JP2010237129A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】捜索ビーム走査で目標を有効に探知できなかったときでも、航跡品質の低下を防止し、追尾性能の低下を防止する。
【解決手段】このレーダ装置1は、複数の空中線素子1A〜1Lと、ビーム走査データ作成器3と、目標検出器6と、探知データ判定器7と、S/N算定器8と、追尾処理器9と、第1のビーム走査スケジューリング器10と、ビーム諸元選択器11と、第2のビーム走査スケジューリング器12とを備えている。探知データ判定器7にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、第2のビーム走査スケジューリング器12は、第1のビーム走査スケジューリング器10が出力したスケジューリングデータに対して、ビーム諸元選択器11にて算出された前記再捜索用のビームのビーム諸元データに基づいて、再度スケジューリングし直して再度のスケジューリングデータをビーム走査データ作成器3へ出力する。
【選択図】図1

Description

この発明は、レーダ装置に係り、とくには、アダプティブビーム走査を行うことができるフェーズドアレイレーダ装置に関する。
レーダ装置は、一般に空間に電波を発射して、目標からの反射信号を受信することにより、目標の存在を探知し、その位置、運動状況等を測定するものである。このレーダ装置の主要性能は探知性能、位置計測精度、追尾性能等があげられる。
一般的なレーダ装置では、アンテナを機械的な首振り動作させることにより、アンテナが形成する電波ビームの方向を順次変えることで、所要の空間領域に対してビーム走査を行っている。その機械的回転式のレーダ装置においては、アンテナが向いている方向にのみビーム走査が可能であるため、アンテナの回転と同期した、周期的に一定の動作を繰り返す捜索ビーム走査となる。
ここで、監視すべき空間領域に対して一通りビーム走査を行うための所要時間であるスキャンタイムは、目標を所定の時間間隔で継続して追尾するために、上限が設定されることが一般的である。一般的にスキャンタイムは追尾上短ければ短いほど良い。これに対して、一方向のビーム走査に要する時間は、要求される探知性能やクラッタ抑圧性能により決まり、一般的に一方向に電波を照射する回数が多いほど探知性能やクラッタ抑圧性能は向上するが、電波照射回数を増やせばスキャンタイムは長くなる。したがって、スキャンタイム及びビーム走査時間の両条件を総合的にトレードオフしてレーダ装置の各諸元が決定される。
一方、近年では、機械的な首振りレーダ装置に代えて、平面上に配列された小さなアンテナのそれぞれから放射する電波の位相を電気制御して、これらの小さなアンテナからの電波を合成した合成電波を旋回・俯迎することでビーム走査するフェーズドアレイ(位相配列)レーダ装置が実用化されている。このフェーズドアレイレーダ装置によれば、瞬時に任意の方向にビーム走査を行うアダプティブビーム走査を行うことができる。
このアダプティブビーム走査により、例えば、追尾中の目標の予測位置にビーム走査を行う追尾ビーム走査を行うことができるようになる。そして、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査を組み合わせた場合、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の合計の時間がスキャンタイムとなり、追尾目標数が多ければ追尾ビーム走査時間が増加してスキャンタイムは長くなるが、捜索ビーム走査のみの場合に比べて、スキャンタイムを大幅に増加させること無く追尾性能を向上させることができる。
例えば、捜索ビーム走査と捜索ビーム走査の間に1回追尾ビーム走査を行えば、対象とする目標の追尾のデータレートを2倍にすることができる。図4は捜索ビーム走査と追尾ビーム走査のタイミングを説明するモデル図であり、同図に示すように、捜索ビーム走査Sと追尾ビーム走査Tが交互に行われている。スキャンタイム中に捜索ビーム走査と追尾ビーム走査とでそれぞれ1回ずつ探知により目標が探知されているため、追尾中の目標についてはデータレートが2倍になっていることがわかる。
捜索ビーム走査は、監視すべき空間領域を順番にビーム走査するが、捜索ビーム走査の照射範囲にある目標が必ず探知できるわけでなく、目標の反射断面積が小さい場合や、クラッタの影響などにより探知されない可能性がある。この点で、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査を同じ諸元で送信する方式の場合、異なる諸元で送信する方式の場合に比べて、レーダ装置のH(Height)/W(Width)構成は小さく制御も簡単であるが探知性能も同等となり、照射範囲にある捜索ビーム走査で探知されなければ追尾ビーム走査でも探知されない可能性が高い。
