JP5200758B2 - 硬化性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する、毒性が低く環境に対する悪影響を改善した硬化性組成物に関する。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する硬化性組成物は、硬化後の接着性やゴム弾性などの諸特性が良好なことより、建築用、土木用、自動車用などの接着剤、シーリング材、塗料など多方面に使用されているが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのウレタン基は水素結合を作り凝集力が強いため、接着性やゴム弾性などが優れている反面、その凝集力の強さゆえにウレタンプレポリマーは粘度が高く、これを含有する硬化性組成物の粘度もまた高くなり、作業性が悪いという欠点を有している。そのため、硬化性組成物の粘度を下げ、塗布や充填等の作業性を向上させるため有機溶剤を使用する必要があり、従来から、ウレタンプレポリマーに対して溶解性に優れ、かつ安価であるという利点からトルエンやキシレンなどの芳香族系有機溶剤が汎用的に使用されている。しかしながら、芳香族系有機溶剤は直接的には作業者の健康を害し、間接的には大気中に放散することにより環境を汚染し、ひいては人や動植物の健康や生命などに被害を及ぼす原因となり、また居住空間に放散された場合、シックハウス症候群を起こす原因物質とされている。
近年の地球環境を守ろうという意識の高まりの中で、溶剤として前記のような芳香族系有機溶剤を使用しない製品が強く望まれている。
上述の問題を解決するため、過去に本出願人は炭酸エステル系有機溶剤を使用することを見出し、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、炭酸エステル系有機溶剤と、水分反応性化合物とを配合した硬化性組成物、ならびにイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、オキサゾリジン化合物と硬化促進剤と炭酸エステル化合物を配合した硬化性組成物を提案した(特許文献1および特許文献2参照)。しかし、これらは貯蔵安定性や発泡防止性に優れているという利点はあるものの、毒性のない硬化性組成物を得るため、炭酸カルシウム等の無機系充填剤が存在する系で、溶剤として炭酸エステル系有機溶剤のみを使用した場合、粘度が高くなり、作業性が低下してしまうという欠点があることが解った。
また、ジメチルカーボネートを溶媒の主成分とする毒性や悪臭のない有機溶剤タイプの接着剤も開示されているが(特許文献3参照)、前記同様低温時における作業性が劣る欠点を有する。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとオキサゾリジン化合物の組み合せに、ナフサ系炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン系炭化水素の1種以上の有機溶剤を配合する湿気硬化性ウレタン組成物も開示されている(特許文献4参照)。しかし、これは、発泡防止性に優れ、有機溶剤中毒予防規則に定める有機溶剤を含有していないという利点は有するものの、ウレタンプレポリマーやヒンダードアミン系光安定剤等の添加剤に対する溶解性に乏しいという欠点を有する。
特開2006−36881号公報 特開2007−284547号公報 特開平9−279110号公報 特開2003−268066号公報
本発明は、上記問題を解決して、貯蔵安定性に優れ、特に毒性がなく(あるいは毒性が低く)、環境に対し悪影響の小さな、かつ粘度が低いことによる作業性が良好な硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題に鑑み研究した結果、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと充填剤や揺変性付与剤とを含有する硬化性組成物に、有機溶剤として炭酸エステル溶剤とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤を組み合わせて使用することにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、
(1) イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、充填剤(B−1)と、炭酸エステル溶剤(C)としてジメチルカーボネートと、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)とを含有する硬化性組成物であって、前記ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)のナフテンの含有量が20〜100質量%で、芳香族分の含有量が1質量%以下であり、前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)との使用割合が、質量比で溶剤(D)/溶剤(C)=30/70〜80/20であり、かつ、前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)以外の溶剤の含有量が、硬化性組成物全体の5質量%以下であること、を特徴とする前記硬化性組成物である。
あるいは、
(2) イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、揺変性付与剤(B−2)と、炭酸エステル溶剤(C)としてジメチルカーボネートと、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)とを含有する硬化性組成物であって、前記ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)のナフテンの含有量が20〜100質量%で、芳香族分の含有量が1質量%以下であり、前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)との使用割合が、質量比で溶剤(D)/溶剤(C)=30/70〜80/20であり、かつ、前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)以外の溶剤の含有量が、硬化性組成物全体の5質量%以下であること、を特徴とする前記硬化性組成物である。
あるいは、
(3) イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、充填剤(B−1)と、揺変性付与剤(B−2)と、炭酸エステル溶剤(C)としてジメチルカーボネートと、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)とを含有する硬化性組成物であって、前記ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)のナフテンの含有量が20〜100質量%で、芳香族分の含有量が1質量%以下であり、前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)との使用割合が、質量比で溶剤(D)/溶剤(C)=30/70〜80/20であり、かつ、前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)以外の溶剤の含有量が、硬化性組成物全体の5質量%以下であること、を特徴とする前記硬化性組成物である。
