JP2010237511A - 単層型電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】帯電電位の値が600〜1000Vの範囲内の値であって、プロセススピードが120mm/secを超える画像形成装置に搭載される電子写真感光体等であって、導電性基体上に感光体層を備えており、結着樹脂の粘度平均分子量を30,000以下の値とするとともに、電荷発生剤が、下記特性(A)および(B)を有している。
(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=9.5及び27.2°に主ピークを有する。
(B)示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に、270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有する。
【選択図】図1
Description
一方、有機感光体は、主に帯電工程において発生するNOxやオゾン等の酸化性ガスに暴露されると、感光層中の材料が化学変化しやすく、その結果、帯電特性が低下しやすいという問題が見られた。
すなわち、特許文献1には、イオン化ポテンシャルが5.1eV以下の電荷輸送物質と、酸化防止剤とを、感光層に含有させた電子写真感光体が開示されている。
一方、酸化防止剤の配合量を多くすると、帯電特性や機械的特性統制が低下し、形成画像における画像濃度が低下したり、耐久性が低下したりするといった新たな問題が見られた。
すなわち、本発明の目的は、プロセススピードを所定以上の高速値に設定した場合であっても、帯電電位を所定値以上の高い値に設定した場合であっても、耐ガス性を向上させることによって、優れた帯電安定性や感度特性を有する単層型電子写真感光体及び画像形成装置を提供することにある。
(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=9.5及び27.2°に主ピークを有する。
(B)示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に、270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有する。
すなわち、単層型電子写真感光体において、プロセススピードが所定以上の画像形成装置に搭載された場合であっても、帯電電位が所定値以上の画像形成装置に搭載された場合であっても、優れた帯電安定性や感度特性を得ることができる。
より具体的には、NOxやオゾンガスが発生しやすい環境であっても、結着樹脂の粘度平均分子量を所定値とするとともに、所定特性を有する電荷発生剤を用いることによって、優れた帯電安定性や感度特性を得ることができる。
(C)CuKα特性X線スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=7.2°におけるピーク強度Aと、9.5°におけるピーク強度Bと、の比率A/B(以下、α化度と称する場合がある)が、0.05〜0.25の範囲内の値である。
このような特性(C)を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることによって、NOxやオゾンガスが発生しやすい環境であっても、さらに優れた帯電安定性や感度特性を得ることができる。
すなわち、α化度が所定範囲内のオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、分散性をさらに優れたものとすることができ、その結果、感度特性や露光メモリ特性を効果的に向上させることができる。
その結果、感光層内にまで酸化性ガスが侵入しにくくなって、感光層における耐ガス性をより向上させることができる。
このような電子輸送剤を用いることにより、結着樹脂との間の相溶性をさらに向上させることができるとともに、所定の耐久性を維持することができる。よって、感光層に対する酸化性ガスの侵入を長期間にわたって抑制することができる。
このような正孔輸送剤を用いることにより、結着樹脂との間の相溶性をさらに向上させることができるとともに、所定の耐久性を維持することができる。よって、感光層に対する酸化性ガスの侵入を長期間にわたって抑制することができる。
(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=9.5及び27.2°に主ピークを有する。
(B)示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に、270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有する。
すなわち、このように画像形成装置を構成することにより、プロセススピードが所定以上の値であっても、帯電電位が所定値以上の値であっても、さらには、相当量の酸化防止剤を使用しない電子写真感光体の場合であっても、優れた帯電安定性や感度特性を得ることができる。
このように構成した場合、帯電工程における酸化性ガスの発生量が増加するものの、本発明であれば、耐ガス性に優れた所定の単層型電子写真感光体を搭載していることから、感光層表面を劣化させることなく、繰り返し画像形成を行った場合であっても、高品質画像を安定的に形成することができる。
このように構成した場合、一般に、感光層表面の残留トナーや異物がクリーニングされにくくなるが、本発明であれば、感光層における耐ガス性に優れた所定の単層型電子写真感光体を搭載していることから、感光層表面に残留トナーや異物が残っていても、感光層表面が劣化しにくく、したがって、繰り返し画像形成を行った場合であっても、高品質画像を安定的に形成することができる。
第1の実施形態は、帯電電位の値が600〜1000Vの範囲内の値であって、プロセススピードが120mm/secを超える画像形成装置に搭載される電子写真感光体であって、導電性基体上に、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、および結着樹脂を含む感光体層を備えており、結着樹脂の粘度平均分子量を30000以下の値とするとともに、電荷発生剤が、下記特性(A)および(B)を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする単層型電子写真感光体である。
