JP2010241625A - 耐蝕性焼成治具及びその製造方法 - Google Patents

耐蝕性焼成治具及びその製造方法 Download PDF

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誠司 江尻
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Abstract

【課題】作業性並びに耐蝕性および耐久性を向上させる。
【解決手段】セラミックス製耐火容器1の成形体の内底面2上に耐火容器1より耐蝕性の高いセラミックス製耐火板材3を敷設し、該耐火板材3の端部に対応した嵌合凹部7を前記成形体の内側面6に設け、かかる耐火板材3を収納済み成形体を焼成し、焼成収縮させることにより、前記嵌合凹部7に耐火板材3の端部を嵌入させ固定することによって、耐火容器1に耐火板材3を機械的に固定し、従前技術により形成可能な耐蝕層より厚い耐蝕層を設けると共に、耐蝕層の剥離を防止する。
【選択図】図3

Description

本発明は、浸蝕性の強い成分を含有する被焼成物を焼成するのに有用な焼成治具及びその製造方法に関する。
従来より、セラミックス製品の製造時の焼成工程では、セラミックス製耐火物から成る匣鉢、サヤ、セッター等の焼成治具が利用されており、被焼成物はこれら焼成治具に載置された状態で焼成されるが、被焼成物が浸蝕性の強い成分(例えば、リチウム等)を含有する場合は、浸蝕性成分と焼成治具とが接触部で化学反応し、焼成治具に亀裂や層剥離が発生して、焼成治具の耐久性が著しく低下し、また製品(焼成品)についても、浸食性成分が焼成治具との化学反応で消費されてしまうことから、製品の組成が変動し、品質が不安定となって、歩留り低下を招来していた。
この様な問題点を解消するためには、例えば、高純度アルミナにて焼成治具を形成すれば良いが、焼成治具全体を高純度アルミナとすると、コスト高となり、実用的ではないため、安価な素材により成る焼成治具の所定位置にアルミナ微粉を付着させて、かかるアルミナ微粉層上に被焼成物を載置する様にしていた。
しかし、焼成治具の繰り返し使用により、微粉層が次第に剥離するため、再付着が必要となり、また焼成中に製品にアルミナ微粉が融着し不良が発生する等の問題があった。
そこで、被焼成物の載置部のみ耐蝕性の高い素材で形成した焼成治具が利用される様になった。
この様な焼成治具としては、例えば、
焼成治具基材に対して、耐蝕性の高いセラミックス微粉とバインダーを含有したコーティング剤を塗布し、焼成して形成した焼成治具(特許文献1及び2参照)や、
焼成治具基材の表面に、耐蝕性の高いセラミックス微粉を溶射により融着させ形成した焼成治具(特許文献3参照)等が見受けられる。
これら基材に耐蝕層を融着一体化した焼成治具は、耐久性が高く、製品に悪影響を及ぼすことなく、全体を高純度アルミナ等のファインセラミックスで形成した焼成治具に比して原料コストも抑えられる上、維持管理に手間が掛からず好評を得られた。
特許第3139962号公報(特許請求の範囲) 特許第4054098号公報(実施例、第3頁〜第4頁) 特許第4136249号公報(特許請求の範囲)
ところが、基材に耐蝕層を融着形成した焼成治具は、耐蝕層を厚く(例えば、数mm以上に)することが困難であるため、浸蝕性が極めて強い成分を多量に含有する被焼成物には、耐蝕性不足となり、また基材層と耐蝕層との熱膨張係数が相違するため、繰り返し使用により、被焼成物載置面が凹又は凸に反ったり、耐蝕層が次第に剥離する等の問題が発生した。
本発明は、セラミックス製耐火容器の内底面上に該耐火容器より耐蝕性の高いセラミックス製耐火板材を敷設し固定することによって、従前技術により形成可能な耐蝕層より厚い耐蝕層を設ける。
又、耐火容器の成形体の内底面上に耐火板材を敷設し、該耐火板材端部に対応した嵌合凹部を前記成形体の内側面に設け、かかる耐火板材収納済み成形体を焼成し、焼成収縮させることにより、前記嵌合凹部に耐火板材端部を嵌入させ固定することによって、耐蝕層の剥離を防止する様にして、上記課題を解決する。
要するに本発明は、セラミックス製耐火容器の内底面上に該耐火容器より耐蝕性の高いセラミックス製耐火板材を敷設したので、耐火板材を厚くすることで、耐蝕層を厚くし、浸蝕性の強い成分を多量に含有する被焼成物に対応することが出来る。
又、耐火板材を耐火容器に固定したので、例えば、製品(焼成品)を焼成治具から取り出す際、機械により焼成治具を逆さにしても、耐火板材が剥落せず、製品のみ取り出しできることから、製造ラインを自動化し、煩わしい手間を省いて、作業負荷の軽減、製造効率の向上を図ることが出来る。
耐火容器の成形体の内底面上に耐火板材を敷設し、該耐火板材端部に対応した嵌合凹部を前記成形体の内側面に設け、かかる耐火板材収納済み成形体を焼成し、焼成収縮させることにより、前記嵌合凹部に耐火板材端部を嵌入させ固定したので、耐火板材を耐火容器に機械的に固定することにより、かかる耐蝕層は焼成治具の使用を反復しても剥離することなく、耐久性の高い焼成治具とすることが出来る。
