JP2010240711A - 中炭素鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

中炭素鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】中炭素鋼の鋳造時に発生が懸念される鋳片短辺部の凝固シェル再溶解に起因する再溶解性ブレークアウトを完全に防止する。
【解決手段】炭素含有量が0.08〜0.16質量%の中炭素鋼を、鋳片厚さに相当する厚さが240mmを超え、鋳造方向の長さが1.1m以下の鋳型を用いて連続鋳造する方法である。CaO/SiO2が1.2〜2.5、凝固温度が1200〜1280℃であるモールドフラックスと、吐出孔が水平方向よりも下方に向いた浸漬ノズルを使用する。磁極の鋳造方向中心位置を前記吐出孔よりも下方の位置として静磁場印加装置を配置するとともに、鋳型厚さ方向中心部における磁場の強度が0.15T以上の静磁場を溶鋼に印加し、鋳片の凝固シェル健全指数Aが190以上となる条件で鋳造する。
【効果】鋳片短辺部の凝固シェル再溶解に起因する再溶解性ブレークアウトを完全に防止でき、中炭素鋼の連続鋳造が安定して行える。
【選択図】図2

Description

本発明は、一般に中炭素鋼と称される炭素含有量が0.08〜0.16質量%(以下、単に「%」とも記す。)の鋼を連続鋳造する際に、鋳片のブレークアウト発生を防止し、安定した操業を行うことのできる連続鋳造方法に関するものである。
近年、鉄鋼業における生産性の向上は著しいものがあり、連続鋳造分野では高速鋳造時における安定操業の確保が重要な課題となっている。とりわけ、中炭素鋼(亜包晶鋼)では、δ鉄相からγ鉄相への変態に起因する大幅な体積収縮により、鋳片の凝固が不均一となる。
特に、鋳型内での初期凝固時における上記の現象は、凝固シェルに凹凸を形成する。凝固シェルの薄い部分は浸漬ノズルからの吐出流により再溶解されやすいので、鋳片の短辺面(鋳片の幅方向側面)からのブレークアウトを発生する可能性が高くなる。
連続鋳造鋳片のブレークアウトは、操業停止に至る重大事故であって、連続鋳造プロセスにおける安定稼動の大きな阻害要因であり、その発生は是非とも回避する必要がある。
このような凝固シェルの再溶解にともなうブレークアウトの発生を防止するためには、鋳型内における凝固シェルの不均一凝固を抑制するか、もしくは凝固シェルの再溶解を抑制することが効果的であることが知られている。
その対策としてモールドフラックスの特性改善による凝固シェル厚の均一化や、溶鋼過熱度などを調整する方法が提案されている。
上記の不均一凝固を抑制する方法の一つとして、モールドフラックスの物性または成分組成を調整することにより、鋳型内における初期凝固殻の不均一生成を抑制することを目的とした方法がある。
例えば特許文献1には、CaO、SiO2、Na2O、Al2O3、F、Cを含有し、かつ0.7<CaO/SiO2<1.8、1300℃における粘度が1〜4poise、凝固温度が900〜1300℃の連続鋳造用パウダーが開示されている。この連続鋳造用パウダーは、鋳型と凝固シェルとの間にパウダーが流入したときに、鋳型に接する側が結晶相を晶出する特性を有するものである。
また、特許文献2には、鋳片の縦割れ防止用、鋳片の内部欠陥防止用、ブレークアウト防止用の1または2以上の特性を有するパウダーを造り分け、鋳造時に選択使用する連続鋳造法が開示されている。
また、特許文献3には、1300℃における粘度が0.1〜5.0poiseで、CaO/SiO2が1.2以上のモールドパウダーの消費量が所定値以下になるようにオシレーション条件を調整して、1.6m/min以上の速度で中炭素鋼を鋳造する方法が開示されている。この方法によれば、縦割れを防止して安定高速鋳造を行うことができる。
また、特許文献4には、中炭素鋼を、鋳造速度2.0m/min以上の高速で連続鋳造するに当たり、抜熱量を4.0〜9.0MJ/tに制御する高速鋳造方法が開示されている。
しかしながら、凝固シェルの不均一部位を起点とした割れや破断によるブレークアウトの発生を防止するには、鋳型内面と凝固シェルとの間の条件を規定し、凝固シェル外面からその不均一性を抑制するだけでは十分ではない。浸漬ノズルからの溶鋼の吐出流による凝固シェル内面からの再溶解現象をも配慮した対策が必要である。
