設けられる。
負極3に含有される負極活物質としては、金属イオンを吸蔵・放出することができるものであれば特に限定されるものではない。上記金属イオンとしては、空気極1と負極3とを移動し、起電力を生じさせるものであれば特に限定されるものではないが、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、亜鉛イオン、セシウムイオン等を挙げることができ、中でもリチウムイオンが好ましい。なお、空気電池10がリチウム空気二次電池である場合、負極活物質はLiイオンを吸蔵・放出することができるものである。例えば、金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、及びグラファイト等の炭素材料等を挙げることができる。これらの中でも金属リチウム及び炭素材料が好ましく、高容量化の観点から金属リチウムがより好ましい。
負極3は少なくとも負極活物質を含有していれば良いが、必要に応じて負極活物質の導電性を向上させる導電性材料や負極活物質を固定化する結着材を含有していても良い。負極活物質および結着材の種類、使用量等については、上述した空気極1に用いられるものと同様であるので、ここでの説明は省略する。空気電池10において、負極3は、空気極1と同様の方法により作製することができる。
また、上述したように、負極3の内部又は外面に当接して、負極集電体が設けられる。負極集電体は、負極3の集電を行う機能を有するものである。負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル等を挙げることができる。このような負極集電体の形状としては、例えば箔状、板状およびメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。本発明においては、後述する電池ケース5が負極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
(電解質層2)
次に、電解質層2について説明する。電解質層2には、空気極1及び負極3の間でイオンの伝導を担う非水系電解質が収容されている。
本発明に用いられる非水系電解質の種類は、伝導する金属イオンの種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム空気電池の非水系電解質は、通常、リチウム塩および有機溶媒を含有する。上記リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClOおよびLiAsF等の無機リチウム塩;およびLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等の有機リチウム塩等を挙げることができる。上記有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン(GBL)、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびこれらの混合物等を挙げることができる。また、上記有機溶媒は、酸素溶解性が高い溶媒であることが好ましい。溶存した酸素を効率良く反応に用いることができるからである。非水系電解質におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.2mol/L〜3mol/Lの範囲内である。なお、本発明においては、非水系電解質として、例えばイオン性液体等の低揮発性液体を用いても良い。
また、空気電池10では、空気極1及び負極3の間に、電解質を保持するセパレーターを有することが好ましい。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜、および樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
(電池ケース5)
空気電池10は、少なくとも空気極1、負極3、電解質層2、及び酸素含有ガスが電池ケース5に収めて用いられる。
空気電池10に用いられる電池ケース5の形状は特に限定されない。電池ケース5の構成材料は、用いる電解質に対して安定である等、空気電池の電池ケースに使用可能な材料を適宜用いることができる。電池ケース5内の空間4には酸素含有ガスが供給される。空間4に供給される酸素含有ガスは、空気であることが好ましく、乾燥空気であることがより好ましく、純酸素(99.99%)であることがさらに好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
<第2実施形態>
図3は、本発明の空気電池の一つの実施形態例である空気電池30の断面を概略的に示す図である。図3において、図1に示したものと同様の構成のものには同符号を付し、適宜、説明を省略する。
