JP2011256380A - リグニン系材料、その製造方法及びその利用 - Google Patents

リグニン系材料、その製造方法及びその利用 Download PDF

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正光 舩岡
Shinpei Horii
慎平 堀井
Mitsuru Aoyanagi
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Abstract

【課題】 リグノフェノール誘導体の構造可変性を維持しつつ、利用しやすいリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料を提供する。
【解決手段】
リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を、アルカリ性水性媒体に溶解し、前記リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和し、中和で得られた生成物を中和後の媒体に対する溶解性に基づいて回収するものとする。こうして得られたリグニン系材料は、リグノフェノール誘導体とは異なる熱的特性を有し、より利用に適したものとなっている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体から得られる新たな材料、その製造方法及びその用途に関する。
枯渇が予想される石油や石炭等の化石資源に代わる資源の一つとして、バイオマス資源が着目されている。バイオマス資源は、化石資源と比べて短期間で生産可能であり、適切な維持管理により持続的な供給が可能あり、さらに資源としての利用後に自然界で分解して新たなバイオマス資源として生まれ変わるといった、有用な資源として期待されている。中でもリグノセルロース系バイオマスに含まれるリグニンは、地球上に存在する炭素資源としてはセルロースに次ぐ質量で存在するとともに、循環及び再生利用可能な資源である。
既に、リグニンの有効利用を図るために、木材などのリグノセルロース系材料からリグニンを成形材料として利用しやすい形態で分離する方法が開発されてきている(例えば、特許文献1)。この方法では、リグノセルロース系材料を予めフェノール誘導体で溶媒和した上で濃酸と接触させることで、リグニンの基本骨格であるフェニルプロパンユニットの一定部位にフェノール誘導体が導入されて、1,1−ジフェニルプロパンユニット(以下、単にジフェニルプロパンユニットともいう。)が生成されるとともにβ−アリールエーテル結合の解裂によって低分子化されたリグノフェノール誘導体を得ることができる。
リグノフェノール誘導体は、天然リグニンに由来する多様な化学構造を含んでいる集合体として回収される。こうした集合体を利用するために、液体クロマトグラフィーによるカラム分離、有機溶媒の溶解度差による分画(特許文献2)、無機物への吸着分離(特許文献3)などが行われてきている。また、熱アニールにより、構造多様性を低減して熱的特性を均質化することも検討されている(非特許文献1)。非特許文献1には、リグノフェノール誘導体の熱アニールに関し、リグノフェノール誘導体は、耐熱性が低いが、200℃以上に熱アニールすることで、天然リグニン由来の未反応のベンジル位の水酸基等に他のフェノール性水酸基が結合して高分子化したり、さらに、このような結合が解裂したりするなどの反応が生じた結果、熱安定性(耐熱性)が向上することが報告されている。
さらに、こうしたリグノフェノール誘導体をアルカリで100〜180℃程度に加熱することで、特定構造のジフェニルプロパンユニットにおいてリグノフェノール誘導体が解裂しアリールクマラン構造を発現して低分子化することも知られている(特許文献4)。
特開平2−233701号公報 特開2008−214231号公報 特開2006−341151号公報 国際公開第WO99/14223号パンフレット
AOYAGI Mitsuru, IWASAKI Kunihisa, FUNAOKA Masamitsu, 2007, Trans Mater Res Soc Jpn, 32巻, 1119-1122
しかしながら、液体クロマトグラフィーによる分離では、十分な量を処理することができない。また、特許文献2に開示される有機溶媒の溶解度差を利用する分画では、有機溶媒を使用することから、処理量の増大を考慮するとき、環境やコストの観点から問題があった。さらに、特許文献3に開示される吸着分画では、吸着後にさらに多段工程が必要となる。
一方、熱アニールによれば、構造多様性を低減して熱的特性を均質化できるものの、本来的にリグノフェノール誘導体に内在する、リグノフェノール誘導体の構造可変性に関連する化学構造の一部が喪失されるおそれがあり、リグノフェノール誘導体の逐次利用性やリサイクル性が低下する場合があることがわかった。
さらに、特許文献4によるアルカリ処理では、リグノフェノール誘導体を低分子化できることは知られていたが、分子量による分画処理の観点からは何ら検討されていなかった。
以上のことから、リグノセルロース系材料から得られたリグノフェノール誘導体を有効に活用するための効率的な手法が求められていた。
そこで、本明細書の開示は、リグノフェノール誘導体の構造可変性を維持しつつ、利用しやすいリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、リグノフェノール誘導体を、アルカリ性の水性媒体に溶解後、酸で中和することによって、リグノフェノール誘導体を分子量分布の異なる画分に容易に分離できるという知見を得た。また、より高分子側の画分とより低分子側の画分とでは、その熱的特性が大きく相違し、高分子側画分は良好な熱的安定性が発現し、低分子側画分は可塑剤機能が発現するという知見を得た。本明細書は、こうした知見に基づき以下の開示を提供する。
本明細書の開示によれば、リグニン系材料の製造方法であって、リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を、アルカリ性水性媒体に溶解する工程と、前記リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和する工程と、前記中和工程で得られた1種又は2種以上の生成物を中和後の媒体に対する溶解性に基づいて回収する工程と、を備える、製造方法が提供される。
前記溶解工程における前記アルカリ性水性媒体はアルカリ水溶液であってもよい。また、前記回収工程は、前記媒体における不溶画分を回収する工程であってもよいし、前記媒体における可溶画分を回収する工程であってもよい。
本明細書の開示によれば、リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和して不溶画分として得られる、リグニン系材料が提供される。本リグニン系材料は、示差走査熱分析において実質的な発熱ピークを有しないであってもよいし、熱重量分析における5%質量減少温度が200℃以上であってもよい。
