JP2010241381A - 車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材の製造方法 - Google Patents

車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】全体が中空筒状で、外周面に径変化部分10cを有すると共に、内周面に内向フランジ状の静止側フランジ7cを有する、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材を、効率良く且つ低コストで造れる製造方法を実現する。
【解決手段】金属製で円柱状の素材15に、所定の鍛造加工を施す事により、内周面の軸方向一端寄り部分に静止側フランジ7cを有し、軸方向一端部の大径筒部30と軸方向他端部乃至中間部の小径筒部29とを段部24aにより連続させた段付円筒状の第一中間素材19を形成する。その後、この第一中間素材19の軸方向他端側半部にスエージング加工を施し、当該部分に先端側に向かう程外径寸法の小さくなった傾斜筒部36を形成する。これにより、外周面に上記径変化部分10cを形成する。
【選択図】図1

Description

この発明は、所謂外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットのうち、軸方向寸法の短縮化を意図した構造の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材の製造方法に関する。具体的には、全体が中空筒状で、外周面に径変化部分を有すると共に、内周面に内向フランジ状の静止側フランジを有する内径側軌道輪部材を、効率良く且つ低コストで造れる製造方法の実現を図るものである。
外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットは、懸架装置への取付部の構造を内輪回転型のものに比べて簡単にできる為、一部の自動車で従動輪(FF車の後輪、FR車及びMR車の前輪)支持用の転がり軸受ユニットとして使用されている。但し、内輪部材に比べて直径が大きな外輪部材を回転させる為、慣性モーメントが大きくなり、加速性能を中心とする走行性能や燃費性能を確保する面から、内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットに比べて不利になる。この様な不利を低減乃至解消する為には、上記外輪部材を軽量化する事が効果的である。この様な事情に鑑みて考えられた外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットとして従来から、特許文献1〜3に記載された構造が知られている。
図6〜7は、このうちの特許文献1、2に記載された従来構造の2例を示している。これら両従来構造は何れも、内輪部材1a、1bと、外輪部材2a、2bと、複数個の転動体3、3と、補強部材4a、4bとを備える。このうちの内輪部材1a、1bは、内輪部材本体5a、5bと、特許請求の範囲に記載した内輪に相当する内輪素子6a、6bとから成る。このうちの内輪部材本体5a、5bは、全体を中空筒状としており、外周面の軸方向内端部(軸方向に関して内とは、組み付け状態で車体の幅方向中央側となる側を言い、図6〜8の右側。本明細書全体で同じ。)に、上記内輪部材1a、1bを懸架装置に対し結合固定する為の外向フランジ状の静止側フランジ7a、7bを設けている。
又、上記内輪部材本体5a、5bの外周面のうち、軸方向内端寄り部分には、特許請求の範囲に記載した内輪軌道に相当する内側列の内輪軌道8aを、同じく外端寄り部分(軸方向に関して外とは、組み付け状態で車体の幅方向外寄りとなる側を言い、図6〜8の左側。本明細書全体で同じ。)には、上記内輪軌道8aよりも外径寸法の小さい、特許請求の範囲に記載した嵌合用円筒面に相当する小径段部9a、9bを、それぞれ形成している。又、上記内輪部材本体5a、5bの外周面の軸方向中間部で、上記内輪軌道8aと上記小径段部9a、9bとの間には、互いに外径が異なるこれら内輪軌道8aと小径段部9a、9bとを連続させる径変化部分(外径変化部分)10a、10bを設けている。そして、この小径段部9a、9bに、外周面に内輪軌道8bを形成した上記内輪素子6a、6bを外嵌して、上記内輪部材1a、1bを構成している。又、この内輪素子6a、6bの軸方向外端面は、上記内輪部材本体5a、5aの軸方向外端部に形成した円筒部を直径方向外方にかしめ拡げて成るかしめ部11a、11bにより抑え付けて、上記内輪素子6a、6bを上記内輪部材本体5a、5bの所定位置に固定している。
又、前記外輪部材2a、2bは、内周面に複列の外輪軌道12a、12bを、外周面の軸方向外寄り部分に回転側フランジ13a、13bを、それぞれ有する。又、上記各転動体3、3は、上記両内輪軌道8a、8bと上記両外輪軌道12a、12bとの間に、両列毎に複数個ずつ設けられている。この状態で、複列に配置された上記各転動体3、3には、予圧と共に背面組み合わせ型の接触角を付与している。又、これら両列の転動体3、3のピッチ円直径は、上記両内輪軌道8a、8b及び上記両外輪軌道12a、12bの直径の差に応じて異なっている。即ち、外側列の各転動体3、3のピッチ円直径が、内側列の各転動体3、3のピッチ円直径よりも小さくなっている。更に、前記補強部材4a、4bは、全体を部分円すい筒状としている。そして、この補強部材4a、4bの大径側端部を上記回転側フランジ13a、13bの外周縁部に、同じく小径側端部を上記外輪部材2a、2bの外周面でこの回転側フランジ13a、13bよりも軸方向内方寄り部分に、それぞれ溶接により接合固定している。
