JP2021011523A - 防汚基板及びそれを備える加熱調理器 - Google Patents

防汚基板及びそれを備える加熱調理器 Download PDF

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JP2021011523A JP2019125409A JP2019125409A JP2021011523A JP 2021011523 A JP2021011523 A JP 2021011523A JP 2019125409 A JP2019125409 A JP 2019125409A JP 2019125409 A JP2019125409 A JP 2019125409A JP 2021011523 A JP2021011523 A JP 2021011523A
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Fumie Horihata
文枝 堀端
佑紀 岩崎
Yuki Iwasaki
佑紀 岩崎
大輝 梅本
Daiki Umemoto
大輝 梅本
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Abstract

【課題】防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有する、防汚基板、及びそれを備える加熱調理器を提供する。【解決手段】防汚性塗膜形成組成物から形成された防汚性塗膜10と、無機基材20とを有する、防汚基板1であって、前記防汚性塗膜形成組成物は、塗膜形成成分として、所定のリン酸エステル化合物及びポリリン酸エステルのうち少なくとも一方と、シルセスキオキサン化合物と、シリコーン化合物(ただし、前記シルセスキオキサン化合物は除く)とを含み、前記無機基材は、金属、ガラス、ホウロウ、陶磁器及び合成セラミックスからなる群から選択される少なくとも1つを含む。【選択図】図1

Description

本開示は、防汚基板及びそれを備える加熱調理器に関する。
IH調理器等の加熱調理器は、被加熱物が配置されるトッププレートを備える。また、電子レンジ、オーブン等の加熱調理器は、被加熱物が収納される加熱庫を備える。これらトッププレート及び加熱庫等に対して、調理中に油が飛散することがあり、更に、調味料及びゆで汁等に由来する汚れが付着することがある。
このため、トッププレート及び加熱庫等には、汚れの付着を防止する防汚性、及び汚れが付着しても容易に洗浄できる洗浄性が必要とされている。
例えば、汚れの付着を防止すること、及び汚れが付着しても容易に洗浄できることを目的とする加熱調理器として、特許文献1に記載の加熱調理器が挙げられる。
特許文献1には、調理室の内壁面又は調理室内の調理器具の表面にアルミナセラミックの微粉体を主成分とする、有機化合物を含まない無機質素材の塗膜を備える加熱調理器が記載されている。
特開2012−26596号公報
しかし、特許文献1に記載の無機質素材の塗膜は、アルミナセラミックの微粉体を主成分とするため、衝撃に弱く、亀裂、剥離が生じやすい。このため、特許文献1の発明においては、防汚性及び洗浄性を十分に発揮できないおそれがある。更に、特許文献1に記載の無機質素材の塗膜は、アルミナセラミックの微粉体を主成分とするため、汚れの離型性が劣るといった問題がある。
また、加熱調理器に備えられ得るトッププレート及び加熱庫等に付着した汚れは、繰返し加熱に付されることがある。その結果、汚れは、焦付き汚れとして、トッププレート及び加熱庫等に固着し得る。このため、加熱調理器には、焦付き汚れを防止又は低減する焦付き防汚性が必要とされている。
本開示は、従来の課題を解決するためになされたものであって、防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有する防汚基板及びそれを備える加熱調理器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本開示の防汚基板は、
防汚性塗膜形成組成物から形成された防汚性塗膜と、
無機基材とを有する、防汚基板であって、
前記防汚性塗膜形成組成物は、塗膜形成成分として、
下記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び下記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方と、
シルセスキオキサン化合物と、
シリコーン化合物(ただし、前記シルセスキオキサン化合物は除く)とを含み、
Figure 2021011523
[式中、R及びRは、相互に独立に炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基、炭素数2以上20以下の分岐アルキル基又は炭素数6以上20以下のアリール基である]、
Figure 2021011523
[式中、Q及びQは、相互に独立に炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基、炭素数2以上20以下の分岐アルキル基又は炭素数6以上20以下のアリール基であり、mは1〜10の整数であり]、
前記無機基材は、金属、ガラス、ホウロウ、陶磁器及び合成セラミックスからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
本開示によれば、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有する防汚基板を提供できる。さらに、本開示に係る防汚基板を備える加熱調理器は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
図1は、一実施形態に係る防汚基板を示す概略断面図である。 図2は、一実施形態に係る防汚基板の別の例を示す概略断面図である。
以下、図面を参照して本開示を詳細に説明する。幾つかの実施形態により、図面を用いて詳しく説明するが、図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観および寸法比などは実物と異なり得る。また、特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材または同じ意味内容を示すものとする。
図1は、本開示の防汚基板1の構造を例示する概略断面図である。防汚基板1は、防汚性塗膜10と、無機基材20とを有する。防汚性塗膜10は、本開示に係る防汚性塗膜形成組成物から形成された塗膜である。
本開示は更に、以下の実施形態を含むことができる。
一実施形態において、防汚基板1は、シリコーン化合物が、直鎖状オルガノポリシロキサン、分枝状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
一実施形態において、防汚基板1は、シリコーン化合物が、ポリアルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン及びポリアルキルフェニルシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。例えば、シリコーン化合物は、ポリジメチルシロキサンを含む。
一実施形態において、防汚基板1は、防汚性塗膜形成組成物が、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方を、合計1.0質量部以上45.0質量部以下で含み、シルセスキオキサン化合物を、1.0質量部以上45.0質量部以下で含む。
ここで、本開示において、防汚性塗膜形成組成物における、塗膜形成成分の固形分100質量部とは、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び構造式(2)を有するポリリン酸エステルの合計量と、シルセスキオキサン化合物の量と、シリコーン化合物との固形分の量が、合計100質量部となることを意味する。
また、本明細書において、特に言及のない限り、塗膜形成成分の固形分100質量部は、このようにして算出できる。
一実施形態において、防汚基板1は、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物における、Rの炭素数とRの炭素数の合計が、2以上20以下である。
一実施形態において、防汚基板1は、構造式(2)を有するポリリン酸エステルにおける、Qの炭素数とQの炭素数の合計が、2以上20以下であり、m=1、2又は3である。
一実施形態において、防汚基板1は、防汚性塗膜10における、常温で測定したオレイン酸の接触角が40°以上である、
一実施形態において、防汚基板1は、防汚性塗膜10における、常温で測定したオレイン酸の接触角が70°以上である。
一実施形態において、防汚基板1は、防汚性塗膜10を、300℃で、50時間加熱した条件で測定した、防汚性塗膜10の水接触角(300℃加熱後)は、100°以上である。
一実施形態において、防汚基板1は、無機基材20が、石英ガラス、高ケイ酸ガラス及びホウ硅酸ガラスからなる群から選択される少なくとも一種の非結晶化ガラス、又は結晶化ガラスを含む。