本明細書の開示によれば、リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和して可溶画分として得られる、リグニン系材料が提供される。この態様のリグニン系材料は可塑剤として用いることができ、リグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料に用いられてもよい。
本明細書の開示によれば、上記不溶画分由来のリグニン系材料と、上記可溶画分由来のリグニン系材料と、を含有する組成物が提供される。
本明細書の開示によれば、リグノフェノール誘導体の分画方法であって、リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を、アルカリ性水性媒体に溶解する工程と、前記リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和する工程と、前記中和工程で得られた1種又は2種以上の生成物を中和後の媒体に対する溶解性に基づいて分画する工程と、を備える方法が提供される。
実施例1におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1、ALC2)のサイズ排除クロマトグラフィーの測定結果を示す図である。 ヒノキリグノフェノール誘導体(a)及び当該リグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1)(b)のNMRのスペクトルを示す図である。 ヒノキリグノフェノール誘導体及び当該リグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1、ALC2)のFT−IRスペクトルを示す図である。 ヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1)の示差走査熱分析結果((a)1st及び(b)2nd)を示す図である。 熱的特性の測定結果を示す図である。 実施例2におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1、アルカリ濃度0.01N、0.1N及び1N)のサイズ排除クロマトグラフィーの測定結果を示す図である。 実施例2におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1、アルカリ濃度0.01N、0.1N及び1N)の熱的特性の測定結果を示す図である。 実施例3におけるカバリグノフェノール誘導体(a)及び当該リグノフェノール誘導体由来のALC1(b)のNMRのスペクトルを示す図である。 実施例3におけるカバリグノフェノール誘導体のFT−IRスペクトルを示す図である。 実施例3におけるカバリグノフェノール誘導体及び当該リグノフェノール誘導体由来のALC1の熱的特性の測定結果を示す図である。 実施例4におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1-K及びALC1-Na))の熱的特性(TMA)の測定結果を示す図である。 実施例4におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1-K及びALC1-Na))の熱的特性(TGA)の測定結果を示す図である。 実施例5におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1)と各種成分の組成物((a)〜(e))の熱的特性の測定結果を示す図である。 実施例6におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1及びALC2))の組成物の熱的特性(DSC)の測定結果を示す図である。 実施例6におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1及びALC2))の組成物の熱的特性(DSC)の測定結果を示す図である。 実施例6におけるヒノキリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料(ALC1及びALC2))の組成物の熱的特性(DSC)の測定結果を示す図である。
本明細書の開示は、リグノフェノール誘導体由来の新規なリグニン系材料、その製造方法及び用途に関する。本明細書に開示されるリグニン系材料は、リグノフェノール誘導体から水系の媒体で分画され、中和後の水系媒体不溶画分は、リグノフェノール誘導体に比して良好な熱的安定性を呈する一方、同水系媒体可溶画分は、可塑剤機能を呈する。また、水系媒体により簡易に分画されるため、環境やコストの面において有利である。
従来知られていたアルカリ処理では、アリールクマラン構造の発現により、リグノフェノール誘導体は低分子化してしまうため、得られるアリールクマランユニットを含むアルカリ処理誘導体は、熱安定性が低いことがわかっていた。しかしながら、本願発明者らは、アルカリ処理後に中和して得られる水系媒体不溶画分と水系媒体可溶画分とが、互いに機能的に異なるが相補しうる材料画分とになっていることを初めて見出したのである。本明細書の開示によれば、効率的に熱的安定性の良好なリグニン系材料を得ることができるとともに、可塑剤として利用できるリグニン系材料を得ることができる。
さらに、本リグニン系材料は、ベンジルアリールエーテル結合の解裂が推定されるもののリグノフェノール誘導体由来の水酸基を初めとする基本構造を維持しているため、構造可変性が維持されたものとなっている。
以下、本リグニン系材料、その製造方法並びに用途に説明する。
(リグニン系材料及びその製造方法)
本リグニン系材料は、リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を、アルカリ性水性媒体に溶解し、前記リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和し、中和工程で得られた生成物である。こうして得られるリグニン系材料は、中和後の媒体に対する溶解性で分画可能であり、中和後媒体の不溶画分として得られる第1のリグニン系材料及び可溶画分として得られる第2のリグニン系材料である。以下、これらリグニン系材料の製造方法について説明し、その後、生成物としての第1のリグニン系材料及び第2のリグニン系材料について説明する。
(リグニン系材料の製造方法)
本明細書に開示されるリグニン系材料の製造方法は、リグノフェノール誘導体をアルカリ性水性媒体に溶解する工程と、前記リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和する工程と、前記中和工程で得られた生成物を中和後の媒体に対する溶解性に基づいて回収する工程と、を備えることができる。
(リグノフェノール誘導体)
リグノフェノール誘導体は、リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされたジフェニルプロパンユニットを含むリグニン由来のポリマーである。リグノフェノール誘導体は、特開平2−233701号公報に開示されるように、リグニン含有材料をフェノール誘導体であらかじめ溶媒和した後、酸と接触させて得られるリグニン由来のポリマーである。
