JP2010228968A - ほうろう用フリット - Google Patents

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Abstract

【課題】高温での熱分解や高濃度の洗剤などを用いることなく容易に焦げ付き汚れや油汚れなどを除去でき、なおかつ十分な耐磨耗性、耐熱性、耐熱水性、耐酸性、耐アルカリ性を有し、長期間その性能を維持することができるほうろう用フリットを提供する。
【解決手段】本発明のほうろう用フリットは、全体重量に対して15〜52重量%のP、13〜42重量%のAl、3〜22重量%のBおよび13.5〜23.5重量%のアルカリ金属酸化物を含み、さらに、TiOおよび/またはZrOを含み、TiOの含有量が0〜15重量%であり、ZrOの含有量が1〜17重量%であるが、(TiO+ZrO)の含有量が13〜23重量%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性、耐摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性等が要求されるキッチンまわり、特に加熱調理器具周辺等に使用されるほうろう用フリットに関する。
キッチンまわり、特に加熱調理器具周辺においては耐熱性、耐摩耗性、食品や洗剤由来の耐酸性、耐アルカリ性などが要求されることからガラス部材、ほうろう部材、ステンレス部材が用いられることが多い。しかし、これらの部材には、焦げ付きなどの汚れが固着し、容易に除去しにくいという欠点がある。
焦げ付き汚れや油汚れの除去には、研磨剤やスクレーパーなどによる物理的な除去、高濃度の酸やアルカリを含む洗剤の使用、セルフクリーニングと呼ばれる酸化触媒を添加したほうろう部材においての高温での熱分解、といった種々の手法が用いられているが、いずれも洗浄にかかる手間やコスト面で課題が生じている。
また、ガラス部材やステンレス部材の表面にシリコン樹脂やフッ素樹脂を塗布したものが実用化されており、これらは、汚れの付きにくさ、洗浄性といった面では申し分ない性能を持つが、300℃以上の使用環境では耐熱性が十分でなく、また耐磨耗性が低く、タワシや研磨剤などでこすった場合、剥離してしまうといった事例がよく知られている。このためシリコン樹脂やフッ素樹脂を塗布した部材では、長期間実用に耐える性能を維持する事は困難である。
また、特許文献1に挙げられるようなほうろう用Pガラスフリットは、汚れ落ち特性に優れることが報告されている一方で、耐熱水性が低い事などが従来から指摘されている。特許文献1には耐熱水性に関する記述がないため、本発明者が特許文献1に挙げられているフリットを実際に耐熱水性について試験したところ、実用上十分な性能を得ることはできなかった。また、熱膨張係数についても約400×10−7と大きく、通常の鋼板ほうろう用途としては適さない。さらに、硼珪酸ガラスフリットが混合されているため、焼成中にPガラス成分と硼珪酸ガラス成分が完全に混ざりあわずに分相し、ガラスの安定性を損なうといった課題もある。特に、酸性の熱水環境において釉面に顕著なクラックおよび剥離が発生しやすい欠点があることが分かった。
米国特許第7005396号明細書
本発明は上記の点に鑑み、高温での熱分解や高濃度の洗剤などを用いることなく容易に焦げ付き汚れや油汚れなどを除去でき、なおかつ十分な耐磨耗性、耐熱性、耐熱水性、耐酸性、耐アルカリ性を有し、長期間その性能を維持することができるほうろう用フリットを提供する事を目的とする。
従来、ほうろう用のフリットは20〜60%程度のSiOを含有するが、主たる網目形成酸化物がSiOであるSiOベースのガラスでは、その表面エネルギーが高いために、焦げ付き汚れや油汚れがガラス表面に吸着し易くなっており、汚れの除去が困難となっていた。
一方、主たる網目形成酸化物がPであるPベースのガラスでは、その表面エネルギーが上記のSiOベースのガラスの場合よりも低いため、汚れが吸着しにくく、また汚れが吸着しても容易にそれを除去できる状態となる。
しかし、Pベースのガラスの網目形成酸化物であるPにおいて、その中心原子であるPが結合する4つの酸素のうち、3つは架橋酸素であり、残りの1つは非架橋酸素である。したがって、Pは、結合力の弱い非架橋酸素を有しているために、ガラス自体の安定性は、SiOベースのガラスと比較して低く、脆弱なものとなる。このため、Pベースのガラスは、それ単独ではほうろう用途としては適さないとされてきた。
