JP5622533B2 - レーダ装置 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、航空機等の移動する目標を探知し、位置情報その他の情報を用いて当該目標を識別する機能を有するレーダ装置に関する。
従来のレーダ装置は、空間に電波を発射し、目標からの反射波を受信することにより目標を探知し、位置や速度情報等を得るのが一般的であり、監視を行う必要のある全領域に対して方位角や仰角等を変化させながらビーム走査を行う。監視範囲における方位方向は、レーダ装置の用途に応じて限られた方位角のみを行う場合もあれば全周捜索を行う場合もある。
レーダ装置の種類には、捜索用レーダや追尾用レーダ等が挙げられる。捜索用レーダは、主に探知した目標の位置情報を出力する。一方、追尾用レーダは、探知・追尾した結果に基づく航跡情報を出力する。いずれにしても、一般的な捜索用レーダや追尾用レーダ等のレーダ装置は、探知した目標の位置情報や追尾処理後の航跡情報や予測位置情報等を出力するのが通常である。
特開2005−83867号公報
上述したように、一般的な捜索用レーダや追尾用レーダ等のレーダ装置は、探知した目標の位置情報や追尾処理後の航跡情報や予測位置情報等を出力することができるものの、目標が何であるかの判断(類別、識別)まで行うことはできない。すなわち、一般的なレーダ装置は、探知した目標が例えば航空機あるいは船舶等である場合に、その機種名までを推定することはできない。例外として、一部の画像レーダは、高分解能化が図られることにより、目標形状がある程度取得可能であるため、探知した目標が「何であるか」までを知る(類別、識別)ことができるものも存在する。しかしながら、位置や速度等の情報のみを取得する一般的な捜索用レーダや追尾用レーダ等のレーダ装置は、目標が「何であるか」までを推定することはできない。
なお、特許文献1に記載の目標追尾装置は、「ドップラ周波数によるドップラ速度」と「ドップラシフト差によるドップラ速度」とを比較することにより、良質なドップラ速度を算出して追尾に利用する装置であり、例えば複数の目標が混在する場合であっても正確に各目標を区別しうる旨が記載されているが、各目標の具体的な機種名等までも推定するものではない。
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、探知した目標について識別処理を行い、当該目標の具体的な種類(機種名等)の推定を行うことができるレーダ装置を提供することを課題とする。
実施形態のレーダ装置は、上記課題を解決するために、任意の方向にビームを形成して目標からの反射波を受信し、この受信結果から目標検出を行うレーダ装置であって、空中線部と、前記空中線部を介して送信信号を送信するとともに到来した前期反射波に基づいて受信信号を受信する送受信部と、前記送受信部により受信された受信信号に基づいて受信ビームを形成し、ビームデータとして出力するビーム形成部と、前記ビーム形成部により出力されたビームデータに基づいて信号処理することで前記目標に関する情報を検出するレーダ信号処理部と、前記レーザ信号処理部により検出された情報と予め記憶された機体の種類ごとの特徴を示す機体識別情報とを比較することで、前記目標が該当する機体の種類を推定する機体識別部とを備え、前記レーダ信号処理部は、前記ビーム形成部により出力されたビームデータに基づいて、1スキャンの捜索範囲を複数のエリアに分割して前記複数のエリアの各々にビームを照射した場合におけるエリア毎の目標に関する検出情報を生成する検出部と、前記検出部により生成された検出情報に基づいて、前記複数のエリアの各々で検出された目標のうち同一目標による検出情報を相関づける相関部と、前記相関部により相関づけられた同一目標の検出情報に基づいて、検出した当該同一目標のRCSを推定するRCS推定部とを有することを特徴とする。



実施例1の形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。 実施例1の形態のレーダ装置の機体識別用データベースが予め機体識別情報として記憶する速度と高度との許容範囲を示す飛行エンベロープの1例を示す図である。 実施例1の形態のレーダ装置のRCS推定部によるRCS推定のための統計処理のイメージを示す図である。 実施例1の形態のレーダ装置の機体識別用データベースが予め機体識別情報として記憶する機体別のRCS分布形状の1例を示す図である。 実施例1の形態のレーダ装置において隣接するビームと目標の位置関係を説明する図である。