リグノフェノール誘導体に含まれるジフェニルプロパンユニットは、リグニンの基本ユニットであるフェニルプロパンユニットのα位(ベンジル位又は側鎖C1位)にフェノール誘導体がそのオルト位又はパラ位でグラフトしたユニットである。かかるジフェニルプロパンユニットは、特開平2−233701号公報、特開平9−278904号公報等に開示される方法によって得られるリグノフェノール誘導体が備える基本ユニットである。リグノフェノール誘導体におけるジフェニルプロパンユニットは、フェノール誘導体が、そのフェノール性水酸基のオルト位あるいはパラ位にてリグニン中のフェニルプロパンユニットのα位の炭素原子に結合して形成される。この反応では、フェノール誘導体は、前記α位に対して選択的に導入される。
ジフェニルプロパンユニットの要素である、リグニン由来のフェニルプロパンユニットのα位の炭素原子に結合されるフェノール誘導体としては、少なくとも一つのフリーの(無置換の)オルト位又はパラ位を有するものであれば、特に限定しないで、各種のフェノール及びその誘導体を用いることができる。すなわち、フェノール誘導体としては、無置換フェノール誘導体を含み、少なくとも一つの無置換のオルト位あるいはパラ位を有する各種置換形態のフェノール及びその誘導体の1種あるいは2種以上を適宜選択して用いることができる。
なかでも、少なくとも一つのフリーのオルト位を有するフェノール誘導体を用いることが好ましい。当該オルト位の炭素原子がフェニルプロパンユニットのα位に結合することで、当該結合炭素原子からみてオルト位に水酸基を備える形態でフェノール誘導体を含むジフェニルプロパンユニット(以下、オルト位結合ユニットという)が形成される。こうしたジフェニルプロパンユニットは、アルカリ下でアリールクマラン構造を含むアリールクマランユニットを形成することができる。選択的にオルト位結合ユニットを形成するには、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、オルト位及びパラ位のうちオルト位のみがフリーのフェノール誘導体を用いる。
フェノール誘導体としては、典型的には、p−クレゾール、2−ナフトール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられる。好適には、p−クレゾールや、2−ナフトールを用いることにより、高い導入効率を得ることができる。
フェノール誘導体が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、炭素数が1〜4、好ましくは炭素数が1〜3の低級アルキル基含有置換基である。低級アルキル基含有置換基としては、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)である。また、アリール基(フェニル基など)の芳香族系の置換基を有していてもよい。また、水酸基含有置換基であってもよい。
リグノフェノール誘導体は、通常、リグノセルロース系材料等の天然材料から取得されるため、得られるリグノフェノールにおける導入フェノール誘導体の量やその分子量は、原料となるリグニン含有材料のリグニン構造および反応条件により変動し、その性状や物性は必ずしも一定ではない。また、リグニンにおける基本ユニットであるフェニルプロパンユニットは各種の態様があり、これらの基本ユニットは植物の種類によって相違している。しかしながら、おおよそ一般にリグノフェノールは、質量平均分子量が2000〜20000程度で、分子内に共役系をほとんど有さずその色調は淡色である。
リグニン含有材料は、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップの他、廃材、端材、古紙などの木材資源に付随する農産廃棄物や工業廃棄物を挙げることができる。また用いる木材の種類としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用することができる。さらに、リグノセルロース系材料としては、各種草本植物、それに関連する農産廃棄物や工業廃棄物なども使用できる。また、リグニン含有材料としては、天然リグニンを含有する材料のみならず、リグノセルロース材料をパルピング処理した後に得られるいわゆる変性したリグニンを含有する廃液である黒液も利用することができる。
なお、リグノフェノール誘導体の製造方法を以下に記載する。リグニン含有材料又はリグニン含有材料中のリグニンを、予めフェノール誘導体により溶媒和する。リグニン含有材料をフェノール誘導体で溶媒和するには、液体のフェノール誘導体をリグニン含有材料に供給してもよいし、液体あるいは固体のフェノール誘導体を適当な溶媒に溶解してリグニン含有材料に供給してもよい。リグニン含有材料中のリグニンとフェノール誘導体とが十分に接触して親和できるように到達されればよい。十分にリグニンにフェノール誘導体が到達した後は、過剰なフェノール誘導体を留去してもよい。また、リグニン含有材料へのフェノール誘導体の送達に用いた溶媒を留去することが好ましい。フェノール誘導体による溶媒和は、具体的には、液体のフェノール誘導体にリグニン含有材料を浸漬したり、液体あるいは固体のフェノール誘導体を当該フェノール誘導体が溶解する溶媒に溶解させたものをリグニン含有材料に含浸させるなどして行うことができる。
次いで、フェノール誘導体で溶媒和したリグニン含有材料と酸を接触させる。ここで用いる酸としては、特に限定せず、リグノフェノール誘導体を生成しうる範囲で各種無機酸や有機酸を使用することができる。したがって、硫酸、リン酸、塩酸などの無機酸の他、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを使用することができる。リグニン含有材料としてリグノセルロース系材料を使用する場合には、セルロースを膨潤させる作用を有していることが好ましい。例えば、65質量%以上の硫酸(好ましくは、72質量%の硫酸)、85質量%以上のリン酸、38質量%以上の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。好ましい酸は、85質量%以上(好ましくは95質量%以上)のリン酸、トリフルオロ酢酸又はギ酸である。
リグニン含有材料中のリグニンを、リグノフェノール誘導体に変換し、分離する方法としては各種方法が採用できる。例えば、リグニン含有材料に、液体状のフェノール誘導体(例えば、p−クレゾール)を浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系材料に酸(例えば、72%硫酸)を添加し混合して、セルロース成分を溶解する。この方法によると、リグニンが低分子化され、同時にその基本構成単位のα位にフェノール誘導体が導入されたリグノフェノールが有機相に生成される。この有機相から、リグノフェノールが抽出される。リグノフェノールは、例えば、リグニン中のベンジルアリールエーテル結合が解裂して低分子化されたリグニンの低分子化体の集合体として得られる。