それぞれが上述の様な構成を有する車輪支持用転がり軸受ユニットの使用状態では、上記静止側フランジ7a、7bにより、上記内輪部材1a、1bを懸架装置の構成部材(例えばナックル)に対し結合固定する。又、ディスクロータやドラム等の制動用回転体及び車輪を、上記回転側フランジ13a、13bにより、上記外輪部材2a、2bに対し支持固定する。この状態で、上記制動用回転体及び車輪が上記懸架装置に対し回転自在に支持される。旋回走行時等には、この車輪と路面との接触部(接地面)からの入力が上記回転側フランジ13a、13bに対し、この回転側フランジ13a、13bを上記外輪部材2a、2bの本体部分に対し曲げる方向のモーメントとして加わる。但し、上記従来構造の2例は、何れも、上記回転側フランジ13a、13bと上記外輪部材2a、2bの本体部分との間に上記補強部材4a、4bを設けているので、上記モーメントに拘らず、上記回転側フランジ13a、13bが上記外輪部材2a、2bの本体部分に対し曲がる事を抑えられる。この為、この外輪部材2a、2bを薄肉化しても、上記車輪の支持剛性を確保して、走行安定性等の必要とする性能を確保できる。
この様に、上記補強部材4a、4bにより、上記回転側フランジ13a、13bが上記外輪部材2a、2bの本体部分に対し曲がる事を抑える為、これら回転側フランジ13a、13bや本体部分の薄肉化が可能になる。上記従来構造の2例の場合には、上記外輪部材2a、2bの各部に肉盗み部14a、14bを設けて、この外輪部材2a、2bを十分に薄肉化している。この様に薄肉化を図る事により、この外輪部材2a、2bの慣性モーメントを低減して、加速性能を中心とする走行性能や燃費性能の向上を図れる。
ところが、上述した様な従来構造の2例の車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、上記内輪部材本体5a、5bの外周面の軸方向内端部に外向フランジ状の静止側フランジ7a、7bを設けている為、この静止側フランジ7a、7bと上記外輪部材2a、2bとが、軸方向に関して重畳する。この結果、車輪支持用転がり軸受ユニットの軸方向寸法が長くなり、この車輪支持用転がり軸受ユニットの小型化を図る上で不利になる。
この様な不都合を解消できる構造として、前記特許文献3に記載された構造が知られている。図8〜9は、この特許文献3に記載された従来構造の第3例の車輪支持用転がり軸受ユニットを示している。尚、この従来構造の第3例の車輪支持用転がり軸受ユニットの基本的な構造は、内輪部材本体5cの構造を除いて、補強筒部4cを回転側フランジ13cと外輪部材2cの本体部分との間に設ける点、この外輪部材2cに肉盗み部14cを設ける点等を含め、上述した従来構造の2例の場合と基本的に同じである。この為、重複する説明は省略若しくは簡略する。
上記従来構造の第3例の場合にも、内輪部材1cを、上記内輪部材本体5cと内輪素子6cとから構成する。このうちの内輪部材本体5cは、本発明の製造方法の対象となる車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材に相当し、全体が中空筒状で、外周面の軸方向内端寄り部分に内側列の内輪軌道8aを、同じく軸方向外端寄り部分に小径段部9cを、同じく軸方向中間部に径変化部分10cを、それぞれ有する。そして、このうちの小径段部9cに上記内輪素子6cを外嵌固定した状態で、この内輪素子6cの軸方向外端面をかしめ部11cより抑えつけている。特に、従来構造の第3例の内輪部材本体5cの場合には、内周面の軸方向内寄り部分に、内向フランジ状の静止側フランジ7cを設けている。この様な構成を有する従来構造の第3例の場合、この静止側フランジ7cと上記外輪部材2cとが軸方向に関して重畳する事はない。従って、車輪支持用転がり軸受ユニットの軸方向寸法が短くなり、車輪支持用転がり軸受ユニットの小型化を図れる。
ところが、上述の様な従来構造の第3例の場合、上記内輪部材本体5cの形状が、外周面に径変化部分10cを有すると共に、内周面に内向フランジ状の静止側フランジ7cを有すると言った、特殊且つ複雑な形状である。この為、この様な内輪部材本体5cを造る為に、外向フランジ状の静止側フランジ7a、7bを有する、一般的な形状の内輪部材本体5a、5bの加工工程(型鍛造)をそのまま利用する事はできず、加工工程を工夫する必要がある。又、上記内輪部材本体5cを造る為に、例えば切削加工を利用して、外周面に径変化部分を形成したり、或いは、内周面に内向フランジ状の静止側フランジを形成する事も考えられるが、この場合には、加工効率が低くなるだけでなく、歩留りが低下して加工コスト上昇の原因にもなる。尚、前記特許文献3には、上述の様な構成を有する内輪部材本体5cの具体的な製造方法に就いては開示されておらず、この内輪部材本体5cを効率良く且つ低コストで造れる製造方法の実現が望まれる。
独国特許出願公開第10 2007 023 661号明細書 独国特許出願公開第10 2008 023 588号明細書 独国特許出願公開第10 2007 060 627号明細書
