JP2010235872A - リグニン含有複合体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【効果】リグニン複合体は、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂原料として利用できる。
【選択図】なし
Description
で表されるフルオレン骨格を有する化合物と、リグニンとを含むリグニン含有複合体である。
フルオレン骨格を有する化合物は、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する限り、特に制限されず、下記式(1)
で表される化合物であってもよい。
(b)環Aがベンゼン環又はナフタレン環であり、X1がヒドロキシル基であり、R1がC2−4アルキレン基であり、R2が、C1−6アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、R3がC1−6アルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−モノC1−6アルキルアミノ基であり、kが0〜2の整数であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0〜2の整数である化合物;
(c)環Aがベンゼン環であり、X1がヒドロキシル基であり、R1がC2−3アルキレン基であり、R2が、C1−4アルキル基又はフェニル基であり、R3がC1−4アルキル基、ヒドロキシル基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0又は1である化合物;
(d)環Aがベンゼン環であり、X1がヒドロキシル基であり、R1がC2−3アルキレン基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが0である化合物;及び
(e)環Aがベンゼン環であり、X1がヒドロキシル基であり、R1がエチレン基であり、R2がC1−3アルキル基であり、R3がC1−3アルキル基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0又は1である化合物。
リグニンは、植物の維管束細胞壁成分として存在する無定形高分子であり、フェニルプロパン系の構成単位を含む縮合体である。このリグニンを含有する物質(リグニン含有物質)としては、木材、草本類などが挙げられる。木材は、針葉樹と広葉樹とに大別され、針葉樹としては、マツ、スギ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤなどが挙げられる。広葉樹としては、シイ、サクラ、柿などが挙げられる。草本類としては、ケナフ、ワラ、バガス、亜麻、マニラ麻、黄麻、楮などが挙げられる。針葉樹に含まれるリグニン(針葉樹リグニン)は、グアイアシルプロパン構造を有していてもよく、広葉樹に含まれるリグニン(広葉樹リグニン)は、グアイアシルプロパン構造及びシリンギルプロパン構造を有していてもよく、草本類に含まれるリグニン(草本類リグニン)は、グアイアシルプロパン構造、シリンギルプロパン構造、及びp−ヒドロキシフェニルプロパン構造を有していてもよい。なお、メトキシ基の含量は、針葉樹リグニンで14〜17重量%程度、広葉樹リグニンで20〜23重量%程度、草本類リグニンで14〜15重量%程度であってもよい。
フルオレン骨格を有する化合物とリグノセルロース物質との加熱混合又は加熱処理(可溶化)は、リグノセルロース物質やフルオレン骨格を有する化合物の分解を抑制しつつ、可溶化を損なわない加熱温度で行うことができ、加熱温度は、例えば、100〜300℃(例えば、120〜250℃)で行うことができ、通常、150〜300℃(例えば、160〜300℃)、好ましくは165〜270℃(例えば、165〜250℃)、さらに好ましくは170〜250℃程度であってもよい。なお、加熱温度が低いと、反応生成物の粘度が高くなるようである。加熱混合は、不活性ガス雰囲気中、又は空気中で、常圧又は加圧下で行うことができる。
前記加熱混合(又は加熱処理)可溶化工程において、リグノセルロース物質の可溶化効率又は複合体の生成効率を高めるため、可溶化助剤成分を共存させてもよい。この助剤成分を併用すると、反応系の粘度の上昇を抑制できるとともに、フルオレン骨格を有する化合物の使用量を低減しても、複合体を効率よく得ることができる。
前記加熱混合系(可溶化系)に酸成分(又は酸触媒)を共存させると、リグニン含有物質を加水分解して可溶化を促進するとともに、フルオレン骨格を有する化合物とリグニンとの反応により複合体の形成を促進する。
本発明において、フルオレン骨格を有する化合物の種類に応じて、種々の反応開始剤を用いてもよい。例えば、フルオレン骨格を有する化合物がエポキシ基を有する場合、反応開始剤、例えば、第三級アミン類又は酸触媒を併用すると、エポキシ基とリグノセルロース物質のヒドロキシル基との反応による可溶化が期待できる。
本発明ではリグノセルロース物質を極めて小さな残渣率で可溶化できるため、必ずしも必要ではないが、加熱混合処理した後、水などの貧溶媒に注入して析出させて複合体を回収してもよく、加熱混合処理した後、溶媒を用いて反応生成物から複合体を溶出させて回収してもよい。さらに、必要であれば、溶出、沈殿操作などにより複合体を分離精製してもよい。
