JP2010235921A - 硬化性組成物およびその製造方法 - Google Patents

硬化性組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】毒性がなく環境に対し悪影響を及ぼさないことに加え、湿気等の水分による硬化物の硬さ、引張強さ、伸び、引裂強さ等のゴム弾性物性、特に引裂強さに優れることにより、耐久性に優れ、かつ低コストで製造できるイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂を硬化成分として含有する硬化性組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】原料として、有機ジイソシアネート化合物(a)および高分子ジオール(b)をイソシアネート基のモル数/水酸基のモル数で表される反応モル比が1.3〜2.1となる量比で用い、100〜180℃の比較的高温の反応温度で反応することにより、分子内にアロファネート結合を有するイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂を得て、このウレタン系硬化性樹脂を硬化成分として含有する硬化性組成物とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂を含有する硬化性組成物およびその製造方法に関するものである。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは硬化後の接着性やゴム弾性などの諸特性が良好なことより、これを含有する硬化性組成物は、建築用、土木用、自動車用などの接着剤、シーリング材、塗料など多方面に使用されている。しかしながら、従来のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、硬さ、引張強さ、伸び等のゴム弾性物性を高めるためポリオキシアルキレンジオール等の2官能のポリオールに、ポリオキシアルキレントリオール等の3官能以上のポリオールを組み合わせてポリオールを高官能化し、これと有機イソシアネート化合物を、水酸基に対してイソシアネート基過剰の条件で、50〜90℃の中低温でウレタン化反応し、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート官能性を2官能を超える多官能としている。しかし、3〜4官能のポリオールを使用することにより、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの粘度は高いものとなり、これを含有する硬化性組成物も粘度が上昇し、押出しや塗布などの施工作業性が低下するとともに、湿気による硬化後のゴム弾性物性も期待したほど上昇せず、特に耐熱性や耐水性などの耐久性に乏しいものとなる問題が存在する。
また、このように従来のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、水酸基に対してイソシアネート基過剰の条件で反応して合成されるため、ウレタンプレポリマー内に、未反応の有機イソシアネート化合物が1.5質量%を超えて残存し、これから得られる硬化性組成物もまた、未反応の有機イソシアネート化合物が0.8質量%を超えて含有されることになる。未反応の有機イソシアネート化合物には発ガン性などの毒性を有するものがあり、直接的には作業者に対する暴露による毒性の危険性、間接的には環境に放散されることにより、周囲の人間に対する毒性を与える、環境汚染の問題が存在し、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよび硬化性組成物において、未反応の有機イソシアネート化合物が含まれないようにすることが、強く求められている。
さて、硬化速度が高く低粘度であり、硬化後高い伸びを発揮するポリイソシアネートとして、脂肪族ジイソシアネートなどのジイソシアネートと、特定の数平均分子量で平均水酸基数が2〜3のポリオールを反応させて得られる、アロファネート結合とウレタン結合を特定の量比で含有するポリイソシアネート、ならびに低粘度で、低モジュラスのポリイソシアネート組成物として、脂肪族ジイソシアネートから得られるイソシアネート末端プレポリマーと高分子可塑剤とを含有する組成物が、さらにイソシアネート末端プレポリマーがアロファネート結合を含有していることが開示されている(特許文献1および2参照)。しかし粘度の低いものを得るために、反応時のイソシアネート基/水酸基の当量比を5/1以上の大過剰の有機イソシアネート化合物を使用しており、未反応の有機イソシアネート化合物を除去するために反応後蒸留操作などの除去操作を必要とし、製造コストが上昇してしまうという欠点がある。
また、脂肪族ジイソシアネート等のイソシアネート化合物と、水酸基含有化合物との反応において、ジルコニウム化合物をアロファネート化反応の触媒として用い、アロファネート基の生成比率の高いポリイソシアネート組成物を得る製造方法、ならびにウレタン基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物との反応において、有機カルボン酸の金属塩と有機亜リン酸エステルを用いるアロファネート基含有化合物の製造方法も開示されている(特許文献3および4参照)。しかしこれらは、二液型の硬化剤として用いる低分子量のポリイソシアネートに関するものであり、これら自体が湿気により硬化したもののゴム弾性物性については不明である。これらもまた粘度の低いものを得るために、反応時に大過剰の有機イソシアネート化合物を使用しており、未反応の有機イソシアネート化合物を除去するために反応後蒸留操作などの除去操作を必要とし、製造コストが上昇してしまうという欠点がある。
国際公開WO99/52960号公報 特開2002−53634号公報 国際公開WO2002/032979号公報 特開平8−188566号公報
本発明は、上記問題を解決して、毒性がなく環境に対し悪影響を及ぼさないことに加え、湿気等の水分による硬化物の硬さ、引張強さ、伸び、引裂強さ等のゴム弾性物性(以下略してゴム弾性物性と称す)、特に引裂強さに優れることにより、耐久性に優れ、かつ低コストで製造できるイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂を硬化成分として含有する硬化性組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題に鑑み研究した結果、原料として、有機ジイソシアネート化合物(a)および高分子ジオール(b)を、イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数で表される反応モル比が1.3〜2.1となる量比で用い、100〜180℃の比較的高温の反応温度で反応することにより、分子内にアロファネート結合を有するイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂が得られること、そしてこのウレタン系硬化性樹脂を硬化成分として含有する硬化性組成物が、湿気(大気中の水分)等の水分により硬化した硬化物のゴム弾性物性、特に引裂き強さが極めて優れていることなどを見出して本発明を完成させた。
すなわち本発明の第1は、
(1)有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを、イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数で表される反応モル比が1.3〜2.1となる量比で反応して得られる、分子内にアロファネート結合を有するイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有することを特徴とする硬化性組成物である。
また本発明の第2は、
(2)有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを反応して得られるイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有する硬化性組成物において、
(イ)該イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)が、分子内にアロファネート結合を含有し、かつ
(ロ)該硬化性組成物を水分により硬化した硬化物の引裂き強さが14N/mm以上であることを特徴とする硬化性組成物である。
また本発明の第3は、
(3)有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを反応して得られるイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有する硬化性組成物において、
(イ)該イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)が、分子内にアロファネート結合を含有し、かつ
(ハ)該イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)中の未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量が、反応の後に未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の除去操作をすることなしに1.0質量%以下であることを特徴とする硬化性組成物である。
