JP2010236274A - 鋼矢板壁及びその構築方法、並びに鋼矢板壁を用いた合成床板構造及びその構築方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼矢板壁34では、テンションロッド36が鋼矢板10におけるポケット溝32内を通って継手部22を貫通すると共に、ポケット溝32内で張力Tsが生じた状態とされ、かつアンカナット40がテンションロッド36に生じた張力Tsを鋼矢板10の継手部22に伝達する。これにより、テンションロッド36から伝達される張力Tsにより鋼矢板10には、その長手方向に沿って内部応力が生じ、この内部応力は鋼矢板10を一方向へ撓ませる曲げモーメントとして作用する。
【選択図】図1
Description
また、本発明は、鋼矢板壁が複数の支持桁体の間に掛け渡される鋼製梁部材として用いられた鋼及びコンクリートの合成床板構造及び、その構築方法に関する。
また特許文献2には、間隔をおいた支持桁に渡って複数のハット形の鋼製梁が並列して配置されると共に、各鋼製梁におけるアーム部が載置され、かつ並列して配置されたハット形鋼製梁が支持桁の長手方向に連続するように配置され、隣り合う鋼製梁のウェブ間の凹部内にコンクリートを打設して固化して、並列して配置された鋼製梁が連続して一体化された鋼・コンクリート合成床版(合成床板構造)が記載されている。この合成床板構造では、鋼製梁として一方の継手部の爪先端部が部分的に切除されたハット型の鋼矢板が用いられており、互いに隣接する鋼矢板が継手部を介して連結されている。
また、鋼矢板に取り付けられたアンカー金具及びタイワイヤーが地盤中に埋設され、又は海等に水没する場合には、アンカー金具及びタイワイヤーに腐蝕対策を施す必要性が発生するが、このような腐蝕対策は、鋼矢板壁の構築コストを上昇させる要因になる。
また、本発明の目的は、上記事実を考慮して、構築コストの上昇を効果的に抑制しつつ、自重により鋼矢板壁に生じる撓み変形を効果的に抑制できる合成床板構造及び、その構築方法を提供することにある。
また請求項1に係る鋼矢板壁では、テンション部材が継手部の内側に形成されたポケット溝内に配置されることから、テンション部材を増設したことにより鋼矢板の地盤等に対する打設抵抗が増加することもなく、またテンション部材を鋼矢板に装填するためにはアンカ部材を追加するだけでよいので、鋼矢板壁の構築コストの増大を効果的に抑制できる。
また本発明の請求項3に係る鋼矢板壁の構築方法は、請求項1又は請求項2記載の鋼矢板壁を構築する際に用いられる鋼矢板壁の構築方法であって、前記テンション部材を、連結前の一方の鋼矢板におけるポケット溝内に通して継手部を貫通させると共に、一方の鋼矢板が連結される他方の鋼矢板における継手部を貫通させる貫通工程と、前記アンカ部材を前記テンション部材の基端部に装填すると共に、該テンション部材の基端部を、一方の継手部における基端部に連結固定する連結工程と、他方の継手部の基端部を一方の継手部の先端部に部分的に嵌合させた後、前記テンション部材の先端部に前記長手方向に沿った引張力を加え、該引張力により他方の鋼矢板を、その継手部が一方の鋼矢板の継手部と所定長に亘って嵌合する位置まで移動させる嵌合工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る合成床板構造及び、その構築方法によれば、構築コストの上昇を効果的に抑制しつつ、自重により鋼矢板壁に生じる撓み変形を効果的に抑制できる。
(鋼矢板壁の説明)
図1及び図2には、本発明の実施形態に係る鋼矢板壁が示され、図4には、図1に示される鋼矢板壁に用いられる鋼矢板が示されている。図1に示されるように、鋼矢板10は全体として一方向へ細長いプレート状に形成されている。鋼矢板10には、長手方向(矢印L方向)と直交する板幅方向(矢印S方向)の中心側にウェブ12が形成されると共に、このウェブ12の両端部に一対のフランジ部20が形成され、この一対のフランジ部20の端部からそれぞれ外側へ延出する一対のアーム部14が全長に亘って形成されている。なお、本実施形態に係る鋼矢板10は、その断面形状からハット形鋼矢板と一般的に呼称されている。
図3(B)に示されるように、一方の継手部22には、アーム部14の先端部から板厚方向に沿ってウェブ12とは反対側へ屈曲された屈曲部24及び、この屈曲部24の先端部から板幅方向外側へ延出する底板部26が一体的に形成されている。また継手部22には、底板部26の先端部から板厚方向に沿ってウェブ12とは反対側へ突出する爪部28が一体的に形成されている。爪部28は、板幅方向に沿って内側(アーム部14側)へ傾斜しており、その先端側の断面形状が略楔状になっている。爪部28の内側には略平面状の噛合面30が形成されている。
