JP2010229932A - 可変動弁装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の状態に応じて低速側カムと高速側カムとを切り替える可変動弁装置において、エンジンの低回転領域では高速側カムへの切り替えを禁止する一方、エンジンの高回転領域でレーシングスタート時には高速側カムへの切り替えを可能とする。
【解決手段】エンジンが無負荷状態であると判断し、かつ車両が停車状態であると判断した場合に、スロットル開度が所定値より小さいときには高速側カムへの切り替えを禁止し、スロットル開度が所定値以上のときには、エンジン無負荷状態における同一スロットル開度でのエンジン回転数に比して、実際のエンジン回転数が低いと判断した場合には、クラッチが接続されようとしていると判断し、所定のエンジン回転数において高速側カムへの切り替えを許可する一方、クラッチが接続されようとしていないと判断した場合には、高速側カムへの切り替えを禁止する。
【選択図】図4

Description

この発明は、自動二輪車等の鞍乗り型車両に好適なエンジンの可変動弁装置に関する。
従来、上記可変動弁装置の制御において、ギヤポジションセンサが変速機のニュートラル位置を検出したときには、低速カムから中高速カムへの切り替えを実施せず、低速カムのままエンジン回転数を上昇させるようにすることで、カム切り替え音の発生を防止する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
特開平4−303142号公報
ところで、上記従来の技術では、変速機がニュートラル状態にあるか否かのみに応じてカム切り替えの可否を制御しているが、マニュアルクラッチを備える自動二輪車等においては、変速機をローギヤに入れた状態でクラッチを切って発進の準備を行うという状況が有り得る。このような場合にエンジンの空ふかしを行いエンジン回転数を高めると、所定のエンジン回転数でカムが中高速側に切り替わって従来と同様の課題が生じるため、このような場合にも上記従来技術と同様の制御を行う必要がある。
しかし、車両がレース等で用いられる場合であって、エンジンが中高回転域にある状態からクラッチを接続して発進するいわゆるレーシングスタートを行う状況下においては、そのような使用状況下も然ることながら、回転中のエンジンの吸排気系から発生する音が大きいため、カムの切り替え音は気にならず、むしろ中高速カムに切り替えることにより、レーシングスタートに応じた高出力を得たいという要望がある。
そこでこの発明は、車両の状態に応じて低速側カムと高速側カムとを切り替える可変動弁装置において、エンジンの低回転領域では高速側カムへの切り替えを禁止する一方、エンジンの高回転領域でレーシングスタート時には高速側カムへの切り替えを可能とすることを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、車両の状態に応じて可変動弁機構(例えば実施例の動弁機構5)の低速側カムと高速側カムとを切り替える可変動弁装置において、エンジン(例えば実施例のエンジン1)が無負荷状態であると判断し、かつ車速検出手段(例えば実施例の車速センサ91)により車両が停車状態であると判断した場合に、スロットル開度が所定値より小さいときには高速側カムへの切り替えを禁止し、スロットル開度が所定値以上のときには、エンジン無負荷状態における同一スロットル開度でのエンジン回転数に比して、実際のエンジン回転数が低いと判断した場合には、クラッチが接続されようとしていると判断し、所定のエンジン回転数において高速側カムへの切り替えを許可する一方、クラッチが接続されようとしていないと判断した場合には、高速側カムへの切り替えを禁止することを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記実際のエンジン回転数は所定のタイミングで検知され、今回検知したエンジン回転数と前回検知したエンジン回転数との差をもって、前記エンジン回転数の低下量を求め、該エンジン回転数の低下量が所定値以上となった場合には、クラッチが接続されようとしていると判断し、所定値よりも小さい場合には、クラッチが接続されようとしていないと判断することを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