JP2010241047A - 防水通音膜とそれを用いた防水通音部材および電気製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】音声機能を備える電気製品の筐体における開口など、音声が伝達される部分に配置されたときに高い防水性を実現できるとともに、音の歪みの発生が抑制された防水通音膜を提供する。
【解決手段】積層および一体化された2以上の延伸多孔質膜を有し、2以上の延伸多孔質膜から選ばれる少なくとも2つの膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見て互いに直交または斜交している防水通音膜とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、音声機能を備えた電気製品(例えば携帯電話)に使用される防水通音膜に関する。また、本発明は、当該防水通音膜を備える防水通音部材および電気製品に関する。
近年、携帯電話などの携帯型情報通信機器の開発、普及が急速に進んでいる。これに伴い、従来想定されていた通常の屋内外だけでなく、海岸、森林地帯など、より過酷な条件下での機器の使用頻度が増しており、このような使用状況下における機器の防水性の確保が重要な課題となっている。
電気製品の防水性に関する規格の一つに、JIS C0920に定められた「電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」がある。上述の使用状況を考慮すると、当該規格で定められた「水に対する保護等級7(IPX7)」に相当する防水性が望まれる。IPX7を満たす電気製品は、誤って水中に落とされた場合にも、所定の水深および時間内であれば、製品内部への浸水を避けることができる。
携帯電話など、音声機能を備えた電気製品においてIPX7相当の防水性を実現するためには、スピーカー、マイク、ブザーなどの発音部および受音部の防水をいかに行うかが重要となる。発音部および/または受音部を備える電気製品の筐体には、これらの部分と筐体外部との間で音声を伝達するための開口が設けられているが、この開口において高い防水性と良好な通音性との両立を図らねばならないためである。
良好な通音性を確保しつつ、発音部および受音部のための開口から筐体内部への水の侵入を防ぐ部材として、防水通音膜が知られている。防水通音膜は、音の伝達を阻害しにくい材料からなる薄膜である。筐体の開口を防水通音膜で塞ぐことにより、当該開口における通音性と防水性との両立を図ることができる。防水通音膜には、延伸により生じた無数の細孔の分散構造を有する延伸多孔質膜が好適である。特開平3-41182(特許文献1)には、延伸多孔質膜を有する防水通音膜として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)多孔質膜を有する防水通音膜が示されており、これらの防水通音膜が高い防水性と通音性とを兼ね備えることが記載されている。
特開平3-41182号公報
筐体の開口を延伸多孔質膜を有する防水通音膜で塞ぐことによって、当該開口における防水性および通音性は確保されるものの、防水通音膜の配置後に行われる開口の通音性試験の際に、しばしば「音の歪み」が確認される。音の歪みとは、音声の変質の一種であり、人間の耳には「ビビリ音(障子紙が震えるような振動音)」あるいは音の「ばたつき」「こもり」として聞こえる。従来、音の歪みは特に考慮されていなかったが、携帯電話などの機器の高性能化ならびに新たな情報サービスの提供に伴って(例えば、機器に配信される着信メロディーの音質は、使用者の満足度および商品の訴求力向上に重要である)、問題視されるようになってきている。このため、音声機能を備える電気製品の筐体における開口など、音声が伝達される部分に配置されたときに高い防水性を実現できるとともに、音の歪みの発生ができるだけ抑制された防水通音膜が求められている。
