第1の発明は、対向する2つの伝熱面を有する繊維の集合体と、いずれか一方の前記伝熱面に露出する部分と前記繊維の集合体内に埋没する部分とを有する糸と、前記糸が絡み合った交絡部とを備えた繊維断熱体であって、前記交絡部を前記繊維の集合体内または前記伝熱面上に設けたことを特徴とする繊維断熱体である。
これによって、交絡部により糸に張力が生じ、一方の伝熱面に露出した糸と他方の伝熱面に露出した糸との間に位置する繊維の集合体が拘束されるため、繊維の集合体の嵩密度が部分的に大きくなり、繊維の集合体に剛性が付与される作用を有する。
そして、上記作用により繊維断熱体を袋内へ収納する作業や、繊維断熱体を所定形状へ変形させるための折り曲げ加工や、曲げ加工などの取り扱いが容易となる。
なお、繊維の種類に関して特に指定するものではないが、グラスウールやロックウール、アルミナ繊維、金属繊維など無機繊維や、ポリエチレンテレフタレート繊維など従来公知の材料が利用できる。なお、金属繊維を用いる場合は、金属の中でも比較的熱伝導性に優れた金属からなる金属繊維は、好ましくない。
その中でも繊維自体の弾性が高く、また繊維自体の熱伝導率が低く、なおかつ工業的に安価なグラスウールを用いることが望ましい。さらに、繊維の繊維径は小さいほど真空断熱材の熱伝導率が低下する傾向にあるため、より小さい繊維径の繊維を用いることが望ましいが、汎用的でないため繊維のコストアップが予想される。したがって、真空断熱材用の繊維として一般的に使用されている比較的安価な平均繊維径が3μm〜6μm程度の集合体からなるグラスウールがより望ましい。
本発明における伝熱面とは、繊維の集合体を繊維断熱体として用いた際に、最も広い面積となる面とその対向する面を指す。また、断熱のため繊維断熱体を、比較的高温の面または比較的低温の面に配置した場合に、繊維断熱体を配設した比較的高温の面または比較的低温の面と対向する繊維断熱体の面とその対向する面を指す。また、複数の繊維断熱体を積層して使用する場合は、積層方向に対して垂直な各繊維断熱体の面とその対向する面を指す。
本発明における糸とは、繊維の集合体を圧縮するための役割を果たすものである。なお、繊維の材質を特に指定するものではないが、繊維の集合体を構成する材質や、繊維の集合体を所定の嵩密度まで圧縮する度合いに応じて綿や絹などの天然繊維や、ポリエチレンテレフタレートやナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成繊維や、ガラス長繊維や金属長繊維などの無機繊維が使用できる。
しかし、断熱材の断熱効果を確保する目的や、減圧下において発生する有機ガスを抑制する目的や、より高い剛性を有する断熱材を提供する目的から、ポリエチレンテレフタレートやナイロンなどの合成樹脂からなる有機繊維を用いることがより望ましい。
さらに、糸の形態を特に指定するものではないが、一本の繊維で構成されたモノフィラメントや、複数の繊維で構成される撚り糸や、撚り糸に嵩高加工を施したウーリー糸などが利用できる。
また、一般的な縫製糸は、縫製時の糸滑りを良くする目的や撚糸工程の糸切れを防止する目的で糸の表面に油剤がコーティングされている。この油剤がコーティングされた糸を繊維断熱体へ適用すると、減圧下にて有機ガスの発生原因となるため、油剤は可能な限り少ない事が好ましい。なお、前述のモノフィラメントは、撚糸工程が無いため油剤の付着量が0.1%〜0.3%重量比と撚り糸に比べて少ない。よって、モノフィラメントを本発明に適用することがより望ましいと考える。
さらに、一般的な縫製糸には、意匠性を鑑みて着色剤が付与されている。この着色剤が付与された糸を繊維断熱体へ適用すると前述の油剤と同様に、減圧下にて有機ガスの発生原因となるため着色剤が付与されていない生成の糸がより望ましい。
また、交絡部とは、JIS規格L0120やISO規格4915に示されるように、糸または糸のループが自糸ルーピング、他糸ルーピング、他糸レーシングを形成したものを指す。なお、他糸ルーピングとは、糸の1つのループが、他の糸のループを通り抜けるものであり、他糸レーシングとは、糸が他の糸または他の糸のループと交差もしくは通り抜けることを指す。
第2の発明は、特に、第1の発明において、少なくとも一方の伝熱面上に露出する部分と繊維の集合体内に埋没する部分とを有する第1の糸と、少なくとも他方の前記伝熱面上に露出し前記第1の糸と交絡する第2の糸と、前記第1の糸と前記第2の糸で形成された交絡部を含むことを特徴とする繊維断熱体であり、第1の発明の作用効果に加えて。1つの交絡部で目とびと呼ばれる縫製不良が生じても交絡部が別々の糸で形成されているため、繊維の集合体が元の厚みまで復元し難いという作用を有する。
そして上記作用により、繊維断熱体に付与された剛性が保持し続けられるため、繊維断熱体を袋内へ収納する作業や、繊維断熱体を所定形状へ変形させるための折り曲げ加工や、曲げ加工などの取り扱いが容易となる。
なお、第1の糸と第2の糸で構成される交絡部は、JIS規格L0120やISO規格4915に示される本縫いや、二重環縫いや、偏平縫いによって形成され、1本の糸で交絡部を形成する単環縫いに比べて交絡部がより強固となる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明における交絡部が、二重環縫いにより形成されたことを特徴とする繊維断熱体であり、二重環縫いにより形成された交絡部は、第1の糸が第2の糸と二重に交絡しており、第1の糸または第2の糸が切断された場合でも他の縫製方法に比べてほどけ難いという作用を有する。上記作用により、繊維断熱体を所望の寸法に裁断した後も交絡部が繊維の集合体を圧縮し続けるため、繊維断熱体の取り扱いがより容易となる。
なお、ここで二重環縫いとは、JIS規格L0120やISO規格4915に示されるとおり、2つまたはそれ以上の糸のグループで形成し、2つのグループの糸が他糸ルーピングしたものを指す。
第4の発明は、特に、第1から第3の発明において、単環縫いにより形成された交絡部を含むことを特徴とする繊維断熱体である。
単環縫いにより形成された交絡部は、糸の一つのループが同じ糸の他のループを通り抜けるものであり、特許文献1に示されたハンドステッチに比べて繊維の集合体を圧縮する作用を有する。また、本縫いや二重環縫いで形成した交絡部に比べて柔軟性であり、繊維の集合体が持つ柔軟性を保持できるという作用を有する。上記作用により、繊維断熱体の交絡部に柔軟性が付与されるため、繊維断熱体を所定の形状へ変形させ易く、繊維断熱体の取り扱いが容易となる。
第5の発明は、特に、第1から第4の発明において、交絡部の総数を一方の伝熱面の面積で除した値を0.2個/cm2以上2.5個/cm2以下とし、繊維断熱体の厚み方向に見た場合に、交絡部が前記伝熱面中に分散していることを特徴とする繊維断熱体である。
交絡部の総数が減少すると、繊維の集合体が十分に圧縮されない。そこで、交絡部の総数を一方の伝熱面の面積で除した値を0.2個/cm2以上とし、繊維断熱体を厚み方向に見たときに交絡部を伝熱面中に分散させると、隣接する交絡部同士の間に位置する繊維の集合体が圧縮され、繊維断熱体に剛性が付与されることが分かった。
また、交絡部を構成する第1の糸や第2の糸の一部が、繊維断熱体の厚み方向に配置されていることから、繊維断熱体中では第1の糸や第2の糸が熱橋として作用する。このため、交絡部の総数が増加すると、繊維断熱体の熱伝導率は増大する傾向にあった。そこで、熱伝導率の増大を抑制するために交絡部の総数を減少させる取り組みを行い、交絡部の総数を一方の伝熱面の面積で除した値が、2.5個/cm2以下であれば、第1の糸および第2の糸による熱橋を極小化できることが分かった。上記作用により、繊維断熱体の取り扱いが容易となり、また、繊維断熱体の断熱効果が高く保持される。
なお、交絡部の分散方法は特に指定するものではないが、伝熱面上に露出した糸が一本の糸で構成されるように交絡部を分散させる方法や、伝熱面上に露出した糸が複数の糸で構成されるように交絡部を分散させる方法が考えられる。また、伝熱面上に露出した糸で構成される仕上り線は、直線や曲線または、直線や曲線を用いて描かれる幾何学模様など任意の形状が利用可能である。
第6の発明は、特に、第1から第5の発明における糸の繊度が、110dtex以上205dtex以下であることを特徴とする繊維断熱体である。
糸の繊度が小さくなると、糸が縫製時に切れ易くなるため、繊維の集合体が十分に圧縮されない。そこで、検討を重ねた結果、糸の繊度が110dtex以上であれば糸が切断されずに繊維の集合体を圧縮できることが分かった。
また、交絡部を構成する第1の糸や第2の糸の一部が、繊維断熱体の厚み方向に配置されていることから、繊維断熱体中では第1の糸や第2の糸が熱橋として作用する。このため、交絡部を構成する糸の繊度が増加すると繊維断熱体の熱伝導率は増大する傾向にあった。そこで、熱伝導率の増大を抑制するために糸の繊度を減少させる取り組みを行い、糸の繊度を205dtex以下とすれば、第1の糸や第2の糸による熱橋を極小化できることが分かった。上記作用により、繊維断熱体の取り扱いが容易となり、また、繊維断熱体の断熱効果が高く保持される。
なお、繊度とはJIS規格L0101やISO規格2947に示されるように、単位長さ当りの糸の重量から求められた糸の太さを指す。なお本発明では、糸の太さを表す単位としてdtexを使用した。