記スロットル開度の大小を判断する所定値と、エンジン回転数の低下量を判断する所定値とを、相互に関連付けられた組み合わせの値としたことを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記車速検出手段がフェールしたと判断された場合には、スロットル開度の大きさに関わらず、所定のエンジン回転数における高速側カムへの切り替えを禁止することを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、前記エンジンが無負荷状態であるか否かは、ニュートラルセンサ(例えば実施例のニュートラルセンサ94)又はギヤポジションセンサ、あるいはクラッチセンサ(例えば実施例のクラッチセンサ95)によるニュートラル判定により判断されることを特徴とする。
請求項1に記載した発明によれば、スロットル開度が小さい低回転領域の場合には、高速側カムへの切り替えを禁止することで、カム切り替え音の発生を防止する一方、スロットル開度が大きい高回転領域の場合には、さらにエンジン回転数の低下量によりクラッチが接続直前であるか否かを判断し、クラッチが接続直前であると判断した場合には、所定のエンジン回転数において高速側カムへの切り替えを許可することで、いわゆるレーシングスタート時における高速側カムへの切り替えを可能とし、レーシングスタートに応じた高出力を得ることができると共に、クラッチが接続直前ではないと判断した場合には、高速側カムへの切り替えを禁止してカム切り替え音の発生を防止することができる。
請求項2に記載した発明によれば、所定のタイミングにおけるエンジン回転数の差からその低下量を求めることにより、特別なセンサを用いることなく従来ある回転数検知手段を利用して前記低下量を算出でき、当該可変動弁装置の構成及び制御を簡素化できる。また、エンジン回転数の低下量が所定値以上か否かにより、クラッチが接続されようとしているか否かを判断することで、車両やクラッチの特性に応じて前記所定値を変更することで対応でき、多機種への適用が可能となる。
請求項3に記載した発明によれば、車両やクラッチの特性に応じてエンジン回転数の低下量判断の所定値を変更する場合に、併せてスロットル開度の大小判断の所定値を変更するようにすることで、より前記特性に適した制御を行うことができる。
請求項4に記載した発明によれば、車速が検出できない状態においては通常の制御であるカムの切り替えを禁止するようにしたため、車両走行状態が判断できない場合にはニュートラル状態が含まれている可能性があることから、このような場合には無条件にカム切り替えを禁止することで、カム切り替え音の発生を確実に抑制することができる。
請求項5に記載した発明によれば、ニュートラルセンサ又はギヤポジションセンサ、あるいはクラッチセンサによるニュートラル判定により、エンジンが無負荷状態であるか否かを確実に判断できる。
この発明の実施例におけるエンジンの左側面図である。 上記エンジンの動弁機構の要部の平面図であり、(a)は低速側カムでの作動位置にある状態を、(b)は高速側カムでの作動位置にある状態をそれぞれ示す。 上記動弁機構を含む可変動弁装置の構成図である。 上記可変動弁装置のECUでの処理の要部を示すフローチャートである。 上記ECUが所定時間毎のエンジン回転数の変化量を求める際の処理説明用のグラフである。 上記ECUが有するエンジン無負荷時におけるスロットル開度に対するエンジン回転数を示すマップである。 上記ECUが有するエンジン回転数の低下量の所定値とスロットル開度の所定値との組み合わせを示す表である。 上記ECUでの処理の変形例を示すフローチャートである。 この発明の実施例における自動二輪車の左側面図である。
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、説明都合上、図中矢印FRは前方を、矢印LHは左方を、矢印UPは上方をそれぞれ示すものとする。
図9は、本実施例の可変動弁装置を備えた自動二輪車(鞍乗り型車両)101の右側面図である。自動二輪車101の前輪102は左右フロントフォーク103の下端部に軸支され、該左右フロントフォーク103を主とする前輪懸架系104が車体フレーム105のヘッドパイプ106に操向可能に枢支される。一方、自動二輪車101の後輪107はリヤスイングアーム108の後端部に軸支され、該スイングアーム108の前端部が車体前後中間部で車体フレーム105の左右ピボットプレート109に上下揺動可能に枢支される。