一実施形態において、防汚基板1は、無機基材20が、ホウ硅酸ガラスを含む。
図2は、本開示の防汚基板1に関する別の実施形態を例示する、概略断面図である。防汚基板1において、無機基材20は、少なくとも防汚性塗膜10側の表面に、SnOを含む基材表面層30を有する。
一実施形態において、防汚基板1は、防汚性塗膜10と、無機基材20との間に、更に中間層を有してよく、更に、前記中間層は、水酸基を含む中間層形成組成物から形成された層である。
一実施形態において、本開示の防汚基板1は、加熱調理器用の防汚基板1である。
別の実施形態において、上記防汚基板1を備える、加熱調理器が提供される。
以下、本開示の防汚基板1について、より詳細に説明する。
[防汚性塗膜]
防汚性塗膜10は、本開示に係る防汚性塗膜形成組成物から形成できる。また、防汚性塗膜10は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。したがって、本開示の防汚基板1は、防汚性塗膜10を最外層に有することができるので、防汚基板1は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
また、一実施形態において、本開示の防汚基板1は、加熱調理器用の防汚基板1である。この実施形態において、加熱調理器のように、種々の汚れが付着し、及び高温に曝され、更に、このような環境が繰り返される防汚基板1は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
本明細書において、防汚性とは、少なくとも常温において、汚れの付着を防止又は抑制可能な性質である。例えば、防汚基板1は、0℃以上250℃程度の幅広い温度に曝されても、汚れの付着を防止又は抑制できる。
また、本開示において、防汚性が優れる場合、防汚性塗膜10は、撥水性及び撥油性をバランスよく備える傾向がある。したがって、本開示に係る防汚性塗膜10は、水系の汚れ及び油系の汚れのいずれに対しても、良好な防汚性を示すことができる。
本開示において、洗浄性とは、付着した汚れを容易に除去できる性質である。例えば、仮に、本開示に係る防汚性塗膜10に汚れが付着しても、防汚性塗膜10は、汚れを拭き取り除去しやすく、容易に汚れを洗浄できる。汚れの除去は、から拭き、水拭き、洗浄剤を用いる洗浄など、いずれであってもよい。
本開示において、防汚性塗膜10の撥水性は、水接触角で評価できる。例えば、常温(23℃)での水接触角は、100°以上である。一実施形態において、水接触角は、100°以上160°以下である。
例えば、ブラスト処理などを経た無機基材20は、表面に凹凸を有することがある。本開示の防汚性塗膜10は、このような表面形状を有する無機基材に積層される場合であっても、上記範囲内で水接触角を示すことができる。したがって、本開示の防汚性塗膜10は、無機基材20の様々な表面形状に適応でき、優れた撥水性を示すことができ、その上、優れた撥水性を示すことができる。加えて、本開示の防汚性塗膜10は、無機基材20の表面形状が有する外観、例えば、無機基材20の表面凹凸により形成される質感などの優れた意匠性を損なうことなく再現できる。
一実施形態において、防汚性塗膜10の常温(23℃)での水接触角は、100°以上130°以下であり、例えば、100°以上127°以下である。一実施形態において、防汚性塗膜10の常温(23℃)での水接触角は、100°超125°以下である。
常温(23℃)での水接触角がこのような範囲内であることにより、防汚性塗膜10は、優れた撥水性を示すことができ、更に防汚基板1は、優れた撥水性を示すことができる。優れた撥水性を示すことで、防汚性塗膜10及び防汚基板1は、水系の汚れに対して、良好に防汚性、洗浄性、後述の焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
なお、本明細書においては、特に言及のない限り、防汚性塗膜10の有する特性が、防汚基板1の特性にも当てはまる。例えば、防汚性塗膜10の有する撥水性、撥油性等の性質を、防汚基板1も備えることができる。
常温での水接触角の測定は、既知の方法により行うことができる。例えば、常温での水接触角の測定は、以下の方法で測定できる。
測定装置:協和界面科学株式会社製、KYOWA Drop Master DM―501SA
水の滴下量:5μL
測定温度:23℃
蒸留水をシリンジに入れ、評価面(防汚性塗膜10の表面)に蒸留水を滴下し、水接触角を測定する。
本開示の防汚性塗膜10は、高温で加熱した後においても、優れた撥水性を有することができる。例えば、防汚性塗膜10を、300℃で、50時間加熱した条件で測定した、防汚性塗膜10の水接触角(300℃加熱後)は、100°以上であり、ある実施形態において、100°以上130°以下であり、別の実施形態において、100°以上120°以下である。
本開示に係る防汚性塗膜10は、23℃で測定した水接触角に対し、300℃で、少なくとも50時間加熱した後における水接触角は、ほぼ同等であるか、±10%の範囲内で変化する。一実施形態において、23℃で測定した水接触角に対し、300℃で、少なくとも50時間加熱した後における水接触角は、ほぼ同等であるか、±8%の範囲内で変化する。例えば、23℃で測定した水接触角に対し、300℃で、少なくとも50時間加熱した後における水接触角は、ほぼ同等であるか、±6%の範囲内で変化する。
このように、防汚性塗膜10は、高温に長期間曝しても、十分な水接触角を保持できるので、長期に亘り、撥水性を保持できる。
300℃に加熱後の水接触角の測定は、加熱後の試験片を用いたこと以外、上述の方法を採用できる。この評価実験のために試験片の加熱を行う場合、例えば、膜厚1μm防汚性塗膜10を加熱して、評価できる。
また、別の実施形態において300℃で、少なくとも50時間、例えば、50時間超、130時間以下の時間をかけで加熱した条件で測定した、水接触角についても、上述の数値範囲をとることができる。よって、本開示の防汚基板1は、耐熱性、長期耐久性にも優れている。
本開示において、撥油性は、オレイン酸を用いる接触角測定により評価できる。例えば、防汚性塗膜10における、常温(23℃)で測定したオレイン酸の接触角は40°以上である。別の実施形態において、オレイン酸の接触角は、40°以上105°以下であり、例えば、65°以上であり、別の実施形態では65°以上100°以下である。更に別の実施形態において、オレイン酸の接触角は70°以上100°以下であり、例えば、72°以上100°以下である。
防汚性塗膜10における、常温で測定したオレイン酸の接触角が上記範囲内であることにより、防汚性塗膜10は、優れた撥油性を示すことができ、更に、防汚基板1は、優れた撥油性を示すことができる。
このような範囲で、常温で測定した撥油性を示すことで、防汚性塗膜10及び防汚基板1は、油系の汚れに対して、良好な防汚性、洗浄性、後述の焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
常温で測定したオレイン酸の接触角の測定は、既知の方法により行うことができる。例えば、常温で測定したオレイン酸の接触角は、以下の方法で測定できる。
測定装置:協和界面科学株式会社製、KYOWA Drop Master DM―501SA
オレイン酸の滴下量:5μL
測定温度:23℃
オレイン酸をシリンジに入れ、評価面(防汚性塗膜10の表面)にオレイン酸を滴下し、測定する。
本開示の防汚性塗膜10は、高温で加熱後においても、優れた撥油性を有することができる。例えば、防汚性塗膜10を、300℃で、50時間加熱した条件で測定した、防汚性塗膜10のオレイン酸の接触角(300℃加熱後)は、40°以上100°以下であり、例えば、45°以上100°以下である。別の実施形態では50°以上100°以下である。更に別の実施形態において、オレイン酸の接触角は53°以上100°以下であり、例えば、55°以上100°以下である。
このように、防汚性塗膜10は、高温に長期間曝しても、十分なオレイン酸接触角を保持できるので、長期に亘り、撥油性を保持できる。
300℃に加熱後のオレイン酸接触角の測定は、加熱後の試験片を用いたこと以外、上述の方法を採用できる。この評価実験のために加熱を行う場合、例えば、膜厚1μmの防汚性塗膜10を加熱して評価できる。
また、別の実施形態において300℃で、少なくとも50時間、例えば、50時間超、130時間以下の時間をかけで加熱した条件で測定した、オレイン酸接触角(300℃加熱後)についても、上述の数値範囲をとることができる。よって、本開示の防汚基板1は、耐熱性、長期耐久性にも優れている。
本開示において、常温(23℃)での水接触角と、常温でのオレイン酸の接触角とが上記範囲内であることにより、防汚性塗膜10は、優れた撥水性と撥油性を有することができ、防汚基板1も、優れた撥水性と撥油性を有することができる。
更に、高温(300℃)に加熱後の水接触角と、高温(300℃)に加熱後のオレイン酸の接触角とが上記範囲内であることにより、防汚性塗膜10は、高温に曝されても、長期に亘り、優れた撥水性と撥油性を有することができ、防汚基板1も、優れた撥水性と撥油性を有することができる。
