JP2010230607A - 制御棒 - Google Patents

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浩一 町田
Norio Kawashima
範夫 川島
Kazuki Kobayashi
一樹 小林
Atsushi Hasegawa
篤志 長谷川
Takayuki Osawa
高行 大澤
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Abstract

【課題】地震発生時にさらに短時間で炉心に挿入できる制御棒を提供する。
【解決手段】制御棒1は、横断面が十字形をしていて軸心にタイロッド4が配置され、このタイロッド4から四方に伸びる4枚のブレード2を有する。ハンドル5がタイロッド4の上端部に取り付けられ、下部支持部材8がタイロッド4の下端部に取り付けられる。各ブレード2は、横断面がU字状をしているシース6、扁平な筒であるハフニウム部材3U,3Lを有する。ハンドル5の厚みt2は、ブレード2の厚み、すなわち、シース6の両外面間の厚みt1よりも薄くなっている。下部支持部材8の厚みt3も、ブレード2の厚みt1よりも薄くなっている。地震発生時に制御棒1が炉心内に急速挿入されるとき、厚みの薄いハンドル5及び下部支持部材8が炉心内の構成物に接触するとたわみやすい。このため、制御棒1が炉心に挿入されやすくなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、制御棒に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な制御棒に関する。
沸騰水型原子炉において使用される従来の制御棒は、横断面が概略十字形であり、中性子吸収材を装填したブレード、ブレードの上端に接合されたハンドル、及びブレードの下端に接合された下部支持板(または落下速度リミッター)を備えている。沸騰水型原子炉に用いられる制御棒の一例が、例えば、特開平2−10299公報、特開2002−71868号公報及び特開平9−61576号公報に記載されている。これらの制御棒は、ブレードを構成するU字状のシース内に中性子吸収部材であるハフニウムを配置している。
例えば、特開平9−61576号公報に記載された制御棒は、以下のような構成を有する。ハンドルが軸心となる概略十字形の横断面形状を有するタイロッドの上端部に取り付けられ、下部支持部材(下部支持板または落下速度リミッター)がタイロッドの下端部に取り付けられている。ステンレス鋼製の横断面がU字状をしているシースの両側端がタイロッドに溶接されている。さらに、シースの上端がハンドルに、シースの下端が下部支持部材にそれぞれ溶接されている。横断面が楕円形状をしているハフニウム部材がシース内に配置される。
複数の制御棒が沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設けられている。沸騰水型原子炉の運転停止中では、これらの制御棒は、全て、原子炉圧力容器内に配置された炉心内に全挿入されている。沸騰水型原子炉の運転中では、大部分の制御棒が炉心から全引き抜きされており、一部の制御棒が炉心に挿入されて原子炉出力の制御に用いられる。原子炉の運転を停止するときには、全ての制御棒が炉心に挿入される。
地震発生時には、原子炉の運転を停止するために全ての制御棒が炉心に緊急挿入(スクラム)される。この時、地震の揺れにより炉心内に装荷されている燃料集合体のチャンネルボックスがたわむので、挿入される制御棒とチャンネルボックスが接触し、チャンネルボックスとの間で発生する摩擦力が制御棒に作用する。このため、地震発生時のスクラム時間が、地震が発生していない通常時のスクラム時間より長くなる。
制御棒の炉心への挿入性を改善する対策が、種々提案されている。特開昭61−17979号公報に記載された制御棒は、ハンドル(またはブレード)にローラを設けている。このローラは、制御棒が炉心に挿入されるときチャンネルボックスと接触して回転する。このため、制御棒を炉心に挿入するときに発生する摩擦抵抗が、ローラの回転によって小さくなり、地震発生時における制御棒の炉心への挿入性が改善される。
炉心に装荷された燃料集合体のチャンネルボックスの側壁がクリープ変形を起こし、チャンネルボックスの側壁の横断面中央部が外側に向って膨張する。特開平3−215789号公報に記載された制御棒は、このようなクリープ変形を起こしたチャンネルボックスが炉心内に存在した場合でも、炉心内への挿入性を高めたものである。この制御棒は、ハンドルの肉厚をブレードにおけるシースの両外面間の幅よりも薄くし、ブレードの先端部付近でハンドルの両側面にガイドパッドを設けている。ガイドパッドは、クリープ変形を起こしたチャンネルボックスの側壁の中央部の変形を避けるように配置している。このため、特開平3−215789号公報に記載された制御棒は、チャンネルボックスがクリープ変形している場合でも、炉心からの引き抜き及び炉心への挿入を容易に行うことができる。ガイドパッドは、チャンネルボックスのコーナー部付近でチャンネルボックスの外面に接触し、挿入される制御棒をガイドする。
特開平8−285979号公報は、地震時における制御棒の炉心への挿入性を高めた沸騰水型原子炉を提案している。上端部が上部格子板によって支持される燃料集合体のチャンネルボックスに、板バネ、及び突起部である燃料パッドを有する横揺れ防止金具を設けている。上部格子板に接触した燃料パッドと、隣り合う燃料集合体で互いの板バネの接触する位置とが、同一水平面上に配置されている。燃料パッドと板バネの接触点の位置が同一水平面上に配置されているので、地震時における燃料集合体の横揺れを抑制することができる。上端部が燃料集合体間に挿入された制御棒が、特開平8−285979号公報の図1に記載されている。制御棒の上端部は、上端に向って厚みが減少している。特開平8−285979号公報の図1の制御棒に設けられている二重丸の部材は、特に説明がないが、ローラであると想定される。
特表2002−533736号公報に説明された制御棒は、板材及び板材に開けた孔部内に中性子吸収材を充填して構成した4枚の各ブレードを備えている。孔部は、水平方向または上下方向に形成されている(図2a及び図2d参照)。
特開平2−10299公報 特開2002−71868号公報 特開平9−61576号公報 特開昭61−17979号公報 特開平3−215789号公報 特開平8−285979号公報 特表2002−533736号公報
特開昭61−17979号公報に記載された制御棒はハンドルにローラを設けているため、炉心に装荷された燃料集合体に設けられたチャンネルボックスと炉心に挿入された制御棒との間の間隙が、ローラの設置により狭められている。特開平3−215789号公報に記載された制御棒はハンドルにガイドパッドを設けている。この制御棒も、炉心に挿入されたときにチャンネルボックスとの間に形成される間隙がガイドパッドによって狭められている。特開平8−285979号公報に記載された制御棒は、上端に向って肉厚が減少しているが、特開昭61−17979号公報と同様に、ローラの設置により、炉心に挿入された制御棒とチャンネルボックスとの間に形成される間隙が狭められている。
