以下、本発明の光導波路および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光導波路>
まず、本発明の光導波路について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の光導波路の第1実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図、図2は、図1に示すX−X線断面図について、横軸にコア層の厚さの中心線C1における位置をとり、縦軸に屈折率をとったときの屈折率分布の一例を示す図、図3は、図1に示す光導波路のコア部の1つに光を入射したときの出射光の強度分布の一例を示す図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図1は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
図1に示す光導波路1は、一方の端部から他方の端部に光信号を伝送する光配線として機能する。
以下、光導波路1の各部について詳述する。
光導波路1は、図1中の下側からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12に分かれている。
後述する光導波路1によれば、伝送損失およびパルス信号の鈍りが抑えられ、大容量の光信号を入射しても信頼性の高い光通信を行うことができる。
また、コア層13中に複数のコア部を形成して多チャンネル化した場合、光導波路1は、その幅方向におけるクロストークを抑制し得るものとなる。
さらには、複数のコア層13を積層して多チャンネル化した場合、光導波路1は、その厚さ方向におけるクロストークをも抑制するものとなる。
すなわち、光導波路1は、高い光伝送特性を有するものとなる(第1の効果)。
光導波路1の幅方向(層内方向)の屈折率分布Wには、第1の極大値を挟んで極小値が位置するため、コア部とクラッド部との間に大きな屈折率差が形成される。これにより、コア部からは光が漏れ難くなる。また、クラッド部には第1の極大値より小さい第2の極大値が位置するため、たとえコア部から光が漏れ出したとしても、その漏出光はクラッド部の第2の極大値に閉じ込められる。これにより、幅方向に隣接するコア部の間のクロストークが抑制される。
加えて、光導波路1の厚さ方向(層間方向)の屈折率分布Tも、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値とそれより小さい第2の極大値が交互に並ぶという分布(W型の分布)になっている。このような分布になっていると、コア部における光閉じ込め効果は、ステップインデックス(SI)型のそれに比べて非常に優れたものとなる。その結果、光伝送損失の発生が効果的に抑制され、高い光伝送特性を実現できる。この理由は必ずしも明らかではないが、W型の屈折率分布により、コア部からの光の浸み出しが効果的に抑制されるためと考えられる。
また、屈折率分布Tには、コア層とクラッド層との界面近傍において、屈折率が徐々に変化する遷移領域が形成される。この遷移領域は、コア層とクラッド層との界面からコア層側やクラッド層側にわたって形成されている。そして、コア層内の遷移領域とクラッド層内の遷移領域は、それぞれ、コア層内を伝搬する光に対して「ポテンシャル障壁」として機能する。SI型の屈折率分布Tを有する光導波路では、コア層とクラッド層との境界において不連続的に屈折率が変化している面のみが「ポテンシャル障壁」として機能するのに対し、W型の屈折率分布Tを有する光導波路1では、コア層からクラッド層にかけての所定の厚さの領域が「ポテンシャル障壁」として機能する。後者の光導波路1では、コア層からの光の浸みだしが効果的に抑制され、高い光伝送特性を実現できる。
また、光導波路1では、W型の屈折率分布Tに基づき、クラッド層にも一定の光閉じこめ効果が得られる(第2の効果)。したがって、光導波路1では、幅方向において漏出した光をクラッド部に閉じ込めるだけでなく、厚さ方向において漏出した光をクラッド層に閉じ込めることもできる。これにより、幅方向と厚さ方向の双方においてクロストークを確実に抑制することができる。
また、光導波路1では、使用態様に応じて、光損失の低減を最適化するための設計を容易にすることができる(第3の効果)。
例えば、幅方向の屈折率分布Wと厚さ方向の屈折率分布Tとを異ならせることが可能である。具体的には、厚さ方向の屈折率差を幅方向の屈折率差よりも大きくすることにより、光導波路1のフィルムをコア部の延在方向に折り曲げる、または巻き上げるときの光損失を低減させることができる。これは、光損失に影響がない最小曲がり半径(曲率)は屈折率差に依存し、屈折率差が大きいほど最小曲がり半径を小さくすることができるからである。
また、光導波路1は、設計の自由度が高い(第4の効果)。
光導波路1は、例えばフィルムを積層して形成されるが、このうちクラッド層の厚さはコア層の厚さとの関係で任意に決定することができる。しかも厚さを厳密に制御することができるので、光結合損失の低減といった効果を最大化することができる。さらに、光導波路1を折り曲げた際には、折り曲げ部の内側には圧縮力が、外側には引張力がそれぞれ加わるが、それに伴って屈折率が不本意に変化してしまうことがある。光導波路1では、このような折り曲げを踏まえ、コア層を挟むクラッド層の厚さを異ならせる設計を容易に行うことができる。
また、光導波路1は、歩留まりよく製造可能なものである(第5の効果)。
光導波路1のコア部は、コア層における露光領域の選択のみで製造することが可能である。このため、コア部の厚さ方向の位置ずれや幅方向の位置ずれが抑制される。すなわち、コア層内におけるコア部の位置を高精度に制御することが容易であり、さらには、複数のコア層を積層した場合でも、層間方向のコア部の位置ずれが起き難い。したがって、光導波路1は歩留まりよく製造することができる。
(コア層)
このうち、コア層13には、幅方向において屈折率が偏りを有してなる屈折率分布が形成されている。この屈折率分布は、相対的に屈折率の高い領域と低い領域とを有しており、これにより入射された光を屈折率の高い領域に閉じ込めて伝搬することができる。
図2(a)は、図1のX−X線断面図であり、図2(b)は、X−X線断面図のコア層13の厚さ方向の中心を通過する中心線C1上の屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
コア層13は、その幅方向において、図2(b)に示すような、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と、5つの極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5と、を含む屈折率分布Wを有している。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の大きい極大値(第1の極大値)と、相対的に屈折率の小さい極大値(第2の極大値)とが存在している。
このうち、極小値Ws1と極小値Ws2との間および極小値Ws3と極小値Ws4との間には、それぞれ相対的に屈折率の大きい極大値Wm2およびWm4が存在しており、それ以外の極大値Wm1、Wm3およびWm5は、それぞれ相対的に屈折率の小さい極大値である。
光導波路1では、図2に示すように、極小値Ws1と極小値Ws2との間が、相対的に屈折率の大きい極大値Wm2を含んでいることからコア部14となり、同様に、極小値Ws3と極小値Ws4との間も極大値Wm4を含んでいることからコア部14となる。なお、より詳しくは、極小値Ws1と極小値Ws2との間をコア部141とし、極小値Ws3と極小値Ws4との間をコア部142とする。
また、極小値Ws1の左側の領域、極小値Ws2と極小値Ws3との間、および極小値Ws4の右側の領域は、それぞれコア部14を両側面に隣接する領域であることから側面クラッド部15となる。なお、より詳しくは、極小値Ws1の左側の領域を側面クラッド部151とし、極小値Ws2と極小値Ws3との間を側面クラッド部152とし、極小値Ws4の右側の領域を側面クラッド部153とする。
すなわち、屈折率分布Wは、少なくとも、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有していればよい。なお、この領域は、コア部の数に応じて繰り返し設けられ、本実施形態のようにコア部14が2つである場合、屈折率分布Wは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値が交互に並ぶ領域を有していればよい。
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Wは、光導波路1の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
以上のような屈折率分布Wに伴い、コア層13には、長尺状の2つのコア部14と、これらのコア部14の各両側面に隣接する3つの側面クラッド部15とが形成されることとなる。
より詳しくは、図1に示す光導波路1には、並列する2つのコア部141、142と、並列する3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。これにより、各コア部141、142は、それぞれ、各側面クラッド部151、152、153および各クラッド層11、12で囲まれた状態となる。ここで、これらのコア部141、142の屈折率は、当然、側面クラッド部151、152、153の屈折率より高くなっているので、各コア部141、142と各側面クラッド部151、152、153との界面において光の反射を生じさせることができる。なお、図1に示す各コア部14には密なドットを付し、各側面クラッド部15には疎なドットを付している。
光導波路1では、コア部14の一方の端部に入射された光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)との界面で反射させ、他方に伝搬させることにより、コア部14の他方の端部から取り出すことができる。
また、図1に示すコア部14は、その横断面形状が正方形または長方形のような四角形(矩形)をなしているが、この形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、五角形、六角形等の多角形であってもよい。
コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
ここで、4つの極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、それぞれ、隣接する側面クラッド部15における平均屈折率WA未満である。これにより、各コア部14と各側面クラッド部15との間に、側面クラッド部15よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14から側面クラッド部15への光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
また、屈折率分布Wは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、ステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
さらに、上述したような各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Wによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
なお、屈折率分布Wにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Wの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能なものであるという状態である。
また、本実施形態のように、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを作り込む場合、一般的には、屈折率差を形成する原理に伴う制約上、コア部14と側面クラッド部15との平均の屈折率差を十分に大きくすることができないが、本発明によれば、平均の屈折率差が小さくても、コア部14に光を確実に閉じ込めることができる。このため、同一層からコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法で製造される光導波路1において、本発明は特にその効果を発揮する。
また、屈折率分布Wのうち、極大値Wm2、Wm4は、図2に示すようにコア部141、142に位置しているが、コア部141、142の中でもその幅の中心部に位置しているのが好ましい。これにより、各コア部141、142では、伝送光がコア部141、142の幅の中心部に集まる確率が高くなり、相対的に側面クラッド部151、152、153に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
なお、コア部141の幅の中心部とは、極小値Ws1と極小値Ws2の中点から両側に、コア部141の幅の30%の距離の領域である。
また、極大値Wm2、Wm4の位置は、できればコア部141、142の幅の中心部に位置していることが望まれるが、必ずしも中心部でなくても、コア部141、142の縁部近傍(各側面クラッド部151、152、153との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部141、142の伝送損失をある程度抑えることができる。
なお、コア部141の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部141の幅の5%の距離の領域である。
一方、屈折率分布Wのうち、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、図2(b)に示すように側面クラッド部151、152、153中に位置しているが、特に側面クラッド部151、152、153の縁部近傍(コア部141、142との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、142中の伝送光が、側面クラッド部151、152、153中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、142の伝送損失を低減することができる。
なお、側面クラッド部151、152、153の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、側面クラッド部151、152、153の幅の5%の距離の領域である。
また、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、側面クラッド部151、152、153の幅の中央部に位置しており、しかも、極大値Wm1、Wm3、Wm5から隣接する極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4に向かっては、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、142中の極大値Wm2、Wm4と、側面クラッド部151、152、153中の極大値Wm1、Wm3、Wm5との離間距離は、最大限確保され、しかも極大値Wm1、Wm3、Wm5近傍に光を確実に閉じ込めることができることになるため、前述したコア部141、142からの伝送光の漏出をより確実に抑制することができる。
さらに、極大値Wm1、Wm3、Wm5は、前述したコア部141、142に位置する極大値Wm2、Wm4よりも屈折率の小さいものであるので、コア部141、142のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が高くなっているため、わずかな光伝送性を有することとなる。その結果、側面クラッド部151、152、153は、コア部141、142から漏出した伝送光を閉じ込めることで、他のコア部への波及を防止する作用を有するものとなる。すなわち、極大値Wm1、Wm3、Wm5が存在することで、クロストークを抑制することができる。
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4は、前述したように、隣接する側面クラッド部15の平均屈折率WA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜20%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と側面クラッド部15の平均屈折率WAとの差が前記下限値を下回る場合は、側面クラッド部15における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、側面クラッド部15における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、142の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と極大値Wm1、Wm3、Wm5との差は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4と極大値Wm2、Wm4との差の6〜90%程度であるのが好ましく、10〜70%程度であるのがより好ましく、14〜40%程度であるのがさらに好ましい。これにより、側面クラッド部15における屈折率の高さとコア部14における屈折率の高さとのバランスが最適化され、光導波路1は、特に優れた光伝送性を有するとともにクロストークをより確実に抑制し得るものとなる。
なお、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4とコア部141、142中の極大値Wm2、Wm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.03程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、142中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
また、コア部141、142における屈折率分布Wは、図2(b)に示すように、横軸にコア層13の横断面の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Wm2近傍および極大値Wm4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば上に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。屈折率分布Wがこのような形状をなしていると、コア部141、142における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
また、屈折率分布Wは、図2(b)に示すように、極小値Ws1近傍、極小値Ws2近傍、極小値Ws3近傍および極小値Ws4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば下に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。
ここで、本発明者は、光導波路1の複数のコア部141、142のうち、所望の1つの一方の端部に光を入射し、他方の端部における出射光の強度分布を取得したとき、その強度分布が、光導波路1のクロストークを抑制するにあたって極めて有用な分布になることを見出した。
図3は、光導波路1のコア部141に光を入射したときの出射光の強度分布を示す図である。
コア部141に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、本発明の光導波路によれば、コア部141に隣り合うコア部142において極小値をとるような強度分布が得られる。このようにコア部142の位置に出射光の強度分布の極小値が一致することで、コア部142におけるクロストークは極めて小さく抑えられることとなるため、多チャンネル化および高密度化によっても混信の発生を確実に防止し得る光導波路1が得られる。
なお、従来の光導波路では、光を入射するコア部に隣り合うコア部において出射光の強度分布が極小値をとることはなく、むしろ極大値をとっていたので、クロストークの問題が発生していた。これに対し、上述したような本発明の光導波路における出射光の強度分布の振る舞いは、クロストークを抑制する上で極めて有用なものである。
本発明の光導波路においてこのような強度分布が得られる詳細な理由は明らかでないものの、理由の1つとしては、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4を有し、かつ、屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化している、という特徴的な屈折率分布Wが、従来であればコア部142において極大値を有していた出射光の強度分布を、コア部142に隣接する側面クラッド部153等にシフトさせていることが挙げられる。すなわち、このシフトにより、クロストークが確実に抑制されているのである。
なお、出射光の強度分布が側面クラッド部15にシフトしたとしても、受光素子等はコア部14の位置に合わせて配置されているため、混信を招くおそれはほとんどなく、光通信の品質を劣化させることはない。
また、上記のような出射光の強度分布は、本発明の光導波路において観測される確率は高いものの、必ず観測されるわけではなく、入射光のNA(numerical aperture)やコア部141の横断面積、コア部141、142のピッチ等によっては、明瞭な極小値が観測されなかったり、極小値の位置がコア部142から外れたりする場合もあるが、このような場合でもクロストークは十分に抑制される。