よって、防汚基板1は、撥水性と撥油性について、バランスよく優れた値を示すことでき、その上、防汚基板1は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。また、防汚基板1は、これら防汚性等について、高温に曝される使用形態においても、長期間性能を保持できる。
本開示において、上記範囲内であれば、防汚性塗膜10は、種々の水接触角と、種々のオレイン酸の接触角を適宜組合せて有することができる。
防汚性塗膜10は、上述のように、優れた防汚性を示すことができ、更に、優れた洗浄性を有する。例えば、水拭きを行うことで、防汚性塗膜10を容易に洗浄できる。また、市販の洗浄剤等を併用した場合においても、防汚性塗膜10は、耐薬品性に優れ、剥離などが生じにくいので、容易に洗浄できる。洗浄性に優れた防汚性塗膜10を有する、本開示に係る防汚基板1についても、優れた洗浄性を有することができる。
ここで、例えば、防汚基板1がトッププレート又は加熱庫等として使用される場合、汚れが付着した状態で、繰返し加熱に付され得る。汚れが加熱に付されると、焦付き汚れとなり、トッププレート及び加熱庫等に焦付き汚れが固着する可能性がある。焦げ付き汚れは、通常の汚れよりも基板に固着する傾向、粘度が高くなる傾向があるため、洗浄することが、通常の汚れと比べて手間を要する。
これに対して、本開示に係る防汚性塗膜10は、汚れが繰返し加熱に付された場合であっても、従来のトッププレート又は加熱庫等と比較して、焦付き汚れの固着を防止でき又は大きく低減できる。したがって、このような防汚性塗膜10を有する防汚基板1は、優れた焦付き防汚性を有することができる。
更に、仮に、焦付き汚れが生じたとしても、防汚性塗膜10は、容易に焦付き汚れを洗浄(除去)できる。したがって、防汚基板1においても、優れた焦付き洗浄性を有することができる。
ここで、本開示において、焦付き防止性、焦付き洗浄性の評価は、例えば、以下のように行える。
まず、23℃での評価は、常温(23℃)の、防汚基板1における防汚性塗膜10を、250℃に加熱し、次いで、調味料などを防汚性塗膜10に滴下し、その上から250℃に加熱した金属板を載せた状態で、250℃にて15分保持し、その後、金属板を防汚基板1における防汚性塗膜10から取り除き、防汚基板1を室温まで冷却する。
ここで、防汚基板1における防汚性塗膜10において、焦付きが観察されなかった場合、焦付き防止性が極めて優れていると判断できる。
焦付きが観察される場合でも、焦付きを除去できれば、良好な又は優れた焦付き洗浄性を有していると判断できる。
また、本開示の防汚性塗膜10が、上記した種々の水接触角及びオレイン酸接触角を満たすことにより、良好な焦付き防止性及び焦付き洗浄性を備える傾向がある。
300℃での評価は、防汚基板1における防汚性塗膜10を、300℃にて50時間加熱し、23℃に空冷する。その後、防汚基板1における防汚性塗膜10を、250℃に加熱し、次いで、調味料などを防汚性塗膜10に滴下する。次いで、23℃での試験と同様にして、評価を行う。
防汚性塗膜10は、防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性に加えて、高い熱効率を有することができる。更に、防汚性塗膜10は、優れた防汚性、焦付き防汚性を有するので、汚れ及び焦付き汚れに基づき、防汚性塗膜10の熱効率が低下することを防止又は抑制できる。このため、従来と比べ、防汚性塗膜10の熱効率を長期間保持でき、防汚基板1の熱効率についても長期に亘り保持できる。
防汚基板1が、熱効率に優れ、汚れ及び焦付き汚れに基づく熱効率の低下を抑制又は防止できるので、例えば、防汚基板1を、IH調理器等に用いるトッププレートに使用する場合、IH調理器の熱効率を長期に亘り保持できる。
また、防汚性塗膜10は、高い透明性を有し、更に、繰返し加熱に付された場合であっても変色を生じにくい。その上、防汚性塗膜10は、優れた耐傷付性を有することができる。
また、防汚性塗膜10は意匠性に優れ、無機基材20が有する透明性、光沢、質感等の意匠性を損なうことを防止でき、あるいは、無機基材20が有する意匠性をより高めることができる。更に、防汚性塗膜10を有する防汚基板1においても、優れた意匠性を有することができる。
防汚性塗膜10は、単層であってよい。また、防汚性塗膜10は、少なくとも最外層に、本開示の防汚性塗膜形成組成物から形成された塗膜を有する複層塗膜であってよい。
防汚性塗膜10の膜厚は、例えば0.05μm以上2μm以下である。ある実施形態において、防汚性塗膜10の膜厚は、例えば0.1μm以上1.5μm以下であり、例えば、0.1μm以上1.0μm以下であり、一実施形態において、0.2μm以上0.5μm以下である。
防汚性塗膜10が複層塗膜構造を有する場合、各層の膜厚の合計が上記範囲内であることができる。
防汚性塗膜10は、既知の方法を用いて、本開示に係る防汚性塗膜形成組成物から形成できる。例えば、無機基材20への防汚性塗膜形成組成物の塗装は、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法など公知の方法を用いて行うことができる。
例えば、無機基材20が非結晶化ガラスを含む実施形態においては、ディッピング法を用いることがきる。ディッピング法を用いることにより、防汚基板1の意匠性を更に向上させることができる。
乾燥工程を促進するために、過熱してもよい。通常、乾燥は100℃以上300℃以下の温度範囲で1時間以上24時間以下の時間をかけて行われる。
また、防汚性塗膜10は、防汚性塗膜形成組成物の塗装方法に応じて、無機基材20の一面全体を被覆してもよく、一面の一部分を被覆してもよく、無機基材20の全面を被覆してもよい。
[防汚性塗膜形成組成物]
本開示に係る防汚性塗膜形成組成物は、塗膜形成成分として、
構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方と、
シルセスキオキサン化合物と、
シリコーン化合物(ただし、前記シルセスキオキサン化合物は除く)とを含む。
Figure 2021011523
[式中、R及びRは、相互に独立に炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基、炭素数2以上20以下の分岐アルキル基又は炭素数6以上20以下のアリール基である]、
Figure 2021011523
[式中、Q及びQは、相互に独立に炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基、炭素数2以上20以下の分岐アルキル基又は炭素数6以上20以下のアリール基であり、mは1〜10の整数であり]。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本開示の防汚性塗膜形成組成物から形成された防汚性塗膜10は、塗膜形成成分が三次元に結合して形成された塗膜であると推測される。塗膜形成成分が三次元に結合することで、防汚性塗膜10内で立体的な空間を生じることができ、例えば、撥水性、撥油性に寄与し得る、リン酸エステル化合物及びポリリン酸エステル成分のうち少なくとも一方を、更に効果的に配置することができると推測される。その結果、リン酸エステル化合物及びポリリン酸エステル成分のうち少なくとも一方の密度を、既知の塗膜よりも高くでき、例えば、防汚性塗膜10表層部におけるリン酸エステル化合物及びポリリン酸エステル成分のうち少なくとも一方の密度を高くできると考えられる。このため、防汚性塗膜10は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
更に、防汚性塗膜10は、塗膜形成成分が三次元的に結合することで、耐衝撃性及び耐熱性を高くできる。例えば、防汚性塗膜10は、高い熱効率、高温から急激に冷却された際の耐熱衝撃性、耐傷付性等、良好な機械的特性を有することができる。
その上、防汚性塗膜10は、無機基材20に対し高い密着性を示すことができるので、防汚性塗膜10が無機基材20から剥離することを低減、抑制でき、防汚基板1は、防汚性塗膜10が有する種々の性質を長期に亘り発揮できる。
また、防汚性塗膜10は、高い透明性など、意匠性を有することができ、熱分解による剥離、変色を防止又は抑制できる。
(リン酸エステル化合物及びポリリン酸エステル)
防汚性塗膜形成組成物は、下記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び下記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方を含む。
Figure 2021011523
[式中、R及びRは、相互に独立に炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基、炭素数2以上20以下の分岐アルキル基又は炭素数6以上20以下のアリール基である]、
Figure 2021011523
[式中、Q及びQは、相互に独立に炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基、炭素数2以上20以下の分岐アルキル基又は炭素数6以上20以下のアリール基であり、mは1〜10の整数である]。