そして、本発明においては、
(4) 前記充填剤(B−1)が、炭酸カルシウムであることが好ましく、
(5) 前記揺変性付与剤(B−2)が、脂肪酸類表面処理炭酸カルシウムであることが好ましい。
そして本発明において、
) さらに、充填剤(B−1)および揺変性付与剤(B−2)以外の添加剤(E)を配合することが好ましく、
) 前記添加剤(E)が、ヒンダードアミン系光安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤であることが好ましい。
また、本発明においては、
) 前記硬化性組成物の芳香族分の含有量が、1質量%以下であることが特に好ましい。
上述の構成をとることにより、本発明の硬化性組成物は、貯蔵安定性に優れ、特に毒性がなく(あるいは毒性が低く)、環境に対し悪影響を及ぼさないという特長を有しながら、粘度が低いことにより作業性に優れているという効果を奏するものである。
以下、本発明について詳しく説明する。
先ず、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)について説明する。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)は、有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物とを活性水素(基)に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得られるものであり、プレポリマー分子中に含有されるイソシアネート基が、湿気等の水分と反応し尿素結合を形成して硬化することにより、本発明の硬化性組成物において、硬化成分として含有されるものである。
具体的には、活性水素含有化合物と有機イソシアネート化合物とを、原料のイソシアネート基/活性水素(基)のモル比が1.2〜10/1.0、好ましくは1.5〜5.0/1.0となる範囲で同時あるいは逐次に反応させて、ウレタンプレポリマー(A)中にイソシアネート基が残存するようにして製造することができる。モル比が1.2/1.0を下回ると、得られるウレタンプレポリマー(A)の架橋点が少なくなりすぎ、硬化性組成物の硬化後の伸びや引張強度などが低下し、ゴム弾性物性や接着性が乏しいものとなり、モル比が10/1.0を超えると、湿気と反応したとき炭酸ガスの発生量が多くなり発泡の原因となるため好ましくない。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基含有量は0.3〜15.0質量%が好ましく、特に0.5〜5.0質量%が好ましい。イソシアネート基含有量が0.3質量%未満の場合は、プレポリマー(A)の粘度が高くなり作業性が悪化し、架橋点も少なく十分な接着性が得られず、イソシアネート基含有量が15.0質量%を超えると、湿気との反応による炭酸ガスの発生量が多くなり硬化物が発泡し、ゴム弾性物性も脆くなるため好ましくない。
製造方法としては、ガラス製やステンレス製などの反応容器に活性水素含有化合物と有機イソシアネート化合物とを仕込み、後述する反応触媒や有機溶剤の存在下あるいは不存在下に、50〜120℃で反応させる方法などが挙げられる。この際、イソシアネート基が湿気と反応すると、得られるウレタンプレポリマー(A)が増粘するため、窒素ガス置換、窒素ガス気流下などの湿気を遮断した状態で反応を行うことが好ましい。
なお、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)は、含まれるイソシアネート基が大気中の水分(湿気)と室温で反応硬化することにより、一液湿気硬化型として使用することができる。
前記有機イソシアネート化合物としては、有機ポリイソシアネートと、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の変性用として場合により用いる有機モノイソシアネートが挙げられ、さらに有機ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基が芳香族炭素に結合している芳香族系ポリイソシアネートとイソシアネート基が脂肪族炭素に結合している脂肪族系ポリイソシアネートが挙げられる。
芳香族系ポリイソシアネートとしては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、あるいはこれらの混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI類);2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートあるいはこれらの混合物等のトルエンジイソシアネート類(TDI類);この他フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート等の芳香環を有しかつイソシアネート基が脂肪族炭素に結合している芳香脂肪族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート等の鎖式炭化水素からなる脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環式炭化水素を有する脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、これらジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、または、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDIまたはポリメリックMDIとも称す。)なども挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、硬化後のゴム弾性や耐候性に優れている点で、芳香族系ポリイソシアネートの中ではMDI類が好ましく、脂肪族系ポリイソシアネートの中では、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の変性用として、場合により用いる有機モノイソシアネートとしては、n−ブチルモノイソシアネート、n−ヘキシルモノイソシアネート、n−オクタデシルモノイソシアネートなどの脂肪族系モノイソシアネートが挙げられる。
前記活性水素含有化合物としては、高分子ポリオールや高分子ポリアミンの他、場合により使用する鎖延長剤としての、低分子ポリオール、低分子アミノアルコール、低分子ポリアミン、あるいはイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の変性用として用いる高分子や低分子のモノオールなどが挙げられる。
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、炭化水素系ポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオール、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