以下、本発明のレーダ装置の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例1のレーダ装置の構成を示すブロック図である。本実施例のレーダ装置は、任意の方向にビームを形成して目標からの反射波を受信し、この受信結果から目標検出を行うレーダ装置であり、図1に示すように、空中線1、励振受信部2、ビーム形成部3、ビーム制御部4、検出部5、相関部6、検出情報記録部7、追尾部8、表示部9、RCS推定部10、識別部11、及び機体識別用データベース12により構成される。
空中線1は、本発明の空中線部に対応し、例えば複数のアンテナ素子が配列されたフェーズドアレイアンテナによるアンテナ面を構成し、後述する励振受信部2による送信信号を電波として空間に放射するとともに、反射された信号を受信信号として受信する。フェーズドアレイ方式を採用したレーダ装置は、レーダの指向方位を機械回転方位に大きく依存せずに電子走査で決められるため、ある特定の目標にビームを照射し続けるような追尾処理等において自由度が大きいレーダを構成することができる。
励振受信部2は、本発明の送受信部に対応し、空中線1を介して送信信号を送信するとともに到来した反射波に基づいて受信信号を受信する。
ビーム形成部3は、励振受信部2により受信された受信信号に基づいて受信ビームを形成し、ビームデータとして出力する。なお、ビーム形成部3による受信ビームのビーム形成演算は、従来のフェーズドアレイアンテナに対して行われるものと同様であり、各アンテナ素子の位相や振幅を制御することにより任意の方位を指向する受信ビームを形成することができる。
ビーム制御部4は、任意の方向にビームを形成して捜索範囲を走査するための制御を行う。具体的には、ビーム制御部4は、励振受信部2とビーム形成部3とを制御することで、捜索範囲のビームスケジュールを設定することができる。
検出部5、相関部6、検出情報記録部7、追尾部8、及びRCS推定部10は、全体として本発明のレーダ信号処理部に対応し、ビーム形成部3により出力されたビームデータに基づいて信号処理することで、捜索範囲内に存在する目標に関する情報を検出し、目標を検出した場合に当該目標までの距離や方位等の情報を得ることができる。ただし、検出情報記録部7とRCS推定部10とは、RCS(Radar Cross Section,レーダ反射断面積)の推定を行わない場合には不要である。
検出部5は、ビーム形成部3により出力されたビームデータに基づいて、1スキャンの捜索範囲を複数のエリアに分割して複数のエリアの各々にビームを照射した場合におけるエリア毎の目標に関する検出情報を生成する。
相関部6は、検出部5により生成された検出情報に基づいて、複数のエリアの各々で検出された目標のうち同一目標による検出情報を相関づける。相関部6による相関処理には様々な方法が考えられるが、相関部6は、例えば、同一の目標に関する検出情報が多数存在する場合に、代表値(最も受信強度が大きい検出情報等)を定めて相関後の検出情報として出力し、その他の同一目標に関する検出情報は廃棄する。これにより、相関部6は、1目標につき1つの検出情報のみを取り出すことができ、後の追尾処理等において迅速且つ適切な処理を行うことができる。
検出情報記録部7は、検出部5により生成されたエリア毎の目標に関する検出情報をそのまま記録し、保存する。
追尾部8は、相関部6により相関処理が行われた検出情報に基づいて、追尾処理を行う。この追尾部8による追尾処理は、一般的なレーダと同様であり、検出した目標の位置、速度、加速度、アスペクト角、高度等の航跡情報を算出し、過去に得られた航跡情報と比較する等して所定の目標に対する追尾処理を行うものである。追尾部8は、所定の目標に対して蓄積した航跡情報を例えば航跡ビデオとして表示部9に出力するとともに、検出した各目標の航跡情報(速度、加速度、アスペクト角、高度等)を識別部11に出力する。
表示部9は、例えばディスプレイ等であり、レーダ信号処理部により検出された目標に関する情報(航跡等)を画面上に表示する。具体的には、表示部9は、追尾部8により出力された航跡ビデオ等の情報に基づいて、検出した目標に関する航跡等の情報を画面上に表示する。
RCS推定部10は、相関部6により相関づけられた同一目標の検出情報に基づいて、検出した当該同一目標のRCSを推定する。なお、本実施例においては、RCS推定部10は、相関部6から直接的に相関処理後の情報を得るわけではなく、識別部11及び検出情報記録部7を介して相関処理後の情報を入手し、相関部6において本来廃棄されるはずの検出情報も用いてRCS推定を行うことができる。この一連の処理の流れについては後述する。