(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=9.5及び27.2°に主ピークを有する。
(B)示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に、270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有する。
すなわち、図1に示すように、所定の粘度平均分子量を有する結着樹脂を、所定の特性(A)および(B)を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶等とともに用いることによって、優れた耐ガス特性等を得ることができる。
また、図2および図3に示すように、所定の結晶化度(α化度)に関して、所定の特性(C)を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を用いることにより、さらに優れた感度やメモリ電位を得ることができる。
以下、第1の実施形態としての単層型電子写真感光体について、構成要件ごとに、具体的に説明する。
なお、本発明の単層型電子写真感光体は、単層型電子写真感光体を帯電させる際の帯電電位が600〜1000Vの範囲内の値である画像形成装置に搭載されてなることを特徴とするが、かかる構成要件については、第2の実施形態において具体的に説明する。
本発明の電子写真感光体10は、図4(a)に示すような、基体12上に、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、結着樹脂と、からなる単層型感光層14を設けた単層型電子写真感光体10であることを特徴とする。
また、図4(b)に例示するように、この感光層14と、基体12と、の間に、中間層16を形成した単層型電子写真感光体10´とすることもできる。
また、基体の構成材料としては、種々の材料を使用することができる。
例えば、鉄、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮などの金属にて形成された基体や、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、アルマイト、酸化スズ、及び酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
すなわち、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよく、また、使用に際して、充分な機械的強度を有していればよい。
また、図4(b)に示すように、基体12上に、所定の結着樹脂を含有する中間層16を設けてもよい。
この理由は、基体と感光層との密着性を向上させるとともに、この中間層内に所定の微粉末を添加することで、入射光を散乱させて、干渉縞の発生を抑制し、さらに、カブリや黒点の原因となる非露光時における基体から感光層への電荷注入を抑制することができるためである。この微粉末としては、光散乱性、分散性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やフッ素樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等を用いることができる。
したがって、中間層の膜厚を、0.1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
(1)結着樹脂
本発明の電子写真感光体に使用する結着樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリカーボネート樹脂をはじめ、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
その結果、感光層内にまで酸化性ガスが侵入しにくくなって、感光層における耐ガス性をより向上させることができるためである。
なお、一般式(1)〜(2)中に示す置換基における置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、もしくは炭素数6〜30のアリール基等が挙げられる。
また、一般式(1)及び(2)における添字k〜nは、共重合成分のモル比を表しており、例えば、kが85、lが15の場合はモル比が85:15であることを表している。かかるモル比は、例えばNMRによって算出することができる。
すなわち、一般式(1)で表わされるポリカーボネート樹脂としては、下記式に示すように、置換基Rcが水素原子であって、置換基Rdが炭素数1〜2のアルキル基であるものがより好ましく、置換基Rdがメチル基であるものがさらに好ましい。
この理由は、このようにすることにより、結着樹脂と、電荷発生剤及び電荷輸送剤と、の相溶性をさらに向上させることができるためである。
この理由は、結着樹脂の粘度平均分子量が30,000を超えた値となると、結着樹脂と、電荷発生剤及び電荷輸送剤と、の相溶性が過度に低下して、酸化性ガスが感光層内に侵入しやすくなって、所定の耐ガス性を保持することが困難となるためである。
但し、結着樹脂の粘度平均分子量が過度に小さくなると、感光層の機械的強度が著しく低下する場合がある。
したがって、結着樹脂の粘度平均分子量を15,000〜29,000の範囲内の値とすることがより好ましく、20,000〜28,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
すなわち、図1の横軸には、ポリカーボネート結着樹脂の粘度平均分子量が採って示してあり、図1の縦軸には、耐ガス性評価結果(V)を採って示してある。
かかる図1の特性曲線に示すように、ポリカーボネート結着樹脂の粘度平均分子量が小さくなるほど、耐ガス性評価結果(V)が良好になる傾向が見られている。
よって、ポリカーボネート結着樹脂の粘度平均分子量が30,000以下にすることによって、耐ガス性評価結果(V)を良好なものとすることができる。
また、本発明の電子写真感光体に使用する電荷発生剤としては、下記式(12)で表わされるオキソチタニルフタロシアニン化合物の結晶を挙げられる。
また、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=26.2°にピークを有さないことが好ましい(第2の光学特性)。