ヘッドパイプ106からは左右メインチューブ111が後下がりに後方へ延び、該左右メインチューブ111の後端部が車体前後中間部において左右ピボットプレート109の上端部に連なる。左右メインチューブ111の下方には当該エンジン1が搭載される。左右メインチューブ111の前部下側からは左右エンジンハンガー112が下方に向けて延び、該左右エンジンハンガー112の下端部にエンジン1の前端部が支持される。なお、エンジン1の後端部は、左右ピボットプレート109の上下に適宜支持される。
図1は、上記自動二輪車の原動機であるエンジン(内燃機関)1の左側面図である。エンジン1は、クランクシャフト10の回転中心軸線(クランク軸線)を車幅方向(左右方向)に沿わせた並列四気筒エンジンであり、そのクランクケース20の前部上側には、シリンダ30が前傾姿勢(上部が前側に位置するように傾斜した姿勢)で立設される。
シリンダ30内には前記クランク軸線に沿って並んだ各気筒に対応するピストン40が往復動可能に嵌装され、該各ピストン40の往復動がコンロッド40aを介してクランクシャフト10の回転動に変換される。シリンダ30の後部にはスロットルボディ48が接続され、シリンダ30の前部には排気管49が接続される。
クランクケース20後方にはミッションケース20aが一体に連なり、該ミッションケース20a内にはトランスミッション(変速機)29が収容されると共に、ミッションケース20aの右側部内にはクラッチ28が収容され、これらクラッチ28及びトランスミッション29を介して、クランクシャフト10の回転動力がエンジン外部に出力される。
なお、図中符号は30a,2,3はそれぞれシリンダ30におけるシリンダ本体、シリンダヘッド、及びヘッドカバーを、符号4はシリンダヘッド2及びヘッドカバー3が形成する動弁室を、符号5は動弁室4内に収容されて吸排気バルブ6,7を駆動する動弁機構を、符号8,9はシリンダヘッド2の前後に形成される吸排気ポートを、符号11,12は吸気側及び排気側カムシャフトをそれぞれ示す。
吸排気ポート8,9は、それぞれ一気筒毎に一対の燃焼室側開口を形成し、該各燃料室側開口がそれぞれ一対の吸排気バルブ6,7により開閉される。すなわち、エンジン1は四バルブ式であり、気筒毎にそれぞれ左右一対の吸排気バルブ6,7を有する。
一気筒分の左右一対の吸気バルブ6は、気筒毎に設けられた吸気側ロッカーアーム13を介して吸気側カムシャフト11のカム11Aに押圧されて開閉作動する。同様に、一気筒分の左右一対の排気バルブ7は、気筒毎に設けられた排気側ロッカーアーム17を介して排気側カムシャフト12のカム12Aに押圧されて開閉作動する。
吸気側ロッカーアーム13は、吸気バルブ6のステム先端部の後方に配置された吸気側ロッカーアームシャフト14に、その軸回りに揺動可能かつ軸方向にスライド移動可能に支持される。また、排気側ロッカーアーム17は、排気バルブ7のステム先端部の前方に配置された排気側ロッカーアームシャフト18に、その軸回りに揺動可能かつ軸方向にスライド移動可能に支持される。
そして、エンジン1の運転時には、各カムシャフト11,12がクランクシャフト10と連係して回転駆動し、各カム11A,12Aの外周パターンに応じて各ロッカーアーム13,17を適宜揺動させることで、該各ロッカーアーム13,17が吸排気バルブ6,7をそれぞれ押圧し、該吸排気バルブ6,7を適宜往復動させて吸排気ポート8,9の燃料室側開口を開閉させる。
ここで、前記動弁装置5は、各バルブ6,7のバルブ開閉タイミングやリフト量を変化可能な可変動弁装置として構成される。動弁装置5は、例えばエンジン回転数が9000rpm(Revolutions Per Minute)未満の低速回転域では各カムシャフト11,12における低速回転用のカムを用いて各バルブ6,7を開閉作動させると共に、エンジン回転数が9000rpm以上の高速回転域では各カムシャフト11,12における高速回転用のカムを用いて各バルブ6,7を開閉作動させる。
以下、図2を参照し、動弁機構5における一気筒分の吸気側を例に説明するが、他の気筒の吸気側及び各気筒の排気側も同様の構成を有するものとする。
