JP2010241848A - セルロース樹脂組成物、成形体及び電気電子機器用筺体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭化水素基及び炭素数が7〜18の脂肪族アシル基を有するセルロースエーテルエステルと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩とを含有するセルロース樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
特許文献3には、セルロースエステル、可塑剤、及びタルクやマイカ等の充填剤等を含む成形材料が記載されている。特許文献2においては、このセルロースエステル組成物によれば溶融成形時における分子量低下及び着色等を抑制できることが記載されている。
本発明の目的は、成形加工性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、適度な柔軟性を有するセルロース樹脂組成物を提供することである。
すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
(1)炭化水素基及び炭素数が7〜18の脂肪族アシル基を有するセルロースエーテルエステルと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩とを含有するセルロース樹脂組成物。
(2)前記炭化水素基の炭素数が1〜7である、上記(1)に記載のセルロース樹脂組成物。
(3)前記脂肪族アシル基が分岐構造を有する、上記(1)又は(2)に記載のセルロース誘導体。
(4)前記脂肪族アシル基の炭素数が7〜9である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物。
(5)前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩がカルシウム又はマグネシウムを含む無機塩である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物。
(6)前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩が炭酸カルシウム、珪酸マグネシウム、及び水酸化マグネシウムのいずれかである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物。
(7)前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩の含有量が0.1〜50質量%である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物を成形して得られる成形体。
(9)上記(8)に記載の成形体から構成される電気電子機器用筺体。
さらに、本発明のセルロース樹脂組成物によって形成された成形体は、良好な耐熱性、機械強度等を有しており、電気電子機器の内装または外装部品、自動車、機械部品、住宅・建築用材料として好適に使用することができる。また、植物由来の樹脂により形成されているため、温暖化防止に貢献できる素材として、従来の石油由来の樹脂に代替できる。
本発明に係るセルロース樹脂組成物は、炭化水素基及び炭素数が7〜18の脂肪族アシル基を有するセルロースエーテルエステルを含有する。
本発明に係るセルロースエーテルエステルは、セルロース((C6H10O5)n)の置換可能な3つの水酸基(β−グルコース中の2位、3位、及び6位の水酸基)の水素原子の少なくとも一部が、炭化水素基又は前記炭素数の脂肪族アシル基によって置換されている。
本発明にいう「セルロース」((C6H10O5)n)とは、多数のグルコースがβ−1,4−グリコシド結合によって重合した高分子化合物であって、セルロースのグルコース環における2位、3位、6位の炭素原子に結合している水酸基が無置換であるものを意味する。
セルロースエーテルエステルに含まれる複数の繰り返し単位において、複数あるR2、R3及びR6はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
炭化水素基と前記脂肪族アシル基による置換は、R2、R3及びR6の一部でよく、エステル基やカルバメート基でないR2、R3及びR6は水酸基またはその他の置換基であってよい。
また、本発明のセルロースエーテルエステルは、ひとつの繰り返し単位において前記炭化水素基及び脂肪族アシル基の両方を含有する必要はない。
例えば、セルロースエーテルエステルは、(1)R2、R3及びR6の一部が炭化水素基で置換されている繰り返し単位と、R2、R3及びR6の一部が脂肪族アシル基で置換されている繰り返し単位とから構成されていてもよいし、(2)ひとつの繰り返し単位のR2、R3及びR6に炭化水素基及び脂肪族アシル基の両方が置換されている単一の単量体から構成されていてもよい。さらには、(3)一般式(1)で表される繰り返し単位であって異なる種類の繰り返し単位が、ランダムに結合していてもよい。
なお、重合体の一部には、無置換の繰り返し単位(すなわち、前記一般式(1)において、R2、R3及びR6すべてが水素原子である繰り返し単位)を含んでいてもよい。
また、本発明に係るセルロースエーテルエステルは、成形体としても優れた強度及び耐熱性を発現することができる。さらには、セルロースは完全な植物由来成分であるため、カーボンニュートラルであり、環境に対する負荷を大幅に低減することができる。
脂肪族基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
芳香族基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記の中でも、好ましくは炭素数1〜7(より好ましくは1〜4)の脂肪族基である。より好ましくはメチル基又はエチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
脂肪族アシル基の脂肪族部位は、直鎖構造であってもよいし、分岐構造又は環状構造を有していてもよい。