さらに、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=7.2°にピークを有さないことが好ましい(第3の光学特性)。
これらの理由は、かかる第1の光学特性を備えない場合には、このような光学特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶と比較して、結晶安定性、電荷発生能及び分散性が著しく低下する傾向にあるためである。逆に言えば、第1の光学特性、より好ましくは、第2の光学特性及び第3の光学特性を備えることにより、結晶安定性、電荷発生能及び分散性を向上させることができるためである。
この理由は、かかる光学特性及び熱特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、結晶安定性、電荷発生能及び分散性を、さらに向上させることができるためである。
なお、吸着水の気化に伴うピーク以外のピークであって、270〜400℃の範囲内に現れる1つのピークは、290〜400℃の範囲内に現れることがより好ましく、300〜400℃の範囲内に現れることがさらに好ましい。
(C)CuKα特性X線スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=7.2°におけるピーク強度Aと、9.5°におけるピーク強度Bと、の比率A/Bが、0.05〜0.25の範囲内の値である。
この理由は、かかる比率A/Bを0.25以下の値とすることによって、α型に結晶転移しにくく、より安定的に特定の結晶型を保持することができるためである。すなわち、NOxやオゾンガスが発生しやすい環境であっても、さらに優れた帯電安定性や感度特性を得ることができ、ひいては、露光メモリ特性をさらに向上させることができる。
一方、比率A/Bの値を0.05未満の値とすることは、α型への結晶転移を抑制する観点からは、より好ましいものの、過度に製造時の収率が低下する場合がある。
したがって、比率A/Bが、0.1〜0.25の範囲内の値であることがより好ましく、0.15〜0.20の範囲内の値であることがさらに好ましい。
図2の横軸には、α化度(A/B)(−)を採って示してあり、縦軸には、感度(相対値)を採って、特性曲線が示してある。
また、図3においては、横軸にα化度(A/B)(−)を採って示してあり、縦軸に、メモリ電位(相対値)を採って、特性曲線が示してある。
かかる図2及び図3に示すそれぞれの特性曲線から、オキソチタニルフタロシアニン結晶のα化度(A/B)の値が徐々に増加するのにともなって、感度及びメモリ電位の値についても、それぞれ増加する相関関係があることが理解される。
より具体的には、これらの特性曲線から、かかるα化度(A/B)の値を0.25以下の範囲に抑制することにより、感度及びメモリ電位を所定以下の値に安定的に保持することができる。
また、かかるα化度(A/B)の値を0.22以下の範囲に抑制することにより、感度及びメモリ電位をより低い値に保持することができる。
すなわち、図2及び図3に示す結果から、α化度(A/B)の値を所定の範囲とすることにより、オキソチタニルフタロシアニン結晶の感光層における分散性、有機溶媒中における結晶安定性、及び電荷発生能等の諸特性が、効果的に発揮されることが理解される。
(a)粗チタニルフタロシアニン結晶を酸に対して溶解し、チタニルフタロシアニン溶液を得る工程
(b)チタニルフタロシアニン溶液を貧溶媒中に滴下してウェットケーキを得る工程
(c)ウェットケーキを炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(d)洗浄後のウェットケーキを非水系溶媒中で加熱撹拌して、初期チタニルフタロシアニン結晶を得る工程
(e)得られた初期チタニルフタロシアニン結晶を、炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
(f)洗浄後の初期チタニルフタロシアニン結晶を微粉砕した後、非水系溶媒中で加熱撹拌して、チタニルフタロシアニン結晶を得る工程
(g)得られたチタニルフタロシアニン結晶を、炭素数1〜4のアルコールによって洗浄する工程
すなわち、(d)工程において非水系溶媒中で撹拌することにより得られた初期チタニルフタロシアニン結晶を、所定のアルコールで洗浄した後、(f)工程において、微粉砕後さらにもう一度非水系溶媒中で撹拌することにより、下記ろ液における電気伝導度を、効率的に所定の範囲内の値とすることができる。
そして、オキソチタニルフタロシアニン結晶のα化度(A/B)は、例えば、オキソチタニルフタロシアニン結晶0.3gを、水20gに対して加え、23±3℃の環境下にて90秒間超音波分散(周波数:18kHz)を行って得た分散液のろ液における電気伝導度の値を0.6〜2.4μS/cmの範囲内とすることによって、制御するとともに、確認することができる。
さらに、かかるオキソチタニルフタロシアニン化合物の合成を、尿素化合物の存在下にて行うことが好ましく、その際、尿素化合物の添加量を、o−フタロニトリルまたはその誘導体、もしくは1,3−ジイミノイソインドリンまたはその誘導体1モルに対して、0.1〜0.95モルの範囲内の値とすることが好ましく、0.2〜0.8モルの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、電荷発生剤の添加量が0.2重量部未満の値になると、量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度特性、電気特性、安定性等を向上させることができなくなるためである。一方、電荷発生剤の添加量が40重量部を超えた値になると、可視光における赤色領域、近赤外領域、あるいは赤外領域に波長を有する光に対する吸光係数を大きくする効果が不十分となり、感光体の感度特性、電気特性、及び安定性等を向上させることができない場合があるためである。
