以下、本発明の光導波路集合体、光配線、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
(光導波路集合体の構造)
<第1実施形態>
まず、本発明の光導波路集合体の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の光導波路集合体の第1実施形態を適用した光導波路フィルムを示す(一部切り欠いて示す)斜視図、図2は、図1に示す光導波路フィルムのコア層を示す概略平面図、図3および図5は、本発明の光導波路集合体の第1実施形態を示すコア層の概略平面図である。なお、図2には、それぞれ矢印で示すように、X軸、Y軸、Z軸が設定されている。また、以下の説明では、図2中、Y軸の正方向を「上」、Y軸の負方向を「下」とも言う。
図1に示す光導波路フィルム10は、図1中Z軸の正方向(紙面手前側)に向かってクラッド層11(クラッド部)、コア層13およびクラッド層12(クラッド部)をこの順に積層してなる長尺状のものである。
そして、コア層13は、図2に示すように、光導波路領域131と、これらの光導波路領域131の両側に隣接するアライメントパターン171、172とを有している。これらの光導波路領域131は、後に詳述するが、同一層内にX軸に沿って延在する並列配置された複数のコア部と、これらのコア部のそれぞれの側面を覆い、かつコア部よりも屈折率の低い側面クラッド部とを備えている。そして、最終的には、光導波路フィルム10を、側面クラッド部に沿って切断して複数の部分に分離することにより、それぞれの部分が光導波路となる。すなわち、光導波路フィルム10は、複数の光導波路を配列した光導波路集合体1を有するものである。
以下、光導波路フィルム10の各部の構成について順次説明する。
まず、光導波路領域131について説明する
図3に示す光導波路領域131は、X軸に沿って延在する並列配置された5本のコア部132、133、134、135、136を有している。また、これらのコア部132〜136のそれぞれの側面は、各コア部132〜136よりも屈折率の低い側面クラッド部150で覆われている。
すなわち、図3に示す各コア部132〜136は、そのZ軸の負側に位置するクラッド層11、Z軸の正側に位置するクラッド層12、およびそれぞれの側方に位置する側面クラッド部150からなるクラッド部16で囲まれている。なお、図3では、各コア部132〜136にドットを付している。
図2に示す光導波路集合体1は、一方の端面の各コア部132〜136に入射された光を、各コア部132〜136とクラッド部16(各クラッド層11、12および各側面クラッド部150)との界面で全反射させ、出射側に伝搬することにより、他方の端面の各コア部132〜136から取り出すことができる。
ここで、各コア部132〜136は、X方向に対して垂直なY方向に等間隔で配設されている。また、これらのコア部132〜136のうち、任意の隣り合うコア部間のY方向間隔(以下、「導波路間隔」という。)、すなわち側面クラッド部150の幅は、所定の周期で変化するように設計されている。
さらに、各コア部132〜136のうち、中心に位置するコア部134は、X軸上にあって直線状をなしている。また、コア部134以外のコア部132、コア部133、コア部135およびコア部136は、X軸に対して線対称の関係になっている。具体的には、コア部132およびコア部133は、それぞれX軸より上方に位置している。一方、コア部135は、コア部133をX軸を介して下方に反転させた鏡像に相当するものであり、また、コア部136は、コア部132をX軸を介して下方に反転させた鏡像に相当するものである。したがって、本実施形態では、コア部132およびコア部133の形状が規定されれば、これらの鏡像であるコア部135およびコア部136の形状は自ずと規定される。
以下、このような各コア部132〜136についてさらに詳述するが、一部説明では、上述した理由から、X軸の上方(X軸よりYの正側)に位置するコア部であるコア部133について代表に説明する。なお、光導波路集合体1は、後に詳述するが樹脂材料で構成されているため、固化する際に収縮を伴い、収縮の前後ではその形状および寸法がわずかに変化したものとなる。そこで、以下の説明では、各コア部132〜136の収縮前の状態について説明する。
コア部133は、平面視において、X軸に沿って延在しており、X軸側に位置する輪郭線1331と、X軸と反対側に位置する輪郭線1332とで挟まれた帯状の領域がコア部133である。
ここで、輪郭線1331のY座標が、Xの関数fa(X)で表わされ、かつ、輪郭線1332のY座標が、Xの関数fb(X)で表わされるとき、関数fa(X)は下記式(1)を満たし、関数fb(X)は下記式(2)を満たす。
fa(X)>{(N−1/2)P+NW}Rmax (1)
fb(X)<{(N+1/2)P+NW}Rmin (2)
[上記式(1)および上記式(2)中、Nは各コア部132〜136を、X軸を起点として数えたときの配設順序であり、各コア部132〜136の本数が奇数のときには、配設順序Nは、中心のコア部をN=0として起算される整数で表わされ、各コア部132〜136の本数が偶数のときには、配設順序Nは、最もX軸に近いコア部をN=0.5として起算される半整数で表わされる。また、P、W、RmaxおよびRminは、前記複数のコア部間でそれぞれ同じである。このうち、Pは当該光導波路集合体を切断して得られる前記光導波路の幅の設定値である。また、Wは当該光導波路集合体の切断に用いる切断手段の切断幅である。また、RmaxおよびRminは1以上の任意の実数であり、かつRmax>Rminである。]
ここで、このような5本のコア部132〜136を備える光導波路集合体1を分離して複数の光導波路を製造する場合、側面クラッド部150から外れないように切断することとなる。また、最も外側に位置するコア部132およびコア部136については、その外側に位置する余白を切り落とすための切断を行ってもよく、この場合、各コア部132〜136を個々に分離するためには、合計で6本の切断線に沿って切断する必要がある。
ところで、光導波路集合体1を切断する場合、切断ツールが通過する軌跡に「切断しろ」をあらかじめ設けておけば、仮に切断幅が厚い切断ツールを使用したとしても、それに応じた「切断しろ」を設けておくことにより、得られる光導波路の幅が左右されることはなくなる。図3に示す光導波路集合体1(本発明の光導波路集合体)は、光導波路集合体1を切断して複数の光導波路を製造する際に、複数の等幅の光導波路を少ない切断回数で効率よく製造することを目的としたものであり、前述した6本の切断線の位置に設けられた「切断しろ」に相当する領域を有するものである。
図3に示す光導波路集合体1は、コア部132の上方に設けられた切断しろ1315と、コア部132とコア部133との間に設けられた切断しろ1325と、コア部133とコア部134との間に設けられた切断しろ1335と、コア部134とコア部135との間に設けられた切断しろ1345と、コア部135とコア部136との間に設けられた切断しろ1355と、コア部136の下方に設けられた切断しろ1365とを有している。すなわち、これらの切断しろ1315〜1365は、いずれも側面クラッド部150中に設けられている。なお、これらの切断しろ1315〜1365を設けた結果、各側面クラッド部150は、その幅が、各切断しろの幅の分だけ拡張されたことになるのみで、外観上の変化は必要としない。すなわち、各切断しろ1315〜1365が側面クラッド部150と同じ材料からなる場合には、各切断しろ1315〜1365と側面クラッド部150との境界は視認できない。したがって、図3に破線で示す各切断しろ1315〜1365の輪郭線は、仮想的な線であれば足りる。
このような光導波路集合体1を切断する場合、一般には、図17に示すようなマルチブレードソー7を用いて切断する。このマルチブレードソー7は、等間隔に配置された複数枚のブレードソー71を有しており、各ブレードソー71がそれぞれ光導波路集合体1の各切断しろ1315〜1365を切断することにより、1回の切断プロセスで光導波路集合体1を効率よく分離することができる。
ところが、従来、マルチブレードソー7を用いて光導波路集合体を分離する場合、その分離作業は容易ではなかった。その理由は、光導波路集合体を切断する工程は、樹脂材料が固化した後、すなわち樹脂材料の収縮後の工程であるため、収縮後の光導波路集合体が、樹脂材料の収縮率のバラツキに伴う寸法の個体差を含んだものになっているからである。すなわち、マルチブレードソー7を用いて収縮後の光導波路集合体の分離するにしても、前述した個体差に応じてその都度ブレードソー71の間隔を調整する必要があり、光導波路の生産効率が著しく低下する。
また、生産効率を確保するべく、ブレードソー71の間隔を調整することなく、光導波路集合体を切断しようとした場合には、光導波路集合体における導波路間隔と、ブレードソー71の間隔とが一致していないため、切り出された光導波路は、コア部が偏心したものとなる。このような光導波路は、接続部において著しい光損失が発生し、通信品質の低下が避けられない。
そこで、本発明では、各コア部132〜136の間隔、すなわちこれらのコア部の間に位置する側面クラッド部150の幅(Y方向の長さ)が、X方向に進むにつれて連続的に変化するように、各コア部132〜136の輪郭線の形状を、前述したXの関数fa(X)および関数fb(X)で規定することとした。これらの関数は、前述したように、側面クラッド部150の幅をX方向に進むにつれて連続的に変化させるという条件を満たし、かつ、複数の側面クラッド部150間で、任意のX座標における側面クラッド部150の幅から切断しろの幅を差し引いた長さの互いの比率は、前記変化においても一定に維持されるという条件を満たす関数であり、具体的には、三角関数、楕円関数、二次関数、三次関数、四次関数等の連続的に変化する曲線を含んだ関数である。このように側面クラッド部150の幅が連続的に変化している変化部分があれば、その変化部分のいずれかの位置で(任意のX座標において)、切り出そうとする光導波路の幅(ブレードソー71の間隔)と、導波路間隔とが一致する。このため、この位置で光導波路集合体1をX軸と直交する方向に切断すれば、その切断面では、切り出そうとする光導波路の幅の中心にコア部が位置し、コア部の偏心が抑えられることとなる。その結果、光軸のずれが抑制され、光損失の少ない光導波路を製造することができる。