これらの制御棒の地震時における炉心への挿入性を、さらに、高めることが望まれる。
特に、近年、耐震設計条件の見直しが行われており、地震時におけるチャンネルボックスの設計振幅が大きくなり、制御棒のスクラム挿入条件が厳しくなることが想定される。このため、地震発生時における制御棒の炉心への挿入性の向上が、さらに求められる。
この地震発生時における制御棒の挿入性のさらなる向上は、構造が異なる全ての制御棒に対する共通の課題である。特に、照射誘起型応力腐食割れ(IASCC)を抑制する制御棒として、シースと中性子吸収部材との間に隙間が形成されない制御棒(例えば、特表2002−533736号公報参照)が注目されている。この制御棒は、一般的に剛性が高く、地震発生時における炉心への挿入性を改善する必要がある。
本発明の目的は、地震発生時にさらに短時間で炉心に挿入できる制御棒を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、ハンドルとブレードの接合位置からハンドルの上端に亘って、ハンドルの厚みが、ブレードの厚みよりも薄くなっていることにある。
ハンドルとブレードの接合位置からハンドルの上端に亘って、ハンドルの厚みが、ブレードの厚みよりも薄くなっているので、制御棒が炉心に挿入されたときに炉心内に装荷された燃料集合体とハンドルとの間に形成される間隙を広くすることができる。このため、地震発生時に制御棒が炉心に挿入されたとき、ハンドルが燃料集合体の側面に接触する確率が少なくなる。例え、そのときに、ハンドルが燃料集合体の側面に接触したとしても、ハンドルがたわみやすくなり、燃料集合体から受ける反力が小さくなる。これらに起因して、地震発生時において、制御棒の炉心への挿入性が向上し、地震発生後において原子炉をより短時間で停止することができる。
ハンドルは、ローラ、ガイド及びパッドなどのハンドルと燃料集合体の間に形成される間隙を狭くする部材を表面に設けていない。
上記した目的は、下部支持部材の厚みをブレードの厚みよりも薄くすることによっても達成できる。
本発明によれば、地震発生時に、制御棒をさらに短時間で炉心に挿入することができる。
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒の側面図である。 図1のII−II断面図である。 図1のIII−III矢視図である。 図1のIV−IV断面図である。 図1のV−V矢視図である。 図1のVI−VI断面図である。 炉心に装荷された燃料集合体間に挿入された制御棒の状態を示す説明図である。 本発明の他の実施例である実施例2の制御棒の側面図である。 図8のIX−IX矢視図である。 図8のX−X断面図である。 本発明の他の実施例である実施例3の制御棒の側面図である。 図11のXII−XII断面図である。 本発明の他の実施例である実施例4の制御棒の斜視図である。 図13に示す上端部セグメントの斜視図である。 図13に示す中央セグメントの斜視図である。 図13に示す下端部セグメントの斜視図である。 上端部セグメントの一つの中性子吸収材充填部に形成された各中性子吸収材充填孔を密封する作業工程を示す説明図であり、(A)は各中性子吸収材充填孔に中性子吸収材を充填した状態を示す説明図、(B)は各中性子吸収材充填孔に端栓を挿入した状態を示す説明図で、(C)は各端栓を溶接した状態を示す説明図、及び(D)は各端栓の端面に溶接開先部を形成した状態を示す説明図である。 上端部セグメントの一つの中性子吸収材充填部と中央セグメントの一つの中性子吸収材充填部を溶接により結合する作業工程を示す説明図であり、(A)は上端部セグメントの中性子吸収材充填部と中央セグメントの中性子吸収材充填部を対向させて配置した状態を示す説明図、(B)は上端部セグメントの中性子吸収材充填部と中央セグメントの中性子吸収材充填部を接触させた状態を示す説明図、及び(C)は上端部セグメントの中性子吸収材充填部と中央セグメントの中性子吸収材充填部を溶接により結合した状態を示す説明図である。 溶接によって結合された4つのセグメントを含む、図13に示す制御棒の1つのブレードの縦断面図である。 制御棒の中性子吸収材有効長と高速中性子の照射量の関係を示す特性図である。 制御棒の中性子吸収材有効長とスクラム終了時における軸荷重の関係を示す特性図である。
本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒を、図1〜図6を用いて説明する。本実施例の制御棒1は、沸騰水型原子炉(BWR)で用いられる制御棒である。この制御棒1は、横断面が十字形をしていて軸心にタイロッド4が配置され、このタイロッド4から四方に伸びる4枚のブレード2を有する。ハンドル5がタイロッド4の上端部に取り付けられ、下部支持部材8がタイロッド4の下端部に取り付けられる。下部支持部材8は、下部支持板(または落下速度リミッター)である。ローラ16が回転可能に下部支持部材8に取り付けられる。このローラ16は、炉心に装荷されている燃料集合体のチャンネルボックスの外面と接触し、制御棒1を燃料集合体間で円滑に移動させる機能を有する。
各ブレード2は、横断面がU字状をしているシース6、扁平な筒、例えば楕円形状の筒であるハフニウム部材3U,3Lを有する(図2参照)。シース6はステンレス鋼(SUS304及びSUS316L等)によって構成される。シース6の上端はハンドル5に溶接され、シース6の下端は下部支持部材8に溶接されている。シース6のU字の両端部には、複数のタブ(突出部)18が軸方向において所定の間隔を置いて形成されている。タブ18は、シース6の一部であるが、タイロッド4側に向かって突出している部分である。これらのタブ18は溶接にてタイロッド4に接合されている。
1つのブレード2のシース6内に形成される空間内に、2つのハフニウム部材3U及び2つのハフニウム部材3Lが配置されている。ハフニウム部材3Uはハフニウム部材3Lの上方に配置されており、これらの軸方向の長さは同じである。ハフニウム部材3Uは、ハンドル5の下端部に形成された舌状部11Uにピン12で取り付けられている。ハフニウム部材3Lは、下部支持部材8の上端部に形成された舌状部11Lにピン12で取り付けられている。ハフニウム部材3Uは上端部がハンドル5に取り付けられ、ハフニウム部材3Lが下部支持部材8に取り付けられている。これらのハフニウム部材は中性子吸収部材である。BWRの運転中においてハフニウム部材3U,3Lが熱膨張してもそれらのハフニウム部材が互いに接触しないように、ハフニウム部材3Uの下端とハフニウム部材3Lの上端との間のギャップ(図示せず)が形成されている。