高分子ポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量は、1,000〜100,000、さらに1,000〜30,000、特に1,000〜20,000が好ましい。数平均分子量が1,000未満では、得られる硬化性組成物の硬化後の伸びなどのゴム弾性物性が悪化し、100,000を超えると、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の粘度が高くなり過ぎ、作業性が悪化するため好ましくない。
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸;これら酸の無水物あるいはメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステルなどの1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種以上との;あるいはこれに加えてブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との脱水や脱アルコール縮合反応で得られる、ポリエステルポリオールまたはポリエステルアミドポリオールも挙げられる。
また、低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールも挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは前記低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられるのと同様の低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類、ポリカルボン酸の他;ソルビトール、マンニトール、ショ糖(スクロース)、グルコース等の糖類系低分子多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類の1種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは共重合(以下、「重合あるいは共重合」を(共)重合という。)させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ−(オキシエチレン)−(オキシプロピレン)−ランダムあるいはブロック共重合系ポリオール、さらに、前述のポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオールなどが挙げられる。また、これらの各種ポリオールと有機イソシアネート化合物とを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたポリオールも挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールの1分子当たり平均してアルコール性水酸基の数は2個以上、さらに2〜4個、特に2〜3個が好ましい。
さらに、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、その製造時に、水素化セシウム、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド等のセシウムアルコキシド、水酸化セシウムなどのセシウム系化合物、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、ホスファゼニウム化合物、複合金属シアン化錯体など、なかでも亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体を触媒として使用して得られる、総不飽和度が0.1meq/g以下、さらに0.07meq/g以下、特に0.04meq/g以下のものが好ましく、分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比=Mw/Mn〕が1.6以下、特に1.0〜1.3の狭いものが、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の粘度を低下でき、かつ得られる硬化性組成物の硬化後のゴム弾性物性が良好となる点で好ましい。
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコール類を開始剤として、前記プロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加重合させたポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオールなどを場合により使用することもできる。
なお、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールあるいはポリオキシアルキレン系モノオールなどの「系」とは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、さらに80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィンなどで変性されていてもよいことを意味するが、水酸基を除いた分子の95質量%以上がポリオキシアルキレンから成るものが最も好ましい。
炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオールなどが挙げられる。
ポリ(メタ)アクリレート系ポリオールとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリレート単量体類と他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを、ラジカル重合開始剤の存在下あるいは不存在下に共重合したものが挙げられる。
動植物系ポリオールとしては、例えば、ヒシマ油ジオールなどが挙げられる。
鎖延長剤としては、前記のポリエステルポリオールの合成に用いられるのと同様の低分子のポリオール類、ポリアミン類、アミノアルコール類の他、前述のポリオキシアルキレンポリオールで、数平均分子量が1,000未満の低分子量のもの、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
前記の活性水素含有化合物として挙げた化合物は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができるが、これらのうち、得られる硬化性組成物のゴム弾性物性や接着性が良好な点で、高分子ポリオールが好ましく、さらにポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましく、ポリオキシプロピレン系ポリオールが最も好ましい。
次に、本発明の硬化性組成物において使用される、充填剤(B−1)と揺変性付与剤(B−2)について説明する。