なお、音の歪みは、全高調波歪率(Total Harmonic Distortion: THD)により定量的に表すことができる。THDは、音響機器の特性評価に広く用いられているパラメータであり、機器に入力した信号(一般に正弦波が使用される)に対する、出力中の高調波成分およびノイズのレベル比により示される。高調波成分とは、入力信号の周波数に対してその整数倍の周波数を示す成分である。防水通音膜を配置していない場合に測定される音(これをブランクとする)に対して、防水通音膜を配置した場合に測定される音のTHDが有意に大きい場合、配置された防水通音膜によって音の歪みが発生したと判断できる。また、測定されたTHDの値が大きいほど、音の歪みの発生量が大きいと判断できる。
本発明者らは鋭意検討の結果、防水通音膜の配置による音の歪みの発生に、当該膜を構成する延伸多孔質膜に特徴的に見られる「膜の面内方向における力学的特性の異方性」が大きな影響を与えていること、ならびにこの異方性の緩和によって音の歪みの発生が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の防水通音膜は、積層および一体化された2以上の延伸多孔質膜を有し、前記2以上の延伸多孔質膜から選ばれる少なくとも2つの膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見て、互いに直交または斜交している。
本発明の防水通音部材は、本発明の防水通音膜と、前記防水通音膜に接合された支持体とを備える。
本発明の電気製品は、音声機能を備えた電気製品であって、音声を出力するための発音部および音声を入力するための受音部から選ばれる少なくとも1つと、前記発音部および/または受音部と外部との間で音声を伝達できるとともに、前記発音部および/または受音部への水の侵入を抑制する防水通音膜とを備え、前記防水通音膜が本発明の防水通音膜である。
延伸多孔質膜は、当該多孔質膜を構成する樹脂からなるシートを一軸延伸または二軸延伸(典型的には二軸延伸)することにより形成される。このとき、一軸延伸では一つの方向のみの延伸が行われるために、また、二軸延伸では、一段目の延伸と二段目の延伸との間で延伸時における膜の形態変化の様子が異なるために、得られた延伸多孔質膜は、その面内方向の力学的特性に大きな異方性を持つ。例えば、二軸延伸により形成された延伸多孔質膜における一段目の延伸方向あるいは一軸延伸により形成された延伸多孔質膜の延伸方向(本明細書では、これらの方向を「一次延伸の方向」と称する)の引張強度は、これに直交する面内方向(二軸延伸により形成された膜においては二段目の延伸方向:二次延伸方向)の引張強度の3〜20倍程度となる。また、各々の方向へ引張試験を行った際に測定される応力−歪み(伸び)特性(S−S特性)も互いに大きく異なり、一次延伸方向への試験では、わずかな伸びで最大強度に達した後に膜が破断するのに対して、これに直交する面内方向への試験では、低い応力によって膜が大きく伸長する(図1参照)。なお、一軸延伸ならびに二軸延伸における一段目の延伸では、主として樹脂の繊維化と、繊維状となった樹脂が延伸方向に伸長する変化とが生じ、二軸延伸における二段目の延伸では、主として隣接する繊維間の間隔が増大する変化が生じる。
本発明の防水通音膜では、2以上の延伸多孔質膜を積層および一体化させるとともに、2以上の延伸多孔質膜から選ばれる少なくとも2つの膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見て互いに直交または斜交した構造を導入することによって、膜の面内方向における力学的特性の異方性が緩和される。そして、この異方性の緩和により、筐体の開口など、音声が伝達される部分に防水通音膜が配置されたときに、延伸多孔質膜に由来する高い防水性が得られるとともに、音の歪みの発生が抑制される。
延伸多孔質膜における、一次延伸方向への引張試験時に測定される応力−歪み(伸び)曲線(S−S曲線)の典型的な一例と、延伸多孔質膜における、一次延伸方向とは直交する面内方向への引張試験時に測定されるS−S曲線の典型的な一例とを示す模式図である。 本発明の防水通音膜の一例を模式的に示す断面図である。 図2に示す防水通音膜を、その主面に垂直な方向から見た(図2の矢印Aの方向に見た)平面図である。 PTFE多孔質膜の一例を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した図である。 本発明の防水通音部材の一例を示す斜視図である。 本発明の防水通音部材の別の一例を示す上面図である。 本発明の電気製品の例である携帯電話の一例を示す正面図である。 本発明の電気製品の例である携帯電話の一例を示す背面図である。