有機相からのリグノフェノールの抽出は、例えば、次の方法で行うことができる。すなわち、有機相を、大過剰のジエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶部を遠心分離により除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のジエチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒を留去し、リグノフェノールを得る。なお、粗リグノフェノールは、フェノール誘導体相やアセトン可溶区分を単に減圧蒸留により除去することによって得ることができる。また、リグニン含有材料に、固体状あるいは液体状のフェノール誘導体を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトン)を浸透させた後、溶媒を留去(フェノール誘導体の収着)した場合も、先の方法と同様、リグノフェノール誘導体が生成される。この方法においては、生成したリグノフェノール誘導体は、液体フェノール誘導体にて抽出分離することができる。あるいは、全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノール誘導体を抽出する。さらに、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、リグノフェノール誘導体を不溶区分として得ることもできる。
(アルカリ性水性媒体への溶解工程)
本工程は、リグノフェノール誘導体をアルカリ性水性媒体に溶解する。本工程で用いるアルカリ性水性媒体とは、特に限定しないが、Na、Kなどのアルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、さらには有機アミンなど適当なアルカリ性化合物を利用できる。水溶液として用いることを考慮すると、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。アルカリの種類及び強度は、リグノフェノール誘導体中の水酸基を解離させて、当該アルカリ性水性媒体に溶解可能とするものであればよい。好ましくは、さらにリグノフェノール誘導体中のC2−アリールエーテル結合の少なくとも一部を解裂可能とする程度である。適切なアルカリの種類及び強度は、リグノフェノール誘導体を用い、本溶解工程並びに後述する中和工程、必要に応じて実施することで予め確認することができる。
例えば、アルカリは、0.01N以上1N以下程度の範囲で適宜設定することができる。アルカリが弱すぎると解裂するC2アリールエーテル結合が少なく、得られる不溶画分の分子量も大きく、熱的安定性も向上しにくい。また、アルカリが強すぎると副反応のおそれもある。より好ましくは、0.05N以上0.5N以下程度であり、さらに好ましくは、0.075N以上0.15N以下程度である。
アルカリ性水性媒体は、好ましくは、アルカリを水に溶解したアルカリ水溶液である。水に相溶するアルコール等の有機溶媒を含むことを排除するものではないが、最終的なリグニン系材料の回収に寄与しない限り、コスト等を考慮すると有機溶媒を含んでいないことが好ましい。
本溶解工程は、リグノフェノール誘導体をアルカリ性水性媒体に投入するなどして、その一部がアルカリ性水性媒体に溶解した状態となればよい。完全に溶解することを要しない。多くのリグノフェノール誘導体は、適当なアルカリ性水性媒体に溶解するが、リグノフェノール誘導体の種類、例えば、原料のリグニン含有材料の種類やフェノール誘導体の種類、精製方法等の種類によっては、完全に溶解しない場合もある。用いたリグノフェノール誘導体が完全にアルカリ性水性媒体に溶解しない場合でも、本法によれば、アルカリ性水性媒体に溶解したリグノフェノール誘導体に由来するリグニン材料を得ることができる。なお、不溶画分は、公知の固液分離手段を用いて除去しておくことが好ましい。
本溶解工程におけるそのほかの条件、例えば、温度及び時間等は、適宜設定できるが、好ましくは、窒素雰囲気下、暗所にて、適当時間、例えば、数時間から96時間程度、好ましくは、24時間以上、より好ましくは48時間以上72時間以下静置する。
(中和工程)
本工程は、リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和する工程である。この工程では、リグノフェノール誘導体の水酸基を酸により再び遊離させることで、リグノフェノール誘導体由来で溶解工程、あるいは溶解工程から中和工程を通じて低分子化された生成物のうち、より高分子画分を中和後水性媒体に対する不溶画分として、より低分子画分を中和後水性媒体に対する可溶画分とに分離することができる。本工程によれば、中和といった簡易な操作で、溶解工程から中和工程を通じて得られる生成物を、中和後媒体に対する溶解性に基づき、高分子画分と低分子画分とに容易に分画することができる。
中和工程で用いる酸は、特に限定しないで、各種の無機酸、有機酸等を用いることができる。すなわち、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸のほか、酢酸、ギ酸等の有機酸が挙げられる。好ましくは、無機酸であり、より好ましくは塩酸である。酸の濃度は特に限定しないが、操作性を考慮すると、用いたアルカリの濃度の0.1〜100倍程度とすることができ、典型的には、0.1N以上2N以下程度とすることができる。
本工程における中和は、アルカリ性水性媒体に溶解したリグノフェノール誘導体又はその由来成分を、中和後媒体に少なくとも不溶画分として析出させる程度にまで、リグノフェノール誘導体を溶解したアルカリ性水性媒体に酸を添加することにより行う。したがって、いわゆるpH7近傍の中性領域から、さらに酸性の領域にまで酸を供給して中和することも包含する。適切な中和程度は、本工程及び後述する回収工程を実施し、得られる不溶画分の量や特性から適宜判断することができるが、例えば、pH5以下程度、好ましくはpH4以下程度、より好ましくはpH3以下程度、さらに好ましくはpH2以下程度まで中和する。酸性領域に中和することで、リグノフェノール誘導体中の多様な水酸基を遊離させ、遊離フェノール性水酸基量を増大させることができ、不溶画分量を増大させることができる。なお、pHは商業的に通常入手可能なpHメーターや試験紙によって行うことができる。
(回収工程)
本工程は、中和工程で得られた生成物を中和後の媒体に対する溶解性に基づいて回収する工程である。中和工程において中和後媒体に存在する生成物は、リグノフェノール誘導体に由来し溶解工程〜中和工程を通じて適宜低分子化されたものであって中和工程により不溶画分及び可溶画分に分画されている。本工程は、こうした少なくとも1つの画分を、回収する工程である。
不溶画分を回収するにあたっては、公知の固液分離手段を用いることができる。例えば、ろ過、沈降分離、浮上分離、遠心分離及びこれらの原理に基づく工業的な固液分離手段であってもよい。回収した固形分は、水等を用いて酸などを洗浄し、適宜乾燥してもよい。不溶画分として回収されるリグノフェノール誘導体由来の成分は、本明細書に開示されるリグニン系材料の一つであり、より高分子画分に相当する第1のリグニン系材料である。
可溶画分を回収するにあたっては、適当な固液分離手段を用いて、液体を回収し、さらに、適当な有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、クロロホルムなどの有機溶媒等を用いて可溶画分を抽出し、公知の回収方法によって、必要に応じて固形分として回収する。可溶画分として回収されるリグノフェノール誘導体由来の成分は、本明細書に開示されるリグニン系材料の一つであり、より低分子画分に相当する第2のリグニン系材料である。
