JP2010242935A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】伝動ベルトに滑りが発生した場合に伝動ベルトの耐久性を損なうことのない車両の制御装置を提供する。
【解決手段】無段変速機18において伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsがしきい値ΔAより大きい場合は、選択手段188により、プライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46と伝動ベルト48との滑りによる伝動ベルト48の損傷を抑制する応答性の異なる複数の滑り抑制手段192であるベルト挟圧力増加手段194および入力トルク低減手段196のうちから、応答性が高いベルト挟圧力増加手段194が選択されるので、伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsが大きい状態、すなわち伝動ベルト48の急激な滑りが発生する状態において、入力トルク低減手段196よりも応答性の高いベルト挟圧力増加手段194により滑りによる伝動ベルト48の損傷を抑制することができる。
【選択図】図5
【解決手段】無段変速機18において伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsがしきい値ΔAより大きい場合は、選択手段188により、プライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46と伝動ベルト48との滑りによる伝動ベルト48の損傷を抑制する応答性の異なる複数の滑り抑制手段192であるベルト挟圧力増加手段194および入力トルク低減手段196のうちから、応答性が高いベルト挟圧力増加手段194が選択されるので、伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsが大きい状態、すなわち伝動ベルト48の急激な滑りが発生する状態において、入力トルク低減手段196よりも応答性の高いベルト挟圧力増加手段194により滑りによる伝動ベルト48の損傷を抑制することができる。
【選択図】図5
Description
本発明は、車両の制御装置に関するものであり、特に、ベルト式無段変速機を備えた車両における伝動ベルトの耐久性を向上させる技術に関するものである。
一対のプーリと、該一対のプーリに巻き掛けられた伝動ベルトと有し、該一対のプーリにおける該伝動ベルトのかかり径を変化させることにより変速を行なうベルト式無段変速機がよく知られている。
かかるベルト式無段変速機においては、伝動ベルトが前記一対のプーリ間の動力伝達を行なうため、伝動ベルトの滑りを抑制する制御が行なわれる。例えば、特許文献1には、ベルト滑りを検出したときに、ベルト滑り率に基づいてベルト挟圧力を算出するベルト挟圧力決定装置が開示されている。
しかしながら、例えば低μ路の走行や急制動時などのような車両の走行状況、走行状況においては、最大のベルト挟圧力を与えた場合であっても伝動ベルトに滑りが発生してしまう可能性がある。
一方、ベルト挟圧力が高い状態でベルトに滑りが発生した場合、ベルトの損傷が発生し伝動ベルトの耐久性が弱まるという課題が判明している。そのため、伝動ベルトに滑りを発生させない様に高いベルト挟圧力を加えた場合において伝動ベルトが滑ってしまうと、伝動ベルトが損傷(ダメージ)を受けるという問題があった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、伝動ベルトに滑りが発生した場合においてもベルトの耐久性を損なうことのない車両の制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)一対のプーリと、該一対のプーリに巻き掛けられた伝動ベルトと有し、該一対のプーリにおける該伝動ベルトのかかり径を変化させることにより変速を行なうベルト式無段変速機を備える車両制御装置であって、(b)前記一対のプーリと前記伝動ベルトとの滑りによる前記伝動ベルトの損傷を抑制する、応答性の異なる複数の制御手段と、(c)該滑りの増大傾向が大きい場合は、小さい場合と比較して該複数の制御手段のうちから応答性が高い制御手段を選択する選択手段と、を有することを特徴とする。
請求項1にかかる発明によれば、前記ベルト式無段変速機において伝動ベルトの滑りの増大傾向が大きい場合は、前記選択手段により、前記一対のプーリと前記伝動ベルトとの滑りによる前記ベルトの損傷を抑制する応答性の異なる複数の制御手段のうちから、小さい場合と比較して応答性が高い制御手段が選択されるので、伝動ベルトの滑りの増大傾向が大きい状態、すなわち伝動ベルトの急激な滑りが発生する状態において、応答性の高い制御手段により滑りによる伝動ベルトの損傷を抑制することができる。
好適には、(a)前記複数の制御手段は、前記ベルト式無段変速機への入力トルクを減少させる第1滑り抑制手段と、ベルト挟圧力を増大させる第2滑り抑制手段とを含み、(b)該第2滑り抑制手段は、該第1滑り抑制手段よりも応答性が高いこと、を特徴とする。このようにすれば、前記ベルト式無段変速機において、伝動ベルトの滑りの増大傾向が大きい場合は、前記選択手段により、前記一対のプーリと前記伝動ベルトとの滑りによる前記ベルトの損傷を抑制する応答性の異なる複数の制御手段としての、前記ベルト式無段変速機への入力トルクを減少させる第1滑り抑制手段と、ベルト挟圧力を増大させる第2滑り抑制手段とのうちから、該第1滑り抑制手段よりも応答性が高い第2滑り抑制手段が選択されるので、伝動ベルトの滑りの増大傾向が大きい状態、すなわち伝動ベルトの急激な滑りが発生する状態において、応答性の高い滑り抑制手段であるベルト挟圧力を増大させる第2滑り抑制手段により滑りによる伝動ベルトの損傷を抑制することができる。
また好適には、前記車両の制御装置は、(a)前記複数の制御手段は、前記伝動ベルトの滑りを抑制する滑り抑制手段と、ベルト挟圧力を減少させるベルト挟圧力低減手段とを含み、(b)該ベルト挟圧力低減手段は、該滑り抑制手段よりも応答性が高いこと、を特徴とする。このようにすれば、前記ベルト式無段変速機において、ベルトの滑りの増大傾向が大きい場合は、前記選択手段により、前記滑り抑制手段およびベルト挟圧力低減手段のうちから、前記滑り抑制手段よりも応答性が高いベルト挟圧力低減手段が選択されるので、伝動ベルトの滑りの増大傾向が大きい状態、すなわち伝動ベルトの急激な滑りが発生する状態において、ベルト挟圧力低減手段により滑りによる伝動ベルトの損傷を抑制することができる。
また好適には、(a)前記ベルト式無段変速機は、前記ベルト挟圧力を発生させるための油圧回路とドレンとを選択的に連結する切換バルブを備え、(b)前記ベルト挟圧力低減手段は、前記切換バルブを切り換えることにより前記ベルト挟圧力を減圧させること、を特徴とする。このようにすれば、前記ベルト挟圧力低減手段は、切換バルブを切り換えることにより、前記ベルト挟圧力を発生させるための油圧回路とドレンとを連通し、急速にベルト挟圧力を減圧させることができ、伝動ベルトの損傷を抑制することができる。
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用駆動装置10は横置き型自動変速機であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、エンジン12のクランク軸、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、ベルト式の無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびトルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路100(図2、図3参照)内の図示しないロックアップコントロールバルブ(L/C制御弁)などによって係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切り換えられることにより、係合または解放されるようになっており、完全係合させられることによってポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。ポンプ翼車14pには、無段変速機18を変速制御したりベルト挟圧力を発生させたり、ロックアップクラッチ26を係合解放制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧をエンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸34が入力軸36に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル(遮断状態)になる。
無段変速機18は、入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の入力側可変プーリ(プライマリプーリ)42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の出力側可変プーリ(セカンダリプーリ)46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。前記無段変速機18が本発明のベルト式無段変速機に、可変プーリ42、46が本発明の一対のプーリに、伝動ベルト48が本発明のベルトにそれぞれ対応する。