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
図2に示す防水通音膜1は、2つの延伸多孔質膜11,12が積層および一体化された構造を有する。防水通音膜1を構成する延伸多孔質膜11,12は、図3に示すように、その一次延伸の方向(それぞれ矢印BおよびCの方向)が、当該膜11,12の主面に垂直な方向から見たときに(図2に示す矢印Aの方向に見たときに)互いに直交している。防水通音膜1は、延伸多孔質膜に由来する高い防水性を示す。また、防水通音膜1では、延伸多孔質膜を一層のみ有する防水通音膜、あるいは2以上の延伸多孔質膜を有するが、それぞれの膜の一次延伸方向が平行である防水通音膜に比べて、音声機能を有する電気製品の筐体における開口など、音声が伝達される部分への配置による音の歪みの発生が抑制される。
防水通音膜1では、当該膜の面内方向における力学的特性の異方性が従来の防水通音膜に比べて緩和されることで、音の歪みの発生が抑制される。異方性の緩和により音の歪みの発生が抑制されるメカニズムの一つに、「シワ」の抑制があると考えられる。
音声が伝達される部分に配置された状態で防水通音膜にシワが存在すると、シワの形態や密度などにもよるが、音声伝達時の防水通音膜に共鳴現象が起こり、高調波が発生することで音の歪みが生じると考えられる。本発明者らが、音の歪みの発生が見られる防水通音膜を解析したところ、当該膜を構成する延伸多孔質膜の一次延伸方向に対して平行に、多くのシワが発生していることが明らかとなった。さらに解析を続けたところ、延伸多孔質膜の面内方向における力学的特性の異方性が、特定の方向にシワが発生する要因となっていることが判明した。例えば、防水通音膜の加工時(一例として、所定の形状への切り出し時)に、延伸多孔質膜に加わる応力が当該膜の全ての面内方向で均一であったとしても、図1に示すように、加わった応力に対して発生する歪み量が各方向で異なるため、特定の方向にシワが発生する。本発明の防水通音膜では、面内方向における力学的特性の異方性が緩和され、より等方的な特性となっているため、このようなシワの発生が抑制され、音の歪みの発生が抑えられると考えられる。
本発明の防水通音膜の構成は、(1)積層および一体化された2以上の延伸多孔質膜を有し、(2)これら2以上の延伸多孔質膜から選ばれる少なくとも2つの膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見て互いに直交または斜交した構造を有する限り、特に限定されない。
本発明の防水通音膜が有する延伸多孔質膜の数は2以上の任意の数であればよいが、上述した異方性の緩和がより確実となることから、偶数であることが好ましい。また、延伸多孔質膜の数が多いほど、延伸多孔質膜を積層および一体化する際における各膜の配置の自由度が高くなるため、異方性の緩和をより確実にできる。ただし、延伸多孔質膜の数が多くなると防水通音膜としての面密度が大きくなる傾向にあり、過大な面密度は音圧損失の増大など、防水通音膜の通音性に影響を及ぼすため、得たい音響特性にあわせて延伸多孔質膜の数を選択する必要がある。
本発明の防水通音膜の面密度は(複数層の合計で)1〜20g/m2が好ましい。面密度がこの範囲にある防水通音膜は、物理的強度が十分であるとともに、音圧損失が小さく、通音性に優れる。上記面密度は、2〜10g/m2がより好ましい。
本発明の防水通音膜では、少なくとも2つの延伸多孔質膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見たときに、互いに直交または斜交している。この少なくとも2つの延伸多孔質膜の一次延伸の方向は、当該膜の主面に垂直な方向から見て互いに直交していることが好ましく、この場合、防水通音膜が有する延伸多孔質膜の数が少ない(典型的には延伸多孔質膜の数が2)ときにも、上述した異方性の緩和がより確実となる。なお、直交とは、各方向の交差角度がほぼ90°である(好ましくは90°を中心に、プラスマイナス3°の範囲を含む)ことを意味する。一方、斜交の際の各方向の交差角度は、典型的には10°以上90°未満、好ましくは30°以上90°未満、より好ましくは45°以上90°未満である。