そして、本発明の第1〜3において、
(4)前記イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)の(アロファネート結合量×100)/(アロファネート結合量+ウレタン結合量)で表されるアロファネート化率が、3〜35%であることが好ましい。
そして、前記の結果を得るためには、
(5)前記有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)との反応における反応触媒が、ビスマスと脂肪酸の塩および/またはジルコニウムと脂肪酸の塩であることが好ましい。
また、
(6)前記有機ジイソシアネート化合物(a)が、分子量500以下の低分子量の脂肪族系ジイソシアネートであることが好ましく、
さらに、
(7)前記脂肪族系ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートであることが好ましい。
また、
(8)高分子ジオール(b)が、数平均分子量が2,000以上のポリオキシアルキレン系ジオールであることが好ましい。
さらに本発明においては、
(9)さらに、硬化促進触媒、充填剤、可塑剤、耐候性安定剤、揺変性付与剤、接着性付与剤、貯蔵安定性向上剤、着色剤および有機溶剤からなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤(B)を配合することが好ましい。
また、本発明においては、
(10)前記硬化性組成物中に存在する未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量が、硬化性組成物全体の0.5質量%以下であるという特徴を有する。
また、
(11)前記硬化性組成物を水分により硬化した硬化物が、JIS A 1439(2004年)「建築用シーリング材の試験方法」の「5.17耐久性試験」に定める耐久性の区分9030に相当する性能を有するという特徴を有する。
そして本発明の第4は、
(12)有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを、イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数で表される反応モル比が1.3〜2.1となる量比で、反応温度100〜180℃の条件で反応する工程(I)を実施し、反応後に未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)を除去する工程(II)を実施しないことを特徴とする、分子内にアロファネート結合を有するイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有する硬化性組成物の製造方法である。
上述の構成をとることにより、本発明のイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂を硬化成分として含有する硬化性組成物は、低分子の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量が極めて少ないため毒性がなく(あるいは毒性が低く)環境に対し悪影響を及ぼさないことに加え、特に湿気等の水分により硬化して得られた硬化物のゴム弾性物性、特に引裂強さが極めて良好なため、耐水性や耐熱性等の耐久性に優れ、かつ低コストで製造できるという効果を奏する。
以下に、本発明について詳しく説明する。
先ず、本発明の第1〜第3の態様について述べる。本発明のイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)(以下、ウレタン系硬化性樹脂(A)と略称する)は、有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを、原料のアルコール性水酸基に対しイソシアネート基過剰の条件、すなわち水酸基のモル数に対するイソシアネート基のモル数で表される反応モル比(=イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数)を1.3〜2.1、好ましくは1.5〜2.0で、そして反応温度を100〜180℃、好ましくは100〜150℃の比較的高温で反応させて得られるものであり、分子内にイソシアネート基を有し、かつアロファネート結合を有していることを大きな特徴としている。なお、本発明において、「アロファネート結合を有している」とは、後述するアロファネート化率が3%以上のことをいう。また本発明におけるウレタン系硬化性樹脂(A)においては、反応後の未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)を、蒸留や抽出等の除去操作をすることなしに、合成反応を経るだけでその含有量を1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下という極めて少ないものにすることができるという優れた特徴を有し、この未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の除去操作を必要としないことにより、低コストで製造できる利点も有する。反応モル比が1.3未満では得られるウレタン系硬化性樹脂(A)の粘度が高くなり作業性が低下し、2.1を超えると未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)が増加するため好ましくない。また、反応温度が100℃未満では分子内のアロファネート結合の含有量が低下しゴム弾性物性が低下するため、また180℃を超えると増粘し作業性が低下するため好ましくない。さらに、未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量をできるだけ少量に抑えるために、反応モル比を1.5〜1,9として反応させ、未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量を0.7質量%以下にするのが特に好ましい。
また、ウレタン系硬化性樹脂(A)のイソシアネート基の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、さらに0.5〜5.0質量%が好ましい。イソシアネート基含有量が0.1質量%を未満の場合は、ウレタン系硬化性樹脂(A)が粘度上昇を起こし、イソシアネート基含有量が10質量%を超える場合は、水分により硬化する際、炭酸ガスの発生量が多くなり硬化物に発泡が生じるため好ましくない。
前記ウレタン系硬化性樹脂(A)においては、分子内のアロファネート結合による分岐が形成されていることにより、このウレタン系硬化性樹脂(A)のイソシアネート基の平均の官能性(官能基の数)は、原料の有機ジイソシアネート化合物(a)及び高分子ジオール(b)がともに2官能性であるにもかかわらず、2を超えた数となっている。これにより、ウレタン系硬化性樹脂(A)を湿気等の水分により硬化した場合に、十分に網状化が進み、得られる硬化物のゴム弾性物性、特に引裂き強さが極めて優れたものとなり耐久性に優れたものとなる。ウレタン系硬化性樹脂(A)のイソシアネート基の平均の官能性は、2.1以上、さらに2.1〜4.0、よりさらに2.1〜3.0、特に2.1〜2.5が好ましい。2.1未満では硬化後のゴム弾性物性が低下するため好ましくない。前記の分岐を得るため、ウレタン系硬化性樹脂(A)中のアロファネート化率は、3〜35%、さらに4〜30%、特に4〜25%が好ましい。アロファネート化率が3%未満では、水分による硬化物の引裂き強さや耐久性が低下し、35%を超えると、ウレタン系硬化性樹脂(A)の粘度が高くなりすぎ作業性が低下し、引裂き強さも低下傾向を示すため好ましくない。なお本発明において、アロファネート化率(%)は、後述する核磁気共鳴分光法(1H−NMR)により求めた、アロファネート結合の量及びウレタン結合の量より、下記計算式(I)により求めた値である。
Figure 2010235921
前記反応においては、先ず有機ジイソシアネート化合物(a)と、高分子ジオール(b)がウレタン化反応によりウレタン結合を形成し、イソシアネート基およびウレタン結合を有する中間樹脂を生成する。この段階では、ウレタン中間樹脂のイソシアネート基の官能性は理論的には2と低く、分子形態が線状に近いため、水分による硬化の際、網状化が進まず硬化後のゴム弾性物性は低いままである。その後、さらに反応が進行し、このウレタン結合の活性水素と、他のウレタン中間樹脂分子のイソシアネート基が反応し、アロファネート結合を形成し、分岐を生じることにより、イソシアネート基の官能性が2を超えた多官能のウレタン系硬化性樹脂(A)が生成するため、水分による硬化物が十分網状化し、そのゴム弾性物性が優れたものになる。
なお、この反応は、最初から100〜180℃の高温で、ウレタン化とアロファネート化の反応を同時に行っても良いし、最初50〜90℃の中温でウレタン化反応のみを行った後、100〜180℃の高温でアロファネート化の反応行っても良い。