制御棒1は、原子炉出力を制御するために、BWRの原子炉圧力容器内に配置された炉心に装荷された4体の燃料集合体8間に、制御棒駆動機構(図示せず)によって出し入れされる(図7参照)。制御棒1は、下部支持部材8の下端部に設けられたコネクタ17によって原子炉圧力容器の底部に設けられた制御棒駆動装置に連結される。制御棒駆動装置は、制御棒1の炉心内への挿入操作、及び制御棒1の炉心からの引き抜き操作を行う。制御棒1が炉心内に完全に挿入された状態では、制御棒1のハフニウム部材3Lの下端(制御棒有効長の下端)が燃料集合体8の燃料有効長の下端に位置している。
原子炉圧力容器内を流れる冷却水(冷却材)は、シース6に形成された一部の開口14及びシース6の最下端部に形成された複数の開口9Lからシース6内に流入し、ハフニウム部材3U,3Lを冷却して他の開口14(特に上端部に位置する開口14)及びシース6の最上端部に形成された複数の開口9Uからシース6の外に流出する。シース6内に流入した冷却水は、ハフニウム部材3Uに設けられた小径の開口13を通ってハフニウム部材3U内に流入し、また、ハフニウム部材3Lに形成された小径の開口15を通ってハフニウム部材3L内に流入する。このように、冷却水がハフニウム部材3U,3L内に流入することによって、これらのハフニウム部材の冷却効果が増大される。
ハンドル5は、図1、図3、図4及び図5に示すように、ブレード2の厚みよりも薄くなっている。ブレード2の厚み、すなわち、シース6の両外面間の厚みがt1であり(図2及び図3参照)、ハンドル5の厚みがt2であるとき、厚みt2は厚みt1よりも薄くなっている。ハンドル5には、従来の制御棒のように、ローラが設けられていない。特開平3−215789号公報に記載されたガイドパッドもハンドル5には設けられていない。シース6に溶接されているハンドル5の根元では、ハンドル5の厚みが、シース6の上端の外面からハンドル5の上端に向って、曲面19を伴って徐々に減少している(図5参照)。曲面19の替りに傾斜面をハンドル5の根元、すなわち、ハンドル5とシース6の溶接部に形成してもよい。また、ハンドル5の上端部は、丸みを帯びている。
下部支持部材8の厚みは、図1および図6に示すように、シース6の両外面間の厚みt1よりも薄くなっている。下部支持部材8の厚みも、下部支持部材8がシース6に接合されている位置から下部支持部材8の下端に向かって、曲面を伴って徐々に減少している。下部支持部材8の、シース6の両外面間の厚みt1よりも薄い部分は、制御棒1が炉心に全挿入されたときに、燃料集合体を支持する燃料支持金具(図示せず)よりも下方まで達していればよい。制御棒1は、燃料支持金具内を通って燃料集合体8の間に挿入される。
ハンドル5の厚みt2がブレード2の厚みt1よりも薄くなっているので、制御棒1が燃料集合体8の間に挿入されたとき、ハンドル5と燃料集合体8の間に形成される間隙の幅が広くなる。このため、地震が発生したときにおける制御棒1の炉心への挿入性が向上する。もし、この挿入時において、燃料集合体8間に挿入されたハンドル5が燃料集合体8のチャンネルボックスに接触したときには、ハンドル5が容易にたわみ、ハンドル5がチャンネルボックスから受ける反力が小さくなる。これも、地震発生時のスクラム時に、制御棒1の炉心内への挿入性が向上する一因である。本実施例は、地震発生後、より短時間に原子炉の運転を停止することができる。
制御棒1は、ローラ、ガイド及びパッドなどのハンドル5とチャンネルボックスの間に形成される間隙を狭くする部材がハンドル5に設けられていないので、燃料集合体8相互間でハンドル5が大きくたわみやすくなる。本実施例では、ハンドル5にローラ、ガイド及びパッドなどが設けられていないので、ハンドル5のシース6への接合部から、ハンドル5の炉心内に最初に挿入される挿入端に亘って、ハンドル5の領域での最大厚みはブレード2の厚みt1以下になっている。このようなハンドル5は、シース6との接合部を除いて、厚みt2がブレード2の厚みt1よりも薄くなっている。
ハンドルにローラまたはガイドパッドを設けた従来の制御棒では、ハンドルの領域での最大厚みは、ハンドルの厚みではなく、ローラの直径、またはハンドルの両側面にそれぞれ設けられたガイドパッドのチャンネルボックスとの接触面間の幅になる。従来の制御棒におけるハンドルの領域でのそのような最大厚みは、ブレードの厚みt1よりも厚くなっている。
ハンドルの肉厚の薄い部分とブレード2との間に段差が生じた場合には、この段差の影響により制御棒の炉心への挿入性が悪くなる可能性がある。本実施例の制御棒1は、ハンドル5のシース6との接合部において、シース6の外面から、ハンドル5の肉厚の薄い部分に掛けて、段差を形成せずに、ハンドル5の厚みを徐々に減少させているので、制御棒1の炉心への良好な挿入性を維持することができる。制御棒1はハンドル5の挿入端部に丸みをつけているので、炉心に挿入される際に、ハンドル5の挿入端部が燃料集合体8のチャンネルボックスの側面に食い込む可能性がなくなる。このため、制御棒1の炉心への挿入性が向上する。従来の制御棒では、ハンドルの挿入端部にテーパを形成してハンドルの上端のチャンネルボックスへの食い込みを回避している。本実施例の制御棒1は、ハンドル5の挿入端部に丸みを形成することによって、その挿入端部がチャンネルボックスに接触するときに発生する摩擦力を極めて小さくしている。
本実施例では、下部支持部材8の厚みt3(図1参照)がブレード2の厚みt1よりも薄くなっているので、制御棒1が炉心に挿入されたとき、下部支持部材8の側面と燃料支持金具に形成された制御棒挿入孔の内面との間に形成される間隙の幅が広くなる。このため、地震が発生したときにおける制御棒1の炉心への挿入性が向上する。もし、この挿入時において、燃料支持金具に形成された制御棒挿入孔内に挿入された下部支持部材8が、この制御棒挿入孔の内面に接触したときには、下部支持部材8が容易にたわみ、下部支持部材8が燃料支持金具から受ける反力が小さくなる。上記したように、下部支持部材8の厚みt3をブレード2の厚みt1よりも薄くすることによっても、地震発生後、より短時間に原子炉の運転を停止することができる。
ハンドル5の厚みt2及び下部支持部材8の厚みt3がブレード2の厚みt1よりも薄くなっているので、地震発生時における制御棒1の炉心への挿入性が向上し、地震発生後、より短時間に原子炉の運転を停止することができる。
本実施例はハンドル5の厚みt2及び下部支持部材8の厚みt3をブレード2の厚みt1よりも薄くしている。しかしながら、ハンドル5の厚みt2及び下部支持部材8の厚みt3のいずれかをブレード2の厚みt1よりも薄くした制御棒は、両者を薄くした場合に比べて劣るが、従来の制御棒よりも地震発生時における炉心への挿入性が向上し、その分、地震発生後、より短時間に原子炉の運転を停止することができる。