また、図2(b)に示す屈折率分布Wにおいて、側面クラッド部15における平均屈折率をWAとしたとき、極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA以上である部分の幅をa[μm]とし、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が連続して平均屈折率WA未満である部分の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏することが可能となる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、142に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、142の幅やピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
なお、側面クラッド部15における平均屈折率WAは、極大値Wm1と極小値Ws1との中点で近似することができる。
また、各極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5は、それぞれ前述したように上に凸の略U字状であってもよいが、頂部近傍において屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでいてもよい。屈折率分布Wが各極大値の頂部近傍においてこのような形状をなしていても、本発明の光導波路は前述したような作用・効果を奏するものとなる。ここで、屈折率が実質的に変化していない平坦部とは、屈折率の変動が0.001未満である領域であって、その両側では屈折率が連続的に低下している領域のことをいう。
平坦部の長さは、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下とされる。
また、本実施形態では、コア層13が2つのコア部14を有する場合について説明したが、コア部14の数は特に限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
なお、例えばコア部14が1つである場合には、光導波路1の横断面の屈折率分布Wが、2つの極小値を有し、その極小値が前述したように平均屈折率WA未満であり、かつ屈折率分布W全体で屈折率が連続的に変化していればよく、コア部14の数が3、4、5・・・と増える場合には、それに応じて、屈折率分布Wが有する極小値の数は、6、8、10・・・と増えることとなる。
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリシラン、ポリウレタン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。ノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
(クラッド層)
クラッド層11および12は、それぞれ、コア層13の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が好適に発揮される。
また、クラッド層11および12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア部14とクラッド層11、12との境界において光を確実に反射させるため、コア部14の構成材料の屈折率が十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、各コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
ところで、光導波路1の厚さ方向の屈折率分布Tは、前述した幅方向の屈折率分布Wとは異なる形状を有している。
図4(a)は、図1に示すX−X線断面図のコア部を中心とする一部を切り出した図であり、図4(b)は、X−X線断面図のコア部の幅方向の中心を通過する中心線C2上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。なお、図4(b)は、横軸に屈折率をとり、縦軸に中心線C2上の位置をとったときの屈折率分布Tの一例を示す図である。
前述したように、光導波路1は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12に分かれているが、その横断面のうち、コア部14を通る厚さ方向の屈折率分布Tは、その中心部に位置する極大値Tmと、極大値Tmの両側にそれぞれ位置する極小値Ts1、Ts2を有している。なお、極大値Tmの下側に位置する極小値をTs1とし、上側に位置する極大値をTs2とする。
光導波路1では、図4に示すように、極小値Ts1と極小値Ts2との間が極大値Tmを含んでいることから、この領域がコア部14となる。
一方、極小値Ts1の下側の領域がクラッド層11となり、極小値Ts2の上側の領域がクラッド層12となる。
すなわち、屈折率分布Tは、少なくとも、極小値、極大値、極小値がこの順で並ぶ領域を有していればよい。
なお、この領域は、コア層13が積層される数に応じて繰り返し設けられ、例えばコア層13を2層設けた場合、屈折率分布Tでは、極小値と極大値が交互に並ぶこととなる。この場合、極大値については、相対的に大きい第1の極大値と、相対的に小さい第2の極大値が、交互に並んでいるのが好ましい。すなわち、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値・・・のように並んでいればよい。
また、これらの複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ズレ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
また、光導波路1は、細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Tは、光導波路1の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
ここで、極小値Ts1は、クラッド層11における平均屈折率TA未満であり、極小値Ts2は、クラッド層12における平均屈折率TA未満である。これにより、コア部14と各クラッド層11、12との間に、各クラッド層11、12よりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ts1、Ts2の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14から各クラッド層11、12への光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さい光導波路1が得られる。
また、屈折率分布Tは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、ステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減が図られる。
さらに、上述したような各極小値Ts1、Ts2を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Tによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
なお、屈折率分布Tにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Tの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能なものであるという状態である。
また、屈折率分布Tのうち、極大値Tmは、図4に示すようにコア部14に位置しているが、コア部14の中でもその厚さの中心部に位置している。これにより、コア部14では、伝送光がコア部14の厚さの中心部に集まる確率が高くなり、相対的に各クラッド層11、12に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、142の伝送損失をより低減することができる。
なお、コア部14の厚さの中心部とは、極小値Ts1と極小値Ts2の中点から両側に、コア部14の厚さの30%の距離の領域である。
また、極大値Tmの位置は、できればコア部14の厚さの中心部に位置していることが望まれるが、必ずしも中心部でなくても、コア部14の縁部近傍(各クラッド層11、12との界面近傍)以外に位置していれば、特性の著しい低下は免れる。すなわち、コア部14の伝送損失をある程度抑えることができる。
なお、コア部14の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部14の厚さの5%の距離の領域である。
一方、屈折率分布Tでは、各クラッド層11、12において、コア部14との界面近傍以外で最も高く、コア部14との界面近傍で最も低くなるよう屈折率が変化している。これにより、コア部14中の極大値Tmと、各クラッド層11、12中における屈折率の高い領域とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部14中の伝送光が、各クラッド層11、12中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部14の伝送損失を低減することができる。
なお、各クラッド層11、12におけるコア部14との界面近傍とは、この界面から内側に、各クラッド層11、12の厚さの5%の距離の領域である。
また、各クラッド層11、12における平均屈折率TAは、極小値Ts1、Ts2と各クラッド層11、12における最大値との中点で近似することができる。
また、前述したように複数のコア層13を積層する場合には、相対的に大きい第1の極大値がコア部中に位置し、相対的に小さい第2の極大値はクラッド層中に位置することとなる。この場合、第2の極大値は、クラッド層の厚さの中央部に位置しているのが好ましい。これにより、コア部中に位置する第1の極大値と、クラッド層中に位置する第2の極大値との離間距離が、最大限確保され、しかもコア部から漏れ出た光が、他のコア部に侵入しないよう、クラッド層中に閉じ込めることができるようになる。これにより、複数のコア層13を積層した場合でも、層間におけるクロストークを確実に抑制することができる。
また、極小値Ts1、Ts2は、前述したように、各クラッド層11、12の平均屈折率TA未満であるが、両者の差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ts1、Ts2とクラッド層11、12の平均屈折率TAとの差は、極小値Ts1、Ts2とコア部14中の極大値Tmとの差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、各クラッド層11、12は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ts1、Ts2と各クラッド層11、12の平均屈折率TAとの差が前記下限値を下回る場合は、各クラッド層11、12における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、各クラッド層11、12における光伝送性が大き過ぎて、コア部14の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、極小値Ts1、Ts2とコア部14中の極大値Tmとの屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部14中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
また、コア部14における屈折率分布Tは、横軸にコア部14の横断面の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき、極大値Tm近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば上に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。屈折率分布Tがこのような形状をなしていると、コア部14における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
また、屈折率分布Tは、極小値Ts1近傍および極小値Ts2近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば下に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。
(支持フィルム)
光導波路1の下面には、必要に応じて、図1に示すような支持フィルム2を積層するようにしてもよい。
支持フィルム2は、光導波路1の下面を支持して、保護・補強する。これにより、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
このような支持フィルム2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、支持フィルム2として金属箔が好ましく用いられる。
また、支持フィルム2の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1を確実に支持するとともに、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。
なお、支持フィルム2と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
(カバーフィルム)
一方、光導波路1の上面には、必要に応じて、図1に示すようなカバーフィルム3を積層するようにしてもよい。
カバーフィルム3は、光導波路1を保護するとともに、光導波路1を上方から支持するものである。これにより、汚れや傷などから光導波路1が保護され、光導波路1の信頼性および機械的特性を高めることができる。
このようなカバーフィルム3の構成材料としては、支持フィルム2の構成材料と同様であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料の他、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、金属材料の場合は、カバーフィルム3として金属箔が好ましく用いられる。また、光導波路1の途中にミラーを形成した場合には、カバーフィルム3を光が透過することになるので、カバーフィルム3の構成材料は実質的に透明であるのが好ましい。
また、カバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、3〜50μm程度であるのが好ましく、5〜30μm程度であるのがより好ましい。カバーフィルム3の厚さを前記範囲内とすることにより、カバーフィルム3は光通信において十分な光透過率を有するとともに、光導波路1を確実に保護するために十分な剛性を有するものとなる。
なお、カバーフィルム3と光導波路1との間は接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。このうち、接着剤としては前述したようなものを用いることができる。
また、本実施形態では、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の積層体からなる光導波路1について説明したが、これらが一体的に形成されたものでもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の光導波路の第2実施形態を示す(一部切り欠いて、および透過して示す)斜視図である。なお、以下の説明では、図5中の上側を「上」、下側を「下」という。また、図5は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
以下、光導波路の第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図5において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2実施形態は、クラッド層を介して積層された2層のコア層13を有している以外、第1実施形態と同様である。すなわち、図5に示す光導波路1は、下側からクラッド層11、コア層13、クラッド層121、コア層13、クラッド層122の5層をこの順で積層してなるものである。
このうち、2層のコア層13には、第1実施形態と同様、幅方向において並列した2つのコア部14と、各コア部14を挟むように並列した3つの側面クラッド部15と、が形成されている。
より詳しくは、図5に示す2層のコア層13のうち、下方のコア層131には、並列する2つのコア部141、142と、並列する3つの側面クラッド部151、152、153とが交互に設けられている。また、これにより、各コア部141、142は、それぞれ、各側面クラッド部151、152、153および各クラッド層11、121で囲まれた状態となる。
一方、上方のコア層132にも、並列する2つのコア部143、144と、並列する3つの側面クラッド部154、155、156とが交互に設けられている。これにより、各コア部143、144は、それぞれ、各側面クラッド部154、155、156および各クラッド層121、122で囲まれた状態となる。
また、図5において、各コア層131、132の左側に位置するコア部141、143は、それぞれ光導波路1の幅方向において同じ位置に設けられている。同様に、各コア層131、132の右側に位置するコア部142、144は、それぞれ光導波路1の幅方向において同じ位置に設けられている。
ここで、図5に示す光導波路1には、厚さ方向において屈折率が偏りを有してなる屈折率分布が形成されている。この屈折率分布は、相対的に屈折率の高い領域と低い領域とを有しており、これにより入射された光を屈折率の高い領域に閉じ込めて伝搬することができる。
以下、この屈折率分布Tの一例について説明する。
図6(a)は、図5に示すY−Y線断面図の一部を切り出した図であり、図6(b)は、このY−Y線横断面のコア部の幅方向の中心を通過する中心線C2’上の屈折率分布Tの一例を模式的に示す図である。なお、図6(b)は、横軸に屈折率をとり、縦軸に横断面のコア部の厚さ方向の位置をとったときの屈折率分布の一例を模式的に示す図である。
光導波路1は、図6(b)に示すような、4つの極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4と、5つの極大値Tm1、Tm2、Tm3、Tm4、Tm5と、を含む屈折率分布Tを有している。また、5つの極大値には、相対的に屈折率の大きい極大値(第1の極大値)Tm2、Tm4と、相対的に屈折率の小さい極大値(第2の極大値)Tm1、Tm3、Tm5と、が存在している。
このうち、極小値Ts1と極小値Ts2との間および極小値Ts3と極小値Ts4との間には、それぞれ相対的に屈折率の大きい極大値Tm2およびTm4が存在しており、それ以外の極大値Tm1、Tm3およびTm5は、それぞれ相対的に屈折率の小さい極大値である。
そして、極小値Ts1はクラッド層11とコア部141との境界線上に、極小値Ts2はコア部141とクラッド層121との境界線上に、極小値Ts3はクラッド層121とコア部143との境界線上に、極小値Ts4はコア部143とクラッド層122との境界線上に、それぞれ位置している。
また、極大値Tm2、Tm4は、コア部141、143の中心部に位置しているのが好ましく、一方、極大値Tm1、Tm3、Tm5は、クラッド層11、121、122の中心部に位置しているのが好ましい。
すなわち、屈折率分布Tは、少なくとも、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値がこの順で並ぶ領域を有していればよい。なお、この領域は、コア層の積層数に応じて繰り返し設けられ、本実施形態のようにコア層13の積層数が2層である場合、屈折率分布Tは、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値、極小値、第1の極大値、極小値、第2の極大値のように、極大値と極小値が交互に並び、かつ極大値については第1の極大値と第2の極大値が交互に並んだ形状であればよい。
また、これら複数の極小値、複数の第1の極大値、および複数の第2の極大値は、それぞれ互いにほぼ同じ値であることが好ましいが、極小値は第1の極大値や第2の極大値より小さく、第2の極大値は第1の極大値より小さいという関係が保持されれば、互いの値が多少ずれていても差し支えない。その場合、ずれ量は、複数の極小値の平均値の10%以内に抑えられているのが好ましい。
また、光導波路1は細長い帯状をなしており、上記のような屈折率分布Tは、光導波路1の長手方向全体においてほぼ同じ分布が維持されている。
ここで、4つの極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4は、それぞれ、隣接するクラッド層11、121、122における平均屈折率TA未満である。これにより、各コア部14と各クラッド層11、121、122との間に、各クラッド層11、121、122の平均屈折率TAよりもさらに屈折率の小さい領域が存在することとなる。その結果、各極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4の近傍では、より急峻な屈折率の勾配が形成され、これにより、各コア部14からの光の漏れが抑制されるため、伝送損失の小さく、かつ厚さ方向にクロストークの発生が抑制された光導波路1が得られる。
また、屈折率分布Tは、全体で屈折率が連続的に変化している。これにより、ステップインデックス型の屈折率分布を有する光導波路に比べ、コア部14に光を閉じ込める作用がより増強されるため、伝送損失のさらなる低減およびクロストークの発生のさらなる抑制が図られる。
さらに、上述したような各極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4を有するとともに、屈折率が連続的に変化している屈折率分布Tによれば、コア部14のより中心部に近い領域を伝送光が集中的に伝搬するため、光路ごとの伝搬時間に差が生じ難くなる。このため、伝送光にパルス信号が含まれている場合でも、パルス信号の鈍り(パルス信号の広がり)を抑制することができる。その結果、光通信の品質をより高め得る光導波路1が得られる。