嵌合凹部に耐火板材端部を遊嵌し、摺動自在に設けたので、耐火容器と耐火板材の熱膨張係数が相違しても、使用時の昇温降温に伴い、耐火容器と耐火板材は、何ら規制されずに、夫々個別に膨張収縮することが出来る。
従って、使用を繰り返すことで、耐火板材が凹又は凸に屈曲せず、焼成治具の耐久性が更に向上する。
焼成収縮後の耐火容器と耐火板材端面との間に空隙部を設けたので、例えば、素材の選択により、耐火板材の熱膨張係数が耐火容器の熱膨張係数より大となる場合であっても、使用時の熱間膨張時の耐火板材端部は、空隙部内に収まり、耐火容器の内側面を押圧したり、膨張が規制されることがないため、焼成治具に不要な応力がかからず、焼成治具の損傷を防止することが出来る。
耐火容器は、シャモット質、ムライト質、コーディエライト質、若しくはムライト・コーディエライト質とし、耐火板材は、アルミナ質、ジルコニア質、マグネシア質、若しくはスピネル質としたので、入手が容易な原料で焼成治具を製造して安定供給することが出来る。
又、大部分を占める耐火容器を安価な原料で形成し、高価な原料を一部にのみ使用することにより、焼成治具にかかるコストを低く抑えることが出来る等その実用的効果甚だ大である。
実施例1の焼成治具の概略縦断面図である。 実施例2の耐火板材収納済み成形体の焼成前の概略縦断面図である。 同上耐火板材収納済み成形体の焼成後の概略縦断面図である。 図3の焼成治具の変形例を正面側にて示した概略縦断面図である。 図4の焼成治具を側面側にて示した概略縦断面図である。
本発明の焼成治具は、リチウム等の浸蝕性の強い成分を含有する被焼成物の焼成に有用なものであり、セラミックス製耐火容器にセラミックス製耐火板材を収納し、該耐火板材上に被焼成物を載置し、焼成炉に搬入され、使用されるものである。
以下、本発明の焼成治具について実施例を示し詳述する。
図1に示す様に、実施例1の焼成治具は、セラミックス製耐火容器1の内底面2上にセラミックス製耐火板材3を敷設しており、該耐火板材3は、その底面と耐火容器1の内底面2との間に設けた無機系の耐火接着剤4(例えば、粘土、ベントナイト、窯炉の吹き付け補修に用いられるキャスタブル耐火物等)の融着により、耐火容器1に接着固定されている。
又、耐火板材3は、耐火容器より耐蝕性の高い素材、例えば、高純度アルミナ、安定化ジルコニア、マグネシア、スピネル等で形成され、耐火容器1は、粘土、カオリン、陶石、長石、ろう石、珪石、石灰等の窯業原料を適宜配合して、シャモット質、ムライト質、コーディエライト質、又はムライト・コーディエライトとしたものである。
使用時には、耐火板材3の上面上に被焼成物Wを載置し、そのまま窯炉に搬入し、焼成する。
この焼成治具によれば、被焼成物Wがリチウム等の浸蝕成分を含有していても、耐火容器1は、耐火板材3により保護され、焼成治具は傷まず、被焼成物Wの組成は変動せず、また焼成後に製品を焼成治具から取り出す際、焼成治具を逆さにしても、耐火板材3は、剥落しない。
実施例2の焼成治具は、図2に示す様に、耐火容器の成形体5の内底面2上に耐火板材3を敷設し、内側面6の下端に溝7を設け、該溝7を耐火板材3の端部に対応した嵌合凹部7として、かかる耐火板材3を収納済みの成形体5を焼成し、図3に示す様に、成形体5を焼成収縮させることにより、前記嵌合凹部7に耐火板材3の端部を嵌入させたものである。
又、耐火板材3の端部は、嵌合凹部7に遊嵌されて、摺動自在に設けられており、耐火容器1と耐火板材2の端面との間には、空隙部8が設けられている。
尚、成形体5に収納した耐火板材3は、焼成済みの焼結体であり、一般に成形体を焼成する際、成形体は収縮して焼結し、一方、焼結体を再焼成しても、その焼結体の軟化、溶融温度未満であれば、熱間時に膨張はするが、再度収縮し、焼成前後の冷間時の寸法は、殆ど変わらない。
従って、本発明のものでは、焼成により、成形体5のみが収縮し、耐火板材3の寸法は殆ど変化ないため、耐火板材3の端部は嵌合凹部7に嵌入する。
この焼成治具は、耐火板材3が耐火容器1に機械的に固定されるが、耐火板材3が耐火容器1に対し、摺動自在であり、且つ、耐火容器1と耐火板材2の端面との間に空隙部8が在ることから、耐火容器1と耐火板材3の熱膨張係数が相違しても、両熱膨張係数の大小関係に依存することなく、使用時の温度変化に伴い、何ら規制されずに、夫々個別に膨張収縮する。
次に、実施例2の変形例について説明する。
上記の嵌合凹部7は、図2および図3に示した溝の形態に限定されるものではなく、例えば、図4および図5に示す様に、成形体5(図中では耐火容器1)の対向する一対の内側面6の下端寄りに突条9、9aを設け、該突条9、9aを内底面2に平行させ、かかる突条9、9aと内底面2との間隙部を嵌合凹部7としても良い。
1 耐火容器
2 内底面
3 耐火板材
4 耐火接着剤
5 成形体
6 内側面
7 嵌合凹部
8 空隙部
9、9a 突条
W 被焼成物