また、仮に光導波路集合体1の寸法に個体差があったとしても、光導波路集合体1を切断する位置をX軸に沿ってずらすことのみで、前記個体差を吸収することができる。すなわち、寸法の個体差を含む光導波路集合体1を分離して複数の光導波路を製造する場合でも、簡単な工程を経ることで、光損失の少ない光導波路を効率よく製造することができる。
なお、例えば光導波路集合体にm本のコア部がある場合、その導波路間隔の個数はm−1個である。したがって、mが3以上の整数であれば、導波路間隔(側面クラッド部150)が2つ以上存在し、光導波路集合体1は、前述したその効果を発揮し得るものとなる。
また、導波路間隔は2つ以上存在する場合、このうちの1つにおいて、切り出そうとする光導波路の幅と、導波路間隔とが一致しさえすれば、他の導波路間隔においても、この一致が得られる。これは、一般的に、樹脂材料が、材料全体においてほぼ均一に収縮するためである。したがって、光導波路集合体1を切断する場合には、少なくとも1カ所の導波路間隔と切り出そうとする光導波路の幅との一致を確認しさえすれば、その他の箇所についても前記一致が高い確率で期待できる。
一方、各コア部132〜136の輪郭線が、前述した関数で規定される曲線を描いていることにより、曲線の曲率によっては、この輪郭線とブレードソー71の切断跡とが干渉するおそれがある。この干渉が生じると、光導波路集合体1を分離して得られた各光導波路は、側面にコア部が露出することになって、光導波路としての機能が損なわれるおそれがある。
そこで、本発明では、コア部133の輪郭線1331のY座標を表す関数fa(X)が前述した式(1)の不等式を満たし、輪郭線1332のY座標を表す関数fb(X)が前述した式(2)の不等式を満たすことにより、各コア部のXY平面上における位置は、前記不等式で規定される所定の領域に限定されることとなる。なお、式(1)の右辺および式(2)の右辺はいずれも定数となる。したがって、これらの式(1)および式(2)は、各コア部133に許される領域が、X軸に平行な帯状の領域に限定されることを意味する。そして、この限定の結果、例えば、コア部133とこれに隣り合うコア部132との間、および、コア部133とこれに隣り合うコア部134との間には、切断しろ1325および切断しろ1335が確保されることとなる。
なお、これらの切断しろ1325、1335は、いずれもX軸に平行な帯状の領域である。このため、マルチブレードソー7を用いて光導波路集合体1を分離する場合には、光導波路集合体1に対して、単にX軸と平行にマルチブレードソー7を相対的に移動させるのみで、切断跡がコア部133に干渉するのを確実に防止することができる。
さらに、これらの切断しろ1325、1335の幅は、ブレードソー71の厚さ(前述した切断幅W)と同等以上に設定され、かつ、切断しろ1325の幅と切断しろ1335の幅は同じである。これらの関係は、すべての切断しろにおいて同様である。前述したように、複数の側面クラッド部150間で、任意のX座標において、側面クラッド部150の幅からブレードソー71の厚さ(切断しろの幅)を差し引いた長さの互いの比率は、光導波路集合体1全体で一定に維持されているため、マルチブレードソー7を用いてこのような光導波路集合体1を分離した場合、得られる複数の光導波路では、いずれの光導波路の切断面においてもコア部の位置が同じになる。したがって、光導波路集合体1を用いることにより、コア部の偏心を抑えつつ、等幅の光導波路を複数本同時に製造することができる。
なお、式(1)および式(2)に含まれるRmaxおよびRminは、それぞれ光導波路集合体1を構成する樹脂材料について、収縮後の寸法に対する収縮前の寸法の倍率である。この倍率は、樹脂材料の収縮率(収縮に伴う寸法の減少率)から算出することができる。収縮率には、いくつかの定義が存在するが、いずれの定義方法においても収縮率の値には大差がないため、定義は限定されない。ここでは一例として、収縮率を1−(収縮後の寸法)/(収縮前の寸法)と定義する。この定義において、仮に、収縮前の寸法を100とし、収縮後の寸法を98とした場合には、収縮率は1−(98/100)で求められ、0.02(2%)となる。そして、収縮後の寸法に対する収縮前の寸法の倍率は、この収縮率に1を足した値である1.02として算出することができる。
ところで、この倍率を求めるための樹脂材料の収縮率は、前述したように、使用する樹脂材料の種類、製造環境(気温、湿度等)、製造時期、製造量等の条件により増減するおそれがある。この収縮率の増減を人為的に制御することは現実には困難であるため、個々の光導波路集合体1は、寸法の個体差を含んだものにならざるを得ない。しかしながら、この個体差に伴う寸法のバラツキ範囲は、ある一定の範囲内に収まっていることがほとんどであり、その範囲は経験的または理論的にかなりの精度で予測が可能である。そこで、この予測に基づいて倍率の上限値と下限値とをあらかじめ設定しておくことにより、仮に収縮率の増減に伴って光導波路集合体1の寸法に個体差が生じたとしても、その個体差が、最終的に得られる複数の光導波路の品質に影響を及ぼすのを避けることができる。
式(1)および式(2)では、この倍率の上限値を最大倍率Rmaxとし、下限値を最小倍率Rminとしているが、式(1)および式(2)が、このような樹脂材料の収縮率のバラツキを加味していることにより、仮に光導波路集合体1が寸法の個体差を含んでいたとしても、この光導波路集合体1から製造される複数の光導波路は、いずれもコア部の偏心をより確実に抑えられたものとなる。
ここで、上記式(1)および上記式(2)における最大倍率Rmaxおよび最小倍率Rminは、1以上の任意の実数とされるが、それぞれ好ましくは1〜1.05の範囲内、より好ましくは1.01〜1.03程度の範囲内で適宜設定される。また、最大倍率Rmaxは、最小倍率Rminより大きな値に設定され、その差は、好ましくは0.02〜0.05程度とされる。なお、最大倍率Rmaxは、各コア部132〜136間で互いに異なっていてもよいが、本実施形態では同じに設定される。一方、最小倍率Rminも、各コア部132〜136間で互いに異なっていてもよいが、本実施形態では同じに設定される。
なお、前述したように、光導波路集合体1を構成する材料が樹脂材料のように固化時に収縮を伴う材料である場合、最大倍率Rmaxおよび最小倍率Rminを含む上記式(1)、(2)は、厳密には固化前の各コア部132〜136の形状を規定する式である。しかしながら、樹脂材料の収縮による光導波路集合体1の形状変化はごくわずかであるため、実質的には、収縮後の各コア部132〜136の形状も、収縮前とほぼ同じであるとみなすことができる。換言すれば、収縮後の各コア部132〜136の形状も、上記式(1)、(2)で規定して差し支えない。
また、上記式(1)および上記式(2)における配設順序Nは、前述したようにX軸に沿って並列配置された各コア部132〜136のそれぞれの順序であるため、各コア部において異なった値となる。本実施形態では、各コア部132〜136の本数は5本であるため、コア部133の配設順序Nは、コア部134の配設順序を0として起算した順序となる。例えば、コア部133の配設順序Nは1となり、コア部132の配設順序Nは2となる。
また、光導波路の幅Pは、光導波路集合体1をマルチブレードソー7を用いて分離して得られる複数の光導波路の幅に相当する値である。したがって、光導波路の幅Pは、マルチブレードソー7の隣り合うブレードソー71の対向する面同士の離間距離と等しい値である。
一例として、光導波路の幅Pは、200〜10000μm程度とされる。
また、切断幅Wは、光導波路集合体1の切断に用いる切断ツールの切断幅に相当する値であり、いわゆるカーフである。例えば切断ツールとしてマルチブレードソー7を用いる場合には、ブレードソー71の厚さがこれに相当する。
一例として、切断幅Wは、10〜500μm程度とされる。
以上説明したような式(1)および式(2)により、各コア部132〜136が占める領域と、各切断しろ1315〜1365が占める領域との干渉が防止され、これにより各コア部132〜136の偏心を抑えつつ、等幅の光導波路を効率よく製造することができる。
ところで、式(1)および式(2)では、コア部133の輪郭線1331の形状を関数fa(X)で表わし、輪郭線1332の形状を関数fb(X)で表わしたが、以下では、これらの関数が三角関数である場合を例に説明する。この場合、関数fa(X)および関数fb(X)は、以下の式(3−1)および式(4−1)で規定される。
fa(X)=Acos(2πX/L)+B−C/2 (3−1)
fb(X)=Acos(2πX/L)+B+C/2 (4−1)
[上記式(3−1)および上記式(4−1)中、A、B、C、Lはそれぞれ任意の実数であって、Aは振幅、Bはオフセット量、Cはコア部133の幅、Lは周期である。]
このような式(3−1)および式(4−1)により、コア部133の輪郭線1331、1332の形状が規定される。そして、上記式で規定される輪郭線1331、1332の形状は、いわゆる「余弦曲線」を描いている。なお、式(3−1)と式(4−1)との間で、A、B、C、Lはそれぞれ同じ値である。
ここで、周期Lは、波型の余弦曲線における「波長」に相当するパラメータである。周期Lは、各コア部132〜136の間でそれぞれ異なっていてもよいが、好ましくは同じ値に設定される。
また、周期Lは、光導波路集合体1の長さに応じて適宜設定されるものの、一例としては、光導波路集合体1の長さが200mm程度であれば、5〜100mm程度であるのが好ましく、10〜50mm程度であるのがより好ましい。
一方、振幅Aおよびオフセット量Bは、余弦曲線において波形やX軸からの距離を規定するパラメータであるが、これらは各コア部132〜136の間でそれぞれ異なった値に設定される。
振幅Aは、余弦曲線における「波の高さ」に相当するパラメータであるが、この振幅Aは、以下の式(5)で表わされる。
A=(Rmax−Rmin)(P+W)N/2 (5)
[上記式(5)中、N、P、W、RmaxおよびRminは、前記式(1)および前記式(2)におけるN、P、W、RmaxおよびRminと同じである。]
オフセット量Bは、余弦曲線のX軸からの離間距離に相当するパラメータであるが、このオフセット量Bは、下記式(6)で表わされる。
B=(Rmax+Rmin)(P+W)N/2 (6)
[上記式(6)中、N、P、W、RmaxおよびRminは、前記式(1)および前記式(2)におけるN、P、W、RmaxおよびRminと同じである。]