充填剤(B−1)は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)からなる硬化性組成物に、補強や増量を目的として配合する添加剤の一種であり、無機系充填剤と有機系充填剤が挙げられる。無機系充填剤としては、天然の炭酸カルシウムを粉砕した重質炭酸カルシウムあるいは沈降炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムと称される微粉状の合成炭酸カルシウム等の炭酸カルシウムの他、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、無水ケイ酸、石英、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等の無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維等の無機系繊維状充填剤;ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、セラミックバルーン等の無機系バルーン状充填剤などが挙げられる。有機系充填剤としては、木粉、クルミ穀粉、もみ殻粉、パルプ粉、ゴム粉末、熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂の粉末等の有機粉末状充填剤;ポリエチレンバルーン、サランマイクロバルーン等の有機系バルーン状充填剤などが挙げられる。この他水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの難燃性付与充填剤なども挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのうち補強や増量の効果が高い点で、無機系充填剤が好ましく、さらに炭酸カルシウムが好ましく、特に重質炭酸カルシウムが好ましい。なお、充填剤の粒径としては0.01〜1,000μmが好ましい。
充填剤(B−1)の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、1〜500質量部、さらに10〜300質量部、特に10〜200質量部が好ましい。1質量部未満では得られる硬化性組成物の補強や増量の効果がなく、500質量部を超えると硬化物が脆いものとなり好ましくない。
揺変性付与剤(B−2)は、本発明の硬化性組成物を接着剤、シーリング材、塗料などとして使用する場合、建築内外壁や床面などの垂直面や傾斜面に、塗布や充填等の施工をしたときタレや流れを起こさないようにするため、硬化性組成物に揺変性を付与する目的で使用する添加剤の一種である。揺変性付与剤としては、親水性や疎水性のコロイダルシリカ等の微粉状シリカ、脂肪酸類表面処理炭酸カルシウム等の無機系揺変性付与剤;有機ベントナイト、脂肪酸アマイド等の有機系揺変性付与剤などが挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて使用できるが、これらのうち硬化性組成物に安定した揺変性を付与することができる点で、無機系揺変性付与剤が好ましく、さらに脂肪酸類表面処理炭酸カルシウムが好ましい。
脂肪酸類表面処理炭酸カルシウムとしては、沈降炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムと称される微粉状の合成炭酸カルシウム、あるいは天然の炭酸カルシウムを粉砕して微粉状にした重質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウムの表面を、揺変性付与能力を与える目的と二次凝集を防ぐ目的で、脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸金属塩、ロジン酸等の樹脂酸またはその金属塩などの脂肪酸類で処理したものが挙げられる。この脂肪酸としてはステアリン酸等の炭酸数10〜25の脂肪酸が挙げられ、その金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩などが挙げられる。これらの市販品としては、白石工業社の白艶華CC、白艶華CCR、白艶華R06、VIGOT−10、VIGOT−15、STAVIGOT−15A;日東粉化工業社のNCC#3010、NCC#1010などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できるが、これらのうち揺変性付与効果が高い点で、脂肪酸または脂肪酸金属塩で表面処理した合成炭酸カルシウムが好ましく、さらにステアリン酸またはステアリン酸ナトリウム塩で表面処理した合成炭酸カルシウムが好ましい。なお、本発明においては脂肪酸や樹脂酸のアルキルエステルや金属塩も含めて脂肪酸類と称す。
この脂肪酸類表面処理炭酸カルシウムの平均粒径は、0.01〜1.0μm、さらに0.03〜0.3μmが好ましく、BET比表面積は5〜200m/g、さらに10〜60m/gが好ましい。平均粒径が0.01μmを下回るか、あるいはBET比表面積が200m/gを超えると得られる硬化性組成物の粘度が上がり作業性は悪化し、平均粒径が1.0μmを上回るか、あるいはBET比表面積が5m/gを下回ると揺変性付与効果が低下するため好ましくない。
揺変性付与剤(B−2)の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して1〜200質量部、さらに5〜150質量部が好ましい。1質量部を下回ると揺変性付与効果がなくなり、200質量部を超えると得られる硬化性組成物の粘度が上がり作業性が悪化するため好ましくない。
なお本発明においては、硬化性組成物の用途に応じて、前記充填剤(B−1)と揺変性付与剤(B−2)をそれぞれ単独で使用してもよいし、硬化性組成物に対し、補強や増量とともに揺変性を付与することを目的として、充填剤(B−1)と揺変性付与剤(B−2)を組み合わせて使用してもよい。
次に、本発明における炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)とを組み合わせた有機溶剤について説明する。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)に充填剤(B−1)あるいは揺変性付与剤(B−2)を配合してなる硬化性組成物に、粘度低下を目的として炭酸エステル溶剤(C)だけを使用した場合、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)や、さらに使用する後述のヒンダードアミン系光安定剤等の耐候性向上剤などに対する溶解性は良好であるが、炭酸エステル溶剤(C)の極性が高く充填剤(B−1)や揺変性付与剤(B−2)の分散性が低下するためと推察されるが、得られる硬化性組成物の粘度が高くなり、押出しや塗布等の施工作業性が低下してしまうという問題が生じ、また、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)だけを使用した場合、ウレタンプレポリマー(A)や後述のヒンダードアミン系光安定剤等の耐候性向上剤などの溶解性が乏しく、得られる硬化性組成物が不均質となり、外観の悪化などの性能不良を生じてしまうが、炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)を組み合わせて使用すると、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)や耐候性向上剤などに対する優れた溶解性を維持しながら、得られる硬化性組成物の粘度上昇を防止し、施工作業性が良好なものとなる効果を奏する。
炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)との組み合わせにおいて、溶剤(C)に対する溶剤(D)の使用割合は、質量比で溶剤(D)/溶剤(C)=30/70〜80/20である。また、炭酸エステル溶剤(C)に対するナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)中のナフテン(一般市販品のカタログにおいてはナフテン分とも記載されている。)の使用割合は、質量比でナフテン/炭酸エステル溶剤(C)=5/95〜90/10、さらに20/80〜80/20が好ましい。炭酸エステル溶剤(C)に対するナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)の使用割合が30/70を下回るか、炭酸エステル溶剤(C)に対するナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)中のナフテンの使用割合が5/95を下回ると、硬化性組成物の粘度が上昇し、施工作業性が低下し、それぞれ80/20を上回るとイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)や耐候性向上剤の溶解性が低下し好ましくない。
炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)と、必要に応じ使用する後述の他の溶剤を含めた有機溶剤の総使用量は、硬化性組成物全体の1〜40質量%、さらに3〜30質量%となる量が好ましい。1質量%未満では硬化性組成物の粘度低下の効果が小さく、40質量%を超えると、本発明において使用する有機溶剤自体の毒性が低くても、硬化の過程において大気中に放散される有機溶剤の量が多くなり、環境に対して悪影響を及ぼすため好ましくない。なお、この使用量は硬化性組成物の用途が接着剤や塗料の場合に好適に適用され、用途がシーリング材の場合は、有機溶剤の総使用量は、前記同様の理由により、シーリング材全体の1〜10質量%が好ましく、さらに1〜4質量%が好ましい。
炭酸エステル溶剤(C)とは、溶解性が良好な点で、ジメチルカーボネートである。
ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)は炭化水素溶剤中に少なくともナフテン(ナフテン系炭化水素化合物)を含有する脂肪族系の有機溶剤であり、ナフテン単独またはナフテンとパラフィン(パラフィン系炭化水素化合物)の混合液体であり、石油の留分または石油留分を水素添加して得られるものが挙げられる。ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)の初留点は、80〜300℃、さらに100〜250℃が好ましい。初留点が80℃未満では引火の危険性が高まり、300℃を超えると蒸発が遅くなるため好ましくない。
ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)の一般市販品としては、エクソン化学社のエクソールシリーズのDSP100/140、D30、D40、D80、D110、D130;シェル化学社のシェルゾールシリーズのD60、D70;丸善石油化学社のスワクリーン150などが挙げられる。
ナフテンとしては、具体的には、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、メチルエチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物(シクロアルカン)のそれぞれ単独または2種以上の混合物が挙げられる。
なお、シクロヘキサンもナフテン系化合物の一種であるが、引火点(−20℃)が低く、かつ凝固点(6.5℃)が高いため、発火の危険性が大きく取り扱いが困難で、得られる硬化性組成物の低温時の作業性を低下させるため、使用しないのが好ましい。
また、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)中のナフテンの含有量は、20〜100質量%であり、30〜100質量%が好ましい。ナフテンの含有量が20質量%未満では、パラフィン分の含有量が多くなり、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)などの溶解性が低下する。
なお、本発明の目的を達成する上で、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)中の有機溶剤成分としての揮発性の芳香族炭化水素(本発明においては芳香族分とも称す。)の含有量が、1質量%以下であり、0.5質量%以下であることが好ましい。これにより、得られる本発明の硬化性組成物全体に含有される揮発性芳香族炭化水素化合物(芳香族分)の含有量が1質量%以下、さらに0.2質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下となり、特に毒性が低く環境に対し悪影響のない優れたものとなるのである。
本発明において、炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)にさらに、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤など従来公知の有機溶剤でイソシアネート基に反応しない他の溶剤を併用する場合、前述の健康保護や環境保護の目的で、トルエンやキシレン等の芳香族系の有機溶剤を使用しない必要があり、この使用する他の溶剤の使用量は、硬化性組成物全体の5質量%以下にする必要があり、4質量%以下に抑えるのが好ましい。
次に、本発明において、前記(A)、(B−1)、(B−2)、(C)および(D)成分に加えて、さらに配合することが好ましい、耐候性向上剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤、着色剤、可塑剤、硬化促進触媒などについて説明する。これらは前記充填剤(B−1)および揺変性付与剤(B−2)以外の添加剤(E)に属し、これら添加剤(E)およびこれら添加剤(E)中に挙げる後述の各化合物はそれぞれ単独または2種以上組み合わせて使用できる。
耐候性向上剤は、硬化物の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐候性だけでなく耐熱性を更に向上させるために使用されるものであり、具体的に、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの他、ADEKA社の商品名アデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87等の分子量1,000未満の低分子量のヒンダードアミン系光安定剤;同じくアデカスタブシリーズのLA−63P、LA−68LD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LD等の分子量1,000以上の高分子量のヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオアミド]、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系などが挙げられる。