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、全体が中空筒状で、外周面に径変化部分を有すると共に、内周面に内向フランジ状の静止側フランジを有する内径側軌道輪部材を、効率良く且つ低コストで造れる製造方法を実現すべく発明したものである。
本発明の製造方法の対象となる、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材は、全体が中空筒状で、内輪軌道と、嵌合用円筒面と、径変化部分と、静止側フランジとを有する。
このうちの内輪軌道は、車輪支持用転がり軸受ユニットを組み立てた状態で内側列の内輪軌道に相当するもので、上記内径側軌道輪部材の外周面の軸方向一端寄り部分に設けられている。
又、上記嵌合用円筒面は、外周面に内輪軌道(外側列の内輪軌道)を形成した内輪を外嵌支持する部分で、上記内径側軌道輪部材の外周面の軸方向他端寄り部分に設けられている。又、その外径寸法は、上記内輪軌道(内側列の内輪軌道)の外径寸法よりも小さい。
又、上記径変化部分は、上記内径側軌道輪部材の外周面の軸方向中間部で、上記内輪軌道(内側列の内輪軌道)と上記嵌合用円筒面との間に設けられており、外径が異なるこれら内輪軌道と嵌合用円筒面とを連続させる。
更に、上記静止側フランジは、内向フランジ状で、上記内径側軌道輪部材の内周面の軸方向一端寄り部分に設けられており、この内径側軌道輪部材を懸架装置に対して結合固定する為に用いる。
上述の様な内径側軌道輪部材を造る為に、本発明のうちの請求項1に記載した製造方法では、先ず、金属製の素材(ビレット)に所定の鍛造加工を施して、全体が中空筒状で、内周面の軸方向一端寄り部分に上記静止側フランジを有し、少なくとも軸方向他端部乃至中間部を円筒状とした中間素材を形成する。その後、この中間素材の軸方向他端部乃至中間部にスエージング加工を施して、当該部分に軸方向他端側(先端側)に向かう程外径寸法が小さくなった部分円すい筒状部を形成する。これにより、外周面の軸方向中間部(少なくとも部分円すい筒状部の外周面の軸方向一端側部分を含む部分)に、上記径変化部分を形成する。
尚、上述した請求項1に記載した製造方法を実施する場合に好ましくは、上記中間素材を、軸方向一端部に設けられた大径筒部と、軸方向他端部乃至中間部に設けられた小径筒部とを、段部若しくは傾斜段部により連続させた段付円筒状とする。尚、この場合には、小径筒部が請求項1に記載した中間素材の軸方向他端部乃至中間部に設けられた円筒状の部分に相当する。又、より好ましくは、上記段部の外周面に前記内輪軌道を形成すべく、この段部若しくは傾斜段部の外周面の母線形状を円弧形とする。
又、上記請求項1に記載した製造方法を実施する場合に好ましくは、上記部分円すい筒状部を形成した後、この部分円すい筒状部の軸方向他端側部分に拡径加工を施す。これにより、外周面の一部を前記嵌合用円筒面として利用すると共に、その一部をかしめ部を形成すべき部分として利用する、円筒部を形成する。
更に、上記請求項1に記載した製造方法を実施する場合に好ましくは、上記スエージング加工を、リンクタイプスエージング機を用いて熱間で行う。
又、本発明のうちの請求項2に記載した製造方法では、先ず、金属製の素材に所定の鍛造加工を施して、全体が中空筒状で、外周面の軸方向中間部に前記径変化部分を有し、軸方向一端側部分の外径寸法が軸方向他端側部分の外径寸法よりも大きく、軸方向一端側部分(大径側部分)の肉厚が軸方向他端側部分(小径側部分)の肉厚よりも大きい中間素材を形成する。その後、この中間素材の外周面をダイスにより拘束した状態で、この中間素材の軸方向一端面(大径側端面)の内径寄り部分にパンチの先端部を押し付け、このパンチを上記中間素材の軸方向他端側に向けて押し込む。これにより、この中間素材の軸方向一端部の内径寄り部分を構成する金属材料を、軸方向他端側に且つ径方向内方に移動させて、内周面の軸方向一端寄り部分に前記静止側フランジを形成する。
尚、上述した請求項2に記載した製造方法を実施する場合に好ましくは、上記中間素材を形成した状態で、この中間素材の外周面のうちの軸方向一端寄り部分に、前記内輪軌道となるべき母線形状が円弧形の段差面を形成する。又は、上記中間素材の外周面のうちの軸方向他端寄り部分に、前記嵌合用円筒面となるべき円筒面を形成する。
上述の様に構成する本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材の製造方法によれば、全体が中空筒状で、外周面に径変化部分を有すると共に、内周面に内向フランジ状の静止側フランジを有する内径側軌道輪部材を、効率良く且つ低コストで造れる。
即ち、請求項1、2に記載した何れの発明の場合にも、静止側フランジと径変化部分との一方を鍛造加工により形成した後の中間素材の形状を、これら静止側フランジと径変化部分との残り一方を鍛造加工により形成するのに適した形状としている。この為、これら静止側フランジと径変化部分との残り一方を、鍛造加工(請求項1に係る発明の場合にはスエージング加工、請求項2に係る発明の場合には所謂肉寄せ加工)により、容易に形成できる。この様に、本発明によれば、上記静止側フランジと上記径変化部分との何れをも、加工効率の低下や加工コストの上昇を招く切削加工によらず、この様な不都合を低減乃至は解消できる鍛造加工によって形成できる。この結果、本発明の製造方法によれば、特殊且つ複雑な形状を有する内径側軌道輪部材を、効率良く且つ低コストで造れる。