図3に示すように、空気電池30は、空気極1と、負極3と、空気極1及び負極3の間でイオンの伝導を担う電解液が収容される電解質層2と、空気層1側に配設された酸素層1aと、酸素層1a、空気極1、負極3、及び電解質層2を収容する電池ケース35と、電池ケース35に連結管7を介して非水系電解液を循環可能に連結された電解液保存容器8と、空気電池10の運転状況に応じて電解液の温度を調整できる温度制御手段と、空気電池10の運転状況に応じて電解液を攪拌する攪拌手段6と、を備えている。空気電池10と同様に、酸素層1aの空気極1とは反対側に形成された空間4には、酸素含有ガスが充満している。以下、各構成について説明する。
(温度制御手段)
空気電池30に備えられる温度制御手段は、空気電池10に備えられる温度制御手段と同様とすることができる。すなわち、空気電池30に備えられる温度制御手段は、電解液の温度を検知する温度検知手段20と、電解液の温度を任意の設定温度に調整できる温度調整手段(不図示)と、空気電池30の運転状況に応じ、温度検知手段20による検知結果に基づいて温度調整手段を作動/停止させる制御手段(不図示)と、を有する手段である。なお、図3では、温度検知部21cが電解液保存容器8内に設置された温度検知手段20c、及び温度検知部21dが電池ケース35に接するように設置された温度検知手段20dを備える形態を例示しているが、空気電池10と同様に、温度検知手段の設置場所は特に限定されず、設置数も限定されない。
(攪拌手段6)
空気電池30には、電解質層2内の電解液を攪拌できる攪拌手段6a、及び電解液保存容器8内の電解液を攪拌できる攪拌手段6bが備えられている。ただし、本発明はかかる形態に限定されず、電解質層2または電解液保存容器8のどちらかにのみ攪拌手段6が備えられる形態であっても良い。
攪拌手段6を用いることによって、空気電池30内の電解液の温度を均一にすることができ、空気電池30の安定した運転を可能にする。攪拌手段6は、高負荷運転時に加熱手段によって電解液の温度を上げている際にのみ運転させることが好ましい。加熱手段によって電解液の温度を上げている際に攪拌手段6を使用することによって、電解液を攪拌して電解液の温度を均一にするという効果が顕著になるとともに、通常の運転時には使用しないことによって、電解液の揮発や電解液が揺れることで生じる悪影響を抑えることができる。
本発明に用いることができる攪拌手段6としては、例えば、電解質層2または電解液保存容器内8の外側に設置された動力伝達手段と、電解質層2または電解液保存容器8の内側に設置された攪拌子と、からなるものを挙げることができる。この場合、攪拌子は、空気電池30を使用中の環境に耐え得るものであれば、特に限定されない。攪拌手段6のより具体的な例を以下に挙げて説明する。
攪拌手段6がマグネチックスターラーであった場合、動力伝達手段はマグネチックスターラー本体であり、攪拌子には棒磁石をテフロン(登録商標)などで封止したものを用いることができる。マグネチックスターラー本体にはドライブ部が備えられ、該ドライブ部では、モーターで磁石を回転させることができる。したがって、マグネチックスターラー本体のドライブ部においてモーターで磁石を回転させることにより、電解質層2または電解液保存容器8の内側に設置された攪拌子が回転し、電解質層2または電解液保存容器8内の電解液を攪拌させることができる。このようにマグネチックスターラーは、密閉された容器内での攪拌を容易に行えるため好ましい。
また、攪拌手段6がメカニカルスターラーであった場合、動力伝達手段は回転軸及びその回転軸を回転させる動力源から構成され、攪拌子は、棒状、板状、プロペラ状などの形状の部材を用いることができる。この場合、電解質層2または電解液保存容器8内に配置された攪拌子には回転軸を介して動力が伝達され、電解質層2または電解液保存容器8内の電解液を攪拌させることができる。
(電池ケース35)
空気電池30は、少なくとも空気極1、負極3、電解質層2、及び酸素含有ガスが電池ケース35に収めて用いられる。また、電池ケース35は、電解質層2に収容された電解液が流通可能な連結管7を介して、電解液保存容器8と連結されている。電池ケース35は、密閉型の電池ケースであっても良く、大気開放型の電池ケースであっても良い。また、空間4に酸素含有ガスを供給する供給管(不図示)および空間4から気体を排出することができる排出管(不図示)を設けることが好ましい。この場合、空間4に供給される酸素含有ガスは、空気であることが好ましく、乾燥空気であることがより好ましく、純酸素(99.99%)であることがさらに好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
(電解液保存容器8、連結管7)
電解液保存容器8は、連結管7を介して電解質層2との間で循環される電解液を収容できる容器であって、空気電池30の使用時の環境に耐え得るものであれば、特に限定されない。連結管7は、電解質層2と電解液保存容器8との間で電解液が循環可能なように連結できる管であり、空気電池30の使用時の環境に耐え得るものであれば、特に限定されない。連結管7及び電解液保存容器8は本発明の空気電池に必須の構成要素ではないが、攪拌手段6に連結管7及び電解液保存容器8を組み合わせることによって、電解液の攪拌効率を上げることができる。すなわち、連結管7及び電解液保存容器8も攪拌手段の一部であるといえる。
空気電池30では、上記した空気電池10が奏する効果と同様の効果に加えて、攪拌手段によって電解液を攪拌することにより、電解液の温度分布が均一になり、物質(酸素及び金属イオン)の供給が促進され、さらに高出力、高容量維持が可能になる。