前記反応の際、少量の水分により生じた尿素結合の活性水素に他のウレタン中間樹脂分子のイソシアネート基が反応してビウレット結合を形成してウレタン系硬化性樹脂(A)が高官能化すること、あるいはウレタン中間樹脂のイソシアネート基同士がイソシアヌレート結合を形成して高官能化することもあるが、これらの含有量は少なく、このウレタン系硬化性樹脂(A)のイソシアネート基の高官能化は、主にアロファネート結合によるものである。このアロファネート結合の生成は、ウレタン系硬化性樹脂(A)を赤外分光法(IR)により測定した赤外吸収スペクトルにおいて、1720cm−1と1690cm−1に一対の吸収が認められることにより確認することができる。あるいは、後述するように核磁気共鳴分光法(1H−NMR)により測定することもできる。
さらに、得られるウレタン系硬化性樹脂(A)中に残存する未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量が1.0質量%以下の低含有量を示す理由については、前記反応において、イソシアネート基およびウレタン結合を有する中間樹脂の生成段階では、未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量が1.0質量%を超えていても、反応がさらに進行することにより、未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)モノマー中のイソシアネート基が、ウレタン結合の活性水素にアロファネート結合を形成してウレタン系硬化性樹脂(A)中に組み込まれるなどして、未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)モノマーが減少し、ウレタン系硬化性樹脂(A)中の含有量が1.0質量%以下に低下するものと推察される。この未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量は、ウレタン系硬化性樹脂(A)の毒性を低下させる点で、1.0質量%以下が好ましく、さらに0.8質量%以下が好ましく、特に0.7質量%以下が好ましい。
本発明の第4の態様に係る前記ウレタン系硬化性樹脂(A)の製造方法は、ガラス製やステンレス製などの反応容器に、有機ジイソシアネート化合物(a)と、高分子ジオール(b)とを前述の反応モル比で仕込み、反応触媒や反応溶剤の存在下、あるいは不存在下に、100〜180℃、好ましくは100〜150℃で反応させる工程(I)を実施し、反応後に蒸留や抽出等で、未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)を除去する工程(II)を実施しないでウレタン系硬化性樹脂(A)を製造する方法が挙げられる。この製造方法は、ウレタン系硬化性樹脂(A)に残存する有機ジイソシアネート化合物(a)を、反応後に蒸留や抽出等で除去する工程(II)を実施することなしに、合成反応を経るだけで未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量を1.0質量%以下の極めて少ないものとすることができ、低コストで製造できるという大きな利点を有する。この合成反応の際、イソシアネート基が湿気と反応すると、得られるウレタン系硬化性樹脂(A)が増粘するため、窒素ガス置換、窒素ガス気流下などの湿気を遮断した状態で反応を行うことが好ましい。
前記反応触媒としては、後述する硬化促進触媒のうち、金属系触媒として挙げたものと同様の化合物が挙げられ、単独あるいは組合わせて使用できるが、アロファネート化反応が進行しやすい点で、ビスマスと脂肪酸の塩および/またはジルコニウムと脂肪酸の塩が好ましく、さらにビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)および/またはオクチル酸ジルコニウムが好ましい。また、前記反応溶媒としては、後述する有機溶剤として挙げた化合物と同様のものが使用できる。
本発明における有機ジイソシアネート化合物(a)としては、具体的に、イソシアネート基が芳香族炭素と結合している芳香族系ジイソシアネート、イソシアネート基が脂肪族炭素と結合している脂肪族系ジイソシアネートが挙げられ、脂肪族系ジイソシアネートとしてはさらに、芳香環を有しかつイソシアネート基が脂肪族炭素と結合している芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環を有する脂環族ジイソシアネートおよび脂肪族炭素のみからなる脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。有機ジイソシアネート化合物(a)の分子量は、高分子ジオール(b)との反応性の良さと、得られるウレタン系硬化性樹脂(A)の粘度を低下できる点で、1,000未満、さらに500以下の低分子量のものが好ましい。しかし低分子量のものは毒性や揮発性も高まるため、前述したようにウレタン系硬化性樹脂(A)中に残存する量をできるだけ低減させることが必要になる。なお、本発明において、高分子量とは数平均分子量が1,000以上のことをいい、低分子量とは数平均分子量が1,000未満のことをいう。
前記芳香族系ジイソシアネートとしては、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、あるいはこれらの混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI類);2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートあるいはこれらの混合物等のトルエンジイソシアネート類(TDI類);この他フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられ、脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートなどが挙げられ、脂環族ジイソシアネートとしてはシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらジイソシアネートのカルボジイミド変性ジイソシアネート、ウレトジオン変性ジイソシアネートなどの二量体も挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できるが、これらのうち得られるウレタン系硬化性樹脂(A)の粘度が低く、かつ湿気による硬化物のゴム弾性物性が良好な点で、脂肪族系ジイソシアネートモノマーが好ましく、脂肪族系ジイソシアネートモノマーのうちでは、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましく、さらに脂肪族ジイソシアネートモノマーが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
なお、本発明の目的を逸脱しない範囲で、ウレタン系硬化性樹脂(A)の変性用として、前記有機ジイソシアネート化合物(a)として挙げた各種ジイソシアネートモノマーのビウレット化三量体、イソシヌレート化三量体あるいはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDIまたはポリメリックMDIとも称す)あるいはまたオクタデシルモノイソシアネート等のモノイソシアネート類なども少量使用できる。
本発明における高分子ジオール(b)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量は、1,000以上、さらに2,000以上、よりさらに2,000〜30,000、特に2,000〜20,000のものが好ましい。数平均分子量が1,000未満では、得られるウレタン系硬化性樹脂(A)の水分による硬化物のゴム弾性物性や接着性が低下するため好ましくない。
この高分子ジオール(b)としては、具体的に、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリオキシアルキレン系ジオール、これらの共重合ジオールなどが挙げられ、ポリエステルジオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸、これらジカルボン酸のメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステル、またはこれらジカルボン酸の酸無水物等の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物等の低分子ジオール類の1種以上との脱水または脱アルコール縮合反応で得られるポリエステルジオールが挙げられる。また、前記低分子ジオール類などを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルジオールも挙げられる。
ポリカーボネートジオールとしては、前述のポリエステルジオールの合成に用いられる低分子ジオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは低分子ジオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ジオールとしては、前記のポリエステルジオールの合成に用いられるのと同様の低分子ジオール類などを開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは共重合させた、ポリオキシエチレン系ジオール、ポリオキシプロピレン系ジオール、ポリオキシブチレン系ジオール、ポリオキシテトラメチレン系ジオール、ポリ−(オキシエチレン)−(オキシプロピレン)−ランダムあるいはブロック共重合ジオール、さらに、前記のポリエステルジオールやポリカーボネートジオールを開始剤としたポリエステルエーテルジオール、ポリカーボネートエーテルジオールなどが挙げられる。また、これらポリオキシアルキレン系ジオールと前記したような有機ジイソシアネート(a)とを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたジオールも挙げられる。