以上説明したように、本明細書に開示されるリグニン系材料の製造方法によれば、簡易な方法によりリグノフェノール誘導体から2種類の画分、すなわち、高分子画分と低分子画分とを生成し、分画及び回収することができる。以上、本リグニン系材料の製造方法の具体例を説明したが、これらに限定されるわけではなく、これらに適宜改良を加えた方法で製造することもできる。以下、この方法によって得られるリグニン系材料について説明する。
(第1のリグニン系材料)
第1のリグニン系材料は、リグノフェノール誘導体を溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和して得られる材料であり、不溶画分として得られる材料である。第1のリグニン系材料は、以下の性質を有している。
(1)原料となるリグノフェノール誘導体よりも低分子化されている。具体的には、サイズ排除クロマトグラフィーによる重量平均分子量及び数平均分子量ともにリグノフェノール誘導体よりも低分子化されており、分散比Mw/Mnがより低くなっている。
(2)FT−IRによる官能基分布は、リグノフェノール誘導体とほぼ同等である。
(3)示差走査熱分析による実質的な発熱ピークを観察しない。
(4)示差走査熱分析によるガラス転移温度がリグノフェノール誘導体よりも上昇、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上上昇している。
(5)熱重量分析による5%質量減少温度が、リグノフェノール誘導体よりも上昇、好ましくは50℃以上、より好ましくは、80℃以上上昇している。10%質量減少温度が、リグノフェノール誘導体よりも上昇、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上上昇している。
(6)熱機械分析による相転移点が、リグノフェノール誘導体よりも上昇、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上上昇している。
質量減少温度とは、窒素ガスや空気を媒体として用いて熱質量分析を実施したとき、加熱前の物質質量に対して所定割合の質量の減少が生じる温度をいう。質量減少温度は、物質は加熱の過程で一部の構造の消失が生じ、質量減少という現象を生じる場合があることから、物質の耐熱性を示すためによく用いられる指標の一つである。例えば、加熱前から質量が5%減少したときの温度を5%質量減少温度、10%減少したときの温度を10%質量減少温度などという。本リグニン系材料の熱重量分析は、好ましくは窒素ガス下において、例えば、2℃〜20℃/分程度の昇温速度で200℃〜400℃程度までの適切な温度まで昇温することによって行うことができる。
示差走査熱分析において、実質的な発熱ピークを観察しないとは、示差走査熱分析の昇温過程において、原料リグノフェノール誘導体において同条件で観察された発熱ピークの発熱量の20%以下、このましくは10%以下の発熱ピークを観察しないことをいう。したがって、実質的な発熱ピークを観察するか否かは、原料となるリグノフェノール誘導体の種類によって異なるが、例えば、0.3mW/g以上の大きさの発熱ピークを観察しないこととしてもよい。また、好ましくは0.1mW/g以上の大きさの発熱ピークを観察しないこととしてもよい。示差走査熱分析は、例えば、窒素ガス下、20℃/分の程度の昇温速度で行うことができる。到達温度は、例えば、200℃〜300℃程度の範囲で適宜設定することができる。示差走査熱分析において実質的な発熱ピークは観察されない材料は、加熱における副反応が十分に回避又は抑制されている。
以上のことから、第1のリグニン系材料は、リグノフェノール誘導体よりも熱的安定性が向上し、耐熱性が向上しているといえる。したがって、第1のリグニン系材料は、より耐熱性の要求される加工や製品に適した成形材料となっている。また、第1のリグニン系材料は、公知の可塑剤や、後述する第2のリグニン系材料を可塑剤として用いて、適切なガラス転移温度、相転移点、5%質量減少温度などの熱的特性を必要に応じて低温にシフトさせることができる。
(第2のリグニン系材料)
第2のリグニン系材料は、リグノフェノール誘導体を溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和して得られる材料であり、可溶画分として得られる材料である。第2のリグニン系材料は、以下の性質を有している。
(1)原料となるリグノフェノール誘導体よりも低分子化されている。具体的には、サイズ排除クロマトグラフィーによる重量平均分子量及び数平均分子量ともにリグノフェノール誘導体よりも低分子化されており、Mw及びMnともに、約1000以下となっている。また、第1のリグニン系材料よりも分子量が小さい。
(2)FT−IRにおいて、官能基分布はほとんどリグノフェノール誘導体と同等であるなお、残留エーテルのエチル基の伸縮振動(2930cm−1)が増加し、約1713cm−1に非共役カルボニル基の伸縮振動(フェニルプロパンアルキル側鎖の水酸基のアルデヒド化)が観察される。
(3)他のポリマー、例えば、リグノフェノール誘導体、第1のリグニン系材料に対して可塑剤機能を発現する。すなわち、添加することにより、示差走査熱分析におけるガラス転移温度を低下させることができる。
以上のことから、第2のリグニン系材料は、各種ポリマー可塑剤、特にリグノフェノール誘導体や本明細書に開示される第1のリグニン系材料などのリグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料の可塑剤として利用できることがわかる。
(リグニン系材料の組成物及びその製造方法)
本明細書に開示されるリグニン系材料の組成物は、第1のリグニン系材料と第2のリグニン系材料とを含有している。本組成物によれば、バイオマス由来のリグノフェノール誘導体から得られ、必要に応じてガラス転移温度が容易に制御される組成物が提供される。かかる組成物は、必要な成形加工条件に応じてガラス転移温度が調整されているため、成形材料として好ましいものとなっている。
第1のリグニン系材料と第2のリグニン系材料とは、同一のリグノフェノール誘導体に由来する必要はなく、また、異なる原料、すなわち、リグニン含有材料の種類やフェノール誘導体の種類が異なっていてもよい。
本組成物においては、第1のリグニン系材料と第2のリグニン系材料との総質量に対して、第2のリグニン系材料を、適宜配合することができ、配合量の増大により可塑性発現量が大きくなり、ガラス転移温度などの熱的特性が低温にシフトする。第2のリグニン系材料の配合量は特に限定しないが、前記総質量の5質量%以上20質量%の範囲で配合することができる。
(リグニン系材料の可塑性の制御方法)
本明細書の開示によれば、リグノフェノール誘導体の可塑性などの熱的特性を制御する方法も提供される。すなわち、上記した溶解工程、中和工程及び回収工程を行うことによって第1のリグニン系材料を取得することより、リグノフェノール誘導体の熱的特性を安定化(高温化)又は向上する方法が提供される。また、第1のリグニン系材料に対して第2のリグニン系材料を配合することによる、第1のリグニン系材料の熱的特性を低温にシフト(調整)する方法が提供される。