溶鋼の過熱度の調整も凝固シェルの不均一形成を抑制するための方法の一つである。
例えば、特許文献5には、鋳型内溶融金属の測定温度結果に基づいて、鋳造速度を変更し、連続鋳造鋳片のブレークアウトの防止を図るとともに、鋳込み後に鋳片の表面欠陥および内質欠陥の手入れを行う連続鋳造方法が開示されている。
しかしながら、特許文献5で開示された方法では、測定装置を設置する必要があるため設備コストが上昇し、また鋳型内の溶鋼に測定装置を継続的に浸漬させるので、浸漬部分の溶断などに起因する操業トラブルや鋳片の品質不良が発生するおそれがある。
また、特許文献5には、鋳造速度や溶鋼過熱度との関係が明確には示されておらず、例えばブレークアウトを防止するために、鋳造速度を必要以上に減速する場合も発生し、生産能力の低下を招きかねない。
前記の通り、従来の中炭素鋼の連続鋳造技術には下記の問題が残されていた。
すなわち、
(1) 凝固シェルの不均一部位を起点とした割れや破断によるブレークアウトの発生を防止するには、凝固シェルの外面からの不均一抑制対策のみでは不十分であり、浸漬ノズルからの吐出流による凝固シェルの再溶解をも抑制する必要がある。
(2) 上記(1)への対応として、溶鋼の過熱度および鋳造速度を調整する鋳造方法が提案されているが、溶鋼過熱度、鋳造速度などを含めた適正操業条件が明確ではない。また、設備上のトラブルも懸念され、安定操業を実現するための鋳造方法として、なお改善の余地がある。
特開2003−94150号公報 特開平9−192805号公報 特開2003−170259号公報 特開2003−334635号公報 特開平6−170511号公報
本発明が解決しようとする問題点は、従来の中炭素鋼の連続鋳造技術において、凝固シェルの不均一部位を起点とした割れや破断によるブレークアウトの発生を防止するには、凝固シェルの外面からの不均一抑制対策のみでは不十分であるという点である。
また、溶鋼の過熱度および鋳造速度を調整する鋳造方法の場合、溶鋼過熱度、鋳造速度などを含めた適正操業条件が明確ではなく、また設備上のトラブルも懸念されるという点である。
発明者らは、上述の課題を解決するため、鋳片短辺部のバルジング応力によりブレークアウトし易い、厚さが240mmを超える中炭素鋼鋳片を、鋳型出側での凝固シェル厚を確保し難い、長さが1.1m以下の鋳型を用いた連続鋳造方法について研究を重ねた。その結果、湾曲型または垂直曲げ型連続鋳造機により、安定して鋳造できる連続鋳造方法について、以下の知見を得た。
浸漬ノズルから鋳型短辺に向かって流れる吐出流の熱エネルギーをEf、鋳型内で形成される初期凝固シェルの再溶解に必要なエネルギーをEsとした場合、下記数式1で表される鋳片の凝固シェル健全指数Aが190以上となるように鋳造する。
このようにすれば、鋳片短辺部のブレークアウトを防止することができる。なお、前記熱エネルギーEfは、速度×面積×密度×温度×比熱で、また前記エネルギーEsは、凝固シェル体積×密度×融解熱で求めることができる。
前記凝固シェル健全指数Aの計算方法について説明する。
1600℃に近い鋳型内の溶鋼温度と流速を測定することは困難であるため、鋳型内熱流動の数値解析シミュレーションから、鋳型内溶鋼の流速と温度分布を求める。
図1に鋳型内溶鋼流れの模式図を示す。鋳型1内に形成された凝固シェル2に衝突して、凝固シェル2を再溶解する単位時間あたりの熱エネルギーEfは、下記数式2で表される。なお、図1中の3は浸漬ノズル、4は鋳型1内の溶鋼であり、浸漬ノズル3から吐出される溶鋼流(以下、「溶鋼吐出流」という。)を矢印で示している。
数式2において、uは凝固シェルに衝突する溶鋼流の速度(m/sec)であり、Tは前記溶鋼流の温度(℃)である。uとTは位置により異なる値であり、数値解析シミュレーションで微小分割された領域の面積dSで積分する。また、凝固シェルに衝突する方向の流速を正とし、逆方向の流速の場合はu=0とする。
連続鋳造機では、凝固した溶鋼が速度Vcで引抜かれていくため、溶鋼吐出流が衝突する位置に単位時間に流入する凝固シェルの体積は、(凝固シェル断面積)×(鋳造速度)となる。