これらのうち耐候性を向上させる効果が高い点と、前記炭酸エステル溶剤(C)成分とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)成分の組み合わせの効果を最大限に利用できる点で、ヒンダードアミン系光安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。なお、本発明において「および/または」とは、それぞれを組み合わせて使用してもよいし、それぞれを単独で使用してもよいことを意味する。
耐候安定剤は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.01〜30質量部、特に0.1〜10質量部配合するのが好ましい。
接着性向上剤は、硬化性組成物の接着性向上のために使用するが、カップリング剤の他に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキルチタネート類、有機ポリイソシアネートなどが挙げられる。カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系などの各種カップリング剤および/またはその部分加水分解縮合物を挙げることができ、このうちシラン系カップリング剤および/またはその部分加水分解物が接着性に優れているので好ましい。
このシラン系カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノメチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのアルコキシシリル基を含有する分子量500以下、好ましくは400以下の低分子化合物および/またはこれらシラン系カップリング剤の1種または2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200〜3,000の化合物を挙げることができる。
接着性向上剤の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部、さらに0.1〜5質量部が好ましい。
貯蔵安定性向上剤は、硬化性組成物の貯蔵中の安定性を向上させるために配合するものであり、貯蔵安定性向上剤としては、硬化性組成物中に存在する水分と反応し脱水剤として働く、前記ビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられ、これらのうちp−トルエンスルホニルイソシアネートが好ましい。
貯蔵安定性向上剤の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部、さらに0.1〜5質量部が好ましい。
着色剤としては、酸化チタンや酸化鉄などの無機系顔料、銅フタロシアニンなどの有機系顔料、カーボンブラックなどが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
可塑剤は、硬化性組成物の粘度を下げ作業性を良好なものにするため、あるいは硬化後の物性を調節するために使用するものであり、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、燐酸トリオクチル、燐酸トリクレジル等の燐酸エステル類、塩素化パラフィン等のハロゲン化脂肪族化合物などの分子量1,000未満の低分子量可塑剤;前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の合成において挙げたのと同様の、ポリオキシアルキレン系ポリオールやポリオキシアルキレン系モノオールの水酸基をアルキルエーテル化あるいはアルキルエステル化して封鎖した化合物、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、水素添加ポリブテン等のオレフィン系重合体などの分子量1,000以上の高分子量可塑剤などが挙げられる。
しかしながら、DOP等の低分子量の可塑剤は、硬化物の表面に移行(ブリード)し易いため、表面が粘着することにより大気中の塵芥が付着して表面汚染を発生する欠点があり、さらに河川や海洋などの環境中に漏れ出すと、内分泌かく乱物質いわゆる環境ホルモンという環境負荷物質となり生態系を乱す疑いを持たれており、使用するのは好ましいものではなく、これらの欠点が無い点で分子量1,000以上の、さらには分子量1,000〜20,000の高分子可塑剤が好ましい。
前記の理由により可塑剤の使用量も少量に抑えることが望ましく、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、さらに50質量部以下が好ましく、よりさらに20質量部以下が好ましく、0重量部と使用しないのが最も好ましい。
硬化促進触媒としては、テトラ−n−ブチルチタネート等の金属のアルコキシド;オクチル酸第一錫、オクテン酸錫等の、亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄等の金属とオクチル酸、オクテン酸、ナフテン酸等の有機酸との塩;ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)等の金属キレート化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属と有機酸との塩;トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の第3級アミン類、あるいはこれらのアミン類と有機酸との塩類などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち硬化を促進する効果が高い点で、金属キレート化合物や有機金属と有機酸との塩が好ましく、さらにジブチル錫ジラウレートが好ましい。硬化促進触媒の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部、さらに0.1〜5質量部が好ましい。0.001質量部未満では硬化促進の効果が出ず、10質量部を超えると硬化性組成物の貯蔵安定性や硬化物の耐水性、耐熱性を悪化させるため好ましくない。
本発明の硬化性組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス製等の反応容器中に有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を仕込み、ウレタン化反応触媒の存在下あるいは不存在下、有機溶剤の存在下あるいは不存在下に、窒素ガス気流下等の湿気を遮断した状態で、50〜120℃で0.5〜10時間加温して反応させ、予めイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を合成する。別に用意したステンレス製等の混練容器に、得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)、充填剤(B−1)や揺変性付与剤(B−2)、炭酸エステル溶剤(C)およびナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)を仕込む。さらに他の溶剤や(B−1)、(B−2)以外の添加剤を使用する場合は、これらの原料を仕込み、前記同様に湿気を遮断した状態で混練する。次いで減圧脱泡し、紙製、樹脂製あるいは金属製等のカートリッジ、ペール缶あるいは袋状の各種容器に充填し、密封して硬化性組成物製品を製造する方法が挙げられる。このときイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を合成したところに、充填剤(B−1)等の諸原料を仕込んでもよいし、あるいはまた、充填剤(B−1)、揺変性付与剤(B−2)、溶剤(C)、溶剤(D)、その他の添加剤の少なくとも一種以上を仕込んだ後、この中に有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物とを仕込みウレタン化反応を行うことにより、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を合成するとともに、硬化性組成物を得る方法も挙げられる。