(リグノフェノール誘導体の分画方法)
本明細書に開示されるリグノフェノール誘導体の分画方法は、リグノフェノール誘導体を、アルカリ性水性媒体に溶解する工程と、前記リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和する工程と、前記中和工程で得られた生成物を中和後の媒体に対する溶解性に基づいて分画する工程と、を備えることができる。本方法によれば、リグノフェノール誘導体を低分子化し、それぞれ熱的特性が異なる高分子画分と低分子画分に分画することができる。不溶画分として得られる高分子画分は成形材料として、また、可溶画分として得られる低分子画分は可塑剤として利用できる。
(第1のリグニン系材料を用いた成形体、その製造方法及び再利用方法)
第1のリグニン系材料を用いて成形体を得ることができる。本明細書で「成形体」とは、製品又は材料としての物をいう。第1のリグニン系材料は、リグノフェノール誘導体よりも耐熱性が良好であり、さらに、リグノフェノール誘導体由来の構造変換能を維持しているため、耐熱性に優れると同時にリサイクル性、逐次利用性、循環利用性の高い成形体となっている。
成形体における第1のリグニン系材料の存在形態は特に限定しない。成形体は、第1のリグニン系材料を含む樹脂相を有している。成形体の樹脂相は、第1のリグニン系材料のみからなっていてもよいし、他のポリマーとのブレンドであってもよい。また、他の可塑剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。また、第2のリグニン系材料を含んでいてもよい。成形体は樹脂相のみから形成されていてもよいが、樹脂相以外に他の成形材料を含んでいてもよい。こうした他の成形材料としては、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等の繊維状、粒状、チップ状等の各種形態の材料が挙げられる。第1のリグニン系材料を含む樹脂相とこうした他の成形材料との配合比は特に限定されないし、その配合状態も特に限定されない。例えば、樹脂相中に他の成形材料が分散さして樹脂相がマトリックスとなる形態であってもよいし、他の成形材料の間に樹脂相が分散して樹脂相が接着剤となる形態であってもよい。
こうした成形体は、例えば、第1のリグニン系材料、必要に応じて、第2のリグニン系材料や、他の樹脂や他の成形材料を用いて、公知の成形方法で製造することができる。第1のリグニン系材料は、リグノフェノール誘導体とは異なり、熱アニール工程を実施しなくとも良好な耐熱性を有し、加熱によって構造変換が発生しない(示差走査熱分析において実質的な発熱ピークが観察されない)。したがって、熱アニール工程を実施することなく、リグノフェノール誘導体よりも高い温度での成形加工が可能となっている。第1のリグニン系材料を用いた成形体は、例えば、第1のリグニン系材料を含む成形材料を、型を使用したり、ダイを通過させることなどによって所望の形状に成形されて得られる。成形方法として、例えば、射出成形、圧縮成形、繊維またはフィルムの押出、形材の押出、ガス流紡糸、粘着紡糸、支持体被覆などが挙げられる。本発明のポリエステル組成物は、メルト、粒子あるいは揮発性溶媒中の溶液などの任意の形態で使用することができる。
そして、第1のリグニン系材料にあっては、構造変換能が維持されているため、成形体の当初の用途が達成されたら、成形体から回収した第1のリグニン系材料、あるいは成形体中に存在する第1のリグニン系材料に対して、アルカリ処理を施すことで、第1のリグニン系材料をアリールクマラン体(国際公開第WO99/14223号パンフレット)として取得あるいは成形体から回収することができる。
以下、本発明を具体例を挙げて説明するが、この具体例は本発明を具体的に説明するものであって、本発明を限定するものではない。
(試験例1)
(リグノフェノール誘導体の合成(ヒノキリグノフェノール(p−クレゾールタイプ)))
リグノフェノールは50gの脱脂済みヒノキ(Chamaecyparis obtusa)木粉(60mesh pass)に25gのp−クレゾールを収着させ、500mLの72%硫酸を加え30℃、1時間、反応させた。酸を除去した後、沈殿を乾燥させ、アセトン1Lで抽出し、ジエチルエーテルを用いて精製した。精製後のエーテル不溶区分として木粉あたり27%の収率でリグノフェノール(p−クレゾールタイプ)エーテル不溶区分を得た。
(KBr法によるフーリエ変換赤外分光分析)
得られたリグノフェノール誘導体についてのFT−IRの結果、815cm−1(導入クレゾール芳香環隣接2水素の面外変角)、1000〜1400cm−1(グアイアシル骨格:3位にメトキシル基を持つ芳香環の側鎖の伸縮・変角・振動)、1450〜1600cm−1(芳香環炭素-炭素伸縮振動)、2930cm−1(メチル基/フェニルプロパンユニットプロパン側鎖C−H伸縮振動)、3000〜3700cm−1(水素結合を持つ水酸基)の特徴的な吸収ピークが観測された。なお、FT−IRは、島津製作所株式会社製FT−IR5000RFを用いて測定した。
(プロトン核磁気共鳴分析)
重水素化ピリジン/重水素化クロロホルム中で測定したNMRの結果、2.0〜2.3ppm(導入クレゾールメチル水素)、3〜4ppm(メトキシル基メチル水素)、4.8ppm(ベンジル水酸基水素)、5ppm(フェニルプロパン単位C2水素)、6.5〜7.5ppm(芳香環水素)ピークが観察された。日本電子株式会社製T−NMR500を用いて測定した。また、ここから算出された導入クレゾール量は0.75mol/C9、フェノール性水酸基量PhOH 1.15mol/C9、 脂肪族性水酸基量AliOH 1.08mol/C9であった。
(熱機械分析(TMA))
直径5mmのアルミニウムパンに10mgのリグノフェノールを入れ、表面にアルミニウム板を置き、その上に石英ニードルを配置して鉛直下向きに応力をかけ、150mL/分での窒素気流下、50〜300℃の温度範囲で2℃/分で加熱し、変位を観測した。セイコーインスツルメンツ株式会社製TMA−SSを用いて測定した。固液相転移点は159.2℃であった。
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))
1mg/1mLのTHF溶液をKF601、602、603、604(Shodex. Co.)の直列4カラムに1mL/分、40℃で流通し、ポリスチレンスタンダードで作成した検量線を用いて280nmの吸光度から算出した。液体クロマトグラフィーは(株)島津製作所LC−10システムを用いた。重量平均分子量(Mw)=8500、数平均分子量(Mn)=3000、分散比2.8であった。
(熱重量分析(TGA))
直径5mmのアルミニウムパンに5mgのリグノフェノールを入れ、 300mL/分での窒素気流下、50〜400℃の温度範囲で2℃/分で加熱し、重量変化を観測した。セイコーインスツルメンツ株式会社製TG/DTA−SSを用いて測定した。5%、10%重量減少はそれぞれ174.9℃、242.4℃であった。
(示差走査熱量計(DSC))