但し、溶鋼吐出流は、図1に示すように浸漬ノズル3の吐出孔3aから広がりをもって流出するため、衝突位置の凝固シェル断面積は代表的に次のように定義した。凝固シェルの厚みは、溶鋼吐出流の下端位置における凝固シェル厚みδを下記数式4から算出し、凝固シェル幅は浸漬ノズル吐出孔幅t0の2倍とした。2t0が鋳型厚みtを超える場合は、凝固シェル幅を鋳型厚みtとする。この凝固シェルを溶解するのに必要な単位時間当たりに必要な熱エネルギーEsは、下記数式3となる。
以上のように定義したEsとEfの比(=Es/Ef)であるAの次元を確認すると、上記数式1に示すように、分子と分母の次元が同じ次元である無次元数となる。
また、前記数式2、3における融解熱ΔH、溶鋼の密度ρL,ρS、比熱Cpの代表値は、例えばC含有量が0.1%程度では、それぞれΔH=65(kcal/kg)、ρL,ρS=7.8(kg/m3)、Cp=0.15(kcal/kg/K)の値を用いることができる。
なお、溶鋼の密度が不明な場合は、凝固温度付近では凝固シェルと溶鋼の密度差が小さいため、凝固シェル健全指数Aの算出の際に密度を省略してもよい。また、凝固速度係数kは、過去のブレークアウトトラブル時に鋳型内に残った凝固シェルの厚み分布を測定することにより求めた。
本発明の中炭素鋼の連続鋳造方法は、以上の知見をもとになされたものであり、
中炭素鋼の鋳造時に発生が懸念される鋳片短辺部の凝固シェル再溶解に起因する再溶解性ブレークアウトを完全に防止するために、
炭素含有量が0.08〜0.16質量%の中炭素鋼を、鋳片厚さに相当する厚さが240mmを超え、鋳造方向の長さが1.1m以下の鋳型を用いて鋳造する際に、
CaO質量%のSiO2質量%に対する比、CaO/SiO2が1.2〜2.5、凝固温度が1200〜1280℃であるモールドフラックスと、吐出孔が水平方向よりも下方に向いた浸漬ノズルを使用し、
磁極の鋳造方向中心位置を前記吐出孔よりも下方の位置として静磁場印加装置を配置するとともに、鋳型厚さ方向中心部における磁場の強度が0.15T以上の静磁場を溶鋼に印加し、前記数式1、数式2および数式3により定義される鋳片の凝固シェル健全指数Aが190以上となる条件で鋳造することを最も主要な特徴としている。
本発明では、モールドフラックスの性状、電磁力による溶鋼の流動制御、鋳造速度などを総合した最適条件で中炭素鋼を鋳造するので、鋳片短辺部の凝固シェル再溶解に起因する再溶解性ブレークアウトを完全に防止でき、中炭素鋼の連続鋳造が安定して行える。
従って、本発明の連続鋳造方法は、プロセスの安定稼動による生産性の向上および鋳片品質の向上の両面で、中炭素鋼の連続鋳造技術に大きく寄与することができる。
凝固シェル健全指数Aを計算する方法を説明する模式図で、(a)は垂直断面図、(b)は水平断面図である。 各鋳造条件における鋳造幅と凝固シェル健全指数Aの関係を示した図である。 鋳片短辺部における凝固性状の調査方法を説明する図である。 観察されたホワイトラインの一例を示した顕微鏡写真である。 各鋳造条件における鋳造幅とホワイトライン平均厚さの関係を示した図である。
本発明では、中炭素鋼の鋳造時に発生が懸念される再溶解性ブレークアウトを完全に防止するという目的を、鋳片の凝固シェル健全指数A(=Es/ Ef)の値を190以上とすることで実現した。
以下、本発明の中炭素鋼の連続鋳造方法について説明する。
本発明は、前記の通り、炭素含有率が0.08〜0.16%の中炭素鋼を、厚さが240mmを超え、長さが1.1m以下の鋳型を備えた連続鋳造機により、吐出孔が水平方向よりも下方を向いた浸漬ノズルを使用して鋳造する方法である。
本発明では、塩基度(CaO/SiO2)が1.2〜2.5で、凝固温度が1200〜1280℃であるモールドフラックスを使用する。浸漬ノズルの吐出孔よりも下方に設置された磁場印加装置を用いて鋳型厚さ方向中心部における磁場の強度が0.15T以上の静磁場を鋳型内溶鋼に印加する。
以上の条件で、前記数式1により表される鋳片の凝固シェル健全指数Aが190以上となるように鋳造するのである。
以下、本発明の中炭素鋼の連続鋳造方法について、さらに詳細に説明する。
(1) 鋳型の厚さおよび長さ
本発明は、鋳型厚さ(鋳片厚さ)が240mmを超え、鋳型長さが1.1m以下の鋳型を備えた連続鋳造機を用いて、鋳片短辺部のバルジング応力により鋳片がブレークアウトし易い中炭素鋼を鋳造する場合に適用される。