本発明の実施の形態の第1例の全体の工程を順番に示す断面図。 同じくスエージング工程の加工前の状態を示す断面図及びリンクタイプスエージング機を正面から見た模式図(A)、並びに、実施状況を示す断面図(B)。 同じく拡径工程の実施状況を示す断面図(A)及びX−X断面図(B)。 本発明の実施の形態の第2例の全体の工程を順番に示す断面図。 同じくフランジ成形工程の2例を説明する為の図で、上半部がパンチの輪郭を表す図であり、下半部が実施状況を示す断面図。 従来構造の車輪支持用転がり軸受ユニットの第1例を示す断面図。 同じく第2例を示す切断斜視図。 本発明の製造方法の対象となる内径側軌道輪部材を備えた従来構造の第3例の車輪支持用転がり軸受ユニットを示す断面図。 同じく図8の右方から見た斜視図。
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の製造方法は、図1の(A)に示した中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の焼入れ硬化可能な、金属製で円柱状の素材(ビレット)15に、順次、鍛造加工(塑性加工)乃至は打ち抜き加工を施す。そして、(B)に示した第一予備中間素材16、(C)に示した第二予備中間素材17、(D)に示した第三予備中間素材18、(E)に示した第一中間素材19、(F)に示した第二中間素材20、(G)に示した第三中間素材21を得る。更に、この様な第三中間素材21に、必要とする切削加工及び研削加工等を施して、前述の図8〜9に示した様な、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内輪部材本体5cとする。以下、上記素材15を上記第三中間素材21に加工する工程に就いて、順番に説明する。尚、以下の加工は、加工荷重を抑えると共に上記各素材14〜20に亀裂等の損傷が生じる事を防止する為に、基本的には全て熱間(若しくは温間)で行うが、小型の内輪部材本体を形成する場合等、可能であれば、冷間で行っても良い。
先ず、据え込み工程(自由据え込み加工)で、図1の(A)→(B)に示す様に、上記素材15を軸方向に押し潰しつつ外径を拡げ、偏平状(円盤状)の上記第一予備中間素材16を得る。
次いで、荒成形工程で、図1の(B)→(C)に示す様に、上記第一予備中間素材16を、上記第二予備中間素材17に塑性加工する。この様な荒成形工程では、鍛造加工の分野で広く知られている方法により、上記第一予備中間素材16の径方向中央寄り部分を軸方向に圧縮して、金属材料を径方向外方に移動させつつ、軸方向両側に移動させる。上記第一予備中間素材16の径方向中央寄り部分を軸方向に圧縮する加工は、この第一予備中間素材16を、上記第二予備中間素材17の外周面形状に対応した(凹凸が逆になった)ダイス内にセットした状態で、互いに同心に配置した押圧パンチとカウンターパンチとの間で上記第一予備中間素材16の軸方向両端面中央部を押圧する事により行う。一般的には、図1で上側に位置するカウンターパンチを固定した状態のまま、上記押圧パンチをこのカウンターパンチに押し付ける。そして、上記第一予備中間素材16を構成する金属材料を移動(塑性流動)させて、上記ダイスの内周面と上記押圧パンチ及び上記カウンターパンチの外面(外周面及び先端面)とにより囲まれたキャビティ内に充満させ、上記第二予備中間素材17とする。
この様にして得られる上記第二予備中間素材17は、軸方向一端部{図1の(B)(C)の上端部}の大径部22と、軸方向他端部{図1の(B)(C)の下端部}乃至中間部の小径部23とを、傾斜段部24により連続して成る。又、このうちの大径部22の軸方向一端面中央部には、開口部から奥部に向かう程内径が小さくなった凹部25aが設けられており、この凹部25aの周囲には素大径筒部26が設けられている。一方、上記小径部23の軸方向他端面中央部には、凹部25bが設けられており、この凹部25bの周囲には素小径筒部27が設けられている。又、上記凹部25aとこの凹部25bとの底面同士の間には、厚肉隔壁部28が設けられている。
続いて、仕上成形工程で、図1の(C)→(D)に示す様に、上記第二予備中間素材17を、前記第三予備中間素材18に塑性加工する。この仕上成形工程では、この第二予備中間素材17の外周面をダイスにより拘束しつつ、上記厚肉隔壁部28及び素小径筒部27の内径寄り部分を、この素小径筒部27の内径寸法よりも僅かに大きな外径寸法を有する円柱状の押圧パンチと、先端部の外径寸法が上記素大径筒部26の開口部の内径寸法と同じであるカウンターパンチとの間で軸方向に押し潰す。これにより、金属材料を径方向外方に移動させつつ、上記押圧パンチの押込方向反対側(図1の下側)に移動させる(後方押出加工を施す)。
これにより、上記素小径筒部27の軸方向寸法を伸長すると共に内径寸法を大きくして、小径筒部29を形成する。又、上記素大径筒部26の内周面形状(凹部25aの内面形状)を円すい凹面状から円筒面状に矯正して、大径筒部30を形成する。又、上記厚肉隔壁部28の肉厚を小さくして、薄肉隔壁部31とする。この結果、本例の場合には、上記大径筒部30と上記小径筒部29とを傾斜段部24aにより連続させると共に、内周面の軸方向一端寄り部分に上記薄肉隔壁部31を有する、段付有底円筒状の上記第三予備中間素材18を得られる。尚、上記傾斜段部24aの外周面の母線形状の曲率半径は、この傾斜段部24aの外周面に形成する内輪軌道8a(図8参照)の母線形状の曲率半径よりも、研削代分だけ僅かに小さい。