具体的には、ヘプタノイル基、2−メチルヘキサノイル基、3−メチルヘキサノイル基、4−メチルヘキサノイル基、5−メチルヘキサノイル基、2,2−ジメチルペンタノイル基、2,3−ジメチルペンタノイル基、3,3−ジメチルペンタノイル基、2−エチルペンタノイル基、シクロヘキサノイル基、オクタノイル基、2−メチルヘプタノイル基、3−メチルヘプタノイル基、4−メチルヘプタノイル基、5−メチルヘプタノイル基、6−メチルヘプタノイル基、2,2−ジメチルヘキサノイル基、2,3−ジメチルヘキサノイル基、3,3−ジメチルヘキサノイル基、2−エチルヘキサノイル基、2−プロピルペンタノイル基、ノナノイル基、2−メチルオクタノイル基、3−メチルオクタノイル基、4−メチルオクタノイル基、5−メチルオクタノイル基、6−メチルオクタノイル基、2,2−ジメチルヘプタノイル基、2,3−ジメチルヘプタノイル基、3,3−ジメチルヘプタノイル基、2−エチルヘプタノイル基、2−プロピルヘキサノイル基、2−ブチルペンタノイル基、デカノイル基、2−メチルノナノイル基、3−メチルノナノイル基、4−メチルノナノイル基、5−メチルノナノイル基、6−メチルノナノイル基、7−メチルノナノイル基、2,2−ジメチルオクタノイル基、2,3−ジメチルオクタノイル基、3,3−ジメチルオクタノイル基、2−エチルオクタノイル基、2−プロピルヘプタノイル基、2−ブチルヘキサノイル基、2−プロピルオクタノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、2−ヘキシルデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、2−ペンチルドデカノイル基、オクタデカノイル基、cis-9-オクタデカノイル基、11-オクタデカノイル基、cis,cis-9,12-オクタデカジエノイル基、9,12,15-オクタデカントリエノイル基、6,9,12-オクタデカトリエノイル基、9,11,13-オクタデカトリエノイル基等が挙げられる。
分岐の脂肪族部位を有する脂肪族アシル基としては、2−プロピルペンタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、2−メチルヘプタノイル基等が特に好ましい。
炭化水素基又は脂肪族アシル基がさらなる置換基を有し、その置換基に炭素が含まれる場合、その置換基の炭素数は、炭化水素基又は脂肪族アシル基の炭素数として含めないものとする。
例えば、炭化水素基の置換度DSB(繰り返し単位中、β−グルコース環の2位、3位及び6位の水酸基に対する炭化水素基の数)は、1.0以上とすることができる。好ましくは1.5〜2.5の範囲である。
脂肪族アシル基の置換度DSC(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対する脂肪族アシル基の数)は0.1以上とすることができる。好ましくは0.3〜1.5の範囲である。
置換度を上記範囲とすることにより、耐熱性、脆性等を向上させることができる。
水素原子の置換度DSA(繰り返し単位中、2位、3位及び6位の水酸基が無置換である割合)は0.01〜1.5の範囲とすることができる。好ましくは0.2〜1.2である。DSAを0.01以上とすることにより、樹脂組成物の流動性を向上させることができる。また、DSAを1.5以下とすることにより、樹脂組成物の流動性を向上させたり、熱分解の加速・成形時の樹脂組成物の吸水による発泡等を抑制させたりできる。
なお、各置換度の総和(DSA+DSB+DSC)は3である。
また、重量平均分子量(Mw)は、7000〜5000000の範囲が好ましく、15000〜2500000の範囲がより好ましく、300000〜1500000の範囲がさらに好ましい。
この範囲の平均分子量とすることにより、成形体の成形性、力学強度等を向上させることができる。
分子量分布(MWD)は1.1〜5.0の範囲が好ましく、1.5〜3.5の範囲がより好ましい。この範囲の分子量分布とすることにより、成形性等を向上させることができる。
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。具体的には、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。
好ましい製造方法の態様は、セルロースエーテル(β−グルコース環の2位、3位及び6位の水酸基の水素原子の少なくとも一部が、炭化水素基に置換されたセルロースエーテルエステル)に、塩基存在下、酸クロリド又は酸無水物等を反応させることにより、エステル化する工程を含むものである。
具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、アリルセルロース、ベンジルセルロース等が挙げられる。
セルロースは一般に加熱溶融時に分子量の低下を起こしやすいことが知られている。これは分子内に微小量残留するカルボン酸イオンの影響であると考えられる。これに対し、本発明では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩を配合しているので、成型時の分子量低下を抑制することができ、耐熱性に優れたセルロース樹脂組成物が得られる。
なお、本発明に用いる無機塩としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩を主成分とする天然物(例えば、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)等)や、合成された天然物様化合物(合成ハイドロタルサイト、例えばMg6Al12(OH)16CO3・4H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3・mH2O(m=3〜3.5)、Mg0.7Al0.3O1.15等、合成珪酸マグネシウム(2MgO・6SiO2・xH2O))等も好適である。
具体的には、無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維等の繊維状の無機フィラーや;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが挙げられる。
難燃剤は、特に限定されず、常用のものを用いることができる。例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂との複合時や成形加工時に熱分解してハロゲン化水素が発生して加工機械や金型を腐食させたり、作業環境を悪化させたりすることがなく、また、焼却廃棄時にハロゲンが気散したり、分解してダイオキシン類等の有害物質の発生等によって環境に悪影響を与える可能性が少ないことから、リン含有難燃剤およびケイ素含有難燃剤が好ましい。