連続鋳造機の形式は、垂直型、垂直曲げ型、湾曲型などが主流であるが、特に形式は問わずに本発明を適用することが可能である。
鋳型長さが1.1mを超える場合は、鋳片の鋳型内通過時間を長くすることができて、鋳型出側における鋳片内凝固シェルの厚さを十分に確保できるので、ブレークアウトの発生するおそれは大幅に低下する。
そこで、発明者らは、ブレークアウトが発生するおそれの高い鋳型長さが1.1m以下の連続鋳造機を使用した場合に、ブレークアウトを防止することのできる中炭素鋼の最適な連続鋳造方法につき研究を重ねた。
(2) モールドフラックスの性状
本発明において使用するモールドフラックスの塩基度の適正範囲は1.2〜2.5で、凝固温度の適正範囲は1200〜1280℃である。
塩基度が1.2未満、または凝固温度が1200℃未満の場合、モールドフラックスの凝固過程における結晶相の析出量が少なく、ガラス相の占める比率が高くなる。従って、鋳型と凝固シェルとの間の熱伝達率が上昇することになって、鋳片からの抜熱量が増加し、緩冷却が達成できなくなくなるからである。
一方、塩基度が2.5を超えるか、または凝固温度が1280℃を超える場合は、鋳型と凝固シェルとの間の潤滑が阻害され、鋳型への凝固シェルの焼付きによる拘束性ブレークアウトが発生する可能性が高くなるからである。
(3) 静磁場流動制御条件
鋳型内静磁場流動制御装置などの静磁場印加装置を用いて溶鋼流動を制御する手段は、浸漬ノズルからの吐出流速を低下させるため、ブレークアウト防止には効果的な手段である。
発明者らは、鋳型の厚さ方向中心部において0.15T以上の磁場強度の静磁場を印加した場合、より効果が発揮されることを確認した。
また、下向きの吐出孔を有する浸漬ノズルを用いて鋳造する場合に、溶鋼吐出流に対して効果的に制動力を与えるには、静磁場印加装置は、磁場の最大値を示す位置が浸漬ノズルよりも下方に位置するように設置することが必要である。
発明者らは、溶鋼吐出流の通過経路の位置に静磁場印加装置を配置するのが一層効果的であることを確認した。
本発明において、下向きの吐出孔を有する浸漬ノズルを使用するのは、水平ないしは上向きの吐出孔を有する浸漬ノズルを使用した場合は、凝固シェルへのモールドパウダーの巻き込みが発生し、ブレークアウトに至った経緯があるためである。また、ブレークアウトに至らないまでも、品質不良が発生するためである。
(4) 凝固シェル健全指数Aの適正範囲
発明者らは、実際にブレークアウトが発生した鋳片の鋳造実績(静磁場の印加無し)を調査し、この調査結果を基に凝固シェル健全指数Aを算出した。また、鋳造速度が1.6m/minの場合と、1.7m/minの場合のシミュレーション(共に静磁場の印加有り)を行い、凝固シェル健全指数Aを求めた。これらの結果を図2に示す。
実際にブレークアウトが発生した鋳片の鋳造実績を元に凝固シェル健全指数Aを算出した結果、指数として最大で186という値が得られた(図2参照)。よって、ブレークアウトが発生しない条件として、本発明では、凝固シェル健全指数Aの適正範囲を190以上とした。
また、本発明により、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流速が増加するため、従来から鋳造速度の向上が困難と考えられていた広幅・高鋳造速度領域では、凝固シェル健全指数Aはある鋳造幅を境に低下することがシミュレーションの結果より確認された。これにより、広幅領域における鋳造速度向上の可能性が示唆された(図2参照)。なお、今回のシミュレーション結果では、1450mm幅付近に凝固シェル健全指数Aの極小点が存在している。
発明者らは、本発明の妥当性を確認するため、以下の連続鋳造試験を行い、得られた鋳片の縦断面を調査してその結果を評価した。
厚さが270mm、長さが0.9mの鋳型を備えた、機長が43mの垂直曲げ型連続鋳造機を用いて、鋼の主要成分組成が質量%で、C:0.10〜0.11%、およびMn:1.0%の中炭素鋼を鋳造した。鋳造速度は1.3〜1.8m/minの間で変化させた。
鋳造には、塩基度が1.8で、凝固温度が1235℃のモールドフラックスを使用し、吐出孔が水平方向よりも30°下方を向いた浸漬ノズルを使用した。