直径7mmのアルミニウムパンに4mgのリグノフェノールを入れ、 20mL/分での窒素気流下、50〜300℃の温度範囲で2〜20℃/分で加熱し、熱流を観測した。パーキンエルマー社Diamond DSCを用いて測定した。観測されたガラス転移点は134.2℃であった。
(試験例2)
(リグノフェノール誘導体の合成(スギリグノフェノール誘導体(p−クレゾールタイプ)))
リグノフェノールは1000gの脱脂済みスギ(Cryptomeria japonica)木粉(60mesh pass)に500gのp−クレゾールを収着させ、2.5Lの72%硫酸を加え30℃、1時間、三重大学相分離系変換システム・システムプラントで反応させた。酸を除去した後、沈殿を乾燥させ、アセトン5Lで抽出し、ジエチルエーテルを用いて精製した。精製後のエーテル不溶区分として木粉あたり22%の収率でリグノフェノール(p−クレゾールタイプ)エーテル不溶区分を得た。
このリグノフェノール誘導体について、TMAでは150℃付近で変位が観測され、190℃でニードルが底部に達し溶融が観察された。DSCでは170℃付近に発熱ピークが観測されたが、2回目以降の走査ではこのピークが消失した。TGの結果、160℃付近で5%重量減少、190℃付近で10%重量減少が観察された。
(試験例3)
(リグノフェノール誘導体の合成(カバリグノフェノール誘導体(p−クレゾールタイプ)))
リグノフェノールは50gの脱脂済み広葉樹カバ(Betula platyphylla var. japonica
)木粉(60mesh pass)に25gのp−クレゾールを収着させ、500mLの72%硫酸を加え30℃、1時間、反応させた。酸を除去した後、沈殿を乾燥させ、アセトン1Lで抽出し、ジエチルエーテルを用いて精製した。精製後のエーテル不溶区分として木粉あたり18%の収率でリグノフェノール(p−クレゾールタイプ)エーテル不溶区分を得た。収率が針葉樹に比して低いのはエーテル可溶区分が多いためである。
(KBr法によるフーリエ変換赤外分光分析)
FT−IRの結果、815cm−1(導入クレゾール芳香環隣接2水素の面外変角)、1000〜1400cm−1(グアイアシル・シリンギル骨格:3位または3位・5位にメトキシル基を持つ芳香環の側鎖の伸縮・変角・振動)、1450〜1600cm−1(芳香環炭素-炭素伸縮振動)、2930cm−1(メチル基/フェニルプロパンユニットプロパン側鎖C-H伸縮振動)、3000〜3700cm−1(水素結合を持つ水酸基)の特徴的な吸収ピークが観測された。
(プロトン核磁気共鳴分析)
重水素化ピリジン/重水素化クロロホルム中で測定したNMRの結果、1.6〜2.0ppm(アセチル基メチル水素)2.0〜2.3ppm(導入クレゾールメチル水素)、3〜4ppm(メトキシル基メチル水素)、4.5〜4.8ppm(フェニルプロパン単位C1−C3水素)、5ppm(フェニルプロパン単位C2水素)、6.5〜7.5ppm(芳香環水素)ピークが観察された。特にシリンギル骨格に由来するメトキシル基のメチルプロトンピークが3.7ppm付近にシャープなピークとして観察された。ここから算出された導入クレゾール量は0.91mol/C9、フェノール性水酸基量PhOH1.26mol/C9、 脂肪族性水酸基量AliOH 1.22mol/C9であった。
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))
1mg/1mLのTHF溶液をKF601、602、603、604(Shodex. Co.)の直列4カラムに1mL/分、40℃で流通し、ポリスチレンスタンダードで作成した検量線を用いて280nmの吸光度から算出した。液体クロマトグラフィーは(株)島津製作所LC−10システムを用いた。重量平均分子量(Mw)=3600、数平均分子量(Mn)=2000、分散比1.8であった。
このリグノフェノール誘導体に関し、TMAでは157℃付近で変位が観測され、170℃でニードルが底部に達し溶融が観察された。DSCでは116℃付近にガラス転移点が観察された。TGの結果、193℃付近で5%重量減少、228℃付近で10%重量減少が観察された。
(アルカリ溶解工程、中和工程及び回収工程の実施)
(1)アルカリ処理リグノフェノールの調製
試験例1で調製したリグノフェノール200mgを0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液500mLに溶解し、窒素雰囲気下室温・暗所で静置した。72時間後、1Mの塩酸でpH2まで酸性化した。沈殿を遠心分離にて回収し、中性になったのち凍結乾燥し、第1のリグニン系材料(ALC1)を得た。上澄み液中の溶解物をジエチルエーテルで抽出して、第2のリグニン系材料(ALC2)を得た。
ALC1の収率はリグノフェノールベースで90.0%であった。水溶性エーテル抽出成分は6%であった。ALC1及びALC2につき、SEC、NMR、FT−IR、DSC及びTMA及びTGを行った。これらの結果を図1〜5に示す。
図1に示すように、SECによる分子量は、Mw=5200、Mn=2700、d=1.9であり、分散比が狭くなり高分子比率が上昇していることがわかった。また、図2に示すように、NMRによれば、Cresol 0.73mol/C9、PhOH 1.07mol/C9、AliOH1.15mol/C9の組成を確認できた。さらに、図3に示すように、FT−IRによれば、官能基分布はほとんどリグノフェノールと同等であることが確認できた。図4に示すように、DSC:1st走査の発熱ピーク消失を確認した。2回目の走査においても同様のスペクトルを曲線を得た。Tg観測は196.2℃であり、リグノフェノール誘導体と比較して60℃の向上が確認された。図5に示すように、TGAにおける5%、10%重量減少温度はそれぞれ281℃、298℃であった。リグノフェノール誘導体に比較してそれぞれ100℃、50℃の上昇であった。さらに、TMAにおける相転移点196℃であり、リグノフェノール誘導体に比較して60℃の上昇であった。
以上のことから、ALC1については、熱的特性の高温シフト化及び安定化を確認した。
また、ALC2については、図1に示すように、分子量は、Mw=480、Mn=300、d=1.7であった。また、図3に示すように、FT−IRによれば、官能基分布はほとんどリグノフェノールと同等であるのに加え、残留エーテルのエチル基の伸縮振動(2930cm−1)が増加。1713cm−1に非共役カルボニル基の伸縮振動(フェニルプロパンアルキル側鎖の水酸基のアルデヒド化)が観察された。
本実施例では、アルカリ溶解工程に用いた水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.01N、0.1N及び1Nとする以外は、実施例1と同様に操作して、3種類のALC1を調製した。各種ALC1につき、SEC、TMA及びTGを行った。これらの結果を図6〜7に示す。
これら3種のALC1につき、SECによる分子量は図6に示すとおりであった。またTMA、TGAの結果を図7に示す。図6及び図7に示すように、アルカリが弱いと熱的に不安定な傾向となり、分子量も大きいままであることがわかった。アルカリ溶解工程では、最もセンシティブなベンジルアリールエーテル結合が解裂するため、アルカリ濃度によりベンジルアリールエーテル結合の制御できることがわかった。
