以下、本発明に係る書籍用紙について、基紙が表層及び裏層の2層の紙層から成る場合を例に詳細に説明する。なお、本発明に係る書籍用紙は、以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内において、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
本発明に係る書籍用紙(以下、「本書籍用紙」と言う。)は、基紙の表及び/又は裏に水溶性樹脂が塗布されており、この基紙中には、JIS P8120(1998)に準拠して測定した機械パルプの配合率が30〜80質量%であり、また填料が内添されている。
本書籍用紙の基紙の各層を形成する原料パルプとしては、機械パルプと広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを配合したものを主原料とし、全パルプ中に機械パルプを30〜80質量%、LBKPを20〜70質量%配合する。機械パルプは嵩高であるが、白色度が低い。このため、機械パルプの配合量が30質量%未満であると、本書籍用紙の所望とする嵩を得ることが難しい。一方、機械パルプの配合量が80質量%を超えると、本書籍用紙を嵩高なものとすることができるが、本願の所望とする白色度を得ることが難しくなる。
機械パルプは特に制限されることなく、種々のものを用いることができる。しかしながら、広葉樹よりも針葉樹の方が嵩が出るため、より好適である。機械パルプの製造方法についても特に制限はなく、砕木パルプ(GP)、リファイナーパルプ砕木パルプ(RGP)等の機械的に砕木されるパルプ化法、あるいは、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の機械パルプ化法のどちらでも良い。また、機械パルプの漂白方法についても特に制限されるものではなく、従来より公知の種々の手段を用いることができる。
本書籍用紙の基紙を形成する原料パルプは、機械パルプが30〜80重量%配合されていれば、その他のパルプは特に限定されるものではなく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹、広葉樹亜硫酸パルプ等の木材繊維を主原料として化学的に処理されたパルプ等の公知の種々のものを用いることができる。また、新聞古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、OA古紙等を原料古紙とする古紙パルプを用いることもできる。さらにまた、木材以外の繊維原料であるケナフ、麻、葦等の非木材繊維も用いることができるが、非木材パルプはパルプ強度が弱く、パルプ自体の単価が高いため、コストも高くなることからクラフトパルプ、古紙パルプを用いることが好ましい。
これらの原料パルプの中でも、特に、本書籍用紙の所望とする嵩を維持しながら白色度を維持するために、機械パルプを30〜80質量%配合し、さらにLBKPまたは古紙パルプを20〜70質量%配合することが最適である。
本書籍用紙の原料パルプ中には、填料として、少なくとも、特定の再生粒子と、カチオン性凝結剤と、アニオン性凝集剤とが内添されている。本書籍用紙に内添される再生粒子はアニオン・カチオンの両性を持つため、それぞれのイオン性に有効に働くカチオン性凝結剤及びアニオン性凝集剤を内添する。これにより、本書籍用紙を白色度が高い嵩高なものとすることができる。特に、カチオン性凝結剤及びアニオン性凝集剤を内添することにより、黒色欠陥がなくなり、白色度を効果的に高くすることができる。なお、上記特定の再生粒子以外の填料(例えば炭酸カルシウム)を単独で使用した場合は、特定の再生粒子を使用した場合より不透明度が低下し、裏抜けが発生しやすくなる。理由は定かではないが、カチオン性凝結剤とアニオン性凝集剤とを併用した場合、アニオンまたはカチオンのどちらか1つの電荷しか持たない填料は分散状態が悪く、紙中に填料が均一に分布しないことが原因と考えられる。
本書籍用紙に内添されるカチオン性凝結剤としては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、メタクリル酸、ポリアミン、ポリダドマック及びポリアクリルアミドなどを使用することができるが、特に凝集物の発生が少ないポリアクリルアミドが好ましい。このカチオン性凝結剤は、特にスクリーンの前に添加するのが望ましい。スクリーンのシェアによりカチオン性凝結剤が分断され、その後添加するアニオン性凝集剤(後述する)によって再度凝集が起こると考えられるからである。
また、本書籍用紙に内添されるアニオン性凝集剤としては、コロイダルシリカ、ポリアクリルアミド、ベントナイトなどを使用することができる。この中でも、特にコロイダルシリカが好ましい。
また、アニオン性凝集剤は、アニオン量が0.5〜6.0meq/gであることが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0meq/gである。アニオン量が0.5meq/g未満であると、本書籍用紙に内添され、後述する再生粒子の歩溜りが悪化する。一方、アニオン量が6.0meq/gを超えると凝集物の発生量が多くなり、黒色欠陥を減らすことが難しくなり、書籍用紙の白色度を高くすることが難しくなる。なお、アニオン量はmutek社製のカチオンデマンド測定装置(型番PCD03)などで測定することができる。この測定装置は、サンプルを試験機のセルの中に入れ、上下ピストンの稼動にてセルシリンダーとピストンとの間にサンプル液の流れを生じさせ、コロイド粒子の表面電荷のひずみによって電気を生じさせるように構成されており、チャージ要求量を高分子電解質測定によって測定するようにしたものである。
なお、本書籍用紙に内添される再生粒子については後述する。
また、本書籍用紙をより嵩高なものとするため、従来公知の嵩高剤を内添することもできる。この嵩高剤の種類や配合量は特に制限されないが、配合量を増やすと表面強度が低下し、印刷時に紙剥けが発生することがあるため、必要最低限の量に留めることが望ましい。
また、填料をパルプに定着させるために従来公知の硫酸バンドを配合することができ、白色度や見ための白さを向上させるため、従来公知の蛍光染料や着色染料、着色顔料についても任意に選ぶことができる。
さらにまた、紙料スラリーに添加する添加剤としては公知のものを用いることができ、例えば紙力増強剤としては澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体等が、サイズ剤としてはロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水こはく酸)、中性ロジン等が、また歩留り向上剤としてポリアクリルアミド及び共重合体等が挙げられる。更に必要に応じて染料、顔料等の色料を添加してもよい。