このような観点から、追尾中の目標が捜索ビーム走査で探知されなかった場合に追尾ビーム走査で追尾を維持する技術(第1の関連技術)が提供されている(特許文献1)。第1の関連技術によるレーダ装置100は、図5のブロック図に示すように、後述の送信器102から入力される送信信号及び後述のビーム走査データ作成器103から入力される素子ごとの位相や振幅等の制御データにより空間に対して電波を照射してビームを形成する空中線素子101A〜101Lと、空中線素子101A〜101Lが空間に照射する電波の元となる送信信号を発生する送信器102と、空中線素子101A〜101Lがそれぞれ照射する電波が全体として所望の方向にビームが形成するために必要な位相や利得等の制御データを発生するビーム走査データ作成器103と、空中線素子101A〜101Lから入力されるアナログ受信信号を周波数変換やA/D変換してディジタル受信信号として後述の信号処理器105に出力する受信器104と、パルス圧縮やパルスドップラ処理等のS/N改善や不要信号抑圧のための信号処理を行う信号処理器105と、信号処理後のディジタル受信信号から距離、方位、探知時刻等の目標に関する情報を含む探知データを探知する目標検出器106と、空中線素子101A〜101Lから電波が照射されるごとに得られる時系列の探知データの中から、同一の目標に属する探知データを抽出し、その目標の予測位置や進行方向を算出してその目標の運動を追随し、航跡品質を算定した後、追尾データを出力する処理を行う追尾処理器107とを備えている。ここで、上記航跡品質は追尾データがどの程度信頼できるかを示す指標である。
さらに、レーダ装置100は、図5に示すように、追尾処理器107からの予測位置情報及び航跡品質から送信信号数や送信する方向等を追尾ビーム形態データとして出力する追尾ビーム形態選択器108と、捜索ビーム走査と追尾ビーム形態データよりビーム走査のスケジューリングを行いビームスケジューリング情報としてビーム走査データ作成器103へ出力するビーム走査スケジューリング器109とを備えている。
以上のような構成のレーダ装置100によれば、追尾中の目標に対して航跡品質を指標として、航跡品質が低下している、すなわち、探知やレーダ装置の主要性能の1つである位置計測精度の性能が低下して追尾が不安定になったときに、図6のモデル図で示すように、追尾ビームの送信信号数を増加させることで、追尾性能を向上させることが可能である。
しかしながら、第1の関連技術によるレーダ装置100は、目標が捜索ビーム走査で探知できなかった場合、探知性能を向上させた諸元の追尾ビーム走査が次のタイミングでなされるまで、航跡品質が一時的に低下する、という問題がある(第1の問題点)。その理由は、 探知できなかったときに追尾処理後の航跡品質が低下することを指標として追尾ビーム走査で探知性能を上げた諸元のビーム走査を行うので、良好な探知データが得られるまでに時間の遅延が発生するためである。また、レーダ装置100は、S/Nが低い探知データが得られた場合航跡品質が一時的に低下するという問題がある(第2の問題点)。その理由を以下に述べる。S/Nは位置計測精度を決める重要な要因であり、S/Nが低い探知データの位置計測精度は一般的に劣化しており、S/Nが低い探知データが得られた場合は結果的に航跡品質が低下する。そして、航跡品質が低下したことを指標として追尾ビーム走査で探知性能を上げた諸元のビーム走査を行うので、第1の問題点の場合と同様に良好な探知データが得られるまでに時間の遅延が発生するためである。
他のレーダ装置として、測角処理における目標情報の信頼性を高めて、追尾性能を向上させるようにした技術(第2の関連技術)が提供されている(特許文献2)。第2の関連技術によるレーダ装置200は、図7のブロック図に示すように、空中線装置201と信号処理装置202とビーム制御装置203とで基本的に構成され、信号処理装置202は、目標検出/測角処理部221と、測角処理データの信頼性判定部222と航跡追尾処理部223とを備え、また、ビーム制御装置203は、ビーム捜査の方位、仰角計算部231とビーム走査スケジューリング部232とを備えている。
以上のような構成のレーダ装置200によれば、ビーム制御装置203のビーム走査スケジューリング部232で捜索モードと追尾モードとを当初のようにスケジューリングしていたとして、例えば、方位θ1の捜査ビームによる受信信号が信号処理装置202の目標検出/測角処理部221にて処理され、検出した目標情報の測角処理データが測角処理データの信頼性判定部222に入力される。そして、信頼性判定部222は入力された測角処理データを信頼できないと判定すると、航跡追尾処理部223に対して保留処理を行わせるとともに,ビーム走査スケジューリング部232に対して信頼性なしの通知をする。