本発明の他の実施例である実施例2の制御棒を、図8、図9及び図10を用いて説明する。本実施例の制御棒1Aは、沸騰水型原子炉(BWR)で用いられる制御棒である。制御棒1Aは、実施例1の制御棒1においてハンドル5をハンドル5Aに替えた構成を有する。制御棒1Aの他の構成は制御棒1と同じである。
ハンドル5Aの、制御棒1Aの軸心に垂直な方向における幅W1は、この方向におけるブレード2の幅W2よりも狭くなっている。このため、ハンドル5Aの垂直部21の、制御棒1Aの軸心に垂直な方向における幅W3は、実施例1の制御棒1におけるハンドル5のその幅よりも狭くなっている。
本実施例の制御棒1Aは、実施例1で生じる各効果を得ることができる。制御棒1Aは、ハンドル5Aの垂直部21の幅W3が、実施例1におけるその幅よりも狭くなっているので、ハンドル5Aはハンドル5よりもチャンネルボックスに接触したときにたわみやすい。このため、制御棒1Aの、地震が発生したときにおける炉心内への挿入性は、制御棒1よりもさらに向上する。
本発明の他の実施例である実施例3の制御棒を、図11及び図12を用いて説明する。制御棒1Bは、実施例1の制御棒1において下部支持部材8を下部支持部材8Bに替えた構成を有する。制御棒1Bの他の構成は制御棒1と同じである。
下部支持部材8Bは一対の垂直部22を含んでいる。この垂直部22は、厚みt3がブレード2の厚みt1と同じであるが、制御棒1Bの軸心に垂直な方向における幅W6が実施例1の制御棒1及び特開平9−61576号公報の図1に記載された制御棒のそれよりも狭くなっている。このため、制御棒1Bのその部分の横断面積が、後者の各制御棒のその部分の横断面積よりも小さくなっている。垂直部22の横断面積が小さい制御棒1Bでは、下部支持部材8Bの剛性がブレード2の剛性よりも小さくなっている。
本実施例の制御棒1Bは、実施例1で生じる各効果を得ることができる。制御棒1Bは、下部支持部材8Bの剛性がブレード2の剛性よりも小さくなっているので、制御棒1Bの炉心への挿入時に、下部支持部材8Bが炉心に装荷されている燃料集合体8のチャンネルボックスに接触したときにたわみやすい。このため、制御棒1Bの、地震が発生したときにおける炉心内への挿入性は向上する。
制御棒1Bにおいて、下部支持部材8Bの厚み、すなわち、垂直部22の厚みt3をブレード2の厚みt1よりも薄くしてもよい。これによって、地震発生時における、制御棒1Bの炉心内への挿入性がさらに向上する。
本発明の他の実施例である実施例4の制御棒を、図13から図16を用いて説明する。本実施例の制御棒1Cも沸騰水型原子炉に用いられる制御棒である。
横断面が十字形をしている制御棒1Cは、4枚のブレード2A、ハンドル5、下部支持部材8A及び速度リミッター24を備えている。4枚のブレード2Aは、制御棒1Cの軸心から四方に向かって伸びている。ハンドル5は4枚のブレード2Aの上端に設けられ、下部支持部材8Aは4枚のブレード2Aの下端に設けられる。この制御棒1Cは、軸方向に4つのセグメント、すなわち、上端部セグメント25、2つの中央セグメント42,52及び下端部セグメント53を有する。これらのセグメントは、上端から、上端部セグメント25、中央セグメント42,52及び下端部セグメント53の順に配置され、隣同士のセグメントは互いに溶接によって結合されている。各セグメントの具体的な構造を以下に説明する。
上端部セグメント25は、図14に示すように、ブレードエレメント26及び34を組み合せて構成される。ブレードエレメント26は、ステンレス鋼製の金属板27を有している。この金属板27には、中性子吸収材充填部28,30及びハンドル部32が形成されている。金属板27は、上端部セグメント25の筺体であって、ブレード2Aの筺体の一部を構成している。中性子吸収材充填部28,30には、それぞれ、中性子吸収材充填部28,30の下端から上方に向かって伸びる複数の中性子吸収材充填孔33が形成されている。ハンドル部32が、中性子吸収材充填孔33の上端より上方に配置され、中性子吸収材充填部28,30をつないでいる。ハンドル部32及び中性子吸収材充填部28,30は、溶接にて一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作される。ハンドル部32には、燃料交換機のフックが挿入される開口部39が形成されている。中性子吸収材充填部28及び30の、互いに向かい合っている側面に、突起部29,31がそれぞれ形成されている。
金属板27の中性子吸収材充填部28,30の厚みがt1及びハンドル部32の厚みがt2であり、中性子吸収材充填部28及び30の、水平方向における幅はW4である。厚みt2は厚みt1よりも薄くなっている。中性子吸収材充填部28及び30の側面を基点にした、突起部29,31の水平方向の幅は、それぞれW5である。中性子吸収材充填部28及び30の、互いに向かい合っている側面間の水平方向の幅は、(2W5+t1)である。
ブレ−ドエレメント34も、図14に示すように、ステンレス鋼製の金属板35を有している。この金属板35には、中性子吸収材充填部36,37及びハンドル部38が形成されている。金属板35も、上端部セグメント25の筺体であって、ブレード2Aの筺体の一部を構成する。中性子吸収材充填部36,37には、それぞれ、中性子吸収材充填部36,37の下端から上方に向かって伸びる複数の中性子吸収材充填孔33が形成されている。ハンドル部38が、中性子吸収材充填孔33の上端より上方に配置され、中性子吸収材充填部36,37をつないでいる。ハンドル部38及び中性子吸収材充填部36,37も、溶接にて一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作される。ハンドル部38には、燃料交換機のフックが挿入される開口部39が形成されている。中性子吸収材充填部36及び37は、下端部において連結部40でつながっている。連結部40は金属板35の一部である。
金属板35のハンドル部38の厚みがt2であり、金属板35の中性子吸収材充填部36,37の厚みがt1である。中性子吸収材充填部36及び37の、水平方向における幅はW4である。中性子吸収材充填部36及び37の、互いに向かい合っている側面の間の水平方向での幅は、中性子吸収材充填部28及び30の、互いに向かい合っている側面の間の水平方向での幅と同じく、(2W5+t1)である。連結部40の高さはH1であり、ブレードエレメント26に形成される突起部29,31の高さも、それぞれH1である。
ハンドル部32の厚みt2は、ハンドル部32が中性子吸収材充填部28及び30につながる部分において、中性子吸収材充填部28及び30の上端から上方に向かって、図5に示すように、曲面19を形成して徐々に減少する。また、ハンドル部38の厚みt2は、ハンドル部38が中性子吸収材充填部36及び37につながる部分において、中性子吸収材充填部36及び37の上端から上方に向かって、曲面19を形成して徐々に減少する。