図2に示す防水通音膜1では、一次延伸の方向が互いに直交する2つの延伸多孔質膜11,12が隣り合っているが、本発明の効果が得られる限り、延伸多孔質膜以外の任意の層が当該2つの延伸多孔質膜の間に配置されていてもよい。換言すれば、上記2以上の延伸多孔質膜は、本発明の効果が得られる限り、延伸多孔質膜以外の任意の層が間に配置された状態で積層および一体化されていてもよい。同様に、上記2以上の延伸多孔質膜は、本発明の効果が得られる限り、延伸多孔質膜以外の任意の層とともに積層および一体化されていてもよい。
本発明の防水通音膜の防水性は、JIS L1092に記載されている耐水度試験機(高水圧法)を用いて測定した耐水圧の値にして、9.8kPa以上が好ましい。耐水圧9.8kPaは水深1mにおける水圧に耐えられることを意味しており、この場合、JIS C0920に定められたIPX7に相当する防水性が得られる。IPX7に相当する防水性をより確実に得るためには、上記値にして100kPa以上の耐水圧を防水通音膜が有することが好ましい。
このような高い耐水圧は、例えば、防水通音膜が有する少なくとも1つの延伸多孔質膜の平均孔径を1μm以下とすることで得られる。より高い防水性が得られることから、少なくとも1つの延伸多孔質膜の平均孔径が0.7μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。なお、このとき、防水通音膜が有する他の延伸多孔質膜の平均孔径が1μmを超えていても、防水通音膜の防水性は影響を受けない。例えば、少なくとも1つの延伸多孔質膜の平均孔径が1μm以下であるが、2以上の延伸多孔質膜全体としての平均孔径が5μmを超える場合にも、同等の高い防水性が得られる。
なお、延伸多孔質膜に対する平均孔径の測定方法は、ASTM F316−86に記載されている測定法が一般に普及しており、自動化された測定装置が市販されている(例えば、米国Porous Material Inc.より入手可能なPerm-Porometer)。この方式は、既知の表面張力を持つ液体に浸漬した延伸多孔質膜をホルダに固定し、一方から加圧することによって膜から液体を追い出し、その圧力から平均孔径を求めるものである。この方式は簡便かつ再現性が高いだけでなく、測定装置を完全に自動化できるという点で優れている。
延伸多孔質膜の気孔率は特に限定されないが、60〜95%が好ましく、75〜95%がより好ましい。
延伸多孔質膜は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜であり、本発明の防水通音膜では、少なくとも1つの延伸多孔質膜がPTFE多孔質膜であることが好ましい。
PTFE多孔質膜は、PTFEシートを一軸延伸または二軸延伸することにより形成される延伸多孔質膜であり、延伸により形成された細孔が無数に分散した構造を有する(図4参照)。図4に示すように、各細孔は、フィブリルと呼ばれる微細な繊維によって囲まれている。また、細孔によっては、さらにノードと呼ばれるPTFEの集合体が接している。延伸の条件にもよるが、PTFE多孔質膜におけるフィブリルの多くは、一次延伸の方向に伸長している。
延伸多孔質膜は、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)多孔質膜であってもよい。UHMWPE多孔質膜は、UHMWPEシートを一軸延伸または二軸延伸することにより形成される延伸多孔質膜であり、PTFE多孔質膜と同様の細孔構造を有する。
本発明の防水通音膜を構成する膜に対して、含フッ素ポリマーなどの撥水剤による撥水処理が行われていてもよい。この場合、防水通音膜の防水性がさらに高くなる。
本発明の防水通音膜は、例えば、2以上の延伸多孔質膜を、当該2以上の延伸多孔質膜から選ばれる少なくとも2つの膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見て互いに直交または斜交するように積層し、一体化して形成できる。