防汚性塗膜形成組成物が、本開示に係るリン酸エステル化合物及びポリリン酸エステルのうち少なくとも一方を含むことにより、防汚性塗膜10は、常温での撥水性、撥油性、高温(300℃に加熱後)の撥水性及び撥油性を十分に発揮できる。例えば、上述した水の接触角及びオレイン酸接触角、並びに、300℃の加熱後おいても、上述した水の接触角及びオレイン酸接触角を保持できる。その結果、防汚性塗膜10は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
一実施形態において、構造式(1)を有するリン酸エステルにおける、Rの炭素数とRの炭素数の合計が2以上20以下である。この実施形態において、Rの炭素数とRの炭素数は同じであってよく、あるいは、異なっていてよい。また、一実施形態において、R及びRは、相互に独立に直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である。
一実施形態において、構造式(1)を有するリン酸エステルにおける、Rの炭素数とRの炭素数の合計が2以上14以下である。この実施形態において、Rの炭素数とRの炭素数は同じであってよく、あるいは、異なっていてよい。また、一実施形態において、R及びRは、相互に独立に直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である。
一実施形態において、構造式(1)を有するリン酸エステルにおける、Rの炭素数とRの炭素数の合計が2以上12以下である。この実施形態において、Rの炭素数とRの炭素数は同じであってよく、あるいは、異なっていてよい。また、一実施形態において、R及びRは、相互に独立に直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である。
一実施形態において、構造式(1)を有するリン酸エステルにおける、Rの炭素数とRの炭素数の合計が4以上10以下である。この実施形態において、Rの炭素数とRの炭素数は同じであってよく、あるいは、異なっていてよい。また、一実施形態において、R及びRは、相互に独立に直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である。
構造式(1)を有するリン酸エステルにおける、Rの炭素数とRの炭素数の合計が上記範囲内であることにより、防汚性塗膜10は、より優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
特定の作用に限定して解釈すべきではないが、例えば、リン酸エステルにおける、Rの炭素数とRの炭素数の合計が上記範囲内であることにより、リン酸エステルの炭素鎖が防汚性(特に、撥水撥油性)に寄与しているものと推測される。更に、摺動性(低摩擦性)が上がると推測される。このような効果を奏するため、ふき取り清掃時の塗膜への負荷が減り、清掃による塗膜劣化が抑制されると考えられる。
例えば、一実施形態において、R及びRは、共に、直鎖アルキル基である。特定の理論に限定して解釈すべきではないが、R及びRは、共に、直鎖アルキル基であることにより、防汚性塗膜10内において、構造式(1)を有するリン酸エステルの密度を高くできると推測される。これにより、防汚性塗膜10は、より優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
一実施形態において、構造式(1)を有するリン酸エステルにおける、Rの炭素数と、Rの炭素数は、同じであり、例えば、R及びRの炭素数は、2、3、4、5及び6から選択される。Rの炭素数と、Rの炭素数が、このような値であることにより、防汚性塗膜10は、より優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。例えば、上記実施形態において、R及びRは、共に、直鎖アルキル基である。
一実施形態において、構造式(2)を有するポリリン酸エステルにおける、Qの炭素数とQの炭素数の合計が2以上20以下であり、m=1、2又は3である。この実施形態において、Qの炭素数とQの炭素数は同じであってよく、あるいは、異なっていてよい。また、例えば、QとQは、相互に独立に直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である。
一実施形態において、構造式(2)を有するポリリン酸エステルにおける、Qの炭素数とQの炭素数の合計が2以上14以下であり、m=1、2又は3である。この実施形態において、Qの炭素数とQの炭素数は同じであってよく、あるいは、異なっていてよい。また、例えば、QとQは、相互に独立に直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である。
一実施形態において、構造式(2)を有するポリリン酸エステルにおける、Qの炭素数とQの炭素数の合計が2以上12以下であり、m=1、2又は3である。この実施形態において、Qの炭素数とQの炭素数は同じであってよく、あるいは、異なっていてよい。また、例えば、QとQは、相互に独立に直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である。
一実施形態において、構造式(2)を有するポリリン酸エステルにおける、Qの炭素数とQの炭素数の合計が4以上10以下であり、m=1、2又は3である。この実施形態において、Qの炭素数とQの炭素数は同じであってよく、あるいは、異なっていてよい。また、例えば、QとQは、相互に独立に直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である。
構造式(2)を有するリン酸エステルにおける、Qの炭素数とQの炭素数の合計が上記範囲内であることにより、防汚性塗膜10は、より優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
一実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、1.0質量部以上45.0質量部以下で含み、例えば、8.0質量部以上40.0質量部以下で含む。別の実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、10.0質量部以上38.0質量部以下で含む。
構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方の合計量が、このような範囲内であることにより、防汚性塗膜10は、より優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
一実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物を含む。この実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、1.0質量部以上45.0質量部以下で含んでよく、例えば、8.0質量部以上40.0質量部以下で含む。別の実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、10.0質量部以上38.0質量部以下で含む。
構造式(1)を有するリン酸エステル化合物の量がこのような範囲内であることにより、防汚性塗膜10は、より優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
例えば、防汚性塗膜形成組成物が、構造式(1)を有し、炭素数が異なるリン酸エステル化合物を複数種含む場合、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物の総量が、上記範囲内であればよい。
また、本開示において、防汚性塗膜形成組成物が、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物を複数種含む場合、塗膜形成成分に最も多く含まれる、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物のR及びRが、相互に独立して、炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基であることができる。一実施形態において、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物のR及びRにおいて、R及びRが有する炭素数は、相互に独立して、3、4又は5である。別の実施形態において、R及びRは同一の構造であってもよく、例えば、R及びRが有する炭素数は、3、4又は5であり、更に、R及びRが有する炭素数は同一である。例えば、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物として、R及びRが、共に、炭素数3、4又は5の直鎖アルキル基であるリン酸エステル化合物を挙げることができる。
本開示における、これら炭素数、フッ素原子の数などは、IR、NMR等既知の装置を用いて、一般的な条件下で測定できる。