継手部22、23には、それぞれ底板部26、27の内側面に凹状のポケット溝32、33が全長に亘って形成されている。ポケット溝32、33は、その深さ方向が板厚方向と実質的に一致しており、その断面形状が略U字状乃至略矩形状とされている。
図5に示されるように、鋼矢板10を地盤52に打設する際には、クローラクレーン54のクレーン56に吊り下げられたバイブロハンマ58のクランプにより鋼矢板10の上端部を把持し、バイブロハンマ58により鋼矢板10に衝撃力を作用させる。これにより、衝撃力と共に作用するバイブロハンマ58の重量及び鋼矢板10の自重により鋼矢板10が地盤52に所定の打込み速度で打込まれる。
本実施形態に係る鋼矢板壁34では、テンションロッド36が鋼矢板10におけるポケット溝32内を通って継手部22を貫通すると共に、ポケット溝32内で張力Tsが生じた状態とされ、かつアンカナット40がテンションロッド36に生じた張力Tsを鋼矢板10の継手部22に伝達することにより、テンションロッド36から伝達される張力Tsにより鋼矢板10には、その長手方向に沿って内部応力が生じ、この内部応力は鋼矢板10を一方向へ撓ませる曲げモーメントとして作用する。
なお、張力Tsは、鋼矢板10を地盤52中に打設した後にも、アンカナット40により調整可能であることから、張力Tsが経時的に大きく変化するような場合は、必ずしも鋼矢板10の打設完了直後に、張力Tsを最大荷重Fmに対応させて設定する必要はなく、負荷荷重Fの変化に応じて張力Tsの大きさを調整するようにしても良い。
図6には、本発明の実施形態に係る合成床板構造が示されている。この合成床板構造60は、図1及び図2に示される鋼矢板壁34を支持桁62の間に掛け渡される鋼製梁64として用いている。なお、本実施形態に係る合成床板構造60では、鋼矢板壁34と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
鋼製梁64の構築方法を図11に基づいて説明する。先ず、略水平な作業面WF上に先行鋼矢板10Pを載置した後、作業面WF上における先行鋼矢板10Pに対して後方側に離間した位置に後続鋼矢板10Fを載置すると共に、この後続鋼矢板10Fにおける一方の継手部22を、先行鋼矢板10Pにおける他方の継手部23と略一致するように、板幅方向に沿って位置決めする。
なお、鋼矢板10の2倍を超える長さのテンションロッド36は、後続鋼矢板10Fを先行鋼矢板10Pに連結した後、所定の長さに切断されると共に、先端部に雄ねじ部38が形成され、この雄ねじ部38には、図10に示されるように、アンカナット40が捩じ込まれる。また、鋼矢板10の2倍を超える長さのテンションロッド36の代わりに、2本のテンションロッド36の雄ねじ部38間を捩じ込み式のジョイント部材により連結し、後続鋼矢板10Fを先行鋼矢板10Pに連結した後、ジョイント部材をテンションロッド36から離脱させるようにしても良い。
本実施形態に係る合成床板構造60の構築方法では、鋼製梁64上へのコンクリートの打設前あるいは打設完了後に、テンションロッド36における雄ねじ部38に捩じ込まれアンカナット40を所定の締結トルクが発生するまで増締めする。これにより、テンションロッド36には張力Tsが発生し、この張力Tsが一対のアンカナット40を介して継手部22、23の両端部にそれぞれ伝達される。この継手部22、23に伝達された張力Tsは、前述したように、鋼製梁64を構成した各鋼矢板10に対して曲げモーメントとして作用し、この曲げモーメントは、図7の2点鎖線BLにより示されるように、鋼矢板10に長手方向に沿った中央側が両端部に対して上側へ膨出するような撓み変形を生させる。このとき、テンションロッド36の張力Tsの大きさは、鋼製梁64の自重、コンクリート層66の重量及び鉄筋構造体74の重量の総和に対応するように設定される。なお、コンクリート打設完了後にアンカナット40を増締めする場合はコンクリートの硬化前、硬化後のいずれでもよい。
本実施形態に係る合成床板構造60では、一対の支持桁62の間に掛け渡される鋼製梁64が鋼矢板壁34により構成されることにより、鋼製梁64上へのコンクリートの打設前あるいは打設後に、テンションロッド36に張力Tsを生じさせれば、テンションロッド36により鋼製梁64を構成した各鋼矢板10に対し、鋼製梁64、コンクリート層66及び鉄筋構造体74の重量(自重)に対抗するポストテンションを作用させることができるので、自重により合成床板構造60に生じる撓み変形を効果的に抑制できる。さらに、コンクリートの打設、硬化後にテンションロッド36に張力Tsを生じさせれば、コンクリートに圧縮応力が発生し、コンクリートのひび割れの発生を抑制することができる。