ブレードエレメント34のハンドル部38が、ブレードエレメント26に直交した状態で、ブレードエレメント26の下端から、ブレードエレメント26の突起部29と突起部31の間に挿入される。さらに、ハンドル部32に形成された溝(図示せず)にハンドル部38が嵌め合わされ、ハンドル部38に形成された溝(図示せず)にハンドル部32が嵌め合される。このとき、ブレ−ドエレメント34の連結部40は、突起部29と突起部31の間に位置している。ブレ−ドエレメント26とブレ−ドエレメント34が直交して嵌め合された状態で、突起部29及び31が連結部40に溶接にて結合される(図14参照)。41が突起部29と連結部40の溶接部である。ハンドル部32とハンドル部38は互いに溶接されない。
制御棒1Cが炉心に挿入されたときに、ハンドル部32及び39のそれぞれと炉心に装荷された燃料集合体のチャンネルボックスとの間に形成される間隙を狭くする部材(ローラ、ガイド及びパッドなど)が、ハンドル部32,39の各側面に設けられていない
中性子吸収材充填部28,30,36及び37のそれぞれに形成された各中性子吸収材充填孔33内には、中性子吸収材が充填される。
中央セグメント42,52は、図15に示すように、2枚のブレードエレメント43とブレードエレメント46を組み合せて構成される。ブレードエレメント43は、ステンレス鋼製の金属板71を有している。この金属板71には、中性子吸収材充填部44及び突起部45が形成されている。金属板71は、中央セグメントの筺体であり、ブレード2Aの筺体の一部を構成する。中性子吸収材充填部44には、中性子吸収材充填部44の下端から上方に向かって伸びる複数の中性子吸収材充填孔33が形成されている。突起部45は、金属板71の一部が突出して形成され、中性子吸収材充填部44の一側面から突出している。突起部45の高さはH1であり、突起部45の水平方向の幅はW5である。中性子吸収材充填部44の水平方向における幅はW4であり、中性子吸収材充填部44の肉厚はt1である。中性子吸収材充填部44の高さはHpである。中性子吸収材充填部44の下端から中性子吸収材充填孔33の上端までの高さ、すなわち、中性子吸収材充填孔33の深さ(軸方向の長さ)はHdである。Hp及びHdは、Hp>Hdの関係にある。上端部セグメント25の中性子吸収材充填部28,30,36及び37にそれぞれ形成された各中性子吸収材充填孔33の深さもHdである。
ブレードエレメント46は、図15に示すように、ステンレス鋼製の金属板47を有している。金属板47には、中性子吸収材充填部48,49及び連結部50が形成されている。金属板47も、中央セグメントの筺体であり、ブレード2Aの筺体の一部を構成する。中性子吸収材充填部48,49には、それぞれ、中性子吸収材充填部48,49の下端から上方に向かって伸びる複数の中性子吸収材充填孔33が形成されている。連結部50が、ブレードエレメント46の下部において、中性子吸収材充填部48と中性子吸収材充填部49をつないでいる。中性子吸収材充填部48,49及び連結部50は、溶接にて一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作される。中性子吸収材充填部48,49の肉厚はt1であり、中性子吸収材充填部48,49の、水平方向における幅はそれぞれW4である。中性子吸収材充填部48,49の高さはHpであり、それぞれの中性子吸収材充填孔33の深さ(軸方向の長さ)はHd(<Hp)である。連結部50の高さはH1である。
2つのブレードエレメント43、及びブレードエレメント46を以下のように組み合せることによって、中央セグメント42,52を得ることができる。2つのブレードエレメント43が、ブレードエレメント46と直交するように配置される。一直線上に配置された各ブレードエレメント43の各突起部45が、互いに向い合うように配置され、ブレードエレメント46の連結部50の水平方向における中央部にそれぞれ面している。この状態で、各ブレードエレメント43の各突起部45が、ブレードエレメント46の連結部50の側面に溶接される。51が、突起部45と連結部50の溶接部である。中央セグメント42,52の各中性子吸収材充填部に形成されたそれぞれの中性子吸収材充填孔33内に中性子吸収材が充填される。中央セグメント42,52において、向かい合っている一対の中性子吸収材充填部44の側面の間に形成された間隙の水平方向における幅は、(2W5+t1)である。また、向かい合っている中性子吸収材充填部48の側面と中性子吸収材充填部49の側面の間に形成された間隙の水平方向における幅も、(2W5+t1)である。
下端部セグメント53は、図16に示すように、ブレードエレメント54及び60を組み合せて構成されている。ブレードエレメント54は、ステンレス鋼製の金属板55を有する。金属板55には、中性子吸収材充填部56,57及び下部支持部58が形成されている。金属板55は、下端部セグメント53の筺体であり、ブレード2Aの筺体の一部を構成する。中性子吸収材充填部56,57には、それぞれ、中性子吸収材充填部56,57の上端から下方に向かって伸びる複数の中性子吸収材充填孔33が形成されている。連結部59を有する下部支持部58が中性子吸収材充填部56と中性子吸収材充填部57をつないでいる。中性子吸収材充填部56,57及び下部支持部58は、溶接にて一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作される。
ブレードエレメント60は、ステンレス鋼製の金属板61を有する。金属板61には、中性子吸収材充填部62,63及び下部支持部64が形成されている。金属板61も、下端部セグメント53の筺体であり、ブレード2Aの筺体の一部を構成する。中性子吸収材充填部62,63には、それぞれ、中性子吸収材充填部62,63の上端から下方に向かって伸びる複数の中性子吸収材充填孔33が形成されている。連結部65を有する下部支持部64が中性子吸収材充填部62と中性子吸収材充填部63をつないでいる。中性子吸収材充填部62,63及び下部支持部64は、溶接にて一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作される。
金属板54,61の中性子吸収材充填部56,57,62及び63のそれぞれの厚みがt1、及び下部支持部58及び64のそれぞれの厚みがt3である。下部支持部58の厚みt3は、下部支持部58が中性子吸収材充填部56及び57につながる部分において、中性子吸収材充填部56及び57の下端から下方に向かって、図5に示すように、曲面19を形成して徐々に減少する。また、下部支持部64の厚みt3は、下部支持部64が中性子吸収材充填部62及び63につながる部分において、中性子吸収材充填部62及び63の下端から下方に向かって、曲面19を形成して徐々に減少する。金属板54,61の中性子吸収材充填部56,57,62及び63のそれぞれの水平方向における幅はW4である。連結部59,65の高さはH1である。各中性子吸収材充填部に形成された中性子吸収材充填孔33の深さはHdである。向かい合っている中性子吸収材充填部56の側面と中性子吸収材充填部57の側面の間に形成された間隙の水平方向における幅、及び向かい合っている中性子吸収材充填部62の側面と中性子吸収材充填部63の側面の間に形成される間隙の水平方向における幅は、いずれも(2W5+t1)である。