また、コア部の幅Cは、各コア部132〜136の幅であるが、これらは各コア部132〜136の間で同じ値に設定されるのが好ましい。
一例として、コア部の幅Cは、10〜200μm程度とされる。
各パラメータを以上のように設定することにより、各コア部132〜136は互いに干渉することなく、また、導波路間隔(側面クラッド部150の幅)がX方向に沿って連続的に変化したものにすることができる。これにより、各コア部132〜136は、それぞれを伝搬する光の独立性が確保され、チャンネル間の混信(クロストーク)等を防止し得るとともに、導波路間隔が連続的に変化することにより、光導波路集合体1(本発明の光導波路集合体)は、前述したような作用・効果を発揮し得るものとなる。
このような形状の各コア部132〜136において、その光軸の各点の接線の、X軸に対する傾斜角度(以下、省略して「傾斜角度」という。)は、X軸に対して連続的に(滑らかに)変化するように設計されることとなる。これにより、各コア部132〜136は、小さい曲率の屈曲部位を有しないので、この屈曲部位における光の漏出を抑制することができる。その結果、各コア部132〜136は、光伝搬特性に優れたものとなる。
具体的には、傾斜角度は、1°以下であるのが好ましく、0.01°以上0.5°以下であるのがより好ましい。傾斜角度を前記範囲内に設定することにより、光の漏出を最小限に抑えることができる。また、入射側端面における光の入射角度および出射側端面における光の出射角度が、それぞれX軸に対して著しく傾くことが防止されるので、光導波路集合体1を分離して得られる光導波路は、これに接続される相手先との接続性が向上し、光接続損失を確実に抑制することができる。なお、上記傾斜角度は、前述した周期Lや振幅A等に依存するため、これらのパラメータは、上記傾斜角度の好ましい範囲に応じて設定されることが好ましい。
なお、図5等に示す各コア部132〜136の曲率は、判別し易いように強調されているが、実際の光導波路フィルムでは、曲率が大きい場合、一見しただけでは傾斜しているように見えない可能性もある。
ところで、各コア部132〜136とクラッド部16との界面で全反射を生じさせるためには、界面に屈折率差が存在する必要がある。各コア部132〜136の屈折率は、クラッド部16の屈折率より高く、その差は、特に限定されないものの、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。なお、屈折率差の上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率差が前記下限値未満であると光を伝搬する効果が低下する場合があり、また、前記上限値を超えても、光の伝搬効果のそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、各コア部132〜136の屈折率をn1、クラッド部16の屈折率をn2としたとき、次式(7)で表わされる。
屈折率差(%)=|n1/n2−1|×100 (7)
また、各コア部132〜136の横断面形状は、正方形または矩形(長方形)のような四角形をなしている。
各コア部132〜136の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。
このような各コア部132〜136およびクラッド部16の各構成材料は、それぞれ上述したような屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられる。
本実施形態では、コア層13において、各コア部132〜136および側面クラッド部150が同一のベース材料(基本成分)で構成されており、各コア部132〜136と側面クラッド部150との屈折率差は、それぞれの構成材料の化学構造の差異により発現している。
化学構造の差異により屈折率差を発現させるためには、各コア部132〜136および側面クラッド部150の各構成材料として、紫外線、電子線のような活性エネルギー線の照射により(あるいはさらに加熱することにより)屈折率が変化する材料を用いるのが好ましい。
このように屈折率が変化する材料としては、例えば、活性エネルギー線の照射や加熱により、少なくとも一部の結合が切断したり、少なくとも一部の官能基が脱離する等して、化学構造が変化し得る材料が挙げられる。
具体的には、ポリシラン(例:ポリメチルフェニルシラン)、ポリシラザン(例:ペルヒドロポリシラザン)等のシラン系樹脂や、前述したような構造変化を伴う材料のベースとなる樹脂としては、分子の側鎖または末端に官能基を有する以下の(1)〜(6)のような樹脂が挙げられる。(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂等のノルボルネン系樹脂、その他、光硬化反応性モノマーを重合することにより得られるアクリル系樹脂、エポキシ樹脂。なお、これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
一方、クラッド層11および12は、それぞれ、各コア部132〜136の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、各コア部132〜136は、その外周をクラッド部16に囲まれた導光路として機能する。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部132〜136の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路集合体1が不要に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
なお、本実施形態では、コア層13の構成材料と、クラッド層11、12の構成材料との間で、両者の間の屈折率差を考慮して適宜異なる材料を選択して使用することが可能である。したがって、コア層13とクラッド層11、12との境界において光を確実に全反射させるため、十分な屈折率差が生じるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路集合体1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部132〜136からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。その結果、各コア部132〜136を伝搬する光の減衰を抑制することができる。
また、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13とクラッド層11、12との間の密着性が高いことが好ましい。したがって、クラッド層11、12の構成材料は、コア層13の構成材料よりも屈折率が低く、かつコア層13の構成材料と密着性が高いという条件を満たすものであれば、いかなる材料であってもよい。
以上、光導波路領域131について説明したが、コア層13には、このような光導波路領域131と同等の領域が複数個設けられていてもよい。
また、光導波路フィルム10には、前述したように、光導波路領域131の外縁に帯状のアライメントパターン171、172が設けられている。
図4(A)〜(C)は、光導波路集合体1とアライメントパターン171、172との間の関係を示す図である。図4(C)は、光導波路フィルム10のコア層13の一部上面を示す図であり、図4(A)は、図4(C)のS1−S1線に沿った光導波路フィルム10の断面を示す図であり、図4(B)は、図4(C)のS2−S2線に沿った光導波路フィルム10の断面を示している。
ここで、アライメントパターン171は、コア部132の外側の余白部分に設けられ、X方向に伸長する一対の平行なライン状パターン171a、171bを有している。
一方、アライメントパターン172は、コア部136の外側の余白部分に設けられ、X方向に伸長する一対の平行なライン状パターン172a、172bを有している。
これらのライン状パターン171a、171b、172a、172bは、各コア部132〜136と同様の工程で形成することができる。また、光導波路フィルム10に、複数の光導波路領域131が設けられている場合には、これらのアライメントパターン171、172が、各光導波路領域131を区画し、これらを分離する際の目印として使用される。
また、一対のライン状パターン171a、171bの間には、Y方向に伸長する線状のアライメントマーク181が複数形成されている。これらのアライメントマーク181は、等間隔または所定の間隔で配列している。
一方、一対のライン状パターン172a、172bの間にも、Y方向に伸長する線状のアライメントマーク182が複数形成されている。これらのアライメントマーク182も、等間隔または所定の間隔で配列している。
このような各アライメントマーク181、182は、各コア部132〜136と同様の工程で形成することができる。
これらのアライメントマーク181、182は、光導波路集合体1をX軸と直交する方向に切断する際の目印(基準マーク)として使用される。
光導波路集合体1の切断位置は、目測または計測により、切り出そうとする光導波路の幅と、導波路間隔とが一致する位置を見出し、この位置で切断するようにしてもよいが、各アライメントマーク181、182からなる基準マークを利用することで、この切断を正確に行うことができる。このようにすれば、各コア部132〜136の偏心をより確実に防止することができる。
また、各アライメントマーク181、182は、導波路間隔を把握するための基準として利用できる。すなわち、各アライメントマーク181、182を、各コア部132〜136と同じ層内に形成し、かつ同じ樹脂材料で構成することにより、各アライメントマーク181と導波路間隔との間に、不変な一定の位置関係を持たせることができる。これにより、例えば目測または計測等を行わず、樹脂材料の種類を特定するのみで、各アライメントマーク181、182に基づいて光導波路集合体1を切断したとしても、得られた光導波路集合体1では、切り出そうとする光導波路の幅と、導波路間隔とを一致させることができる。その結果、コア部の偏心の少ない光導波路をより簡単に製造することができる。
なお、各アライメントマーク181は、図4に示すように、一対のライン状パターン171a、171bと分離しており、各アライメントマーク182も、図4に示すように、一対のライン状パターン172a、172bと分離しているが、これに限定されるものではない。例えば、アライメントマーク181は、ライン状パターン171a、171bの一方または双方と連続し、アライメントマーク182は、ライン状パターン172a、172bの一方または双方と連続していてもよい。