なお、屈折率分布Tにおいて屈折率が連続的に変化しているとは、屈折率分布Tの曲線が各部で丸みを帯びており、この曲線が微分可能なものであるという状態である。
また、屈折率分布Tのうち、極大値Tm2、Tm4は、図6に示すようにコア部141、143に位置しているが、コア部141、143の中でもその厚さの中心部に位置している。これにより、各コア部141、143では、伝送光がコア部141、143の厚さの中心部に集まる確率が高くなり、相対的に各クラッド層11、121、122に漏れ出る確率が低くなる。その結果、コア部141、143の伝送損失をより低減するとともにクロストークをより抑制することができる。
なお、コア部141の厚さの中心部とは、極小値Ts1と極小値Ts2の中点から両側に、コア部141の厚さの30%の距離の領域である。
また、極大値Tm2、Tm4の位置は、できればコア部141、143の厚さの中心部に位置していることが望まれるが、必ずしも中心部でなくても、コア部141、143の縁部近傍(各クラッド層11、121、122との界面近傍)以外に位置していればよい。
なお、コア部141の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、コア部141の厚さの5%の距離の領域である。
一方、屈折率分布Tのうち、極大値Tm1、Tm3、Tm5は、図6(b)に示すように各クラッド層11、121、122中に位置しているが、特に各クラッド層11、121、122の縁部近傍(コア部141、143との界面近傍)以外に位置しているのが好ましい。これにより、コア部141、143中の極大値Tm2、Tm4と、各クラッド層11、121、122中の極大値Tm1、Tm3、Tm5とが、互いに十分に離間したものとなるため、コア部141、143中の伝送光が、各クラッド層11、121、122中に漏れ出る確率を十分に低くすることができる。その結果、コア部141、143の伝送損失を低減するとともにクロストークをより抑制することができる。
なお、各クラッド層11、121、122の縁部近傍とは、前述した縁部から内側に、各クラッド層11、121、122の厚さの5%の距離の領域である。
また、極大値Tm1、Tm3、Tm5は、各クラッド層11、121、122の厚さの中央部に位置しており、しかも、極大値Tm1、Tm3、Tm5から隣接する極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4に向かっては、屈折率が連続的に低下しているのが好ましい。これにより、コア部141、143中の極大値Tm2、Tm4と、各クラッド層11、121、122中の極大値Tm1、Tm3、Tm5との離間距離は、最大限確保され、しかも極大値Tm1、Tm3、Tm5近傍に光を確実に閉じ込められるため、前述したコア部141、143からの伝送光の漏出をより確実に抑制することができる。
さらに、極大値Tm1、Tm3、Tm5は、前述したコア部141、143に位置する極大値Tm2、Tm4よりも屈折率の小さいものであるので、コア部141、143のような高い光伝送性は有しないものの、周囲よりも屈折率が高くなっているため、わずかな光伝送性を有することとなる。その結果、各クラッド層11、121、122は、コア部141、143から漏出した伝送光を閉じ込めることで、他のコア部への波及を防止する作用を有するものとなる。すなわち、極大値Tm1、Tm3、Tm5が存在することで、クロストークをより確実に抑制することができる。
なお、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4は、前述したように、各クラッド層11、121、122の平均屈折率TA未満であるが、その差は、所定の範囲内であることが望まれる。具体的には、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4と各クラッド層11、121、122の平均屈折率TAとの差は、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4とコア部141、143中の極大値Tm2、Tm4との差の3〜80%程度であるのが好ましく、5〜50%程度であるのがより好ましく、7〜30%程度であるのがさらに好ましい。これにより、各クラッド層11、121、122は、クロストークを抑制するのに必要かつ十分な光伝送性を有するものとなる。なお、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4と各クラッド層11、121、122の平均屈折率TAとの差が前記下限値を下回る場合は、各クラッド層11、121、122における光伝送性が小さ過ぎて、クロストークを十分に抑制することができないおそれがあり、前記上限値を上回る場合には、各クラッド層11、121、122における光伝送性が大き過ぎて、コア部141、143の光伝送性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4と極大値Tm1、Tm3、Tm5との差は、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4と極大値Tm2、Tm4との差の6〜90%程度であるのが好ましく、10〜70%程度であるのがより好ましく、14〜40%程度であるのがさらに好ましい。これにより、クラッド層における屈折率の高さとコア部における屈折率の高さとのバランスが最適化され、光導波路1は、特に優れた光伝送性を有するとともにクロストークをより確実に抑制し得るものとなる。
なお、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4とコア部141、143中の極大値Tm2、Tm4との屈折率差は、できるだけ大きい方がよいが、0.005〜0.07程度であるのが好ましく、0.007〜0.05程度であるのがより好ましく、0.01〜0.05程度であるのがさらに好ましい。これにより、上述した屈折率差が、コア部141、143中に光を閉じ込めるのに必要かつ十分なものとなる。
また、コア部141、143における屈折率分布Tは、横軸に中心線C2’の位置をとり、縦軸に屈折率をとったとき(図6を反時計方向に90°回転させたとき)、極大値Tm2近傍および極大値Tm4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば上に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは上に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。屈折率分布Tがこのような形状をなしていると、コア部141、143における光の閉じ込め作用がより顕著なものとなる。
また、屈折率分布Tは、図6(b)に示すように、極小値Ts1近傍、極小値Ts2近傍、極小値Ts3近傍および極小値Ts4近傍において、屈折率が連続的に変化している形状であれば下に凸の略V字状(極大値以外はほぼ直線状)をなしていてもよいが、好ましくは下に凸の略U字状(極大値近傍全体が丸みを帯びている)とされる。
また、図6(b)に示す屈折率分布Tにおいて、各クラッド層11、121、122における平均屈折率をTAとしたとき、極大値Tm2、Tm4近傍における屈折率が連続して平均屈折率TA以上である部分の幅をa[μm]とし、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4近傍における屈折率が連続して平均屈折率TA未満である部分の幅をb[μm]とする。このとき、bは、0.01a〜1.2a程度であるのが好ましく、0.03a〜1a程度であるのがより好ましく、0.1a〜0.8a程度であるのがさらに好ましい。これにより、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4の実質的な幅が、上述した作用・効果を奏するのに必要かつ十分なものとなる。すなわち、bが前記下限値を下回っている場合は、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4の実質的な幅が狭過ぎるため、コア部141、143に光を閉じ込める作用が低下するおそれがある。一方、bが前記上限値を上回っている場合は、極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4の実質的な幅が広過ぎて、その分、コア部141、143の厚さやピッチが制限され、伝送効率が低下したり多チャンネル化および高密度化が妨げられるおそれがある。
なお、クラッド層11における平均屈折率TAは、極大値Tm1と極小値Ts1との中点で近似することができる。
また、各極大値Tm1、Tm2、Tm3、Tm4、Tm5は、それぞれ前述したように上に凸の略U字状であってもよいが、頂部近傍において屈折率が実質的に変化していない平坦部を含んでいてもよい。屈折率分布Tが各極大値の頂部近傍においてこのような形状をなしていても、本発明の光導波路は前述したような作用・効果を奏するものとなる。ここで、屈折率が実質的に変化していない平坦部とは、屈折率の変動が0.001未満である領域であって、その両側では屈折率が連続的に低下している領域のことをいう。
平坦部の長さは、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下とされる。
また、本実施形態では、光導波路1の厚さ方向に並んだコア部141、143間においても、クロストークを抑制することができる。
具体的には、図5に示す光導波路1の複数のコア部141、142、143、144のうち、所望の1つの端部に光を入射し、他方の端部における出射光の強度分布P2を取得したとき、その強度分布はクロストークの抑制に適した特徴的な分布を示す。
図7は、図5に示す光導波路1のコア部141に光を入射したとき、出射側端面における出射光の強度分布P2を示す図であって、横軸に出射光の強度をとり、出射側端面の位置をとったときの強度分布の一例を示す図である。
コア部141(CH1)に光を入射すると、出射光の強度は、コア部141の出射端の中心部において最も大きくなる。そして、コア部141の中心部から離れるにつれて出射光の強度は小さくなるが、コア部141の厚さ方向に隣り合うコア部143(CH2)において局所的に小さな値をとる。すなわち、この場合の出射光の強度分布P2は、コア部141(CH1)の出射端の中心部において極大値Pm1をとり、コア部143(CH2)において極小値Ps1をとる。出射光がこのような強度分布を有する光導波路1によれば、コア部141を伝搬する光の完全なる漏出は防止できないものの、その漏出光がコア部143に集まるのを抑制しているため、漏出光がコア部143に混信する「クロストーク」を確実に抑制することができる。その結果、光導波路1は、幅方向のみならず、厚さ方向に多チャンネル化および高密度化したとしても、クロストークの発生を確実に防止し得るものとなる。
また、コア部14の高さは、前述したように、好ましくは20〜200μm程度とされるが、コア部14の高さをこのような範囲に設定することにより、前述したクラッド層122に漏出光を集めるという作用が必要かつ十分なものとなり、クロストークの発生をより確実に抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の光導波路の第3実施形態について説明する。
図8は、本発明の光導波路の第3実施形態を示す(一部透過して示す)斜視図である。なお、図を見易くするため、一部のコア部14の図示を省略するとともに、支持フィルム2およびカバーフィルム3の図示を省略している。
以下、光導波路の第3実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図8において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第3実施形態は、コア部14を伝搬する光の進行方向を変更するミラー(反射面)17が設けられている以外、第1実施形態と同様である。
ミラー17は、光導波路1を厚さ方向に一部貫通するように、横断面がV字状をなす凹部(空孔)170が形成され、この凹部170の側面(内面)の一部で構成されている。この側面は、平面状であり、かつ、コア部14の軸線に対して45°傾斜している。このミラー17にコア部14を伝搬してきた光が反射され、図8の下方に光路が90°変換される。また、図8の下方から伝搬してきた光は、ミラー17で反射され、コア部14に入射される。すなわち、ミラー17は、コア部14を伝搬する光の光路を変換する光路変換手段としての機能を有する。
また、ミラー17には、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の加工面が露出しており、ミラー17のほぼ中心部には、コア部14の加工面が位置している。
なお、ミラー17は、コア部14のみを横断するように設けられていてもよいが、図8(a)に示すように各クラッド層11、12およびコア部14の周辺の側面クラッド部15を横断するように設けられているのが好ましい。これにより、ミラー17において反射に寄与する有効面積が広くなり、ミラー損失が抑えられる。
また、必要に応じて、ミラー17を構成する加工面の表面に反射膜が成膜されていてもよい。この反射膜としては、例えば、Au、Ag、Al等の金属膜や、コア部14より低屈折率の材料の膜等が挙げられる。
金属膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着のような物理蒸着法、CVDのような化学蒸着法、めっき法等が挙げられる。
一方、図8(b)には、第3実施形態の他の構成例を示す。
図8(b)に示す光導波路1では、その一方の端部において、コア部14が光導波路1の端面まで到達せず、途中で途切れている。そして、コア部14が途切れた箇所から端面までは、側面クラッド部15が形成されている。なお、このコア部14が途切れた部分を、コア部欠損部16とする。
そして、ミラー17は、このコア部欠損部16中に形成されている。このようなミラー17には、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の加工面が露出しているが、このうち、コア層13の加工面には、側面クラッド部15の加工面のみが露出することとなる。一方、前述の図8(a)の場合、コア層13の加工面には、コア部14の加工面と側面クラッド部15の加工面の双方が露出している。
このように図8(b)に示すミラー17は、コア層13の露出面が単一材料のみで構成されているため、均一な平滑性を有するものとなる。これは、加工の際、単一材料を加工することになるため、加工レートが面内で均一になるからである。このため、ミラー17は、優れた反射特性を有するものとなり、ミラー損失の小さいものとなる。
また、コア部欠損部16は、コア部14と離れているため、モノマー由来の物質の濃度ムラを含んでいない。このため、厚さ方向はもちろん、幅方向における反射特性についてもバラツキが少なくなり、ミラー17は特に優れた反射特性を有するものとなる。
<光導波路の製造方法>
次に、上述した光導波路1の製造方法の一例について説明する。
(第1の製造方法)
まず、光導波路1の第1の製造方法について説明する。
図9、10は、光導波路1の製造に用いる装置を示す図、図11〜13はそれぞれ図1に示す光導波路1の第1の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図11〜13中の上側を「上」、下側を「下」という。
光導波路1の第1の製造方法では、[1]まず、支持基板951上に2種類の光導波路形成用組成物901、902(第1の組成物および第2の組成物)を層状に押出成形して層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射することで屈折率差を生じさせ、光導波路1を得る。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、光導波路形成用組成物901、902を用意する。
光導波路形成用組成物901、902は、それぞれ、ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマーを含む。)と、を含有するものであるが、その組成はやや異なっている。
2種類の組成物のうち、光導波路形成用組成物901は、主にコア層13を形成するための材料であり、活性放射線の照射により、ポリマー915中において少なくともモノマーの活発な反応が生じ、それに伴って屈折率分布に変化を生じさせる材料である。すなわち、光導波路形成用組成物901は、ポリマー915とモノマーの存在比率の偏りによって屈折率分布に変化が生じ、その結果、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成することのできる材料である。
一方、光導波路形成用組成物902は、主にクラッド層11、12を形成するための材料であり、光導波路形成用組成物901より低屈折率の材料で構成されている。
光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との屈折率差は、それぞれに含まれるポリマー915の組成、モノマーの組成、ポリマー915とモノマーとの存在比率等を設定することにより、適宜調整することができる。
例えば、モノマーの屈折率がポリマー915より低い場合、組成物中のモノマーの含有率は、光導波路形成用組成物901より光導波路形成用組成物902の方が高くなっている。一方、モノマーの屈折率がポリマー915より高い場合、組成物中のモノマーの含有率は、光導波路形成用組成物902より光導波路形成用組成物901の方が高くなっている。換言すれば、ポリマー915やモノマーの各屈折率に応じて、各光導波路形成用組成物901、902中のポリマー915および添加剤920の組成が適宜選択されている。
また、光導波路形成用組成物901および光導波路形成用組成物902では、モノマーの含有率が互いにほぼ等しくなるよう、組成が設定されているのが好ましい。このように設定すれば、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、モノマーの含有率の差が小さくなるため、これをきっかけにしたモノマーの拡散移動が抑制される。モノマーの拡散移動は、前述したように屈折率差の形成において有用であるが、望ましくない方向に移動することが避けられない場合もある。後述する多色押出成形法では、層910の厚さ方向の屈折率分布を形成することが可能であるため、少なくとも厚さ方向においてはモノマーの拡散移動が抑制されていても差し支えなく、むしろ厚さ方向における意図しないモノマーの拡散移動は抑制される方が好ましい。意図しないモノマーの拡散移動を抑制することにより、最終的に目的とする形状の屈折率分布Tを有する光導波路1を確実に製造することができる。
なお、モノマーの含有率をほぼ等しくした場合には、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、ポリマー915またはモノマーの条件を異ならせればよい。具体的には、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とで、用いるポリマー915の組成を異ならせるほか、同じ組成であっても分子量や重合度を異ならせるようにすればよい。また、用いるモノマーの組成、すなわち屈折率を異ならせるようにしてもよい。このようにすれば、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とでモノマーの含有率をほぼ等しくし、モノマーの拡散移動を抑制しながら、両者の間に屈折率差を形成することができる。
次いで、支持基板951上に光導波路形成用組成物901、902を多色押出成形法により層状に成形する。
多色押出成形法では、光導波路形成用組成物901を3層で押し出すと同時に、これらの層間にそれぞれ光導波路形成用組成物902を押し出すことで、5層を積層してなる多色成形体914を一括形成する。具体的には、多色成形体914では、光導波路形成用組成物901、光導波路形成用組成物902、光導波路形成用組成物901、光導波路形成用組成物902、および光導波路形成用組成物901が、下方からこの順でそれぞれ層状に押し出されるため、組成物同士の境界においては、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とがわずかに混濁している。したがって、組成物同士の境界近傍では、光導波路形成用組成物901の一部と光導波路形成用組成物902の一部とが混合し、厚さ方向に沿って混合比率が連続的に変化している領域が形成される。その結果、多色成形体914では、図11(a)の下方から、光導波路形成用組成物901からなる第1成形層914a、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第2成形層914b、光導波路形成用組成物902からなる第3成形層914c、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第4成形層914d、光導波路形成用組成物901からなる第5成形層914e、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第6成形層914f、光導波路形成用組成物902からなる第7成形層914g、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の混合物からなる第8成形層914h、および光導波路形成用組成物901からなる第9成形層914iが、この順で積層されたものとなる。
そして、得られた多色成形体914中の溶媒を蒸発(脱溶媒)させ、層910を得る(図11(b)参照)。
得られた層910は、図11(b)の下方から、第3成形層914cの中心部より下方の層から形成されるクラッド層11と、第3成形層914の中心部より上方で第7成形層914gの中心部より下方の層から形成されるコア層13と、第7成形層914gの中心部より上方の層から形成されるクラッド層12との積層体となる。