Claims (10)

  1. セラミックス製耐火容器の内底面上に該耐火容器より耐蝕性の高いセラミックス製耐火板材を敷設し固定したことを特徴とする耐蝕性焼成治具。
  2. 耐火容器の成形体の内底面上に耐火板材を敷設し、該耐火板材端部に対応した嵌合凹部を前記成形体の内側面に設け、かかる耐火板材収納済み成形体を焼成し、焼成収縮させることにより、前記嵌合凹部に耐火板材端部を嵌入させ固定したことを特徴とする請求項1記載の耐蝕性焼成治具。
  3. 嵌合凹部に耐火板材端部を遊嵌し、摺動自在に設けたことを特徴とする請求項2記載の耐蝕性焼成治具。
  4. 焼成収縮後の耐火容器と耐火板材端面との間に空隙部を設けたことを特徴とする請求項3記載の耐蝕性焼成治具。
  5. 耐火容器は、シャモット質、ムライト質、コーディエライト質、若しくはムライト・コーディエライト質とし、耐火板材は、アルミナ質、ジルコニア質、マグネシア質、若しくはスピネル質としたことを特徴とする請求項1、2、3又4記載の耐蝕性焼成治具。
  6. セラミックス製耐火容器の内底面上に該耐火容器より耐蝕性の高いセラミックス製耐火板材を敷設し固定する様にしたことを特徴とする耐蝕性焼成治具の製造方法。
  7. 耐火容器の成形体の内底面上に耐火板材を敷設し、該耐火板材端部に対応した嵌合凹部を前記成形体の内側面に設け、かかる耐火板材収納済み成形体を焼成し、焼成収縮させることにより、前記嵌合凹部に耐火板材端部を嵌入させ固定する様にしたことを特徴とする請求項6記載の耐蝕性焼成治具の製造方法。
  8. 嵌合凹部に耐火板材端部を遊嵌し、摺動自在に設ける様にしたことを特徴とする請求項7記載の耐蝕性焼成治具の製造方法。
  9. 焼成収縮後の耐火容器と耐火板材端面との間に空隙部を設ける様にしたことを特徴とする請求項8記載の耐蝕性焼成治具の製造方法。
  10. 耐火容器は、シャモット質、ムライト質、コーディエライト質、若しくはムライト・コーディエライト質とし、耐火板材は、アルミナ質、ジルコニア質、マグネシア質、若しくはスピネル質とする様にしたことを特徴とする請求項6、7、8又は9記載の耐蝕性焼成治具の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2012133525A1 (ja) * 2011-03-30 2012-10-04 京セラ株式会社 焼成用部材およびこれを用いた焼成用容器ならびに正極材料の製造方法

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