さらに、ポリオキシアルキレン系ジオールは、その分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比=Mw/Mn〕が1.6以下、特に1.0〜1.3の狭いものが、得られるウレタン系硬化性樹脂(A)の粘度を低下でき、水分による硬化後のゴム弾性物性が良好となる点で好ましい。
また本発明においては、本発明の目的を逸脱しない範囲で、ウレタン系硬化性樹脂(A)の変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコール類を開始剤として、前記プロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加重合させたポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオール、あるいは、グリセリンやトリメチロールプロパンを開始剤として、前記プロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加重合させたポリオキシプロピレン系トリオール等の3官能以上のポリオキシアルキレン系ポリオールなども少量使用できる。
前記の高分子ジオール(b)として挙げた化合物は単独または2種以上を組み合わせて使用することができるが、これらのうち、得られるウレタン系硬化性樹脂(A)の水分による硬化物のゴム弾性物性や接着性が良好な点で、高分子の、好ましくは数平均分子量が2,000以上のポリオキシアルキレン系ジオールが好ましく、さらにポリオキシプロピレン系ジオールが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、前述のウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分とし、これに硬化促進性能や硬化後の耐候性などの各種性能を向上させる目的で、添加剤(B)と呼ばれる成分をさらに配合して得られるものである。したがって、得られる硬化性組成物には、ウレタン系硬化性樹脂(A)と共にこれに残存する前述の未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)が混入するため、硬化性組成物中にも、未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)が含有されることになり、その含有量は、硬化性組成物全体の0.5質量%以下、さらに0.4質量%以下が好ましい。0.5質量%を超えると環境に対して悪影響を及ぼすため好ましくない。なお、ウレタン系硬化性樹脂(A)に添加剤(B)を配合した場合、添加剤(B)により薄められる以上に、硬化性組成物中の未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量が低下する場合が多いが、これは添加剤(B)に含まれる水分と未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)が、製造中あるいは貯蔵中に反応するためと推察される。
また、硬化性組成物の性能は、ウレタン系硬化性樹脂(A)の性能を引き継いで優れており、特に硬化性組成物を湿気等の水分により硬化して得られた硬化物は、伸び、引張応力等のゴム弾性物性、特に引裂き強さに優れているため、耐水性や耐熱性等の耐久性に優れており、JIS A 1439(2004年)「建築用シーリング材の試験方法」の「5.17耐久性試験」に定める耐久性の区分9030に相当する性能を有している。
前記添加剤(B)としては、硬化促進触媒、充填剤、可塑剤、耐候安定剤、揺変性付与剤、接着性付与剤、貯蔵安定性向上剤、着色剤および有機溶剤からなる群から選択される1種または2種以上を挙げることができる。
前記硬化促進触媒は、硬化性組成物の湿気等の水分による硬化を促進させるために使用するものであり、オクチル酸第一錫、オクチル酸ジルコニウム、トリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス等の、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ジルコニウム、コバルト、マンガン等の金属とオクチル酸、オクテン酸、ナフテン酸等の有機酸との塩;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属と有機酸との塩などの金属系の触媒;トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4、0〕ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の第3級アミン類、あるいはこれらのアミン類と有機酸との塩類などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち硬化を促進する効果が高い点で、有機金属と有機酸との塩が好ましく、さらにジブチル錫ジラウレートが好ましい。硬化促進触媒の使用量は、ウレタン系硬化性樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部、さらに0.01〜5質量部が好ましい。
前記揺変性付与剤は、本発明の硬化性組成物に揺変性を付与して、組成物を建築外壁などの垂直面に充填や塗布したときに垂れ(スランプ)を起こさないようにするために使用するものであり、さらにこれは硬化性組成物をシーリング材として使用したときにきわめて重要な要件となるものであるが、揺変性付与剤としては、親水性や疎水性の微粉状シリカ、有機酸系化合物表面処理炭酸カルシウム等の無機系揺変性付与剤;有機ベントナイト、脂肪酸アマイド等の有機系揺変性付与剤などが挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて使用できるが、これらのうち揺変性付与効果が安定している点で有機酸系化合物表面処理炭酸カルシウムが好ましい。揺変性付与剤の使用量は、ウレタン系硬化性樹脂(A)100質量部に対し、1〜300質量部、さらに1〜100質量部が好ましい。
前記充填剤は、補強や増量を目的として使用するものであり、好ましくは粒径0.01〜1,000μmの無機系充填剤と有機系充填剤が挙げられる。無機系充填剤としては、天然の炭酸カルシウムを粉砕した重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムと称される微粉状の合成炭酸カルシウム等の無機炭酸カルシウム充填剤の他、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、無水ケイ酸、石英、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等の無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維等の無機系繊維状充填剤;ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、セラミックバルーン等の無機系バルーン状充填剤などが挙げられる。有機系充填剤としては、木粉、クルミ殻粉、もみ殻粉、パルプ粉、ゴム粉末、熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂の有機粉末状充填剤;ポリエチレンバルーン、サランマイクロバルーン等の有機系バルーン状充填剤などが挙げられる。この他水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの難燃性付与充填剤なども挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、補強や増量の効果が高い点で、無機炭酸カルシウム充填剤が好ましい。
前記充填剤の使用量は、ウレタン系硬化性樹脂(A)100質量部に対して、1〜500質量部、さらに10〜300質量部、特に10〜100質量部が好ましい。1質量部未満では得られる硬化性組成物の補強や増量の効果がなく、500質量部を超えると硬化物が脆いものとなり好ましくない。
前記可塑剤は、硬化性組成物の粘度を下げ作業性を良好なものにするため、あるいは硬化後の物性を調節するために使用するものであり、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、ペンタエリスリトールエステル等のアルコールエステル類、燐酸トリオクチル、燐酸トリクレジル等の燐酸エステル類、塩素化パラフィン等のハロゲン化脂肪族化合物などの分子量1,000未満の低分子量可塑剤;ポリエーテルポリオールをアルキルエーテル化あるいはエステル化したポリエーテル類、中でもシュークロースなどの糖類多価アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合したものをアルキルエーテル化あるいはエステル化などした糖類系ポリエーテル類、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、水素添加ポリプテン等のオレフィン系重合体などの分子量1,000以上の高分子量可塑剤などが挙げられる。可塑剤の使用量は、ウレタン系硬化性樹脂(A)100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、さらに10〜100質量部が好ましい。