積層および一体化させる延伸多孔質膜は、公知の方法により製造できる。延伸多孔質膜製造時の延伸は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。
延伸多孔質膜の積層方法は、少なくとも2つの延伸多孔質膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見て互いに直交または斜交するように積層できる限り、特に限定されない。積層した2以上の延伸多孔質膜は、圧着によって、あるいは圧着および焼成によって一体化できる。圧着および焼成には、例えばプレス型または熱ロールを使用できる。
本発明の防水通音膜を形成する際には、上述した延伸多孔質膜の積層および一体化工程以外の工程を、必要に応じて、任意の時点で実施してもよい。
本発明の防水通音部材の一例を図5に示す。図5に示す防水通音部材2は、膜の主面に垂直な方向から見た形状が円である本発明の防水通音膜1と、当該膜1の周縁部に接合されたリング状のシートからなる支持体21とを備える。防水通音膜1に支持体21が接合された形態により、防水通音膜1が補強されるとともに、その取扱が容易となる。また、支持体21が、筐体における開口など、防水通音部材2が配置される部分への取り付けしろとなるため、防水通音膜1の取り付け作業が容易となる。さらに、防水通音膜1の周縁部にのみ支持体21が接合しているため、防水通音膜1の全体に支持体が接合している形態よりも、優れた音響特性を確保できる。
支持体21の形状は特に限定されない。例えば、図6に示すように、膜の主面に垂直な方向から見た形状が矩形である防水通音膜1の周縁部に接合された、額縁状のシートからなる支持体21であってもよい。本発明の防水通音膜1では、その面内方向における力学的特性の異方性が緩和されているため、このような形状を有する防水通音膜1および支持体21を用いて防水通音部材2を形成した場合においても、防水通音膜1におけるシワの発生が抑えられることで、音の歪みの発生が抑制される。
支持体21の材質は特に限定されないが、熱可塑性樹脂あるいは金属が好適である。熱可塑性樹脂は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)などのポリエステル、ポリイミドあるいはこれらの複合材である。金属は、例えばステンレスやアルミニウムのような耐蝕性に優れる金属である。
支持体21の厚さは、例えば5〜500μmであり、25〜200μmが好ましい。また、取り付けしろとしての機能に着目すると、リング幅(額縁幅:外形と内径との差)は0.5〜2mm程度が適当である。支持体21には、上記樹脂からなる発泡体を使用してもよい。
防水通音膜1と支持体21との接合方法は特に限定されず、例えば、加熱溶着、超音波溶着、接着剤による接着、両面テープによる接着などの方法を適用できる。特に、両面テープによる接着が、防水通音膜1と支持体21との接着が容易であることから好ましい。
図7Aおよび図7Bに、防水通音膜1を備える本発明の電気製品の一例を示す。図7Aおよび図7Bに示す電気製品は、携帯電話5である。携帯電話5の筐体9には、スピーカー6、マイク7、ブザー8などの発音部および受音部のための開口が設けられている。これらの開口を塞ぐように、防水通音膜1が内側から筐体9に取り付けられている。これにより、筐体9の内部への水や埃の侵入が阻止され、発音部および受音部が保護される。また、防水通音膜1の配置による音の歪みの発生が抑制される。
防水通音膜1の筐体9への取り付けは、筐体9との接合部から水か侵入することのないように、例えば、両面テープを用いた貼付、熱溶着、高周波溶着、超音波溶着などの方法により行われる。防水通音膜1は、支持体21を介して、即ち、防水通音部材2として、筐体9へ取り付けてもよい。
防水通音膜1は、携帯電話5だけでなく、音声の出力を行うための発音部および音声の入力を行うための受音部から選ばれる少なくとも1つを備えた電気製品に適用できる。具体的には、ノートパソコン、電子手帳、デジタルカメラ、携帯用オーディオのような音声機能を備えた各種電気製品に適用可能である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