ブレードエレメント54の下部支持部58が、ブレードエレメント60に直交した状態で、ブレードエレメント60の下部支持部64に嵌め合わされる。すなわち、連結部59の、上向きの溝が形成された部分と連結部65の、下向きの溝が形成された部分がお互いに嵌め合わされる。直交している連結部59と連結部65が溶接によって結合される。66がこの溶接部である。
中性子吸収材充填部56,57,62及び63のそれぞれに形成された各中性子吸収材充填孔33内には、中性子吸収材が充填される。
各セグメントに形成された中性子吸収材充填孔33の内径は、中性子吸収材が中性子を吸収することによって生じるヘリウムの蓄積に起因した中性子吸収材充填孔33の内圧増大に耐えられる肉厚が、中性子吸収材充填孔33と筺体である各金属板の外面との間、及び隣接する中性子吸収材充填孔33の間に、それぞれ、形成されるように、決定される。
次に、各セグメントの結合方法を、図17及び図18を用いて説明する。ここでは、上端部セグメント25及び中央セグメント42を例に挙げ、上端部セグメント25の中性子吸収材充填部28と中央セグメント42の中性子吸収材充填部44の結合について説明する。
上端部セグメント25は、中性子吸収材充填部28の下端、すなわち、中性子吸収材充填孔33の開放端が上向きになるように支持台(図示せず)の上に置かれる。中性子吸収材67が開放端から各中性子吸収材充填孔33内に充填される(図17(A)参照)。中性子吸収材67の充填は、中性子吸収材充填部28に形成された各中性子吸収材充填孔33だけでなく、中性子吸収材充填部30,36及び37に形成された全ての中性子吸収材充填孔33に対して行われる。上端部セグメント25において、全ての中性子吸収材充填孔33内への中性子吸収材67の充填が終了した後、端栓68が中性子吸収材充填孔33に挿入される。端栓68の先端部は、中性子吸収材充填孔33内への挿入性を高めるために直径が細くなっている。
中性子吸収材充填部28の全ての中性子吸収材充填孔33に対して端栓68が挿入される(図17(B)参照)。その後、全ての端栓68は一個ずつ全周が金属板27に溶け込むように金属板27に溶接される(図17(C)参照)。個々の端栓68が全周を金属板27に溶接されるので、隣り合う中性子吸収材充填孔33が互いに連通することを防止できる。69は端栓68と金属板27の溶接部である。各中性子吸収材充填孔33の一次封止部がこれらの溶接部69によって形成される。金属板27に溶接された各端栓68及び端栓68の溶接部69の上端部に対して機械加工が施され、各端栓68及び各溶接部69の上端部が研削される。この機械加工によって、中性子吸収材充填部28に溶接開先部70が形成される(図17(D)参照)。以上に述べた作業は、上端部セグメント25の他の中性子吸収材充填部、すなわち、中性子吸収材充填部30,36及び37に対しても行われる。
さらに、図17(A)、図17(B)、図17(C)及び図17(D)に示す各作業は、中央セグメント42,52及び下端部セグメント53の各中性子吸収材充填部に対しても実施される。
図17に示す前作業が終了した後、上端部セグメント25と中央セグメント42の結合を、図18を用いて説明する。中央セグメント42の、溶接開先部70が形成された端部とは反対側に位置する端部に、溶接開先部72を形成する。上端部セグメント25の中性子吸収材充填部28に形成された溶接開先部70と中央セグメント42の中性子吸収材充填部44に形成された溶接開先部72が向かい合うように、上端部セグメント25及び中央セグメント42を配置する(図18(A)参照)。このとき、上端部セグメント25の他の3つの中性子吸収材充填部に形成された各溶接開先部70も、中央セグメント42の他の3つの中性子吸収材充填部に形成された各溶接開先部72に向き合っている。中性子吸収材充填部28の溶接開先部70と中性子吸収材充填部44の溶接開先部72を接触させる(図18(B)参照)。他の中性子吸収材充填部28の溶接開先部70も他の中性子吸収材充填部44の溶接開先部72と接触する。その後、中性子吸収材充填部28の溶接開先部70及び中性子吸収材充填部44の溶接開先部72において、溶接が行われる。この結果、中性子吸収材充填部28と中性子吸収材充填部44が結合される(図18(C)参照)。溶接開先部70と溶接開先部72の溶接部は、各中性子吸収材充填孔33に対する二次封止部となる。溶接開先部70と溶接開先部72の溶接部の表面は、上端部セグメント25及び中央セグメント42のそれぞれの金属板の表面よりも低くなっている。このため、制御棒1Cの引き抜き等の操作を行う場合、その溶接部が炉心に装荷された燃料集合体のチャンネルボックスに、直接、接触することを防止することができる。
中性子吸収材充填部30及び他の中性子吸収材充填部44、中性子吸収材充填部36及び中性子吸収材充填部48、及び中性子吸収材充填部37及び中性子吸収材充填部49のそれぞれにおいて、溶接開先部70と溶接開先部72が溶接される。これらの溶接が終了したとき、上端部セグメント25及び中央セグメント42は一体化される。
図18(A)、図18(B)及び図18(C)の各作業は、中央セグメント42と中央セグメント52、及び中央セグメント52と下端部セグメント53に対して、順次、実行される。ただし、中央セグメント52と下端部セグメント53の結合は、中央セグメント52の下端に形成された溶接開先部70と、下端部セグメント53の上端に形成された溶接開先部70とを溶接することによって行われる。
全てのセグメント間において、図18(A)、図18(B)及び図18(C)の各作業が終了したとき、本実施例の制御棒1Cの製造が終了し、制御棒1Cが完成する。制御棒1Cにおいて、ハンドル5はハンドル部32及び38を含んでおり、下部支持部材8Aは下部支持部58及び64を含んでいる。1つのブレード2Aは、中性子吸収材充填部28,44及び56を含んでいる。他のブレード2Aは、中性子吸収材充填部30,44及び57を含んでいる。さらに他のブレード2Aは、中性子吸収材充填部36,48及び62を含んでいる。残りのブレード2Aは、中性子吸収材充填部37,49及び63を含んでいる。速度リミッター5は下部支持部58及び64の下端に取り付けられる。