また、SiOの特性を取り入れるためにPとSiOとを混在させた混合型のガラスを作製しようとしても、それぞれのガラス成分が分相してしまい、溶融性が低くなったり、安定性が著しく低くなったりするなどの問題があった。
そこで、本発明者が種々検討した結果、Pベースのガラスの安定化のためには、AlやBなどの3価の中間酸化物を適量添加する事が有効であることを見出した。このようなAlやB等の3価の中間酸化物の添加により、Pベースのガラスにおいて上記のように3つの架橋酸素と1つの非架橋酸素とを有する構造から、非架橋酸素が存在しないSiO型の構造になるため、ガラスを安定化することができる。
さらに、TiO、ZrOを添加することにより、ガラスの網目構造が強化され、耐熱水性、耐酸性の向上などの更なる化学的安定性が向上し、また、ほうろう用途に適するように熱膨張性を調整することができる。
以上の検討および知見に基づき、本発明者は本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、全体重量に対して15〜52重量%のP、13〜42重量%のAl、3〜22重量%のBおよび13.5〜23.5重量%のアルカリ金属酸化物を含み、さらに、TiOおよび/またはZrOを含み、TiOの含有量が0〜15重量%であり、ZrOの含有量が1〜17重量%であるが、(TiO+ZrO)の含有量が13〜23重量%である、ほうろう用フリットを提供する。
ガラスの主たる網目形成酸化物となるPの組成量は15〜52重量%、より好ましくは22〜37.5重量%である。この範囲よりPが少ないと、ガラスの網目のネットワークが十分形成されないためガラスが脆弱となり、もしくは表面エネルギーの低いPを十分確保できないため十分な焦げ付き汚れの除去性能を確保することができない。他方、上記範囲を超えてPを添加した場合は、PがSiO型の構造を維持できず非架橋酸素を多く含む構造となるため、ガラスの安定性が損なわれてしまう。
ガラスの安定化のために添加するAlの範囲は13〜42重量%、より好ましくは15.5〜25.5重量%である。この範囲よりAlが少ないとPがSiO型の構造とならないため、十分な安定性を確保することができない。他方、この範囲を超えてAlを添加した場合は、ガラスが熔融しにくくなり実用上十分な融体の流動性を確保することができない。
ガラスの安定化のために添加するBの範囲は3〜22重量%、より好ましくは7〜14重量%である。この範囲よりBが少ないと、PがSiO型の構造とならないため、十分な安定性を確保することができない。また、この範囲を超えてBを添加した場合は、ガラスが分相してしまうため十分な安定性を確保することができない。
ガラスの安定化および熱膨張の調整のために添加されるTiOの組成量は0〜15重量%である。TiOが15重量%の量を超えて添加された場合には、ガラスが熔融しにくくなり実用上十分な融体の流動性を確保することができず、また、ほうろうとして施釉した場合には、釉薬が一部溶融しないため十分な化学的安定性を得ることができない。
TiOと同目的で添加されるZrOの組成量は1〜17重量%である。ZrO量が1重量%より少ないとガラスの安定性に寄与するためには不十分であり、ガラスの安定性を十分に確保することができない。ZrOが17重量%を超えた量で添加された場合には、ガラスが熔融しにくくなり実用上十分な融体の流動性を確保することができず、またほうろうとして施釉した場合に、釉薬が一部溶融しないため十分な化学的安定性を得ることができない。
上記のように、TiOの組成量は0〜15重量%、ZrOの組成量は1〜17重量%であるが、これと同時にTiOおよびZrOの組成量の和は13〜23重量%であることを満たさねばならない。TiOおよびZrOの組成量の和が13重量%より少ない場合には、ガラスの安定性に寄与するTiOおよびZrOの量が十分でないためガラスの安定性を十分に確保することができない。また、TiOおよびZrOの組成量の和が23重量%より多い場合には、ガラスが熔融しにくくなり実用上十分な融体の流動性を確保することができず、また、ほうろうとして施釉した場合に、釉薬が一部溶融しないため十分な化学的安定性を得ることができない。