ビーム走査スケジューリング部232では通知された方位θ1と仰角φ1を記憶して、方位θ1の捜索ビームの次のタイミングで再度捜索ビームを方位θ1と仰角φ1に向けるスケジューリングをする。この結果、ビーム捜査の方位、仰角計算部231で再度のビーム捜査が測角可能となるように方位及び仰角が計算され、測角処理データの信頼性判定部222の判定結果、信頼性ある測角処理データが得られると、信頼性有りの通知が航跡追尾処理部223に発せられるので、航跡追尾処理部223は保留を解除して得られた目標情報を用いて航跡追尾処理を行う。したがって、探知した目標についての測角処理データが信頼できないデータであるときは、測角処理における目標情報の信頼性を高めて、追尾性能を向上させることができるようになる。
特開平06―273522号公報 特開平04−328481号公報
ところで、第2の関連技術によるレーダ装置では、探知した目標と同じ方向に同じ送信諸元でビーム照射を行う構成になっているので、捜索ビーム走査で目標が探知できなかった場合には、再度ビーム走査を行うことができない、という問題がある。
すなわち、レーダ装置200では、図7から明らかなように、信号処理装置202の航跡追尾処理部223の出力は、ビーム制御装置203のビーム走査スケジューリング部232に入力されておらず、再度捜索ビーム走査を行うときは、追尾処理から求まる予測位置ではなく、最初の捜索ビーム走査と全く同じ方向にビーム照射を行う構成になっている。
また、関連技術によるレーダ装置では、ビーム諸元を変更する機能が備わってないので、最初の捜索ビーム走査で探知できて信頼性が低い探知データが得られた場合において、再度の捜索ビーム走査でも信頼性の低い測角処理データしか得られない可能性が高い、という問題がある。
すなわち、関連技術2によるレーダ装置200では、図7から明らかなように、ビーム諸元選択器11が備わっていないので、送信諸元を変更する(探知性能が増加するように諸元を変更する)機能を発揮できないため、上述のように再度捜索ビーム走査を行う場合でも信頼性の高い測角処理データを得る可能性が低くなる。
したがって、関連技術2によるレーダ装置では追尾性能が低くなるという不具合が避けられなくなる。
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、捜索ビーム走査で探知できなかった場合や捜索ビーム走査でS/Nが低い探知データが得られた場合でも、航跡品質の低下を防止することができ、さらに追尾性能の低下を防止することができるレーダ装置を提供することを目的としている。
この発明の第1の構成は、レーダ装置に係り、面状に配列され、電波を照射すると共に受信する複数の空中線素子と、各空中線素子から照射られる電波が全体として所望の方向にビームを形成するための少なくとも位相及び利得を含む制御データを作成するビーム走査データ作成器と、前記空中線素子から電波が照射されるごとに得られる受信信号から目標に関する情報を含む時系列の探知データを検出する目標検出器と、前記時系列の探知データから、同一の目標に属する目標探知データを抽出し、前記目標の予測位置や進行方向を算出して前記目標の運動を追随し、追尾データを出力する追尾処理器と、入力される前記追尾データに基づいて追尾ビーム走査のタイミングを決定し、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の走査時間の割付を行い、スケジューリングデータを出力する第1のビーム走査スケジューリング器と、前記追尾処理器から入力される追尾中の前記目標の捜索ビーム走査時の予測位置と前記目標探知データとを比較して、追尾中の前記目標が前記目標探知データとして有効に検出されたか否かを判定する探知データ有効性判定器と、前記探知データ有効性判定器にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、予測位置に直ちに照射する再捜索用のビームの送信諸元を算定して出力するビーム諸元選択器と、前記探知データ有効性判定器にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、前記第1のビーム走査スケジューリング器が出力した前記スケジューリングデータに対して、該ビーム諸元選択器にて算出された前記再捜索用のビームのビーム諸元データに基づいて、再度スケジューリングし直して再度のスケジューリングデータを前記ビーム走査データ作成器へ出力する第2のビーム走査スケジューリング器と、を備えてなることを特徴としている。