第7の発明は、特に、第1から第6の発明において、伝熱面と前記伝熱面上に露出した糸との間に、シートを介在させたことを特徴とする繊維断熱体である。
糸によってシートが繊維の集合体とともに厚み方向に圧縮されるため、伝熱面上に糸が露出しない場所であっても、繊維の集合体が厚み方向に圧縮される作用を有する。上記作用により、繊維断熱体の剛性が付与され、取り扱いが容易となり、また、繊維断熱体の表面性が改善する。
なお、シートの材質に関しては、樹脂フィルムのような柔軟性のあるシートでも、平面性を維持可能な固いシートでも良く、特に指定するものではないが、孔のないシートであれば糸を通すための針が貫通可能な材料である必要があり、糸を通すための針が貫通可能な多数の孔があるシートであれば糸を通すための針が貫通し難い固い材料でも良く、ただ、糸を通すための針や糸によって割れたり破れたりし難いシートである必要がある。例えば、プラスチックシートや織布や不織布や、網目状に編んだメッシュ状のシートや、無機繊維シートなどが利用可能であるが、比較的安価なポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムや不織布がより望ましい。
また、シートの厚みに関しても、特に指定するものではないが、希望する表面粗度や縫製時にかかる糸の張力に応じて自由に選定できる。
さらに、繊維断熱体に付着した短い繊維や異物の落下を防止するために、繊維断熱体の伝熱面全体を覆うようシートを設けることがより望ましい。
第8の発明は、特に、第1から第7の発明において、伝熱面上に露出した糸で構成される仕上り線を、繊維断熱体の曲げ方向に対して略垂直方向に配置したことを特徴とする繊維断熱体であり、繊維断熱体の曲げ方向に対する可撓性が付与される作用を有する。上記作用により、繊維断熱体を所定の形状へ変形させ易くなることから、繊維断熱体の取り扱いが容易となる。
なお、ここで曲げ方向に対する略垂直方向とは、製造時に生じる誤差を鑑みて曲げ方向に対する垂線から10°以内の傾きを許容範囲とする。また、伝熱面上に露出した糸の一部が繊維断熱体の曲げ方向に対して垂直でない場合であっても、伝熱面上に露出した縫い目が全体的に垂直であれば、本発明の効果が得られる。
第9の発明は、少なくとも芯材と前記芯材を覆うラミネートフィルムからなり、前記芯材を前記ラミネートフィルム内に減圧密封した真空断熱材であって、前記芯材が、対向する2つの伝熱面を有する繊維の集合体と、いずれか一方の前記伝熱面に露出する部分と前記繊維の集合体内に埋没する部分とを有する糸と、前記糸が絡み合った交絡部とを備え、前記交絡部を前記繊維の集合体内または前記伝熱面上に設けたことを特徴とする真空断熱材である。
これによって、芯材においては、交絡部により糸に張力が生じ、一方の伝熱面に露出した糸と他方の伝熱面に露出した糸との間に位置する繊維の集合体が拘束されるため、繊維の集合体の嵩密度が部分的に大きくなり、繊維の集合体に剛性が付与される部分と柔軟性が保持される部分が生じるという作用を有する。これにより、芯材は厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を併せ持つ。
以上の作用により、真空断熱材の内部真空度を検査する工程や、真空断熱材を所定の形状へ変形させるための溝付け加工、折り曲げ加工、曲げ加工などの取り扱いが容易となる。さらに、芯材に金属箔を用いないことから、特許文献1に記載の従来の技術に比べて、ラミネートフィルムを介して芯材へ熱が移動し難くなるため、真空断熱材の断熱効果が高く保持される。
本発明において、ラミネートフィルムとは、真空断熱材の真空度を維持する役割を果たすものであり、最内層の熱溶着フィルムと、中間層としてのガスバリアフィルムとして金属箔や金属原子を蒸着した樹脂フィルムと、最外層として表面保護フィルムを、それぞれラミネートしたものである。
なお、熱溶着フィルムとしては特に指定するものではないが、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等の熱可塑性樹脂、或いはそれらの混合体が使用できる。
また、ガスバリアフィルムとしては、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体へアルミニウムや銅等の金属や金属酸化物を蒸着したフィルム等が使用できる。
また、表面保護フィルムとしては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等従来公知の材料が使用できる。
また、本発明を構成する真空断熱材について、芯材とラミネートフィルムに関する記載をしたが、ガスや水蒸気の侵入による気体熱伝導成分の増加を抑制するために、ゼオライトや酸化カルシウム等のように、真空断熱材に侵入するガスや水蒸気を補足する吸着剤を芯材とともに減圧密封することが望ましい。
また、真空断熱材の製造方法に関しては特に指定するものではないが、一枚のラミネートフィルムを折り返し、対向するラミネートフィルムの端部に位置する熱溶着フィルム同士を熱溶着することで得た袋状のラミネートフィルム内へ芯材を挿入し、減圧下にて袋状ラミネートフィルムの開口部に位置する熱溶着フィルム同士を熱溶着する方法や、熱溶着フィルム同士が対向するよう二枚のラミネートフィルムを配置し、各ラミネートフィルムの端部に位置する熱溶着フィルム同士を熱溶着することで得た袋状のラミネートフィルム内に芯材を挿入し、減圧下にて袋状ラミネートフィルムの開口部付近に位置する熱溶着フィルム同士を熱溶着する方法が利用できる。
第10の発明は、特に、第9の発明において、芯材が、少なくとも一方の伝熱面上に露出する部分と繊維の集合体内に埋没する部分とを有する第1の糸と、少なくとも他方の前記伝熱面上に露出し前記第1の糸と交絡する第2の糸と、前記第1の糸と前記第2の糸で形成された交絡部を含むことを特徴とする真空断熱材であり、第9の発明の作用効果に加えて、1つの交絡部で目とびと呼ばれる縫製不良が生じても、交絡部が別々の糸で形成されているため、繊維の集合体が元の厚みまで復元し難いという作用を有する。また、第1の糸と第2の糸によって圧縮されない部分の繊維は、芯材の厚み方向に対して柔軟性を有する。
そして上記作用により、繊維断熱体に付与された剛性が保持し続けられるため、真空断熱材を所定の形状へ変形させるための溝付け加工や、折り曲げ加工や、曲げ加工などの取り扱いが容易となる。
第11の発明は、特に、第9または第10の発明における交絡部が、二重環縫いにより形成されたことを特徴とする真空断熱材であり、交絡部が二重環縫いにより形成された芯材は、第1の糸と第2の糸が二重に交絡していることから、他の縫製方法に比べてほどけ難いという作用を有する。
この交絡部が二重環縫いにより形成された芯材を真空断熱材に適用した場合、真空断熱材を減圧容器中にセットし減圧容器内の真空度を真空断熱材内の真空度よりも低くすることで、真空断熱材内の真空度を検査する工程や、真空断熱材を所定の形状へ変形させる溝付け加工や、折り曲げ加工、曲げ加工などの加工を行っても、糸がほどけ難いため、加工前の真空断熱材の表面性が維持される。これにより、真空断熱材の取り扱いが容易となる。
第12の発明は、特に、第9から第11の発明における芯材が、単環縫いによって形成された交絡部を含むことを特徴とする真空断熱材である。
単環縫いにより形成された交絡部は、糸の一つのループが同じ糸の他のループを通り抜けるものであり、特許文献1に示されたハンドステッチに比べて繊維の集合体を圧縮する作用を有する。また、本縫いや二重環縫いで形成した交絡部に比べて柔軟性であり、繊維の集合体が持つ柔軟性を保持できるという作用を有する。
上記作用により、この単環縫いで形成された交絡部を有する芯材を用いた真空断熱材は、本縫いや二重環縫いで形成された交絡部のみを有する芯材を用いた真空断熱材に比べて柔軟性が高い。したがって、真空断熱材を所定の形状へ変形させる溝付け加工や、折り曲げ加工、曲げ加工などの取り扱いが容易となる。
第13の発明は、特に、第9から第12の発明において、複数の芯材が厚み方向に積層された状態で、ラミネートフィルム内に減圧密封されていることを特徴とする真空断熱材であり、芯材が真空断熱材の厚み方向に分割されているため、芯材の伝熱面を被断熱物の形状に沿って配置しやすくなる作用を有する。上記作用により、真空断熱材の取り扱いが容易となる。
第14の発明は、特に、第13の発明において、厚み方向に隣接する任意の2つの前記芯材のうち、一方の前記芯材の伝熱面に露出した糸が、他方の前記芯材の前記伝熱面に露出した前記糸と接触しないことを特徴とする真空断熱材であり、第13の発明の作用に加え、芯材中に熱橋として存在する糸が、隣接する他の芯材を構成する糸と接触しないため、熱橋が真空断熱材の厚み方向に対して不連続となる作用を有する。上記作用により、真空断熱材の断熱効果が高く保持される。
第15の発明は、特に、第13または第14の発明において、厚み方向に隣接する前記芯材同士を固定したことを特徴とする真空断熱材である。
芯材が真空断熱材の厚み方向に分割されているため、芯材の伝熱面を被断熱物の形状に沿って配置しやすくなる作用を有する。また、芯材同士を部分的に固定することで、芯材を厚み方向に分割しない芯材に比べて熱橋が小さくなる作用を有する。また、芯材同士を固定しない場合に比べて、一緒にする複数の芯材の取り扱いが容易となる。上記作用により、真空断熱材の取り扱いが容易となり、また、真空断熱材の断熱効果が高く保持される。