また、本書籍用紙の基紙の、少なくとも表層の表面に、水溶性樹脂を塗布して塗工層を設けても良い。これにより、印刷時の紙剥けを防止することができる。
また、本書籍用紙の基紙に塗布することができる水溶性樹脂としては、例えば澱粉類、ポリアクリルアミド及び共重合体、ポリビニルアルコール等を用いることができる。
以上のようにして形成された、本書籍用紙の基紙は、JIS P8251(2003)に準拠して測定した灰分率(以下、単に「灰分率」という)が5〜20質量%である。灰分率が5質量%未満であると、本書籍用紙の白色度が低くなる傾向となる。一方、灰分率が20質量%を超えると、本書籍用紙の密度が高くなり、本発明の目的である嵩高な書籍用紙を得ることが難しくなる。
また、本書籍用紙は、密度が0.4〜0.6g/cm3である。これにより、本発明の目的を効果的に達成することができる。ない、密度が0.4g/cm3未満であると、紙層内部が粗になり、内部強度が低下するおそれがあるので、本書籍用紙を断裁加工する際に紙粉などのトラブルが発生しやすくなる。一方、密度が0.6g/cm3を超えると、本発明の目的とする嵩高な書籍用紙を提供することが難しくなる。
さらに、本書籍用紙は、JIS P8148(2001)に準拠した白色度(以下、「製品白色度」と言う。)が60〜75%、好ましくは65〜75%である。製品白色度が60%未満であると、本書籍用紙の見た目が黒または黄色く見えるため、印刷仕上がりに不具合を生じやすい。一方、製品白色度が75%を超えると、印刷仕上がりは鮮明になるが、裏抜けが目立つ傾向になる。
次に、本書籍用紙の基紙に内添することができる填料である再生粒子について説明する。本発明に使用される再生粒子の製造方法とは、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕の各工程を経て、再生粒子を得るものであって、前記乾燥と燃焼工程が、前記脱水後の原料の乾燥と燃焼を一連で行う先の第1燃焼炉(内熱キルン炉)と、第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する後の第2燃焼炉とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、その後に粉砕し、再生粒子を得るものである。
さらに詳述すれば、燃焼工程は、第1燃焼炉(内熱キルン炉)内の酸素濃度が0.2〜20%となるように、第1燃焼炉に300〜500℃の温度で燃焼処理を行い、さらに第2燃焼炉は、第1燃焼炉からの燃焼物を550〜780℃の温度で燃焼処理を行うものである。
しかしながら、本発明において使用しようとする再生粒子の主原料となる、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスは、無機微粒子を含有すると共に、古紙パルプとして利用が困難な微細繊維や、塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含む。このため、燃焼工程の燃焼処理において、脱墨フロスそのものが燃焼反応(酸化)を生じて燃焼するため、熱風による加熱処理以上の発熱が生じ、原料の過剰燃焼を引き起こす問題が発生することを知見した。
このような過剰な燃焼は、(1)高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招く、(2)原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質を生じやすくなって抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇する、(3)原料の溶融による凝集体を形成するため、後の微粉砕工程において粉砕エネルギーの増加、処理効率が低下する、(4)原料の表面が高温に晒され、原料内部よりも先に溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留し、結果として白色度の低下を招く等の問題が発生する。
そこで、このような問題を解決する手段として、過剰な燃焼をコントロールする方策に着目し、鋭意検討を行った結果、燃焼工程を第1燃焼炉及び第2燃焼炉の少なくとも2段階で構成し、第1燃焼炉の燃焼温度(炉内温度)を、主原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるに必要なだけの温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させることで、前記問題を解決できることを見出し、本書籍用紙に内添される再生粒子を完成するに到ったものである。
また、第1燃焼炉内において、主原料である脱墨フロスを燃焼させるために必要な酸素濃度0.2〜20%を確保する。これにより、燃焼が促進される炉内環境となるため、脱墨フロスの過剰燃焼が発生しやすくなる。
さらに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、熱風供給に加え、主原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策が有効であることを見出している。より具体的には、主原料となる脱墨フロスは、脱水後の水分が40〜90%、好ましくは40〜70%、より好ましくは45〜70%の高含水状態で、第1燃焼工程の第1燃焼炉内に供給されることが、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するために適していることを知見した。すなわち、主原料である脱墨フロスを第1燃焼工程の第1燃焼炉内に高含水状態で供給することで、第1燃焼炉内において水分が蒸発し、これにより第1燃焼炉内の温度が低下する。この結果、脱墨フロスの自燃を抑え、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)のみの燃焼を促進することができ、過剰な燃焼を抑制することができるものと考えられる。
さらにまた、第1燃焼工程の後の燃焼工程である第2燃焼工程の第2燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することが好ましく、これにより、原料を均一に燃焼することができ、再生粒子の品質の均一化を図ることができる。