可変プーリ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体である入力側固定シーブ42aおよび出力側固定シーブ46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体である入力側可動シーブ42bおよび出力側可動シーブ46bと、それらの間のV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとしての入力側油圧シリンダ(プライマリプーリ側油圧シリンダ)42cおよび出力側油圧シリンダ(セカンダリプーリ側油圧シリンダ)46cとを備えて構成されており、入力側油圧シリンダ42cへの作動油の供給排出流量が油圧制御回路100によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。また、出力側油圧シリンダ46cの油圧(ベルト挟圧Pd)が油圧制御回路100によって調圧制御されることにより、伝動ベルト48が可変プーリ42および46との間の滑り(以下単に「滑り」という。)を生じないようにベルト挟圧力が制御される。このような制御の結果として、入力側油圧シリンダ42cの油圧(変速制御圧Pin)が生じるのである。
図2は、図1の車両用駆動装置10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や無段変速機18の変速制御およびベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や無段変速機18およびロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸回転角度(位置)ACR(°)およびエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NEに対応するクランク軸回転速度を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NTを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力回転速度である入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NINを表す信号、車速センサ(出力軸回転速度センサ)58により検出された無段変速機18の出力回転速度である出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUTすなわち出力軸回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、スロットルセンサ60により検出されたエンジン12の吸気配管32(図1参照)に備えられた電子スロットル弁30のスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温TWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された無段変速機18等の作動油温度(油温)TCVTを表す信号、アクセル開度センサ66により検出されたアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、フットブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置)PSHを表す操作位置信号などが供給されている。
また、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SE、例えば電子スロットル弁30の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ76を駆動するスロットル信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、無段変速機18の変速比γを変化させる為の変速制御指令信号ST例えば入力側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制御するソレノイド弁DS1およびソレノイド弁DS2を駆動するための指令信号、伝動ベルト48の挟圧力を調整させる為の挟圧力制御指令信号SB例えばベルト挟圧Pdを調圧するリニアソレノイド弁SLSを駆動するための指令信号、ライン油圧PLを制御させる為のライン油圧制御指令信号SPL例えばライン油圧PLを調圧するリニアソレノイド弁SLTを駆動するための指令信号などが油圧制御回路100へ出力される。
シフトレバー74は、例えば運転席の近傍に配設され、順次位置させられている5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、および「L」(図3参照)のうちの何れかへ手動操作されるようになっている。
「P」ポジション(レンジ)は車両用駆動装置10の動力伝達経路を解放しすなわち車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸44の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは出力軸44の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションは無段変速機18の変速を許容する変速範囲で自動変速モードを成立させて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)であり、「L」ポジションは強いエンジンブレーキが作用させられるエンジンブレーキポジション(位置)である。このように、「P」ポジションおよび「N」ポジションは車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「L」ポジションは車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。
図3は、油圧制御回路100のうち無段変速機18のベルト挟圧力制御、変速比制御、およびシフトレバー74の操作に伴う前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1の係合油圧制御に関する要部を示す油圧回路図である。図3において、油圧制御回路100は、伝動ベルト48が滑りを生じないように出力側油圧シリンダ46cの油圧であるベルト挟圧Pdを調圧する挟圧力コントロールバルブ110、変速比γが連続的に変化させられるように入力側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制御する変速制御弁としての変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116、変速制御圧Pinとベルト挟圧Pdとの比率を予め定められた関係とする推力比コントロールバルブ118、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が係合或いは解放されるようにシフトレバー74の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ120等を備えている。
ライン油圧PLは、エンジン12により回転駆動される機械式のオイルポンプ28から出力(発生)される作動油圧を元圧として、例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(ライン油圧調圧弁)122によりリニアソレノイド弁SLTの出力油圧である制御油圧PSLTに基づいてエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
より具体的には、プライマリレギュレータバルブ122は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート122iを開閉してオイルポンプ28から発生される作動油圧を出力ポート122tを経て吸入油路124へ排出するスプール弁子122aと、そのスプール弁子122aを閉弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング122bと、そのスプリング122bを収容し且つスプール弁子122aに閉弁方向の推力を付与するために制御油圧PSLTを受け入れる油室122cと、スプール弁子122aに開弁方向の推力を付与するためにオイルポンプ28から発生される作動油圧を受け入れる油室122dとを備えている。
このように構成されたプライマリレギュレータバルブ122において、スプリング122bの付勢力をFS、油室122cにおける制御油圧PSLTの受圧面積をa、油室122dにおけるライン油圧PLの受圧面積差をbとすると、次式(1)で平衡状態となる。従って、ライン油圧PLは、次式(2)で表され、制御油圧PSLTに比例する。
PL×b=PSLT×a+FS ・・・(1)
PL=PSLT×(a/b)+FS/b ・・・(2)
PL×b=PSLT×a+FS ・・・(1)