この発明の第2の構成は、レーダ装置による目標追尾方法に係り、面状に配列された複数の空中線素子のそれぞれから照射られる電波が全体として所望の方向にビームを形成するための少なくとも位相及び利得を含む制御データを時系列に作成するビーム走査データ作成処理と、前記空中線素子から電波が照射されるごとに得られる受信信号から目標に関する情報を含む時系列の探知データを検出する目標検出処理と、前記時系列の探知データから、同一の目標に属する目標探知データを抽出し、前記目標の予測位置や進行方向を算出して前記目標の運動を追随し、追尾データを出力する追尾処理と、入力される前記追尾データに基づいて追尾ビーム走査のタイミングを決定し、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の走査時間の割付を行い、スケジューリングデータを出力する第1のビーム走査スケジューリング処理と、前記追尾処理器にて算出される追尾中の前記目標の捜索ビーム走査時の予測位置と前記目標探知データとを比較して、追尾中の前記目標が前記目標探知データとして有効に検出されたか否かを判定する探知データ有効性判定処理と、前記探知データ有効性判定処理にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、予測位置に直ちに照射する再捜索用のビームの送信諸元を算定して出力するビーム諸元選択処理と、前記探知データ有効性判定処理にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、前記第1のビーム走査スケジューリング処理にて出力した前記スケジューリングデータに対して、該ビーム諸元選択処理にて算出された前記再捜索用のビームのビーム諸元データに基づいて、再度スケジューリングし直して再度のスケジューリングデータを前記ビーム走査データ作成器へ出力する第2のビーム走査スケジューリング処理と、を有してなることを特徴としている。
この発明のレーダ装置によれば、捜索ビーム走査で探知できなかった場合や捜索ビーム走査でS/Nが低い探知データが得られた場合は、追尾処理を行い航跡品質が低下することを待つことなく、捜索ビーム走査後直ちに必要な探知性能を向上させた再捜索用のビームをその方向にのみ照射するようにしたので、捜索ビーム走査で探知できなかった場合や捜索ビーム走査でS/Nが低い探知データが得られた場合でも、再捜索用のビーム走査で得られる良好な探知データで追尾処理を行うことができるため、航跡品質の低下を防止することができ、さらに、追尾性能の低下を防止することができる。
この発明の第1の実施形態であるレーダ装置の構成を示すブロック図である。 同レーダ装置による捜索ビーム走査と追尾ビーム走査のタイミングを説明するモデル図である。 この発明の第2の実施形態であるレーダ装置の構成を示すブロック図である。 レーダ装置においてデータレートを増加するための捜索ビーム走査と追尾ビーム走査のタイミングを説明するモデル図である。 従来のレーダ装置の構成を示すブロック図である。 同レーダ装置による捜索ビーム走査と追尾ビーム走査のタイミングを説明するモデル図である。 従来の他のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
この実施形態のレーダ装置は、面状に配列され、電波を照射すると共に受信する複数の空中線素子と、各空中線素子から照射られる電波が全体として所望の方向にビームを形成するための少なくとも位相及び利得を含む制御データを作成するビーム走査データ作成器と、前記空中線素子から電波が照射されるごとに得られる受信信号から、目標に関する距離・方位・検出時刻情報を含む時系列の探知データを検出する目標検出器と、前記時系列の探知データから、同一の目標に属する目標探知データを抽出し、前記目標の予測位置や進行方向を算出して前記目標の運動を追随し、航跡品質を算定した後、追尾データを出力する追尾処理器と、入力される前記追尾データに基づいて追尾ビーム走査のタイミングを決定し、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の走査時間の割付を行い、スケジューリングデータを出力する第1のビーム走査スケジューリング器と、前記目標探知データに対して検出時のS/Nを算出するS/N算定器と、前記追尾処理器から入力される追尾中の前記目標の捜索ビーム走査時の予測位置と前記目標探知データとを比較して、追尾中の前記目標が前記目標探知データとして検出されかつS/Nが一定値以上であるか否かを判定する探知データ有効性判定器と、前記探知データ有効性判定器にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、予測位置に直ちに照射する再捜索用のビームの送信諸元を算定して出力するビーム諸元選択器と、前記探知データ有効性判定器にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、前記第1のビーム走査スケジューリング器が出力した前記スケジューリングデータに対して、該ビーム諸元選択器にて算出された前記再捜索用のビームのビーム諸元データに基づいて、再度スケジューリングし直して再度のスケジューリングデータを前記ビーム走査データ作成器へ出力する第2のビーム走査スケジューリング器と、を備えてなることで、この発明の課題を解決できた。