したがって、電荷発生剤の添加量を0.5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の電子写真感光体に用いられる電子輸送剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジフェノキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ジナフトキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、チオキサントン誘導体、フルオレノン誘導体、アントラセン誘導体、アクリジン誘導体、アントアラキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、チオキサントン誘導体、ニトロベンゼン誘導体、アクリジン誘導体、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の電子受容性を有する化合物の1種単独又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
この理由は、電子輸送剤の数平均分子量をかかる範囲とすることにより、結着樹脂と、電子輸送剤と、の相溶性をさらに向上させることができるとともに、感光層のきめを細かくすることができることから、感光層に対する酸化性ガスの侵入を効果的に抑制することができるためである。
すなわち、電子輸送剤の分子量が300未満の値となると、結着樹脂に対する相溶性を向上させることはできるものの、十分な電子輸送能を得ることが困難となる場合があるためである。一方、電子輸送剤の分子量が600を超えた値となると、結着樹脂に対する相溶性が低下して、感光層のきめが粗くなり、ひいては感光層に対して酸化性ガスが侵入しやすくなる場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の分子量を300〜500の範囲内の値とすることがより好ましく、300〜400の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、かかる電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる電子輸送剤の添加量が100重量部を超えると、結晶化しやすくなる場合があるためである。
したがって、結着樹脂100重量部に対して、電子輸送剤の添加量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜70重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明の電子写真感光体に用いられる正孔輸送剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物(例えば2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなど)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾールなど)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなど)、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、及びジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用される。これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
この理由は、正孔輸送剤の分子量をかかる範囲とすることにより、結着樹脂と、正孔輸送剤と、の相溶性をさらに向上させることができるとともに、感光層のきめをより細かくすることができることから、感光層に対する酸化性ガスの侵入をさらに効果的に抑制することができるためである。
すなわち、正孔輸送剤の分子量が400未満の値となると、結着樹脂に対する相溶性を向上させることはできるものの、十分な正孔輸送能を得ることが困難となる場合があるためである。一方、正孔輸送剤の分子量が680を超えた値となると、結着樹脂に対する相溶性が低下して、感光層のきめが粗くなり、ひいては感光層に対して酸化性ガスが侵入しやすくなる場合があるためである。
したがって、正孔輸送剤の分子量を400〜680の範囲内の値とすることがより好ましく、450〜650の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、正孔輸送剤の含有量を、かかる範囲とすることによって、かかる正孔輸送剤が感光層中で結晶化することを効果的に抑制しつつ、優れた電気特性を得ることができるためである。
すなわち、正孔輸送剤の含有量が10重量部未満の値となると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、正孔輸送剤の含有量が100重量部を超えた値となると、かかる正孔輸送剤が過度に結晶化しやすくなって、感光層としての適正な膜を形成することが困難となる場合があるためである。
したがって、正孔輸送剤の含有量を20〜90重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜80重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、感光層の厚さは、5〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、感光層の厚さが5μm未満の値となると、感光層を均一に形成することが困難となったり、機械的強度が低下する場合があるためである。一方、感光層の厚さが100μmを超えた値となると、感光層が基体から剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって感光層の厚さを10〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜45μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
単層型電子写真感光体の製造方法としては、特に制限されるものではないが、以下のような手順で実施することができる。
まず、溶剤に電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂、添加剤等を含有させて塗布液を作成する。このようにして得られた塗布液を、例えば、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて導電性基材(アルミニウム素管)上に塗布する。