前記カムシャフト11のカム11Aは、前記低速回転域用の左右第一カム15a,16a、及び高速回転域用の左右第二カム15b,16bからなる。すなわち、カムシャフト11は、一気筒当たりに左右第一カム15a,16a及び左右第二カム15b,16bの計四つのカムを有する。
ロッカーアーム13は、エンジン1の運転停止時及び低速回転域での運転時にはロッカーアームシャフト14の軸線C5に沿う方向(軸C5方向)で左方への移動限界位置にあり(図2(a)参照)、この状態において、ロッカーアーム13の左右カム摺接部13cは、それぞれ左右第一カム15a,16aの下方においてその外周面(カム面)に摺接可能な位置に配置され、左右バルブ押圧部13dは、その右側部で左右吸気バルブ6のステム先端部を押圧可能な位置に配置される。このとき、ロッカーアーム13が左右第一カム15a,16aにより揺動して吸気バルブ6を開閉作動させる。
一方、ロッカーアーム13は、エンジン1の高速回転域での運転時には前記軸C5方向で右方への移動限界位置にあり(図2(b)参照)、この状態において、ロッカーアーム13の左右カム摺接部13cは、それぞれ左右第二カム15b,16bの下方においてその外周面(カム面)に摺接可能な位置に配置され、左右バルブ押圧部13dは、その左側部で左右吸気バルブ6のステム先端部を押圧可能な位置に配置される。このとき、ロッカーアーム13が左右第二カム15b,16bにより揺動して吸気バルブ6を開閉作動させる。
図3を併せて参照し、ロッカーアーム13の軸方向移動(カムの切り替え)は、不図示のロッカーアーム移動機構及びロッカーアーム移動規制機構、並びにシリンダヘッド2の右側部に配置された例えば油圧式のアクチュエータ85の協働により行われる。すなわち、前記移動規制機構によりロッカーアーム13の前記軸C5方向での移動を規制した状態で、ロッカーアームシャフト14を軸C5方向で移動させ、前記移動機構にロッカーアーム13の移動に必要な力を蓄えた後、ロッカーアーム13の移動規制を解除し、該ロッカーアーム13を軸C5方向で移動させることで、その作動に用いるカムを切り替える。
なお、図中符号72〜77はそれぞれオイルポンプ、リリーフバルブ、オイルフィルタ、メインオイルギャラリー、油圧センサ、及び油温センサを、符号79はメインオイルギャラリー75からアクチュエータ85手前のスプールバルブ81に向けて延びるオイル通路を、符号82はスプールバルブ81からアクチュエータ85の油圧シリンダ86両側の各油室に向けて延びる一対の連結油路を、符号84はスプールバルブ81からオイルパン71への戻り油路をそれぞれ示す。
スプールバルブ81は、エンジン1全体の運転を制御するECU78により作動制御され、車両の状態(車速、エンジン回転数(Ne)、ギヤポジション等)に応じて各バルブ6,7の開閉作動に用いるカムを切り替えるべく油圧経路を切り替える。
図3に示すように、ECU78には、車速センサ91からの車速情報、スロットルセンサ92からのスロットル開度情報、クランクセンサ93からのクランク回転数(エンジン回転数)情報、及びニュートラルセンサ94又はクラッチセンサ95からのニュートラル情報が入力される。
ここで、図9を併せて参照し、車速センサ91は例えば前輪102に設けられてその回転速度を検出するもので、スロットルセンサ92は例えばスロットルボディ48に設けられてスロットルバルブの回転角度を検出するもので、クランクセンサ93は例えばクランクケース20に設けられてクランクシャフト10の回転速度を検出するもので、ニュートラルセンサ94は例えばミッションケース20aに設けられてシフトドラム等の回転位置を検出するもので、クラッチセンサ95は例えば前輪懸架系104のハンドル104a左側のクラッチレバー114のホルダ等に設けられてクラッチレバー114の作動角度を検出するものである。これら各センサ91〜95は、例えばヘッドパイプ106の後方において車体フレーム105上に搭載されたECU78に電気的に接続される。
ニュートラルセンサ94は、エンジン1の変速機がニュートラル状態であるか否かを検出する。なお、ニュートラルセンサ94に代えて不図示のギヤポジションセンサによりニュートラル状態か否かを検出してもよい。また、クラッチセンサ95は、クラッチレバー114が操作されてクラッチ28が切断されているか否かを検出する。