アルカリ金属酸化物の添加量は13.5〜23.5重量%である。アルカリ金属酸化物の添加量がこの範囲より少ないとガラスの流動性および溶融性を十分に確保することができない。また、この範囲を超えてアルカリ金属酸化物を添加した場合にはガラスの安定性を十分に確保することができない。
また、本発明のほうろう用フリットは、SiOをさらに含んでもよいが、SiOの添加量が6重量%超である場合には、ガラスの分相につながり、安定性が損なわれ、かつガラスが熔融しにくくなるため、SiOの添加量は6重量%超であってはならない。
さらに、本発明のほうろう用フリットは、アルカリ土類金属酸化物および/またはZnOを含んでもよいが、これらの合計含有量は多くとも17重量%である。アルカリ土類金属および/またはZnOの合計添加量が17重量%超であると、ガラスの安定性を十分に確保することができない。
また、ガラスフリットの着色、鋼板素地との密着、熔融性の調整の目的でV、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびSnからなる群から選択される1種の元素の酸化物または該群から選択される2種以上の元素の酸化物の混合物をさらに含んでもよいが、これらの合計含有量は多くとも13重量%である。これらの酸化物の合計含有量が13重量%超であると、ガラスの安定性が損なわれる、またはガラスが熔融しにくくなるため実用上十分な融体の流動性を確保することができない。
本発明のほうろう用フリットによれば、焦げ付き汚れに対し、研磨剤などの物理的除去や、高温での熱分解を行ったり、または高濃度の洗剤などを用いたりすることなく、水や湯に浸漬するだけで、容易に汚れを除去することができ、磨耗や熱に強く、長時間に渡り効果を持続することができる。
横軸をTiO含有量、縦軸をZrO含有量としたときの煮沸クエン酸によるほうろう釉面の侵食減量値を示すグラフである。
以下、本発明に係る実施例の試験サンプルおよびこれとの比較を示すためのいくつかの比較例の試験サンプルとして各種試験を行うことにより、本発明を具体的に説明する。
(汚れ落ち試験(従来の鋼板ほうろう下ぐすり用フリット))
下記表1に示した組成を有する実施例1のフリットまたは従来の鋼板ほうろう用フリットである比較例1のフリット100重量部に対し珪石5部、釉薬用粘土5部、亜硝酸ソーダ0.2部、水50部を混合・粉砕しスリップ状としたものを釉薬とした。この釉薬を鋼板上に焼成後の膜厚が約100μmとなるように施釉し、次いで830℃で焼成したものを試験サンプルとした。
Figure 2010228968
汚れ落ちの評価をするために、砂糖、醤油、溶き卵を1:1:1の割合で混ぜ合わせたものを上記の実施例1および比較例1の試験サンプルの上に塗布した後、300℃で15分加熱し、完全に焦げ付かせた。なお、この焦げ付かせを行うために使用した材料および加熱条件はガス器具メーカーなどで行われている洗浄試験方法の一つとして周知である。焦げ付かせを行った後、試験サンプルを室温まで自然冷却し、その後60℃の湯に10分間浸漬し、その後試験サンプルを湯から取り出し、汚れ落ちの評価を行った。
その結果、実施例1の試験サンプルでは、浸漬後に焦げ付き汚れが剥がれて浮き上がる、もしくは指で軽く触れるだけで簡単に汚れが除去できたので、実施例1の汚れ落ちの評価は「良」であった。これに対して、比較例1の試験サンプルでは、焦げ付き汚れが固着し除去することが出来なかったので、汚れ落ちの評価は「不良」であった。
さらに実施例1の試験サンプルの焦げ付き汚れの除去性能の持続性を調べるために、上記の焦げ付き除去試験を10回繰り返したが、除去性能および試験後の試験面に変化は見られず、除去性能の持続性が良好であることが確認された。
またここでは焦げ付き汚れの洗浄に60℃の湯を用いたが、実施例1の試験サンプルは室温の水でも浸漬時間を20〜40分程度に延ばすことで、良好な洗浄効果を確認することができた。
(実施例1のフリットと比較例2(フッ素樹脂加工のアルミ製フライパン)との各種試験における評価)
次に実施例1の試験サンプルと市販のフッ素樹脂加工のアルミ製フライパンを比較例2の試験サンプルとして耐磨耗性試験後の汚れ落ち性能を比較した。