その後、例えば100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、所定膜厚の感光層を有する単層型電子写真感光体を得ることができる。
なお、分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジオキソラン、1,4-ジオキサン、等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。このとき、さらに、電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤、等を含有させてもよい。また、ガス性をさらに向上させるために酸化防止剤を添加してもよい。
この中間層を形成するにあたり、結着樹脂、必要に応じて添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を適当な分散媒とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して塗布液を調整し、これを公知の手段、例えばブレード法、浸漬法、スプレー法により塗布して、熱処理を施し中間層を形成する。
また、添加剤は製造時の沈降等が問題とならない範囲であって、光散乱を生じさせて干渉縞の発生を防止する等の目的のために、各種添加剤(有機微粉末または無機微粉末)を少量添加することができる。
次いで、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、支持基体(アルミニウム素管)上に、ディップコート法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラ塗布法等の塗布法を用いて塗布することができる。
その後、基体上の塗布液を乾燥する工程は、20〜200℃の温度で5分〜2時間の範囲で行うことが好ましい。
第2の実施形態は、電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有するプロセススピードが120mm/secを超える画像形成装置であって、帯電手段による電子写真感光体表面における帯電電位が600〜1000Vの範囲内の値であるとともに、電子写真感光体が、基体上に電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及び結着樹脂を同一層に含む感光層を有する単層型電子写真感光体であり、結着樹脂の粘度平均分子量を30000以下の値とするとともに、電荷発生剤が、下記特性(A)および(B)を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする画像形成装置である。
(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=9.5及び27.2°に主ピークを有する。
(B)示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に、270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有する。
以下、第2の実施形態としての画像形成装置について、具体的に説明する。
第2の実施形態としての画像形成装置としては、図5に示すような複写機30を好適に使用することができる。かかる複写機30は、画像形成ユニット31、排紙ユニット32、画像読取ユニット33、及び原稿給送ユニット34を備えている。また、画像形成ユニット31には、画像形成部31a及び給紙部31bがさらに備えられている。そして、図示された例では、原稿給送ユニット34は、原稿載置トレイ34a、原稿給送機構34b、及び原稿排出トレイ34cを有しており、原稿載置トレイ34a上に載置された原稿は、原稿給送機構34bによって画像読取位置Pに送られた後、原稿排出トレイ34cに排出される。
一方、給紙部31bに積載された記録用紙(以下、単に用紙と呼ぶ。)Sは、一枚ずつ画像形成部31aに送られる。この画像形成部31aには、像担持体である電子写真感光体41が備えられており、さらに、この電子写真感光体41の周囲には、帯電手段42、露光手段43、現像手段44、及び転写ローラ45、並びにクリーニング手段46が、電子写真感光体41の回転方向に沿って配置されている。
この静電潜像に基づき、現像手段44によりトナーを付着させて現像し、電子写真感光体41の表面にトナー像を形成する。そして、このトナー像は、電子写真感光体41と転写ローラ45とのニップ部に搬送される用紙Sに転写像として転写される。次いで、転写像が転写された用紙Sは、定着ユニット47に搬送されて、定着プロセスが行われる。
次いで、上述したように転写が行われた後、電子写真感光体41に残留する残留トナー(及び紙粉)については、クリーニング手段46で除去される。すなわち、電子写真感光体41がクリーニングされる一方、残留トナーについては、廃トナーコンテナ(図示せず)に回収されることになる。
一方、本発明の場合、後述するように、クリーニング手段を省略し、現像手段において現像と同時にクリーニングを実施する、所謂現像同時クリーニングとすることもできる。
以下、本発明における主要な構成要素である電子写真感光体、帯電手段及び現像手段について、より具体的に説明する。
本発明においては、電子写真感光体として、所定の単層型電子写真感光体を用いることを特徴とする。
すなわち、帯電電位の値が600〜1000Vの範囲内の値であって、プロセススピードが120mm/secを超える画像形成装置に搭載される電子写真感光体であって、導電性基体上に、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、および結着樹脂を含む感光体層を備えており、結着樹脂の粘度平均分子量を30000以下の値とするとともに、電荷発生剤が、下記特性(A)および(B)を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする単層型電子写真感光体を用いることを特徴とする。
なお、かかる所定の単層型電子写真感光体についての説明は、第1の実施形態において説明したため、省略する。
本発明における帯電手段は、帯電対象としての単層型電子写真感光体の感光層表面における帯電電位を、600〜1000Vの範囲内の値に帯電させることを特徴とする。