識別部11は、本発明の機体識別部に対応し、レーダ信号処理部により検出された情報と予め記憶された機体の種類ごとの特徴を示す機体識別情報とを比較することで、検出した目標が該当する機体の種類を推定する。なお、レーダ信号処理部は、速度、加速度、アスペクト角、高度、受信信号強度、及びRCSのうち少なくとも1つを目標に関する情報として検出する。したがって、識別部11は、追尾部8により出力された速度、加速度、アスペクト角、高度等の航跡情報を機体識別に使用してもよいし、RCS推定部10により出力されたRCSあるいは受信信号強度の情報を機体識別に使用してもよい。
なお、本実施例において、識別部11は、機体の種類ごとの特徴を示す機体識別情報を自ら記憶しているわけではなく、機体識別用データベース12に予め記憶された機体識別情報を参照し、機体識別に使用するものとする。
また、レーダ信号処理部により検出された情報(航跡情報)とは、追尾部8によるレーダの追尾処理に伴って得られる情報であり、例えば速度(最大、最小)、直進加速度(最大等)、旋回加速度(最大等)、飛行高度(最高、最低)等である。識別部11は、これらの情報を機体識別用データベース12に予め記憶された機体識別情報と比較することにより、検出した目標が該当する機体の種類を推定する。
機体識別データベース12は、事前に対象とする航空機(固定翼、回転翼)や船舶等のデータベースを構築したものであり、機体識別情報として様々な情報を予め記憶しておくことが可能である。1例として、機体識別データベース12は、対象とする機体の種類毎の速度と高度との関係を機体識別情報として記憶しておくことができる。
図2は、本実施例のレーダ装置の機体識別用データベース12が予め機体識別情報として記憶する速度と高度との許容範囲を示す飛行エンベロープの1例を示す図である。図2に示すように、航空機等は、機体の種類に応じて実現可能な飛行高度と速度との関係が異なる。したがって、識別部11は、レーダ信号処理部により検出された目標の速度情報及び高度情報と、図2に示すような速度・高度の許容範囲を示した機体識別情報とを比較することで、検出した目標が該当する機体の種類を推定することができる。
例えば、追尾部8により出力された速度・高度の情報が、図2における機体Aと機体Bとが重なり合う範囲に該当するときには、いずれの機体であるかを識別することは困難であるが、機体Aの範囲内で且つ機体Bの範囲外に該当する場合には、検出した目標は機体Aである可能性が高いといえる。逆に、追尾部8により出力された情報が、図2における機体Aの範囲外で且つ機体Bの範囲内に該当する場合には、検出した目標は機体Bである可能性が高いといえる。
なお、識別部11は、必ずしも1つの機体に絞って推定する必要はなく、例えば、機体Aである可能性が何%で機体Bである可能性が何%であるというような複数の候補に対する該当確率の推定を行ってもよい。この場合の識別部11における推論処理は、例えばDempster−Shaferやベイジアン・ネットワーク等の従来からある技術を利用することが考えられ、候補の列挙等を行うことができる。
また、別の例として、機体識別データベース12は、対象とする機体の種類毎のRCSの典型的な分布形状を機体識別情報として記憶しておくことができる。図3は、本実施例のレーダ装置のRCS推定部10によるRCS推定のための統計処理のイメージを示す図である。RCS推定部10は、目標の受信強度からRCSを逆算し、これを図3のようにヒストグラム表示して、累積50%のRCS(=3.5m^2)を推定値としている。一方、図4は、本実施例のレーダ装置の機体識別用データベース12が予め機体識別情報として記憶する機体別のRCS分布形状の1例を示す図である。
RCSの推定には、多くのデータの母数から統計処理を行う必要があり、RCS推定部10は、同一の目標に対して多数回繰り返して測定したRCSの分布形状を図3のように導き出すとともに、RCSの小さい順に度数を足し合わせていき、全てのデータについて足し合わせたときを100%とする累積%を導き出し、累積50%の値を代表値(推定RCS)として出力する。
また、図4に示すように、航空機等は、機体の種類に応じてレーダで観測したRCSの大きさや分布形状が異なる。したがって、識別部11は、レーダ信号処理部により検出された目標のRCS推定値(すなわち図3に示すような累積50%における推定RCSやRCSの分布形状)と、図4に示すような機体固有のRCS分布形状を示した機体識別情報とを比較することで、検出した目標が該当する機体の種類を推定することができる。