2.空気電池スタック
以下、図面に示した形態例に基づいて本発明の空気電池スタックについて詳細に説明する。
図4は、本発明の空気電池スタックの一つの実施形態例である空気電池スタック50の断面を概略的に示す図である。図4において、図1に示したものと同様の構成のものには同符号を付し、適宜、説明を省略する。
空気電池スタック50は、空気極1、電解質層2、負極3、及び酸素層1aを備える空気電池セル51、51、51、51と、これらを収容する電池スタックケース52と、温度制御手段とを備えている。
空気電池スタック50に備えられる温度制御手段は、上記した空気電池10、30と同様に、温度検知手段20、温度調整手段(不図示)、及び制御手段(不図示)を有している。図4では、温度検知部21eを電池スタックケース52内に設置し、電池スタックケース52を介して間接的に電解液の温度を検知できる形態の温度検知手段20eを例示しているが、本発明の空気電池スタックに備えられる温度検知手段はかかる形態に限定されず、空気電池10、30に備えられる温度検知手段20と同様に、設置場所及び設置数は問わない。また、本発明の空気電池スタックに備えられる温度調整手段も空気電池10、30に備えられる温度調整手段と同様に、特に限定されない。
ただし、空気電池スタック50では、温度制御手段を複数設けることが好ましい。温度制御手段を複数設けることにより、複数の温度検知手段によって空気電池スタック50内の複数箇所の温度を検知し、該検知結果に基づいて複数の温度調整手段を適宜作動させることにより、空気電池スタック50内の温度分布を均一になるように調整し易くなる。空気電池スタック50内の温度分布を均一にすることによって、空気電池スタック50に備えられる空気電池セル51、51、51、51から均一な出力を得やすくなる。
空気電池スタック50では、空気電池10、30と同様に、高負荷運転時には電解液の温度を任意の設定温度に調整することができるため、電解液内の酸素拡散率を向上させることができる。電解液内の酸素拡散率が向上することにより、電極内で均一に放電反応を起こすことができ、放電生成物を均一に析出させることが可能になる。したがって、空気極1を有効に利用でき、高出力で高容量維持が可能な空気電池スタック50とすることができる。また、電解液の温度を上げることで電解液の粘度が低下し、金属イオンの伝導性が向上することでも高出力で高容量維持が可能な空気電池スタック50とすることができる。なお、空気電池スタック50では、空気電池10と同様に、電解液を加熱して運転した直後など、電解液の温度が必要以上に高くなっている場合には、上記した冷却手段を用いて電解液の温度を所定の温度まで下げることができる。このようにして電解液の温度を下げることで、電解液の揮発を抑制することができる。
本発明に用いることができる電池スタックケース52は特に限定されない。空気極1、酸素層1a、電解質層2、及び負極3の構成は上記した空気電池10と同様であるため、説明を省略する。
また、本発明の空気電池スタックに備えられる空気電池セルの形態は図4に示した形態に限定されず、本発明の空気電池スタックに備えられる空気電池セルの構成や数は適宜変更可能である。さらに、本発明の空気電池スタックに備えられる空気電池セルには、空気電池30と同様の攪拌手段が備えられていても良い。
これまでの本発明の説明では、主にリチウム金属空気電池について説明したが、本発明はかかる形態に限定されず、カリウム金属空気電池、マグネシウム空気電池、アルミニウム空気電池、カルシウム空気電池等及びこれらの空気電池セルをスタックした空気電池スタックとすることもできる。また、本発明の空気電池及び空気電池スタックの用途としては、例えば車両搭載用途、定置型電源用途、家庭用電源用途等を挙げることができる。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う空気電池もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
1 空気極
1a 酸素層
2 電解質層
3 負極
4 空間
5 電池ケース
6 攪拌手段
7 連結管
8 電解液保存容器
10 空気電池
20 温度検知手段
30 空気電池
50 空気電池スタック
51 空気電池セル
52 電池スタックケース

Claims (4)

  1. 空気極と、負極と、前記空気極及び前記負極の間でイオンの伝導を担う非水系電解液が収容される電解質層とを備え、
    さらに、運転状況に応じて前記非水系電解液の温度を制御できる温度制御手段を備えた、空気電池。
  2. 前記温度制御手段が、高負荷運転時に前記非水系電解液の温度を制御できる手段である、請求項1に記載の空気電池。
  3. 前記温度制御手段が、前記非水系電解液を加熱する加熱手段を備えている、請求項1又は2に記載の空気電池。
  4. 前記非水系電解液を攪拌させる攪拌手段を備えた、請求項1から3のいずれかに記載の空気電池。
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