最初に、防水通音膜の作製に用いたPTFE多孔質膜の特性ならびに作製した防水通音膜の音響特性の評価方法を示す。
[平均孔径]
PTFE多孔質膜の平均孔径は、Porous Material Inc.製Perm-Porometerを用い、ASTM F316−86に準拠して求めた。測定には、フッ素系溶媒(スリーエム社製、FC−40、表面張力16mN/m)を用いた。
[通気量]
PTFE多孔質膜の通気量は、JIS P8117(ガーレー試験法)に準拠して、ガーレー数(所定の圧力を加えた時に、体積100mLの空気が多孔質膜を透過するのに必要な時間)により求めた。
[面密度]
PTFE多孔質膜の面密度は、φ47mmのポンチで多孔質膜を打ち抜いた後、打ち抜いた部分の質量を測定し、1m2あたりの質量に換算して求めた。
[耐水圧]
PTFE多孔質膜の耐水圧は、JIS L1092に記載されている耐水度試験機(高水圧法)を用いて求めた。ただし、JIS L1092に規定の面積では膜が著しく変形するため、ステンレスメッシュ(開口径2mm)を膜の加圧面の反対側に設置し、変形を抑制した状態で測定した。
[引張強度]
PTFE多孔質膜における面内方向の引張強度は、以下のように評価した。
評価対象であるPTFE多孔質膜をJIS K7113に記載の2ダンベル号の形状に打ち抜いた後、得られた試験片を引張試験機(エー・アンド・ディー社製、テンシロン万能試験機MODEL:RTC-1310A-PL)により引張試験を行うことで求めた。なお、引張強度は、PTFE多孔質膜における一次延伸の方向および二次延伸の方向に対してそれぞれ測定した(実施例で用いたPTFE多孔質膜は逐次二軸延伸により形成された膜であり、面内方向の引張強度に関して、一次延伸方向に最大値を、二次延伸方向に最小値を示す)。引張試験時のチャック間距離は95mm、引張速度は200mm/分、測定温度は25℃とした。
引張強度は、引張試験によって防水通音膜が破断したときの最大負荷加重(N)を、防水通音膜の引張試験前の断面積(mm2)で除した値となる。なお、試験片の幅は6mmであり、試験片の厚さは、試験片ごとにダイヤルゲージにより測定した。
[音響特性]
作製した防水通音膜の音響特性は、以下のように評価した。
最初に、携帯電話の筐体を想定した模擬筐体(ポリスチレン製、外形67×37×12mm)を準備した。この模擬筐体には、スピーカ取付穴(φ=13mm)とスピーカケーブルの導通孔とが各々1箇所設けられている以外は開口がない。次に、両面テープ(日東電工製、No.5620A、厚さ0.2mm)を外形16mm、内径13mmのリング状に打ち抜き、このテープを用いて、模擬筐体におけるスピーカ取付穴の内側にスピーカ(スター精密製、SCG-16A)を貼り付けた。スピーカケーブルは、上記導通孔を通して模擬筐体の外部に導きだした。なお、スピーカケーブルを導き出した後、導通孔をパテで塞いだ。
次に、各実施例および比較例において作製した防水通音膜を、トムソン型を用いて直径16mmの円形に打ち抜き、打ち抜いた防水通音膜を、上記リング状の両面テープを用いて模擬筐体におけるスピーカ取付穴の外側に貼り付けた。防水通音膜を模擬筐体に貼り付ける際には、防水通音膜がスピーカ取付穴の全体を覆うとともに、両面テープと模擬筐体との間ならびに防水通音膜と両面テープとの間に隙間ができないようにした。
次に、スピーカケーブルとマイク(B&K製、Type2669)とを音響評価装置(B&K製、Multi-analyzer System 3560-B-030)に接続し、模擬筐体のスピーカ取付穴から50mm離れた位置にマイクを配置した。次に、評価方式としてSSR分析(試験信号20Hz〜20kHz、sweep)を選択、実行し、防水通音膜の音響特性(THD、音圧損失)を評価した。なお、防水通音膜を貼り付けることなく別途測定したブランクの音圧は、84dB(周波数1kHz、1.6kHz、2kHz、3.2kHzの平均)であった。