この様にして上記第三予備中間素材18を造った後は、打ち抜き工程で、図1の(D)→(E)に示す様に、上記薄肉隔壁部31の一部をプレス加工等により打ち抜き除去し、特許請求の範囲の請求項1に記載した中間素材に相当する、前記第一中間素材19を得る。具体的には、上記第三予備中間素材18を、中央部に打ち抜き孔を設けた受型に載置した状態で、上記小径筒部29の内径側に挿入した打ち抜きパンチにより、上記薄肉隔壁部31の中央寄り部分を打ち抜いて、スクラップ32として廃棄する。特に、本例の場合には、上記打ち抜きパンチとして、上記小径筒部29の内径寸法と同じか、これよりも僅かに小さい外径寸法を有する略円柱状で、外周面の円周方向等間隔複数個所に、径方向内方に凹んだ部分凹円筒面状の凹溝が形成されたものを使用する。この為、この様な打ち抜きパンチにより上記薄肉隔壁部31を打ち抜く事で、この薄肉隔壁部31の外径側部分の円周方向等間隔複数個所(図示の例では4個所)から、半円柱状の舌状部33、33が切り出される。そして、本例の場合には、これら各舌状部33、33により、放射状の静止側フランジ7cを構成する。この結果、内周面の軸方向一端寄り部分にこの静止側フランジ7cを有する、上記第一中間素材19を得られる。
次いで、スエージング工程で、図1の(E)→(F)に示す様に、上記第一中間素材19の軸方他端側半部{小径筒部29の軸方向他端部乃至中間部、図1の(E)の下端部乃至中間部、同図(F)の上端部乃至中間部}に塑性加工を施し、前記第二中間素材20を得る。本例の場合には、図2に略示した様な、リンクタイプスエージング機34を用いて、上記第一中間素材19の軸方向他端側半部に、テーパスエージング加工を熱間で施す。上記リンクタイプスエージング機34は、4個のスエージング型35、35を円周方向等間隔に設けており、これら各スエージング型35、35は、それぞれの内面形状が部分円すい凹面状で、リンク機構に連結された偏心軸によって径方向(及び円周方向)に往復移動する。又、上記各スエージング型35、35の内面のテーパ角は10度以下である。
そして、本例の場合には、上記各スエージング型35、35の内径側に、上記第一中間素材19を、図示しない回転装置により所定速度で回転させつつ、軸方向他端側から挿入する。そして、上記第一中間素材19の軸方向他端側半部の外周面を、上記各スエージング型35、35の内面により連続的(軸方向他端部から中間部に向けて連続的)に叩く。これにより、上記第一中間素材19の軸方向他端側半部に、先端側(軸方向他端側)に向かう程外径寸法が小さくなった、特許請求の範囲の請求項1に記載した部分円すい筒状部に相当する傾斜筒部36を形成する。これにより、外周面の軸方向中間部(少なくとも傾斜筒部36の外周面の軸方向一端側部分を含む部分)に、前記傾斜段部24aの外周面よりも外径寸法が小さくなった、径変化部分10cを形成する。この結果、外周面の軸方向中間部にこの径変化部分10cを有する、上記第二中間素材20を得られる。
尚、上述した様なテーパスエージング加工を施す場合、一般的には加工能率の高いロータリースエージング機を用いる場合が多い。但し、上記第一中間素材19は、中炭素鋼等の高硬度の金属材料製であると共に、軸方向他端側半部の肉厚が比較的大きい。又、加工すべき傾斜筒部36の傾斜角度も比較的大きくなる為、上記ロータリースエージング機による加工は不向きとなる。この為、本例の場合には、敢えて、加工能率の点では劣るが、打撃力の強い上記リンクタイプスエージング機34を用いる。又、このリンクタイプスエージング機34は、加工によるスケールを機械外部に落下させられる為、本例の場合には、上述の様なスエージング加工を熱間で行う。
最後に、必要があれば拡径工程で、図1の(F)→(G)に示す様に、上記第二中間素材20の軸方他端部(傾斜筒部36の軸方向他端側半部)に塑性加工を施し、前記第三中間素材21を得る。即ち、この拡径工程は、上記第二中間素材20の軸方向他端部の外周面の母線形状が直線状であれば省略できる。本例の場合、この様な拡径加工を、図3に略示した様な、エキスパンダ工具37を用いて行う。このエキスパンダ工具37は、マンドレル38と、3本の円柱状のローラ39、39と、これら各ローラ39、39を保持する保持器40とから成る。これら各ローラ39、39は、上記マンドレル38の周囲に回転自在に且つ軸方向の変位を自在に支持されている。又、このマンドレル38は、先端側{図5の(A)の右側}に向かう程外径寸法が小さくなった先細テーパ状であり、反対に、上記各ローラ39、39は、先端側に向かう程外径寸法が大きくなった先太テーパ状である。尚、上記各ローラ39、39のテーパ角度αは、上記マンドレル38のテーパ角度βの1/2としている。従って、これら各ローラ39、39の転動面の母線は、上記第二中間素材20の内周面を加工すべき部分で、この第二中間素材20の中心軸と平行になる。そして、本例の場合には、この様な構成を有するエキスパンダ工具37を回転(マンドレル38を自転、各ローラ39、39を自転させつつ公転)させた状態で、上記第二中間素材20の軸方向他端側から軸方向一端側に向けて挿入する(押し込む)。これにより、上記各ローラ39、39が上記マンドレル38の基端側{図5の(A)の左側}へと移動しつつ、上記第二中間素材20の軸方向他端部の内周面を径方向外方に押し拡げる。これにより、当該部分を円筒状に塑性変形させて、円筒部41を形成する。この円筒部41は、所定の仕上加工を施す事により、軸方向一端側部分の外周面を小径段部9c(図8参照)として利用すると共に、軸方向他端部をかしめ部11c(図8参照)を形成すべき円筒部として利用する。この結果、軸方向他端部に、この様な円筒部41を有する、上記第三中間素材21を得られる。