PL=PSLT×(a/b)+FS/b ・・・(2)
このように、プライマリレギュレータバルブ122とリニアソレノイド弁SLTとは、油圧指令値としてのライン油圧制御指令信号SPLに基づいてオイルポンプ28から吐出される作動油をライン油圧PLに調圧する調圧装置として機能する。
モジュレータ油圧PMは、制御油圧PSLTおよびリニアソレノイド弁SLSの出力油圧である制御油圧PSLSの元圧となるものであると共に、電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS1の出力油圧である制御油圧PDS1およびソレノイド弁DS2の出力油圧である制御油圧PDS2の元圧となるものであって、ライン油圧PLを元圧としてモジュレータバルブ126により一定圧に調圧されるようになっている。
出力油圧PLM2は、ライン油圧PLを元圧としてライン圧モジュレータNO.2バルブ128により制御油圧PSLTに基づいて調圧されるようになっている。
前記マニュアルバルブ120において、入力ポート120aには出力油圧PLM2が供給される。そして、シフトレバー74が「D」ポジション或いは「L」ポジションに操作されると、出力油圧PLM2が前進走行用出力圧として前進用出力ポート120fを経て前進用クラッチC1に供給され且つ後進用ブレーキB1内の作動油が後進用出力ポート120rから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1が係合させられると共に後進用ブレーキB1が解放させられる。
また、シフトレバー74が「R」ポジションに操作されると、出力油圧PLM2が後進走行用出力圧として後進用出力ポート120rを経て後進用ブレーキB1に供給され且つ前進用クラッチC1内の作動油が前進用出力ポート120fから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、後進用ブレーキB1が係合させられると共に前進用クラッチC1が解放させられる。
また、シフトレバー74が「P」ポジションおよび「N」ポジションに操作されると、入力ポート120aから前進用出力ポート120fへの油路および入力ポート120aから後進用出力ポート120rへの油路がいずれも遮断され且つ前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1内の作動油が何れもマニュアルバルブ120からドレーンされるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放させられる。
前記変速比コントロールバルブUP114は、軸方向へ移動可能に設けられることによりライン油圧PLを入力ポート114iから入出力ポート114jを経て入力側可変プーリ42へ供給可能且つ入出力ポート114kを閉弁するアップシフト位置と入力側可変プーリ42が入出力ポート114jを介して入出力ポート114kと連通させられる原位置とに位置させられるスプール弁子114aと、そのスプール弁子114aを原位置側に向かって付勢する付勢手段としてのスプリング114bと、そのスプリング114bを収容し且つスプール弁子114aに原位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS2を受け入れる油室114cと、スプール弁子114aにアップシフト位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS1を受け入れる油室114dとを備えている。
また、変速比コントロールバルブDN116は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート116jが排出ポートEXと連通させられるダウンシフト位置と入出力ポート116jが入出力ポート116kと連通させられる原位置とに位置させられるスプール弁子116aと、そのスプール弁子116aを原位置側に向かって付勢する付勢手段としてのスプリング116bと、そのスプリング116bを収容し且つスプール弁子116aに原位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS1を受け入れる油室116cと、スプール弁子116aにダウンシフト位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS2を受け入れる油室116dとを備えている。
このように構成された変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116において、中心線より左側半分に示すようにスプール弁子114aがスプリング114bの付勢力に従って原位置に保持されている閉じ状態では、入出力ポート114jと入出力ポート114kとが連通させられ、入力側可変プーリ42(入力側油圧シリンダ42c)の作動油が入出力ポート116jへ流通することが許容される。また、中心線より右側半分に示すようにスプール弁子116aがスプリング116bの付勢力に従って原位置に保持されている閉じ状態では、入出力ポート116jと入出力ポート116kとが連通させられ、推力比コントロールバルブ118からの推力比制御油圧Pτが入出力ポート114kへ流通することが許容される。
また、制御油圧PDS1が油室114dへ供給されると、中心線より右側半分に示すようにスプール弁子114aがその制御油圧PDS1に応じた推力によりスプリング114bの付勢力に抗してアップシフト位置側へ移動させられ、ライン油圧PLが制御油圧PDS1に対応する流量で入力ポート114iから入出力ポート114jを経て入力側油圧シリンダ42cへ供給されると共に、入出力ポート114kが遮断されて変速比コントロールバルブDN116側への作動油の流通が阻止される。これにより、入力側油圧シリンダ42c内の流量が増大させられ、入力側油圧シリンダ42cにより入力側可動シーブ42bのシーブ位置Xが入力側固定シーブ42a側へ移動させられ、入力側可変プーリ42のV溝幅が狭くされて変速比γが小さくされるすなわち無段変速機18がアップシフトされる。尚、このとき出力側可変プーリ46のV溝幅が広くされるが、後述するように挟圧力コントロールバルブ110により伝動ベルト48が滑りを生じないように出力側油圧シリンダ46cのベルト挟圧Pdが調圧させられる。
また、制御油圧PDS2が油室116dへ供給されると、中心線より左側半分に示すようにスプール弁子116aがその制御油圧PDS2に応じた推力によりスプリング116bの付勢力に抗してダウンシフト位置側へ移動させられ、入力側油圧シリンダ42cの作動油が制御油圧PDS2に対応する流量で入出力ポート114jから入出力ポート114kさらに入出力ポート116jを経て排出ポートEXから排出される。これにより、入力側油圧シリンダ42c内の流量が減少させられ、入力側油圧シリンダ42cにより入力側可動シーブ42bのシーブ位置Xが入力側固定シーブ42aとは反対側へ移動させられ、入力側可変プーリ42のV溝幅が広くされて変速比γが大きくされるすなわち無段変速機18がダウンシフトされる。尚、このとき出力側可変プーリ46のV溝幅が狭くされ、後述するように挟圧力コントロールバルブ110により伝動ベルト48が滑りを生じないように出力側油圧シリンダ46cのベルト挟圧Pdが調圧させられる。
このように、ライン油圧PLは変速制御圧Pinの元圧となるものであって、制御油圧PDS1が出力されると変速比コントロールバルブUP114に入力されたライン油圧PLが入力側油圧シリンダ42cへ供給されて変速制御圧Pinが高められて連続的にアップシフトされ、制御油圧PDS2が出力されると入力側油圧シリンダ42cの作動油が排出ポートEXから排出されて変速制御圧Pinが低められて連続的にダウンシフトされる。
前記シーブ位置Xは、変速比γが1であるときの入力側可動シーブ42bの位置を基準位置すなわちシーブ位置X=0として、軸と平行方向におけるその基準位置からの入力側可動シーブ42bの絶対位置を表すものである。例えば、入力側固定シーブ42a側を正(+)とし、入力側固定シーブ42aとは反対側を負(−)とする(図1参照)。
また、制御油圧PDS1は変速比コントロールバルブDN116の油室116cに供給され、制御油圧PDS2に拘らずその変速比コントロールバルブDN116を閉じ状態としてダウンシフトを制限する一方、制御油圧PDS2は変速比コントロールバルブUP114の油室114cに供給され、制御油圧PDS1に拘らずその変速比コントロールバルブUP114を閉じ状態としてアップシフトを禁止するようになっている。つまり、制御油圧PDS1および制御油圧PDS2が共に供給されないときはもちろんであるが、制御油圧PDS1および制御油圧PDS2が共に供給されるときにも、変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116は何れも原位置に保持されている閉じ状態とされる。これにより、電気系統の故障などでソレノイド弁DS1、DS2の一方が機能しなくなり、制御油圧PDS1または制御油圧PDS2が最大圧で出力され続けるオンフェール時となった場合でも、急なアップシフトやダウンシフトが生じたり、その急変速に起因してベルト滑りが発生したりすることが防止される。