前記耐候安定剤は、得られる硬化性組成物の硬化後の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐候性だけでなく耐熱性を更に向上させるために使用されるものであり、具体的に、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロキオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの他、ADEKA社の商品名アデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87等の分子量1,000未満の低分子量のヒンダードアミン系光安定剤;同じくアデカスタブシリーズのLA−63P、LA−68LD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LD等の分子量1,000以上の高分子量のヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオアミド]、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系などが挙げられる。
これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できるが、これらのうち耐候性を向上させる効果が高い点で、ヒンダードアミン系光安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。なお、本発明において「および/または」とは、それぞれを組み合わせて使用してもよいし、それぞれを単独で使用してもよいことを意味する。
耐候安定剤は、ウレタン系硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜30質量部、特に0.1〜10質量部配合するのが好ましい。
前記接着性付与剤は、硬化性組成物の接着性向上のために使用するが、カップリング剤の他に、エポキシ樹脂などが挙げられる。カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系などの各種カップリング剤および/またはその部分加水分解縮合物を挙げることができ、このうちシラン系カップリング剤および/またはその部分加水分解物が接着性に優れているため好ましい。
このシラン系カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのアルコキシシリル基を含有する分子量500以下、好ましくは400以下の低分子化合物および/またはこれらシラン系カップリング剤の1種または2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200〜3,000の化合物を挙げることができる。これらは単独であるいは2種以上を組合わせて使用できる。
前記貯蔵安定性向上剤は、硬化性組成物の貯蔵中の安定性を向上させるために配合するものであり、貯蔵安定性向上剤としては、硬化性組成物中に存在する水分と反応し脱水剤として働く、前記ビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
着色剤としては、酸化チタンや酸化鉄などの無機系顔料、銅フタロシアニンなどの有機系顔料、カーボンブラックなどが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
前記有機溶剤は、本発明の硬化性組成物の粘度を下げ、押出しや塗布などの作業性を向上させるため使用するものであり、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、n−ヘキサンなどの脂肪族系溶剤、シクロヘキサンなどの脂環族系溶剤、トルエン、キシレン、石油留分である高沸点芳香族系工業用溶剤などの芳香族系溶剤など従来公知の有機溶剤でイソシアネート基に反応しないものが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。高沸点芳香族系工業用溶剤の一般市販品としては、ジャパンエナジー社品のカクタスソルベントシリーズのP20、P50、P100などが挙がられる。なお、揮発物質の放散を抑え、環境に対して悪影響を及ぼさないためには、有機溶剤の使用量はできるだけ少量に抑えることが好ましく、硬化性組成物全体の10質量%以下、さらに5質量%以下にすることが好ましい。
本発明の硬化性組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、予めステンレス製等の反応装置を用いて、前述した製造方法によりウレタン系硬化性樹脂(A)を合成しておき、次いで、ステンレス製等の混合装置を用いて、このウレタン系硬化性樹脂(A)成分を仕込み、さらに添加剤(B)成分の中から用途に応じて適宜選択したものを仕込み、攪拌混合して硬化性組成物を得る。次いで減圧脱泡し、紙製、樹脂製あるいは金属製等のカートリジ、ペール缶あるいは袋状の各種容器に充填し、密封して貯蔵する方法が挙げられる。なお、充填剤等の添加剤(B)成分中でウレタン系硬化性樹脂(A)の合成反応を行うと同時に硬化性組成物を得る方法も挙げられる。
なお、本発明の硬化性組成物は、用途に応じ一液型として、あるいは本発明の硬化性組成物を主剤とし、水やアミン化合物等を硬化剤とする二液型として用いることができるが、主剤と硬化剤を混合する手間がなく、また混合不良などの不具合もなく作業性に優れているため、一液湿気硬化型の硬化性組成物として用いることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物の用途としては、建築用、土木用あるいは自動車用などの接着剤、塗料、シーリング材などが挙げられるが、前述の特徴を活用して、建築用や土木用の接着剤またはシーリング材、特にシーリング材として使用するのが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物が施工の対象とする材料としては、モルタルやコンクリート等のセメント系材料、大理石等の天然石材料、サイディングやタイル等の窯業系材料、ポリエチレンや塩化ビニル等の各種合成樹脂製のシート状や板状の材料、木材や合板等の木質系材料などが、接着性などが良好なため好適なものとして挙げられるが、本発明の硬化性組成物をシーリング材の用途として使用する場合、水分による硬化物が耐久性に優れている点で、サイディングを施工の対象とするのが特に好ましい。
以下、本発明について、ウレタン系硬化性樹脂、ウレタン系硬化性樹脂の溶液および1液湿気硬化型シーリング材を例にとり実施例等により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ウレタン系硬化性樹脂およびウレタン系硬化性樹脂の溶液はそれぞれ1液湿気硬化型の接着剤や塗料として使用できる。
(ウレタン系硬化性樹脂溶液の製造と試験A)
実施例1 ウレタン系硬化性樹脂溶液A−1の製造
攪拌機、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、ポリオキシプロピレンジオール(旭硝子社製、エクセノール3021、数平均分子量3,206)を1,603gと、反応溶媒として高沸点芳香族系工業用溶剤(ジャパンエナジー社製、カクタスソルベンP−20)を93g仕込んだ後、攪拌しながらヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、HDI、分子量168.2)を126g仕込み、さらに反応触媒としてオクチル酸ジルコニウム(日本化学産業社製、ニッカオクチックスZr)0.2gを加えたのち加温し、ウレタン化及びアロファネート化の反応を120〜125℃で1時間を行い、分子内にイソシアネート基及びアロファネート結合を有するウレタン系硬化性樹脂溶液A−1を製造した。この際の反応モル比は1.5であり、ウレタン化反応のみの場合の計算によるイソシアネート基含有量は1.15質量%である。
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液A−1は、滴定による実測のイソシアネート基含有量が1.04質量%、25℃におけるB型回転粘度計による粘度が14,000mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
実施例2 ウレタン系硬化性樹脂溶液A−2の製造
実施例1において、HDIを134g使用し、反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(日東化成社製、ネオスタンU−600)0.1gおよびオクチル酸ジルコニウムを0.2g使用し、120〜125℃で2時間反応を行った以外は同様にして、分子内にイソシアネート基及びアロファネート結合を有するウレタン系硬化性樹脂溶液A−2を製造した。この際の反応モル比は1.6であり、ウレタン化反応のみの場合の計算によるイソシアネート基含有量は1.38質量%である。