図19は、制御棒1Cのブレード2Aの縦断面を示している。上端部セグメント25の中性子吸収材充填部28,30,36及び37では、全ての中性子吸収材充填孔33内に中性子吸収材67であるハフニウム67Aが充填されている。中央セグメント42の中性子吸収材充填部44,48及び49,中央セグメント52の中性子吸収材充填部44,48及び49及び下端部セグメント53の中性子吸収材充填部56,57,62及び63では、最も外側に位置している中性子吸収材充填孔33にも、ハフニウム67Aが充填されている。また、中央セグメント42の中性子吸収材充填部44,48及び49,中央セグメント52の中性子吸収材充填部44,48及び49及び下端部セグメント53の中性子吸収材充填部56,57,62及び63では、残りの中性子吸収材充填孔33内に中性子吸収材67である炭化ホウ素67Bの粉末(またはペレット)が充填されている。
沸騰水型原子炉では、炉心の中性子束分布を調整して原子炉出力を制御する原子炉出力調整用の制御棒は、原子炉の運転期間中に、長期において炉心に挿入されている。特に、この制御棒1Cでは、制御棒1Cの上端部が長期間に亘って炉心内に挿入されている。沸騰水型原子炉に用いられる原子炉出力調整用の制御棒が原子炉の運転期間中に受ける高速中性子の照射量は、図20に示すように、軸方向における制御棒の中性子吸収材有効長の下端からその有効長の上端に向かうほど、増大する。特に、中性子吸収材有効長の上端部では、高速中性子の照射量が最も大きくなる。このため、制御棒の上端部に至るほど、制御棒の構造材の劣化のポテンシャルが高くなる。中性子吸収材有効長は、制御棒において中性子吸収材が充填された領域の軸方向の長さを意味している。本実施例の制御棒1における中性子吸収材有効長はLaである(図13参照)。制御棒1Cの中性子吸収材有効長Laは、下端部セグメント53に形成された中性子吸収材充填孔33の下端から上端部セグメント25に形成された中性子吸収材充填孔33の上端までの、制御棒1Cの軸方向における長さであり、実質的には、各セグメントに形成された中性子吸収材充填孔33の軸方向の長さHdの4倍になっている。
本実施例の制御棒1Cは、制御棒1と同様に、ハンドル5の厚みt2及び下部支持部材8Aの厚みt3がブレード2Aの厚みt1よりも薄くなっているので、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本実施例はハンドル5の厚みt2及び下部支持部材8Aの厚みt3をブレード2Aの厚みt1よりも薄くしている。しかしながら、ハンドル5の厚みt2及び下部支持部材8Aの厚みt3のいずれかをブレード2Aの厚みt1よりも薄くした制御棒は、両者を薄くした場合に比べて劣るが、従来の制御棒よりも地震発生時における炉心への挿入性が向上し、その分、地震発生後、より短時間に原子炉の運転を停止することができる。
制御棒1Cは、ハンドル部32及び中性子吸収材充填部28,30が、溶接で一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作され、ハンドル部38及び中性子吸収材充填部36,37も、溶接で一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作されているので、ハンドル5と中性子吸収材充填部28,30,36及び37の間に溶接部が存在していない。中性子吸収材充填部28,30,36及び37においても、下端部を除いて、溶接部が形成されていない。さらに、制御棒1Cでは、特開平9−61576号公報に記載された制御棒において形成されている、冷却水が存在する隙間環境が、存在しない。特開平9−61576号公報に記載された制御棒では、その隙間環境がシースと中性子吸収部材との間に形成されている。
このように、従来の制御棒のようにシースが設けられていなくて内部に隙間環境が形成されておらず、さらに、ハンドル5と上端部セグメント25の各中性子吸収材充填部の溶接部が存在しない制御棒1Cは、IASCCの発生を防止することができる。高速中性子の照射量が最も高くなるハンドル部32の上端部とハンドル部38の上端部は、前述したように嵌め合い構造となっており、互いに溶接されていないので、その部分でのIASCCの発生確率は実質的に0である。本実施例は、特表2002−533736号公報の図2aに記載された制御棒のように、中性子吸収材を充填した横孔を塞ぐ溶接部を、中性子照射量が多い、中性子吸収材の充填領域の上端部に形成していないので、IASCCの発生を防止することができる。
沸騰水型原子炉のスクラム時において、制御棒1Cは炉心内に緊急挿入される。スクラムが終了したときに、制御棒1Cが受ける軸荷重を図21に示す。図21は、制御棒1Cが受けるその軸荷重を制御棒1Cの中性子吸収材有効長に対応して示している。スクラム終了時における制御棒1Cが受ける軸荷重は、中性子吸収材有効長の上端からその下端に向うほど、大きくなっている。
一般的に、構造強度を確保する上で、溶接部は、欠陥ポテンシャルを考慮し、溶接部以外の部分の強度部材よりも安全係数を大きくして設計されている。このため、制御棒においては、スクラム時における軸荷重が大きくなる中性子吸収材有効長の下端付近に溶接部を形成しないことが望ましい。
本実施例の制御棒1Cでは、中性子吸収材充填部56,57及び下部支持部58が、溶接で一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作され、さらに、中性子吸収材充填部62,63及び下部支持部64が、溶接で一体化された構造ではなく、1枚の金属板を機械加工することによって製作されている。このため、制御棒1Cは、下部支持部材8Aと中性子吸収材充填部56,57,62及び63を結合する溶接部が存在しないので、スクラム終了時に受ける軸荷重に対して余裕のある強度を確保することができる。
本実施例は、前述したように、それぞれの中性子吸収材充填孔33に挿入した各端栓68の全周を各セグメントの金属板に溶接して一次封止部を形成し、隣接するセグメントの向かい合った端部同士の溶接により、一次封止部を被う二次封止部を形成している。このため、制御棒1Cにおける各中性子吸収材充填孔33の密封性は、より強固になる。
本実施例では、4つのセグメント、すなわち、上端部セグメント25、2つの中央セグメント42,52及び下端部セグメント53を結合して制御棒1Cを構成している。このため、それらのセグメントに形成される中性子吸収材充填孔33の軸方向の長さを短くすることができるので、各中性子吸収材充填孔33の加工を容易に行うことができる。各中性子吸収材充填孔33の加工に要する時間も短くなる。したがって、制御棒1Cの製造が容易になり、その製造に要する時間も短縮される。