前記挟圧力コントロールバルブ110は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート110iを開閉してライン油圧PLを入力ポート110iから出力ポート110tを経て出力側可変プーリ46および推力比コントロールバルブ118へベルト挟圧Pdを供給可能にするスプール弁子110aと、そのスプール弁子110aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、そのスプリング110bを収容し且つスプール弁子110aに開弁方向の推力を付与するために制御油圧PSLSを受け入れる油室110cと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するために出力ポート110tから出力されたベルト挟圧Pdを受け入れるフィードバック油室110dと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するためにモジュレータ油圧PMを受け入れる油室110eとを備えている。
このように構成された挟圧力コントロールバルブ110において、伝動ベルト48が滑りを生じないように制御油圧PSLSをパイロット圧としてライン油圧PLが連続的に調圧制御されることにより、出力ポート110tからベルト挟圧Pdが出力される。このように、ライン油圧PLはベルト挟圧Pdの元圧となるものである。尚、出力ポート110tと出力側油圧シリンダ46cとの間の油路には油圧センサ130が設けられており、この油圧センサ130によりベルト挟圧Pdが検出される。
前記推力比コントロールバルブ118は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート118iを開閉してライン油圧PLを入力ポート118iから出力ポート118tを経て変速比コントロールバルブDN116へ推力比制御油圧Pτを供給可能にするスプール弁子118aと、そのスプール弁子118aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング118bと、そのスプリング118bを収容し且つスプール弁子118aに開弁方向の推力を付与するためにベルト挟圧Pdを受け入れる油室118cと、スプール弁子118aに閉弁方向の推力を付与するために出力ポート118tから出力された推力比制御油圧Pτを受け入れるフィードバック油室118dとを備えている。
このように構成された推力比コントロールバルブ118において、油室118cにおけるベルト挟圧Pdの受圧面積をa、フィードバック油室118dにおける推力比制御油圧Pτの受圧面積をb、スプリング118bの付勢力をFSとすると、次式(3)で平衡状態となる。従って、推力比制御油圧Pτは、次式(4)で表され、ベルト挟圧Pdに比例する。
Pτ×b=Pd×a+FS ・・・(3)
Pτ=Pd×(a/b)+FS/b ・・・(4)
Pτ×b=Pd×a+FS ・・・(3)
Pτ=Pd×(a/b)+FS/b ・・・(4)
そして、制御油圧PDS1および制御油圧PDS2が共に供給されないか、或いは所定圧以上の制御油圧PDS1および所定圧以上の制御油圧PDS2がともに供給されて、変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116が何れも原位置に保持されている閉じ状態とされたときには、推力比制御油圧Pτが入力側油圧シリンダ42cに供給されることから、変速制御圧Pinが推力比制御油圧Pτと一致させられる。つまり、推力比コントロールバルブ118により変速制御圧Pinとベルト挟圧Pdとの比率を予め定められた関係に保つ推力比制御油圧Pτすなわち変速制御圧Pinが出力される。
例えば、入力軸回転速度センサ56や車速センサ58の精度上所定車速V’以下の低車速状態では入力軸回転速度NINや車速Vの検出精度が劣ることから、このような低車速走行時や発進時には、例えば制御油圧PDS1および制御油圧PDS2を共に供給せず変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116を何れも閉じ状態とする所謂閉じ込み制御を実行する。これにより、低車速走行時や発進時には変速制御圧Pinとベルト挟圧Pdとの比率を予め定められた関係とするようにベルト挟圧Pdに比例する変速制御圧Pinが入力側油圧シリンダ42cへ供給されて、車両停車時から極低車速時における伝動ベルト48のベルト滑りが防止されると共に、このとき例えば最大変速比γmaxに対応する推力比τ(=出力側油圧シリンダ推力WOUT/入力側油圧シリンダ推力WIN;WOUTはベルト挟圧Pd×出力側油圧シリンダ46cの受圧面積SOUT、WINは変速制御圧Pin×入力側油圧シリンダ42cの受圧面積SIN)より大きな推力比τが可能なように上記式(4)の右辺第1項の(a/b)やFS/bが設定されていると、最大変速比γmax又はその近傍の変速比γmax’にて良好な発進が行われる。また、上記所定車速V’は、所定回転部材の回転速度例えば入力軸回転速度NINが検出不可能な回転速度となる車速Vとして予め定められた下限の車速であって、例えば2km/h程度に設定されている。
また、変速比コントロールバルブUP114の出力ポート114jとプライマリプーリ42の入力側油圧シリンダ42cとを接続する油路には、排出バルブ132を介して作動油をドレンに排出することができるようにされている。この排出バルブ132は例えば電磁駆動される切換弁であって、非駆動時においては入力側油圧シリンダ42cとドレンとは遮断されている一方、排出バルブ132が駆動させられると入力側油圧シリンダ42cとドレンとが連通させられ、入力側油圧シリンダ42c中の作動油がドレンに大気圧により急速に排出させられる。この排出バルブ132が本発明の切換バルブに対応する。
図4は、図1の伝動ベルト48を一部の部品を除いて示す斜視図である。伝動ベルト48は、図1および図2に示すように無端環状のテープ状の一対のフープ48bと、その一対のフープ48bに沿って厚さ方向に互いに密着するように多数連ねられたエレメントとしての厚肉板片状のブロック48aとを有し、そのブロック48aの板厚方向に対して垂直方向すなわち側面側に開いている一対のフープ嵌合溝48cに一対のフープ48bがそれぞれ嵌め入れられた、全体として無端環状の構成になっている。フープ48bはたとえば均一な幅を有する鋼製の無端環状の薄板が複数枚積層されることによって可撓性を有するように構成されている。
図5は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
図5において、目標シーブ位置設定手段150は、無段変速機18を変速制御するための目標値として目標シーブ位置Xtを設定する。具体的には、目標シーブ位置設定手段150は、入力軸回転速度NINの目標入力軸回転速度NIN *を設定する目標入力回転設定手段152と、目標入力軸回転速度NIN *を目標変速比γ*に変換する目標変速比算出手段154とを備え、目標変速比γ*をシーブ位置Xに変換して目標シーブ位置Xtを設定する。
例えば、前記目標入力回転設定手段152は、図6に示すようなアクセル開度Accをパラメータとして車速Vと無段変速機18の目標入力回転速度である目標入力軸回転速度NIN *との予め定められて記憶された関係(変速マップ)から実際の車速Vおよびアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて入力軸回転速度NINの目標入力軸回転速度NIN *を設定する。
また、前記目標変速比算出手段154は、電子制御装置50に供給された出力軸回転速度NOUTを表す信号に基づいて出力軸回転速度NOUTを読み込むと共に、前記目標入力回転設定手段152により設定された目標入力軸回転速度NIN *とその出力軸回転速度NOUTとに基づいて目標変速比γ*(=NIN */NOUT)を算出する。
また、前記目標シーブ位置設定手段150は、変速比γとその変速比γに対して一義的に定まるシーブ位置Xとの予め定められて記憶された図示しない関係(シーブ位置マップ)から前記目標変速比算出手段154により算出された目標変速比γ*に基づいて目標シーブ位置Xtを設定する。
ここで、本実施例の変速制御においては、無段変速機18を変速制御するための目標値として上記目標シーブ位置Xtを設定し、実際のシーブ位置(以下、実シーブ位置という)Xが目標シーブ位置Xtとなるように変速を行う。なお、シーブ位置X(目標シーブ位置Xt)の変化量は移動量と同義である。
出力流量算出手段164は、無段変速機18の可動シーブ42bを目標シーブ位置設定手段150によって設定された目標シーブ位置Xtとするのに必要な変速制御量としての変速制御弁(変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116)の出力流量Qを算出する。尚、この出力流量Qは、基本的にはアップシフトの際には正の値となり、ダウンシフト時には負の値となる。
変速制御手段172は、前記出力流量算出手段164により算出された出力流量Qが得られる為の変速指令値としての変速制御指令信号STを算出し、その変速制御指令信号STを油圧制御回路100へ出力して無段変速機18の変速を実行する。例えば、変速制御手段172は、流量Qと、変速制御指令信号STとしてのDuty値(駆動指令値)との予め実験的に求められて記憶された図示しない逆変換流量マップなどの関係から、上記出力流量Qに基づいてDuty値を設定し、そのDuty値を油圧制御回路100へ出力して変速比γを連続的に変化させる。