すなわち、上述したように、第1燃焼工程の第1燃焼炉では、300〜500℃という低い燃焼温度で、主原料である脱墨フロスの燃焼処理を行い、原料中から、原料に含有される有機物を燃焼ガス化し、この燃焼ガスを燃焼(酸化)させて、均質な第1燃焼炉の燃焼物を得たのち、白色度を低下させる原因となる、残留する炭素分をできる限り燃焼させる必要がある。このため、原料を緩慢に燃焼させる必要があり、可能な限り均一な燃焼を連続的に実施するには、第2燃焼工程の第2燃焼炉内での原料搬送速度を適宜コントロールする方策が最も好適と考えられ、その手段として、リフターを用い、原料の搬送速度を調整することができることも見出した。しかしながら、公知のリフターは、一般的に鉄素材で製造されているため、鉄分がコンタミとして原料中に含有されてしまい、この結果、鉄の酸化により白色度が低下し、再生粒子の品質が低下するという問題を招く。そこで、ステンレス製のリフターを第2燃焼炉に設けることで、鉄の酸化問題を生じることなく、白色度の低下がないなど、均一な焼成品質を有する高品質の再生粒子を製造できる技術を見出した。
なお、第2燃焼炉の構造としては、外熱キルン炉または内熱キルン炉のどちらも適宜採用することができる。しかしながら、外熱キルン炉はバーナーの直火が原料に直接晒されないため、原料の過剰燃焼を防止でき、第2燃焼炉の燃焼物を均一な焼成品質とすることができ、また高い白色度が得られるという利点がある。一方、内熱キルン炉は、内部に貼り付けた耐火物が断熱性を持つと同時に遠赤外線を放出し、少ない熱量で加温できる利点がある。従って、第2燃焼炉の構造については、これら諸条件を鑑みて外熱キルン炉あるいは内熱キルン炉のいずれかを適宜選択できるが、いずれの方式についてもリフターを設けることが最適である。
より好適には、先の第1燃焼炉として内熱のものを用い、後の第2燃焼炉として外熱のものを用いることである。なお、これらの燃焼炉としては、従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉等の種々のものを用いることができる。しかしながら、これらの燃焼炉としては、それぞれの燃焼炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
すなわち、ストーカー炉(固定床)については、脱墨フロスの燃焼度合い調整が困難であり、燃焼物が不均一である上に、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では火格子間のクリアランスから落塵を生じるため適さない。火格子を通し燃焼物の下に空気を吹上げ燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られるため、歩留の低下が問題となる。
流動床炉については、炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生粒子へ混入し品質の低下を招く問題を有するとともに、珪砂は本発明で使用する再生粒子より硬度が高く、均一に粉砕することが難しくなる。硅砂を流動層に混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物を分離し、硅砂は燃焼炉へ戻し燃焼物のみを取り出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため分離することが難しい。また、硅砂の上に再生粒子を浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼の度合い調整が困難であり、得られた燃焼物の品質にばらつきが発生してしまう。さらに、燃焼物が、燃焼炉のストーカ(階段状)を、所定幅で通過しながら燃焼されるため、灰の攪拌が不十分となり、幅方向で燃焼にバラツキが発生する。また、珪砂は硬度が高いため、摩擦、衝突により燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下するという問題も発生する。
サイクロン炉については、燃焼物が炉内を一瞬で通過してしまうため、燃焼物中の固定炭素を十分に燃焼できず、再生粒子の白色度の低下に繋がる。さらに、風送により、細かい粒子はサイクロンで分離されず排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留が低下する。
従って、以上の各炉の諸問題を考慮した結果、本発明に用いられる再生粒子の製造に用いられる燃焼炉としては、キルン炉、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の種々の燃焼炉を用いることができるが、特にキルン炉を用いることが好適である。さらに、外熱の第2燃焼炉として、重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等の公知の燃焼方法を採用することもできる。
さらに好適には、原料が脱水工程を経た後の、乾燥工程と燃焼工程とが一連の工程で行われる方法を用いる。この方法は、第1燃焼工程の第1燃焼炉として、燃焼時間(滞留時間)が30〜90分、好ましくは40〜80分、より好ましくは50〜70分で、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱(直接加熱)キルン炉を用いて、脱水工程を経た後の原料の乾燥及び第1燃焼を行い、また、第2燃焼工程の第2燃焼炉として、燃焼時間(滞留時間)が60分以上、好ましくは60〜240分、より好ましくは90〜150分、特に好ましくは120〜150分で、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉を用い、第1燃焼路で得られた燃焼物を再度燃焼する方法である。
このように、第1燃焼炉として、乾燥及び燃焼を一つの炉で行うことができる内熱キルン炉を用いると、第1燃焼炉の供給口から排出口に至るまで、緩やかに、かつ安定的に乾燥及び燃焼が進行し、燃焼物の微粉化を抑制することができる。また、第2燃焼炉として、乾燥及び燃焼を一つの炉で行うことができる外熱キルン炉を用いると、第2燃焼炉の端部から燃焼物を所定の滞留時間をもって、他端部の排出口から排出でき、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキを生じさせないものとなる。さらに、キルン炉の内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるため、燃焼物の微粉化をより抑制することができる。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなる。すなわち、上記のとおり、乾燥工程及び燃焼工程を、少なくとも2つの燃焼炉を用いて、好適には内熱キルン炉及び外熱キルン炉を用いて、2段階で行うことで、均一で、白色度の高い再生粒を得ることができる。