得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915が実質的に一様かつランダムに存在し、添加剤920は、ポリマー915中に実質的に一様かつランダムに分散している。これにより、層910中には、添加剤920が実質的に一様かつランダムに分散している。
層910の平均厚さは、形成すべき光導波路1の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜300μm程度であるのがより好ましい。
なお、支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
ところで、このような層910を得るための多色成形体914は、以下のようなダイコーター(多色押出成形装置)800を用いて製造される。
図9は、多色成形体914を得るダイコーターを示す斜視図、図10は、ダイコーターの一部を拡大して示すにより縦断面図である。
ダイコーター800は、図9に示すように、上リップ部811と、その下方に設けられた下リップ部812とを備えるダイヘッド810を有している。
上リップ部811および下リップ部812は、それぞれ長尺のブロック体で構成され、互いに重ね合わされている。合わせ面には空洞のマニホールド820が形成されている。マニホールド820の幅はダイヘッド810の右側ほど広くなるよう連続的に拡張している。一方、マニホールド820の厚さはダイヘッド810の右側ほど小さくなるよう連続的に縮小している。そして、マニホールド820の右端では、空洞の幅が最大でかつ厚さが最小になっており、スリット821を形成している。
このダイヘッド810は、マニホールド820の左側から供給された光導波路形成用組成物901、902をスリット821から右側に成形しつつ押し出すことができる。すなわち、スリット821の形状に応じて、多色成形体914の幅および厚さが決定される。
ダイヘッド810の左側には、ミキシングユニット830が設けられている。ミキシングユニット830は、光導波路形成用組成物901、902をそれぞれダイヘッド810に供給するための3系統の配管を組み合わせて構成されており、光導波路形成用組成物902をダイヘッド810に供給する第1の供給管831と、光導波路形成用組成物901をダイヘッド810に供給する第2の供給管832および第3の供給管833とを有している。
また、第1の供給管831、第2の供給管832および第3の供給管833から供給された光導波路形成用組成物901、902は、ダイヘッド810との接続を担う接続部835において合流し、ダイヘッド810のマニホールド820へと供給される。なお、第2の供給管832は、途中で上下2つに分岐し、接続部835の最上層部および最下層部にそれぞれ接続されている。一方、第3の供給管833は、接続部835の中層部に接続されている。さらに、第1の供給管831も、途中で上下2つに分岐し、接続部835の最上層部と中層部との間(上層部)、および、最下層部と中層部との間(下層部)にそれぞれ接続されている。
すなわち、接続部835では、光導波路形成用組成物901で構成される1層の流れを、光導波路形成用組成物902で構成される上下2層の流れで挟み込むようにして合流し、さらにその外側を光導波路形成用組成物901で構成される上下2層の流れで挟み込みようにして合流している。
なお、この際、最上層部および最下層部に接続される第2の供給管832については、その流量が、第3の供給管833より小さくなるようにする。これにより、第1成形層914aおよび第9成形層914iは、第5成形層eに比べて十分に薄くなり、最下層部および最下層部の屈折率が中層部の屈折率より高くなるのを防止することができる。
また、ミキシングユニット830は、第1の供給管831と第2の供給管832との合流地点に設けられた、複数のピン836を有している。これらのピン836は、長尺の円柱状をなしており、その軸と、第1の供給管831および第2の供給管832の延伸方向とがほぼ直交するよう配置されている。また、図10では、これらのピン836が、接続部835の最上層部と上層部との間、上層部と中層部との間、中層部と下層部との間、および、下層部と最下層部との間などにそれぞれ設けられている。なお、ピン836の本数は特に限定されないが、好ましくは2本以上とされ、より好ましくは3〜10本程度とされる。また、ピン836は、光導波路形成用組成物901、902間に乱流を生じさせ得るものであれば、他の構造物(例えば、メッシュ、パンチングメタル等)で代替することもできる。
ダイヘッド810の右側には、多色押出成形された多色成形体914を搬送する搬送部840が設けられている。搬送部840は、ローラー841と、ローラー841に沿って移動する搬送フィルム842とを有している。搬送フィルム842はローラー841の回転により、図9の下方から右側へと搬送されるが、その際に、ローラー841上にて多色成形体914を積層する。これにより、多色成形体914の形状を保持しつつ、右側へと搬送することができる。
次いで、ダイコーター800の動作について説明する。
ミキシングユニット830に光導波路形成用組成物901、902が同時に供給されると、接続部835において5層の層流が形成される。接続部835において光導波路形成用組成物901、902が合流する際、合流部に設けられた複数のピン836の作用により、光導波路形成用組成物901、902の流れに乱れが生じる。この乱れは、層流間の境界を不明瞭とし、境界では光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とが混在した領域が形成される。
このようにして形成された層流は、ダイヘッド810のマニホールド820において、幅方向に拡張されるとともに厚さ方向には圧縮される。その結果、前述したような、第1成形層914a、第2成形層914b、第3成形層914c、第4成形層914d、第5成形層914e、第6成形層914f、第7成形層914g、第8成形層914h、および第9成形層914iが、下方からこの順で積層されてなる多色成形体914が形成される。そして、このような多色成形体914を用いることにより、最終的に前述した厚さ方向の屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる。
なお、多色成形体914は、搬送フィルム842上に形成されるが、この搬送フィルム842をそのまま前述した支持基板951として利用することもできる。
また、図9に示すダイコーター800は、コア層13を1層含む層910を形成可能であるが、コア層13を複数層設ける場合には、それに応じて、ミキシングユニット830の構造を変更すればよい。具体的には、コア層13の層数に応じて第1の供給管831、第2の供給管832および第3の供給管833の分岐数を増やすようにすればよい。
なお、上記多色押出成形法およびダイコーターは、多色成形体914を製造する方法および装置の一例であり、層間での組成物の混濁を生じ得る方法および装置であれば、例えば射出成形法(装置)、塗布法(装置)、印刷法(装置)等の各種方法(装置)を用いることもできる。
次に、ポリマー915および添加物920について説明する。
(ポリマー)
ポリマー915は、光導波路1のベースポリマーとなるものである。
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中でも後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、光導波路形成用組成物901、902中や層910中においてポリマー915と相分離を起こさないことをいう。
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリシラン、ポリウレタン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ポリマー915として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有する光導波路1を得ることができる。
環状オレフィン系樹脂は、無置換のものであってもよいし、水素が他の基により置換されたものであってもよい。
環状オレフィン系樹脂としては、例えばノルボルネン系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。
中でも、耐熱性、透明性等の観点からノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂は、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難い光導波路1を得ることができる。
ノルボルネン系樹脂としては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
このようなノルボルネン系樹脂としては、例えば、
(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、
(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、
(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、
(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、
(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該共重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
これらのノルボルネン系樹脂は、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
これらの中でも、ノルボルネン系樹脂としては、下記化1(構造式B)で表される少なくとも1個の繰り返し単位を有するもの、すなわち、付加(共)重合体が好ましい。付加(共)重合体は、透明性、耐熱性および可撓性に富むことから、例えば光導波路1を形成した後、これに電気部品等を半田を介して実装することがあるが、このような場合においても光導波路1に、高い耐熱性、すなわち、耐リフロー性を付与することができるためである。
かかるノルボルネン系ポリマーは、例えば、後述するノルボルネン系モノマー(後述する構造式Cで表されるノルボルネン系モノマーや、架橋性ノルボルネン系モノマー)を用いることにより好適に合成される。
また、光導波路1を各種製品に組み込んだ際には、例えば、80℃程度の環境下で製品が使用される場合がある。このような場合においても、耐熱性を確保するという観点から、付加(共)重合体が好ましい。
中でも、ノルボルネン系樹脂は、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位のうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、可撓性と耐熱性の両立を図ることができる。
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基に由来する極めて高い疎水性によって、吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。
さらに、ノルボルネン系樹脂は、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系樹脂は、柔軟性が高くなるため、高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、特定の波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
上記のようなノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられる。
このようなことから、ノルボルネン系樹脂としては、以下の式(1)〜(4)、(8)〜(10)で表されるものが好適である。
(式(1)中、R
1は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表し、p
1/q
1が20以下である。)
式(1)の繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、以下のようにして製造することができる。
R1を有するノルボルネンと、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒として用いて溶液重合させることで(1)を得る。
なお、側鎖にエポキシ基を有するノルボルネンの製造方法は、たとえば、(i)(ii)の通りである。
(i)ノルボルネンメタノール(NB−CH2−OH)の合成
DCPD(ジシクロペンタジエン)のクラッキングにより生成したCPD(シクロペンタジエン)とαオレフィン(CH2=CH−CH2−OH)を高温高圧下で反応させる。
(ii)エポキシノルボルネンの合成
ノルボルネンメタノールとエピクロルヒドリンとの反応により生成する。
なお、式(1)において、bが2または3の場合には、エピクロルヒドリンのメチレン基がエチレン基、プロピレン基等になったものを使用する。
式(1)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性の両立を図ることが可能との観点から、特に、R1が炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
(式(2)中、R
2は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
3は、水素原子またはメチル基を表し、cは、0〜3の整数を表し、p
2/q
2が20以下である。)
式(2)の繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂は、R2を有するノルボルネンと、側鎖にアクリルおよびメタクリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
なお、式(2)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、可撓性と耐熱性との両立の観点から、特に、R2が炭素数4〜10のアルキル基であり、cが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー等が好ましい。
(式(3)中、R
4は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、各X
3は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、dは、0〜3の整数を表し、p
3/q
3が20以下である。)
式(3)の繰り返し単位を含む樹脂は、R4を有するノルボルネンと、側鎖にアルコキシシリル基を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、上述したNi化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
なお、式(3)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、R4が炭素数4〜10のアルキル基であり、dが1または2、X3がメチル基またはエチル基である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
(式(4)中、R
5は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、A
1およびA
2は、それぞれ独立して、下記式(5)〜(7)で表される置換基を表すが、同時に同一の置換基であることはない。また、p
4/(q
4+r)が20以下である。)
式(4)の繰り返し単位を含む樹脂は、R5を有するノルボルネンと、側鎖にA1およびA2を有するノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物(A)を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
(式(5)中、eは、0〜3の整数を表し、fは、1〜3の整数を表す。)
(式(6)中、R
6は、水素原子またはメチル基を表し、gは、0〜3の整数を表す。)
(式(7)中、X
4は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、hは、0〜3の整数を表す。)
なお、式(4)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂としては、例えば、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルノルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー等が挙げられる。
(式(8)中、R
7は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
8は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、X
1は、酸素原子またはメチレン基を表し、X
2は、炭素原子またはシリコン原子を表し、iは、0〜3の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、p
5/q
5が20以下である。)
式(8)の繰り返し単位を含む樹脂は、R7を有するノルボルネンと、側鎖に−(CH2)i−X1−X2(R8)3−j(Ar)jを含むノルボルネンとをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
なお、式(8)で表される繰り返し単位を含むノルボルネン系樹脂の中でも、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが好ましい。
さらには、可撓性、耐熱性および屈折率制御の観点から特に、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基、R8がメチル基、iが1、jが2である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等が好ましい。
具体的には、以下のようなノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。
(式(9)におけるR
7、p
5、q
5、iは、式(8)と同じである。)
また、可撓性と耐熱性および屈折率制御の観点から、式(8)において、R7が炭素数4〜10のアルキル基であり、X1がメチレン基、X2が炭素原子、Arがフェニル基、R8が水素原子、iが0、jが1である化合物、例えば、ブチルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等であってもよい。
さらに、ノルボルネン系樹脂として、次のようなものを使用してもよい。
(式(10)において、R
10は、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
11は、アリール基を示し、kは0以上、4以下である。p
6/q
6は20以下である。)
また、p1/q1〜p3/q3、p5/q5、p6/q6またはp4/(q4+r)は、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、複数種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
一方、ポリマー915は、前述したようにアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリシラン、ポリウレタン等であってもよい。
このうち、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エポキシアクリレート)、ポリ(エポキシメタクリレート)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(イソシアナートアクリレート)、ポリ(イソシアナートメタクリレート)、ポリ(シアナートアクリレート)、ポリ(シアナートメタクリレート)、ポリ(チオエポキシアクリレート)、ポリ(チオエポキシメタクリレート)、ポリ(アリルアクリレート)、ポリ(アリルメタクリレート)、アクリレート・エポキシアクリレート共重合体(メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体)、スチレン・エポキシアクリレート共重合体等が挙げられ、これらの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
また、エポキシ系樹脂としては、例えば、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂およびトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の複合材料が用いられる。
また、ポリイミドとしては、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸を閉環し、硬化(イミド化)させることにより得られる樹脂であれば、特に限定されない。
ポリアミド酸としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル比にて反応させることにより、溶液として得ることができる。
このうち、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物等が挙げられる。
一方、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、シリコーン系樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等が挙げられる。これらのシリコーン系樹脂は、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーと硬化剤とを反応させることにより得られるものである。
シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、メチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが挙げられる。
また、シリコーンゴムモノマーまたはオリゴマーとしては、光反応性を付与するため、例えば、エポキシ基、ビニルエーテル基、アクリル基等の官能基を導入してなるものが好ましく用いられる。
また、フッ素系樹脂としては、例えば、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーから得られる重合体、2つ以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる重合体、含フッ素系モノマーとラジカル重合性単量体とを共重合して得られる重合体等が挙げられる。
含フッ素脂肪族環構造としては、例えば、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
また、含フッ素モノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等が挙げられる。
また、ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
また、ポリシランとしては、主鎖がSi原子のみからなる高分子であれば、いかなるものも用いられる。主鎖は、直鎖型であってもよく分岐型であってもよい。そして、ポリシラン中のSi原子には、Si原子以外に、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基等の有機置換基が結合している。
このうち、炭化水素基としては、例えば、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基のような鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基のような脂環式炭化水素基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、ビフェニル基、アントラシル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜8のものが挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
また、ポリウレタンとしては、主鎖にウレタン結合(−O−CO−NH−)を含む高分子であれば、いかなるものも用いられる。また、主鎖にウレタン結合とウレア結合(−NH−CO−NH−、−NH−CO−N=、または、−NH−CO−N<)とを含むウレタン−ウレア共重合体等であってもよい。
なお、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系樹脂としては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系樹脂は、特に高い屈折率を有する。
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系樹脂は、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
また、以上のようなポリマー915は、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有しているのが好ましい。すなわち、離脱性基の離脱によりポリマー915の屈折率が低下するため、ポリマー915は、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成することができる。
このような離脱性基を有するポリマー915としては、例えば、分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが挙げられる。かかる離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
このうち、離脱により樹脂の屈折率に低下を生じさせる離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
ここで、側鎖に離脱性基を有するポリマー915としては、例えばシクロヘキセン、シクロオクテン等の単環体モノマーの重合体、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環体モノマーの重合体等の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。これらの中でも多環体モノマーの重合体の中から選ばれる1種以上の環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂の耐熱性を向上することができる。
なお、重合形態としては、ランダム重合、ブロック重合等の公知の形態を適用することができる。例えばノルボルネン型モノマーの重合の具体例としては、ノルボルネン型モノマーの(共)重合体、ノルボルネン型モノマーとα−オレフィン類などの共重合可能な他のモノマーとの共重合体、およびこれらの共重合体の水素添加物などが具体例に該当する。これら環状オレフィン系樹脂は、公知の重合法により製造することが可能であり、その重合方法には付加重合法と開環重合法とがあり、前述の中でも付加重合法で得られる環状オレフィン系樹脂(特にノルボルネン系樹脂)が好ましい(すなわち、ノルボルネン系化合物の付加重合体)。これにより、透明性、耐熱性および可撓性に優れる。
さらに、側鎖に離脱性基を有するノルボルネン系樹脂としては、例えば、式(8)で表されるノルボルネン系樹脂の中で、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基であるものが挙げられる。
また、式(3)においては、アルコキシシリル基のSi−O−X3の部分で脱離する場合がある。
また、例えば、式(9)のノルボルネン系樹脂を使用した場合、光酸発生剤(PAGと表記)から発生した酸により、以下のように反応が進むと推測される。なお、ここでは、離脱性基の部分のみを示し、また、i=1の場合で説明している。
さらに、式(9)の構造に加えて、側鎖にエポキシ基を有するものであってもよい。このようなものを使用することで基材に対して密着性に優れた光導波路1が形成可能という効果がある。
具体例として以下のようなものが挙げられる。
(式(31)において、p
7/(q
7+r
2)は、20以下である。)
式(31)で示される化合物は、たとえば、ヘキシルノルボルネンと、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(側鎖に−CH2−O−Si(CH3)(Ph)2を含むノルボルネン)およびエポキシノルボルネンをトルエンに溶かし、Ni化合物を触媒に用いて溶液重合させることで得ることができる。
一方、別の離脱性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基が挙げられる。この離脱性基は、フリーラジカルの作用により比較的容易に離脱する。
前記離脱性基の含有量は、特に限定されないが、前記側鎖に脱離性基を有するポリマー915中の10〜80重量%であるのが好ましく、特に20〜60重量%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に可撓性と屈折率変調機能(屈折率差を変化させる効果)との両立に優れる。
例えば、離脱性基の含有量を多くすることにより、屈折率を変化させる幅を拡張することができる。
なお、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、含まれるポリマー915は同じ組成のものでも、異なる組成のものでもよい。なお、同じ組成のものを用いることで、互いの相溶性を高くなるため、組成物同士が混合し易くなる。これにより、屈折率分布Tの連続性を高めることができる。
また、異なる組成のものを用いる場合、ポリマー915の基本組成は同じであるものの、離脱性基(反応媒体)の有無を変えるようにしてもよい。例えば、光導波路形成用組成物901が含有するポリマー915は離脱性基を含む一方、光導波路形成用組成物902が含有するポリマー915は離脱性基を含まないのが好ましい。これにより、コア層13においてのみ、離脱性基の離脱が生じ、層内で屈折率差が形成するとともに、クラッド層11、12では、離脱性基の離脱が生じないので、層内で屈折率が変化せず、クラッド層11、12の屈折率を比較的均一にすることができる。なお、この場合、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の双方において添加剤920(モノマー、重合開始剤等)の添加を省略することができる。
一方、少なくとも光導波路形成用組成物901中の後述する添加剤920がモノマーを含んでいる場合には、各光導波路形成用組成物901、902が含有するポリマー915は、必ずしも離脱性基を含んでいなくてもよい。
(添加剤)
本実施形態では、光導波路形成用組成物901および光導波路形成用組成物902の双方において、添加剤920がモノマーを含んでいる。また、本実施形態では、光導波路形成用組成物901中の添加剤920が、さらに重合開始剤を含んでいる一方、光導波路形成用組成物902中の添加剤920は、重合開始剤を含んでいない。
((モノマー))
モノマーは、後述する活性放射線の照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、それとともにモノマーが拡散移動することで、層910において照射領域と未照射領域との間に屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
モノマーの反応物としては、モノマーがポリマー915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、モノマーがポリマー915同士を架橋してなる架橋構造、および、モノマーがポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ところで、照射領域と未照射領域との間に生じる屈折率差は、ポリマー915の屈折率とモノマーの屈折率との差に基づいて生じることから、添加剤920中に含まれるモノマーは、ポリマー915の屈折率との大小関係を考慮して選択される。
具体的には、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。一方、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとを組み合わせて使用される。
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味するものである。
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分が屈折率分布Wの極小値を形成し、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分が屈折率分布の極大値を構成する。
なお、モノマーとしては、ポリマー915との相溶性を有し、ポリマー915との屈折率差が0.01以上であるものが好ましく用いられる。
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマー、あるいはノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。また、ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れる光導波路1が得られる。
このうち、環状エーテル基を有するモノマーの分子量(重量平均分子量)またはオリゴマーの分子量(重量平均分子量)は、それぞれ100以上400以下であるのが好ましい。
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーとしては、下記式(11)〜(20)の群から選ばれるものが好ましい。これらを使用することで波長850nm近傍での透明性に優れ、可撓性と耐熱性の両立が可能という利点がある。また、これらを単独でも混合して用いても差し支えない。
以上のようなモノマーおよびオリゴマーの中でも、ポリマー915との屈折率差を確保する観点から式(13)、(15)、(16)、(17)、(20)で表される化合物を使用することが好ましい。
さらには、ポリマー915の樹脂との屈折率差がある点、分子量が小さく、モノマーの運動性が高い点、モノマーが容易に揮発しない点を考慮すると、式(20)、式(15)で表される化合物を使用することが特に好ましい。
また、オキセタニル基を有する化合物としては、以下の式(32)、式(33)で表される化合物を使用することができる。式(32)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名TESOX等、式(33)で表される化合物としては、東亞合成製の商品名OX−SQ等を使用することができる。
また、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。このエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーは、酸の存在下において開環により重合するものである。
エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとしては、以下の式(34)〜(39)で表されるものを使用することができる。中でも、エポキシ環のひずみエネルギーが大きく反応性に優れるという観点から式(36)〜(39)で表される脂環式エポキシモノマーを使用することが好ましい。
なお、式(34)で表される化合物は、エポキシノルボルネンであり、このような化合物としては、例えば、プロメラス社製 EpNBを使用することができる。式(35)で表される化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製 Z−6040を使用することができる。また、式(36)で表される化合物は、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであり、この化合物としては、例えば、東京化成製 E0327を使用することができる。
さらに、式(37)で表される化合物は、3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2021Pを使用することができる。また、式(38)で表される化合物は、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンであり、この化合物としては、例えば、ダイセル化学社製 セロキサイド2000を使用することができる。
さらに、式(39)で表される化合物は、1,2:8,9ジエポキシリモネンであり、この化合物としては、例えば、(ダイセル化学社製 セロキサイド3000)を使用することができる。
さらに、モノマーとしては、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとが併用されていてもよい。
オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーは重合を開始する開始反応が遅いが、生長反応が速い。これに対し、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーは、重合を開始する開始反応が速いが、生長反応が遅い。そのため、オキセタニル基を有するモノマー、オキセタニル基を有するオリゴマーと、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーとを併用することで、光を照射した際に、光照射部分と、未照射部分との屈折率差を確実に生じさせることができる。
具体的には、式(20)で表わされるモノマーを「第1モノマー」とし、上記成分Bを含むモノマーを「第2モノマー」とすると、第1モノマーと第2モノマーとを併用するのが好ましく、その併用割合を(第2モノマーの重量)/(第1モノマーの重量)で規定するとき、0.1〜1程度であるのが好ましく、0.1〜0.6程度であるのがより好ましい。併用割合が前記範囲内であると、モノマーの反応性の速さと光導波路1の耐熱性とのバランスが向上する。
なお、第2モノマーに相当するモノマーには、式(20)で表わされるモノマーと異なるオキセタニル基を有するモノマーやビニルエーテル基を有するモノマーが挙げられる。これらの中でも、エポキシ化合物(特に脂環式エポキシ化合物)および2官能のオキセタン化合物(オキセタニル基を2つ有するモノマー)の少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの第2モノマーを用いることにより、第1モノマーとポリマー915との反応性を向上させることができ、それによって透明性を保持しつつ、導波路の耐熱性を向上させることができる。
このような第2モノマーの具体例としては、上記式(15)の化合物、上記式(12)の化合物、上記式(11)の化合物、上記式(18)の化合物、上記式(19)の化合物、上記式(34)〜(39)の化合物が挙げられる。
また、ノルボルネン系モノマーとは、下記構造式Aで示されるノルボルネン骨格を少なくとも1つ含むモノマーを総称し、例えば、下記構造式Cで表される化合物が挙げられる。
[式中、aは、単結合または二重結合を表し、R
12〜R
15は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、または官能置換基を表し、mは、0〜5の整数を表す。ただし、aが二重結合の場合、R
12およびR
13のいずれか一方、R
14およびR
15のいずれか一方は存在しない。]
無置換の炭化水素基(ハイドロカルビル基)としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルキニル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルキル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルケニル基、炭素数6〜12(C6〜C12)のアリール基、炭素数7〜24(C7〜C24)のアラルキル基(アリールアルキル基)等が挙げられ、その他、R12およびR13、R14およびR15が、それぞれ炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキリデニル基であってもよい。
なお、上記以外のモノマー、例えばアクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル等が挙げられる。
また、ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類またはシクロアルキルビニルエーテル類が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
なお、これらのモノマーと前述したポリマー915との組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
また、モノマーは、その少なくとも一部が上述したようにオリゴマー化していてもよい。
これらのモノマーの添加量は、ポリマー100重量部に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、2重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。これにより、コア/クラッド間の屈折率変調を可能にし、可撓性と耐熱性との両立が図れるという効果がある。
なお、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902との間で、含まれるモノマーは同じ組成のものでも、異なる組成のものでもよい。なお、同じ組成のものを用いることで、相互のモノマーの拡散移動が確実に生じるため、上述した屈折率分布Tをより明確化することができる。その結果、特性に優れた光導波路1が得られる。
また、光導波路形成用組成物901がモノマーを含む一方、光導波路形成用組成物902がモノマーを含まないようにしてもよい。この場合、各クラッド層11、12では、層内でのモノマーの拡散移動が生じないので、各クラッド層11、12の層内の屈折率を均一にすることができる。
((重合開始剤))
重合開始剤は、活性放射線の照射に伴ってモノマーに作用し、モノマーの反応を促すものである。
用いる重合開始剤としては、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマーには専らラジカル重合開始剤が、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマーには専らカチオン重合開始剤が好ましく用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。
一方、カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型のもの、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型のもの等が挙げられる。
特に、モノマーとして環状エーテル基を有するモノマーを用いる場合には、以下のようなカチオン重合開始剤(光酸発生剤)が好ましく用いられる。