なお、本発明の硬化性組成物は、用途に応じ一液型として、あるいは本願発明の硬化性組成物を主剤とし、水やアミン化合物等を硬化剤とする二液型として用いることができるが、主剤と硬化剤を混合する手間がなく、また混合不良などの不具合もなく作業性に優れているため、一液湿気硬化型硬化性組成物として用いることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物の用途としては、建築用、土木用あるいは自動車用などの接着剤、塗料、シーリング材などが挙げられるが、前述の特徴を活用して、建築用や土木用の接着剤またはシーリング材、特に接着剤として使用するのが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物が施工の対象とする材料としては、モルタルやコンクリート等のセメント系材料、大理石等の天然石材料、サイディングやタイル等の窯業系材料、ポリエチレンや塩化ビニル等の各種合成樹脂製のシート状や板状の材料、木材や合板等の木質系材料などが、接着性などが良好なため好適なものとして挙げられる。
以下、本発明について実施例などにより更に詳細に説明する。
ここにおいて、硬化性組成物の例として一液湿気硬化型接着剤を示したが、これらに限定されるものではない。
〔合成例1〕イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1の合成
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および加温・冷却装置の付いた反応容器に、窒素ガスを流しながら、ポリオキシプロピレンジオール(旭硝子社品、エクセノール3021、数平均分子量3,300)を458gと、ポリオキシプロピレントリオール(三井化学ポリウレタン社品、Triol−MN−4000、数平均分子量4,000)を292gと、ジメチルカーボネート(DMC)を45g仕込み、攪拌しながら4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社品、ミリオネートMT、分子量250)を195gと、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート(日東化成社品、ネオスタン U−100)を0.1g加えたのち、加温して70〜80℃で反応し、イソシアネート基含有量が理論値(4.51質量%)以下となった時点で室温まで冷却し反応を終了し、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1を合成した。このときの反応時間は2時間、滴定による実測イソシアネート基含有量は4.35質量%であった。
得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1は、25℃における粘度10,000mPa・sの常温で透明な粘稠液体であった。また、ウレタンプレポリマーP−1の105g中のDMCの量は5gである。
実施例1
攪拌機、窒素ガス導入管および加温・冷却装置付き混練容器に、窒素ガスを流しながら、合成例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1を105g仕込み、攪拌しながら、予めそれぞれ100〜110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした脂肪酸類表面処理炭酸カルシウム(白石工業社品、白艶華CCR)を50gと重質炭酸カルシウムを145g仕込み、さらに溶剤としてジメチルカーボネート(DMC)を50gと、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤としてエクソールD40(エクソンモービル社品、ナフテン分50質量%、芳香族分0.03質量%)を50g順次仕込み、内容物が均一になるまで混合した。次いで、下記のヒンダードフェノール系酸化防止剤1gと、ヒンダードアミン系光安定剤1gと、シラン系カップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、サイラエースS510)を1gと、p−トルエンスルホニルイソシアネート1gを仕込み、さらに内容物が均一になるまで混合した。次いで、50〜70hPaで減圧脱泡し、ブリキ製の角型容器に充填、密封して、常温で粘稠なペースト状液体の一液湿気硬化型接着剤(S−1)を調製した。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤:
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX 1010、ペンタエ
リスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキ
シフェニル)プロピオネート]
ヒンダードアミン系光安定剤:
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CHIMASSORB 944LD、
ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−ト
リアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジ
ル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジ
ル)イミノ}]
実施例2
実施例1において、エクソールD40の代わりに、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤としてエクソールD30(エクソンモービル社品、ナフテン分67質量%、芳香族分0.01質量%)を50g使用し、ヒンダードアミン系光安定剤を使用しない以外は同様にして、常温で粘稠なペースト状液体の一液湿気硬化型接着剤(S−2)を調製した。
実施例3
実施例1において、DMCを37g使用し、エクソールD40の代わりに、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤としてスワクリーン150(丸善石油社品、C9およびC10のアルキルシクロへキサンの混合物、芳香族分1.0容量%以下)を47g使用し、さらにアセトンを16g使用した以外は同様にして、常温で粘稠なペースト状液体の一液湿気硬化型接着剤(S−3)を調製した。