ECU78では、図4に示す如くエンジン負荷、車速、スロットル開度、及びエンジン回転数に基づき、動弁機構5のカム切り替えの許可又は禁止を判断(判定)する制御が行われる。
すなわち、まずステップS1において、エンジン1が無負荷か否かを判定する。これは、ニュートラルセンサ94がON、又はクラッチセンサ95がOFFの場合には、それぞれエンジン1がニュートラル状態であると判断し、もってエンジン1が無負荷状態であると判定する。
次に、ステップS2において、車速センサ91がフェールしていないか否かを判定する。この判定結果がNOの場合(車速センサ91が正常である場合)には、ステップS3に進み、車速が予め設定した所定値以下か否かを判定する。この判定結果がYESの場合(車速が所定値以下である場合)には、車両が停車中あるいは低速で走行中であると判断し、ステップS4以降でレーシングスタートが行われるか否かの判定を行う。このステップS3の所定値を0とすれば、車両が停車中であるか否かを判定可能である。
なお、ステップS3の判定結果がNOの場合(車速が所定値を超える場合)には、ステップS6に進んで通常のカム切り替えルーチンに移行する。すなわち、例えば車両が中・高速で走行中であると判断してエンジン回転数に応じた通常のカム切り替え制御を行う。
また、ステップS2の判定結果がYESの場合(車速センサ91がフェールしている場合)には、ステップS7に進んでカム切り替え出力をOFFにする。この場合においては、車両走行状態が判断できない状況下であるため、前記ニュートラル状態が含まれている可能性があることから、無条件にカム切り替えを抑制して、カム切り替え音の発生を確実に抑えるようにしている。
ステップS3の判定結果がYESの場合において、ステップS4の判定結果がYESの場合(スロットル開度が所定値以上である場合)には、ステップS5に進み、エンジン回転数が予め設定した所定値以下か否かを判定する。この判定結果がYESの場合(エンジン回転数が所定値以下の場合)には、スロットル開度を所定値以上としエンジン回転数を高めた状態でクラッチミートを行ういわゆるレーシングスタート時であると判断して、ステップS6に進み、通常のカム切り替えルーチンを維持する。すなわち、いわゆるレーシングスタート時での高速側カムへの切り替えを可能とし、該レーシングスタートに応じた高出力を得ることを可能とする。
一方、ステップS5の判定結果がNOの場合(エンジン回転数が所定値を超える場合)には、レーシングスタートではない通常の発進時であると判断して、ステップS7に進み、カム切り替え出力をOFFにしてカム切り替え音の発生を防止する。
なお、ステップS4の判定結果がNOの場合(スロットル開度が所定値未満の場合)にも、ステップS7に進み、前記通常の発進時であると判断してカム切り替え出力をOFFにする。
図5を参照し、ECU78は、クランクセンサ93の検出信号からエンジン回転数を所定時間t毎に検知し、最新のエンジン回転数Neからその前のエンジン回転数Nen−1を差し引いたときの差ΔNeをもって、所定時間毎のエンジン回転数の変化量を求める。ΔNeは、正の値であればエンジン回転数が時間経過と共に増加する際の増加量を示し、負の値であればエンジン回転数が時間経過と共に減少する際の低下量を示す。
また、図6を参照し、ECU78は、エンジン1の無負荷時(例えばニュートラル状態にあるとき)におけるスロットル開度に対するエンジン回転数(以下、標準回転数という)をマップとして有する。
ECU78は、前記ステップS4において、スロットル開度が予め設定した所定値Th以上か否かを判定する。そして、スロットル開度が前記所定値Thよりも大きい値Thである場合には、そのときの実際のエンジン回転数Ne’が同一スロットル開度Thに対応する標準回転数Neと比較して低いか否かを判定する。このとき、後述する変形例のように、実際のエンジン回転数Ne’を同一スロットル開度Thに対応する標準回転数Neから差し引いた差ΔNeが、予め設定した所定値ΔNe以上小さいか否か(所定値ΔNe以上大きく低下しているか否か、標準回転数Neよりも所定値ΔNeだけ小さいNe’以下であるか否か)を判定してもよい。この判定は、前記ΔNeが所定値ΔNe以上小さいか否かの判定に相当する。