この理由は、このように帯電電位を比較的高い値とすることにより、感光層の露光後電位と、帯電電位と、の差を大きくすることができることから、鮮明な高品質画像を安定的に形成することができるばかりか、さらなる高速画像形成にも対応することができるためである。
一方、帯電電位を比較的高い値とした場合、帯電手段から生じる酸化性ガスが増加することとなるため、有機材料から構成されている感光層の酸化劣化が問題となる。
具体的には、耐久印字を行った際に、帯電安定性を保持することが困難となる。
この点、本発明においては、耐ガス性に優れた所定の単層型電子写真感光体を用いていることから、かかる問題点を憂慮することなく、帯電電位を比較的高い値とすることが可能となる。
ここで、感光層表面における帯電電位の数値範囲について説明すると、かかる値が600V未満の値となると、露光後電位と、帯電電位と、の差を大きくすることが困難となって、特に、高速画像形成に対応することが困難となる場合がある。一方、感光層表面における帯電電位が1000Vを超えた値となると、帯電手段から発生する酸化性ガスの量が過度に増加して、所定の単層型電子写真感光体を用いているにもかかわらず、十分に帯電安定性を保持することが困難となる場合がある。
したがって、感光層表面における帯電電位を、625〜975Vの範囲内の値とすることがより好ましく、650〜950Vの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、かかる非接触型の帯電手段を用いた場合、帯電工程における酸化性ガスの発生量がさらに増加するものの、本発明であれば、耐ガス性に優れた所定の単層型電子写真感光体を搭載していることから、感光層表面を劣化させることを効果的に抑制でいるためである。
その結果、繰り返し画像形成を行った場合であっても、高品質画像を安定的に形成することができるためである。
また、かかる非接触型の帯電手段に対して印加される印加電圧としては、1〜10kVの範囲内の値とすることが好ましく、2〜9kVの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、その他の帯電手段としては、所定の帯電電位を実現可能であれば、特に制限されるものではなく、帯電ローラや帯電ブラシ等のような接触型の帯電手段を用いてもよい。
また、本発明における現像手段を、現像同時クリーニング方式の現像手段とすることが好ましい。
この理由は、現像同時クリーニング方式の現像手段であれば、一般に、感光層表面の残留トナーや異物がクリーニングされにくくなるが、本発明であれば、感光層における耐ガス性に優れた所定の単層型電子写真感光体を搭載していることから、感光層表面に残留トナーや異物が残留していても、感光層表面が劣化しにくく、したがって、繰り返し画像形成を行った場合であっても、高品質画像を安定的に形成することができるためである。
また、本発明であれば、帯電電位の値を比較的高い値としていることから、感光層表面に対して残留トナーや異物が残留している場合であっても、比較的安定的に感光層表面を所定のレベルにまで帯電させることができるためである。
1.電子写真感光体の製造
(1)感光層の形成
容器内に、後述する製造方法にて製造した電荷発生剤としての式(12)で表されるオキソチタニルフタロシアニン(CGM−1)の結晶3重量部と、下記式(13)で表わされる正孔輸送剤(HTM−1)50重量部と、下記式(14)で表わされる電子輸送剤(ETM−1)30重量部と、結着樹脂としての粘度平均分子量10,000の式(11)で表わされるポリカーボネート樹脂(Resin−9)100重量部と、溶剤としてのテトラヒドロフラン800重量部と、を収容し、これらの混合物を得た。次いで、かかる混合物につき、ボールミルを用いて50時間混合分散し、感光層用塗布液を得た。
次いで、得られた感光層用塗布液を、直径30mm、長さ254mmのアルミニウム基体上に、ディップコート法にて塗布した後、100℃、40分間の条件下で熱風乾燥し、膜厚が30μmの感光層を形成し、単層型電子写真感光体を得た。
なお、オキソチタニルフタロシアニン(CGM−1)の結晶は、特性(A)〜(C)の全てを満足することを確認した。
なお、電荷発生剤としての式(12)で表されるオキソチタニルフタロシアニン(CGM−1)の結晶は、以下のようにして製造した。
まず、アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17mol)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073mol)と、キノリン300gと、尿素2.28g(0.038mol)を加え、撹拌しつつ150℃まで昇温した。
次いで、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温したのち、この温度を維持しつつさらに2時間、撹拌して反応させた。
次いで、反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、粗オキソチタニルフタロシアニン結晶としての青紫色の固体24gを合成した。
上述したオキソチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、撹拌しつつ130℃に加熱して2時間、撹拌処理を行った。
次いで、2時間経過した時点で加熱を停止し、さらに、23±1℃まで冷却した時点で撹拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。そして安定化された後の上澄みをガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄したのち真空乾燥して、オキソチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。
上述した酸処理前工程で得られたオキソチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。
次に、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間攪拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させた。