(シルセスキオキサン化合物)
防汚性塗膜形成組成物は、シルセスキオキサン化合物を含む。防汚性塗膜形成組成物がシルセスキオキサン化合物を含むことにより、防汚性塗膜10内で塗膜形成成分が三次元的に結合することを促進し、立体的な空間が生じ得る。また、塗膜形成成分が三次元的に結合することで、防汚性塗膜10の耐衝撃性、耐熱性を高くできる。例えば、防汚性塗膜10は、高い熱効率、高温から急激に冷却された際の耐熱衝撃性、耐傷付性等、良好な機械的特性を有することができる。
更に、防汚性塗膜10は、シルセスキオキサン化合物を含む防汚性塗膜形成組成物から形成されることにより、高い透明度(光透過性)を示すことができる。
また、本開示に係る防汚基板において、防汚性塗膜形成組成物がシルセスキオキサン化合物を含むことにより、例えば、構造特性から基材形状への追随性が良く、グリル皿等の凹凸形状、Rの小さい加工部にもクラックなく塗布できる。
シルセスキオキサン化合物は、化学式(RSiO1.5)n(式中Rは有機基、nは整数)で表され、シロキサン結合がT単位である化合物である。シルセスキオキサン化合物は、種々の骨格構造を取ることができ、カゴ型、ハシゴ型、ランダム構造等の構造を有する。Rは、例えば、アルキル基であってよく、例えば、メチル基である。また、Rは、アリール基であってよく、例えば、フェニル基であってよい。
防汚性塗膜形成組成物は、シルセスキオキサン化合物を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、1.0質量部以上45.0質量部以下で含んでよく、例えば、8.0質量部以上40.0質量部以下で含む。別の実施形態において、シルセスキオキサン化合物を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、10.0質量部以上38.0質量部以下で含む。防汚性塗膜形成組成物は、シルセスキオキサン化合物をこのような量で含むことにより、防汚性塗膜10の耐衝撃性、耐熱性をより高くでき、例えば、防汚性塗膜10は、高い熱効率、高温から急激に冷却された際の耐熱衝撃性、耐傷付性等、良好な機械的特性を有することができる。更に、防汚性塗膜10は、より高い透明度(光透過性)を示すことができる。
一実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、上記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、1.0質量部以上45.0質量部以下で含み、シルセスキオキサン化合物を1.0質量部以上45.0質量部以下で含む。
一実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、上記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、10.0質量部以上38.0質量部以下で含み、シルセスキオキサン化合物を10.0質量部以上38.0質量部以下で含む。
防汚性塗膜形成組成物は、所定のリン酸エステル化合物及びポリリン酸エステルのうち少なくとも一方と、シルセスキオキサン化合物を上記範囲内で含むことにより、防汚性塗膜10は、防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を、より効果的に発揮できる。さらに、防汚性塗膜10は、高い熱効率、高温から急激に冷却された際の耐熱衝撃性、耐傷付性等、良好な機械的特性を有することができ、加えて、高い透明度を有することができる。また、防汚性塗膜10は、熱分解による剥離、変色を防止又は抑制できる。
なお、上記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方の量と、シルセスキオキサン化合物の量は、本開示の範囲内で、適宜組合せることができる。
例えば、防汚性塗膜形成組成物は、上記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方と、シルセスキオキサン化合物とを、リン酸エステルの量:シルセスキオキサン化合物の量が、塗膜形成成分の固形分100質量部において、0.8:1〜1:0.8となる関係で含むことができる。
このような関係を有することにより、防汚性塗膜10は、防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を、より効果的に発揮できる。
さらに、防汚性塗膜10は、高い熱効率、高温から急激に冷却された際の耐熱衝撃性、耐傷付性等、良好な機械的特性を有することができ、加えて、高い透明度を有することができる。また、防汚性塗膜10は、熱分解による剥離、変色を防止又は抑制できる。
一実施形態において、防汚性塗膜形成組成物における、シルセスキオキサン化合物の量は、構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方の合計量よりも少ない。
(シリコーン化合物)
防汚性塗膜形成組成物は、シリコーン化合物(ただし、上記シルセスキオキサン化合物は除く)を含む。防汚性塗膜形成組成物は、シリコーン化合物を含むことにより、防汚性塗膜10は、無機基材20に対し高い密着性を示すことができる。このため、防汚性塗膜10が無機基材20から剥離することを低減、抑制でき、防汚基板1は、防汚性塗膜10が有する種々の性質、例えば、防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を長期に亘り発揮できる。
また、防汚性塗膜10は、熱分解による剥離、変色を防止又は抑制でき、優れた意匠性を示すことができる。
一実施形態において、シリコーン化合物は、直鎖状オルガノポリシロキサン、分枝状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。シリコーン化合物がこのようなシロキサン化合物を含むことにより、防汚性塗膜10は、無機基材20に対し高い密着性を示すことができる。
一実施形態において、シリコーン化合物は、直鎖状オルガノポリシロキサンを含む。直鎖状オルガノポリシロキサンとして、例えば下記式で示される構造を有する化合物が挙げられる。
−[R SiO]−R
[式中、Rは、水酸基、1〜6の炭素原子を有する直鎖状炭化水素基、または、5〜7の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、
は、1〜6の炭素原子を有する直鎖状炭化水素基、または、5〜7の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、
は、水素、1〜6の炭素原子を有する直鎖状炭化水素基、または、5〜7の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、xは1〜400の範囲内である。]
一実施形態において、シリコーン化合物は、ポリアルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、及び、環状シロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。例えば、シリコーン化合物は、ポリジメチルシロキサンを含む。
シリコーン化合物がこのようなシロキサン化合物を含むことにより、防汚性塗膜10は、無機基材20に対し高い密着性を示すことができる。このため、防汚性塗膜10が無機基材20から剥離することを低減、抑制でき、防汚基板1は、防汚性塗膜10が有する種々の性質を長期に亘り発揮できる。
例えば、シリコーン化合物は、防汚性塗膜10に対し、シロキサン結合部を付与し得る。シロキサン結合部は、無機基材20に対する結合性を有することができ、例えば、シロキサン結合部は、少なくとも1つのSi−O結合を有する。
例えば、無機基材20が、石英ガラス、高ケイ酸ガラス及びホウ硅酸ガラスからなる群から選択される少なくとも一種の非結晶化ガラスを含む実施形態において、防汚性塗膜形成組成物がシリコーン化合物を含むことにより、防汚性塗膜10は、これら非結晶化ガラスの表面に対し、更に良好な密着性を示すことができる。
防汚性塗膜10と非結晶化ガラス表面との密着性が向上することにより、防汚性塗膜10の剥離を防止又は抑制できるので、防汚性塗膜10の奏する上記効果を十分に発揮可能な防汚基板1を得ることができる。
更に、本開示における防汚性塗膜10は、例えば、非結晶化ガラス等の無機基材20の表面との結合性に優れるため、非結晶化ガラス等の表面をエッチングし粗面化を行わなくても、優れた密着性を示すことができる。このため、例えば、非結晶化ガラスが有する高い透明性を保持できる。その上、非結晶化ガラス等の表面を粗面化しなくてもよいため、例えば、赤外線の温度センサーの透過性が下がることを抑制できる。このため、温度検知に支障が生じることも抑制でき、IH機器は、安定した温度制御を行うことができる。
一実施形態において、図2に示すように、無機基材20は、少なくとも、防汚性塗膜10側の表面に、基材表面層30を有する。この実施形態において、防汚性塗膜形成組成物が本開示に係るシリコーン化合物を含むことにより、防汚性塗膜10は、基材表面層30に対し、強固な密着性を示すことができる。