また、各アライメントパターン171、172間の収縮を測定し、この測定結果に基づいて光導波路集合体1のY方向の収縮率を算出することができる。
一方、光導波路集合体1のX方向の収縮率は、算出したY方向の収縮率と同等であるとみなすこともできるが、各アライメントマーク181間または各アライメントマーク182間の収縮を測定し、この測定結果に基づいて算出することもできる。
なお、光導波路集合体1を製造する前には、光導波路集合体1の構成材料と同じ材料のテストピースを用意し、上述した方法と同様にして樹脂材料の収縮率をあらかじめ取得しておくのが好ましい。このようにすれば、式(1)および式(2)における最大倍率Rmax、最小倍率Rminをより正確に求めることができる。
また、各アライメントマーク181、182は、平面視にてY方向に沿って引かれた単なる線であってもよいが、それぞれのアライメントマーク181、182を識別するために、これらのマーク近傍に番号や記号等が付されていてもよい。
また、各コア部132〜136間には、それぞれアライメントラインが形成されている。具体的には、図5に示すように、光導波路フィルム10は、コア部132とコア部133との間に設けられたアライメントライン191と、コア部133とコア部134との間に設けられたアライメントライン192と、コア部134とコア部135との間に設けられたアライメントライン193と、コア部135とコア部136との間に設けられたアライメントライン194とを有している。
これらのアライメントライン191〜194は、各コア部132〜136と同様の工程で形成することができる(図4)。
また、これらのアライメントライン191〜194は、導波路間隔の中点(側面クラッド部150の中点)を結んでなる中間線上に形成されている。
これらのアライメントライン191〜194は、常に、側面クラッド部150の中間点を示しているため、マルチブレードソー7を用いて光導波路集合体1を分離する際には、光導波路集合体1の端面において、この中間点を切断の起点になるようにすれば、コア部の偏心の少ない光導波路を簡単に製造することができる。
例えば、図5に示す切断線CL1および切断線CL2の位置において、隣り合うアライメントライン間の間隔mが、切り出そうとする光導波路の幅と一致したとすると、各切断線CL1、CL2と各アライメントライン191〜194との交点を起点として切断するようにすればよい。なお、この切断方法については、後に詳述する。
図6は、光導波路領域131に形成され得る各コア部132〜136の他の構成例を示す図である。図6に示す光導波路集合体1’は、各コア部132〜136の平面視形状が異なる以外は、図5に示す光導波路集合体1と同様である。
図6に示す各コア部132〜136は、その長手方向の一部がそれぞれX軸に平行な直線状になっている。すなわち、図6に示す各コア部132〜136は、直線状部分1311と、前述したような余弦曲線を描いている部分(曲線部分1312)とに分かれている。
このような光導波路集合体1’においても、前述した光導波路集合体1と同様の作用・効果が得られる。
また、この曲線部分1312は、少なくとも光導波路集合体1’の両端部に設けられていればよい。これにより、光導波路集合体1’は、曲線部分1312において、接続相手先との接続における光接続損失の抑制を図ることができ、一方、直線状部分1311においては、屈曲部分が存在しないので、クラッド部16への光の漏出を最小限に抑制することができる。その結果、光導波路集合体1’から得られる光導波路は、光通信の品質をさらに高めることができる。
また、図7は、光導波路領域131に形成され得る各コア部132〜136の他の構成例を示す図である。図7に示す光導波路集合体1”は、各コア部132〜136の平面視形状が異なる以外は、図5に示す光導波路集合体1と同様である。
図7に示す光導波路集合体1”では、各コア部132〜136のうち、X軸の起点となる左側端部が、曲線部分の「谷」に相当する部位に一致している。これに対し、前述した図5に示す光導波路集合体1では、各コア部132〜136のうち、X軸の起点となる左側端部は、曲線部分の「山」に相当する部位に一致しており、この点が光導波路集合体1”との相違点である。
すなわち、図7に示す光導波路集合体1”は、各コア部132〜136の輪郭線の形状を表す関数が、以下の式(3−3)および式(4−3)で規定される以外は、光導波路集合体1と同様である。
以下の式(3−3)は、図7に示す光導波路集合体1”のコア部133の輪郭線1331の形状を表し、式(4−3)は、コア部133の輪郭線1332の形状を表す関数である。
fa(X)=−Acos(2πX/L)+B−C/2 (3−3)
fb(X)=−Acos(2πX/L)+B+C/2 (4−3)
[上記式(3−3)および上記式(4−3)中、A、B、C、Lはそれぞれ任意の実数であって、Aは振幅、Bはオフセット量、Cはコア部133の幅、Lは周期である。]
このような式(3−3)および式(4−3)により、コア部133の輪郭線1331、1332の形状が規定される。そして、上記式で規定される輪郭線1331、1332の形状は、いわゆる「余弦曲線」を描いている。なお、式(3−3)と式(4−3)との間で、A、B、C、Lはそれぞれ同じ値である。また、これらのA、B、C、Lは、前記式(3−1)および式(4−1)中のA、B、C、Lと同じパラメータである。
なお、この光導波路集合体1”は、前述した光導波路集合体1を平行移動させたものと実質的には同等である。したがって、前述した光導波路集合体1と同様の作用・効果を奏する。
以上のような光導波路集合体1’および光導波路集合体1”においても、前記光導波路集合体1と同様の作用・効果が得られる。
また、図示しないが、上記関数fa(X)および関数fb(X)は、下記の式(3−2)および式(4−2)で規定される「正弦曲線」であってもよい。
fa(X)=Asin(2πX/L)+B−C/2 (3−2)
fb(X)=Asin(2πX/L)+B+C/2 (4−2)
[上記式(3−2)および上記式(4−2)中、A、B、C、Lはそれぞれ任意の実数であって、Aは振幅、Bはオフセット量、Cはコア部133の幅、Lは周期である。]
このような式(3−2)および式(4−2)により、コア部133の輪郭線1331、1332の形状が規定される。なお、式(3−2)と式(4−2)との間で、A、B、C、Lはそれぞれ同じ値である。また、これらのA、B、C、Lは、前記式(3−1)および式(4−1)中のA、B、C、Lと同じパラメータである。
なお、この「正弦曲線」で規定される光導波路集合体は、前述した光導波路集合体1および光導波路集合体1”のような「余弦曲線」で規定される光導波路を平行移動させたものと実質的には同等である。したがって、前述した光導波路集合体1および光導波路集合体1”と同様の作用・効果を奏する。
<第2実施形態>
次に、本発明の光導波路集合体の第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の光導波路集合体の第2実施形態を示すコア層の概略平面図である。
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態は、切断しろの配設パターンが異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
図8に示す光導波路集合体1aは、X軸に沿って延在する並列配置された12本のコア部132a、133a、134a、135a、132b、133b、134b、135b、132c、133c、134c、135cを有している。
また、前記第1実施形態では、全ての隣り合うコア部の間に「切断しろ」を設けたが、本実施形態は、コア部4本毎に「切断しろ」を有している。なお、切断しろを設けた側面クラッド部150には、各アライメントライン191a、192a、193a、194aが設けられている。そして、これらのアライメントライン191a〜194aにより、12本のコア部132a〜135cは、3つのコア部の束に分けられている。
このように光導波路集合体1aが、コア部4本毎に設けられた「切断しろ」を有していることにより、マルチブレードソー7を用いて光導波路集合体1aを切断した場合には、光導波路集合体1aが寸法における未知の個体差を含んでいたとしても、煩雑な作業を伴うことなく、4本のコア部を有するマルチチャンネルの光導波路を複数本同時に製造することができる。
また、光導波路集合体1aでは、側面クラッド部150の幅がX方向に進むにつれて連続的に変化しており、かつ、切断しろが設けられた複数の側面クラッド部150間では、任意のX座標において、側面クラッド部150の幅から切断しろの幅を差し引いた長さの互いの比率が、前記変化においても一定に維持されているため、X方向のいずれかの位置で、切り出そうとするマルチチャンネルの光導波路の幅と、前述したコア部の束の間隔とが一致する。なお、コア部の束の間隔は、隣り合うアライメントラインの間隔としてもよい。このため、この位置で光導波路集合体1aをX軸と直交する方向に切断すれば、その切断面では、切り出そうとするマルチチャンネルの光導波路の幅に対して偏りなく4つのコア部が配置されることとなる。その結果、光軸のずれが抑制され、光損失の少ないマルチチャンネルの光導波路を製造することができる。
なお、本実施形態では、3つのコア部の束のそれぞれを、1本の太いコア部に見立て、このコア部の輪郭線の形状を規定する関数が、前記第1実施形態における式(1)および式(2)を満たすようにすればよい。
また、この場合の輪郭線の形状を規定する関数には、前記式(3−1)および式(4−1)、式(3−2)および式(4−2)、式(3−3)および式(4−3)を適用することができる。
(光導波路フィルムの製造方法)
次に、光導波路フィルム10の各種製造方法について説明する。以下に説明する製造方法は、特開2006−323318号公報に記載されたものと同じである。
図9(a)〜(b)、図10、図11、図12および図13(a)〜(b)を参照しつつ上記光導波路フィルム10の製造方法を説明する。図9(a)〜(b)、図10、図11、図12および図13(a)〜(b)は、それぞれ、光導波路フィルム10の製造工程例を模式的に示す断面図である。なお、図11および図13では、各コア部132〜136のうち、コア部132とコア部133を代表に図示している。