なお、外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成となるため、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるためには多量の熱源が必要になる。従って、第1燃焼炉として外熱キルン炉を用いると、脱水工程を経た後の原料は、上述したように高含水状態であるため、乾燥・燃焼効率が低くなる。この結果、再生粒子の生産性が悪くなるとともに、温度の制御が難しくなるため、多大なエネルギーコストを必要とし、費用に対する効果が極めて低くなる。
また、第2燃焼炉として内熱キルン炉を用いると、第1燃焼炉で得られた燃焼物の残カーボンを燃焼することにおいて、多量の希釈空気を投入しないと、燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが難しく、炉内温度の調整が難しくなる、燃焼物の過剰燃焼や、燃焼物の燃焼ムラが生じやすく、均一な焼成物を得にくく、再生粒子の白色度が低下するという問題が発生する。さらに、通常、内熱キルン炉の加熱に重油バーナーが用いられるが、重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等の白色度の低い粒子が発生し、得られる再生粒子の白色度の低下や、バラツキが生じ、均一な品質とすることが難しくなる。
さらに、好適な第1燃焼炉および第2燃焼炉として用いられる内熱キルン炉または外熱キルン炉は、内部耐火物を、円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らせることなく持ち上げて攪拌することができる。しかしながら、現実には、キルン炉は円筒形であるため、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼を行い、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、300〜500℃という低温でじっくり原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
次に、本書籍用紙に用いる再生粒子の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
〔概要〕
図1は、本書籍用紙の基紙に内添される再生粒子の、一実施形態に係る製造設備フロー図である。なお、以下に説明するように、この再生粒子の製造工程は、脱水工程、乾燥・燃焼工程、及び粉砕工程を有するが、この他、脱墨フロスの凝集工程又は造粒工程、さらには各工程間に分級工程等を設けてもよい。なお、本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
図示しない古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により、水分率が40〜90%、好ましくは45〜70%、より好ましくは50〜60%の高含水状態となるように脱水される。さらに、かかる脱水後の原料10は、図示しない粉砕機(または解砕機)により40mm以下の粒子径となるように粉砕しておくことが望ましい。
かかる原料10は、貯槽12から切り出されて、装入機15により、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である第1燃焼炉14の一方側から、第1燃焼炉14に装入される。また、第1燃焼炉14の一方側には排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。熱風が、排出チャンバー18を通り抜けて、第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料10の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2〜20%となるようにするのが望ましい。炉内温度は300〜500℃、好ましくは400〜500℃、より好ましくは400〜450℃である。熱風はバーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40mm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で、長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適である。従って、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の燃焼炉であることが望ましい。
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて酸素濃度が5〜20%、好ましくは10〜20%、より好ましくは10〜15%となるように燃焼する。温度としては550〜780℃、好ましくは600〜750℃である。また、第2燃焼炉32内での滞留時間は60分以上、好ましくは60〜240分、より好ましくは90〜150分、特に好ましくは120〜150分が、残カーボンを完全に燃焼させるに望ましい。
燃焼が終了した原料である燃焼物は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
以上、再生粒子の製造工程の概要を説明したが、その詳細及び応用例を以下に説明する。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、再生粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
本明細書でいう脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
〔脱水工程〕
脱墨フロスの更なる脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本形態における一例では、脱墨フロスは、例えばスクリーン等の脱水手段によって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分を90〜97%に脱水した脱墨フロスは、例えばスクリュープレスに送られ、さらに所定の水分に脱水することが好適である。