また、基材表面層30に含まれる成分に応じて、シリコーン化合物は、置換基を有してもよい。
基材表面層30を有する実施形態において、基材表面層30は、無機基材20に対する結合性を有することができる。
したがって、本開示に係るシリコーン化合物を含む防汚性塗膜形成組成物から形成された防汚性塗膜10と、基材表面層30と、無機基材20との各層間における密着性を高くできる。また、防汚性塗膜10と、基材表面層30との剥離を防止又は抑制できるので防汚基板1は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を、長期に亘り有することができる。
一実施形態において、基材表面層30は酸化スズ(SnO)を含む。例えば、基材表面層30が酸化スズ(SnO)を含む形態において、本開示に係るシリコーン化合物を含む防汚性塗膜形成組成物から形成された防汚性塗膜10は、酸化スズ(SnO)を含む基材表面層30に対し高い密着性を示すことができる。
本開示においては、防汚性塗膜10と、基材表面層30と、無機基材20との各層間での密着性を高くできるので、防汚基板1は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を、長期に亘り有することができる。更に、酸化スズ(SnO)を含む基材表面層30を有することで、防汚基板1は、加熱調理器の洗浄及び加熱等を繰り返しても、基材表面層30上に配置された防汚性塗膜10の剥離を、防止又は大きく低減できる。
また、防汚性塗膜10は、防汚性、洗浄性等に加えて、高い熱効率、高い透明性、優れた耐傷付性、繰返し加熱に付された場合であっても変色を生じにくいといった効果を奏することができる。
一実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、シリコーン化合物を、塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、20質量部以上80質量部以下で含み、例えば25質量部以上75質量部以下で含む。
防汚性塗膜形成組成物が、シリコーン化合物をこのような範囲内で含むことにより、防汚性塗膜10は、基材表面層30及び無機基材20の何れに対しても良好な密着性を示すことができる。さらに、防汚性塗膜形成組成物から形成される防汚性塗膜10の塗膜強度も確保でき、塗膜の割れ、剥離などを防止できる。
本開示に係る防汚性塗膜形成組成物は、本開示の防汚基板1の有する特性を損なわない範囲で、既知の添加剤を含んでよく、例えば、界面活性化剤、相溶剤、顔料、抗菌剤、紫外線吸収剤、加水分解触媒、架橋剤および酸化防止剤などの添加剤を含んでよい。
一実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、例えば、水系溶媒を用いて調製できる。また、本開示の防汚基板1の有する特性を損なわない範囲で、既知の水系溶媒を選択できる。例えば、水系溶媒としては、水、アルコール、水/アルコール混合物等が挙げられる。更に、水系溶媒の一部として、ケトン類、グリコール類等の希釈溶剤を添加してもよい。水系溶媒を用いることにより、防汚性塗膜形成組成物は、環境への負荷を低減でき、る。さらに、防汚性成分に含まれる(ポリ)リン酸エステル化合物及びシルセスキオキサン化合物のライフタイムを長く保つことができ、本開示の防汚基板1は、撥水性と撥油性をバランスよく有することができ、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。また、防汚基板1は、これら防汚性等について、高温に曝される使用形態においても、長期間性能を保持できる。
一実施形態において、防汚性塗膜形成組成物は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル及びγ−ブチロラクトン等の溶媒を含んでもよい。
[無機基材]
本開示において、無機基材20は、金属、ガラス、ホウロウ、陶磁器及び合成セラミックスからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
本開示に係る無機基材20と、防汚性塗膜10は、良好な密着性を示すので、本開示の、防汚基板1は、表面保護に優れ、汚れ、焦付き汚れを防止でき、汚れの洗浄性に加え、焦付き汚れの洗浄性にも優れる。更に、防汚基板1は、加熱と冷却を繰り返し行っても、長期間に亘り、塗膜の剥離を抑制できる。本開示の防汚基板1は、更に、意匠性に優れた外観を有することができる。
一実施形態において、無機基材20に含まれる金属は、鉄、ステンレス、アルミ等である。一実施形態において、無機基材20に含まれるガラスは、結晶化ガラス及び非結晶化ガラスからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。
一実施形態において、無機基材20は、結晶化ガラスを含む。結晶化ガラスは、例えば、β-石英固溶体、β-スポジュメン固溶体を析出させたガラスである。無機基材20は、結晶化ガラスを含むことにより、温度変化による膨張、収縮の量を小さくでき、急加熱又は急冷による破損を抑制できる。また、軟化変形しにくく耐熱性が高い。一実施形態において、無機基材20は、耐熱低膨張結晶化ガラスを含む。
一実施形態において、無機基材20は、石英ガラス、高ケイ酸ガラス及びホウ硅酸ガラスからなる群から選択される少なくとも一種の非結晶化ガラスを含む。無機基材20が非結晶化ガラスを含むことにより、高温から急激に冷却された際の耐熱衝撃性を有することができ、更に、透明性の高い防汚基板1を得ることができる。また、無機基材20と併用できる印刷層、下地等の材質感、色彩等を良好に表現でき、デザイン性に優れた防汚基板1を得ることができる。例えば、非結晶化ガラスは、熱的安定性が優れていると共に耐薬品にも優れる傾向がある。このため、無機基材20が非結晶化ガラスを含むことで、更に安全性、使い勝手の向上した加熱調理器を得ることができる。
本開示において、非結晶化ガラスに含まれるシリカ成分の純度に応じて、石英ガラス、高ケイ酸ガラス及びホウ硅酸ガラスと分類できる。例えば、石英ガラスは、これら非結晶化ガラスにおいて、最もシリカ(SiO)純度の高いガラスである。一方、ホウ硅酸ガラスは、シリカに加え、少なくとも酸化ホウ素(B)等のホウ素由来の組成が含まれる。
一実施形態において、無機基材20は、ホウ硅酸ガラスを含んでよい。ホウ硅酸ガラスを含むことにより、透明性が高く、白色の裏面印刷を美しく提供できる等、優れた意匠性を有することができる。更に、熱的安定性が優れていると共に耐薬品に優れた防汚基板1を得ることができる。その上、防汚基板1の軽量化を奏することができ、及びコストを低減できる。
無機基材20の厚さは、例えば2mm以上7mm以下である。ある実施形態において、無機基材20の厚さは、例えば3mm以上6mm以下である。無機基材20がこのような厚さであることにより、防汚基板1は十分な強度を有することができ、さらに、所望の伝熱効果を有することができる。
一実施形態において、図2に示されるように、無機基材20は、少なくとも、防汚性塗膜10側の表面に、基材表面層30を有する。一実施形態において、基材表面層30は、SnOを含む。
無機基材20が、基材表面層30を有することにより、本開示に係る防汚性塗膜10と、無機基材20との密着性を更に向上させることができる。密着性が向上することで、防汚性塗膜10が奏する効果、例えば、表面保護、防汚性、焦付き防汚性、洗浄性及び焦付き洗浄性を、更に良好に維持できる。
例えば、防汚基板1を加熱調理器に備える実施形態において、使用者が、織布等を用いて繰り返し掃除することが想定される。防汚性塗膜10と、基材表面層30と、無機基材20との密着性が向上することにより、掃除が繰り返されても、撥水性、撥油性をより良好に保つことができる。
また、基材表面層30を有する防汚基板1は、加熱と冷却を繰り返し行っても、更に長期間に亘り、防汚性塗膜10の剥離を抑制でき、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性等に優れる。その上、意匠性に優れた外観を有することができる。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、密着性の向上は、例えば、SnOを含む基材表面層30には、無機基材20及び防汚性塗膜10との結合に寄与し得る結合基、例えば、水酸基等が比較的高密度で存在し、SnOを含む基材表面層30は、無機基材20及び防汚性塗膜10のいずれに対しても、より強固に結合できることに起因するものと推測される。
基材表面層30の厚さは、例えば0.1mm以上2mm以下である。ある実施形態において、基材表面層30の厚さは、例えば0.2mm以上0.7mm以下である。基材表面層30がこのような厚さであることにより、例えば、無機基材20が有する、伝熱特性、透過性などを損なうことなく、無機基材20との密着性を更に向上させることができる。また、基材表面層30の厚さが、このような範囲内であることにより、防汚性塗膜10が奏する効果、例えば、耐熱衝撃性、寸法安定性などをより効果的に発揮できる。