図9(a)および(b)を参照すると、まず、支持基板161上に、層110を形成する。層110は、コア層形成用材料(ワニス)100を塗布し硬化(固化)させる方法により形成される。
具体的には、層110は、支持基板161上にコア層形成用材料100を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板161を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより形成する。層110を塗布法で形成する場合、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。支持基板161には、たとえば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが用いられる。
コア層形成用材料100は、ポリマー115と、添加剤120(本実施形態では、少なくともモノマー、助触媒および触媒前駆体を含む)とで構成される光誘発熱現像性材料(PITDM)を含有し、活性放射線の照射および加熱により、ポリマー115中において、モノマーの反応が生じる材料である。
そして、得られた層110中では、ポリマー(マトリックス)115は、いずれも、実質的に一様かつランダムに分配され、添加剤120は、ポリマー115内に実質的に一様かつランダムに分散されている。これにより、層110中には、添加剤120が実質的に一様かつ任意に分散されている。このような層110の平均厚さは、形成すべきコア層13の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
ポリマー115には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中で後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても、十分な透明性を有するものが好適に用いられる。ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用材料100中や層110中においてポリマー115と相分離を起こさないことを言う。
このようなポリマー115としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。これらの中でも、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。ポリマー115としてノルボルネン系ポリマーを用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層13を得ることができる。
また、ノルボルネン系ポリマーは、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化を生じ難いコア層13を得ることができる。
ノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーとしては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系ポリマーは、特に高い屈折率を有する。
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、たとえば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。
かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーは、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
また、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高いため、かかるノルボルネン系ポリマーを用いることにより、光導波路集合体1に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアルキル基としては、たとえば、プロピル基、ブチル基、ベンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられるが、ヘキシル基が特に好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマー全体の屈折率が低下するのを防止し、かつ、高い柔軟性を保持することができる。
ここで、光導波路集合体1は、たとえば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において好適に使用されるが、ヘキシル(アルキル)ノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることから好ましい。
このようなノルボルネン系ポリマーの好ましい具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態のコア層形成用材料100は、添加剤120として、モノマー、助触媒(第1の物質)および触媒前駆体(第2の物質)を含んでいる。
モノマーは、後述する活性放射線に照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、この反応物の存在により、層110において照射領域と、活性放射線の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
この反応物としては、モノマーがポリマー(マトリックス)115中で重合して形成されたポリマー(重合体)、ポリマー115同士を架橋する架橋構造、および、ポリマー115に重合してポリマー115から分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖(ペンダントグループ))のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ここで、層110において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して高い屈折率を有するモノマーとが組み合わせて使用され、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー115と、このポリマー115に対して低い屈折率を有するモノマーとが組み合わせて使用される。なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味する。
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層110において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が側面クラッド部150となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分が各コア部132、133となる。
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、モノマーとしては、ノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層13が得られる。
また、モノマーには、上記のモノマーに代えて、または、上記のモノマーとともに架橋性モノマー(架橋剤)を用いることもできる。この架橋性モノマーは、後述する触媒前駆体の存在下で、架橋反応を生じ得る化合物である。
架橋性モノマーを用いることにより、次のような利点がある。すなわち、架橋性モノマーは、より速く重合するので、コア層13の形成に要する時間を短縮することができる。また、架橋性モノマーは、加熱しても蒸発し難いので、蒸気圧の上昇を抑えることができる。さらに、架橋性モノマーは、耐熱性に優れるため、コア層13の耐熱性を向上させることができる。
架橋性ノルボルネン系モノマーとしては、連続多環環系(fused multicyclic ring systems)の化合物と、連結多環環系(linked multicyclic ring systems)の化合物とがある。
各種の架橋性ノルボルネン系モノマーの中でも、特に、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(SiX)が好ましい。SiXは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位および/またはアラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーに対して十分に低い屈折率を有する。このため、後述する活性放射線を照射する照射領域の屈折率を確実に低くして、側面クラッド部150とすることができる。また、各コア部132、133と側面クラッド部150との間における屈折率差を大きくすることができ、コア層13の特性(光伝送性能)の向上を図ることができる。
なお、以上のようなモノマーは、単独または任意に組み合わせて用いるようにしてもよい。
触媒前駆体(第2の物質)は、前記のモノマーの反応(たとえば、重合反応、架橋反応)を開始させ得る物質であり、後述する活性放射線の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
この触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路集合体1の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、各コア部132、133と側面クラッド部150との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2およびPd(OAc)2(P(Cy)3)2のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
なお、以下では、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2を「Pd545」と、また、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2を「Pd785」と略すことがある。