この判定結果がYESの場合には、スロットルを大きく開けて通常発進時よりも短時間で前記クラッチ28を繋ぐいわゆるレーシングスタート時であると判断される。
クラッチミート時のエンジン回転数の低下量は、車種、エンジンの排気量、クラッチの特性等に応じて異なるが、これらに対応するべくエンジン回転数の低下量の前記所定値を示す複数の値ΔNe0a,b,c・・・とスロットル開度の前記所定値を示す複数の値Th0a,b,c・・・とを関連付けて組み合わせておき(図7参照)、機種に応じてエンジン回転数の低下量の所定値とスロットル開度の所定値とを併せて変更することで、複数種の車両やエンジンの間でその特性に適した制御を容易に設定することができる。
なお、図8は、ECU78が行うカム切り替え制御の処理の変形例を示す。この変形例では、図4に示す処理のステップS5に代わりステップS5’を有する点でのみ異なる。
すなわち、ステップS5’では、前記エンジン回転数の低下量ΔNeが予め設定した所定値以下か否か(マイナス側に大きいか否か)を判定する。この判定結果がYESの場合(低下量ΔNeが所定値以下の場合)には、前記レーシングスタート時であると判断してステップS6に進み、通常のカム切り替えルーチンを維持する。
一方、ステップS5’の判定結果がNOの場合(低下量ΔNeが所定値を超える場合)には、レーシングスタートではない通常の発進時であると判断して、ステップS7に進み、カム切り替え出力をOFFにしてカム切り替え音の発生を防止する。
以上説明したように、上記実施例における可変動弁装置は、車両の状態に応じて可変動弁機構5の低速側カムと高速側カムとを切り替えるものにおいて、エンジン1が無負荷状態であると判断し、かつ車速センサ91により車両が停車状態であると判断した場合に、スロットル開度が所定値より小さいときには高速側カムへの切り替えを禁止し、スロットル開度が所定値以上のときには、エンジン無負荷状態における同一スロットル開度でのエンジン回転数に比して、実際のエンジン回転数が低いと判断した場合には、クラッチが接続されようとしていると判断し、所定のエンジン回転数において高速側カムへの切り替えを許可する一方、クラッチが接続されようとしていないと判断した場合には、高速側カムへの切り替えを禁止するものである。
この構成によれば、スロットル開度が小さい低回転領域の場合には、高速側カムへの切り替えを禁止することで、カム切り替え音の発生を防止する一方、スロットル開度が大きい高回転領域の場合には、さらにエンジン回転数の低下量によりクラッチが接続直前であるか否かを判断し、クラッチが接続直前であると判断した場合には、所定のエンジン回転数において高速側カムへの切り替えを許可することで、いわゆるレーシングスタート時における高速側カムへの切り替えを可能とし、レーシングスタートに応じた高出力を得ることができると共に、クラッチが接続直前ではないと判断した場合には、高速側カムへの切り替えを禁止してカム切り替え音の発生を防止することができる。この効果は、エンジンが車両外部に露出しかつスポーツ走行に供されることの多い自動二輪車等の鞍乗り型車両には特に好適である。
また、上記可変動弁装置は、前記実際のエンジン回転数は所定のタイミングで検知され、今回検知したエンジン回転数と前回検知したエンジン回転数との差をもって、前記エンジン回転数の低下量を求め、該エンジン回転数の低下量が所定値以上となった場合には、クラッチが接続されようとしていると判断し、所定値よりも小さい場合には、クラッチが接続されようとしていないと判断するものである。
この構成によれば、所定のタイミングにおけるエンジン回転数の差からその低下量を求めることにより、特別なセンサを用いることなく従来ある回転数検知手段を利用して前記低下量を算出でき、当該可変動弁装置の構成及び制御を簡素化できる。また、エンジン回転数の低下量が所定値以上か否かにより、クラッチが接続されようとしているか否かを判断することで、車両やクラッチの特性に応じて前記所定値を変更することで対応でき、多機種への適用が可能となる。
また、上記可変動弁装置は、前記スロットル開度の大小を判断する所定値と、エンジン回転数の低下量を判断する所定値とを、相互に関連付けられた組み合わせの値としたものである。
この構成によれば、車両やクラッチの特性に応じてエンジン回転数の低下量判断の所定値を変更する場合に、併せてスロットル開度の大小判断の所定値を変更するようにすることで、より前記特性に適した制御を行うことができる。