一実施形態において、無機基材20は、石英ガラス、高ケイ酸ガラス及びホウ硅酸ガラスからなる群から選択される少なくとも一種の非結晶化ガラスを含み、更に、無機基材20は、防汚性塗膜10側の表面に、SnOを含む基材表面層30を有する。
このような構造を有することで、非結晶化ガラスを含む無機基材20と、SnOを含む基材表面層30と、防汚性塗膜10との密着性を更に向上させることができる。これらの層間の密着性が向上することで、防汚性、洗浄性に加えて、耐熱衝撃性、焦付きを防止、焦付き洗浄性を更に良好に維持でき、例えば、掃除が繰り返されても、撥水性、撥油性をより良好に保つことができる。
また、加熱と冷却を繰り返し行っても、更に長期間に亘り、塗膜の剥離を抑制でき、焦付きの抑制、焦付きの洗浄性等に優れる。その上、意匠性に優れた外観を有することができる。一実施形態において、無機基材20は、ホウ硅酸ガラスを含んでよい。
基材表面層30は、無機基材20における防汚性塗膜10側に、本開示に係る防汚性塗膜10の奏する効果を損なわない方法で配置できる。例えば、SnOを含む塗料組成物を、無機基材20の表面に塗装し、硬化させることにより、基材表面層30を形成してもよい。また、無機基材20を製造する工程において、SnOを含む基材表面層30を形成してもよい。
例えば、フロート法と称される方法を用い、非結晶化ガラスを含む無機基材20を製造する工程において、SnOを含む基材表面層30を形成できる。
ここで、本開示においては、フロート法で非結晶化ガラスを含む無機基材20を製造した場合において、その工程において生じ得る、SnOを含む層を除去することなく使用できる。一方、従来は、SnOを含む層を除去する場合が多かった。このため、本開示においては、SnOを含む層の除去工程を省略でき、更に、SnOを含む廃棄物を低減できるので、環境への負荷を低減できる。
一実施形態において、防汚性塗膜10と、無機基材20との間に、更に中間層を有してよく、中間層は、水酸基を含む中間層形成組成物から形成された層である。中間層を有することにより無機基材20と、中間層と、防汚性塗膜10との密着性を高めることができ、本開示の防汚基板1は、表面保護性、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を、更に良好に維持できる。中間層は、用いる無機基材20に含まれる成分に応じて適宜選択できる。
また、防汚基板1は、中間層と、前述の基材表面層30を共に有してもよい。この実施形態においては、中間層は、SnOを実質的に含まない層であってよい。
一実施形態において、防汚基板1は、無機基材20と、基材表面層30と、中間層と防汚性塗膜10とを、この順で有する。別の実施形態において、無機基材20と、SnOを含む基材表面層30と、中間層と、防汚性塗膜10とをこの順で有してよい。
防汚基板1が、このような構造を有することにより、防汚基板1は、表面保護性、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を、更に良好に維持できる。
[加熱調理器]
本開示は、更に、上記防汚基板1を備える、加熱調理器を提供する。一実施形態において、加熱調理器は、例えば、炊飯器、マイクロ波発生手段を備える調理器、蒸気発生手段を備える蒸気調理器、電磁誘導により加熱調理を行う誘導加熱調理器である。本開示の防汚基板1を備えることで、加熱調理器は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。更に、意匠性に優れた加熱調理器を得ることができる。
一実施形態において、加熱調理器は、誘導加熱調理器である。誘導加熱調理器が、本開示に係る防汚基板1を備える実施形態において、防汚基板1は、被加熱物である鍋等の調理容器が載置されるトッププレートとして使用できる。トッププレートとして使用する形態において、被加熱物である鍋等と、本開示に係る防汚性塗膜10とが接触する。
本開示の防汚基板1をトッププレートとして備える加熱調理器は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。更に、意匠性に優れた外観を有することができる。例えば、防汚基板1が非結晶化ガラスを含む実施形態であれば、白色をきれいに発色することができ、デザインの選択性が増す。
また、防汚基板1は、良好な伝熱特性を有することができ、誘導加熱調理器は、被加熱物を効率よく加熱できる。
(実施例)
以下、本開示について、実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本開示は以下の実施例により何ら限定されるものではない。また、特に明記しない限り、実施例における部及び%は質量基準である。
(実施例1)
(無機基材)
無機基材として、非結晶化ガラスであるホウ硅酸ガラスを使用した(ショット社製、厚さ5mm)。また、無機基材は、SnOを含む基材表面層(厚さ0.5mm)を有した。SnOを含む基材表面層は、フロート法を用いホウ硅酸ガラスを形成した際に形成された層である。
(防汚性塗膜形成組成物)
リン酸エステル化合物(リン酸ジブチル、東京化成工業株式会社製)を5質量%、シルセスキオキサン化合物(商品名SR−13H、小西化学工業株式会社製)を5質量%及びシリコーン化合物(ポリジメチルシロキサン、信越化学工業株式会社製)を20質量%、酢酸エチル70%中に投入し、混合した。得られた混合物を撹拌し、水性エマルジョン(防汚性塗膜形成組成物1)を調製した。
得られた防汚性塗膜形成組成物1を、調製後1週間、静置し、目視によりゲル化あるいは沈殿の有無を観察した。その結果、防汚性塗膜形成組成物1は、安定した水性エマルジョンであった。
(試験片の作成)
防汚性塗膜形成組成物1の塗装は、ディップコーティングにより行った。ディップコーティングは、上記無機基材を、300mm/分の速度で、防汚性塗膜形成組成物1(20±5℃)に、無機基材全体を浸漬させ、その状態で10分保持し(25±2℃)、次いで、無機基材を、50mm/分の速度で引き上げた。更に、250℃の雰囲気下、60分間かけ、得られた無機基材を乾燥させ、防汚性塗膜(厚さ0.5μm)を形成した。このようにして得られた防汚基板は、目視観察の結果、非常に高い透明性を有していた。
なお、防汚性塗膜形成組成物1から形成された防汚性塗膜は、ホウ硅酸ガラス及び、SnOを含む基材表面層のいずれに対しても、高い密着性を示した。
密着性は、例えば、付着試験(摩耗試験)後の接触角により評価した。
(評価)
得られた試験片について、常温(23℃)において、以下の評価を行った。
(23℃での水接触角)
測定装置:協和界面科学株式会社製KYOWA Drop Master DM―501SA
水の滴下量: 5μL
測定温度:23℃
蒸留水をシリンジに入れ、評価面(防汚性塗膜10の表面)に蒸留水を滴下し、測定した。
(23℃でのオレイン酸接触角)
測定装置:協和界面科学株式会社製KYOWA Drop Master DM―501SA
オレイン酸の滴下量: 5μL
測定温度:23℃
オレイン酸をシリンジに入れ、評価面(防汚性塗膜10の表面)にオレイン酸を滴下し、測定した。
(23℃での焦付き判定)
防汚性塗膜を形成したガラス板と、金属板を250℃に加熱した。ガラス片の塗装面に調味液(砂糖:みりん:しょうゆ=1:1:1)を滴下し、すばやく金属板(鉄:SUS板)を載せて、250℃にて15分保持した。その後、金属板をガラス板から剥離し、ガラス板を室温まで空冷させた。ここで、一度、防汚性塗膜を形成したガラス板における焦付きの有無を確認した。
焦付き等、汚れの確認ができた場合、中性洗剤を含ませたガーゼで除去できるかどうかを確認した。評価基準は以下のとおりである。
◎:焦げが付着せず
○:除去可能
△:一部残る/除去するのに強い力が必要である
×:ふき取れない
(23℃での耐薬品性(耐洗剤性))
食器用中性洗剤の原液を含ませたガーゼを、防汚性塗膜を形成したガラス板の防汚性塗膜の表面上であり、かつ、防汚性塗膜の端面に触れないように静置し、48時間保持した。その後、流水洗浄し、上記焦付き試験を実施し、上記基準に従い評価した。
(23℃での耐擦り傷性)
防汚性塗膜を形成したガラス板の防汚性塗膜の表面を、2つ折の水雑巾にて、防汚性塗膜表面を13g/cmの荷重(500g/Φ7cm)で、3000回摩耗した。その後、基準となる黒色板(アクリル板)上に、防汚性塗膜を有する無機基材を置き、黒色の変化の有無を目視にて確認した。
○:黒色に変化なし
△:視認する角度によっては、ごく僅かに、黒色に白濁あり
×:黒色に着色あり
(23℃での付着性)
2つ折の水雑巾にて、防汚性塗膜表面を13g/cmの荷重(500g/Φ7cm)で3000回往復摩耗を行った。その後、23℃での水接触角を評価した。更に、上記焦付き試験を実施し、上記基準に従い評価した。
(23℃での透明性)
基準となる白色板(発泡PTFE板)の上に、防汚性塗膜を有する無機基材を置き、白色の変化の有無を目視にて確認した。
○:白色に変化なし
△:視認する角度によっては、ごく僅かに、白色に着色あり
×:白色に着色あり
更に、得られた試験片について、300℃耐熱後において、以下の評価を行った。
(300℃耐熱試験用の試験片の作成)