まず、実施例1および比較例2の各試験サンプルについてモース硬度を測定した。ここでモース硬度とは、硬さに対する尺度のひとつであり、1〜10の数値に対応した標準物質(1:滑石、2:石膏、3:方解石、4:蛍石、5:燐灰石、6:長石、7:石英、8:トパーズ、9:コランダム、10:ダイヤモンド)と測定する物質とを接触摺動させ、傷がつくかどうかで標準物質に対する硬さの大小を相対的に評価した値である。
その結果、比較例2の試験サンプルでは2.5であるのに対して、実施例1の試験サンプルでは5.5であり、実施例1の試験サンプルは比較例2のものよりも表面硬度において優れていることが分かった。
次に、実施例1および比較例2の各試験サンプルについて、JIS R4301 5.20に準拠した磨耗試験を行った。
その結果、実施例1の試験サンプルでは摩耗傷は見られなかったのに対し、比較例2の試験サンプルでは容易にフッ素樹脂加工層が剥離した。これにより、実施例1の試験サンプルの方が比較例2の試験サンプルよりも耐磨耗性に優れる事が分かった。
次に、磨耗試験前のものと試験後のものについて焦げ付き試験を行った。焦げ付き試験は、砂糖、醤油、溶き卵を1:1:1の割合で混ぜ合わせたものを各試験サンプルの上に塗布し、300℃で15分加熱し、完全に焦げ付かせ、その後に各試験サンプルを室温まで自然冷却し、その後60℃の湯に10分間浸漬し、湯から取り出した後に焦げ付き汚れの除去具合を見ることにより行った。
その結果、比較例2の試験サンプルでは磨耗試験前のものについてのは湯に浸漬した直後に焦げ付き汚れが浮き上がり、汚れ落ち評価は実施例1の試験サンプルよりも良好であったので評価は「優」であった。
しかし比較例2の試験サンプルの摩耗試験後のものは、フッ素樹脂加工層が剥離し、アルミ素地が露出している状態であるため、アルミ素地に焦げ付き汚れが固着し、除去は困難であったため、評価は「不良」であった。
一方、実施例1の試験サンプルでは磨耗試験において表面に磨耗傷などは見られず、摩擦試験前後の洗浄性に変化は見られず摩耗試験前後とも評価は「良」であった。
以上の結果を下記表2に示す。
Figure 2010228968
(実施例1のフリットと比較例3(米国特許第700539号のもの)との各種試験における評価)
米国特許第700539号明細書の実施例に記載される釉薬を比較例3として実施例1と共に下記の各種試験1〜5における評価を行った。
比較例3の釉薬の組成を、実施例1の試験サンプルの組成と共に、下記表3に示す。
試験サンプルは実施例1については、フリット100重量部に対し珪石5部、釉薬用粘土5部、亜硝酸ソーダ0.2部、水50部を混合・粉砕しスリップ状としたものを釉薬とし、鋼板上に焼成後の膜厚が約100μmとなるように施釉し、次いで830℃で焼成したものとした。比較例3は米国特許第700539号明細書に記載される実施例に示される条件で作製したものを試験サンプルとして比較を行った。
Figure 2010228968
1.汚れ落ち試験
これは、砂糖、醤油、溶き卵を1:1:1の割合で混ぜ合わせたものを各試験サンプルの上に塗布した後、300℃で15分加熱し、完全に焦げ付かせ、その後60℃の湯に10分間浸漬し、各試験サンプルを湯から取り出し、焦げ付き汚れの除去具合を見ることにより行った。
その結果、実施例1の試験サンプルと比較例3の試験サンプルの双方において焦げ付き汚れ自体は湯に浸漬するだけで自然に浮き上がり、洗浄性能については同等であったが、比較例3の試験サンプルでは焦げが洗浄された跡にクラックが発生し、焦げ付き汚れ以外にクラックにしみ込んだ汚れが認められ、この汚れは洗浄により除去することが出来なかったので評価は「やや良」とした。これに対して、実施例1の試験サンプルではクラックは発生せず清浄な釉面を保ったままであったので評価は「良」とした。
2.実施例1および比較例3の各サンプルについてガラスの安定性を評価するためにJIS R 4301の室温耐酸性試験(10%クエン酸暴露)を行った。
その結果、実施例1の試験サンプルおよび比較例3の試験サンプルの双方において外観上の変化は見られず、常温での酸には耐久性があることが分かった。
3.実施例1および比較例3の各試験サンプルについてガラスの安定性をさらに評価するためにJIS R 4301に順じた6%煮沸クエン酸の暴露試験を行った。