脱水後の原料10の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉14における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料10の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めにくくなる。さらに、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる問題を有する。また、脱水後の原料10の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。
以上の説明で明らかにしたように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度を下げる問題を引き起こす。
脱墨フロスの脱水工程は、本書籍用紙に使用する再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行ったものを搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給する。
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する操作において、粉砕機(または解砕機)により平均粒子径を40mm以下、好ましくは3〜30mm、より好ましくは5〜20mmの範囲になるように調整される。さらには、平均粒子径が50mm以下の割合が70重量%以上になるように粉砕しておくことがより好ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化をきたさない燃焼処理を図るため、原料の平均粒子径が均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、一方で40mmを超えると、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難になるという問題を有するためである。
前記平均粒子径と粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した。各燃焼工程における粒子径は、JIS Z 8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定した。
〔第1燃焼工程〕(乾燥、燃焼工程)
かかる原料10が貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉に供給される。第1燃焼炉は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、内熱キルン炉14の一方側から装入機15により装入される。内熱キルン炉加熱手段は、熱風発生炉にて生成された熱風を内熱キルン炉14の排出口側から、脱水物の流れと向流するように送り込まれる。内熱キルン炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が内熱キルン炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、内熱キルン炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
すなわち、本乾燥・燃焼工程は、脱水物を、本体が横置きで中心軸周りに回転する、内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼が行え、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。また、乾燥を別工程に分割し吹き上げ式の乾燥機を入れることもできる。
ここで、内熱キルン炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2〜20%、好ましくは1〜17%、より好ましくは7〜15%となるようにする。
酸素濃度は、原料の燃焼(酸化)により消費されるため、燃焼の状況により酸素濃度に変動を生じる。酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難である。燃焼炉内の酸素は、原料の燃焼等によって消費され酸素濃度が低下するが、燃焼させるための熱風発生装置等により、空気などの酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、燃焼炉内の温度を細かく調節可能になり、原料をムラなく万遍に燃焼することができる。
第1燃焼炉の炉内温度としては、300〜500℃、好ましくは400〜500℃、より好ましくは400〜450℃である。第1燃焼炉においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼しがたい残カーボンの生成を抑える目的から燃焼温度300〜500℃の温度範囲で燃焼することが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。さらに、炉内温度が500℃を超えると、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と内部の未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料に配合され再利用される。
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、内熱キルン炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。
第1燃焼炉は、脱墨フロス中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、好適には前記条件で30〜90分の滞留時間で燃焼させることが好ましい。有機物の燃焼と生産効率の面から40〜80分がより好ましく、さらには恒常的な品質を確保する面から50〜70分の範囲が特に好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。燃焼時間が90分を超えると、原料の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生粒子が極めて硬くなる。