また、上記可変動弁装置は、車速センサ91がフェールしたと判断された場合には、スロットル開度の大きさに関わらず、所定のエンジン回転数における高速側カムへの切り替えを禁止するものである。
この構成によれば、車速が検出できない状態においては通常の制御であるカムの切り替えを禁止するようにしたため、車両走行状態が判断できない場合にはニュートラル状態が含まれている可能性があることから、このような場合には無条件にカム切り替えを禁止することで、カム切り替え音の発生を確実に抑制することができる。
また、上記可変動弁装置は、前記エンジン1が無負荷状態であるか否かは、ニュートラルセンサ94又はギヤポジションセンサ、あるいはクラッチセンサ95によるニュートラル判定により判断されるものである。
この構成によれば、ニュートラルセンサ94又はギヤポジションセンサ、あるいはクラッチセンサ95によるニュートラル判定により、エンジンが無負荷状態であるか否かを確実に判断できる。
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、四気筒以外の並列複数気筒エンジン、V型又は水平対向等の複数気筒エンジン、単気筒エンジン、クランク軸を車両前後方向に沿わせた縦置きエンジン等、各種形式のレシプロエンジンに適用してもよい。また、上記構成の可変動弁機構5に限らず様々な可変動弁機構を有する可変動弁装置にも適用可能である。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、自動二輪車に限らず三輪、四輪の鞍乗り型車両にも適用できることはもちろん、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
1 エンジン
5 動弁機構(可変動弁装置)
91 車速センサ(車速検出手段)
92 スロットルセンサ
93 クランクセンサ
94 ニュートラルセンサ
95 クラッチセンサ

Claims (5)

  1. 車両の状態に応じて可変動弁機構の低速側カムと高速側カムとを切り替える可変動弁装置において、
    エンジンが無負荷状態であると判断し、かつ車速検出手段により車両が停車状態であると判断した場合に、
    スロットル開度が所定値より小さいときには高速側カムへの切り替えを禁止し、
    スロットル開度が所定値以上のときには、エンジン無負荷状態における同一スロットル開度でのエンジン回転数に比して、実際のエンジン回転数が低いと判断した場合には、クラッチが接続されようとしていると判断し、所定のエンジン回転数において高速側カムへの切り替えを許可する一方、クラッチが接続されようとしていないと判断した場合には、高速側カムへの切り替えを禁止することを特徴とする可変動弁装置。
  2. 前記実際のエンジン回転数は所定のタイミングで検知され、今回検知したエンジン回転数と前回検知したエンジン回転数との差をもって、前記エンジン回転数の低下量を求め、該エンジン回転数の低下量が所定値以上となった場合には、クラッチが接続されようとしていると判断し、所定値よりも小さい場合には、クラッチが接続されようとしていないと判断することを特徴とする請求項1に記載の可変動弁装置。
  3. 前記スロットル開度の大小を判断する所定値と、エンジン回転数の低下量を判断する所定値とを、相互に関連付けられた組み合わせの値としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の可変動弁装置。
  4. 前記車速検出手段がフェールしたと判断された場合には、スロットル開度の大きさに関わらず、所定のエンジン回転数における高速側カムへの切り替えを禁止することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の可変動弁装置。
  5. 前記エンジンが無負荷状態であるか否かは、ニュートラルセンサ又はギヤポジションセンサ、あるいはクラッチセンサによるニュートラル判定により判断されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の可変動弁装置。
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