実施例4
実施例3において、DMCを14g、スワクリーン150を70g使用し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用しない以外は同様にして、常温で粘稠なペースト状液体の一液湿気硬化型接着剤(S−4)を調製した。
比較例1
実施例1において、DMCを100g使用し、エクソールD40を使用しない以外は同様にして、常温で粘稠なペースト状液体の一液湿気硬化型接着剤(比較S−1)を調製した。
比較例2
実施例2において、エクソールD30を使用しないで、代わりにトルエンを50g使用した以外は同様にして、常温で粘稠なペースト状液体の一液湿気硬化型接着剤(比較S−2)を調製した。
比較例3
実施例3において、DMCを84g使用し、スワクリーン150を使用しない以外は同様にして、常温で粘稠なペースト状液体の一液湿気硬化型接着剤(比較S−3)を調製した。
比較例4
実施例4において、スワクリーン150を使用しないで、代わりにトルエンを70g使用した以外は同様にして、常温で粘稠なペースト状液体の一液湿気硬化型接着剤(比較S−4)を調製した。
実施例1〜4ならび比較例1〜4で得られた一液湿気硬化型接着剤(S−1)〜(S−4)ならびに(比較S−1)〜(比較S−4)を使用し、以下に記す試験方法により試験した結果を、配合組成とともに表1および2に示す。
また、ウレタンプレポリマーP−1中のDMCの量、溶剤中(接着剤中)のDMCの量、溶剤中(接着剤中)のナフテン(ナフテン分とも称す。)の量、ナフテンとDMCの比率および溶剤中の芳香族炭化水素(芳香族分とも称す。)の量について、配合組成および原料の組成を基に計算により求めた結果を表1および2に示す。
〔試験方法〕
(1)接着剤中の芳香族分の含有量
実施例および比較例で得た接着剤中の芳香族分の含有量を、表1および2の計算結果を基に以下の式により算出した。
なお、実施例3および4で使用したスワクリーン150の芳香族分含有量は容量%であるが、含有量が少ないため質量%と近似させて差し支えないとした。
Figure 0005200758

(2)粘度
JIS K 7117−1(1999)「プラスチック−液状、乳濁状又は分散状の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」および付属書1により、SB形回転粘度計を使用し、試験温度25℃における接着剤の粘度を測定した。
なお、スピンドルはSB4号を使用し、回転数6rpmまたは12rpmで測定した。
(3)はく離接着強さ
JIS A 5536(2003年)、「床仕上げ材用接着剤」の5.3.3はく離接着強さにより、90度はく離接着試験を行い、はく離接着強さが20N/25mm以上のものを○と評価した。
なお、下地材としてフレキシル板、試験用床材としてJIS A 5705に規定する市販のビニル床シートを用い、下地材に接着剤を塗布後約20分経過後、ビニル床シートを貼り付け、48時間養生後引張試験をした。
Figure 0005200758
Figure 0005200758

Claims (8)

  1. イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、充填剤(B−1)と、炭酸エステル溶剤(C)としてジメチルカーボネートと、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)とを含有する硬化性組成物であって、
    前記ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)のナフテンの含有量が20〜100質量%で、芳香族分の含有量が1質量%以下であり、
    前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)との使用割合が、質量比で溶剤(D)/溶剤(C)=30/70〜80/20であり、かつ、
    前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)以外の溶剤の含有量が、硬化性組成物全体の5質量%以下であること、
    を特徴とする前記硬化性組成物。
  2. イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、揺変性付与剤(B−2)と、炭酸エステル溶剤(C)としてジメチルカーボネートと、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)とを含有する硬化性組成物であって、
    前記ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)のナフテンの含有量が20〜100質量%で、芳香族分の含有量が1質量%以下であり、
    前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)との使用割合が、質量比で溶剤(D)/溶剤(C)=30/70〜80/20であり、かつ、
    前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)以外の溶剤の含有量が、硬化性組成物全体の5質量%以下であること、
    を特徴とする前記硬化性組成物。
  3. イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と、充填剤(B−1)と、揺変性付与剤(B−2)と、炭酸エステル溶剤(C)としてジメチルカーボネートと、ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)とを含有する硬化性組成物であって、
    前記ナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)のナフテンの含有量が20〜100質量%で、芳香族分の含有量が1質量%以下であり、
    前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)との使用割合が、質量比で溶剤(D)/溶剤(C)=30/70〜80/20であり、かつ、
    前記炭酸エステル溶剤(C)とナフテン含有脂肪族炭化水素溶剤(D)以外の溶剤の含有量が、硬化性組成物全体の5質量%以下であること、
    を特徴とする前記硬化性組成物。
  4. 前記充填剤(B−1)が、炭酸カルシウムである、請求項1または3に記載の硬化性組成物。
  5. 前記揺変性付与剤(B−2)が、脂肪酸類表面処理炭酸カルシウムである、請求項2または3に記載の硬化性組成物。
  6. さらに、充填剤(B−1)および揺変性付与剤(B−2)以外の添加剤(E)を配合する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  7. 前記添加剤(E)が、ヒンダードアミン系光安定剤および/またはヒンダードフェノール系酸化防止剤である、請求項6に記載の硬化性組成物。
  8. 前記硬化性組成物の芳香族分の含有量が、1質量%以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
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