このようにして得られた複合体は複数の成分(フルオレン骨格を有する化合物、リグノセルロース物質を構成する成分)が反応していてもよく、混合物であってもよいが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィに供すると、通常、遊離の成分ではなく、単一又は複数のピークを有して一体化しているようである。
三口フラスコ(容量100mL)に9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF、大阪瓦斯(株)製)20g、木粉(日本杉、サイズ0.5mmの粉状物)10g、及び硫酸(濃度97%)0.2gを加え、180℃のオイルバスを用いて加熱し、撹拌した後、フラスコをオイルバスから外した。次に、室温まで冷却してから1,4−ジオキサンとメタノール(重量比:前者/後者=4/1)の混合溶媒を加え、均一に混合した。得られた混合液を濾紙(サイズ:B5)を用いて濾過し、その残渣率及びろ液のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量を評価した。この評価結果を表1及び図1に示す。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを14gにして、さらにグリセリン(ナカライテスク(株)製)6gを用いた点を除き、実施例1と同様に行った。残渣率及びろ液のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量を評価した結果を表1及び図2に示す。
オイルバスの温度を235℃にした点を除き、実施例2と同様に実施した。残渣率及びろ液のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量を評価した結果を表1及び図3に示す。生成物3.5gをテトラヒドロフラン(THF)5mLに溶解し、さらにビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)3gを加え、室温で20分撹拌した。得られた混合液をガラス基板又はテフロン(登録商標)基板上にキャストして、60℃送風乾燥機で2時間加熱した後、150℃で3時間処理した。得られた硬化物について、熱分析(TG−DTAの分析)を行った。また、鉛筆硬度、水接触角を評価した。結果を表2に示す。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF、大阪瓦斯(株)製)に代えて、ポリエチレングリコール(PEG400、ナカライテスク(株)製)を用いる以外、実施例1と同様にして複合物を得た。残渣率及びろ液のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量を評価した結果を表1及び図5に示す。得られた液化生成物から実施例3と同様の手順で硬化物を調製した。その硬化物について、熱分析(TG−DTAの分析)を行った。また、鉛筆硬度、水接触角を評価した。結果を表2に示す。
Claims (14)
- 下記式(1)
で表されるフルオレン骨格を有する化合物と、リグニンとを含むリグニン含有複合体。 - 式(1)で表されるフルオレン骨格を有する化合物と、リグニン含有物質とを加熱混合することにより得られる複合体。
- 酸成分の存在下、フルオレン骨格を有する化合物と、リグニン含有物質とを加熱混合する請求項2記載の複合体。
- リグニン含有物質が、木材、草本類、パルプ、及びパルプ含有成形体から選択された少なくとも一種で構成されている請求項2又は3記載の複合体。
- リグニン含有物質が、針葉樹及び広葉樹から選択された少なくとも一種の木粉である請求項2〜4のいずれかに記載の複合体。
- フルオレン骨格を有する化合物とリグニン含有物質とを、前者/後者=20/80〜80/20の割合(重量比)で用いる請求項2〜5のいずれかに記載の複合体。
- さらに、沸点が150℃以上であって、かつヒドロキシ化合物、窒素含有環式ケトン、アミド類、スルホキシド類から選択された少なくとも一種で構成される可溶化助剤成分を共存させて加熱混合して得られる請求項2〜6のいずれかに記載の複合体。
- ヒドロキシ化合物が多価アルコール及びフェノール類から選択される少なくとも一種で構成される請求項7記載の複合体。
- フルオレン骨格を有する化合物と、可溶化助剤成分とを、前者/後者=99/1〜50/50の割合(重量比)で用いる請求項7又は8記載の複合体。
- 複合体全体に対して、リグニンを10〜90重量%の割合で含む請求項1〜9のいずれかに記載の複合体。
- ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、又はエポキシ樹脂の原料である請求項1〜10のいずれかに記載の複合体。
- 式(1)で表される化合物と、リグニン含有物質とを加熱混合して、請求項1記載の複合体を製造する方法。
- 酸成分の存在下で加熱混合する請求項12記載の製造方法。
- 温度150〜300℃で加熱混合する請求項12又は13記載の製造方法。
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