前記ビーム諸元選択器は、当該装置の探知性能の向上に寄与する前記ビームの送信諸元を選択して再捜索用のビーム走査を行うのが好ましい。
具体的には、前記ビーム諸元選択器は、送信パルス幅を広げる、送信信号数を増やす、又は/及び送信電力を上げることで、当該装置の探知性能の向上に寄与する前記ビームの送信諸元を選択して再捜索用のビーム走査を行うのが好ましい。
実施形態1
図1は、この発明の第1の実施形態であるレーダ装置の構成を示すブロック図、また、図2は同レーダ装置による捜索ビーム走査と追尾ビーム走査のタイミングを説明するモデル図である。
この第1の実施形態のレーダ装置1は、アダプティブビーム走査を行うことができるフェーズドアレイレーダ装置に係り、図1に示すように、空中線素子1A〜1Lと、送信器2と、ビーム走査データ作成器3と、受信器4と、信号処理器5と、目標検出器6と、探知データ判定器7と、S/N算定器8と、追尾処理器9と、第1のビーム走査スケジューリング器10と、ビーム諸元選択器11と、第2のビーム走査スケジューリング器12とを備えている。
ここで、空中線素子1A〜1Lは、ビーム走査データ作成器3から入力される空中線素子1A〜1Lごとの位相や利得等の制御情報と、送信器2から入力される送信信号により空間に対して電波を照射してビームを形成する。送信器2は、空中線素子1A〜1Lが空間に照射する電波の元となる送信信号を発生する。ビーム走査データ作成器3は、空中線素子1A〜1Lがそれぞれ照射する電波が全体として、所望の方向にビームが形成するために必要な位相や利得等の制御データを発生する。受信器4は、空中線素子1A〜1Lから入力されるアナログ受信信号を、周波数変換やA/D変換してディジタル受信信号として信号処理器5に出力する。信号処理器5は、パルス圧縮やパルスドップラ処理等のS/N改善や不要信号抑圧のための信号処理を行う。
目標検出器6は、信号処理後のディジタル受信信号から距離、方位、検出時刻等の目標に関する情報を含む探知データを検出する。探知データ判定器7は、追尾処理器9から入力される追尾中の目標の捜索ビーム走査時の予測位置と検出された探知データを比較して、追尾中の目標が探知データとして検出されかつS/Nが一定値以上であるかどうかを判定する。S/N算定器8は、検出された探知データに対して検出時のS/Nを算出する。追尾処理器9は、空中線素子1A〜1Lから電波が照射されるごとに得られる時系列の探知データの中から、同一の目標に属する探知データを抽出し、その目標の予測位置や進行方向を算出してその目標の運動を追随し、航跡品質を算定した後、追尾データを出力する処理を行う。
さらに、第1のビーム走査スケジューリング器10は、追尾処理器9より入力される追尾データにより追尾ビーム走査のタイミングを決定し、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の走査時間の割付を行い、スケジューリングデータを出力する。ビーム諸元選択器11は、探知データ判定器7で有効な探知データが無いと判定されたときは、予測位置に直ちに照射する再捜索用のビームの送信諸元を選択しビーム諸元データを出力する。ここで、再捜索用のビームの送信諸元は、送信パルス幅を広げる、送信信号数を増やす、送信電力を上げる等のレーダ装置が可能な手段で探知性能を向上させるものとする。また、探知データがないときが、最も探知性能が高い諸元として、S/Nに応じた適切な諸元を選択するものとする。
第2のビーム走査スケジューリング器12は、第1のビーム走査スケジューリング器10が出力するスケジューリングデータに対して、ビーム諸元データにより再度スケジューリングし直して最終的なスケジューリングデータを、ビーム走査データ作成器3へ出力する。ここで再捜索用のビームの送信諸元は、送信パルス幅を広げる、送信信号数を増やす、送信電力を上げる等のレーダ装置が可能な手段で探知性能を向上させるものとする。また、探知データが無い場合を最も探知性能が高い諸元として、S/Nに応じた適切な諸元を選択するものとする。
次に、この第1の実施形態によるレーダ装置1の動作について説明する。