これらのリン含有難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのケイ素含有難燃剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記セルロースエーテルエステル以外のポリマーとしては、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーのいずれも用い得るが、成形性の点から熱可塑性ポリマーが好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー(エチレン−プロピレンブロックコポリマーなど)、ポリブテン−1およびポリ−4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートおよびその他の芳香族ポリエステル等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン12等のポリアミド、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリアセタール(ホモポリマーおよび共重合体を含む)、ポリウレタン、芳香族および脂肪族ポリケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性澱粉樹脂、ポリメタクリル酸メチルやメタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂、AES樹脂(エチレン系ゴム強化AS樹脂)、ACS樹脂(塩素化ポリエチレン強化AS樹脂)、ASA樹脂(アクリル系ゴム強化AS樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ビニルエステル系樹脂、無水マレイン酸−スチレン共重合体、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素系ポリマー、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリイミドなどを挙げることができる。また、各種アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、ジエン系ゴム(例えば、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、ブチルゴム、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、その他ポリウレタン系やポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられ、好ましくは、フェノール系酸化防止剤である。
フェノール系酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス3114等を好適に使用できる。
成形方法としては、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形等が挙げられる。
加熱温度は、通常160〜260℃程度であり、好ましくは180〜240℃程度である。
[セルロースエーテルエステル(P−1)の合成]
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコにメチルセルロース(和光純薬製:メチル置換度1.8)80g、ピリジン1500mLを量り取り、室温で攪拌した。ここに水冷下、2−エチルヘキサノイルクロリド160mLをゆっくりと滴下し、さらに60℃で6時間攪拌した。反応後、室温に戻し、氷冷下、メタノール200mLを加えてクエンチした。反応溶液を水12Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノール溶媒で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することによりセルロースエーテルエステル(P−1)を白色粉体として得た(93.3g)。
実施例1において、2−エチルヘキサノイルクロリドの量を72mLに変更するほかは同様にして、セルロースエーテルエステル(P−2)を得た。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた5Lの三ツ口フラスコにメチルセルロース(和光純薬製:メチル置換度1.8)80g、メチレンクロリド1000mL、ピリジン1000mLを量り取り、室温で攪拌した。ここに無水酪酸1000mLをゆっくりと滴下し、さらにジメチルアミノピリジン(DMAP)約0.2gを加えて、3時間還流した。反応後、室温に戻し、氷冷下、メタノール200mLを加えてクエンチした。反応溶液をメタノール/水(10L/10L)へ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量の水で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することによりセルロースエーテルエステル(H−1)を白色粉体として得た(85.0g)。
以上で得られた化合物及び下記化合物H−2、H−3について、セルロースに含まれる水酸基(R2、R3及びR6)に置換された官能基の種類、並びにその置換度は、Cellulose Communication 6,73-79(1999)及びChrality 12(9),670-674に記載の方法を利用して、1H−NMRあるいは13C−NMRにより、観測及び決定した。
セルロースエーテルエステル(P−1)、(P−2)及び(H−1)、及びセルロースエステル(H−2)、(H−3)の官能基の種類及びその置換度を下記表に示す。
H−3:セルロースエステル(ダイセル化学工業社、セルロースアセテート L−70)
・P−1:Mn=1.35×105
・P−2:Mn=7.0×104
・H−1:Mn=6.6×104
・H−2:Mn=7.0×104
・H−3:Mn=7.2×104
セルロース誘導体、充填剤、酸化防止剤を表2に示す配合割合で混合し、セルロース樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を、シリンダー温度を表2に示す混練温度に設定した二軸混練押出機(テクノベル(株)製、Ultranano)に供給し、ペレットを作製した。