その結果、比較例3の試験サンプルでは煮沸クエン酸水溶液に接する面の単位面積あたりの侵食減量値は274g/mであったのに対し、実施例1の試験サンプルでは58g/mと比較例3と比較して良好な値を示した。特に、比較例3の試験サンプルでは、6%煮沸クエン酸に対する暴露面の剥がれが顕著だったのに対し、実施例1の試験サンプルでは暴露面にわずかに白化が見られたものの剥がれやクラックの発生は見られず、強固なガラス質の釉面を維持することが分かった。
4.実施例1および比較例3の各サンプルについて熱膨張係数βを測定した。
その結果、熱膨張係数βの実測値は比較例3の試験サンプルでは、420×10−7と鋼板用ほうろう用途としては大きすぎる値であった。これを鋼板に施釉した場合には鋼板との膨張差によりクラックや剥離の可能性が伴う。一方、実施例1の試験サンプルの熱膨張係数は360×10−7であり鋼板ほうろう用途として適切な値であった。
5.実施例1および比較例3の各サンプルについてモース硬度を測定した。
その結果、実施例1の試験サンプルは比較例3の試験サンプルと比較して、表面硬度が高く、耐磨耗性に優れる事が分かった。
以上の試験1〜5の結果を下記表4に示す。
Figure 2010228968
以上のように実施例1の試験サンプルは比較例3の試験サンプル(Pガラスフリット)と比べて、化学的安定性の評価項目でより優れた性質を持つことが分かった。このように同じPベースのガラスでも安定性に大きな差が出た要因としてはTiOとZrOをフリットに添加したことが挙げられる。
そこで、次に、Pガラスフリットへの(TiO+ZrO)の添加によるガラスの安定性への効果を検討したので、以下にその結果について示す。ここで、ガラスの安定性は煮沸クエン酸への暴露試験で評価した。
各組成のフリット100重量部に対し珪石5部、釉薬用粘土5部、亜硝酸ソーダ0.2部、水50部を混合・粉砕しスリップ状としたものを釉薬とした。この釉薬を鋼板上に焼成後の膜厚が約100μmとなるように施釉し、次いで830℃で焼成したものを試験サンプルとした。
図1は、横軸をTiO含有量、縦軸をZrO含有量としたときの煮沸クエン酸によるほうろう釉面の侵食減量値を示すグラフである。
図1における斜線が引かれた領域は、本発明の特許請求の範囲で規定された、TiOの含有量が0〜15重量%、ZrOの含有量が1〜17重量%であり、かつ、TiO+ZrOの合計含有量が13〜23重量%であるという要件を満たす範囲である。
図1を参照すると、斜線で示した領域よりTiOおよびZrOの少ない領域においてはガラスの安定化に寄与するTiOおよびZrOの量が少ないために侵食減量が大きくなっている。
また斜線の領域よりTiOおよびZrOの含有量が多い領域ではTiOおよびZrOが過剰に含まれることでガラスが溶融しにくい状態になり、ほうろう釉薬として施釉、ついで焼成した場合には完全に釉薬が溶けずに光沢および平滑性の低い状態となる。このような釉面は表面積が大きく、未溶融の安定性の低い成分が残っているため侵食減量が大きくなる。
したがって、該当する領域において耐食性が向上していることが明らかである。

Claims (4)

  1. 全体重量に対して15〜52重量%のP、13〜42重量%のAl、3〜22重量%のBおよび13.5〜23.5重量%のアルカリ金属酸化物を含み、さらに、TiOおよび/またはZrOを含み、TiOの含有量が0〜15重量%であり、ZrOの含有量が1〜17重量%であるが、(TiO+ZrO)の含有量が13〜23重量%である、ほうろう用フリット。
  2. 多くとも6重量%のSiOをさらに含む、請求項1に記載のほうろう用フリット。
  3. アルカリ土類金属および/またはZnOをさらに含み、これらの合計含有量は多くとも17重量%である、請求項1または2に記載のほうろう用フリット。
  4. V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびSnからなる群から選択される1種の元素の酸化物または該群から選択される2種以上の元素の酸化物の混合物をさらに含み、これらの合計含有量が多くとも13重量%である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のほうろう用フリット。
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