第16の発明は、特に、第9または第15の発明において、交絡部の総数を一方の伝熱面の面積で除した値を、0.2個/cm2以上2.5個/cm2以下とし、芯材の厚み方向に見た場合に交絡部が前記伝熱面中に分散していることを特徴とする真空断熱材である。
交絡部の総数が減少すると繊維の集合体が十分に圧縮されない。そこで、交絡部の総数を一方の伝熱面の面積で除した値を0.2個/cm2以上とし、芯材を厚み方向に見たときに交絡部を伝熱面中に分散させると、隣接する交絡部同士の間に位置する繊維の集合体が圧縮され、芯材に剛性が付与されることが分かった。
また、交絡部を構成する第1の糸や第2の糸の一部が、芯材の厚み方向に配置されていることから、真空断熱材中では第1の糸や第2の糸が熱橋として作用する。このため、交絡部の総数が増加すると真空断熱材の熱伝導率は増大する傾向にあった。そこで、熱伝導率の増大を抑制するために交絡部の総数を減少させる取り組みを行い、交絡部の総数を一方の伝熱面の面積で除した値が2.5個/cm2以下であれば、第1の糸および第2の糸による熱橋を極小化できることが分かった。上記作用により、真空断熱材の取り扱いが容易となり、また、真空断熱材の断熱効果が高く保持される。
第17の発明は、特に、第9または第16の発明において、芯材を厚み方向に見たときに、前記伝熱面上おいて交絡部に疎密があることを特徴とする真空断熱材であり、交絡部に疎密を設けることにより、芯材の厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を自由に設けることができる。上記作用により、真空断熱材をより複雑な形状に曲げることが可能となり、取り扱いが容易である。
第18の発明は、特に、第9または第17の発明において、芯材の伝熱面上に露出した糸で構成される仕上り線を、真空断熱材の曲げ方向に対して略垂直方向に配置したことを特徴とする真空断熱材であり、真空断熱材の曲げ方向に対して芯材に可撓性が付与される作用を有する。上記作用により、真空断熱材を所定の形状へ変形させ易くなることから、真空断熱材の取り扱いが容易となる。
第19の発明は、特に、第9または第17の発明において、芯材の伝熱面上に露出した糸で構成される仕上り線を、複数の方向へ配置したことを特徴とする真空断熱材であり、芯材の厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所の方向を自由に設けることができる。上記作用により、真空断熱材をより複雑な形状に曲げることが可能となり、取り扱いが容易である。
第20の発明は、特に、第9または第17の発明において、芯材の伝熱面上に露出した糸で構成される仕上り線を、前記芯材の長辺または短辺と略平行に配置したことを特徴とする真空断熱材である。
真空断熱材を曲げる場合は、芯材の長辺または短辺の方向に合わせて曲げることが多いので、芯材の伝熱面上に露出した糸で構成される仕上り線を、前記芯材の長辺または短辺と略平行に配置すれば、芯材の長辺に合わせた曲げ方向と芯材の短辺に合わせた曲げ方向のどちらかの芯材の曲げ方向に対して芯材に可撓性が付与される作用を有する。上記作用により、真空断熱材を所定の形状へ変形させ易くなることから、真空断熱材の取り扱いが容易となる。
第21の発明は、特に、第9または第20の発明における糸の繊度が、110dtex以上205dtex以下の繊維であることを特徴とする真空断熱材である。
糸の繊度が小さくなると、糸が縫製時に切れ易くなるため、繊維の集合体が十分に圧縮されない。そこで、検討を重ねた結果、糸の繊度が110dtex以上であれば糸が切断されずに繊維の集合体を圧縮できることが分かった。
また、交絡部を構成する第1の糸や第2の糸の一部が、真空断熱材の厚み方向に配置されていることから、真空断熱材中では第1の糸や第2の糸が熱橋として作用する。このため、交絡部を構成する糸の繊度が増加すると真空断熱材の熱伝導率は増大する傾向にあった。そこで、熱伝導率の増大を抑制するために糸の繊度を減少させる取り組みを行い、糸の繊度を205dtex以下とすれば、第1の糸や第2の糸による熱橋を極小化できることが分かった。上記作用により、真空断熱材の取り扱いが容易となり、また、真空断熱材の断熱効果が高く保持される。
第22の発明は、特に、第9または第20の発明において、糸は複数あり、一方の糸の繊度は、他方の糸の繊度と異なることを特徴とする真空断熱材である。
糸の交絡形状を鑑みると、例えば二重環縫いのように一方の糸が真空断熱材の熱橋となり難い場合がある。一方の糸の繊度と他方の糸の繊度が異なるようにすることで、芯材中の熱橋を小さく抑えつつ、芯材をより強固に圧縮する作用を有する。上記作用により、真空断熱材の取り扱いが容易となり、また、真空断熱材の断熱効果が高く保持される。
第23の発明は、特に、第9または第22の発明において、芯材の伝熱面と前記伝熱面上に露出した糸との間に、シートを介在させたことを特徴とする真空断熱材である。
糸によってシートが繊維の集合体とともに圧縮されるため、伝熱面上に糸が露出しない場所であっても、芯材が全体的に圧縮される作用を有する。上記作用により、芯材に剛性が付与され、取り扱いが容易となり、また、真空断熱材の表面性が改善する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における繊維断熱体の平面図、図2は同実施の形態における繊維断熱体を図1のA−A線にて切断した場合の断面図、図3は同実施の形態における繊維断熱体を図1のB−B線にて切断した場合の断面図、図4は同実施の形態における繊維断熱体を芯材に用いた真空断熱材の断面図である。
図1から図3に示すように、繊維断熱体6は、対向する2つの長方形の伝熱面7を有する繊維の集合体8と、一方の伝熱面7に繊維断熱体6の長辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分と他方の伝熱面7に繊維断熱体6の長辺方向と平行な方向に露出する部分とを有する糸5と、糸5が絡み合って形成された交絡部9とを備え、一方の伝熱面7上に交絡部9が形成されている。
以上のように構成された繊維断熱体6は、交絡部9によって糸5に張力が生じ、一方の伝熱面7に露出した糸5と他方の伝熱面7に露出した糸5との間に位置する繊維の集合体8が拘束されるため、繊維の集合体8の嵩密度が部分的に大きくなり、繊維の集合体8に剛性が付与される。よって、繊維断熱体6を袋内へ挿入する作業等の取り扱いが容易となる。
また、本実施の形態の繊維断熱体6は、伝熱面7上に露出した糸5で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向と平行であるので、繊維断熱体6の長辺方向より短辺方向が曲げやすい。言い換えると、繊維断熱体6の長辺が直線を維持しながら繊維断熱体6の短辺が円弧を描くように繊維断熱体6を曲げることが、繊維断熱体6の短辺が直線を維持しながら繊維断熱体6の長辺が円弧を描くように繊維断熱体6を曲げることよりも、小さい力で容易にできる。
なお、本実施の形態では、交絡部9が片方の伝熱面7上に形成されていることから、2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、繊維断熱体6を配置することが好ましい。
また、図4に示すように、真空断熱材10は、繊維断熱体6からなる芯材11と水分吸着剤12とを袋状に加工したラミネートフィルム13内へ挿入し、芯材11(繊維断熱体6)と水分吸着剤12とをラミネートフィルム13内で減圧密封したものである。
以上のように構成された真空断熱材10は、芯材11が厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を併せ持つため、真空断熱材10の内部真空度を検査する工程や、真空断熱材10を所定の形状へ変形させるための溝付け加工、折り曲げ加工、曲げ加工などの二次加工が容易となる。さらに、芯材11に金属箔を用いないことから、特許文献1のようにラミネートフィルム13を介して芯材11へ熱が移動し難くなるため、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、繊維断熱体6の伝熱面7上に露出した糸5で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向と平行であるので、芯材11の長辺方向より短辺方向が曲げやすい。言い換えると、芯材11の長辺が直線を維持しながら芯材11の短辺が円弧を描くように真空断熱材10を曲げることが、芯材11の短辺が直線を維持しながら芯材11の長辺が円弧を描くように真空断熱材10を曲げることよりも、小さい力で容易にできる。
なお、本実施の形態では、交絡部9が芯材11の片方の伝熱面7上に形成されていることから、芯材11の2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、真空断熱材10を配置することが好ましい。
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における繊維断熱体を図1のA−A線にて切断した場合の断面図、図6は同実施の形態における繊維断熱体を図1のB−B線にて切断した場合の断面図である。