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液A−2は、滴定による実測のイソシアネート基含有量が1.10質量%、25℃における粘度が23,500mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
実施例3 ウレタン系硬化性樹脂溶液A−3の製造
実施例1において、HDIを143g使用し、130〜135℃で1時間反応を行った以外は同様にして、分子内にイソシアネート基及びアロファネート結合を有するウレタン系硬化性樹脂溶液A−3を製造した。この際の反応モル比は1.7であり、ウレタン化反応のみの場合の計算によるイソシアネート基含有量は1.60質量%である。
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液A−3は、滴定による実測のイソシアネート基含有量が1.40質量%、25℃における粘度が9,100mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
実施例4 ウレタン系硬化性樹脂溶液A−4の製造
実施例1において、HDIを151g使用し、反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.4g使用し、120〜125℃で1時間反応を行った以外は同様にして、分子内にイソシアネート基及びアロファネート結合を有するウレタン系硬化性樹脂溶液A−4を製造した。この際の反応モル比は1.8であり、ウレタン化反応のみの場合の計算によるイソシアネート基含有量は1.82質量%である。
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液A−4は、滴定による実測のイソシアネート基含有量が1.68質量%、25℃における粘度が6,400mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
実施例5 ウレタン系硬化性樹脂溶液A−5の製造
実施例1において、HDIを160g、反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)を0.2gそれぞれ使用し、120〜125℃で2時間反応を行った以外は同様にして、分子内にイソシアネート基及びアロファネート結合を有するウレタン系硬化性樹脂溶液A−5を製造した。この際の反応モル比は1.9であり、ウレタン化反応のみの場合の計算によるイソシアネート基含有量は2.04質量%である。
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液A−5は、滴定による実測のイソシアネート基含有量が1.65質量%、25℃における粘度が13,900mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
実施例6 ウレタン系硬化性樹脂溶液A−6の製造
実施例1において、HDIを168g、反応触媒としてオクチル酸ジルコニウムを0.4gそれぞれ使用し、75〜80℃で1時間前半のウレタン化反応を行った後に昇温し、130〜135℃で2時間後半の反応を行った以外は同様にして、分子内にイソシアネート基及びアロファネート結合を有するウレタン系硬化性樹脂溶液A−6を製造した。この際の反応モル比は2.0であり、ウレタン化反応のみの場合の計算によるイソシアネート基含有量は2.25質量%である。
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液A−6は、滴定による実測のイソシアネート基含有量が1.77質量%、25℃における粘度が18,000mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。なお、表1の反応温度において、1)は前半の反応温度を示し、2)は後半の反応温度を示す。
比較例1〜6 ジオールのみを用いたアロファネート結合を有しないウレタン系硬化性樹脂溶液の製造
実施例1〜6のそれぞれにおいて、75〜80℃で1時間ウレタン化反応のみを行った以外は同様にして、分子内にアロファネート結合を有しないウレタン系硬化性樹脂溶液比較A−1〜比較A−6をそれぞれ製造した。
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液の滴定による実測のイソシアネート基含有量および25℃における粘度は、それぞれ比較A−1が1.13質量%、8,800mPa・s、比較A−2が1.34質量%、7,600mPa・s、比較A−3が1.57質量%、5,600mPa・s、比較A−4が1.8質量%、4,100mPa・s、比較A−5が1.80質量%、4,100mPa・s、比較A−6が2.22質量%、3,500mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
比較例7〜12 ジオール及びトリオールを用いたアロファネート結合を有しないウレタン系硬化性樹脂溶液の製造
実施例1〜6のそれぞれにおいて、ポリオキシプロピレンジオールに加えて、ポリオキシプロピレントリオール(旭硝子社製、エクセノール4030、数平均分子量4,010)を2,005g使用し、カクタスソルベンP−20を212g使用し、そして比較例7においてはHDIを315g、比較例8においてはHDIを336g、比較例9においてはHDIを357g、比較例10においてはHDIを378g、比較例11においてはHDIを399g、比較例12においてはHDIを421gそれぞれ使用し、75〜80℃で1時間ウレタン化反応のみを行った以外は同様にして、分子内にアロファネート結合を有しないウレタン系硬化性樹脂溶液比較A−7〜比較A−12をそれぞれ製造した。
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液の滴定による実測のイソシアネート基含有量および25℃における粘度は、それぞれ比較A−7が1.25質量%、19,600mPa・s、比較A−8が1.49質量%、14,500mPa・s、比較A−9が1.72質量%、12,000mPa・s、比較A−10が1.96質量%、9,100mPa・s、比較A−11が2.18質量%、7,200mPa・s、比較A−12が2.45質量%、5,100mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
(ウレタン系硬化性樹脂溶液の試験A)
実施例1〜6および比較例1〜12で得られたウレタン系硬化性樹脂溶液A−1〜A−6及び比較A−1〜比較A−12を用いて、下記のウレタン系硬化性樹脂溶液の試験方法Aに記す方法により試験をした結果を、原料仕込み量および反応条件とともに表1〜表3に記す。
(試験方法A)
1) ウレタン系硬化性樹脂中の未反応HDIモノマー含有量の測定
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液を試料とし、この試料を0.2g採取し10mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し試料溶解液とした。この試料溶解液を以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にかけ、得られたクロマトグラムのウレタン系硬化性樹脂のピーク面積とHDIモノマーのピーク面積とから、下記計算式(II)によりウレタン系硬化性樹脂中の未反応HDIモノマーの含有量(質量%)を求めた。
Figure 2010235921

計算式(II)において、
a:ウレタン系硬化性樹脂中の未反応HDIモノマーの含有量(質量%)
S1:未反応HDIモノマーのピーク面積
S2:ウレタン系硬化性樹脂のピーク面積
を示す。

GPCの条件
装置:東ソー社製、HLC−8220 GPC
カラム:TSKgelSuperHM−MとSuper2000
溶離液:THF
検出器:RI
2) NMRによるアロファネート化率の測定
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液の約50mgを、化学シフト基準としてテトラメチルシラン約500ppmを含むクロロホルム−d(CDCL)約0.5gに溶解したものを試料溶液として、下記のNMR分光計を用い、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)スペクトルを測定し、得られたスペクトルにおける8.65ppm付近のアロファネート結合によるシグナルおよび5.85ppm付近のウレタン結合によるシグナルから下記計算式(III)によりアロファネート化率を求めた。
装置:日本ブルカー社製DPX−400型フーリエ変換核磁気共鳴分光計
Figure 2010235921

式(III)において、
AI: アロファネート結合によるシグナルの積分値(アロファネート結合量)
UI: ウレタン結合によるシグナルの積分値(ウレタン結合量)
を示す。
3)アロファネート結合の有無の判定
前記アロファネート化率の計算式(III)により求めた値が、3%未満のものをアロファネート結合なし、3%以上のものをアロファネート結合あり、と判定した。
4)引張試験