ベルト挟圧力設定手段174は、例えば図7に示すような伝達トルクに対応するアクセル開度Accをパラメータとして変速比γとベルト挟圧力Pd*とのベルト滑りが生じないように予め実験的に求められて記憶された関係(ベルト挟圧力マップ)から実際の変速比γおよびアクセル開度Accで示される車両状態に基づいてベルト挟圧力Pd*を設定する。つまり、ベルト挟圧力設定手段174は、ベルト挟圧力Pd*が得られる為の出力側油圧シリンダ46cのベルト挟圧Pdを設定する。
ベルト挟圧力制御手段176は、前記ベルト挟圧力設定手段174により設定されたベルト挟圧力Pd*が得られる為の出力側油圧シリンダ46cのベルト挟圧Pdに調圧する挟圧力制御指令信号SBを油圧制御回路100へ出力してベルト挟圧力Pd*すなわち可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を増減させる。
油圧制御回路100は、上記変速制御指令信号STに従って無段変速機18の変速が実行されるようにソレノイド弁DS1およびソレノイド弁DS2を作動させて入力側油圧シリンダ42cへの作動油の供給・排出量を制御すると共に、上記挟圧力制御指令信号SBに従ってベルト挟圧力Pd*が増減されるようにリニアソレノイド弁SLSを作動させてベルト挟圧Pdを調圧する。
エンジン出力制御手段178は、エンジン12の出力制御の為にエンジン出力制御指令信号SE、例えばスロットル信号や噴射信号や点火時期信号などをそれぞれスロットルアクチュエータ76や燃料噴射装置78や点火装置80へ出力する。例えば、エンジン出力制御手段178は、アクセル開度Accに応じたスロットル開度θTHとなるように電子スロットル弁30を開閉するスロットル信号をスロットルアクチュエータ76へ出力してエンジントルクTEを制御する。
このように、伝動ベルト48には前述のベルト挟圧力設定手段174によって設定された挟圧力が加えられることにより、伝動ベルト48のプライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46に対する滑りが発生しない様に制御される。しかしながら、車両の走行状態によっては前記ベルト挟圧力設定手段174によって設定された挟圧力が加えられる場合であっても伝動ベルト48に滑りが発生する場合がある。
伝動ベルト48の滑りに滑りが発生した場合に対する制御手段としては、伝動ベルト48の滑りを抑制するために、(1)無段変速機18への入力トルクを低減すること、(2)伝動ベルト48に加えられる挟圧力を増加すること、などの複数の滑り抑制手段が採用され得る。また、ベルト挟圧Pdを低下させてベルト挟圧力Pd*のかかっていない状態として、ベルトを積極的に滑らせることにより、滑りによるベルト48への損傷を防止するベルト挟圧力低減手段も採用され得る。これらの手段はそれぞれ応答性が異なる。ここで、応答性が高いとは、例えば滑り抑制手段の実行開始から所定の効果を得られるまでの時間が短いことをいう。このとき、前記複数の応答性の異なる滑り抑制手段のうち、応答性が高くても、ベルトの耐久性に影響を与える滑り抑制手段は、伝動ベルト48の滑りが急激に増大する場合に採用されることが望ましい。一方、伝動ベルト48の滑りが緩やかに増大する場合には、応答性が低くてもベルトの耐久性に影響を及ぼすことの少ない手段が採用されることが望ましい。そこで、本実施例の車両の制御装置においては、これらの複数の滑り抑制手段から、伝動ベルト48の滑りの増大傾向に応じた滑り抑制手段の選択を行なう。以下、本実施例の車両の制御装置における伝動ベルト48に滑りが発生した場合の作動について説明する。
実変速比検出手段180は、無段変速機18の実際の変速比γを検出する。具体的には、プライマリプーリ42の入力側可動シーブ42bおよびセカンダリプーリ46の出力側可動シーブ46bの位置を検出し、そのシーブ位置からプライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46のそれぞれにおける伝動ベルト48のかかり径を算出する。そして算出されたプライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46における伝動ベルト48のかかり径に基づいて、無段変速機18の実際の変速比γを検出する。なお、プライマリプーリ42の入力側可動シーブ42bおよびセカンダリプーリ46の出力側可動シーブ46bの位置は、例えば、予め設定された基準位置からの移動量などを検出することによって得られる。
みかけの変速比検出手段182は、無段変速機18のみかけの変速比γ’を検出する。このみかけの変速比γ’は、無段変速機18の入力軸36の実際の回転速度NINと出力軸44の実際の回転速度NOUTとの比(NIN/NOUT)によって定義される。すなわち、みかけの変速比検出手段182によって検出されるみかけの変速比γ’は、伝動ベルト48に滑りが生じている場合には、この滑りを反映した値として検出される。なお、入力軸回転速度NINおよび出力軸回転速度NOUTの値は、例えばそれぞれ入力軸回転速度センサ56および出力軸回転速度センサ58によって検出される。
スリップ率算出手段184は、実変速比検出手段180によって検出れる実際の変速比γおよびみかけの変速比検出手段182によって検出されるみかけの変速比γ’に基づいて、伝動ベルト48のスリップ率sを算出する。具体的には、スリップ率算出手段184は、伝動ベルト48のスリップ率sを、実際の変速比γとみかけの変速比γ’との比率として、例えばs=1−γ’/γのように算出する。
スリップ率変化率算出手段186は、前記スリップ率算出手段184によって算出される伝動ベルト48のスリップ率sの変化率Δsを算出する。具体的には例えば、スリップ率変化率算出手段186は、スリップ率の変化率Δsを、前記スリップ率算出手段184によって伝動ベルト48の滑りが検出された後における予め設定された微小単位時間あたりの変化量として算出する。伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsは本発明のベルトの滑りの増大傾向に対応するものであって、スリップ率の変化率Δsが大きいほど、伝動ベルト48の滑りの増大傾向が大きい、すなわち、伝動ベルト48の滑りが急激に発生していることを示している。
選択手段188は、スリップ率変化率算出手段186によって算出されるスリップ率の変化率Δsに基づいて、後述する複数の制御手段189のうちから、いずれの手段により伝動ベルト48の滑りに対する制御を実行するかを選択する。具体的には選択手段188は、複数の制御手段189に含まれる、伝動ベルト48の滑りを低減するための複数の滑り抑制手段192から、検出された伝動ベルト48の滑りに対する制御として、滑りを抑制するのに十分な応答性を有する手段を選択する。なお、本実施例における滑りの抑制とは、滑りの低減をも含む概念である。選択手段188が本発明の選択手段に対応する。
より具体的には、選択手段188は、スリップ率の変化率Δsの値が高い場合ほど、低い場合と比較して前記複数の滑り抑制手段192のうち応答性のより高い手段を選択する。これは、スリップ率の変化率Δsの値が高い場合は、スリップ率sが急激に上昇する、言いかえればすなわち伝動ベルト48の急激な滑りが発生する場合であるので、応答性の高い手段により伝動ベルト48の滑りを抑制させるためである。
一方、スリップ率の変化率Δsの値が低い場合には、選択手段188は、複数の滑り抑制手段192のうち、検出された伝動ベルト48の滑りに対する制御として、滑りを抑制するのに十分な応答性を有する手段を選択し得る。このとき、好適には選択手段188は、選択し得る滑り抑制手段192のうち、伝動ベルト48の耐久性を悪化させる程度の最も少ない手段を選択する。このようにすれば、伝動ベルト48の滑りの抑制と、伝動ベルト48の耐久性の向上とを両立させることができる。
本実施例においては、後述する様に複数の制御手段189として、滑り抑制手段192およびベルト挟圧力低減手段190を含んでいる。このうち滑り抑制手段192には、ベルト挟圧力増加手段194および入力トルク低減手段196が設けられており、ベルト挟圧力増加手段194は入力トルク低減手段196よりも応答性が高い一方、入力トルク低減手段196はベルト挟圧力増加手段194よりも伝動ベルト48の耐久性を悪化させる程度が少ないものとされている。このとき、選択手段188は例えば以下の様に滑り抑制手段192の選択を行なう。選択手段188はスリップ率の変化率Δsについてのしきい値ΔAを予め記憶しておく。そして、スリップ率変化率算出手段186により算出されたスリップ率の変化率Δsの値が前記しきい値ΔA以下である(Δs≦ΔA)場合には、後述する滑り抑制手段192のうち入力トルク低減手段196が選択される。また、スリップ率の変化率Δsの値が前記しきい値ΔAより大きい(ΔA<Δs)場合には、後述する滑り抑制手段192のうちベルト挟圧力増加手段194が選択される。