図5および図6に示すように、繊維断熱体6は、対向する2つの長方形の伝熱面7を有する繊維の集合体8と、一方の伝熱面7上に長辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有する第1の糸14と、他方の伝熱面7上に長辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有し第1の糸14と交絡する第2の糸15と、第1の糸14と第2の糸15とが絡み合って形成された交絡部9とを備え、繊維の集合体8内に交絡部9が形成されている。
以上のように構成された繊維断熱体6は、交絡部9によって第1の糸14と第2の糸15に張力が生じ、一方の伝熱面7に露出した第1の糸14と他方の伝熱面7に露出した第2の糸15との間に位置する繊維の集合体8が拘束されるため、繊維の集合体8の嵩密度が部分的に大きくなり、繊維の集合体8に剛性が付与される。よって、繊維断熱体6を袋内へ挿入する作業等の取り扱いが容易となる。
また、本実施の形態の繊維断熱体6は、伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向と平行であるので、繊維断熱体6の長辺方向より短辺方向が曲げやすい。言い換えると、繊維断熱体6の長辺が直線を維持しながら繊維断熱体6の短辺が円弧を描くように繊維断熱体6を曲げることが、繊維断熱体6の短辺が直線を維持しながら繊維断熱体6の長辺が円弧を描くように繊維断熱体6を曲げることよりも、小さい力で容易にできる。
なお、本実施の形態では、第1の糸14を第2の糸15よりも太くしているので、繊維断熱体6を配置する場合は、第1の糸14と第2の糸15の繊度の違いから、糸14,15に耐久性の差、2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、繊維断熱体6を配置することが好ましい。
なお、図7に示すように、伝熱面7と伝熱面7上に露出した糸14,15との間に、シート16を介在させても構わない。また、シート16は片方の伝熱面7側のみに設けても構わないが、両方の伝熱面7側に設ける方が望ましい。
伝熱面7と伝熱面7上に露出した糸14,15との間に、シート16を介在させた場合は、糸14,15によってシート16が繊維の集合体8とともに厚み方向に圧縮されるため、伝熱面7上に糸14,15が露出しない場所であっても、繊維の集合体8が厚み方向に圧縮される作用を有する。上記作用により、繊維断熱体6の剛性が付与され、取り扱いが容易となり、また、繊維断熱体6の表面性が改善する。
なお、シート16の材質に関しては、樹脂フィルムのような柔軟性のあるシートでも、平面性を維持可能な固いシートでも良く、特に指定するものではないが、孔のないシートであれば糸を通すための針が貫通可能な材料である必要があり、糸を通すための針が貫通可能な多数の孔があるシートであれば糸を通すための針が貫通し難い固い材料でも良く、ただ、糸を通すための針や糸によって割れたり破れたりし難いシートである必要がある。例えば、プラスチックシートや織布や不織布や、網目状に編んだメッシュ状のシートや、無機繊維シートなどが利用可能であるが、比較的安価なポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムや不織布がより望ましい。
また、シート16の厚みに関しても、特に指定するものではないが、希望する表面粗度や縫製時にかかる糸の張力に応じて自由に選定できる。
さらに、繊維断熱体6に付着した短い繊維や異物の落下を防止するために、繊維断熱体6の伝熱面7全体を覆うようシート16を設けることがより望ましい。
また、本発明の実施の形態1と同様に、本実施の形態の繊維断熱体6からなる芯材11と水分吸着剤12とをラミネートフィルム13内で減圧密封した真空断熱材10は、芯材11が厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を併せ持つため、真空断熱材10の内部真空度を検査する工程や、真空断熱材10を所定の形状へ変形させるための溝付け加工、折り曲げ加工、曲げ加工などの二次加工が容易となる。さらに、芯材11に金属箔を用いないことから、特許文献1のようにラミネートフィルム13を介して芯材11へ熱が移動し難くなるため、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、繊維断熱体6の伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向と平行であるので、芯材11の長辺方向より短辺方向が曲げやすい。言い換えると、芯材11の長辺が直線を維持しながら芯材11の短辺が円弧を描くように真空断熱材10を曲げることが、芯材11の短辺が直線を維持しながら芯材11の長辺が円弧を描くように真空断熱材10を曲げることよりも、小さい力で容易にできる。
なお、本実施の形態では、第1の糸14を第2の糸15よりも太くしているので、真空断熱材10を配置する場合は、第1の糸14と第2の糸15の繊度の違いから、芯材11の2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、真空断熱材10を配置することが好ましい。
(実施の形態3)
図8は本発明の実施の形態3における繊維断熱体を図1のA−A線にて切断した場合の断面図、図9は同実施の形態における繊維断熱体を図1のB−B線にて切断した場合の断面図である。
図8および図9に示すように、繊維断熱体6は、対向する2つの長方形の伝熱面7を有する繊維の集合体8と、一方の伝熱面7上に長辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有する第1の糸14と、他方の伝熱面7上に長辺方向と平行な方向に露出し繊維の集合体8内に埋没する部分がほとんど無く第1の糸14と交絡する第2の糸15と、第1の糸14と第2の糸15とが絡み合って形成された交絡部9とを備え、第2の糸15が露出する方の伝熱面7上に交絡部9が形成されている。
以上のように構成された繊維断熱体6は、交絡部9によって第1の糸14と第2の糸15に張力が生じ、一方の伝熱面7に露出した第1の糸14と他方の伝熱面7に露出した第2の糸15との間に位置する繊維の集合体8が拘束されるため、繊維の集合体8の嵩密度が部分的に大きくなり、繊維の集合体8に剛性が付与される。よって、繊維断熱体6を袋内へ挿入する作業等の取り扱いが容易となる。さらに、第1の糸14は第2の糸15と二重に交絡しており、繊維断熱体6を所望の寸法に裁断した後も交絡部9が繊維の集合体8を圧縮し続けるため、繊維断熱体6の取り扱いがより容易となる。
また、本実施の形態の繊維断熱体6は、伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向と平行であるので、繊維断熱体6の長辺方向より短辺方向が曲げやすい。言い換えると、繊維断熱体6の長辺が直線を維持しながら繊維断熱体6の短辺が円弧を描くように繊維断熱体6を曲げることが、繊維断熱体6の短辺が直線を維持しながら繊維断熱体6の長辺が円弧を描くように繊維断熱体6を曲げることよりも、小さい力で容易にできる。
なお、本実施の形態では、交絡部9が第2の糸15の露出する方の伝熱面7上に形成されていることから、2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、繊維断熱体6を配置することが好ましい。
また、本発明の実施の形態1と同様に、本実施の形態の繊維断熱体6からなる芯材11と水分吸着剤12とをラミネートフィルム13内で減圧密封した真空断熱材10は、芯材11が厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を併せ持つため、真空断熱材10の内部真空度を検査する工程や、真空断熱材10を所定の形状へ変形させるための溝付け加工、折り曲げ加工、曲げ加工などの二次加工が容易となる。さらに、芯材11に金属箔を用いないことから、特許文献1のようにラミネートフィルム13を介して芯材11へ熱が移動し難くなるため、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、繊維断熱体6の伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向と平行であるので、芯材11の長辺方向より短辺方向が曲げやすい。言い換えると、芯材11の長辺が直線を維持しながら芯材11の短辺が円弧を描くように真空断熱材10を曲げることが、芯材11の短辺が直線を維持しながら芯材11の長辺が円弧を描くように真空断熱材10を曲げることよりも、小さい力で容易にできる。
なお、本実施の形態では、交絡部9が芯材11における第2の糸15の露出する方の伝熱面7上に形成されていることから、芯材11の2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、真空断熱材10を配置することが好ましい。
(実施の形態4)
図10は本発明の実施の形態4における繊維断熱体の平面図、図11は同実施の形態における繊維断熱体を図10のC−C線にて切断した場合の断面図、図12は同実施の形態における繊維断熱体を図10のD−D線にて切断した場合の断面図である。