先ず、空中線素子1A〜1Lは、ビーム走査データ作成器3から入力される空中線素子1A〜1Lごとの位相や利得等の制御情報と、送信器2から入力される送信信号により空間に対して電波を照射してビームを形成する。次に、空中線素子1A〜1Lは、目標からの反射信号であるアナログ受信信号を受信して受信器4に出力する。次に、受信器4は、入力されたアナログ受信信号を、周波数変換やA/D変換してディジタル受信信号として信号処理器5に出力する。次に、信号処理器5は、入力されたディジタル受信信号をパルス圧縮やパルスドップラ処理等のS/N改善や不要信号抑圧のための信号処理を行って目標検出器6に出力する。
次に、目標検出器6は、その信号処理後のディジタル受信信号から距離、方位、検出時刻等の目標に関する情報を含む探知データを検出して、探知データ判定器7及びS/N算定器8に出力する。次に、S/N算定器8は、検出された探知データに対して検出時のS/Nを算出して、探知データ判定器7に出力する。追尾処理器9は、空中線素子1A〜1Lから電波が照射されるごとに得られる時系列の探知データの中から、同一の目標に属する探知データを抽出し、その目標の予測位置や進行方向を算出してその目標の運動を追随し、航跡品質を算定した後、追尾データを出力する。次に、探知データ判定器7は、追尾処理器9から入力される追尾中の目標の捜索ビーム走査時の予測位置と、検出された探知データを比較して、追尾中の目標が探知データとして検出されかつS/Nが一定値以上であるかどうかを判定して、この結果をビーム諸元選択器11に出力する。
第1のビーム走査スケジューリング器10は、追尾処理器9より入力される追尾データにより追尾ビーム走査のタイミングを決定し、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の走査時間の割付を行い、スケジューリングデータを第2のビーム走査スケジューリング器12に出力する。ビーム諸元選択器11は、探知データ判定器7で有効な探知データが無いと判定された場合に、予測位置に直ちに照射する再捜索用のビームの送信諸元を選択しビーム諸元データを第2のビーム走査スケジューリング器12に出力する。上述したように、ここで再捜索用のビームの送信諸元は、送信パルス幅を広げる、送信信号数を増やす、送信電力を上げる等のレーダ装置が可能な手段で探知性能を向上させるものとする。また、探知データが無い場合を最も探知性能が高い諸元として、S/Nに応じた適切な諸元を選択するものとする。
次に、第2のビーム走査スケジューリング器12は、第1のビーム走査スケジューリング器10が出力するスケジューリングデータに対して、ビーム諸元データにより再度スケジューリングし直して最終的なスケジューリングデータを、ビーム走査データ作成器3へ出力する。
図2に示すように、この第1の実施形態のレーダ装置1による捜索ビーム走査と再捜索用のビーム走査の動作のタイミングを説明するモデル図から明らかなように、この第1の実施形態のレーダ装置1によれば、捜索ビームで探知できなかった場合に、直ちに探知性能を向上させた再捜索用のビーム走査を行うことで、追尾ビーム走査よりも少ない時間遅延で探知データを得ることができる。
このように、この第1の実施形態のレーダ装置1によれば、捜索ビーム走査で探知できなかった場合や捜索ビーム走査でS/Nが低い探知データが得られた場合は、追尾処理を行い航跡品質が低下することを待つことなく、捜索ビーム走査後直ちに必要な探知性能を向上させた再捜索用のビームをその方向にのみ照射するようにしたので、捜索ビーム走査で探知できなかった場合や捜索ビーム走査でS/Nが低い探知データが得られた場合でも、再捜索用のビーム走査で得られる良好な探知データで追尾処理を行うことができるため、航跡品質の低下を防止することができ、さらに追尾性能の低下を防止することができる。
実施形態2
図3は、この発明の第2の実施形態であるレーダ装置の構成を示すブロック図である。この第2の実施形態のレーダ装置の構成が、上述した第1の実施形態のそれと大きく異なるところは、クラッタにより探知性能が低下した場合にも航跡品質の低下を防止するために、クラッタ領域検出器を備えるようにした点である。
一般に、レーダ装置において、クラッタの影響により探知性能が低下する場合は、ノイズよりもクラッタの振幅が大きく、S/NではなくS/Cが小さいことが原因である。ここでCはクラッタの振幅値を示す。したがって、この第2の実施形態のレーダ装置はクラッタ対策を講ずる構成になっている。
この第2の実施形態のレーダ装置20は、図3に示すように、第1の実施形態によるレーダ装置1の構成に加えて、信号処理器5とビーム諸元選択器11の間にクラッタ領域検出器13を備えている。これ以外は、上述した第1の実施形態と略同様である。それゆえ、図3において、図1の構成部分と対応する各部には、同一の番号を付してその説明を省略する。