本実施例では、試験例3で調製したカバリグノフェノール誘導体(p−クレゾールタイプ)を用いる以外は、実施例1と同様に操作して、ALC1及びALC2を調製した。ALC1の収率はリグノフェノールベースで86.4%であった。ALC2は7%であった。ALC1及びALC2につき、SEC、NMR、FT−IR、DSC及びTMA及びTGを行った。これらの結果を図8〜10に示す。
図8に示すように、NMRにより、Cresol 0.88mol/C9 PhOH1.21mol/C9、AliOH 1.29mol/C9を確認し、リグノフェノール誘導体とほぼ同等の組成であることを確認した。また、図9に示すように、FT−IRによれば、官能基分布もほとんどリグノフェノール誘導体と同等であることを確認した。さらに、図10によれば、TGAによる5%、10%質量減少温度は、それぞれ259℃、270℃であり、リグノフェノール誘導体よりもそれぞれ、60℃、40℃の上昇していることわかった。また、TMAによる相転移点186℃でありリグノフェノール誘導体よりも30℃上昇していることがわかった。さらに、DSCによるガラス転移温度は、186.1℃であり、リグノフェノール誘導体よりも70℃上昇していることがわかった。また、図示はしないが、DSCにおける1st走査の発熱ピーク消失を確認し、熱的に安定化していることがわかった。
本実施例では、アルカリのカウンターイオンの影響(ナトリウム/カリウム)を確認した。アルカリとして水酸化カリウムを用いる以外は、実施例1と同様に操作してALC1−Kを得た。このALC1−Kにつき、実施例1で得たALC1とともに、TGA、TMAを行った。これらの結果を、図11〜12に示す。
図11に示すように、両者は、TMAではほぼ同じ曲線となり、図12に示すように、TGではカリウム系がわずかに高温側にシフトしたが全体的な挙動はほぼ同じであった。すなわち、以上のことから、アルカリのカウンターイオンの影響は少ないことがわかった。
本実施例では、ALC1に対して、各種の可塑剤として機能する可能性のある成分を添加して、可塑剤効果を確認した。
実施例1で調製したALC1に対して、実施例1のALC2(図中(b))、実施例3のALC2(同(c))、試験例1のリグノフェノール誘導体の160℃加熱物のエーテル抽出画分(同(d))、及び試験例1のリグノフェノール誘導体の取得工程におけるエーテル可溶画分(同(e))をアセトン中で混合し、乾燥させて、DSC、TMA及びTGを測定した。なお、(b)〜(e)につき、ALC1及び添加したALC2等の可塑剤成分の総質量に対して、それぞれ可塑剤成分を、5、7.5、10及び20質量%配合した。対照は、何も添加しないALC1(同(a))とした。結果を、図13に示す。
図13に示すように、(d)以外に関しては、いずれも、ガラス転移温度が効果的に低下した。また、そのほかの熱的特性の低温シフトが観察された。
本実施例では、ALC1に対するALC2の添加量の影響を確認した。実施例1で調製したALC1とそのALC2(HCESF)の配合比率をこれらの総質量にALC2を5、7.5、10、20質量%と変化させて、実施例5と同様にして、乾燥させて、DSC、TMA及びTGを測定した。結果を、図14及び図15に示す。
図14A及び図14Bに示すように、ALC2添加組成物については、DSCの200℃付近の発熱ピークの発熱量と配合比率の間に相関が見られた。しかし、いずれも2回目の走査では熱安定化された。また、図15に示すように、添加量に応じて、熱的特性の低温へのシフトが観察された。
本実施例では、スギリグノフェノール誘導体(p−クレゾールタイプ)のALC1の熱分析を行った。試験例2で調製したリグノフェノール誘導体を用いる以外は、実施例1と同様に操作して、ALC1を調製した。ALC1は、97.1%の収率で回収された。ALC1につき、DSC、TMA及びTGAを測定した。DSCの結果、ALC1では160℃付近の発熱ピークが消失し、184℃付近にTgが観測された。TMAでは相転移点が150℃から、194℃まで上昇した。TGAの結果、5%重量減少、10%重量減少は287℃、302℃になり100℃以上熱安定性がえられた。以上のことから、リグノフェノール誘導体の由来によらずに、本明細書に開示される方法によれば、容易に熱的に安定化されたリグニン系材料が得られることがわかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

Claims (12)

  1. リグニン系材料の製造方法であって、
    リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を、アルカリ性水性媒体に溶解する工程と、
    前記リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和する工程と、
    前記中和工程で得られた生成物を中和後の媒体に対する溶解性に基づいて回収する工程と、
    を備える、製造方法。
  2. 前記溶解工程における前記アルカリ性水性媒体はアルカリ水溶液である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記回収工程は、前記媒体における不溶画分を回収する工程である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記回収工程は、前記媒体における可溶画分を回収する工程である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  5. リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和して不溶画分として得られる、リグニン系材料。
  6. 示差走査熱分析において実質的な発熱ピークを有しない、請求項5に記載のリグニン系材料。
  7. 熱重量分析における5%質量減少温度が200℃以上である、請求項5又は6に記載のリグニン系材料。
  8. リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和して可溶画分として得られる、リグニン系材料。
  9. 請求項8に記載のリグニン系材料を含有する可塑剤。
  10. リグノフェノール誘導体由来のリグニン系材料に用いられる、請求項9に記載の可塑剤。
  11. 請求項5〜7のいずれかに記載のリグニン系材料と、請求項8に記載のリグニン系材料と、を含有する、組成物。
  12. リグノフェノール誘導体の分画方法であって、
    リグニンのフェニルプロパンユニットのα位にフェノール誘導体がグラフトされた1,1−ジフェニルプロパンユニットを含むリグノフェノール誘導体を、アルカリ性水性媒体に溶解する工程と、
    前記リグノフェノール誘導体が溶解したアルカリ性水性媒体を酸で中和する工程と、
    前記中和工程で得られた生成物を中和後の媒体に対する溶解性に基づいて分画する工程と、
    を備える方法。
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