図10から図12に示すように、繊維断熱体6は、対向する2つの長方形の伝熱面7を有する繊維の集合体8と、一方の伝熱面7上に長辺方向または短辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有する第1の糸14と、他方の伝熱面7上に長辺方向または短辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有し第1の糸14と交絡する第2の糸15と、第1の糸14と第2の糸15とが絡み合って形成された交絡部9とを備え、繊維の集合体8内に交絡部9が形成されている。
また、本実施の形態では、第1の糸14を第2の糸15よりも太くしており、繊維断熱体6の伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向または短辺方向と平行に伝熱面7の外周から内周に向かう渦巻き(螺旋)形状になっている。
以上のように構成された繊維断熱体6は、交絡部9によって第1の糸14と第2の糸15に張力が生じ、一方の伝熱面7に露出した第1の糸14と他方の伝熱面7に露出した第2の糸15との間に位置する繊維の集合体8が拘束されるため、繊維の集合体8の嵩密度が部分的に大きくなり、繊維の集合体8に剛性が付与される。よって、繊維断熱体6を袋内へ挿入する作業等の取り扱いが容易となる。
また、本実施の形態の繊維断熱体6は、伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の形状に合わせて伝熱面7の外周から内周に向かう渦巻き(螺旋)形状になっているので、球面のような三次元的な凹凸面への配設が容易である。
なお、本実施の形態では、第1の糸14を第2の糸15よりも太くしているので、繊維断熱体6を配置する場合は、第1の糸14と第2の糸15の繊度の違いから、糸14,15に耐久性の差、2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、繊維断熱体6を配置することが好ましい。
また、本発明の実施の形態1と同様に、本実施の形態の繊維断熱体6からなる芯材11と水分吸着剤12とをラミネートフィルム13内で減圧密封した真空断熱材10は、芯材11が厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を併せ持つため、真空断熱材10の内部真空度を検査する工程や、真空断熱材10を所定の形状へ変形させるための溝付け加工、折り曲げ加工、曲げ加工などの二次加工が容易となる。さらに、芯材11に金属箔を用いないことから、特許文献1のようにラミネートフィルム13を介して芯材11へ熱が移動し難くなるため、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、繊維断熱体6の伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の形状に合わせて伝熱面7の外周から内周に向かう渦巻き(螺旋)形状になっているので、球面のような三次元的な凹凸面への配設が容易である。
なお、本実施の形態では、第1の糸14を第2の糸15よりも太くしているので、真空断熱材10を配置する場合は、第1の糸14と第2の糸15の繊度の違いから、芯材11の2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、真空断熱材10を配置することが好ましい。
(実施の形態5)
図13は本発明の実施の形態5における繊維断熱体の平面図、図14は同実施の形態における繊維断熱体を図13のE−E線にて切断した場合の断面図、図15は同実施の形態における繊維断熱体を図13のF−F線にて切断した場合の断面図である。
図13から図15に示すように、繊維断熱体6は、対向する2つの長方形の伝熱面7を有する繊維の集合体8と、一方の伝熱面7上に長辺方向または短辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有する第1の糸14と、他方の伝熱面7上に長辺方向または短辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有し第1の糸14と交絡する第2の糸15と、第1の糸14と第2の糸15とが絡み合って形成された交絡部9とを備え、繊維の集合体8内に交絡部9が形成されている。
また、本実施の形態では、第1の糸14を第2の糸15よりも太くしており、繊維断熱体6の伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向または短辺方向と平行な格子状になっている。
以上のように構成された繊維断熱体6は、交絡部9によって第1の糸14と第2の糸15に張力が生じ、一方の伝熱面7に露出した第1の糸14と他方の伝熱面7に露出した第2の糸15との間に位置する繊維の集合体8が拘束されるため、繊維の集合体8の嵩密度が部分的に大きくなり、繊維の集合体8に剛性が付与される。よって、繊維断熱体6を袋内へ挿入する作業等の取り扱いが容易となる。
また、本実施の形態の繊維断熱体6は、伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向または短辺方向と平行な格子状になっているので、隣接する長辺方向の仕上り線の間隔と隣接する短辺方向の仕上り線の間隔をそれぞれ適切に調節することにより、繊維断熱体6の剛性や、繊維断熱体6の伝熱面の平面性、伝熱面7の長辺方向の曲げやすさ、または伝熱面7の短辺方向の曲げやすさを調節できる。
なお、本実施の形態では、第1の糸14を第2の糸15よりも太くしているので、繊維断熱体6を配置する場合は、第1の糸14と第2の糸15の繊度の違いから、糸14,15に耐久性の差、2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、繊維断熱体6を配置することが好ましい。
また、本発明の実施の形態1と同様に、本実施の形態の繊維断熱体6からなる芯材11と水分吸着剤12とをラミネートフィルム13内で減圧密封した真空断熱材10は、芯材11が厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を併せ持つため、真空断熱材10の内部真空度を検査する工程や、真空断熱材10を所定の形状へ変形させるための溝付け加工、折り曲げ加工、曲げ加工などの二次加工が容易となる。さらに、芯材11に金属箔を用いないことから、特許文献1のようにラミネートフィルム13を介して芯材11へ熱が移動し難くなるため、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、繊維断熱体6の伝熱面7上に露出した糸14,15で構成される仕上り線が、伝熱面7の長辺方向または短辺方向と平行な格子状になっているので、隣接する長辺方向の仕上り線の間隔と隣接する短辺方向の仕上り線の間隔をそれぞれ適切に調節することにより、繊維断熱体6からなる芯材11の剛性や、繊維断熱体6からなる芯材11の伝熱面の平面性、芯材11の伝熱面7の長辺方向の曲げやすさ、または芯材11の伝熱面7の短辺方向の曲げやすさを調節できる。
なお、本実施の形態では、第1の糸14を第2の糸15よりも太くしているので、真空断熱材10を配置する場合は、第1の糸14と第2の糸15の繊度の違いから、芯材11の2つの伝熱面7の平面性の差が生じる可能性があるので、どちらの伝熱面7をどちら側にするのが効果的かを考慮して、真空断熱材10を配置することが好ましい。
(実施の形態6)
図16は本発明の実施の形態6における繊維断熱体の平面図、図17は同実施の形態における繊維断熱体を図16のG−G線にて切断した場合の断面図、図18は同実施の形態における繊維断熱体を図16のH−H線にて切断した場合の断面図、図19は同実施の形態における繊維断熱体を芯材に用いた真空断熱材の断面図である。
図16から図18に示すように、繊維断熱体6は、実施の形態2における繊維断熱体6(対向する2つの長方形の伝熱面7を有する繊維の集合体8と、一方の伝熱面7上に長辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有する第1の糸14と、他方の伝熱面7上に長辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有し第1の糸14と交絡する第2の糸15と、第1の糸14と第2の糸15とが絡み合って形成された交絡部9とを備え、繊維の集合体8内に交絡部9が形成されている繊維断熱体6)を、繊維断熱体6の厚み方向に2つ積層する(2つ重ねる)と共に、厚み方向に隣接する2つの実施の形態2における繊維断熱体6のうち、一方の実施の形態2における繊維断熱体6の伝熱面7に露出した糸14,15が、他方の実施の形態2における繊維断熱体6の伝熱面7に露出した糸14,15と接触しないようにしたものである。
また、図19に示すように、真空断熱材10は、実施の形態2における繊維断熱体6を厚み方向に2つ積層した上記構成の本実施の形態の繊維断熱体6からなる芯材11と水分吸着剤12とを袋状に加工したラミネートフィルム13内へ挿入し、芯材11(繊維断熱体6)と水分吸着剤12とをラミネートフィルム13内で減圧密封したものである。