次に、上述した液をガラスフィルターによって濾別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗した後、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間攪拌した。
次いで、液をガラスフィルターによって濾別したのち、得られた固体を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(12)で表される無置換のオキソチタニルフタロシアニンの結晶(青色粉末)4.1gを得た。
(X線回折測定)
得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶0.3gを、テトラヒドロフラン5g中に分散させ、温度23±1℃、相対湿度50〜60%の条件下、密閉系中で24時間、保管したのちテトラヒドロフランを除去して、X線回折装置(理学電機(株)製のRINT1100)のサンプルホルダーに充填して測定を行った。得られたスペクトルチャートを、図6に示す。
また、かかるスペクトルチャートは、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有さない特徴を有していることから、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶が、安定した所定の結晶型を有していることが確認できた。この理由は、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°におけるピークは、上述した所定の結晶型に特有のピークであり、26.2°におけるピークは、β型結晶に特有のピークであるためである。
なお、テトラヒドロフラン中に分散させる前の段階においても、図6に示すのと同様のスペクトルチャートが測定された。
かかるX線回折の測定の条件は、下記の通りとした。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:3.0°
ストップ角度:40.0°
走査速度:10°/分
また、示差走査熱量計(理学電機(株)製のTAS−200型、DSC8230D)を用いて、得られたオキソチタニルフタロシアニン結晶の示差走査熱量分析を行った。得られた示差走査分析チャートを、図7に示す。また、かかるチャートにおいては、吸着水の気化にともなうピーク以外に、296℃において1つのピークが確認された。
なお、測定条件は下記の通りとした。
サンプルパン:アルミニウム製
昇温速度:20℃/分
(1)画像特性評価
得られた電子写真感光体を、ドラム回転速度が140mm/secの京セラミタ製プリンタFS−1010改造機、クリーニング手段:ローラクリーニングシステム、帯電手段:スコロトロン(帯電電位850V)、転写手段:ローラ方式)に装着し、35℃、85%Rhの環境条件で、A4紙(富士ゼロックス製上質PPC用紙)を5000枚連続印刷した。
次いで、6時間放置した後、A4紙のグレー原稿を印字して、そのA4紙上に白抜けがないか目視観察し、下記基準に準じて、高温高湿環境下での画像特性評価を行った。
◎:白抜けが、全く観察されない。
○:白抜けが、わずかに観察される。
△:筋状の白抜けが観察され、それがチャージャー幅未満である。
×:筋状の白抜けが観察され、それがチャージャー幅以上である。
ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、8μA(周速31rpm)の電流条件となるように感光体を帯電させ、4周の平均表面電位を初期表面電位とした。
次いで、感光体を、暗所にて、オゾン濃度10ppmの雰囲気中、常温にて6時間暴露した。その暴露直後の表面電位を同様にして測定した。
次いで、下式より、ΔV0を算出するとともに、下記基準に沿って、耐オゾン性評価を行った。なお、かかるΔV0が小さいほど感光体の耐オゾン性が良好であると言える。
(初期表面電位)−(暴露直後の表面電位)=ΔV0
◎:30V未満
○:30〜60V未満
△:60〜90V未満
×:90V以上
得られた電子写真感光体における明電位を測定した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位が700Vになるように帯電させ、次いで、白色光からバンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光強度:0.3μJ/cm2)を電子写真感光体表面に対して露光した(照射時間50msec)。次いで、露光後350msec経過後の電位を測定し、以下の基準に準拠して、感度評価を行った。得られた結果を表1に示す。
◎:120V未満
○:120〜150V未満
△:150〜180V未満
×:180V以上
実施例2〜3では、実施例1における結着樹脂の粘度平均分子量10,000を、それぞれ20,000および30,000とした以外は、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
実施例4〜6では、実施例1における結着樹脂の種類および粘度平均分子量を表1に示すように変えた以外は、それぞれ実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、実施例4で用いた結着樹脂は、式(6)で表わされるポリカーボネート共重合樹脂(Resin−4)である。
また、実施例5で用いた結着樹脂は、式(8)で表わされるポリカーボネート共重合樹脂(Resin−6)である。
また、実施例6で用いた結着樹脂は、式(5)で表わされるポリカーボネート共重合樹脂(Resin−3)である。
実施例7〜24では、実施例1における正孔輸送剤の種類を、それぞれ下記式(15)〜(32)で表わされる正孔輸送剤(HTM−2〜19)に変えるとともに、結着樹脂の粘度平均分子量を20000に変えた以外は、それぞれ実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
実施例25〜28では、実施例1における電子輸送剤の種類を、それぞれ下記式(33)〜(36)で表わされる電子輸送剤(ETM−2〜5)に変えるとともに、結着樹脂の粘度平均分子量を20000に変えた以外は、電子輸送剤を表1に示すように変えた以外は同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例1〜3では、実施例1の電荷発生剤を下記式(37)で表わされるx型メタルフリーフタロシアニン(CGM−2)に変更し、結着樹脂の種類および粘度平均分子量を表1に示すように変えた以外は同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例4〜7では、実施例1における結着樹脂の種類を表1に示すように変え、粘度平均分子量を38,000〜60,000とした以外は同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