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオンのカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
弱配位アニオンとしては、たとえば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6−)が挙げられる。
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、たとえば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ベンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類が挙げられる。
コア層形成用材料(ワニス)100中には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
増感剤は、活性放射線に対する助触媒の感度を増大して、助触媒の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、助触媒の活性化に適する波長に活性放射線の波長を変化させる機能を有するものである。
このような増感剤としては、助触媒の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen‐9‐ones)が挙げられ、これらを単独または混合物として用いられる。
増感剤の具体例としては、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
コア層形成用材料100中の増感剤の合有量は、特に限定されないが、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
さらに、コア層形成用材料100中には、酸化防止剤を添加することができる。これにより、望ましくないフリーラジカルの発生や、ポリマー115の自然酸化を防止することができる。その結果、得られたコア層13の特性の向上を図ることができる。
コア層形成用材料(ワニス)100の調製に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒等の各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
さて、支持基板161上に形成された液状被膜中から溶媒を除去(脱溶媒)する方法としては、たとえば、自然乾燥、加熱、減圧下での放置、不活性ガスの吹付け(プロー)などによる強制乾燥の方法が挙げられる。
以上のようにして、支持基板161上には、コア層形成用材料100のフィルム状の固化物(または硬化物)である層110が形成される。このとき、層(PITDMの乾燥フィルム)110は、第1の屈折率を有している。この第1の屈折率は、層110中に一様に分散(分布)するポリマー115およびモノマーの作用による。
次に、図10に示されるように、開口(窓)1371が形成されたマスク(マスキング)137を用意し、このマスク137を介して、層110に対して活性放射線130を照射する。
以下では、モノマーとして、ポリマー115より低い屈折率を有するものを用い、また、触媒前駆体として、活性放射線130の照射に伴って活性化温度が低下するものを用いる場合を一例に説明する。すなわち、ここで示す例では、活性放射線130の照射領域125が側面クラッド部150となる。したがって、ここで示す例では、マスク137には、形成すべき側面クラッド部150のパターンと等価な開口(窓)1371が形成される。この開口1371は、照射する活性放射線130が透過する透過部を形成するものである。
マスク137は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層110上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
マスク137として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
また、図10においては、形成すべき側面クラッド部150のパターンと等価な開口(窓)1371は、活性放射線130の未照射領域140のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線130の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
用いる活性放射線130は、助触媒に対して、光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものであればよく、たとえば、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光の他、電子線やX線を用いることもできる。これらの中でも、活性放射線130は、助触媒の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、助触媒を比較的容易に活性化させることができる。
また、活性放射線130の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。これにより、助触媒を確実に活性化させることができる。
前記マスク137の構成材料としては、照射する活性放射線130により適宜選定される。具体的には、マスク137の構成材料としては、活性放射線130を遮光し得る材料とされる。このような特性を有するものであれば、マスク137の材料自体は、公知のいずれのものも使用することができる。
マスク137を介して、活性放射線130を層110に照射すると、活性放射線130が照射された照射領域125内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線130の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域125内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域125内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことを言う。
したがって、活性放射線130照射後においても、例えば−40℃程度で、層110を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線130照射後の層110を複数用意しておき、これらに一括して加熱処理を施すことにより、コア層13を得ることができ、利便性が高い。
なお、活性放射線130として、レーザ光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク137の使用を省略してもよい。
次に、層110に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。これにより、照射領域125内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域125内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域125と未照射領域140との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域140からモノマーが拡散(モノマーディフュージョン)して照射領域125に集まってくる。
その結果、照射領域125では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、モノマーの重合体としては、主に付加(共)重合体が生成する。
一方、未照射領域140では、当該領域から照射領域125にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー115の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域125と未照射領域140との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、図11に示すように、各コア部132、133(未照射領域140)と側面クラッド部150(照射領域125)とが形成される。
上記加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。また、加熱時間は、照射領域125内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
次に、層110に対して第2の加熱処理を施す。これにより、未照射領域140および/または照射領域125に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各照射領域125、140に残存するモノマーを反応させる。
このように、各照射領域125、140に残存するモノマーを反応させることにより、得られる各コア部132、133および側面クラッド部150の安定化を図ることができる。
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
次に、層110に対して第3の加熱処理を施す。これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、各コア部132、133および側面クラッド部150の更なる安定化を図ることができる。
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上の工程を経て、コア層13が得られる。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、各コア部132、133と側面クラッド部150との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、第2の加熱処理や第3の加熱処理を省略してもよい。
次に、図12に示すように、支持基板162上に、クラッド層11(12)を形成する。
クラッド層11(12)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用材料)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