以上のように構成された真空断熱材10は、芯材11が厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を併せ持つため、真空断熱材10の内部真空度を検査する工程や、真空断熱材10を所定の形状へ変形させるための溝付け加工、折り曲げ加工、曲げ加工などの二次加工が容易となる。さらに、芯材11に金属箔を用いないことから、特許文献1のようにラミネートフィルム13を介して芯材11へ熱が移動し難くなるため、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、芯材11が真空断熱材10の厚み方向に分割されている(芯材11が2つの繊維断熱体6を厚み方向に2つ積層した(2つ重ねた)構成になっている)ため、芯材11の伝熱面7を被断熱物の形状に沿って配置しやすくなり、真空断熱材10の取り扱いが容易となる。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、厚み方向に隣接する2つの芯材11のうち、一方の芯材11の伝熱面7に露出した糸14,15が、他方の芯材11の伝熱面7に露出した糸14,15と接触していない。芯材11中に熱橋として存在する糸14,15が、隣接する他の芯材11を構成する糸14,15と接触しないため、熱橋が真空断熱材10の厚み方向に対して不連続となる作用を有する。上記作用により、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
(実施の形態7)
図20は本発明の実施の形態7における繊維断熱体の平面図、図21は同実施の形態における繊維断熱体を図20のI−I線にて切断した場合の断面図、図22は同実施の形態における繊維断熱体を図20のJ−J線にて切断した場合の断面図、図23は同実施の形態における繊維断熱体を芯材に用いた真空断熱材の断面図である。
図20から図22に示すように、繊維断熱体6は、実施の形態2における繊維断熱体6(対向する2つの長方形の伝熱面7を有する繊維の集合体8と、一方の伝熱面7上に長辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有する第1の糸14と、他方の伝熱面7上に長辺方向と平行な方向に露出する部分と繊維の集合体8内に埋没する部分とを有し第1の糸14と交絡する第2の糸15と、第1の糸14と第2の糸15とが絡み合って形成された交絡部9とを備え、繊維の集合体8内に交絡部9が形成されている繊維断熱体6)を、繊維断熱体6の厚み方向に2つ積層する(2つ重ねる)と共に、厚み方向に隣接する2つの実施の形態2における繊維断熱体6のうち、一方の実施の形態2における繊維断熱体6の伝熱面7に露出した糸14,15が、他方の実施の形態2における繊維断熱体6の伝熱面7に露出した糸14,15と接触しないようにし、厚み方向に隣接する繊維断熱体6同士(厚み方向に積層した(重ねた)繊維断熱体6同士)を、固定用糸17で縫製して固定したものである。
言い換えると、本実施の形態の繊維断熱体6は、実施の形態6の厚み方向に隣接する繊維断熱体6同士(厚み方向に積層した(重ねた)繊維断熱体6同士)を、固定用糸17で縫製して固定したものである。
また、図23に示すように、真空断熱材10は、実施の形態6の厚み方向に隣接する繊維断熱体6同士(厚み方向に積層した(重ねた)繊維断熱体6同士)を、固定用糸17で縫製して固定した芯材11と水分吸着剤12とを袋状に加工したラミネートフィルム13内へ挿入し、芯材11(繊維断熱体6)と水分吸着剤12とをラミネートフィルム13内で減圧密封したものである。
以上のように構成された真空断熱材10は、芯材11が厚み方向に対して剛性の高い箇所と柔軟な箇所を併せ持つため、真空断熱材10の内部真空度を検査する工程や、真空断熱材10を所定の形状へ変形させるための溝付け加工、折り曲げ加工、曲げ加工などの二次加工が容易となる。さらに、芯材11に金属箔を用いないことから、特許文献1のようにラミネートフィルム13を介して芯材11へ熱が移動し難くなるため、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、芯材11が真空断熱材10の厚み方向に分割されている(芯材11が2つの繊維断熱体6を厚み方向に2つ積層した(2つ重ねた)構成になっている)ため、芯材11の伝熱面7を被断熱物の形状に沿って配置しやすくなり、真空断熱材10の取り扱いが容易となる。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、厚み方向に隣接する2つの芯材11のうち、一方の芯材11の伝熱面7に露出した糸14,15が、他方の芯材11の伝熱面7に露出した糸14,15と接触していない。芯材11中に熱橋として存在する糸14,15が、隣接する他の芯材11を構成する糸14,15と接触しないため、熱橋が真空断熱材10の厚み方向に対して不連続となる作用を有する。上記作用により、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
また、本実施の形態の真空断熱材10は、芯材11同士を部分的に固定用糸17で縫製して固定することで、芯材11を厚み方向に分割しない芯材11に比べて熱橋が小さくなる作用を有する。また、芯材11同士を固定しない場合に比べて、一緒にする複数の芯材11の取り扱いが容易となる。上記作用により、真空断熱材10の取り扱いが容易となり、また、真空断熱材10の断熱効果が高く保持される。
以上のように構成された繊維断熱体6に関する取り扱い性と、真空断熱材10の断熱効果について確認した結果を、実施例1から実施例3に示し、比較例を、比較例1および比較例2に示す。
なお、真空断熱材10の断熱効果を明確にするため、本実施の形態では、繊維断熱材6を用いて作製した真空断熱材10の熱伝導率を指標とした。なお熱伝導率の計測は熱伝導率計(英弘精機株式会社製Auto−Λ HC−073)を用い、平均温度は24℃とした。
次に、本発明の実施の形態における真空断熱材10の作製方法を以下に記載する。
繊維断熱材6を、幅200mm、長さ200mmとなるよう芯材11を切り出し、この芯材11を水分吸着剤12とともにラミネートフィルム13からなる袋内に収納した。そして、この袋を真空チャンバー内へセットし、真空チャンバー内の真空度が5Paに到達した直後に、袋の開口部を封止することで、真空断熱材10を作製した。
なお、真空断熱材10の断熱効果の判断は、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる一般的な真空断熱材(比較例2)の熱伝導率と比較し、比較例3に比べて同等または、それ以下の数値であれば効果があると判断した。
(実施例1)
繊度が110dtexのナイロン糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を本縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を5mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、交絡部および伝熱面上に露出した糸が図1、図5、図6の形状となる繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分で、それぞれ10mm、15mmであり、交絡部の総数を伝熱面の面積で除した数字(以下、針糸密度と省略)は1.0個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、繊維断熱体の端部の厚みが18mmまで復元したが、繊維断熱体全体にわたって厚みが復元しなかったため、ハンドリングは良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0020W/mKであり、後に比較例2で示すように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(実施例2)
繊度が110dtexのナイロン糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を5mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、交絡部および伝熱面上に露出した糸が図1、図8、図9の形状となる繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ10mm、14mmであり、針糸密度は1.0個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0022W/mKであり、後に比較例2で示すように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(実施例3)