全高調波歪率THDは、音響評価装置からスピーカに入力された試験信号と、マイクで受信された信号とから自動的に求められ、その値が小さいほど、音の歪みの発生が少ないと判断できる。音圧損失は、上記ブランクの音圧から、防水通音膜を貼り付けた状態で測定した音圧を引くことにより得られる値である。音圧損失が小さいほど、スピーカから出力された音量が維持されていると判断できる。
(実施例1)
PTFE多孔質膜として、日東電工製、NTF1026を準備した。NTF1026は、二軸延伸により形成されたPTFE多孔質膜であり、その平均孔径、面密度、通気量、耐水圧、引張強度の評価結果ならびに厚さは、以下の表1のとおりである。
表1に示すようにNTF1026の耐水圧は240kPaであり、この膜単体で、JIS C0920に定められたIPX7に相当する防水性が得られる。
次に、NTF1026を矩形状に2枚切り出し、切り出した2枚のNTF1026を、各々の膜の一次延伸の方向が各膜の主面に垂直な方向から見て直交するように、積層した。次に、積層した2枚の膜をプレス機で圧着(印加圧力100kPa、圧着時間5秒)した後、ステンレス製の枠に固定した状態で焼成して(焼成オーブン温度360℃、焼成時間1分)、防水通音膜とした。
(実施例2)
焼成を行わなかった以外は実施例1と同様にして、防水通音膜を得た。
(比較例1)
1枚のNTF1026を、他の延伸多孔質膜と積層および一体化することなく、そのまま防水通音膜とした。
(比較例2)
実施例1と同様に矩形状に切り出した2枚のNTF1026を、各々の膜の一次延伸の方向が各膜の主面に垂直な方向から見て平行となるように、積層した。次に、積層した2枚の膜を実施例1と同様に圧着および焼成して、防水通音膜とした。
実施例1、2および比較例1、2で作製した防水通音膜に対する音響特性の評価結果を、以下の表2に示す。なお、THD、音圧損失ともに、入力信号400Hzおよび800Hzにおける値を示す。
表2に示すように、実施例1、2では、PTFE多孔質膜を1枚のみ用いた比較例1に対して音圧損失が若干上昇したものの、当該比較例および比較例2に対してTHDが大きく減少した。
本発明の防水通音膜は、その高い防水性から、海岸、森林など、近年、使用場所が通常の屋内外から大きく広がりつつある電気製品への使用に好適である。また、本発明の防水通音膜は、音声が伝達される部分に配置されたときに音の歪みの発生が抑制されるため、スピーカから発生される音質あるいはマイクに入力される音質が重要視される電気製品への使用に好適である。
1 防水通音膜
11、12 延伸多孔質膜
2 防水通音部材
21 支持体
5 携帯電話
6 スピーカー
7 マイク
8 ブザー
9 筐体

Claims (6)

  1. 積層および一体化された2以上の延伸多孔質膜を有し、
    前記2以上の延伸多孔質膜から選ばれる少なくとも2つの膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見て、互いに直交または斜交している防水通音膜。
  2. 前記2以上の延伸多孔質膜から選ばれる少なくとも2つの膜の一次延伸の方向が、当該膜の主面に垂直な方向から見て、互いに直交している請求項1に記載の防水通音膜。
  3. 少なくとも1つの前記延伸多孔質膜が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜である請求項1に記載の防水通音膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の防水通音膜と、
    前記防水通音膜に接合された支持体と、を備える防水通音部材。
  5. 前記支持体が、前記防水通音膜の周縁部に配置されたリング状または額縁状のシートである請求項4に記載の防水通音部材。
  6. 音声機能を備えた電気製品であって、
    音声を出力するための発音部および音声を入力するための受音部から選ばれる少なくとも1つと、前記発音部および/または受音部と外部との間で音声を伝達できるとともに、前記発音部および/または受音部への水の侵入を抑制する防水通音膜とを備え、
    前記防水通音膜が請求項1〜3のいずれかに記載の防水通音膜である、電気製品。
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