例えば、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム−トリフルオロメタンスルホネートなどのスルホニウム塩類、p−ニトロフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアゾニウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(トリキュミル)ヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのヨードニウム塩類、キノンジアジド類、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン類、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンサルホネートなどのスルホン酸エステル類、ジフェニルジスルホンなどのジスルホン類、トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3.4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのトリアジン類等の化合物が、光酸発生剤として用いられる。なお、これらの光酸発生剤は、単独または複数を組み合わせて用いられる。
重合開始剤の含有量は、ポリマー100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上0.2重量部以下であることがより好ましい。これにより、反応性の向上という効果がある。
なお、本実施形態では、上述したように、光導波路形成用組成物901中の添加剤920が重合開始剤を含んでいる一方、光導波路形成用組成物902中の添加剤920は重合開始剤を含んでいないため、コア層13においてのみ、層内でモノマーの重合反応が促進され、クラッド層11、12では、モノマーの重合反応が促進されない。したがって、クラッド層11、12では屈折率の変化が抑えられ、層内での屈折率を比較的均一にすることができる。
ただし、重合開始剤の添加については、上記の場合に限定されず、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902の双方が重合開始剤を含んでいてもよい。この場合、クラッド層11、12ではできるだけモノマーの重合反応を抑えることが好ましいので、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とで含まれる重合開始剤の種類や添加量を異ならせるようにすればよい。具体的には、例えば、光導波路形成用組成物901に含まれる重合開始剤として後述する活性放射線930の波長に対して反応性の高いものを用い、光導波路形成用組成物902に含まれる重合開始剤として後述する活性放射線930の波長に対して反応性の低いものを用いればよい。また、同じ種類の重合開始剤を用いる場合には、光導波路形成用組成物901に比べて光導波路形成用組成物902への添加量を少なくすればよい。
さらに、光導波路形成用組成物901に含まれる重合開始剤として光酸発生剤を用い、光導波路形成用組成物902に含まれる重合開始剤として熱酸発生剤を用いるようにしてもよい。これにより、活性放射線930の照射に伴って主にコア層13の層内でのみモノマーの重合反応が促進され、屈折率分布Wが形成される一方、クラッド層11、12ではモノマーの重合反応が促進されない。屈折率分布Wが形成された後、層910に熱を加えることにより、今度はクラッド層11、12においてモノマーの重合反応が促進される。その結果、層910では、厚さ方向の屈折率分布T’が固定される。
熱酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなスルホニウム塩型化合物、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなヨードニウム塩型化合物、ペンタフェニルホスニウムトリフルオロメタンスルフォン酸、ペンタフェニルホスニウムノナフルオロブタンスルフォン酸のようなホスニウム塩型化合物等が挙げられる。
また、添加剤920は、モノマーや重合開始剤に加え、増感剤等を含んでいてもよい。
このうち、増感剤は、光に対する重合開始剤の感度を増大して、重合開始剤の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、重合開始剤の活性化に適する波長に光の波長を変化させる機能を有するものである。
このような増感剤としては、重合開始剤の感度や増感剤の吸収のピーク波長に応じて適宜選択され、特に限定されないが、たとえば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen-9-ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
増感剤の具体例としては、例えば、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
増感剤の含有量は、光導波路形成用組成物901、902中で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
なお、添加剤920はこの他に、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、老化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
以上のようなポリマー915と添加剤920とを含有する層910は、ポリマー915中に一様に分散する添加剤920の作用により、所定の屈折率を有している。
[2]次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図12参照)。
以下では、モノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用いる場合を一例に説明する。また、これに対応して、層910を形成するために用いた光導波路形成用組成物901、902において、ポリマー915の組成が、(光導波路形成用組成物901の屈折率)>(光導波路形成用組成物902の屈折率)の関係を満足するよう設定されている。これにより、層910では、厚さ方向の中央部が最も屈折率が高く、そこから層910の表面および裏面との間にそれぞれ極小値が存在し、かつ、屈折率が連続的に変化する屈折率分布が形成されている。
また、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925が主に側面クラッド部15となる。
したがって、ここで示す例では、マスク935には、主に、形成すべき側面クラッド部15のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。なお、コア部14や側面クラッド部15のパターンは、活性放射線930の照射に応じて形成される屈折率分布Wに基づいて決まるため、開口9351のパターンと側面クラッド部15のパターンとは完全に一致するものではなく、前記両パターンには多少のずれが生じる場合もある。
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
また、図12においては、マスク935の開口(窓)9351は、活性放射線930の照射領域925のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
用いる活性放射線930は、重合開始剤に対して光化学的な反応(変化)を生じさせ得るもの、および、ポリマー915に含まれる離脱性基を離脱させ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザー光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
これらの中でも、活性放射線930は、重合開始剤や離脱性基の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、重合開始剤を比較的容易に活性化させるとともに、離脱性基を比較的容易に離脱させることができる。
また、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。
マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、照射領域925のうち、コア層13における照射領域9253において重合開始剤が活性化される。これにより、照射領域9253においてモノマーが重合する。モノマーが重合すると、照射領域9253におけるモノマーの量が減少するため、それに応じて未照射領域940のうち、コア層13における未照射領域9403中のモノマーが照射領域9253に拡散移動する。前述したように、ポリマー915とモノマーは、互いに屈折率差が生じるように適宜選択されるため、モノマーの拡散移動に伴ってコア層13の照射領域9253と未照射領域9403との間に屈折率差が生じる。一方、クラッド層11、12における照射領域9251、9252では、重合開始剤が含まれていないので、モノマーの重合反応が抑えられる。
図14は、コア層13の照射領域9253と未照射領域9403との間で屈折率差が生じる様子を説明するための図であり、層910の横断面の幅方向の位置を横軸にとり、横断面の屈折率を縦軸にとったときの屈折率分布を示す図である。
本実施形態では、モノマーとしてポリマー915より屈折率が小さいものを用いているため、モノマーの拡散移動に伴い、未照射領域9403の屈折率が高くなるとともに、照射領域9253の屈折率は低くなる(図14(a)参照)。
モノマーの拡散移動は、照射領域9253においてモノマーが消費され、それに応じて形成されたモノマーの濃度勾配がきっかけとなって起こると考えられる。このため、未照射領域9403全体のモノマーが一斉に照射領域9253に向かうのではなく、照射領域9253に近い部分から徐々に移動が始まり、これを補うように未照射領域9403の中央部から外側へのモノマーの移動も生起される。その結果、図14(a)に示すように、照射領域9253と未照射領域9403との境界を挟んで、未照射領域9403側に高屈折率部H、照射領域9253側に低屈折率部Lが形成される。これら高屈折率部Hおよび低屈折率部Lは、それぞれ上述したようなモノマーの拡散移動に伴って形成されるため、必然的に滑らかな曲線で構成されることとなる。具体的には、高屈折率部Hは、例えば上に凸の略U字状となり、低屈折率部Lは、例えば下に凸の略U字状となる。
なお、上述したようなモノマーが重合してなるポリマーの屈折率は、重合前のモノマーの屈折率とほぼ同じ(屈折率差が0〜0.001程度)であるため、照射領域9253では、モノマーの重合が進むにつれ、モノマーの量およびモノマー由来の物質の量に応じて屈折率の低下が進むこととなる。したがって、ポリマーに対するモノマーの量あるいは重合開始剤の量等を適宜調整することにより、屈折率分布Wの形状を制御することができる。
一方、未照射領域9403では、重合開始剤が活性化されないため、モノマーは重合しない。
また、照射領域9253ではモノマーの重合が進むにつれてモノマーの拡散移動の容易性が徐々に低下する。これにより、照射領域9253では、未照射領域9403に近いほど自ずとモノマーの濃度が高くなり、屈折率の低下量が大きくなる。その結果、照射領域9253に形成される低屈折率部Lの分布形状は、左右非対称になり易く、未照射領域9403側の勾配はより急峻なものとなる。これにより、本発明の光導波路が有する屈折率分布Wが形成される。
また、ポリマー915は前述したように離脱性基を有しているのが好ましい。この離脱性基は活性放射線930の照射に伴って離脱し、ポリマー915の屈折率を低下させる。したがって、照射領域9253に活性放射線930が照射されると、前述したモノマーの拡散移動が開始されるとともに、ポリマー915から離脱性基が離脱し、照射領域9253の屈折率は照射前から低下することとなる(図14(b)参照)。
この屈折率の低下は、照射領域9253全体で一律に生じるため、前述した高屈折率部Hと低屈折率部Lの屈折率差は、より拡大される。その結果、図14(b)に示す屈折率分布Wが得られる。なお、図14(a)における屈折率の変化と、図14(b)における屈折率の変化は、ほぼ同時に起こる。このような屈折率変化によってこの屈折率差はさらに拡大することとなる。
なお、活性放射線930の照射量を調整することにより、形成される屈折率差および屈折率分布の形状を制御することができ、例えば、照射量を多くすることで、屈折率差を拡大することができる。また、活性放射線930の照射前に層910を乾燥させてもよいが、その際の乾燥の程度を調整することにより、屈折率分布の形状を制御することもできる。例えば、乾燥の程度を大きくすることで、モノマーの拡散移動量を抑えることができる。
また、照射領域9253では、コア層13中の未照射領域9403からのモノマーの拡散移動のみならず、照射領域925のうち、クラッド層11における照射領域9251およびクラッド層12における照射領域9252からのモノマーの拡散移動も生じる。これにより、照射領域9253では、さらに屈折率の低下が生じることとなる。一方、照射領域9251および照射領域9252では、モノマーの拡散移動に伴って屈折率の上昇が生じるが、この領域ではそもそも屈折率が低くなるようポリマー915の組成等が設定されているので、屈折率の上昇が生じても光導波路1の機能を損なうことはない。
また、クラッド層11における照射領域9251およびクラッド層12における照射領域9252では、コア層13における照射領域9253と同様、離脱性基の離脱が生じ、ポリマー915の屈折率が低下する。その結果、照射領域9251および照射領域9252においても、さらなる屈折率の低下が生じる。
以上のような原理で、屈折率分布Wを有する光導波路1が得られる(図13参照)。すなわち、本実施形態では、コア層13においてモノマーと離脱性基の双方が、活性放射線930の照射により屈折率の変化を伴う化学反応を生じる反応媒体となり、添加剤920がモノマーを含まない場合やポリマー915が離脱性基を含まない場合に比べて、屈折率分布Wにおいて特に大きな屈折率差が形成される。
なお、屈折率分布Wにおいては、低屈折率部Lが転化した極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4が存在しており(図2(b)参照)、これらの極小値の位置がコア部14と側面クラッド部15との界面に相当する。
また、モノマーとしてポリマー915より高い屈折率を有するものを用いる場合には、上記と反対に、モノマーの拡散移動に伴って移動先の屈折率が高くなるため、それに応じて、照射領域925および未照射領域940を設定するようにすればよい。
一方、活性放射線930を照射する前の層910には、図15(a)に示すように、その厚さ方向において、屈折率分布T’が形成されている。この屈折率分布T’は、前述したように、互いに屈折率の異なる光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とを用い、多色成形法によって層910を得たことにより形成されたものである。
ここで、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射すると、光導波路形成用組成物901と光導波路形成用組成物902とでモノマーの含有率に差がある場合、未照射領域9403中のモノマーが照射領域9253に拡散移動するため、コア部14の厚さ方向における屈折率分布T’においても、コア部14に対応する領域の屈折率が高くなる。一方、コア部14の上下に位置するクラッド層11、12では、屈折率が変化しないため、結果的に、コア部14とその上下のクラッド層11、12との間で屈折率差が拡大することとなる。
以上のような原理で、極大値と極小値との間で屈折率差の大きい屈折率分布Tを有する光導波路1が得られる(図15(b)参照)。なお、屈折率分布T’において、すでに十分な効果が認められるような屈折率分布の形状が実現されている場合には、上述した屈折率分布T’から屈折率分布Tへの変化は省略されてもよい。
なお、屈折率分布Wは、コア層13中のモノマー由来の構造体濃度に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の構造体の濃度を測定することにより、光導波路1が有する屈折率分布Wを間接的に特定することが可能である。
同様に、屈折率分布Tは、光導波路1中のモノマー由来の構造体濃度に一定の相関関係を有している。したがって、このモノマー由来の構造体の濃度を測定することにより、光導波路1が有する屈折率分布Tを間接的に特定することが可能である。
なお、モノマー由来の構造体とは、モノマー、モノマーが反応してなるオリゴマー、およびモノマーが反応してなるポリマー等、モノマーの未反応物か反応に伴って形成される構造体のことである。
構造体の濃度の測定は、例えば、FT−IR、TOF−SIMSの線分析、面分析等を用いて行うことができる。
さらには、光導波路1の出射光の強度分布が、屈折率分布Wあるいは屈折率分布Tと一定の相関関係を有していることを利用しても、屈折率分布Wおよび屈折率分布Tを間接的に特定することができる。
また、例えば、(1)干渉顕微鏡(dual−beam interference microscope)を用いて屈折率依存の干渉縞を観測し、その干渉縞から屈折率分布を算出するという方法、(2)屈折ニアフィールド法(Refracted Near Field method;RNF)により直接測定することが可能である。このうち、屈折ニアフィールド法は、例えば特開平5−332880号公報に記載の測定条件を採用することができる。一方、干渉顕微鏡は、屈折率分布の測定を簡便に行い得る点で好ましく用いられる。
以下、干渉顕微鏡を使用した屈折率分布の測定手順の一例について説明する。まず、断面方向(幅方向)に光導波路をスライスして、光導波路断片を得る。例えば、光導波路の長さが200〜300μmとなるようにスライスする。次いで、2つのスライドガラスで囲まれた空間に、屈折率1.536のオイルで充填したチャンバーを作製する。そして、チャンバー内の空間に、光導波路断片を挟み込んで測定サンプル部と、光導波路断片を入れていないブランクサンプル部とを作製する。次いで、干渉顕微鏡を使用し、2つに分けた光をそれぞれ測定サンプル部とブランクサンプル部に照射した後、透過光を統合することによって干渉縞写真を得る。干渉縞は光導波路断片の屈折率分布(位相分布)に伴って発生するものであるので、得られた干渉縞写真を画像解析することにより、光導波路の幅方向の屈折率分布Wを得ることができる。なお、屈折率分布Wを取得する際には、複数の干渉縞写真を画像解析することで屈折率分布Wの精度を高めることができる。複数の干渉縞写真を得るときには、干渉顕微鏡内のプリズムを移動させることにより、光路長を変化させ、干渉縞の間隔や干渉縞のできる箇所を互いに異ならせた写真を得るようにすればよい。また、干渉縞写真を画像解析する際には、例えば2.5μmの間隔で解析点を設定すればよい。
また、活性放射線930として、レーザー光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
次に、必要に応じて、層910に加熱処理を施す。この加熱処理において、光を照射したコア層13の照射領域9253中のモノマーがさらに重合する。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜180℃程度であるのが好ましく、40〜160℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、照射領域925のモノマーの重合反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
なお、この加熱処理は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
以上により、光導波路1が得られる。
その後、必要に応じて、支持基板951から光導波路1を剥離するとともに、光導波路1の下面に支持フィルム2を積層し、上面にカバーフィルム3を積層する。
また、コア層13を複数層含むように層910を形成した場合、これに活性放射線930を照射すると、1回の照射で複数のコア層13に対して一括にコア部14および側面クラッド部15を形成することができる。このため、複数のコア層13を有する光導波路1を少ない工程で製造することができる。またこの場合、複数のコア層13の間においてコア部14の位置ずれはほとんど起こり得ない。したがって、寸法精度が極めて高い光導波路1が得られる。このような光導波路1は、受発光素子等との光結合に際して、光結合効率が特に高いものとなる。
(第2の製造方法)
次に、光導波路1の第2の製造方法について説明する。
以下、第2の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2の製造方法では、光導波路形成用組成物901の組成が異なる以外は、第1の製造方法と同様である。
光導波路1の第2の製造方法は、[1]支持基板951上に2種類の光導波路形成用組成物901、902(第1の組成物および第2の組成物)を層状に押出成形して層910を得る。[2]次いで、層910の一部に活性放射線を照射した後、層910に加熱処理を施すことで屈折率差を生じさせ、コア部14と側面クラッド部15とを形成したコア層13を得るとともに光導波路1を得る。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、光導波路形成用組成物901を用意する。
第2の製造方法で用いられる光導波路形成用組成物901は、重合開始剤に代えて、触媒前駆体および助触媒を含有している。
触媒前駆体は、モノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、活性放射線の照射により活性化した助触媒の作用により、活性化温度が変化する物質である。この活性化温度の変化により、活性放射線の照射領域9253と未照射領域9403との間で、モノマーの反応を開始させる温度に差が生じ、その結果、照射領域9253のみにおいてモノマーを反応させることができる。
触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層13(光導波路1)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路1の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)