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液を離型紙上に、厚さ約3mmとなるように泡を巻き込まないように注意して流し、23℃、50%相対湿度の室内に1週間放置し、厚さ約3mmの硬化シートを作製した。
この硬化シートを用い、JIS K 6251(1993年、確認1999)「加硫ゴムの引張試験方法」により、試験片の形状を3号形ダンベル状とし標準状態において引張試験を行った。
5)引裂強さ
得られたウレタン系硬化性樹脂溶液を離型紙上に、厚さ約2mmとなるように泡を巻き込まないように注意して流し、23℃、50%相対湿度の室内に1週間放置し、厚さ約2mmの硬化シートを作製した。
この硬化シートを用い、JIS K 6252(2001年)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引裂強さの求め方」により、試験片の形状を切込みなしアングル形とし標準状態において引裂強さを求めた。
(1液湿気硬化型シーリング材の製造と試験B)
実施例7
加熱・冷却装置および窒素シール管付混練容器に、窒素ガスを流しながら、実施例1で得たウレタン系硬化性樹脂溶液A−1を1,000g仕込み、攪拌しながら、フタル酸ジイソノニルを200gと、高沸点芳香族系工業用溶剤(ジャパンエナジー社製、カクタスソルベンP−20)を30g、それぞれ予め100〜110℃の乾燥機中で乾燥し、水分含有量を0.05質量%以下にした、酸化チタン50g、重質炭酸カルシウム300gおよび脂肪酸表面処理炭酸カルシウムを600g仕込み、内容物が均一になるまで1時間混練した。次いでp−トルエンスルホニルイソシアネートを3g、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX1010、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕)を10gおよび硬化促進触媒としてジブチル錫ジラウレート(日東化成社製、ネオスタンU−100)を1g添加し、均一になるまでさらに30分間混練した後、50〜100hPaで減圧脱泡し、紙製のカートリッジ状容器に充填密封して、1液湿気硬化型シーリング材S−7を製造した。
得られたシーリング材S−7は、室温で白色ペースト状液体であった。
実施例8〜12
実施例7において、ウレタン系硬化性樹脂溶液A−1の代わりに、実施例2〜6で得られたウレタン系硬化性樹脂溶液A−2〜A−6をそれぞれ1,000g使用した以外は同様にして、室温で白色ペースト状液体の1液湿気硬化型シーリング材S−8〜S−12をそれぞれ製造した。
比較例13〜24
実施例7において、ウレタン系硬化性樹脂溶液A−1の代わりに、比較例1〜12で得られたウレタン系硬化性樹脂溶液比較A−1〜比較A−12をそれぞれ1,000g使用した以外は同様にして、室温で白色ペースト状液体の1液湿気硬化型シーリング材比較S−13〜比較S−24をそれぞれ製造した。
(シーリング材の試験B)
実施例7〜12および比較例13〜24で得られた1液湿気硬化型シーリング材を用い、下記の1液湿気硬化型シーリング材の試験方法Bにより試験をした結果を、配合組成とともに表4〜6に記す。
(試験方法B)
1)シーリング材中の未反応HDIモノマーの含有量の測定
得られた1液湿気硬化型シーリング材を試料とし、この試料を0.2g採取し10mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した後、遠心分離機にかけて得られた上澄み液を試料溶解液とした。この試料溶解液を前記ウレタン系硬化性樹脂中の未反応HDIモノマーの含有量の測定と同様の条件でGPCにかけ、得られたクロマトグラムのウレタンプレポリマーのピーク面積とHDIモノマーのピーク面積とから、下記の計算式(IV)によりシーリング材中の未反応HDIモノマーの含有量(質量%)を求めた。
Figure 2010235921
計算式(IV)において、
b:シーリング材中の未反応HDIモノマーの含有量(質量%)
S3:未反応HDIモノマーのピーク面積
S4:ウレタン系硬化性樹脂のピーク面積
M:シーリング材の総仕込み量(g)
H:ウレタン系硬化性樹脂の仕込み量(g)(表4〜6においては950g)
を示す。
2) スランプ
JIS A 1439(2004年)「建築用シーリング材の試験方法」の「5.1スランプ試験」により、幅10mmの溝形容器を用い、23℃におけるスランプ(縦)を測定した。
3)引裂強さ
ウレタン系硬化性樹脂溶液の試験方法Aに記載の方法と同様の方法で測定した。
4) 引張接着性
JIS A 1439(2004年)「建築用シーリング材の試験方法」の「5.20引張接着性試験」により、水浸せき後の引張試験において、23℃の水に代えて50℃の温水中に7日間浸せきした以外は同様にして、養生後の引張試験、90℃加熱後の引張接着試験および50℃温水浸せき後の引張試験を行い、それぞれにおける50%引張応力(M50)、最大引張応力(Tmax)、最大荷重時の伸び(Emax)を測定した。なお、被着体としてモルタル板を用い、試験体の形状は1形で試験をした。
5)耐久性試験
JIS A 1439(2004年)「建築用シーリング材の試験方法」の「5.17耐久性試験」により、被着体として厚さ10mmのモルタル板を用い、1形の試験体を作製し、耐久性の区分9030で試験をした。試料の溶解、膨潤、ひび割れ、被着体からの剥離について明確な異常のないものを合格、あるものを不合格と判定した。
Figure 2010235921


Figure 2010235921

Figure 2010235921
Figure 2010235921


Figure 2010235921


Figure 2010235921

(参考例・参考比較例)
(ウレタン系硬化性樹脂の合成と試験C)
参考例1 ウレタン系硬化性樹脂A−Iの合成
攪拌機、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、ポリオキシプロピレンジオール(旭硝子社製、エクセノール−3021、数平均分子量3,220)を1,610g仕込み、攪拌しながらヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、HDI、分子量168.2)を151g仕込み、さらに反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(日東化成社製、ネオスタンU−600)0.5gを加え、前半75〜80℃で、滴定によるイソシアネート基含有量が、ウレタン化反応の理論値(1.91質量%)以下となるまで、1時間反応を行った。その後130〜135℃に昇温し、さらに1時間、後半の反応を行い、滴定によるイソシアネート基含有量が1.63質量%となった時点を反応終点とし、直ちに30℃以下に冷却してウレタン系硬化性樹脂A−Iを合成した。このときの反応モル比(=イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数)は1.8である。
得られたウレタン系硬化性樹脂A−Iは、滴定によるイソシアネート基含有量1.63質量%、25℃における粘度22,500mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
参考比較例1 ウレタン系硬化性樹脂比較A−Iの合成
参考例1において、75〜80℃で前半の反応を1時間行い、次いで同じ75〜80℃で後半の反応を1時間行った以外は同様にして、ウレタン系硬化性樹脂比較A−Iを合成した。
得られたウレタン系硬化性樹脂比較A−Iは、滴定によるイソシアネート基含有量1.82質量%、25℃における粘度12,000mPa・sの常温で粘稠な透明液体であった。
(ウレタン系硬化性樹脂の試験C)
参考例1および参考比較例1で得られたウレタン系硬化性樹脂を用い、下記のウレタン系硬化性樹脂の試験方法Cにより試験した結果を、原料仕込み量および反応条件とともに表7に記す。
(試験方法C)
1) ウレタン系硬化性樹脂中の未反応HDIモノマー含有量の測定
得られたウレタン系硬化性樹脂を試料とし、この試料を0.2g採取し10mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し試料溶解液とした。この試料溶解液を以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にかけ、得られたクロマトグラムのウレタン系硬化性樹脂のピーク面積とHDIモノマーのピーク面積とから、計算によりウレタン系硬化性樹脂中の未反応HDIモノマーの含有量(質量%)を求めた。
GPCの条件
装置:東ソー社製、HLC−8220 GPC
カラム:TSKgelSuperHM−MとSuper2000
溶離液:THF
検出器:RI
2) NMRによるアロファネート結合シグナルの有無の確認
得られたウレタン系硬化性樹脂の約50mgを、化学シフト基準としてテトラメチルシラン約500ppmを含むクロロホルム−d(CDCL)約0.5gに溶解したものを試料溶液として、下記のNMR分光計を用い、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)スペクトルを測定し、得られたスペクトル中にアロファネート結合による8.5ppm付近のシグナルが認められるものをアロファネート結合シグナルありとし、認められないものをなしとした。