この様にしてこの第三中間素材21を得た後は、この第三中間素材21に所定の切削(旋削)加工及び研削加工を施して、内輪部材本体5c(図8〜9参照)として完成する。具体的には、上記第三中間素材21の軸方向一端寄り部分に形成した前記傾斜段部24aの外周面に、回転砥石等による研削加工(仕上加工)を施して、内側列の内輪軌道8a(図8参照)とする。又、上記円筒部41の軸方向一端側部分の外周面に、やはり仕上加工を施して、上記小径段部9cとする。更に、前記静止側フランジ7cを構成する各舌状部33、33に、軸方向に貫通する状態でねじ孔等を形成する。この結果、前記図8〜9に示した様な、上記内輪部材本体5cを得られる。
上述した様に、本例の製造方法の場合には、内周面に静止側フランジ7c(各舌状部33、33)を形成した前記第一中間素材19の形状を、続いて行うスエージング加工によって径変化部分10cを形成するのに適した形状に規制する。即ち、本例の場合には、上記第一中間素材19の軸方向他端部乃至中間部に、その一部外周面が上記径変化部分10cを構成する傾斜筒部36を形成するのに適した、小径筒部29を設けている。この為、スエージング加工によって、上記形変化部分10cを容易に形成できる。この様に、本例の場合には、上記静止側フランジ7cとこの径変化部分10cとの何れをも、加工効率の低下や加工コストの上昇を招く切削加工によらず、この様な不都合を低減乃至は解消できる鍛造加工によって形成できる。この結果、本例の製造方法によれば、特殊且つ複雑な形状を有する上記内輪部材本体5cを、効率良く且つ低コストで造れる。又、本例の場合には、上記静止側フランジ7cを、前記図1の(C)→(D)→(E)に示した様な鍛造加工(型鍛造)及び打ち抜き加工を経て形成できる為、使用する押圧パンチ、カウンターパンチ、打ち抜きパンチ等の形状や押し込み量等を適宜変更する事により、上記静止側フランジ7cの形状や形成位置を適宜変更できる(形状や形成位置に関する自由度を高くできる)。
尚、本例の場合には、前記エキスパンダ工具37を使用した拡径工程に就いて説明したが、この拡径工程は、拡径パンチを使用して行う事もできる。但し、拡径パンチを使用する場合には、この拡径パンチを前記第二中間素材20の軸方向一端側{図3の(A)の右側}から押し込む必要がある。この為、この拡径パンチを使用できるのは、上記静止側フランジ7cの内径寸法(各舌状部33、33の内接円の直径寸法)が、上記第二中間素材20の軸方向他端部の外径寸法よりも或る程度大きい場合に限られる。又、この様に拡径パンチを使用する場合には、上記第二中間素材20の外周面(のうちで軸方向他端部を除いた部分)をダイスにより拘束した状態で行う事が好ましいのは勿論である。これに対して、上記エキスパンダ工具37を使用する場合には、必ずしも前記図3に示した場合の様に、このエキスパンダ工具37を上記第二中間素材20の軸方向他端側から挿入する必要はない。即ち、上記静止側フランジ7cの内径寸法が、上記第二中間素材20の軸方向他端部の内径寸法よりも大きい場合には、上記エキスパンダ工具37をこの第二中間素材20の軸方向一端側から挿入する事もできる。但し、本例の場合には、上記静止側フランジ7cの内径寸法が、上記第二中間素材20の軸方向他端部の内径寸法よりも小さい為、上記エキスパンダ工具37を上記第二中間素材20の内側に軸方向他端側から挿入している。
又、一般的に、円筒状(パイプ状)の部材を、円筒状→円すい筒状→円筒状が順番に配置された形状(本例の場合の、第三中間素材21の軸方向他端部から中間部に亙り形成された、円筒部41→傾斜筒部36→小径筒部29に相当)に加工する場合には、中子を利用して、プレス機を用いた平行スエージング加工が行われる。但し、本例の場合には、前記第一中間素材19の内周面に静止側フランジ17cを形成している為、上記中子を挿入する事ができず、平行スエージング加工を施した場合には、座屈が発生し易くなる。この為、本例の場合には、一般的な平行スエージング加工ではなく、テーパスエージング加工を採用し、このテーパスエージング加工の後に、拡径加工を組み合わせている。
[実施の形態の第2例]
図4〜5は、請求項2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の製造方法の場合にも、図4の(A)に示した中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の焼入れ硬化可能な、金属製で円柱状の素材(ビレット)15に、順次、鍛造加工(塑性加工或いは打ち抜き加工)を施す。そして、(B)に示した第一予備中間素材16、(C)に示した第二予備中間素材17a、(D)に示した第三予備中間素材18a、(E)に示した第一中間素材19a、(F)に示した第二中間素材20aを得る。更に、この様な第二中間素材20aに、必要とする切削加工、研削加工等を施して、前述の図8〜9に示した様な、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内輪部材本体5cとする。以下、上記素材15を上記第二中間素材20aに加工する工程に就いて、順番に説明する。尚、本例の場合にも、以下の加工は、基本的には全て熱間若しくは温間で行うが、小型の内輪部材本体を形成する場合等、可能であれば、冷間で行っても良い。