クラッド層11(12)を塗布法で形成する場合、例えば、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
支持基板162には、支持基板161と同様のものを用いることができる。
クラッド層11(12)の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、複合体(積層体)など)用いることができる。
これらのうち、特に耐熱性に優れるという点で、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、またはそれらを含むもの(主とするもの)を用いるのが好ましく、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。
ノルボルネン系ポリマーは、耐熱性に優れるため、これをクラッド層11(12)の構成材料として使用する光導波路集合体1では、光導波路集合体1に導体層を形成する際、導体層を加工して配線を形成する際、光学素子を実装する等に加熱されたとしても、クラッド層11(12)が軟化して、変形するのを防止することができる。
また、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いクラッド層11(12)を得ることができる。
また、ノルボルネン系ポリマーまたはその原料であるノルボルネン系モノマーは、比較的安価であり、入手が容易であることからも好ましい。
さらに、クラッド層11(12)の材料として、ノルボルネン系ポリマーを主とするものを用いると、曲げ等の変形に対する耐性に優れ、繰り返し湾曲変形した場合でも、クラッド層11、12とコア層13との層間剥離が生じ難く、クラッド層11、12の内部にマイクロクラックが発生することも防止される。しかも、コア層13の構成材料として好適に用いられる材料と同種となるため、コア層13との密着性がさらに高いものとなり、クラッド層11(12)とコア層13との間での層間剥離を防止することができる。このようなことから、光導波路集合体1の光伝送性能が維持され、最終的に耐久性に優れた光導波路が得られる。
また、クラッド層11(12)の材料としては、ノルボルネン系ポリマーの中でも特に付加(共)重合体が好ましい。このものは、透明性、耐熱性および可撓性に富むことからも好ましい。
また、特に、ノルボルネン系ポリマーは、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、クラッド層11(12)において、ノルボルネン系ポリマーの少なくとも一部のものの重合性基同士を、直接または架橋剤を介して架橋させることができる。また、重合性基の種類、架橋剤の種類、コア層13に用いるポリマーの種類等によっては、このノルボルネン系ポリマーとコア層13に用いるポリマーとを架橋させることもできる。換言すれば、かかるノルボルネン系ポリマーは、その少なくとも一部のものが重合性基において架橋しているのが好ましい。
その結果、クラッド層11(12)自体の強度や、クラッド層11(12)とコア層13との密着性の更なる向上を図ることができる。
このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位のうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、架橋密度をさらに向上させることができ、前記効果がより顕著となる。
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基は、疎水性が極めて高いため、クラッド層11(12)の吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。また、アリール基は、脂溶性(親油性)に優れ、前述したようなコア層13に用いられるポリマーとの親和性が高いため、クラッド層11(12)とコア層13との間での層間剥離をより確実に防止することができ、より耐久性に優れた光導波路集合体1が得られる。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高くなるため、クラッド層11、12に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
なお、クラッド層11(12)に用いるノルボルネン系ポリマーは、比較的屈折率の低いものが好適であるのに対して、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むと、一般に屈折率が高くなる傾向を示すが、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、屈折率の上昇を防止することもできる。
ノルボルネン系ポリマーは、前述した特性に加えて、比較的低い屈折率のものであり、かかるノルボルネン系ポリマーを主材料としてクラッド層11(12)を構成することにより、光導波路集合体1の光伝送性能をより向上させることができる。
なお、ノルボルネン系ポリマーが、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含む場合、(メタ)アクリル基同士は、加熱により比較的容易に架橋(重合)させることができるが、クラッド層形成用材料中に、ラジカル発生剤を混合することにより、(メタ)アクリル基同士の架橋反応を促進することができる。
ラジカル発生剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,1−ビス(t−ブチルペロキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が好適に用いられる。
また、ノルボルネン系ポリマーが、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含む場合、これらの重合性基同士を直接架橋させるためには、クラッド層形成用材料中に、前述した助触媒と同種の物質(光酸発生剤または光塩基発生剤)を混合しておき、この物質の作用により、エポキシ基やアルコキシシリル基を架橋させればよい。
一方、エポキシ基同士、(メタ)アクリル基同士やアルコキシシリル基同士を架橋剤を介して架橋させるためには、さらに、クラッド層形成用材料中に、架橋剤として、各重合性基に対応する重合性基を少なくとも1つ有する化合物を混合するようにすればよい。
エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ−GPS)、シリコーンエポキシ樹脂等が好適に用いられる。
(メタ)アクリル基を有する架橋剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラントリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等が好適に用いられる。
アルコキシシリル基を有する架橋剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランのようなシランカップリング剤等が好適に用いられる。
これらの重合性基同士の架橋反応は、本工程の最終段階で行うようにしてもよいし、光導波路集合体1を得た後に行うようにしてもよい。
また、クラッド層形成用材料中には、各種の添加剤を添加(混合)するようにしてもよい。
たとえば、クラッド層形成用材料中には、前記コア層形成用材料で挙げたモノマー、触媒前駆体および助触媒を混合してもよい。これにより、クラッド層11(12)中において、前述したのと同様にして、モノマーを反応させて、クラッド層11(12)の屈折率を変化させることができる。
特に、モノマーとしては、架橋性モノマーを含むものを用いると、クラッド層11(12)において、ノルボルネン系ポリマーの少なくとも一部のものを、架橋性モノマーを介して架橋させることができる。また、架橋剤の種類、コア層13に用いるポリマーの種類等によっては、このノルボルネン系ポリマーとコア層13に用いるポリマーとを架橋させることもできる。
また、この場合、クラッド層11(12)中において、屈折率の差を設けることが要求されないので、助触媒を省略して、加熱により容易に活性化する触媒前駆体を用いることもできる。
かかる触媒前駆体としては、例えば、[Pd(PCy3)2(O2CCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[2−methallylPd(PCy3)2]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[Pd(PCy3)2H(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[Pd(P(iPr)3)2(OCOCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
その他の添加剤としては、前述したような酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を混合することにより、クラッド材(ノルボルネン系ポリマー)の酸化による劣化を防止することができる。
以上のようにして、支持基板162上に、クラッド層11(12)が形成される。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.3〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路集合体1が不要に大型化(圧膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
次に、支持基板161からコア層13を剥離し、このコア層13を、図13(a)に示すように、クラッド層11が形成された支持基板162と、クラッド層12が形成された支持基板162とで挟持する。
そして、図13(a)中の矢印で示すように、クラッド層12が形成された支持基板162の上面側から加圧し、クラッド層11、12とコア層13とを圧着する。これにより、クラッド層11、12とコア層13とが接合、一体化される。
この圧着作業は、加熱下で行われるのが好ましい。加熱温度は、クラッド層11、12やコア層13の構成材料等により適宜決定されるが、通常は、80〜200℃程度が好ましく、120〜180℃程度がより好ましい。