3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、コア部14と側面クラッド部15との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2およびPd(OAc)2(P(Cy)3)2のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
助触媒は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の離脱性基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6 −)等が挙げられる。
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、下記式で表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
このような助触媒の市販品としては、例えば、ニュージャージ州クランベリーのRhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標、以下同様である。) PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、日本国東京のみどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、日本国東京の東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」、日本国東京のみどり化学工業株式会社より入手可能な「NAI−105(CAS番号第85342−62−7番)」等が挙げられる。
なお、助触媒として、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、後述する活性放射線(化学線)としては、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、層910に対して、300nm未満の十分なエネルギーの紫外線(活性放射線)を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して、上記のカチオンおよびWCAを発生させることができる。
[2]
[2−1]次に、第1の製造方法と同様に、マスク935を介して層910に活性放射線930を照射する。
照射領域9253では、助触媒が活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域9253内に存在する触媒前駆体の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域9253内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことをいう。
したがって、活性放射線930照射後においても、例えば−40℃程度で、層910を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線930照射後の層910を複数用意しておき、これらに一括して後述する加熱処理を施すことにより、光導波路1を得ることができ、利便性が高い。
また、上記のような触媒前駆体の分子構造の変化に加え、第1の製造方法と同様、ポリマー915から離脱性基が離脱する。これにより、層910の照射領域9253と未照射領域9403との間に屈折率差が生じる。
[2−2]次に、層910に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域9253内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域9253内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域9253と未照射領域9403との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域9403からモノマーが拡散移動して照射領域9253に集まってくる。
その結果、層910には、第1の製造方法と同様の屈折率分布が形成される。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、照射領域9253内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
次に、層910に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域9403および/または照射領域9253に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域9253、9403に残存するモノマーを反応させる。
このように、各領域9253、9403に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部14および側面クラッド部15の安定化を図ることができる。
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
次に、層910に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層13に生じる内部応力の低減や、コア部14および側面クラッド部15の更なる安定化を図ることができる。
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上の工程を経て、コア層13が得られる。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部14と側面クラッド部15との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、第2の加熱処理以降または第3の加熱処理を省略してもよい。
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路は、光伝送効率および長期信頼性に優れたものである。このため、本発明の光導波路を備えることにより、2点間で高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
本発明の光導波路を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
また、本発明の光導波路は、伝送損失およびパルス信号の鈍りが小さく、多チャンネル化および高密度化しても混信が生じ難い。このため、高密度かつ小面積でも信頼性の高い光導波路が得られ、この光導波路を搭載することで、電子機器の信頼性向上および小型化が図られる。
以上、本発明の光導波路および電子機器について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路には、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の光導波路を製造する方法は、上記の方法に限定されず、例えば、活性放射線の照射により分子結合を切断し、屈折率を変化させる方法(フォトブリーチ法)、コア層を形成する組成物に光異性化または光二量化可能な不飽和結合を有する光架橋性ポリマーを含有させ、これに活性放射線を照射して分子構造を変化させるとともに屈折率を変化させる方法(光異性化法・光二量化法)等の方法を用いることもできる。
これらの方法では、活性放射線の照射量に応じて屈折率の変化量を調整することができるので、目的とする屈折率分布Wの形状に応じて層の各部に照射する活性放射線の照射量を異ならせることにより、屈折率分布Wを有するコア層を形成することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
1.光導波路の製造
(実施例1)
(1)離脱性基を有するノルボルネン系樹脂の合成
水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、ヘキシルノルボルネン(HxNB)7.2g(40.1mmol)、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)を500mLバイアル瓶に計量し、脱水トルエン60gと酢酸エチル11gを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
次に、100mLバイアルビン中に下記化学式(A)で表わされるNi触媒1.56g(3.2mmol)と脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
この下記化学式(A)で表わされるNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に定量的に注入し室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、その場で過酢酸水溶液を調製した。次にこの水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌してNiの還元処理を行った。
次に、処理の完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌を行った。静置して完全に二層分離が行われた後で水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下して生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した後、60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマー#1を得た。ポリマー#1の分子量分布は、GPC測定により、Mw=10万、Mn=4万であった。また、ポリマー#1中の各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(2)光導波路形成用組成物(第1の組成物)の製造
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したモノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)2g、重合開始剤(光酸発生剤) RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
(3)光導波路形成用組成物(第2の組成物)の製造
精製した上記ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位80mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位20mol%にそれぞれ変更したものを、前記ポリマー#1に代えて用いるようにした以外は第1の組成物と同様にして光導波路形成用組成物を得た。
(4)光導波路の製造
製造した光導波路形成用組成物を用い、図9に示すダイコーターにより、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に多色押出成形を行った。これにより、第1の組成物を中間層とし、第2の組成物を下層および上層とし、第1の組成物を最下層および最上層する多色成形体を得た。これを55℃の乾燥器に10分間投入し、溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1300mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中で150℃、1.5時間の加熱を行った。加熱後、鮮明な導波路パターンが現れており、コア部および側面クラッド部が形成されているのが確認された。その後、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。なお、形成された光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の幅を50μm、側面クラッド部の幅を80μm、光導波路の厚さを100μmとした。
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の極小値および極大値を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
一方、光導波路の横断面について、そのコア部の幅の中心を上下方向に通過する中心線に沿って干渉顕微鏡により厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。その結果、屈折率分布Tは、2つの極小値とその間に位置する1つの極大値とを有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
(実施例2)
紫外線の照射量を1500mJ/cm2に高めた以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例3)
紫外線の照射量を2000mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例4)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が45mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が55mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例5)
ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例6)
紫外線の照射量を300mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が40mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が60mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例7)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が30mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が70mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例8)
紫外線の照射量を100mJ/cm2に減らすとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が60mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が40mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例9)
紫外線の照射量を1500mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が10mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が90mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例10)
紫外線の照射量を3000mJ/cm2に高めるとともに、ポリマーとして、ポリマー#1の各構造単位のモル比を、ヘキシルノルボルネン構造単位が5mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が95mol%に変更したものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例11)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、2官能オキセタンモノマー(式(15)で示したもの、東亜合成製、DOX、CAS#18934−00−4、分子量214、沸点119℃/0.67kPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
(実施例12)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、脂環式エポキシモノマー(式(37)で示したもの、ダイセル化学製、セロキサイド2021P、CAS#2386−87−0、分子量252、沸点188℃/4hPa)2g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
(実施例13)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として、以下に示す方法で製造されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
精製した上記ポリマー#1 10gを100mLのガラス容器に秤量し、これにメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(チバガイギー社製)0.01g、シクロヘキシルオキセタンモノマー(式(20)で示したもの、東亜合成製 CHOX)1g、脂環式エポキシモノマー(ダイセル化学製、セロキサイド2021P)1g、光酸発生剤 RhodorsilPhotoinitiator 2074(Rhodia社製、CAS# 178233−72−2)(2.5E-2g、酢酸エチル0.1mL中)を加え均一に溶解させた後、0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、清浄な光導波路形成用組成物を得た。
(実施例14)
ポリマーとして、以下に示す方法で合成されたものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
まず、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン12.9g(40.1mmol)に代えて、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン10.4g(40.1mmol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーを合成した。得られたポリマーの構造単位を下記式(103)に示す。このポリマーの分子量は、GPC測定により、Mw=11万、Mn=5万であった。また、各構造単位のモル比は、NMRによる同定により、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、フェニルジメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
(実施例15)
光導波路形成用組成物(第2の組成物)に代えて、以下に示す方法で合成した光導波路形成用組成物(第3の組成物)を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(1)オキセタン系樹脂の合成
シクロヘキシルオキセタンモノマー(前記式(20)で示したモノマー、東亜合成製 CHOX、CAS#483303−25−9、分子量186、沸点125℃/1.33kPa)50gを300mLセパラブルフラスコ瓶に計量し、メシチレン50gを入れ密栓した。
次に、水分および酸素濃度がいずれも1ppm以下に制御され、乾燥窒素で満たされたグローブボックス中において、100mLバイアルビン中に下記化学式(D)で表わされる触媒0.40g(0.5mmol)と酢酸エチル20mLとを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。
この下記化学式(D)で表わされる触媒溶液12.5mLをシリンジで正確に計量し、上記オキセタンモノマーを溶解させたフラスコ中に定量的に注入し60℃で1時間半撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認され、反応溶液を得た。
上記反応溶液とイオン交換樹脂(オルガノ社製、EG−290−HG)50gを加えて30分撹拌し、濾過を行うことで触媒の除去を行い、ポリマー溶液を得た。
(2)光導波路形成用組成物(第3の組成物)の製造
次いで、得られたポリマー溶液を3g加える以外、第1の組成物と同様にして光導波路形成用組成物(第3の組成物)を得た。
(実施例16)
紫外線の照射量を500mJ/cm2に減らした以外は、実施例15と同様にして光導波路を得た。
(実施例17)
紫外線の照射量を2000mJ/cm2に高めるとともに、ミキシングユニットの構造を変更し、第1の組成物を第1層、第3層、第5層、第7層および第9層とし、第2の組成物を第2層、第4層、第6層および第8層とする多色成形体を得るようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例18)
紫外線の照射量を2500mJ/cm2に高めた以外は、実施例17と同様にして光導波路を得た。
(実施例19〜26)
製造条件を表2に示すように変更した以外は、それぞれ実施例17と同様にして光導波路を得た。
(実施例27)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として実施例11のものを用いるようにした以外は、実施例17と同様にして光導波路を得た。
(実施例28)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として実施例12のものを用いるようにした以外は、実施例17と同様にして光導波路を得た。
(実施例29)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として実施例13のものを用いるようにした以外は、実施例17と同様にして光導波路を得た。
(実施例30)
光導波路形成用組成物(第1の組成物)として実施例14のものを用いるようにした以外は、実施例17と同様にして光導波路を得た。
(実施例31)
光導波路形成用組成物(第2の組成物)に代えて、実施例15に示す光導波路形成用組成物(第3の組成物)を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
(実施例32)