得られたペレットを、射出成形機(ファナック(株)Roboshot S-2000i、自動射出成形機)に供給して、シリンダー温度(成形温度)、金型温度を表2に示す温度に設定し、射出圧力100MPa)にて4×10×80mmの多目的試験片(衝撃試験片および曲げ試験片)を成形した。
実施例1〜10及び比較例1〜7の樹脂組成物は、良好な熱可塑性を示し、成形加工に問題はなかった。
比較例8〜11の樹脂組成物は、成形片を作製することが出来たが粘度が高く、綺麗な成形片を作製することが出来なかった。綺麗な成形片を作製するためには成形温度を高める必要があり、試料の熱劣化温度に接近するため困難であった。(表2において△で示す。)
比較例12及び13の樹脂組成物は、低可塑性樹脂であるため、高温でも粘度が高く射出成形ができなかった。
<無機塩>
・タルク(Mg3Si4O10(OH)2):日本タルク(株)、MICRO ACEシリーズ P−6
・炭酸カルシウム:白石カルシウム(株)、Vigot10
・水酸化マグネシウム:和光純薬工業(株)
・酸化チタン:石原産業(株)、CR−60−2
・炭酸ナトリウム:関東化学(株)
・キョーワード600(2MgO・6SiO2・xH2O):協和化学工業(株)
<充填剤>
・MBSゴム:三菱レイヨン(株)、C−223A
・ケナフ繊維:(株)ユニパアクス、ケナフ靱皮
<酸化防止剤>
・フェノール系酸化防止剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、イルガノックス1010
得られた多目的試験片を用いて、以下の項目について評価した。
ISO178に準拠して、射出成形にて成形した試験片を23℃±2℃、50%±5%RHで48時間以上調整した後、インストロン(東洋精機製、ストログラフV50)によって支点間距離64mm、試験速度2mm/minで曲げ弾性率を測定した。
ISO178に準拠して、射出成形にて成形した試験片を23℃±2℃、50%±5%RHで48時間以上調整した後、インストロン(東洋精機製、ストログラフV50)によって支点間距離64mm、試験速度2mm/minで曲げ試験をおこない、試験中の最大応力を曲げ強度とした。
ISO75に準拠して、試験片の中央に一定の曲げ荷重(1.8MPa)を加え(フラットワイズ方向)、等速度で昇温させ、中央部のひずみが0.34mmに達したときの温度(℃)を測定した。
ISO179に準拠して、射出成形にて成形した試験片に入射角45±0.5°、先端0.25±0.05mmのノッチを形成し、23℃±2℃、50%±5%RHで48時間以上静置した後、シャルピー衝撃試験機((株)東洋精機製作所製)によってエッジワイズにて衝撃強度を測定した。
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて成形体の数平均分子量(Mn)を測定した。具体的には、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めた。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用した。得られた成形後の数平均分子量(Mn)と混練前のエチルセルロースの数平均分子量(Mn)から、混練前の数平均分子量(Mn)に対する分子量保持率(%)を算出した。
JIS K 7209に準拠して、成形試験片を50℃で24時間乾燥させた後、重量測定をおこない、23℃の恒温水槽に試料を24時間浸漬し、含水以外の水分を取り除き、ただちに重量を測定した。含水率(%)は{(浸漬後の重量/浸漬前の重量―1)×100}で求めた。なお、含水率が多いと成形しにくいため、含水率は成形性の指標の一つとなる。
フローテスタ((株)島津製作所製CFT-100D、L=10mm、D=1.0mmのダイを使用)を用い、粉体またはペレットをガラス転移温度以下の温度で装置に投入し、剪断速度100 s-1、昇温速度2℃/minで昇温測定を行った。一般的に射出成形が容易に可能である、この測定での見かけの粘度が100Pa・Sとなる温度を流動特性温度とした。
熱分解温度の指標として、空気下での2wt%重量減少温度を測定した。空気下での2wt%重量減少温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)を用い、試料量5mg、昇温速度10℃/min.で30℃〜500℃まで乾燥空気下で測定し、重量が2wt%減少した温度とした。
Claims (9)
- 炭化水素基及び炭素数が7〜18の脂肪族アシル基を有するセルロースエーテルエステルと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩とを含有するセルロース樹脂組成物。
- 前記炭化水素基の炭素数が1〜7である、請求項1に記載のセルロース樹脂組成物。
- 前記脂肪族アシル基が分岐構造を有する、請求項1又は2に記載のセルロース誘導体。
- 前記脂肪族アシル基の炭素数が7〜9である、請求項1〜3のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物。
- 前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩がカルシウム又はマグネシウムを含む無機塩である、請求項1〜4のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物。
- 前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩が炭酸カルシウム、珪酸マグネシウム、及び水酸化マグネシウムのいずれかである、請求項1〜5のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物。
- 前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む無機塩の含有量が0.1〜50質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のセルロース樹脂組成物を成形して得られる成形体。
- 請求項8に記載の成形体から構成される電気電子機器用筺体。
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