また、鋳型長辺面の外側で浸漬ノズルの吐出孔よりも下方に、静磁場流動制御装置を設置し、鋳型内の溶鋼に印加する静磁場の強度を調整することにより溶鋼の鋳型内流速を制御した。
試験条件および試験結果を下記表1に示す。
試験番号1〜4は、本発明で規定する条件を満足する発明例についての試験である。また、試験番号5〜8は、本発明で規定する条件を満たさない比較例についての試験である。
試験番号1〜4の発明例では、鋳片のブレークアウトは発生せず、中炭素鋼の安定鋳造操業が達成でき、安定鋳造操業の面において、極めて良好な結果を示した。
一方、本発明で規定する条件を満たさない試験番号5〜8の比較例は、いずれもある確率でブレークアウトが発生し、発明例に比べて劣った結果となった。
次に、初期凝固シェルの健全性を確認するため、鋳片の調査を行った。
図3は、鋳片の短辺部における凝固性状の調査方法を示す図である。
図3に示すように、鋳片5の短辺部から、鋳片5の短辺部の1/2厚さ位置の縦断面試料6を切り出し、図3中の斜線部で示した面にデンドライトエッチングを施した。当該位置では、鋳片5の短辺表面から数mm〜20mm程度の範囲に、鋳造方向に沿ってホワイトラインが確認された。観察結果の一例を図4に示す。
このホワイトラインは、鋳型内の溶鋼流動により凝固シェル前面のデンドライト樹枝間における偏析成分の濃化溶鋼が洗い流されて負偏析を形成することにより観察されるもので、鋳型内における凝固シェルの形成状況を把握するための重要な手がかりとなる。
この観察されたホワイトラインの平均厚みを初期凝固シェル厚として、鋳造幅との関係を調査した。ホワイトラインの平均厚みは、鋳片表面からホワイトラインまでの距離を代表で数点測った値の平均値である。その結果を図5に示す。
図1に示した凝固シェル健全指数Aのシミュレーション結果と同様に、1450mm幅近傍に極小値が存在することが確認された。これは浸漬ノズルからの吐出流による凝固シェル再溶解が、1450mm近傍で最大となるためであると考える。つまり、従来は困難と考えられてきた広幅領域での鋳造速度向上が可能であることが裏付けられた。
1450mm幅近傍で凝固シェル健全指数Aが極小となるのは、1450mm以下の領域では、鋳造幅の増加とともに浸漬ノズルから短辺へ向かう溶鋼流速が増大し、凝固シェルの再溶解量が増加するためである。
また、1450mm以上の領域では、鋳造幅の増加とともに浸漬ノズルから短辺へ向かう溶鋼流速は増大するが、電磁ブレーキによる溶鋼減速効果が発揮されて短辺に衝突するまでには十分減速され、凝固シェル再溶解量が鋳造幅の増加とともに減少するためである。
本発明によれば、モールドフラックスの性状、電磁力による溶鋼の流動制御、鋳造速度などを総合した最適条件で中炭素鋼を鋳造するので、鋳片短辺部の凝固シェル再溶解に起因する再溶解性ブレークアウトを完全に防止し、中炭素鋼を安定して連続鋳造できる。
従って、本発明の連続鋳造方法は、プロセスの安定稼動および鋳片品質の向上を要求される中炭素鋼の連続鋳造工程に広範に適用できる。また、従来困難と考えられていた広幅領域での鋳造速度向上が可能となり、能率向上に寄与している。
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
1 鋳型
2 凝固シェル
3 浸漬ノズル
3a 吐出孔
4 溶鋼

Claims (1)

  1. 炭素含有量が0.08〜0.16質量%の中炭素鋼を、鋳片厚さに相当する厚さが240mmを超え、鋳造方向の長さが1.1m以下の鋳型を用いて鋳造する際に、
    CaO質量%のSiO2質量%に対する比CaO/SiO2が1.2〜2.5、凝固温度が1200〜1280℃であるモールドフラックスと、吐出孔が水平方向よりも下方に向いた浸漬ノズルを使用し、
    磁極の鋳造方向中心位置を前記吐出孔よりも下方の位置として静磁場印加装置を配置するとともに、鋳型厚さ方向中心部における磁場の強度が0.15T以上の静磁場を溶鋼に印加し、下記数式1、数式2および数式3により定義される鋳片の凝固シェル健全指数Aが190以上となる条件で鋳造することを特徴とする中炭素鋼の連続鋳造方法。
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