繊度が110dtexのナイロン糸を第1の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を単環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を5mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、交絡部および伝熱面上に露出した糸が図5の形状となる繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ11mm、16mmであり、針糸密度は1.0個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に一部の糸が解けたために、糸の交絡作用が十分に得られない場所が見られ、繊維断熱体端部の厚みが20mmにまで復元した。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0023W/mKであり、後に比較例2で示すように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出したところ、裁断後に一部の糸が解けた部分の伝熱面に小さな波打ちが確認できたが、操作の前後で真空断熱材の表面性が大きく変化することは無かった。
(比較例1)
繊度が110dtexのナイロン糸を第1の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)をハンドステッチミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を5mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、交絡部および伝熱面上に露出した糸が図1および図24の形状となる繊維断熱体を得た。
しかし、ハンドステッチでは糸同士の交絡作用が無いため、グラスウールの圧縮を解いた直後からグラスウールは元の厚みまで復元しようとした。結果、この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ54mm、63mmであったため、ハンドリングは非常に困難であった。これは、これは1本の糸でグラスウールを縫製したため、交絡部によるグラスウールの十分な圧縮効果が得られないことが原因である。
次に、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0021W/mKであり、後に比較例2で示すように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
しかし、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出したところ、真空断熱材の芯材が大きく波打ち、この操作の前後で真空断熱材の表面性が大きく変化した。
(比較例2)
繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)にホウ酸水からなる無機バインダをグラスウールの重量に対して20重量%となるよう噴霧し、これを熱成形することで断熱材を得た。
この断熱材の厚みは最薄部で10mm、最厚部で12mmであり、ハンドリングは良好であった。
次に、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0026W/mKであった。また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
以上のように構成された繊維断熱材について、縫製方法の違いによる芯材の取り扱い性と真空断熱材の熱伝導率を確認した結果(実施例1〜2および比較例1〜3)を(表1)に示す。
(表1)の結果から、対向する2つの伝熱面を有する繊維の集合体と、いずれか一方の前記伝熱面に露出する部分と前記繊維の集合体内に埋没する部分とを有する糸と、前記糸が絡み合った交絡部とを備え、前記交絡部を前記繊維の集合体内または前記伝熱面上に設けた繊維断熱体、または、対向する2つの伝熱面を有する繊維の集合体と、一方の前記伝熱面上に露出する部分と前記繊維の集合体内に埋没する部分とを有する第1の糸と、他方の前記伝熱面上に露出する部分と前記繊維の集合体内に埋没する部分とを有し前記第1の糸と交絡する第2の糸と、前記第1の糸と前記第2の糸とが絡み合って形成された交絡部とを備え、前記交絡部を前記繊維の集合体内または前記伝熱面上に設けた繊維断熱体は、糸の交絡作用または第1の糸と第2の糸の交絡作用により形成された交絡部が、繊維の集合体を圧縮し、その圧縮状態を保持しつづける効果があることを確認した。
特に、二重環縫いによる交絡部は、第1の糸と第2の糸との交絡作用がより強く、グラスウールの圧縮状態を保持し続ける効果が非常に高いことを確認した。
以上の効果により、取り扱いが容易でありまた、断熱効果の高い真空断熱材を提供することが可能となる。
次に、本発明の繊維断熱材および真空断熱材において、糸の繊度を一定とし、交絡部の間隔と伝熱面上に露出した糸の間隔を変更したときの繊維断熱体の取り扱い性と、真空断熱材の断熱効果について確認した結果を、実施例4から実施例8に示し、比較例を、比較例3および比較例4に示す。なお、交絡部および伝熱面上に露出した糸は図8に示す二重環縫いにより形成した。
(実施例4)
繊度が205dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を2mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ9mm、16mmであり、針糸密度は2.5個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0024W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(実施例5)
繊度が205dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を3mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ9mm、15mmであり、針糸密度は1.67個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0021W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(実施例6)
繊度が205dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を5mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ10mm、15mmであり、針糸密度は1.0個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0020W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(実施例7)
繊度が205dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を5mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が10mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ10mm、12mmであり、針糸密度は2.0個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0022W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(実施例8)
繊度が205dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を10mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が25mm間隔に配置されるようグラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ11mm、21mmであり、針糸密度は0.25個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0019W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(比較例3)
繊度が205dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を3mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が10mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ10mm、12mmであり、針糸密度は2.92個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0027W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも悪化した。これは、針糸密度が増加したため、第1の糸および第2の糸を通過する熱の総量が増加したことが原因である。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(比較例4)