前記しきい値ΔAは、伝動ベルト48に滑りが発生した際に、その滑りの抑制のために入力トルク低減手段196が実行される最大のスリップ率の変化率Δsの大きさに対応する値である。しきい値ΔAは、入力トルク低減手段196によって抑制することが可能な伝動ベルト48の滑りに対応するスリップ率の変化量Δsであり、予め実験あるいはシミュレーションなどによって算出される。
制御手段189は、ベルト48に滑りが発生した場合に行なわれうる複数の制御手段であって、本実施例においては、ベルト48のベルト挟圧力Pd*を低下させるベルト挟圧力低減手段190、ベルト48の滑りを抑制させる滑り抑制手段192を含んで構成されている。制御手段189が本発明の複数の制御手段に対応する。
滑り抑制手段192は、伝動ベルト48に滑りが発生した場合に、その滑りを抑制するための手段であって、応答性、すなわち手段の実行から所定の効果が得られるまでの所要時間の長さが異なる複数の手段を含む。本実施例においては、滑り抑制手段192は、ベルト挟圧力増加手段194および入力トルク低減手段196を含む。なお、滑り抑制手段192が本発明の滑り抑制手段に対応する。
ベルト挟圧力増加手段194は、ベルト挟圧力Pdの値を増加させることにより伝動ベルト48の滑りを抑制する。すなわち、伝動ベルト48に滑りが生じていない場合においては、ベルト挟圧力Pd*の大きさはベルト挟圧力設定手段174によって変速比γおよびアクセル開度Accなどで示される車両状態に基づいて設定されるところ、伝動ベルト48に滑りが発生した場合にはベルト挟圧力設定手段174によって設定されるベルト挟圧力Pd*よりもさらに所定の大きさだけ大きくなるようにベルト挟圧力Pd*を設定し、ベルト挟圧力制御手段176にそのベルト挟圧力Pd*を出力させる。この所定の大きさは、例えば伝動ベルト48の滑り率sに比例するように予め定められる。このベルト挟圧力増加手段194が本発明の第2滑り抑制手段に対応する。
入力トルク低減手段196は、無段変速機18の入力トルクを低減させることにより、伝動ベルト48の滑りを抑制する。具体的には例えば、電子スロットル弁30の開度を減少させることにより、エンジン12に供給される燃料を減少させ、エンジン12の出力トルクを減少させる。これにより、無段変速機18の入力軸36への入力トルクが減少させられ、伝動ベルト48の滑りが抑制される。なお、前記電子スロットル弁30の開度の減少量の大きさは、例えば伝動ベルト48の滑り率sに比例するように予め定められる。この入力トルク低減手段196が本発明の第1滑り抑制手段に対応する。
ここで、入力トルク低減手段196による伝動ベルト48の滑りの抑制は、ベルト挟圧力増加手段194による伝動ベルト48の滑りの抑制と異なりベルト挟圧力Pdの大きさを増加させることがないので、入力トルク低減手段196による伝動ベルト48の滑りの抑制は、ベルト挟圧力増加手段194による伝動ベルト48の滑りの抑制と比べて伝動ベルト48の耐久性を悪化させる程度が小さい。一方、入力トルク低減手段196による伝動ベルト48の滑りの抑制は、スロットル弁30の開度を制御するものであって、スロットル弁30の開度を減少してからエンジン12の出力が低下するまでの間に遅れが生じる。従って、入力トルク低減手段196による伝動ベルト48の滑りの抑制は、ベルト挟圧Pdを制御することによりベルト挟圧力Pd*を増加させるベルト挟圧力増加手段194による伝動ベルト48の滑りの抑制と比べて応答性が低いものとなっている。
そこで選択手段188は、スリップ率の変化率Δsの大きさが前記しきい値ΔAよりも小さい伝動ベルト48の滑りが発生する場合には、ベルト挟圧力増加手段194と比べて応答性が高くないものの伝動ベルト48の耐久性を悪化させる程度が小さい入力トルク低減手段196を選択する。一方、スリップ率の変化率Δsの大きさが前記しきい値ΔAよりも大きい伝動ベルト48の滑りが発生する場合には、スリップ率の変化率Δsが小さい場合に選択される入力トルク低減手段196よりも応答性の高いベルト挟圧力増加手段194を選択する。このようにすれば、スリップ率の変化率Δsの大きい、すなわち滑りの増大傾向が大きい伝動ベルト48の滑りに対しては、応答性の高いベルト挟圧力増加手段194により伝動ベルト48の滑りを抑制することができる。また、スリップ率の変化率Δsが前記比較的小さい、すなわち滑りの増大傾向が比較的小さい伝動ベルト48の滑りに対しては、伝動ベルト48の耐久性を悪化させる程度が小さい入力トルク低下手段196により伝動ベルト48の滑りを抑制することができる。
ところで、伝動ベルト48の滑りを抑制するためにベルト挟圧力増加手段194によりベルト挟圧力Pd*が増加させられる場合において、設定し得る最大のベルト挟圧力Pd*を加えた場合であっても伝動ベルト48の滑りを抑制することの出来ない場合がありうる。このようにベルト挟圧力Pd*が高い状態、あるいは無段変速機18への入力トルクが高い状態において伝動ベルト48の滑りが発生すると、伝動ベルト48のフープ48b(図4参照)においてフープ48bの厚み方向の力が加わるなどして、伝動ベルト48の耐久性に影響を与えるおそれがある。
そこで、本実施例の制御手段189は、前述の滑り抑制手段192に加えて後述するベルト挟圧力低減手段190を有し、前述の設定し得る最大のベルト挟圧力Pd*を加えた場合であっても伝動ベルト48の滑りを抑制することの出来ない場合においては選択手段188により滑り抑制手段192に代えてベルト挟圧力低減手段190が選択されるようにされている。以下、この具体的な制御機能について説明する。
選択手段188は例えば以下の様にベルト挟圧力低減手段190の選択を行なう。選択手段188はスリップ率の変化率Δsについてのしきい値として、前述のしきい値ΔAに加え、しきい値ΔBを予め記憶しておく。そして、スリップ率変化率算出手段186により算出されたスリップ率の変化率Δsの値が前記しきい値ΔBよりも大きい(ΔB<Δs)場合には、前述の滑り抑制手段192に代えてベルト挟圧力低減手段190を選択する。なお、前述の様にスリップ率の変化率Δsの値が前記しきい値ΔA以下である(Δs≦ΔA)場合には滑り抑制手段192のうち入力トルク低減手段196が選択され、また、スリップ率の変化率Δsの値が前記しきい値ΔAより大きくしきい値ΔB以下である(ΔA<Δs≦ΔB)場合には、滑り抑制手段192のうちベルト挟圧力増加手段194が選択される。
前記しきい値ΔBは、伝動ベルト48に滑りが発生した際に、その滑りの抑制のためにベルト挟圧力増加手段194が実行される最大のスリップ率の変化率Δsの大きさに対応する値である。すなわち、しきい値ΔBは、ベルト挟圧力増加手段194によって抑制することが可能な伝動ベルト48の滑りに対応するスリップ率の変化量Δsとして設定されるものであり、予め実験あるいはシミュレーションなどによって算出される。なお、前述の様にベルト挟圧力増加手段194は入力トルク低減手段196に比べて応答性が高いので、しきい値ΔBはΔAより大きいものとなる(ΔA<ΔB)。
ベルト挟圧力低減手段190は、ベルト挟圧力設定手段174によって設定されるベルト挟圧力Pd*にかかわらず、ベルト挟圧Pdを低下させ、ベルト挟圧力Pd*のかかっていない状態とする。ベルト挟圧力低減手段190によりベルト挟圧力Pd*のかかっていない状態とされると、伝動ベルト48とプライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46との間の摩擦がなくなり、伝動ベルト48は滑ることとなる。この伝動ベルト48が滑る状態においては、ベルト挟圧力Pd*がかかっていないので、伝動ベルト48への損傷は小さく、伝動ベルト48の耐久性を悪化させる影響は極めて小さい。ベルト挟圧力低減手段190が本発明のベルト挟圧力低減手段に対応する。
具体的にはベルト挟圧力低減手段190は、前記排出バルブ132を制御し、挟圧力コントロールバルブ110の出力ポート110tからセカンダリプーリ46の出力側油圧シリンダ46cへ作動油を供給する油路をドレンに連結することにより、ベルト挟圧Pdを低下させる。このとき、出力側油圧シリンダ46c内の作動油は排出バルブ132を介して大気圧に放出されることから、ベルト挟圧Pdは急速に低減させられる。
そこで選択手段188は、スリップ率の変化率Δsの大きさが前記しきい値ΔBよりも小さい伝動ベルト48の滑りが発生する場合には、滑り抑制手段192、本実施例においてはベルト挟圧力増加手段194および入力トルク低減手段196のいずれかを選択し、伝動ベルト48の滑りの抑制を行なう。一方、スリップ率の変化率Δsの大きさが前記しきい値ΔBよりも大きい伝動ベルト48の滑りが発生する場合には、滑り抑制手段192による伝動ベルト48の滑りの抑制を行なうことができず、高いベルト挟圧力Pd*のもとで滑りが発生するおそれがあるとして、ベルト挟圧力低減手段190を選択し、ベルト挟圧力Pd*を急激に低下させ、伝動ベルト48を積極的に動力を伝達しない状態として滑らせることができる。
図8は、選択手段188において、しきい値ΔAおよびΔBとスリップ率の変化率Δsとの関係に応じて選択される作動を説明する図である。スリップ率の変化率Δsは、図8に示す横軸を時間、具体的には例えばスリップ発生からの経過時間、縦軸をスリップ率sとした平面における傾きによって表わされる。従って、しきい値ΔAおよびΔBはそれぞれ図8における直線AおよびBで表わされる。