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率が2〜20質量%、好ましくは5〜17質量%、より好ましくは7〜12質量%となるように乾燥・燃焼する。
未燃率を2〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を短時間に効率よく行うことができるとともに、外熱炉における安定した加熱により、硬度が低く白色度が75〜85%の燃焼物を得ることができる。白色度が75〜85%の再生粒子を用いることにより、上述しちゃおうに、本書籍用紙の製品白色度を60〜75%とすることがより容易になる。なお、未燃物が2質量%未満では、先の第1燃焼炉におけるエネルギーコストが高いものとなるとともに、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉出口における白色度の低下等の品質低下を来たす場合がある。
〔第2燃焼工程〕
内熱キルン炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する第2燃焼炉にあたる外熱キルン炉32に装入される。
この燃焼炉では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉内壁に設けたリフターにより、原料の燃焼炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
第2燃焼炉における燃焼においては、第1燃焼炉で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉において供給される原料の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径が10mm以下、好ましくは1〜8mm、より好ましくは1〜5mmとなるように調整する。
第2燃焼炉入り口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、平均粒子径が10mmを超える粒子径では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下する問題を引き起こす。第2燃焼炉での安定生産を確保するためには、平均粒子径が1〜8mmの燃焼物が70%以上に成るように粒子径を調整することが好ましい。従って、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化可能性に、有益である。さらに、本形態のように、分級を乾燥後とすると、小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
外熱キルン炉32での外熱源としては、外熱キルン炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適であり、したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉32であることが望ましい。
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かくかつ内部の温度を均一にコントロール可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。
さらに電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができ、低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
外熱キルン炉32においては、酸素濃度が5〜20%、好ましくは10〜20%、より好ましくは10〜15%となるようにする。酸素濃度は、第2焼成炉に適宜の手段により酸素または空気投入量のコントロールによって行うことができる(具体的な形態の図示は省略してある)。外熱キルン炉内の酸素濃度が、5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない問題を生じる。一方、酸素濃度が20%を超えると、炭酸カルシウムの酸化が進み、酸化カルシウムに変化する傾向になる。このため、水に溶出しやすくなり、抄紙系内にスケール汚れが発生するおそれがある。
第2燃焼炉の燃焼温度としては550〜780℃、好ましくは600〜750℃である。第2燃焼炉は先に述べたように、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉14よりも高温で燃焼させることが好ましい。従って、第2燃焼炉の燃焼温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、一方で、燃焼温度が780℃を超える場合は、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなるという問題が生じる。
また、滞留時間は60分〜240分、好ましくは90分〜150分、より好ましくは120分〜150分である。すなわち、燃焼物の安定生産を行うという観点から滞留時間を60分以上とし、一方で過燃焼の防止、生産の確保という観点から滞留時間を240分以下とすることが好適である。なお、特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があるが、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、一方、240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する問題が生じる。
この外熱キルン炉32から排出される燃焼物の粒子径としては10mm以下、好ましくは平均粒子径が1〜8mm、より好ましくは1〜5mmに調整する。
燃焼が終了した再生粒子は好適には凝集体(再生粒子凝集体)であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、脱墨フロスを原料10として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものの燃焼品であってもよい。
〔粉砕工程〕
本実施形態に基づく再生粒子の製造方法においては、必要に応じ、さらに公知の分散・粉砕工程を設け、適宜必要な粒子径に微細粒化することで塗工用の顔料、内添用の填料として使用できる。