クラッタ領域検出器13は、ディジタル受信信号より空間領域内でクラッタが存在する領域を検出する。そして、追尾中の目標の予測位置がクラッタ領域内である場合は、ビーム諸元選択器11はクラッタ抑圧性能の高いビーム諸元を選択して再捜索用のビーム走査を行う。クラッタ抑圧性能を上げるためのビーム諸元としては、例えば、捜索ビーム走査よりパルス繰り返し周波数を高くしてパルスドップラ処理を行うようにすることで、ドップラ周波数軸上の分解能が向上してS/Cが改善される。このようにすることにより、クラッタの影響により捜索ビームの探知性能が低下した場合でも、航跡品質を低下することを回避し、追尾性能が向上する。
このように、この第2の実施形態のレーダ装置20によれば、第1の実施形態のレーダ装置1と略同様な効果が得られる他に、特にクラッタの影響による探知性能の低下を防止することができるという効果を得ることができる。
以上、この発明の一実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、照射ビームの断面は、点ではなく、ある程度の広がりを持っている上、(1回目の)捜索用ビーム照射後、直ちに、(2回目の)再捜索用ビームを照射するなら、予測位置の再計算は不要である。しかしながら、必要に応じて、再計算を行うようにしても良い。なお、ビームを予測位置に照射しても、予測位置を中心にある範囲ににわたり、探知可能である。
瞬時に任意の方向にビーム走査を行うアダプティブビーム走査を行うことが可能なフェーズドアレイレーダ装置であれば、詳細な構成の如何を問わず全て適用することができる。
1、20 レーダ装置
1A〜1L 空中線素子
3 ビーム走査データ作成器
4 受信器
5 信号処理器
6 目標検出器
7 探知データ判定器(探知データ有効性判定器)
8 S/N算定器
9 追尾処理器
10 第1のビーム走査スケジューリング器
11 ビーム諸元選択器
12 第2のビーム走査スケジューリング器
13 クラッタ領域検出器

Claims (9)

  1. 面状に配列され、電波を照射すると共に受信する複数の空中線素子と、
    各空中線素子から照射られる電波が全体として所望の方向にビームを形成するための少なくとも位相及び利得を含む制御データを作成するビーム走査データ作成器と、
    前記空中線素子から電波が照射されるごとに得られる受信信号から目標に関する情報を含む時系列の探知データを検出する目標検出器と、
    前記時系列の探知データから、同一の目標に属する目標探知データを抽出し、前記目標の予測位置や進行方向を算出して前記目標の運動を追随し、追尾データを出力する追尾処理器と、
    入力される前記追尾データに基づいて追尾ビーム走査のタイミングを決定し、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の走査時間の割付を行い、スケジューリングデータを出力する第1のビーム走査スケジューリング器と、
    前記追尾処理器から入力される追尾中の前記目標の捜索ビーム走査時の予測位置と前記目標探知データとを比較して、追尾中の前記目標が前記目標探知データとして有効に検出されたか否かを判定する探知データ有効性判定器と、
    前記探知データ有効性判定器にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、予測位置に直ちに照射する再捜索用のビームの送信諸元を算定して出力するビーム諸元選択器と、
    前記探知データ有効性判定器にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、前記第1のビーム走査スケジューリング器が出力した前記スケジューリングデータに対して、該ビーム諸元選択器にて算出された前記再捜索用のビームのビーム諸元データに基づいて、再度スケジューリングし直して再度のスケジューリングデータを前記ビーム走査データ作成器へ出力する第2のビーム走査スケジューリング器と、
    を備えてなることを特徴とするレーダ装置。
  2. 面状に配列され、電波を照射すると共に受信する複数の空中線素子と、
    各空中線素子から照射られる電波が全体として所望の方向にビームを形成するための少なくとも位相及び利得を含む制御データを作成するビーム走査データ作成器と、
    前記空中線素子から電波が照射されるごとに得られる受信信号から、目標に関する距離・方位・検出時刻情報を含む時系列の探知データを検出する目標検出器と、
    前記時系列の探知データから、同一の目標に属する目標探知データを抽出し、前記目標の予測位置や進行方向を算出して前記目標の運動を追随し、航跡品質を算定した後、追尾データを出力する追尾処理器と、
    入力される前記追尾データに基づいて追尾ビーム走査のタイミングを決定し、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の走査時間の割付を行い、スケジューリングデータを出力する第1のビーム走査スケジューリング器と、