図12(A)に示されるように、鋼矢板10をそれぞれ支持点76、77間に載置して、鋼矢板10により構成される単純梁を想定した。図12(B)には、鋼矢板10の長手方向に沿った撓み量(変位量)の分布を演算した結果が示され、また図12(C)には、長手方向に沿って鋼矢板10に作用する曲げモーメントの分布を演算した結果が示されている。
図12(B)では、破線L1が張力Tsを作用させない場合の鋼矢板10の変位量を示し、実線L2が張力Tsを作用させた場合の鋼矢板10の変位量を示している。また図12(C)では、破線L3が張力Tsを作用させない場合の鋼矢板10の曲げモーメントを示し、実線L2が張力Tsを作用させた場合の鋼矢板10の曲げモーメントを示している。
10F 後続鋼矢板
10P 先行鋼矢板
12 ウェブ
14 アーム部
20 フランジ部
22、23 継手部
24、24 屈曲部
26、27 底板部
28、29 爪部
30、31 噛合面
32、33 ポケット溝
34 鋼矢板壁
36 テンションロッド
38 雄ねじ部
40 アンカナット
52 地盤
54 クローラクレーン
56 クレーン
58 バイブロハンマ
60 合成床板構造
62 支持桁
64 鋼製梁
66 コンクリート層
68 センタホールジャッキ
70 スタッドジベル
72 スロープブロック
74 鉄筋構造体
76、77 支持点
F 負荷荷重
Ts 張力
WF 作業面
Claims (5)
- 一方向に沿って細長いプレート状のウェブ、該ウェブの両端部に設けられた一対のフランジ部、該一対のフランジ部の端部からそれぞれ外側へ延出する一対のアーム部、該一対のアーム部の先端部にそれぞれ形成された一対の継手部及び、該継手部の内側に、前記ウェブの長手方向に沿って延在するように形成されたポケット溝を具備する鋼矢板を、前記ウェブの長手直角方向に沿って複数枚配列すると共に、互いに隣接する一対の鋼矢板における継手部同士を嵌合することにより構築された鋼矢板壁であって、
前記鋼矢板における少なくとも一方の前記ポケット溝に配置され、該ポケット溝内を通って前記継手部を前記長手方向に沿って貫通すると共に、前記ポケット溝内で前記長手方向に沿った張力が生じた状態とされる棒状のテンション部材と、
前記テンション部材の両端部に装填されると共に、前記テンション部材の両端部を、該テンション部材の張力が伝達されるように前記継手部の長手方向の両端部にそれぞれ連結するアンカ部材と、
を備えたことを特徴とする鋼矢板壁。 - 前記鋼矢板が負荷荷重を受ける場合に、
前記テンション部材は、前記長手方向に沿った張力により、前記負荷荷重を受けた前記鋼矢板に生じる内部応力とは反対方向の内部応力を前記鋼矢板に発生させることを特徴とする請求項1記載の鋼矢板壁。 - 請求項1又は請求項2記載の鋼矢板壁を構築する際に用いられる鋼矢板壁の構築方法であって、
前記テンション部材を、連結前の一方の鋼矢板におけるポケット溝内に通して継手部を貫通させると共に、一方の鋼矢板が連結される他方の鋼矢板における継手部を貫通させる貫通工程と、
前記アンカ部材を前記テンション部材の基端部に装填すると共に、該テンション部材の基端部を、一方の継手部における基端部に連結固定する連結工程と、
他方の継手部の基端部を一方の継手部の先端部に部分的に嵌合させた後、前記テンション部材の先端部に前記長手方向に沿った引張力を加え、該引張力により他方の鋼矢板を、その継手部が一方の鋼矢板の継手部と所定長に亘って嵌合する位置まで移動させる嵌合工程と、
を有することを特徴とする鋼矢板壁の構築方法。 - 請求項1又は請求項2記載の鋼矢板壁により構成され、複数の支持桁体の間に掛け渡される鋼製梁部材と、
前記鋼製梁部材上に打設されたコンクリート材料からなるコンクリート層と、
前記コンクリート層の内部に埋設される補強鉄筋体と、
前記鋼製梁部材の上面側に所定の間隔を空けてそれぞれ固着されると共に、前記補強鉄筋体に連結される複数の連結部材と、
を有することを特徴とする鋼矢板壁を用いた合成床板構造。 - 請求項4記載の合成床板構造の構築方法であって、
前記鋼製梁部材上へのコンクリートの打設前あるいは打設完了後に、前記テンション部材に前記長手方向に沿った張力を生じさせ、該テンション部材により前記鋼製梁部材に対してポストテンションを作用させることを特徴とする合成床板構造の構築方法。
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