次いで、クラッド層11、12から、それぞれ、支持基板162を剥離、除去する。これにより、図13(b)に示す光導波路集合体1が得られる。
このような光導波路集合体1の好ましい例では、コア層13において、各コア部132、133が第1のノルボルネン系材料を主材料として構成され、側面クラッド部150が第1のノルボルネン系材料より低い屈折率を有する第2のノルボルネン系材料を主材料として構成され、クラッド層11、12が、それぞれ、第1のノルボルネン系材料(コア層13の各コア部132、133)より屈折率が低いノルボルネン系ポリマーを主材料として構成される。
そして、第1のノルボルネン系材料と前記第2のノルボルネン系材料とは、いずれも、同一のノルボルネン系ポリマーを含有するが、このノルボルネン系ポリマーと異なる屈折率を有するノルボルネン系モノマーの反応物の含有量が異なることにより、互いに屈折率が異なっている。
ノルボルネン系ポリマーは、透明性が高いため、かかる構成の光導波路集合体1では、高い光伝送性能が得られる。
また、このような構成により、各コア部132、133と側面クラッド部150との間の高い密着性のみならず、コア層13とクラッド層11およびクラッド層12との間の高い密着性が得られ、光導波路集合体1に曲げ等の変形が生じた場合でも、各コア部132、133と側面クラッド部150との剥離や、コア層13とクラッド層11、12との層間剥離が生じ難く、各コア部132、133内や側面クラッド部150内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路集合体1の光伝送性能が維持される。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、高い耐熱性、高い疎水性を有するため、かかる構成の光導波路集合体1では、耐久性に優れたものとなる。
また、光導波路集合体1に高い耐熱性や高い疎水性を付与することができるため、その特性の低下(劣化)を防止しつつ、前述したような各種の方法を採用して導体層を確実に形成することができる。特に、光の伝送に重要な各コア部132、133と重なるように、導体層を形成した場合でも、各コア部132、133の変質・劣化を防止することができる。
また、以上のような製造方法によれば、簡単な処理で、しかも短時間に、所望の形状を有し、かつ、寸法精度の高い各コア部132〜136を有する光導波路集合体1を得ることができる。
(光導波路の製造方法)
次に、光導波路フィルム10を複数個に分離し、複数の光導波路20を製造する方法について説明する。なお、以下では、光導波路フィルム10を切断する切断手段として、マルチブレードソー7を用いた場合について説明する。
図14および図15は、図5に示す光導波路フィルムを分離して複数の光導波路を製造する方法を説明するための図である。
まず、光導波路フィルム10の光導波路集合体1について、製造すべき光導波路20の幅と、導波路間隔(側面クラッド部150の幅)とが一致する部分を、目測または計測により特定する。ここでは、一例として、前記一致が得られる位置が、図5に切断線CL1で示される位置と、切断線CL2で示される位置とである場合について説明する。
次に、図14(a)に示すように、これらの切断線CL1および切断線CL2に沿って光導波路フィルム10を切断する。切断後の切断線CL1より右側の切断片、および、切断線CL2より左側の切断片は、それぞれ不要である。
次いで、製造すべき光導波路20の幅と、マルチブレードソー7の隣り合うブレードソー71同士の間隔(対向する面同士の離間距離)とが一致するように、ブレードソー71同士の間隔を調整する。一旦ブレードソー71同士の間隔を調整した後は、製造すべき光導波路20の幅が変わらない限り、このブレードソー71同士の間隔は変更する必要はない。
そして、光導波路フィルム10の切断線CL1と各アライメントライン191、192との交点Qに、各ブレードソー71が位置するように、光導波路フィルム10とマルチブレードソー7の位置を合わせる。なお、製造すべき光導波路20の幅と、導波路間隔とが一致しており、かつ、製造すべき光導波路20の幅と、マルチブレードソー7の隣り合うブレードソー71同士の間隔とが一致していることから、当然に、導波路間隔の中間線である各アライメントライン191、192の間隔は、ブレードソー71同士の間隔と一致している。このため、1つの交点Qに対して1つのブレードソー71の位置を合わせさえすれば、その他の交点Qとその他のブレードソー71との位置合わせは、自然になされる。このようにすれば簡単に位置合わせを行うことができる。
次いで、マルチブレードソー7により、光導波路フィルム10を切断する。各ブレードソー71は、切断線CL1と各アライメントライン191、192との交点Qを起点とし、X軸と平行に移動しつつ光導波路フィルム10を切断する。その結果、図15に示すように、光導波路フィルム10を複数に分離することができ、複数の光導波路20が同時に製造される。
このようにして製造された光導波路20は、長手方向の途中で各コア部132〜136が湾曲し、光導波路20の幅に対して各コア部132〜136が偏心した部分を有しているものの、光導波路20の両端面では、光導波路20の幅の中央に各コア部132〜136の端面が露出している。光導波路20では、その長手方向の途中で各コア部132〜136が湾曲していたとしても、光伝送特性にはほとんど影響がない。しかしながら、端面では、光導波路20との接続相手先との接続性の観点から、各コア部132〜136に偏心があると、これにより光損失が生じ、接続性が低下するおそれがあるものの、図15に示す光導波路20は、端面における各コア部132〜136の偏心が抑えられているため、光損失の少ないものとなる。
また、マルチブレードソー7が備える複数のブレードソー71は、それぞれの厚さに個体差があるため、それによって切断幅がばらつくおそれがある。しかしながら、光導波路フィルム10は、前述したように、それぞれが有する寸法の個体差を考慮したものになっているため、ブレードソー71の厚さの個体差が光導波路フィルム10の寸法の個体差の範囲内であれば、ブレードソー71の厚さの個体差も吸収することができる。
以上のような方法により、寸法における未知の個体差を含む光導波路フィルム10を切断する場合でも、その都度個体差を計測してそれに合わせてブレードソー71同士の間隔を調整する等の煩雑な作業を伴うことなく、コア部の偏心の少ない複数の光導波路20を効率よく製造することができる。
なお、図14および図15では、光導波路フィルム10を5つの光導波路20に個片化するにあたって、6枚のブレードソー71を備えるマルチブレードソー7を用いた場合について図示しているが、6枚未満(例えば1枚または2枚)のブレードソー71を用い、これを製造すべき光導波路20の幅に合わせたピッチでY方向にずらしつつ光導波路フィルム10を切断するようにしてもよい。この場合でも、ブレードソー71をずらすピッチを、光導波路フィルム10の寸法の個体差に応じてその都度変更することなく、すなわち前記ピッチを等間隔に固定したとしても、光導波路フィルム10の切断を行うことができる。その結果、煩雑な作業を伴うことなく、コア部の偏心の少ない複数の光導波路20を効率よく製造することができる。
(積層型光導波路フィルムの構造)
図16(a)および図16(b)は、積層型光導波路フィルムの概略構造を示す断面図である。
図16(a)に示す積層型光導波路フィルムは、上記光導波路集合体1と同じ構造を有する第1光導波路集合体1Aおよび第2光導波路集合体1Bが接着層8を介して積層された構造を有している。第1光導波路集合体1Aおよび第2光導波路集合体1Bの各々の製造方法は、上記光導波路集合体1の製造方法と同じである。
また、図16(b)に示す積層型光導波路フィルムは、クラッド層(下部クラッド層)11、コア層(下部コア層)13、クラッド層(中間クラッド層)12、コア層(上部コア層)13およびクラッド層(上部クラッド層)12がこの順に積層された構造を有している。よって、図16(b)に示す積層型光導波路フィルムは、実質的に2つの光導波路が積層された構造を有する。下部クラッド層11、下部コア層13および中間クラッド層12からなる積層構造は、上記光導波路集合体1の製造方法と同様に形成される。その後、この積層構造上に上部コア層13および上部クラッド層12が、上記光導波路集合体1のコア層13およびクラッド層12と同じ工程で形成される。
このようにして得られた積層型光導波路フィルムを、前述したような方法で複数の光導波路に分離する。これにより、コア部の偏心の少ない複数の積層型光導波路を効率よく製造することができる。
以上、本発明の光導波路集合体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されていてもよい。
例えば、前記実施形態では、アライメントマーク181とライン状パターン171a、171bとによりアライメントパターン171が構成されるが、これに限定されるものではなく、アライメントマークを表すパターンとライン状パターンを表すパターンとが完全に分離されていてもよい。
また、このような本発明の光導波路集合体から得られた光導波路は、例えば光通信用の光配線として用いることができる。
また、このような光導波路を備えた光配線(本発明の光配線)は、既存の電気配線とともに基板上に混載されることにより、いわゆる「光・電気混載基板」を構成することができる。かかる光・電気混載基板(本発明の光電気混載基板)では、例えば、光配線(光導波路のコア部)で伝送された光信号を、光デバイスにおいて電気信号に変換し、電気配線に伝達する。これにより、光配線の部分で、従来の電気配線よりも高速かつ大容量の情報伝送を可能にする。したがって、例えばCPUやLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間をつなぐバス等に、この光・電気混載基板を適用することにより、システム全体の性能を高めるとともに、電磁ノイズの発生を抑制することができる。
なお、かかる光・電気混載基板は、例えば、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等、大容量のデータを高速に伝送する電子機器類に搭載することが考えられる。このように光・電気混載基板を備えた電子機器(本発明の電子機器)は、内部の情報処理速度に優れた高い性能を発揮し得るものとなる。