一例では、燃焼後に得られた粒子は、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいは、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。填料、顔料用途等への最適な粒子径については、本実施形態の再生粒子は、平均粒子径2〜5μmであるのが好ましい。
これは、従来の炭酸カルシウムよりも平均粒子径が大きいため、嵩高効果が向上するためと考えられる。タルクやクレーは再生粒子より平均粒子径が大きく、嵩高効果が期待できるが、酸性抄紙となるために黄変化しやすくなり、実用的ではない。
粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社製)により体積平均粒子径を測定した。
〔付帯工程〕
本製造設備において、より品質の安定化を求めるためには、再生粒子の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
本製造方法の原料10としては、再生粒子の原料と成り得るもの以外は予め除去しておくことが好ましい。すなわち、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で、砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化することにより微粒子の白色度を低下させる起因物質となる。従って、鉄分の混入を避けるために、鉄分を選択的に取り除くことが推奨される。このため、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
さらに、本実施形態に基づく再生粒子の製造方法による再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35、好ましくは40〜82:9〜30:9〜30、より好ましくは60〜82:9〜20:9〜20の質量割合となるように含有させる。
カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収を抑えることができるため、脱水工程における脱水性が良好であり、また乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬化を生じるおそれを低減できる。
本実施形態の割合に調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
例えば、脱墨フロスを主原料に、再生粒子中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用い、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
また、上述したような製造方法で得られる再生粒子は、示差熱熱重量同時測定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように、本実施形態に基づいて脱墨フロスを燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができるので好ましい。
〔第2燃焼炉(外熱キルン炉)のリフターについて〕
先に採用理由と共に述べたように、第2燃焼炉(外熱キルン炉)32内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料10の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
この第2燃焼炉(外熱キルン炉)32には、図2(a)にその内部構造を、図2(b)にその内面の展開図で示すような公知の回転式燃焼装置が好適に用いられる。
すなわち、この第2燃焼炉(外熱キルン炉)32は、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成されるとともに、一端部に投入部32aが、他端部に排出部(図示せず)が設けられ、他端には筒状本体32b内に燃焼ガスを導入する燃焼バーナー20A(図示せず)が配設されている。筒状本体32bの投入部32a側における耐火壁32cの内面には、筒状本体32bの軸心に対して45°〜70°の傾斜角で傾斜した複数条(図示例では8条)の螺旋状リフター32dがブラケット32eを介して等間隔に突設されており、この他端側には、筒状本体32bの軸心に対して平行な適当な長さの平行リフター32fが周方向に等間隔置きに複数(図示例では8つ)、軸心方向に複数列(図示例では8列)ブラケット32gを介して突設されている。
なお、耐火壁32cは、耐火キャスタブルあるいは耐火レンガで構成することが好ましく、また、螺旋状リフター32dと平行リフター32fを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすることにより、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。特に、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとは、上記のとおり、被燃焼物の投入部32a側から排出側に向けてこの順で配設するのが望ましい。
上記のとおり構成されたこの第2燃焼炉(外熱キルン炉)32によれば、投入部32a側から投入された内容物が、まず螺旋状リフター32dにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料10に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフター32fにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフター32dにて平行リフター32fに送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター32f部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷のおそれがないことから、焼成物の純度の低下がなく、その生産能力も向上させることができる。なお、上記の実施形態では、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとを並設したが、必要に応じ、いずれか一方のみを設けることでもよい。