    前記目標探知データに対して検出時のS/Nを算出するS/N算定器と、
    前記追尾処理器から入力される追尾中の前記目標の捜索ビーム走査時の予測位置と前記目標探知データとを比較して、追尾中の前記目標が前記目標探知データとして検出されかつS/Nが一定値以上であるか否かを判定する探知データ有効性判定器と、
    前記探知データ有効性判定器にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、予測位置に直ちに照射する再捜索用のビームの送信諸元を算定して出力するビーム諸元選択器と、
    前記探知データ有効性判定器にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、前記第1のビーム走査スケジューリング器が出力した前記スケジューリングデータに対して、該ビーム諸元選択器にて算出された前記再捜索用のビームのビーム諸元データに基づいて、再度スケジューリングし直して再度のスケジューリングデータを前記ビーム走査データ作成器へ出力する第2のビーム走査スケジューリング器と、
    を備えてなることを特徴とするレーダ装置。
  3. 前記ビーム諸元選択器は、当該装置の探知性能の向上に寄与する前記ビームの送信諸元を選択して再捜索用のビーム走査を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のレーダ装置。
  4. 前記ビーム諸元選択器は、送信パルス幅を広げる、送信信号数を増やす、又は/及び送信電力を上げることで、当該装置の探知性能の向上に寄与する前記ビームの送信諸元を選択して再捜索用のビーム走査を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のレーダ装置。
  5. S/N改善及び不要信号抑圧のための信号処理を行う信号処理器を備え、
    前記目標検出器は、前記信号処理器による信号処理後のディジタル受信信号から前記探知データを検出することを特徴とする請求項1又は2記載のレーダ装置。
  6. 前記信号処理器と前記ビーム諸元選択器の間に、前記ディジタル受信信号に基づいて空間領域内でクラッタが存在する領域を検出するクラッタ領域検出器が付加されていることを特徴とする請求項5記載のレーダ装置。
  7. 前記ビーム諸元選択器は、追尾中の前記目標の予測位置が、前記クラッタが存在する領域内であるときは、クラッタ抑圧性能の高い前記ビームの送信諸元を選択して再捜索用のビーム走査を行うことを特徴とする請求項6記載のレーダ装置。
  8. アダプティブビーム走査を行うことができるフェーズドアレイレーダ装置であることを特徴とする請求項1又は2記載のレーダ装置。
  9. 面状に配列された複数の空中線素子のそれぞれから照射られる電波が全体として所望の方向にビームを形成するための少なくとも位相及び利得を含む制御データを時系列に作成するビーム走査データ作成処理と、
    前記空中線素子から電波が照射されるごとに得られる受信信号から目標に関する情報を含む時系列の探知データを検出する目標検出処理と、
    前記時系列の探知データから、同一の目標に属する目標探知データを抽出し、前記目標の予測位置や進行方向を算出して前記目標の運動を追随し、追尾データを出力する追尾処理と、
    入力される前記追尾データに基づいて追尾ビーム走査のタイミングを決定し、捜索ビーム走査と追尾ビーム走査の走査時間の割付を行い、スケジューリングデータを出力する第1のビーム走査スケジューリング処理と、
    前記追尾処理器にて算出される追尾中の前記目標の捜索ビーム走査時の予測位置と前記目標探知データとを比較して、追尾中の前記目標が前記目標探知データとして有効に検出されたか否かを判定する探知データ有効性判定処理と、
    前記探知データ有効性判定処理にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、予測位置に直ちに照射する再捜索用のビームの送信諸元を算定して出力するビーム諸元選択処理と、
    前記探知データ有効性判定処理にて有効な目標探知データが無いと判定されたときは、前記第1のビーム走査スケジューリング処理にて出力した前記スケジューリングデータに対して、該ビーム諸元選択処理にて算出された前記再捜索用のビームのビーム諸元データに基づいて、再度スケジューリングし直して再度のスケジューリングデータを前記ビーム走査データ作成器へ出力する第2のビーム走査スケジューリング処理と、を有してなることを特徴とするレーダ装置による目標追尾方法。
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