上記試験片の作成手順に従い作成した試験片を、庫内の中心温度が300℃となるように、熱電対を用いて温度制御した恒温槽(光洋サーモシステム株式会社製、ボックス炉KBF663N)に入れて、所定時間(25、50時間)保持し、取り出した。
試験片を室温まで空冷後、防汚性塗膜面を、エタノールを含ませた旭化成株式会社製BEMCOT M−3iiにてふき取り洗浄し、後述の方法で水接触角及びオレイン酸接触角を測定した。
(加熱後の水接触角)
300℃耐熱試験用の試験片を用いたこと以外は、上記常温での水接触角の測定と同様の方法で、水接触角を測定した。
(加熱後のオレイン酸接触角)
300℃耐熱試験用の試験片を用いたこと以外は、上記常温でのオレイン酸接触角の測定と同様の方法で、オレイン酸接触角を測定した。
(加熱後の焦付き判定)
300℃耐熱試験用の試験片を用いたこと以外は、上記常温での焦付き判定と同様の方法で、焦付き判定を行った。具体的には、防汚基板における防汚性塗膜を、300℃にて50時間加熱し、23℃に空冷した。その後、防汚基板における防汚性塗膜を、250℃に加熱し、次いで、調味料などを防汚性塗膜に滴下した。その後、23℃での試験と同様にして、評価した。評価基準は、以下のとおりである。
○:除去可能
△:一部残る/除去するのに強い力が必要である
×:ふき取れない
(加熱後の透明性)
300℃耐熱試験用の試験片を用いたこと以外は、上記常温での透明性の判断と同様の方法で、透明性の判定を行った。
○:白色に変化なし
△:視認する角度によっては、ごく僅かに、白色に着色あり
×:白色に着色あり
得られた評価結果を、用いた無機基材等の詳細と共に、表1に示す。
(実施例2及び3)
実施例2は、表1に示すように、各組成の配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様に試験片を作成し、種々の評価を行った。実施例3は、SnOを含む基材表面を有さないこと以外は、実施例1と同様に試験片を作成し、種々の評価を行った。組成、測定結果等を、表1に示す。
(比較例1〜3)
比較例1においては、シリコーンオイル(オキツモ株式会社製、7098)を用いて、実施例1と同様に試験片を作成し、種々の評価を行った。
比較例2は、実施例で用いたリン酸エステルを含まないこと、及び各組成の配合量を変更したこと以外は、実施例1と同様に試験片を作成し、種々の評価を行った。
比較例3は、シリコーン化合物を用い、リン酸エステル及びシルセスキオキサン化合物を含まないこと以外は、実施例1と同様に試験片を作成し、種々の評価を行った。これら比較例の組成、測定結果等を、表1に示す。
Figure 2021011523
実施例1及び2は、本開示に係る特定の塗膜形成成分を含む防汚性塗膜形成組成物から形成された防汚性塗膜と、無機基材を有する防汚基板であるため、表1に示すように、種々の効果を有することができ、例えば、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有する。
一方、比較例1は、本開示に係るシルセスキオキサン化合物を含まないため、焦付き防汚性及び高温に曝された後の焦付き防汚性が劣る傾向がある。また、例えば、摩耗後の撥水性等が劣る傾向があり、更に、防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性も十分ではない傾向がある。
比較例2は、本開示に係る(ポリ)リン酸エステルを含まないため、高温に曝された後の焦付き防汚性が劣る傾向がある。また、例えば、摩耗後の撥水性等が劣る傾向があり、更に、防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性も十分ではない傾向がある。
比較例3は、シリコーンオイル成分が多いため、黒色の背景にかざすと白濁が生じる傾向があった。また、本開示に係る(ポリ)リン酸エステル及びシルセスキオキサン化合物を含まないため、少なくとも、要求される物性を有する塗膜を形成できなかった。
本開示の防汚基板1は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有する。また、本開示に係る防汚基板1を備える加熱調理器は、優れた防汚性、洗浄性、焦付き防汚性及び焦付き洗浄性を有することができる。
1 防汚基板
10 防汚性塗膜
20 無機基材
30 基材表面層

Claims (15)

  1. 防汚性塗膜形成組成物から形成された防汚性塗膜と、
    無機基材とを有する、防汚基板であって、
    前記防汚性塗膜形成組成物は、塗膜形成成分として、
    下記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び下記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方と、
    シルセスキオキサン化合物と、
    シリコーン化合物(ただし、前記シルセスキオキサン化合物は除く)とを含み、
    Figure 2021011523
    [式中、R及びRは、相互に独立に炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基、炭素数2以上20以下の分岐アルキル基又は炭素数6以上20以下のアリール基である]、
    Figure 2021011523
    [式中、Q及びQは、相互に独立に炭素数1以上20以下の直鎖アルキル基、炭素数2以上20以下の分岐アルキル基又は炭素数6以上20以下のアリール基であり、mは1〜10の整数であり]、
    前記無機基材は、金属、ガラス、ホウロウ、陶磁器及び合成セラミックスからなる群から選択される少なくとも1つを含む、防汚基板。
  2. 前記シリコーン化合物は、直鎖状オルガノポリシロキサン、分枝状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、 請求項1に記載の防汚基板。
  3. 前記シリコーン化合物が、ポリアルキルシロキサン及びポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の防汚基板。
  4. 前記防汚性塗膜形成組成物は、前記塗膜形成成分の固形分100質量部に対して、
    前記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物及び前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルのうち少なくとも一方を、合計1.0質量部以上45.0質量部以下で含み、
    前記シルセスキオキサン化合物を1.0質量部以上45.0質量部以下で含む、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の防汚基板。
  5. 前記構造式(1)を有するリン酸エステル化合物における、Rの炭素数とRの炭素数の合計が2以上20以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の防汚基板。
  6. 前記構造式(2)を有するポリリン酸エステルにおける、Qの炭素数とQの炭素数の合計が2以上20以下であり、m=1、2又は3である、請求項1から5のいずれか1項に記載の防汚基板。
  7. 前記防汚性塗膜における、常温で測定したオレイン酸の接触角が40°以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載の、防汚基板。
  8. 前記防汚性塗膜における、常温で測定したオレイン酸の接触角が70°以上である、請求項1から7のいずれか1項に記載の、防汚基板。
  9. 前記防汚性塗膜を、300℃で、50時間加熱した条件で測定した、防汚性塗膜の水接触角(300℃加熱後)は、100°以上である、請求項1から8のいずれか1項に記載の、防汚基板。
  10. 前記無機基材は、石英ガラス、高ケイ酸ガラス及びホウ硅酸ガラスからなる群から選択される少なくとも一種の非結晶化ガラス、又は結晶化ガラスを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の防汚基板。
  11. 前記無機基材は、ホウ硅酸ガラスを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の防汚基板。
  12. 前記無機基材は、少なくとも、前記防汚性塗膜側の表面に、SnOを含む基材表面層を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の防汚基板。
  13. 前記防汚性塗膜と、前記無機基材との間に、更に中間層を有し、
    前記中間層は、水酸基を含む中間層形成組成物から形成された層である、請求項1から12のいずれかに記載の防汚基板。
  14. 加熱調理器用の防汚基板である、請求項1から13のいずれか1項に記載の防汚基板。
  15. 請求項1から14のいずれか1項に記載の防汚基板を備える、加熱調理器。
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