本実施例の制御棒1Cは、前述したように、軸方向に並べて配置した4つのセグメントを結合して構成しているので、軸方向の高速中性子の照射量に基づいて適切な中性子吸収材67を軸方向に配置することができる。具体的には、高速中性子の照射量が多い上部セグメント25では、核燃料物質(例えば、ウラン429)の核分裂に寄与する熱中性子の照射量も多くなる。したがって、上部セグメント25に形成された各中性子吸収材充填孔33には、中性子吸収反応の持続期間が長いハフニウム67Aを充填する。中央セグメント42,52及び下端部セグメント53では、最も外側に位置している中性子吸収材充填孔33を除いた他の全ての中性子吸収材充填孔33に中性子吸収断面積がハフニウムよりも大きな炭化ホウ素67Bを充填する。4つのセグメントを結合して構成された制御棒1では、上記のように、中性子の照射量に合せて、特性の異なる中性子吸収材を軸方向に配置することができる。
本実施例では、制御棒の軸方向に4つのセグメントを配置しているが、中央セグメントを1つにして3つのセグメントで制御棒を構成することも可能である。さらに、中央セグメントを3つ以上設けることも可能である。
本実施例の制御棒1Cでは、2つ(または3つの)ブレードエレメントを溶接して各セグメントを構成した後、セグメント同士を溶接している。しかしながら、軸方向に配置されて隣接するセグメントの中性子吸収材充填部同士を先に溶接し、全てのセグメントの中性子吸収材充填部同士の溶接が終了した後、各セグメントにおいて2つ(または3つの)ブレードエレメント同士を溶接して、制御棒1を製造しても良い。このような手順で溶接を行うことによって、制御棒1Cの各ブレードにおける熱ひずみの発生を軽減することができる。
本発明は、沸騰水型原子炉に用いられる制御棒に適用可能である。
1,1A,1B,1C…制御棒、2,2A…ブレード、3U,3L…ハフニウム部材、4…タイロッド、5,5A…ハンドル、6…シース、8,8A,8B…下部支持部材、8…燃料集合体、25…上端部セグメント、26,34,43,46,54,60…ブレードエレメント、27,35,47,55,61,71…金属板、28,30,36,37,44,48,49,56,57,62,63…中性子吸収材充填部、29,31,45…突起部、32,38…ハンドル部、33…中性子吸収材充填孔、40,50,59,65…連結部、42,52…中央セグメント、53…下端部セグメント、67…中性子吸収材、67A…ハフニウム、67B…炭化ホウ素、68…端栓。

Claims (13)

  1. 制御棒の軸心から四方に伸びるブレードと、前記ブレードの上端部に接合されたハンドルと、前記ブレードの下端部に接合された下部支持部材とを備えた横断面が十字形をしている制御棒において、前記ハンドルと前記ブレードの接合位置から前記ハンドルの上端に亘って、前記ハンドルの厚みが、前記ブレードの厚みよりも薄くなっていることを特徴とする制御棒。
  2. 制御棒の軸心から四方に伸びるブレードと、前記ブレードの上端部に接合されたハンドルと、前記ブレードの下端部に接合された下部支持部材とを備えた横断面が十字形をしている制御棒において、前記下部支持部材の厚みが前記ブレードの厚みよりも薄くなっていることを特徴とする制御棒。
  3. 前記下部支持部材の厚みが前記ブレードの厚みよりも薄くなっている請求項1に記載の制御棒。
  4. 前記ハンドルの厚みは、前記ハンドルと前記ブレードの接合部では、前記接合位置から離れるにしたがって徐々に薄くなっている請求項1に記載の制御棒。
  5. 前記下部支持部材の厚みは、前記下部支持部材と前記ブレードの接合部では、前記下部支持部材と前記ブレードの接合位置から離れるにしたがって徐々に薄くなっている請求項2または3に記載の制御棒。
  6. 前記ブレードが、中性子吸収部材、及び前記中性子吸収部材を取り囲み前記中性子吸収部材との間に間隙を形成するシースを含んでいる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の制御棒。
  7. 前記ブレードが、金属部材、及び前記金属部材に形成された複数の孔部内に配置された中性子吸収部材を含んでいる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の制御棒。
  8. 制御棒の軸心から四方に伸びるブレードと、前記ブレードの上端部に接合されたハンドルと、前記ブレードの下端部に接合された下部支持部材とを備えた横断面が十字形をしている制御棒において、前記下部支持部材の剛性が前記ブレードの剛性よりも小さくなっていることを特徴とする制御棒。
  9. 横断面が十字形をしており、互いに溶接にて結合されて軸方向に並んで配置された複数のセグメントを備え、
    最も上方に位置する前記セグメントである第1セグメントが、1枚の金属板から加工された、ハンドル部及び前記軸方向に伸びて中性子吸収材が充填された複数の中性子吸収材充填孔を形成している複数の中性子吸収材充填部をそれぞれ有する一対のブレードエレメントを十字形に組み合せて構成され、
    最も下方に位置する前記セグメントである第2セグメントが、下部支持部及び前記軸方向に伸びて中性子吸収材が充填された複数の中性子吸収材充填孔を形成している複数の中性子吸収材充填部をそれぞれ有する一対のブレードエレメントを十字形に組み合せて構成され、
    前記第1セグメントと前記第2セグメントの間に配置された他の前記セグメントである少なくとも1つの第3セグメントは、前記軸方向に伸びて中性子吸収材が充填された複数の中性子吸収材充填孔を形成している4つの中性子吸収材充填部を、十字形に組み合せて構成され、
    前記セグメント同士が、隣り合う前記セグメントの前記中性子吸収材充填部同士の溶接によって結合されており、
    前記ハンドル部及び下部支持部の少なくとも1つの厚みが、それぞれの前記中性子吸収材充填部の厚みよりも薄くなっていることを特徴とする制御棒。
  10. 前記第2セグメントは、1枚の金属板から加工された、前記下部支持部及び前記複数の中性子吸収材充填部をそれぞれ有する前記一対のブレードエレメントを含んでいる請求項9に記載の制御棒。
  11. 前記セグメントに形成された各々の前記中性子吸収材充填孔の、前記中性子吸収材の充填時に開放されている端部にそれぞれ挿入した各端栓の全周を、前記セグメントの筐体に溶接することによって、前記セグメントに第1封止部を形成している請求項9または10に記載の制御棒。
  12. 前記セグメント同士の結合が、溶接によって前記第1封止部を被う第2封止部を形成することによって行われた請求項11に記載の制御棒。
  13. 前記第1セグメントに形成されたそれぞれの前記中性子吸収材充填孔内に充填された前記中性子吸収材がハフニウムであり、前記第2及び第3セグメントに形成された複数の中性子吸収材充填孔のうち、少なくとも、前記第2及び第3セグメントの外側端部に位置する前記中性子吸収材充填孔を除いた複数の前記中性子吸収材充填孔に、異なる前記中性子吸収材である炭化ホウ素を充填している請求項9ないし12のいずれか1項に記載の制御棒。
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