本例の場合にも、上述した実施の形態の第1例の場合と同様に、先ず、据え込み工程で、図4の(A)→(B)に示す様に、上記素材15を軸方向に押し潰しつつ外径を拡げ、偏平状(円盤状)の上記第一予備中間素材16を得る。
次に、荒成形工程で、図4の(B)→(C)に示す様に、上記第一予備中間素材16を、上記第二予備中間素材17aに塑性加工する。この様な荒成形工程に就いても、基本的には上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。即ち、上記第一予備中間素材16を、上記第二予備中間素材17aの外周面形状に対応した(凹凸が逆になった)ダイス内にセットした状態で、互いに同心に配置した押圧パンチとカウンターパンチとの間で上記第一予備中間素材16の軸方向両端面中央部を押圧する。そして、上記第一予備中間素材16を構成する金属材料を移動させて、上記ダイスの内周面と上記押圧パンチ及び上記カウンターパンチの外面(外周面及び先端面)とにより囲まれたキャビティ内に充満させ、上記第二予備中間素材17aとする。この様にして得られる上記第二予備中間素材17aは、有底略部分円すい筒状で、外周面の外径寸法が軸方向一端側(図4の上側)から他端側(図4の下側)に向かう程小さくなった円すい筒部42と、軸方向一端部に設けられた外向フランジ状の大径側鍔部43と、軸方向他端寄り部分に設けられた底板部44とを有する。
次に、打ち抜き工程で、図4の(C)→(D)に示す様に、上記底板部44をプレス加工等により打ち抜き除去し、前記第三中間素材18aを得る。具体的には、本例の場合には、上記第二予備中間素材17aを、中央部に打ち抜き孔を設けた受型に載置した状態で、上記底板部44を打ち抜きパンチにより打ち抜き、上記第三中間素材18aを得る。
その後、仕上成形工程で、図4の(D)→(E)に示す様に、上記第三予備中間素材18aに塑性加工を施して、特許請求の範囲の請求項2に記載した中間素材に相当する、前記第一中間素材19aを得る。具体的には、上記第三予備中間素材18aの軸方向他端部(小径側端部)外周面を扱きダイスの内周面により扱き、金属材料を軸方向一端側(図4の上側)に移動させると共に、当該部分に円筒部41aを形成する。又、上記第三予備中間素材18aの内周面形状を仕上げる(円筒面状に仕上げる)と共に、ダイスの内周面により、上記段差面45の母線形状を直線状から円弧状に矯正して、段差面45aとする。この結果、外周面の軸方向中間部に径変化部分10cを有する、上記第一中間素材19aを得られる。この径変化部分10cは、上記段差面45aと上記円筒部41aの外周面との間で、互いに外径が異なるこれら段差面45aと円筒部41aの外周面とを連続させ、その一部が上記円すい筒部42の外周面により構成される。又、上記第一中間素材19aは、上記大径側鍔部43が設けられた軸方向一端側部分の肉厚が、上記円筒部41aが設けられた軸方向他端側部分の肉厚よりも大きい。
最後に、肉寄せ工程(フランジ成形工程)で、図4の(E)→(F)に示す様に、上記第一中間素材19aの軸方向一端部の内径寄り部分に塑性加工を施して、前記第二中間素材20aを得る。本例の場合には、この様な肉寄せ工程を、図5に示す様にして行う。即ち、上記第一中間素材19aの外周面をダイス46により拘束した状態で、この第一中間素材19aの軸方向一端面(大径側端面)の内径寄り部分に、パンチ47a(47b)の先端部を押し付け、このパンチ47a(47b)を上記第一中間素材19aの軸方向他端側に向けて押し込む。これにより、上記第一中間素材19aの軸方向一端部の内径寄り部分の金属材料を、軸方向他端側に、且つ、径方向内方に向けて移動させて(切り起こして)、内向フランジ状の静止側フランジ7cを形成する。この結果、内周面のうちの軸方向一端寄り部分にこの静止側フランジ7cを有する、上記第二中間素材20aを得られる。
この様な肉寄せ工程には、図5の(A)に示す様に、全体が円柱状で、先端面と外周面とを断面円弧形(R形状)の連続部により連続させたパンチ47aを使用できる。又は、同図の(B)に示した2例の様に、外周面の円周方向複数個所(図示の例では4個所)に断面半円形の凸部48、48を有し、全体を断面略花形としたパンチ47bを使用する事もできる。尚、これら各凸部48、48の大きさ及び形状は、形成すべき静止側フランジの形状に応じて、適宜変更できる。又、上記パンチ47aを使用した場合には、円輪状の静止側フランジ7cが形成されるのに対して、上記パンチ47bを使用した場合には、上記各凸部48、48に対応する数及び形状の舌状部33a、33aから構成される、円周方向複数箇所から径方向内方に突出した、前述の図8〜9に示した様な静止側フランジ7cが形成される。
この様にして上記第二中間素材20aを得た後は、この第二中間素材20aに所定の切削(旋削)加工及び研削加工を施して、内輪部材本体5c(図8〜9参照)として完成する。具体的には、上記第二中間素材20aの外周面の軸方向一端寄り部分に形成された前記段差面45aに、回転砥石等による研削加工(仕上加工)を施して、内側列の内輪軌道8a(図8参照)とする。又、前記円筒部41aの軸方向一端側部分の外周面に、やはり仕上加工を施して、小径段部9c(図8参照)とする。更に、上記静止側フランジ7c(各舌状部33a、33a)に、軸方向に貫通する状態でねじ孔等を形成する。この結果、上記図8〜9に示した様な、上記内輪部材本体5cを得られる。