装置:日本ブルカー社製DPX−400型フーリエ変換核磁気共鳴分光計
3)硬さ試験
得られたウレタン系硬化性樹脂を離型紙上に、厚さ約3mmとなるように泡を巻き込まないように注意して流し、23℃、50%相対湿度の室内に1週間放置し、厚さ約3mmの硬化シートを作製した。この硬化シートを50mm×50mmの短冊状に切り取り、3枚重ねたものを試験体とした。
この試験体を用い、JIS K 6253(1997、確認2001)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」の「5.デュロメータ硬さ試験」によりタイプAデュロメータを用い、タイプA硬さを測定した。
(1液湿気硬化型シーリング材の製造と試験D)
参考例2
加熱、冷却装置および窒素シール管付混練容器に、窒素ガスを流しながら、参考例1で得たウレタン系硬化性樹脂A−Iを1,000g仕込み、攪拌しながら、フタル酸ジイソノニルを750gと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX1010、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕)を10gと、親水性コロイド状シリカ(トクヤマ社製、レオロシールQS102)を150g仕込み、内容物が均一になるまで混練した。次いで硬化促進触媒としてジブチル錫ジラウレート(日東化成社製、ネオスタンU−100)を1g添加し、均一になるまでさらに30分間混練した後、50〜100hPaで減圧脱泡し、紙製のカートリッジ状容器に充填密封して、ペースト状の1液湿気硬化型シーリング材S−Iを製造した。
参考例3
参考例2と同様の混練容器に、窒素ガスを流しながら、参考例1で得たウレタン系硬化性樹脂A−Iを1,000g仕込み、攪拌しながら、フタル酸ジイソノニルを750gと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX1010、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕)を10gと、それぞれ予め100〜110℃の乾燥機中で乾燥し、水分含有量を0.05質量%以下にした、酸化チタン50gと重質炭酸カルシウム200gを順次仕込み、内容物が均一になるまで混練した。次いで親水性コロイド状シリカ(トクヤマ社製、レオロシールQS102)を150g仕込み、内容物が均一になるまでさらに混練した後、硬化促進触媒としてジブチル錫ジラウレートを1g添加し、均一になるまでさらに30分間混合した後、50〜100hPaで減圧脱泡し、紙製のカートリッジ状容器に充填密封して、ペースト状の1液湿気硬化型シーリング材S−IIを製造した。
参考比較例2
参考例2において、ウレタン系硬化性樹脂A−Iの代わりに、参考比較例1で得たウレタン系硬化性樹脂比較A−Iを使用した以外は同様にして、ペースト状の1液湿気硬化型シーリング材比較S−Iを製造した。
参考比較例3
参考例3において、ウレタン系硬化性樹脂A−Iの代わりに、参考比較例1で得たウレタン系硬化性樹脂比較A−Iを使用した以外は同様にして、ペースト状の1液湿気硬化型シーリング材比較S−IIを製造した。
(シーリング材の試験方法D)
参考例2、3および参考比較例2、3で得られた1液湿気硬化型シーリング材を用い、下記のシーリング材の試験方法Dにより試験をした結果を配合組成とともに表8に記す。
(試験方法D)
1) シーリング材中の未反応HDIモノマーの含有量の測定
前記シーリング材の試験方法Bに記載の方法と同様の方法で、シーリング材中の未反応HDIモノマーの含有量(質量%)を測定した。なお、表8においては、Hは1,000gとなる。
2) スランプ
前記シーリング材の試験方法Bに記載の方法と同様の方法で、23℃におけるスランプ(縦)を測定した。
3) 引張接着性
前記シーリング材の試験方法Bに記載の方法と同様の方法で、引張接着性の試験をした。なお、加熱後の引張接着性の加熱温度は、80℃とした。
Figure 2010235921


Figure 2010235921

Claims (12)

  1. 有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを、イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数で表される反応モル比が1.3〜2.1となる量比で反応して得られる、分子内にアロファネート結合を有するイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有することを特徴とする硬化性組成物。
  2. 有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを反応して得られるイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有する硬化性組成物において、
    (イ)該イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)が、分子内にアロファネート結合を含有し、かつ
    (ロ)該硬化性組成物を水分により硬化した硬化物の引裂き強さが14N/mm以上である、
    ことを特徴とする硬化性組成物。
  3. 有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを反応して得られるイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有する硬化性組成物において、
    (イ)該イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)が、分子内にアロファネート結合を含有し、かつ
    (ハ)該イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)中の未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量が、反応の後に未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の除去操作をすることなしに1.0質量%以下である、
    ことを特徴とする硬化性組成物。
  4. 前記イソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)の(アロファネート結合量×100)/(アロファネート結合量+ウレタン結合量)で表されるアロファネート化率が、3〜35%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  5. 前記有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)との反応における反応触媒が、ビスマスと脂肪酸の塩および/またはジルコニウムと脂肪酸の塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  6. 前記有機ジイソシアネート化合物(a)が、分子量500以下の低分子量の脂肪族系ジイソシアネートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  7. 前記脂肪族系ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項6に記載の硬化性組成物。
  8. 高分子ジオール(b)が、数平均分子量が2,000以上のポリオキシアルキレン系ジオールである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  9. さらに、硬化促進触媒、充填剤、可塑剤、耐候性安定剤、揺変性付与剤、接着性付与剤、貯蔵安定性向上剤、着色剤および有機溶剤からなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤(B)を配合してなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  10. 前記硬化性組成物中に存在する未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)の含有量が、硬化性組成物全体の0.5質量%以下である、請求項9に記載の硬化性組成物。
  11. 前記硬化性組成物を水分により硬化した硬化物が、JIS A 1439(2004年)「建築用シーリング材の試験方法」の「5.17耐久性試験」に定める耐久性の区分9030に相当する性能を有する、請求項9又は10に記載の硬化性組成物。
  12. 有機ジイソシアネート化合物(a)と高分子ジオール(b)とを、イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数で表される反応モル比が1.3〜2.1となる量比で、反応温度100〜180℃の条件で反応する工程(I)を実施し、反応後に未反応の有機ジイソシアネート化合物(a)を除去する工程(II)を実施しないことを特徴とする、分子内にアロファネート結合を有するイソシアネート基含有ウレタン系硬化性樹脂(A)を硬化成分として含有する硬化性組成物の製造方法。
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