識別部11は、RCSの分布形状のみを比較することによっても、ある程度の機体識別を行うことができるが、それに加えて代表値たる累積50%の推定RCSを機体識別データベース12内の機体識別情報と比較することにより、より正確な機体識別を行うことができる。なお、RCS推定の代表値は、必ずしも累積50%の値に限らず、中央値や平均値を用いることも可能である。さらに、RCSの分布形状は、アスペクト角によっても変化するため、識別部11は、追尾部8により出力された航跡情報内のアスペクト角と、RCS推定部10により出力された推定RCSの分布形状とに基づいて、機体識別(機体の種類の推定)を行ってもよい。
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。最初に、識別部11が航跡情報(例えば図2に示すような速度及び高度の情報)のみを用いて機体識別を行う場合について説明する。したがって、この場合におけるレーダ装置は、検出情報記録部7及びRCS推定部10が不要であるため、これらの構成は存在しないものとして説明する。
まず、ビーム制御部4は、励振受信部2とビーム形成部3とを制御して捜索範囲のビームスケジュールを設定することで、任意の方向にビームを形成して捜索範囲を走査するための制御を行う。励振受信部2は、空中線1を介して送信信号を送信するとともに到来した反射波に基づいて受信信号を受信する。ビーム形成部3は、励振受信部2により受信された受信信号に基づいて受信ビームを形成し、ビームデータとして出力する。
検出部5は、ビーム形成部3により出力されたビームデータに基づいて、1スキャンの捜索範囲を複数のエリアに分割して複数のエリアの各々にビームを照射した場合におけるエリア毎の目標に関する検出情報を生成する。相関部6は、検出部5により生成された検出情報に基づいて、複数のエリアの各々で検出された目標のうち同一目標による検出情報を相関づける。
追尾部8は、相関部6により相関処理が行われた検出情報に基づいて、追尾処理を行い、検出した目標の位置、速度、加速度、アスペクト角、高度等の航跡情報を算出して識別部11に出力する。
識別部11は、レーダ信号処理部により検出された情報(すなわち追尾部8により出力された航跡情報)と機体識別用データベース12に予め記憶された機体の種類ごとの特徴を示す機体識別情報とを比較することで、検出した目標が該当する機体の種類を推定する。具体的には、識別部11は、追尾部8により出力された航跡情報と図2に示すような飛行エンベロープとを比較し、検出した各目標について機体の種類(機種)の推定を行う。
最後に、表示部9は、追尾部8により出力された航跡ビデオ等の情報に基づいて、検出した目標に関する航跡等の情報を画面上に表示する。また、図示されていないが、識別部11は、機体識別の推定結果を追尾部8経由あるいは直接的に表示部9に出力してもよい。その場合には、表示部9は、識別部11による各目標に対する機体識別の推定結果を表示する。
次に、識別部11がRCS推定値を用いて機体識別を行う場合について説明する。したがって、この場合におけるレーダ装置は、検出情報記録部7及びRCS推定部10を備えているものとして説明する。RCSの推定には、上述したように、多くのデータの母数から統計処理を行う必要があるため、本実施例においては、データの母数を確保するための手法を2つ説明する。
データの母数を確保するための1つめの手法として、相関前の検出データを使用する方法が挙げられる。この方法は、レーダ装置が検出情報記録部7及びRCS推定部10を含む図1に示す構成を備えることにより実現可能である。
まず、空中線1、励振受信部2、ビーム形成部3、ビーム制御部4、検出部5、相関部6、追尾部8、及び表示部9における動作の流れは上述した説明と同様である。
ここで、一般的なレーダでひとつの目標を検出した場合においては、レーダが照射するビームのオーバーラップ率にもよるが、ひとつの目標は方位方向及び仰角(高低)方向にスプリット(割れて)して検出されることが多い。これは、レーダが一般的に、規定の最遠方で性能を規定される(通常、探知確率=50%)ところ、50%以下でも探知される場合もあれば、最遠方より近傍ではそれ以上の確率で、隣接するエリアに照射したビームでも十分に検出をあげることが可能だからである。
図5は、隣接するビームと目標の位置関係を説明する図である。図5に示す例において、レーダ装置は、1スキャンで位置1−1〜3−3までの9つのエリアの各々にビームを照射している。目標の位置から考えると、レーダ装置は、位置2−2のエリアにビームを照射した場合に目標を検出できると考えられるが、実際には隣接するエリアにビームを照射した場合においても検出されてしまい、図5に示す例においては1スキャンで位置1−1,1−2,2−1,2−2,2−3,3−1,3−2の7つのエリアにおいて検出されている。