紫外線の照射量を1000mJ/cm2に減らした以外は、実施例31と同様にして光導波路を得た。
(比較例1)
シクロヘキシルオキセタンモノマーを省略してなる光導波路形成用組成物(第1の組成物)を用いるとともに、光導波路形成用組成物(第2の組成物)に代えてプロメラス社製Avatrel2000Pワニスを用いるようにした以外は、実施例1と同様にして光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、コア部の屈折率がほぼ一定であり、側面クラッド部の屈折率もほぼ一定であった。すなわち、得られた光導波路のコア層の幅方向の屈折率分布Wは、いわゆるステップインデックス型(SI)になっていた。
(比較例2)
露光の際に、露光量が連続的に変化するよう、透過率が連続的に変化したフォトマスクを用いて露光するようにした以外は、比較例1と同様にして光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、側面クラッド部の屈折率がほぼ一定である一方、コア部の屈折率は中央部から周辺に向かって連続的に低下していた。すなわち、得られた光導波路のコア層の屈折率分布Wは、いわゆるグレーデッドインデックス(GI)型になっていた。
(比較例3)
露光の際に、露光量が連続的に変化するよう、透過率が連続的に変化したフォトマスクを用いて露光するようにした以外は、比較例1と同様にして光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、屈折率分布Wが複数の極小値および極大値を有し、コア部の屈折率は中央部から周辺に向かって連続的に低下し、極小値に至っており、一方、側面クラッド部では極小値から離れるにつれて屈折率が連続的に増加していた。なお、極小値では、屈折率分布Wの形状が略V字状をなしており、その近傍における屈折率の変化は不連続的であった。
(参考例1)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に光導波路形成用組成物(第1の組成物)のみをドクターブレードによって均一に塗布した後、55℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1300mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、マスクには、実施例1と同様のものを用い、形成した光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の幅を50μm、側面クラッド部の幅を80μm、コア層の厚さを50μmとした。このようにして形成されたのはコア層のみであり、これにより、クラッド層を省略した光導波路が得られた。
そして、得られたコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の極小値および極大値を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
(参考例2)
(下側クラッド層の作製)
シリコンウエハー上に光導波路形成用組成物(第2の組成物)をドクターブレードにより均一に塗布した後、55℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後、塗布された全面に紫外線を100mJ照射し、乾燥機中120℃で1時間加熱して、塗膜を硬化させて、下側クラッド層を形成させた。形成された下側クラッド層は、厚みが20μmであり、無色透明であった。
(コア層の作製)
上記下側クラッド層上に光導波路形成用組成物(第1の組成物)をドクターブレードによって均一に塗布した後、55℃の乾燥機に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後、フォトマスクを圧着して紫外線を1300mJ/cm2で選択的に照射した。マスクを取り去り、乾燥機中150℃で1.5時間の加熱を行った。加熱後、非常に鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。また、コア部および側面クラッド部の形成が確認された。なお、形成した光導波路は、コア部が8本並列に形成されたものである。また、コア部の幅を50μm、側面クラッド部の幅を80μm、コア層の厚さを50μmとした。
(上側クラッド層の作製)
ポリエーテルスルホン(PES)フィルム上に、予め乾燥厚み20μmになるように光導波路形成用組成物(第2の組成物)を積層させたドライフィルムを、上記コア層に貼り合わせ、140℃に設定された真空ラミネーターに投入して熱圧着を行った。その後、紫外線を100mJ全面照射し乾燥機中120℃で1時間加熱して、光導波路形成用組成物(第2の組成物)を硬化させて、上側クラッド層を形成させ、光導波路を得た。
なお、得られた光導波路から、長さ10cm分を切り出した。
(屈折率分布の評価)
そして、得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により幅方向の屈折率分布Wを取得した。その結果、屈折率分布Wは、複数の極小値および極大値を有し、屈折率が連続的に変化したものであった。
一方、光導波路の横断面について、そのコア部の幅の中心を上下方向に通過する中心線に沿って干渉顕微鏡により厚さ方向の屈折率分布Tを取得した。その結果、屈折率分布Tは、コア部に対応する領域においてほぼ一定の値で推移し、各クラッド層に対応する領域においても、コア部に対応する領域の屈折率より低いほぼ一定の値で推移した。すなわち、得られた光導波路の厚さ方向の屈折率分布Tは、いわゆるステップインデックス型になっていた。
(参考例3)
実施例17で用いたミキシングユニットにおいて、その設定を変更した以外は、実施例17と同様にして光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、厚さ方向の屈折率分布Tが、いわゆるグレーデッドインデックス型になっていた。
(参考例4)
実施例17で用いたミキシングユニットにおいて、混合ピンを省略した以外は、実施例17と同様にして光導波路を得た。
なお、得られた光導波路では、厚さ方向の屈折率分布Tが、いわゆるステップインデックス型になっていた。
以上の各実施例、各比較例および各参考例で得られた光導波路について、製造条件を表1、2に示す。
2.評価
2.1 光導波路の屈折率分布
得られた光導波路のコア層の横断面について、その厚さ方向の中心線に沿って干渉顕微鏡により屈折率分布を測定し、コア層の横断面の幅方向の屈折率分布を得た。なお、得られた屈折率分布は、コア部ごとに同様の屈折率分布パターンが繰り返されているので、得られた屈折率分布から一部を切り出し、これを屈折率分布Wとした。屈折率分布Wの形状は、図2に示すような、4つの極小値と5つの極大値とが交互に並んだ形状であった。
そして、得られた屈折率分布Wから、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4および各極大値Wm1、Wm2、Wm3、Wm4、Wm5を求めるとともに、クラッド部における平均屈折率WAを求めた。
また、屈折率分布Wにおいて、コア部に形成された極大値Wm2、Wm4近傍における屈折率が、平均屈折率WA以上の値を有している部分の幅a[μm]、および、各極小値Ws1、Ws2、Ws3、Ws4近傍における屈折率が、平均屈折率WA未満の値を有している部分の幅b[μm]をそれぞれ測定した。
また、得られた光導波路の横断面について、そのコア部の幅の中心を上下方向に通過する中心線に沿って干渉顕微鏡により屈折率分布を測定し、光導波路の横断面の厚さ方向の屈折率分布Tを得た。このうち、実施例1〜16の光導波路で得られた屈折率分布Tの形状は、図4に示すような、2つの極小値の間に1つの極大値が並んだ形状であった。そして、得られた屈折率分布Tから、各極小値Ts1、Ts2および極大値Tmを求めるとともに、クラッド層における平均屈折率TAを求めた。
また、実施例17〜32の光導波路で得られた屈折率分布Tの形状は、図6に示すような、4つの極小値と5つの極大値とが交互に並んだ形状であった。そして、得られた屈折率分布Tから、各極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4および各極大値Tm1、Tm2、Tm3、Tm4、Tm5を求めるとともに、クラッド層における平均屈折率TAを求めた。
また、屈折率分布Tにおいて、コア部に形成された極大値Tm2、Tm4近傍における屈折率が、平均屈折率TA以上の値を有している部分の幅a[μm]、および、各極小値Ts1、Ts2、Ts3、Ts4近傍における屈折率が、平均屈折率TA未満の値を有している部分の幅b[μm]をそれぞれ測定した。
以上の結果を表3〜5に示す。
その結果、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wは、それぞれ、その全体において屈折率の変化が連続的であった。
一方、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Tも、それぞれ、その全体において屈折率の変化が連続的であった。
また、比較例1で得られた光導波路の屈折率分布Wは、上述したように、ステップインデックス型であり、一方、屈折率分布Tは、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Tと同等の分布であった。
また、比較例2で得られた光導波路の屈折率分布Wは、上述したように、グレーデッドインデックス型であり、一方、屈折率分布Tは、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Tと同等の分布であった。
さらに、比較例3で得られた光導波路の屈折率分布Wは、複数の極小値および極大値を有し、かつ、コア部と側面クラッド部との間で屈折率が不連続的に変化しており、一方、屈折率分布Tは、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Tと同等の分布であった。
また、参考例1で得られた光導波路の屈折率分布Wは、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wと同等の形状であり、一方、クラッド層が省略されていたので、屈折率分布Tは測定しなかった。
さらに、参考例2で得られた光導波路の屈折率分布Wも、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wと同等の形状であったが、屈折率分布Tは、ステップインデックス型であった。
また、参考例3および参考例4で得られた光導波路の屈折率分布Wも、各実施例で得られた光導波路の屈折率分布Wと同等の形状であったが、屈折率分布Tは、グレーデッドインデックス型およびステップインデックス型であった。
2.2 光導波路の伝送損失
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μmφの光ファイバーを経由して得られた光導波路に導入し、200μmφの光ファイバーで受光を行って光の強度を測定した。なお、測定にはカットバック法を採用した。光導波路の長手方向を横軸にとり、挿入損失を縦軸にとって測定値をプロットしたところ、測定値は直線上に並んだ。そこで、その直線の傾きから伝送損失を算出した。
2.3 パルス信号の波形の保持性
得られた光導波路に対して、レーザーパルス光源からパルス幅1nsのパルス信号を入射し、出射光のパルス幅を測定した。
そして、測定した出射光のパルス幅について、比較例1で得られた光導波路(ステップインデックス型の光導波路)の測定値を1としたときの相対値を算出し、これを以下の評価基準にしたがって評価した。
<パルス幅の評価基準>
◎:パルス幅の相対値が0.5未満である
○:パルス幅の相対値が0.5以上0.8未満である
△:パルス幅の相対値が0.8以上1未満である
×:パルス幅の相対値が1以上である
以上、2.2および2.3の評価結果を表6、7に示す。
表6から明らかなように、各実施例で得られた光導波路では、各比較例で得られた光導波路に比べ、伝送損失およびパルス信号の鈍りがそれぞれ抑えられていることが認められた。
2.4 光導波路の出射光の強度分布
得られた光導波路の出射側端面について、8つのコア部のうちの1つに光を入射したときの出射光の強度分布を測定した。
なお、出射光の強度分布の測定は、以下のようにして行った。
図16は、光導波路の出射側端面における出射光の強度分布を測定する方法を説明するための図である。
図16に示す方法では、まず、測定対象の光導波路1の入射側端面1aのコア部14の1つに対向するように、直径50μmの入射側光ファイバー21を配置する。この入射側光ファイバー21は、光導波路1に光を入射するための発光素子(図示せず)に接続されており、その光軸と、コア部14の光軸とが一致するように配置されている。
一方、光導波路1の出射側端面1bには、これに対向するように直径62.5μmの出射側光ファイバー22を配置した。この出射側光ファイバー22は、光導波路1から出射した出射光を受光するための受光素子(図示せず)に接続されており、その光軸は、光導波路1のコア層の厚さ方向の中心線に合わせてある。そして、出射側光ファイバー22は、出射側端面1bとの離間距離を一定に維持しつつ、この中心線を含む面内を走査し得るよう構成されている。
そして、入射側光ファイバー21からコア部の1つに光を入射しつつ、出射側光ファイバー22を走査させる。そして、出射側光ファイバー22の位置に対して受光素子で測定された出射光の強度を測定することにより、出射側端面1bの位置に対する出射光の強度分布を取得することができる。
以上のようにして測定した出射光の強度分布を図17に示す。なお、図17には、実施例1、比較例1および比較例2で得られた光導波路で測定された出射光の強度分布を代表に示す。
図17から明らかなように、実施例1で得られた光導波路では、いずれもクロストークが十分に抑えられていることが認められた。また、実施例1で得られた光導波路では、光を入射したコア部14(図17の中央のコア部14)に隣り合うコア部14における出射光の強度は、そのコア部14に隣接した、前記光を入射したコア部14とは反対側に位置する側面クラッド部15における出射光の強度より小さいことが認められた。これは、実施例1で得られた光導波路では、側面クラッド部15に、コア部14より小さい値の極大値を有しており、かつ、屈折率分布が連続的に変化しているため、従来であれば隣り合うコア部14に漏れ出て「クロストーク」になってしまう光が、側面クラッド部15に集まり、結果的にクロストークの発生を防止しているためであると推察される。したがって、実施例1で得られた光導波路では、チャンネル間での混信を防止することができる。
なお、実施例1で得られた光導波路では、出射光の一部が側面クラッド部15に集まっている様子が観測されたが、通常、光導波路に接続される受光素子は、各コア部14の出射側端面に対向するように接続され、側面クラッド部15には接続されない。よって、側面クラッド部15に光が集まったとしても、クロストークとはならず、混信が抑制される。
また、図示していないが、他の実施例および参考例1、2で得られた光導波路でも、実施例1と同様、幅方向におけるクロストークが十分に抑えられていた。
また、実施例17〜32で得られた光導波路について、同様にクロストークの有無を評価したところ、いずれも、幅方向および厚さ方向におけるクロストークの発生を十分に防止し得ることが認められたものの、参考例3、4で得られた光導波路については、厚さ方向におけるクロストークの発生が認められた。
一方、比較例1、2で得られた光導波路では、光を入射したコア部14に隣り合うコア部14において、出射光の強度分布の極大値が位置しており、漏れ出た光が観測された(クロストーク)。
また、図示していないが、比較例3で得られた光導波路でも、クロストークが観測された。
なお、実施例1の条件を下記のように変更して製造した光導波路については、十分な特性が得られなかった。
・紫外線の照射量:500mJ/cm2
・多色成形体の紫外線照射前の乾燥条件:45℃×15分
・第1の組成物における重合開始剤の添加量:1.36E-2g
3.その他の実施例
3.1 光導波路の製造
(実施例A)
(1)光導波路形成用組成物(第1の組成物)の製造
新日鐵化学(株)製YP−50S 20gと、ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2021P 5gと、(株)ADEKA製アデカオプトマーSP−170 0.2gと、をメチルイソブチルケトン80g中に投入し撹拌溶解し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な光導波路形成用組成物(第1の組成物)を得た。
(2)光導波路形成用組成物(第2の組成物)の製造
ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2081 20g、(株)ADEKA社製アデカオプトマーSP−170 0.6g、メチルイソブチルケトン80gを撹拌混合し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な光導波路形成用組成物(第2の組成物)を得た。
(3)光導波路の製造
製造した光導波路形成用組成物を用い、図9に示すダイコーターにより、厚み25μmのポリイミドフィルム上に多色押出成形を行った。これにより、第1の組成物を中間層とし、第2の組成物を下層および上層とする多色成形体を得た。これを55℃の乾燥器に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後に、ラインが50μm、スペースが50μmの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着し、平行露光機を用いて照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射した。その後、マスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入して取り出すと鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。得られた光導波路の厚みは70μmであった。
(実施例B)
(1)ポリマーの合成
セパラブルフラスコにメタクリル酸メチル20.0g、ベンジルメタクリレート30.0g、およびメチルイソブチルケトン450gを投入し、撹拌混合したのち、窒素ガスで置換してモノマー溶液を得た。一方、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.25gをメチルイソブチルケトン10gに溶解し、窒素ガスで置換して開始剤溶液を得た。その後、前記モノマー溶液を撹拌しながら80℃に加熱し前記開始剤溶液をシリンジを用いてモノマー溶液に添加した。そのまま80℃で1時間加熱撹拌したのちに冷却し重合体溶液を得た。
次いで、5Lのイソプロパノールをビーカーに準備し常温で撹拌機で撹拌しながら、前記重合体溶液を滴下した。滴下が完了してからも引き続き30分間撹拌し、その後沈殿したポリマーを取り出し、真空乾燥機にて減圧下60℃で8時間乾燥してポリマーA1を得た。
(2)光導波路形成用組成物(第2の組成物)の製造
互応化学工業(株)製の水性アクリレート樹脂溶液RD−180 20g、イソプロパノール20g、および日清紡ケミカル(株)製カルボジライトV−02−L2 0.4gを撹拌混合し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な光導波路形成用組成物(第2の組成物)を得た。
(3)光導波路形成用組成物(第1の組成物)の製造
(1)の方法で得られたポリマーA1 20gと、メタクリル酸シクロヘキシル5gと、BASFジャパン(株)製イルガキュア651 0.2gと、をメチルイソブチルケトン80g中に投入し撹拌溶解し、0.2μm孔径のPTFEフィルターでろ過して清浄で無色透明な光導波路形成用組成物(第1の組成物)を得た。
(4)光導波路の製造
製造した光導波路形成用組成物を用い、図9に示すダイコーターにより、厚み25μmのポリイミドフィルム上に多色押出成形を行った。これにより、第1の組成物を中間層とし、第2の組成物を下層および上層とする多色成形体を得た。これを55℃の乾燥器に10分間投入した。溶剤を完全に除去した後に、ラインが50μm、スペースが50μmの直線パターンが全面に描かれたフォトマスクを圧着し、平行露光機を用いて照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射した。その後、マスクを取り去り、150℃のオーブンに30分間投入して取り出すと鮮明な導波路パターンが現れているのが確認された。得られた光導波路の厚みは70μmであった。
(実施例C)
まず、ベンジルメタクリレートの代わりに2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートを用いたこと以外は実施例Bの(1)と同様にして合成されたポリマーA2を得た。
以下、ポリマーA1に代えてポリマーA2を用いるようにした以外は、実施例Bと同様にして光導波路を得た。
3.2 評価
(光導波路の伝送損失)
850nmVCSEL(面発光レーザー)より発せられた光を50μm径の光ファイバーを経由し、実施例A〜C得られた光導波路に導入し、200μm径の光ファイバーで受光して光の強度を測定した。そして、カットバック法により伝送損失を測定した。その後、導波路長を横軸にとり、挿入損失を縦軸にプロットすると測定値は直線上に並び、その傾きから各光導波路の伝搬損失はいずれも0.05dB/cmと算出することができた。
また、実施例A〜Cにおいて、屈折率分布のパラメーターを1.の実施例と同様にして変更したところ、2.と同じ傾向の評価結果が得られた。
(パルス信号の波形の保持性)
実施例A〜Cで得られた光導波路について、2.3と同様の方法でパルス信号の波形の保持性を評価したところ、いずれもパルス信号の鈍りが小さいことが認められた。
また、実施例A〜Cにおいて、屈折率分布のパラメーターを1.の実施例と同様にして変更したところ、2.と同じ傾向の評価結果が得られた。