スリップ率変化率算出手段186によって算出されるスリップ率の変化率Δsが、図8における横軸と直線Aとによってつくられる領域に含まれる場合には、滑りの増大傾向が比較的小さいとして、選択手段188により入力トルク低減手段196が選択される。また、スリップ率の変化率Δsが、図8における直線Aと直線Bとによってつくられる領域に含まれる場合には、滑りの増大傾向が比較的大きいとして、選択手段188によりベルト挟圧力増加手段194が選択される。また、スリップ率の変化率Δsが、図8における直線Bと縦軸とによってつくられる領域に含まれる場合には、滑り抑制手段192によって伝動ベルト48の滑りが抑制できないとして、選択手段188によりベルト挟圧力低減手段190選択される。このように、図8は、選択手段188が選択する手段を決定するための選択マップとして用いることもできる。
図9は、本実施例の電子制御装置50の制御作動、すなわち、無段変速機18の伝動ベルト48に滑りが生じた際の制御作動の一例を説明するフローチャートである。また、図9においては、無段変速機18の伝動ベルト48に滑りが生じた際の実施例の電子制御装置50によらない制御作動の一例についても比較のため説明されている。
まず、本発明の電子制御装置50の制御作動によらない場合について説明する。ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、車両が悪路や低μ路などを走行させられることにより、無段変速機18の伝動ベルト48の滑りが発生させられ、SA2においては、伝動ベルト48の滑りが発生したことが検出される。
続くSA3において滑りを抑制するためにベルト挟圧力Pd*が上昇(増加)させられる。このベルト挟圧力Pd*の上昇における上昇量の大きさは、例えば伝動ベルト48の滑り率sなどに比例するように予め定められた関係などに基づいて決定される。
SA4においては、SA3でベルト挟圧力Pd*が上昇させられた結果、伝動ベルト48の滑りが抑制されたか否かが判断される。伝動ベルト48の滑りが抑制されなかった場合には、本ステップの判断が否定されて、SA5に示す状態となる。また、伝動ベルト48の滑りが抑制された場合には、本ステップの判断が肯定されて、SA6に示す状態となる。
SA5は、ベルト挟圧力Pd*が上昇させられたにもかかわらず、結果伝動ベルト48の滑りが抑制されなかった場合に対応するものであって、本発明の車両の制御装置が適用されない場合の課題を示している。すなわち、高いベルト挟圧力Pd*が与えられている状況において伝動ベルト48の滑りが発生する本ステップにおいては、伝動ベルト48のフープ48bに大きな損傷を与え、伝動ベルト48の耐久性を悪化させるおそれがあった。
一方SA6は、SA3でベルト挟圧力Pd*が上昇させられた結果、伝動ベルト48の滑りが抑制されたことを示しており、伝動ベルト48の滑りが抑制され、伝動ベルト48への損傷が発生しないこととなる。なお、SA4乃至SA6は作動を表わすステップではなく、SA3の作動が行なわれた場合の効果を説明するステップである。
続いて、本実施例の電子制御装置50の制御作動の一例について説明する。本発明の電子制御装置50の制御作動によらない場合と同様に、SA1においては、車両が悪路や低μ路などを走行させられることにより、無段変速機18の伝動ベルト48の滑りが発生させられる。
スリップ率算出手段184などに対応するSA7において、伝動ベルト48の滑りが発生したことが検出されるとともに、伝動ベルト48のスリップ率sが算出される。このスリップ率sは、伝動ベルト48のプライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46のそれぞれにおけるかかり径などから算出される実変速比γと、無段変速機18の入力軸回転速度NINおよび出力軸回転速度NOUTとから算出されるみかけの変速比γ’とに基づいて算出される。
スリップ率変化率算出手段186などに対応するSA8においては、SA7で算出されるスリップ率sの変化率Δsが算出される。このスリップ率の変化率Δsは例えば、SA7において伝動ベルト48の滑りが検出された後における予め設定された微小単位時間あたりの滑りsの変化量として算出する。
選択手段188に対応するSA9においては、SA8で算出されたスリップ率の変化率Δsに基づいて、SA7で検出された伝動ベルト48の滑りが、無段変速機18への入力トルクの低減によって抑制することができるものであるか否かが判断される。具体的には、本ステップにおいては、SA8で算出されたスリップ率の変化率Δsが、予め記憶されたしきい値ΔA以下であるか否かに基づいて判断が行なわれる。スリップ率の変化率Δsがしきい値ΔA以下である(Δs≦ΔA)場合には、本ステップの判断は肯定され、無段変速機18への入力トルクの低減によって伝動ベルト48の滑りを抑制することができるとして、SA10が実行される。一方、スリップ率の変化率Δsがしきい値ΔAを上回る(ΔA<Δs)場合には、本ステップの判断は否定され、無段変速機18への入力トルクの低減によっては伝動ベルト48の滑りを抑制することができないとして、SA11が実行される。
入力トルク低減手段196に対応するSA10においては、無段変速機18の入力軸36に入力される入力トルクが低減(減少)させられる。具体的には例えば、電子スロットル弁30の開度が所定の減少量だけ減少させられることにより、エンジン12への燃料供給量を低下させ、エンジン12から入力軸36で伝達されるトルクが減少させられる。これにより、無段変速機18の入力トルクが減少させられ、伝動ベルト48が伝動しようとするトルクが小さくなるので、伝動ベルト48の滑りが抑制される。
SA11も前述のSA9と同様に選択手段188に対応する。SA11においては、SA8で算出されたスリップ率の変化率Δsに基づいて、SA7で検出された伝動ベルト48の滑りが、ベルト挟圧力Pd*の増加によって抑制することができるものであるか否かが判断される。具体的には、本ステップにおいては、SA8で算出されたスリップ率の変化率Δsが、予め記憶されたしきい値ΔB以下であるか否かに基づいて判断が行なわれる。スリップ率の変化率Δsがしきい値ΔB以下である(Δs≦ΔB)場合には、本ステップの判断は肯定され、ベルト挟圧力Pd*の増加によって伝動ベルト48の滑りを抑制することができるとして、SA3が実行される。一方、スリップ率の変化率Δsがしきい値ΔBを上回る(ΔB<Δs)場合には、本ステップの判断は否定され、ベルト挟圧力Pd*の増加によっては伝動ベルト48の滑りを抑制することができないとして、SA12が実行される。
SA11の判断が肯定された場合に実行されるSA3は、ベルト挟圧力増加手段194に対応する。このSA3においては、油圧回路100に対し出力側油圧シリンダ46cの油圧である挟圧Pdを増加する指令がなされることにより、セカンダリベルト挟圧力Pd*が上昇(増加)させられる。このベルト挟圧力Pd*の上昇における上昇量の大きさは、例えば伝動ベルト48の滑り率sなどに比例するように予め定められた関係などに基づいて決定される。
SA4においては、SA3でベルト挟圧力Pd*が上昇させられた結果、伝動ベルト48の滑りが抑制されたか否かが判断される。伝動ベルト48の滑りが抑制されなかった場合には、本ステップの判断が否定されて、SA5に示す状態となる。また、伝動ベルト48の滑りが抑制された場合には、本ステップの判断が肯定されて、SA6に示す状態となる。
ところで、SA11におけるしきい値ΔBの値は、SA3におけるベルト挟圧力Pd*の増加によってSA7で検出された伝動ベルト48の滑りが抑制されることができる場合に、SA11の判断が肯定されるように設定されている。したがって、SA3におけるベルト挟圧力Pd*の増加が行なわれた場合には、SA7で検出された伝動ベルト48の滑りを抑制され、SA4のステップが否定されない。すなわち、SA4の判断は肯定されてSA6の状態となる。言いかえれば、ベルト挟圧力Pd*の増加が行なわれた場合であっても伝動ベルト48の滑りを抑制されず、伝動ベルト48の耐久性を損なう場合の発生が抑制される。
一方、SA11の判断が否定された場合に実行されるSA12は、ベルト挟圧力低減手段190に対応する。SA12においては、ベルト挟圧Pdが低下させられ、伝動ベルト48にベルト挟圧力Pd*のかかっていない状態とされる。具体的には、前記排出バルブ132が制御され、セカンダリプーリ46の出力側油圧シリンダ46cとドレンとが連結され、出力側油圧シリンダ46c内の作動油は排出バルブ132を介して大気圧に放出されることによってベルト挟圧Pdが急速に低減させられる。
SA13においては、SA12においてベルト挟圧力Pd*が低下させられたことによって、伝動ベルト48が故意に滑らされる状態となる。このとき、ベルト挟圧力がかかっていない状態とされるので、伝動ベルト48にプライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46に対する滑りを生じた場合であっても、伝動ベルト48に損傷を与えることが少なく、伝動ベルト48の耐久性に与える影響は極めて小さいものとされる。