相関部6は、相関処理を行うに際し、これらの複数の検出が、同一の目標の検出情報であるかどうかを判断して、代表値(通常、最も受信強度が大きい検出情報であり、図5の例においては位置2−2における検出情報)を相関処理後データとして出力し、代表値とならなかった検出情報は棄却する。すなわち、相関部6は、通常、1スキャン毎に相関処理を行い、スプリットした検出情報をひとつにまとめてしまうが、例えば上下・左右・斜め上下左右にスプリットした場合には、図5において1スキャンで7個の母数データが得られることになる。
本実施例のレーダ装置は、これらの棄却されている検出情報をRCS推定の統計処理に積極的に活用するものであり、ひとつの目標のRCS推定の統計処理のために、独立した送受信に基づく受信データのそれぞれを母数データとする。
具体的には、検出情報記録部7は、検出部5により生成されたエリア毎の目標に関する検出情報をそのまま記録し、保存する。すなわち、検出情報記録部7は、図5の例で示す位置1−1,1−2,2−1,2−2,2−3,3−1,3−2の7つのエリアで検出された検出情報をそのまま保存する。
一方、相関部6は、1スキャンごとに相関処理を行うものであるが、位置1−1,1−2,2−1,2−2,2−3,3−1,3−2の7つのエリアにおいて検出された検出情報が同一の目標の検出情報であると判断し、位置2−2における検出情報を代表値として追尾部8に出力するとともに、これら7つのエリアにおいて検出された検出情報が同一の目標の検出情報であるという相関情報を識別部11に出力する。
識別部11は、相関部6により出力された相関情報に基づいて、検出情報記録部7に保存された検出情報の中から、同一の目標の検出情報(ここでは位置1−1,1−2,2−1,2−2,2−3,3−1,3−2の7つのエリアにおいて検出された検出情報)を選択する。検出情報記録部7は、識別部11により選択された同一の目標に関する検出情報をRCS推定部10に出力する。
RCS推定部10は、検出情報記録部7により出力された検出情報に基づいて、検出した目標のRCSを推定する。すなわち、RCS推定部10は、結果として、相関部6により相関づけられた同一目標の検出情報に基づいて、検出した当該同一目標のRCSを推定するものであり、相関部6において本来棄却されるはずの検出情報をRCS推定の統計処理に積極的に活用することができる。その後、RCS推定部10は、図3に示すような推定RCSの分布形状や代表値(例えば累積50%の値)等を識別部11に出力する。
最後に、識別部11は、レーダ信号処理部により検出された情報(ここでは推定RCS)と予め記憶された機体の種類ごとの特徴を示す機体識別情報とを比較することで、検出した目標が該当する機体の種類を推定する。なお、RCSは検出信号強度に対応した値となるため、識別部11は、RCSの代わりに検出信号強度に基づいて、検出した目標が該当する機体の種類を推定することもできる。この場合においては、RCS推定部10は、RCSの推定処理を行う必要が無く、検出した信号強度をそのまま識別部11に出力すればよい。
このようにして、本実施例のレーダ装置は、本来棄却されてしまう検出データを有効に活用し、図5の例で言えば1スキャンで7個の母数データが得られるため、迅速にデータの母数を確保して統計処理を行い、検出した目標の機体識別(機種の推定)を行うことができる。
データの母数を確保するための2つめの手法として、積極的にビームスケジューリングを組み直す方法が挙げられる。この方法を採用したレーダ装置は、通常、必要な捜索範囲を一定時間で捜索するが、RCSの推定を行う対象が決まった場合に積極的に捜索スケジュールに専用のビームを割り込ませる形で探知機会を増やす。
具体的には、ビーム制御部4は、レーダ信号処理部(検出部5)により目標が検出された場合に、検出した目標に対して所定の頻度で追尾を行うようにビームスケジュールを設定する。したがって、図1には図示されていないが、検出部5は、ビーム形成部3により出力されたビームデータに基づいてエリア毎の目標に関する検出情報を生成し、検出情報をビーム制御部4に出力する。ビーム制御部4は、検出部5により生成された検出情報に基づいて、目標検出の有無を判断し、現在設定されているビームスケジュールに割り込ませる形で、検出した目標を追尾するビームスケジュールを設定することができる。
この方法を採用したレーダ装置によれば、全捜索範囲をカバーする時間が通常時より延びるが、複雑な処理を行うことなく、比較的簡易な方法で、RCS推定の統計処理に必要な母数を早く確保することができる。なお、専用のビームを割り込ませる頻度は、次に挙げるような条件により決定する必要がある。例えば、RCS推定をどれだけ早く実施する必要があるか。捜索レートはどの程度まで下げて良いか。あるいは、RCS推定の統計処理に必要な推定の精度はどれぐらいか、等である。