以上のようにして得られた再生粒子は白色度が75〜85%、好ましくは80〜85%と高く、また白色度の変動が少ない。また、以上に記載の製造方法によって得られた再生粒子を本塗工板紙の基紙に用いると、従来公知の再生粒子および市販填料である炭酸カルシウムを用いた場合と比較して、白色度が高く、嵩高であり、印刷時の紙剥けがない本塗工板紙を得ることができる。
なお、上述した製造方法によって得られた再生粒子は、平均粒子径が従来既知の炭酸カルシウムの平均粒子径(1〜2μm)より大きく、再生粒子が繊維間に定着することで嵩高効果が向上し、また、再生粒子のアルミニウムがカチオン性であるために繊維への定着性が強く、炭酸カルシウムよりも配合量を低減できるため、灰分率を下げることができ、嵩高効果及び表面強度が向上し、その結果、印刷時の紙剥けを低減できるものと考えられている。
本書籍用紙は、この再生粒子から持ち込まれる無機物を合わせた全無機物の内、酸化アルミニウムの含有率が10〜35質量%、好ましくは15〜25質量%とすることが望ましい。酸化アルミニウムの含有量が10%未満の場合、定着性の向上効果が少なくなる。一方で酸化アルミニウムの含有率が35%を超えると、カチオン性が強くなりすぎて抄紙薬品と反応し、凝集物が発生したり、ピッチなどの黒色異物が発生することがある。
なお、本実施形態では、上記の如き再生粒子を単独で使用することもできるし、かかる再生粒子と内添用填料として通常使用される重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれる1種又は2種以上の填料を併用することもできる。
本発明に係る書籍用紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の質量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例にすぎないので、本発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、適宜選択可能であることはいうまでもない。
本発明に係る16種類の書籍用紙(これを「実施例1」ないし「実施例16」とする。)と、これらの実施例1ないし実施例16と比較検討するために、12種類の書籍用紙(これを「比較例1」ないし「比較例12」とする。)を、表1に示すような構成で作製した。
[実施例1]
機械パルプを30質量%と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を70質量%とを配合した原料パルプに、填料として、低温再生粒子を原料パルプの重量に対して、書籍用紙の灰分率が12%になるように添加し、カチオン性凝結剤として、カチオン性ポリアクリルアミド(エカケミカルス社製、型番:PL2615H)を200ppm添加し、また、アニオン性凝集剤として、コロイダルシリカ(エカケミカルス社製、型番NP:443)(なお、表中では「コロイダルシリカA」と記す。)を100ppm添加して、さらに、硫酸バンドを原料パルプに対して固形分で1.0質量%添加して、原料パルプスラリーを得て抄紙機に供して基紙を得た。
また、ゲートロールコーターにて、酸化澱粉を基紙の両面に、片面あたり0.5g/m2塗工し、米坪が70g/m2の書籍用紙(実施例1)を得た。なお、各種評価は、次記のように行った。
また、実施例2〜15、及び比較例1〜12を、表1に示す条件以外は、実施例1と同様にして、書籍用紙である各試料を作製した。なお、表1中の、比較例で使用した低温再生粒子としては、奥多摩工業株式会社製の、型番「タマパールTP−121−6S」を用いた。また、比較例3で再生粒子の欄に記載した炭酸カルシウムとして、奥多摩工業株式会社製の商品名「TP−123CS」を用い、比較例5の高温再生粒子として、第1焼成炉での焼成温度を550℃とした高温再生粒子を用い、タルクとして、日本タルク株式会社製の、平均粒子径が1.0μmである商品名「ナノエースD1000」を用いた。また、表1中のカチオン性凝結剤の、カチオン性アクリル酸アンモニウム塩として、ハイモ株式会社製の型番「ハイモロックNR−783」を用い、ポリエチレンイミンとしてハイモ株式会社製の型番「SC924」を用い、アニオン性アクリルアミドとしてハイモ株式会社製の型番「FA−230」を用いた。また、アニオン性凝集剤の欄の、コロイダルシリカB〜Gはアニオン量を調整した試作品を用い、アニオン性アクリルアミドとして、ハイモ株式会社製の型番「FA−230」を用いた。
なお、表1中の、「アニオン量(meq/g)」とは、アニオン性凝集剤のアニオン量で、mutek社製のカチオンデマンド測定装置(型番PCD03)を用いて測定した値である。
これらの全実施例及び比較例について品質評価を行った結果は、表1に示すとおりであった。なお、この品質評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23±2℃、湿度50±2%の環境条件で行った。
表1中の、「製品白色度(%)」とは、各試料である書籍用紙の白色度で、JIS−P8148(2001)に準拠して測定した値である。
また、「灰分率(%)」とは、各試料である書籍用紙の基紙の灰分率で、JIS−P8251(2003)に準拠して測定した値である。
また、「密度(g/cm3)」とは、各試料の基紙の坪量と、JIS−P8118(1998)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した基紙の紙厚から算出した値である。
また、「黒色欠陥」とは、各試料を50cm×50cmの大きさに断裁したものを4枚用意し、JIS−P8208(1998)の夾雑物計測図表を参考にして、1.0mm2以上の黒色欠陥の数を評価したものである。その評価基準は下記の通りとした。
○:サンプル1枚当たりの黒点欠陥が3個以下である。
△:サンプル1枚当たりの黒点欠陥が4〜9個である。
×:サンプル1枚当たりの黒点欠陥が10個以上である。
さらにまた、「裏抜け」とは、得られたサンプルを平判に断裁し、ローランド社性平判印刷機(型番:RVK−3B)にて、印刷速度7,000枚/分で10,000枚印刷し、墨ベタ印刷部を裏面から見て、裏抜けの程度を評価したものである。なお、評価基準は下記の通りとした。
○:裏抜けがほとんどない。
△:裏抜けが多少あるが、実用上問題ない。
×:裏抜けが目立ち、使用できない。
表1から、本発明に係る書籍用紙、すなわち実施例1〜実施例15に係る書籍用紙であると、製品白色度、黒色欠陥、裏抜けのいずれの評価にも優れ、嵩高剤を用いなくても、本願発明の目的である、嵩高で、黒色欠陥がなく、かつ白色度が高い書籍用紙を得ることができる。