比較例8〜9では、実施例1における電荷発生剤をY型チタニルフタロシアニン結晶に変更し、結着樹脂の粘度平均分子量を40,000〜60,000とした以外は、同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに、評価した。得られた結果を表1に示す。
したがって、本発明にかかる単層型電子写真感光体及び画像形成装置は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における長寿命化や、画像品質の安定化に著しく寄与することが期待される。
Claims (8)
- 帯電電位の値が600〜1000Vの範囲内の値であって、プロセススピードが120mm/secを超える画像形成装置に搭載される電子写真感光体であって、
導電性基体上に、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、および結着樹脂を含む感光体層を備えており、
前記結着樹脂の粘度平均分子量を30000以下の値とするとともに、
前記電荷発生剤が、下記特性(A)および(B)を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする単層型電子写真感光体。
(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=9.5及び27.2°に主ピークを有する。
(B)示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に、270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有する。 - 前記オキソチタニルフタロシアニン結晶が、下記特性(C)をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の単層型電子写真感光体。
(C)CuKα特性X線スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=7.2°におけるピーク強度Aと、9.5°におけるピーク強度Bと、の比率A/B(以下、α化度と称する場合がある)が、0.05〜0.25の範囲内の値である。 - 前記結着樹脂が、下記一般式(1)〜(2)から選択される少なくとも一つの一般式で表わされるポリカーボネート樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の単層型電子写真感光体。
(一般式(1)中、複数の置換基Ra及びRbは、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の置換または非置換のアルキル基、もしくは炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基であり、添字p及びqは、それぞれ独立した0〜4の整数であり、置換基Rc及びRdは、それぞれ独立した水素原子もしくは炭素数1〜3の置換または非置換のアルキル基であって、Wは、単結合、−O−、−CO−、−CH2−であり、添字k及びlは、0≦l/(k+l)<0.6の関係式を満足するモル比である。)
(一般式(2)中、複数の置換基Re及びRfは、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の置換または非置換のアルキル基、もしくは炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基であり、添字r及びsは、それぞれ独立した0〜4の整数であり、添字m及びnは、0≦n/(n+m)<0.6の関係式を満足するモル比であり、Wは、単結合、−O−、−CO−、―CH2−である。) - 前記電子輸送剤の分子量を300〜600の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の単層型電子写真感光体。
- 前記正孔輸送剤の分子量を400〜680の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の単層型電子写真感光体。
- 電子写真感光体の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有するプロセススピードが120mm/secを超える画像形成装置であって、
前記帯電手段による電子写真感光体表面における帯電電位が600〜1000Vの範囲内の値であるとともに、
前記電子写真感光体が、基体上に電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及び結着樹脂を同一層に含む感光層を有する単層型電子写真感光体であり、
前記結着樹脂の粘度平均分子量を30000以下の値とするとともに、
前記電荷発生剤が、下記特性(A)および(B)を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする画像形成装置。
(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.3°=9.5及び27.2°に主ピークを有する。
(B)示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に、270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有する。 - 前記帯電手段が、非接触型の帯電手段であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
- 前記画像形成装置が、現像同時クリーニング方式の画像形成装置であることを特徴とする請求項6または7に記載の画像形成装置。
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