繊度が205dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を10mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が60mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ11mm、36mmであり、針糸密度は0.17個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無いが、繊維断熱体全体が柔軟であり、ハンドリングは非常に困難であった。これは、針糸密度が非常に小さいため、糸によるグラスウールの十分な圧縮効果が不足したことが原因である。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0022W/mKであり、後に比較例2で示すように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
しかし、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出したところ、真空断熱材の芯材が大きく波打ち、この操作の前後で真空断熱材の表面性が大きく変化した。
以上のように構成された繊維断熱体について、針糸密度の違いによる繊維断熱体の取り扱い性と真空断熱材の熱伝導率を確認した結果(実施例4〜8および比較例3〜4)を(表2)と(表3)に示す。
(表2)、(表3)の結果から、繊維断熱体は、交絡部の総数を一方の伝熱面の面積で除した値を0.2個/cm
2以上2.5個/cm
2以下とし、かつ、芯材の厚み方向に見た場合に交絡部が伝熱面中に分散するよう配置したことで、糸が芯材中の熱橋とならないことを確認した。
以上の効果により、取り扱いが容易な繊維断熱体と、取り扱いが容易でありかつ断熱効果の高い真空断熱材を提供することが可能となる。
次に、本発明の繊維断熱材および真空断熱材において、交絡部の間隔と伝熱面上に露出した糸同士の間隔を一定とし、糸の繊度を変更したときの繊維断熱体の取り扱い性と、真空断熱材の断熱効果について確認した結果を、実施例9から実施例12に示し、比較例を、比較例5から比較例8に示す。なお、交絡部および伝熱面上に露出した糸は図8に示す二重環縫いにより形成した。
(実施例9)
繊度が120dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を2mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ10mm、15mmであり、針糸密度は2.5個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0020W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(実施例10)
実施例10として、実施例4を用いた。
(実施例11)
繊度が110dtexのナイロン糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を2mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ11mm、15mmであり、針糸密度は2.5個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0018W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(実施例12)
繊度が180dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を2mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるようグラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ10mm、14mmであり、針糸密度は2.5個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0022W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(比較例5)
繊度が255dtexの撚り糸からなるポリエチレンテレフタレート糸を解繊することで繊度を78dtexとした糸を第1の糸および第2の糸とした。また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を2mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
しかし、本比較例に用いた第1の糸および第2の糸は非常に細いため、グラスウールの圧縮を解いた直後に繊維断熱体のあらゆる箇所で第1の糸および第2の糸の破断が見られ、グラスウールは元の厚みまで復元しようとした。
結果、この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ23mm、56mmであった。このため、ハンドリングは困難であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0021W/mKであり、後に比較例2で示すように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも良好であった。
しかし、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出したところ、真空断熱材の芯材が大きく波打ち、この操作の前後で真空断熱材の表面性が大きく変化した。
(比較例6)
繊度が255dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を2mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ10mm、12mmであり、針糸密度は2.5個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0027W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも悪化した。これは、糸の断面積が増加したため、第1の糸および第2の糸を通過する熱の総量が増加したことが原因である。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(比較例7)
繊度が310dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を2mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ10mm、14mmであり、針糸密度は2.5個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0030W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも悪化した。これは、糸の断面積が増加したため、第1の糸および第2の糸を通過する熱の総量が増加したことが原因である。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
(比較例8)
繊度が645dtexのポリエチレンテレフタレート糸を第1の糸および第2の糸とし、また、繊維の集合体として目付量が1900g/m2のグラスウール(幅300mm、長さ300mm、高さ100mm)を二重環縫いミシンにセットした。
次に、連続した糸で構成される交絡部の間隔を2mmとし、また伝熱面上において、繊維の集合体を隔てて離間する伝熱面上に露出した糸同士が20mm間隔に配置されるよう、グラスウールを圧縮しながら縫製を行い、繊維断熱体を得た。
この繊維断熱体の厚みは、最薄部となる交絡部付近および最厚部となる未縫製部分でそれぞれ9mm、13mmであり、針糸密度は2.5個/cm2であった。
次に、この繊維断熱体を幅200mm、長さ200mmとなるようカッターで裁断したところ、裁断後に繊維断熱体の厚みが復元することは無く、ハンドリングも良好であった。
次に、繊維断熱体を芯材とし、この芯材と酸化カルシウムよりなる水分吸着剤とを、ラミネートフィルムよりなる袋内へ挿入し、真空包装機を用いて真空断熱材を作製した。
この真空断熱材の熱伝導率を計測したところ、0.0035W/mKであり、前述の比較例2で示したように、無機バインダでグラスウールを成形した芯材からなる真空断熱材の熱伝導率よりも悪化した。これは、糸の断面積が増加したため、第1の糸および第2の糸を通過する熱の総量が増加したことが原因である。
また、この真空断熱材を減圧容器の中にセットし、減圧容器内を真空断熱材が膨張する真空度まで排気したのち、減圧容器内に空気を戻して真空断熱材を取り出した。この操作の前後で真空断熱材の表面性に大きな変化は見られなかった。
以上のように構成された繊維断熱材について、繊度の違いによる繊維断熱体の取り扱い性と真空断熱材の熱伝導率を確認した結果(実施例9〜12および比較例5〜8)を(表4)と(表5)に示す。
(表4)、(表5)の結果から、本発明の実施の形態3における繊維断熱体は、第1の糸および第2の糸の繊度を、それぞれ110dtex以上205dtex以下とすることで、繊維が芯材中の熱橋とならないことを確認した。
以上の効果により、取り扱いが容易でありまた、断熱効果の高い真空断熱材を提供することが可能となる。