射撃管制用の追尾レーダは、探知した目標から脅威であると判定した目標に対しては、上記方法(捜索スケジュールに専用の(追尾)ビームを割り込ませる方法)により高データレートで航跡情報を更新することが多いが、上述した本実施例の母数確保のための手法は、これと本質的に同じである。
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るレーダ装置によれば、探知した目標について識別処理を行い、当該目標の具体的な種類(機種名等)の推定を行うことができる。
すなわち、本実施例のレーダ装置は、レーダ信号処理部により検出された情報と予め記憶された機体の種類ごとの特徴を示す機体識別情報とを比較することで目標が該当する機体の種類を推定する識別部11を備えていることにより、位置や速度等の航跡情報のみならず、探知した目標の具体的な種類(機種)を推定することができる。特に、本実施例のレーダ装置は、一部の画像レーダのように目標形状を取得して目標の機種を識別するものではなく、速度、加速度、アスペクト角、高度、受信信号強度、及びRCSの少なくともいずれか1つの情報に基づいて機体識別を行うことができる点で画期的である。
また、本実施例のレーダ装置は、相関処理を行う際に従来は棄却されていた検出情報をRCS推定の統計処理に積極的に活用するRCS推定部10を備えているため、ひとつの目標のRCS推定の統計処理のために、独立した送受信に基づく受信データのそれぞれを母数データとすることができ、迅速にデータの母数を確保して統計処理を行い、検出した目標の機体識別(機種の推定)を行うことができる。
また、レーダ信号処理部(検出部5)により目標が検出された場合に、検出した目標に対して所定の頻度で追尾を行うようにビームスケジュールを設定するビーム制御部4を備えている場合には、本実施例のレーダ装置は、迅速にデータの母数を確保してRCS推定の統計処理を行い、検出した目標の機体識別(機種の推定)を行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 空中線
2 励振受信部
3 ビーム形成部
4 ビーム制御部
5 検出部
6 相関部
7 検出情報記録部
8 追尾部
9 表示部
10 RCS推定部
11 識別部
12 機体識別用データベース

Claims (3)

  1. 任意の方向にビームを形成して目標からの反射波を受信し、この受信結果から目標検出を行うレーダ装置であって、
    空中線部と、
    前記空中線部を介して送信信号を送信するとともに到来した前期反射波に基づいて受信信号を受信する送受信部と、
    前記送受信部により受信された受信信号に基づいて受信ビームを形成し、ビームデータとして出力するビーム形成部と、
    前記ビーム形成部により出力されたビームデータに基づいて信号処理することで前記目標に関する情報を検出するレーダ信号処理部と、
    前記レーザ信号処理部により検出された情報と予め記憶された機体の種類ごとの特徴を示す機体識別情報とを比較することで、前記目標が該当する機体の種類を推定する機体識別部と、
    を備え、
    前記レーダ信号処理部は、
    前記ビーム形成部により出力されたビームデータに基づいて、1スキャンの捜索範囲を複数のエリアに分割して前記複数のエリアの各々にビームを照射した場合におけるエリア毎の目標に関する検出情報を生成する検出部と、
    前記検出部により生成された検出情報に基づいて、前記複数のエリアの各々で検出された目標のうち同一目標による検出情報を相関づける相関部と、
    前記相関部により相関づけられた同一目標の検出情報に基づいて、検出した当該同一目標のRCSを推定するRCS推定部と、
    を有することを特徴とするレーダ装置。
  2. 前記レーダ信号処理部は、速度、加速度、アスペクト角、高度、受信信号強度、及びRCSのうち少なくとも1つを前記目標に関する情報として検出することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  3. 前記送受信部と前記ビーム形成部とを制御することで捜索範囲のビームスケジュールを設定するとともに、前記レーダ信号処理部により目標が検出された場合に、検出した前記目標に対して所定の頻度で追尾を行うように前記ビームスケジュールを設定するビーム制御部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレーダ装置。
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