前述の実施例によれば、伝動ベルト48に滑りが生じた場合に対する複数の制御手段189を有する車両の制御手段において、無段変速機18において伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsがしきい値ΔAより大きい場合は、選択手段188(SA9、SA11)により、プライマリプーリ42およびセカンダリプーリ46と伝動ベルト48との滑りによる伝動ベルト48の損傷を抑制する応答性の異なる複数の滑り抑制手段192であるベルト挟圧力増加手段194(SA3)および入力トルク低減手段196(SA10)のうちから、応答性が高いベルト挟圧力増加手段194が選択されるので、伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsが大きい状態、すなわち伝動ベルト48の急激な滑りが発生する状態において、入力トルク低減手段196よりも応答性の高いベルト挟圧力増加手段194により滑りによる伝動ベルト48の損傷を抑制することができる。
前述の実施例によれば、無段変速機18において、伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsがしきい値ΔBより大きい場合は、選択手段188(SA9、SA11)により、制御手段189を構成する滑り抑制手段192(SA3、SA10)およびベルト挟圧力低減手段190(SA12)のうちから、滑り抑制手段192よりも応答性が高いベルト挟圧力低減手段190が選択されるので、伝動ベルト48のスリップ率の変化率Δsが大きい状態、すなわち伝動ベルト48の急激な滑りが発生する状態において、ベルト挟圧力低減手段190により滑りによる伝動ベルト48の損傷を抑制することができる。
また前述の実施例によれば、無段変速機18は、ベルト挟圧力Pd*を発生させるための挟圧力コントロールバルブ110の出力ポート110tと出力側油圧シリンダ46cとを連結する油路とドレンとを選択的に連結する切換バルブ132を備え、ベルト挟圧力低減手段190は、切換バルブ32を切り換えることによりベルト挟圧力Pd*を減圧させるので、急速にベルト挟圧力Pd*を減圧させることができ、ベルトの損傷を抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例においては、第1の滑り抑制手段として入力トルク低減手段196、第2の滑り抑制手段としてベルト挟圧力増加手段194がそれぞれ用いられたが、これに限られず、ベルト48の滑りを抑制することのできる応答性の異なる複数の手段であればよい。
また、前述の実施例においては、複数の滑り抑制手段192においては、第1の滑り抑制手段として入力トルク低減手段196、第2の滑り抑制手段としてベルト挟圧力増加手段194の2つの手段が含まれるものとされたが、滑り抑制手段192に含まれる手段の数は2つに限定されるものではない。例えば滑り抑制手段192に3つ以上の手段が含まれる場合には、選択手段188はそれら3つい条の手段の選択のために、対応する数のしきい値を有すればよい。逆に滑り抑制手段190として1つの手段が設けられることにより、選択手段188により滑り抑制手段192とベルト挟圧力低減手段190とのいずれかが選択される様にしてもよい。
また、前述の実施例においては、ベルト挟圧力低減手段190は、排出バルブ132を制御することによりベルト挟圧力Pd*を急速に低下させるものとされたが、このような方法に限られない。すなわち、ベルト挟圧力Pd*を急速に低下させることが出来る方法であれば、排出バルブ132を用いる方法に限定されない。逆にいえば、排出バルブ132を用いずにベルト挟圧力Pd*を急速に低下させる場合においては、排出バルブ132を備える必要はない。
また、前述の実施例においては、選択手段188は複数の滑り抑制手段192であるベルト挟圧力増加手段194、入力トルク低減手段196および、ベルト挟圧力低減手段190からいずれかを選択するものとされたが、ベルト挟圧力低減手段190は必須の要件ではなく、選択手段188が複数の滑り抑制手段192であるベルト挟圧力増加手段194、入力トルク低減手段196からいずれかを選択するものとされても一定の効果を得ることができる。すなわち、ベルト48に滑りが生じた際に、選択手段188によってベルト48の滑りの増大傾向の大きさに応じて、応答性がそれぞれ異なる複数の滑り抑制手段190から、ベルト48の滑りの増大傾向の大きさ、すなわちスリップ率の変化率Δsが大きいほど応答性の高い滑り抑制手段190の1つが選択されることができればよい。
また、前述の実施例における入力軸回転速度NINやそれに関連する目標入力軸回転速度NIN *などは、それら入力軸回転速度NINなどに代えて、エンジン回転速度NEやそれに関連する目標エンジン回転速度NE *などに、あるいはタービン回転速度NTやそれに関連する目標タービン回転速度NT *などが用いられてもよい。
また、前述の実施例においては、流体伝動装置としてロックアップクラッチ26が備えられたトルクコンバータ14が用いられたが、ロックアップクラッチ26は必ずしも設けられなくてもよい。また、トルクコンバータ14に代えて、トルク増幅作用のない流体継手などの他の流体式動力伝動装置が用いられてもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
18:無段変速機(ベルト式無段変速機)
42、46:可変プーリ(一対のプーリ)
48:伝動ベルト
50:電子制御装置(車両の制御装置)
133:排出バルブ(切換バルブ)
188:選択手段
189:制御手段
190:ベルト挟圧力低減手段
192:複数の滑り抑制手段
194:ベルト挟圧力増加手段(第2滑り抑制手段)
196:入力トルク低減手段(第1滑り抑制手段)
42、46:可変プーリ(一対のプーリ)
48:伝動ベルト
50:電子制御装置(車両の制御装置)
133:排出バルブ(切換バルブ)
188:選択手段
189:制御手段
190:ベルト挟圧力低減手段
192:複数の滑り抑制手段
194:ベルト挟圧力増加手段(第2滑り抑制手段)
196:入力トルク低減手段(第1滑り抑制手段)
Claims (4)
- 一対のプーリと、該一対のプーリに巻き掛けられた伝動ベルトとを有し、該一対のプーリにおける該伝動ベルトのかかり径を変化させることにより変速を行なうベルト式無段変速機を備える車両の制御装置であって、
前記一対のプーリと前記伝動ベルトとの滑りによる前記伝動ベルトの損傷を抑制する、応答性の異なる複数の制御手段と、
該滑りの増大傾向が大きい場合は、小さい場合と比較して該複数の制御手段のうちから応答性が高い制御手段を選択する選択手段と、
を有することを特徴とする車両の制御装置。 - 前記複数の制御手段は、前記ベルト式無段変速機への入力トルクを減少させる第1滑り抑制手段と、ベルト挟圧力を増大させる第2滑り抑制手段とを含み、
該第2滑り抑制手段は、該第1滑り抑制手段よりも応答性が高いこと、
を特徴とする請求項1の車両の制御装置。 - 前記複数の制御手段は、前記伝動ベルトの滑りを抑制する滑り抑制手段と、ベルト挟圧力を減少させるベルト挟圧力低減手段とを含み、
該ベルト挟圧力低減手段は、該滑り抑制手段よりも応答性が高いこと、
を特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。 - 前記ベルト式無段変速機は、前記ベルト挟圧力を発生させるための油圧回路とドレンとを選択的に連結する切換バルブを備え、
前記ベルト挟圧力低減手段は、該切換バルブを切り換えることにより前記ベルト挟圧力を減圧させること、
を特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
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JP2009095020A JP2010242935A (ja) | 2009-04-09 | 2009-04-09 | 車両の制御装置 |
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JP2009095020A JP2010242935A (ja) | 2009-04-09 | 2009-04-09 | 車両の制御装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014199117A (ja) * | 2013-03-29 | 2014-10-23 | アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 | ベルト式無段変速機の油圧制御装置 |
US8924104B2 (en) | 2012-12-12 | 2014-12-30 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Shift control apparatus for continuously variable transmission |
US10066746B2 (en) | 2014-06-13 | 2018-09-04 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Driving system for vehicle |
-
2009
- 2009-04-09 JP JP2009095020A patent/JP2010242935A/ja active Pending
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