上述の様に、本例の製造方法の場合には、外周面に径変化部分10cを形成した前記第一中間素材19aの形状を、続いて行う所謂肉寄せ加工によって静止側フランジ7cを形成するのに適した形状に規制している。即ち、本例の場合には、上記第一中間素材19aの軸方向一端側部分(大径側部分)の肉厚を、上記静止側フランジ7cを形成する分だけ、十分に確保している。この為、上記静止側フランジ7cを形成する事で、上記第二中間素材20aの軸方向一端部の肉厚が強度確保の面から薄くなり過ぎたり、或いは、上記静止側フランジ7cを形成する段階で金属材料(肉)が千切れる事を防止できる。従って、本例の場合には、肉寄せ加工により、上記静止側フランジ7cを容易に且つ安定して形成できる。この様に、本例の場合には、この静止側フランジ7cと上記径変化部分10cとの何れをも、加工効率の低下や加工コストの上昇を招く切削加工によらず、この様な不都合を低減乃至は解消できる鍛造加工によって形成できる。この結果、本例の製造方法によれば、特殊且つ複雑な形状を有する内輪部材本体5cを、効率良く且つ低コストで造れる。又、本例の場合には、上記径変化部分10cを、前記図4の(B)→(C)、(D)→(E)に示した様な鍛造加工(型鍛造)により形成できる為、使用するダイスの内面形状等を適宜変更する事により、上記径変化部分10cの形状を適宜変更する事もできる(形状に関する自由度を高くできる)。
1a〜1c 内輪部材
2a〜2c 外輪部材
3 転動体
4a〜4c 補強部材
5a〜5c 内輪部材本体
6a〜6c 内輪素子
7a〜7c 静止側フランジ
8a、8b 内輪軌道
9a〜9c 小径段部
10a〜10c 径変化部分
11a〜11c かしめ部
12a、12b 外輪軌道
13a〜13c 回転側フランジ
14a〜14c 肉盗み部
15 素材
16 第一予備中間素材
17 第二予備中間素材
18、18a 第三予備中間素材
19、19a 第一中間素材
20、20a 第二中間素材
21 第三中間素材
22 大径部
23 小径部
24、24a 傾斜段部
25、25a 凹部
26 素大径筒部
27 素小径筒部
28 厚肉隔壁部
29 小径筒部
30 大径筒部
31 薄肉隔壁部
32 スクラップ
33、33a 舌状部
34 リンクタイプスエージング機
35 スエージング型
36 傾斜筒部
37 エキスパンダ工具
38 マンドレル
39 ローラ
40 保持器
41、41a 円筒部
42 円すい筒部
43 大径側鍔部
44 底板部
45、45a 段差面
46 ダイス
47a、47b パンチ
48 凸部

Claims (2)

  1. 全体が中空筒状で、外周面の軸方向一端寄り部分に内輪軌道を、同じく軸方向他端寄り部分にこの内輪軌道よりも外径寸法が小さい、内輪を外嵌支持する為の嵌合用円筒面を、同じく軸方向中間部で上記内輪軌道とこの嵌合用円筒面との間に、外径が異なるこれら内輪軌道と嵌合用円筒面とを連続させる径変化部分を、内周面の軸方向一端寄り部分に懸架装置に結合固定する為の内向フランジ状の静止側フランジを、それぞれ有する、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材の製造方法であって、
    金属製の素材に鍛造加工を施して、全体が中空筒状で、内周面の軸方向一端寄り部分に上記静止側フランジを有し、少なくとも軸方向他端部乃至中間部を円筒状とした中間素材を形成した後、この中間素材の軸方向他端部乃至中間部にスエージング加工を施して、当該部分に軸方向他端側に向かう程外径寸法が小さくなった部分円すい筒状部を形成する事により、外周面の軸方向中間部に上記径変化部分を形成する、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材の製造方法。
  2. 全体が中空筒状で、外周面の軸方向一端寄り部分に内輪軌道を、同じく軸方向他端寄り部分にこの内輪軌道よりも外径寸法が小さい、内輪を外嵌支持する為の嵌合用円筒面を、同じく軸方向中間部で上記内輪軌道とこの嵌合用円筒面との間に、外径が異なるこれら内輪軌道と嵌合用円筒面とを連続させる径変化部分を、内周面の軸方向一端寄り部分に懸架装置に結合固定する為の内向フランジ状の静止側フランジを、それぞれ有する、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材の製造方法であって、
    金属製の素材に鍛造加工を施して、全体が中空筒状で、外周面の軸方向中間部に上記径変化部分を有し、軸方向一端側部分の外径寸法が軸方向他端側部分の外径寸法よりも大きく、軸方向一端側部分の肉厚が軸方向他端側部分の肉厚よりも大きい中間素材を形成した後、この中間素材の外周面をダイスにより拘束した状態で、この中間素材の軸方向一端面の内径寄り部分にパンチの先端部を押し付け、このパンチをこの中間素材の軸方向他端側に向けて押し込む事により、この中間素材の軸方向一端部の内径寄り部分を構成する金属材料を、軸方向他端側に且つ径方向内方に移動させて、内周面の軸方向一端寄り部分に上記静止側フランジを形成する、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する内径側軌道輪部材の製造方法。
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