JP2010227882A - 水素発生油泥の処理方法及び水素発生油泥の利用方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の水素発生油泥中からの水素の発生を抑制し、以後の取り扱いを容易かつ安全なものとする水素発生油泥の処理方法を提供すること。
【解決手段】水素発生油泥100重量部に対して、鉱物油系油泥100重量部以上混合することを特徴とする、水素発生油泥の処理方法とした。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水素発生油泥の処理方法に関し、特に、水素の発生を抑制し、以後の取り扱いを容易かつ安全なものとする水素発生油泥の処理方法、及び該処理方法を施した水素発生油泥の利用方法に関するものである。
シリコンウエハーは、半導体デイバイスや太陽光電池等の部材として有用であり、その需要は年々増大しつつある。かかるシリコンウエハーは、高純度シリコンの結晶体からウエハー状に切り出すことにより製造されるが、切断機の性能等の観点から、近年においてはワイヤソーによる切り出しが主流になりつつある。
このワイヤソーによる切り出しにおいては、切削用媒体として、通常平均粒径10μm〜50μmの炭化珪素研削粒と鉱油又は水溶液とを含有するワイヤソーオイルが用いられる。このワイヤソーオイルは、使用を繰り返すことにより研削粒の摩耗、シリコン削分の増加等により、切削能力が低下し、使用できなくなる。
そして、このように使用できなくなった廃ワイヤソーオイルは、現在においては、その大部分が焼却され、産業廃棄物として処理されている。
また、機械加工工場では、多数台の切削、研削若しくは研磨を行う装置を運転して金属加工を行っているが、該金属加工の工程ではワークを冷却、潤滑するために多量の切削油、研削油、研磨油を使用している。
そして、これらの切削油等も循環使用され、劣化したものは抜き出され、廃切削油、廃研削油、廃研磨油としてその大部分はやはり焼却処分されているのが現状である。
ここで、上記した廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の油泥は、高いエネルギーを有するため、産業廃棄物として焼却処分せずに、燃料として有効利用することが期待される。
しかしながら、シリコンウエハーの切り出しに使用された廃ワイヤソーオイルは、多量のシリコン粒子を含有しているとともに、ワイヤソーの磨滅等に起因する鉄等の金属粒子も含有していることから、これらのシリコン粒子及び/又は鉄等の金属粒子が水と反応し、例えば下記の反応式によって多量の水素が発生する憂いがある。

Si+2OH- +H2O→SiO3 2- +2H2
金属 + 酸 → 金属化合物 + 水素↑

また、廃切削油、廃研削油、廃研磨油も、多量のアルミ粒子や鉄等の金属粒子を含有していることから、同じく水素の発生が懸念される。
上記のような水素の発生が懸念される廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の油泥(本明細書では、このような油泥を『水素発生油泥』という。)は、発生した水素への引火、爆発のおそれがあることから、その輸送、貯留等の取り扱いが特に困難であり、その有効的な利用方法が見出されていなかった。
そこで、本件出願人は、先に、水素発生油泥に酸を添加し、水素発生油泥から水素を短時間で強制的に発生させ、それ以上水素が発生しない状態とすることにより、以後の取り扱いを容易かつ安全なものとする水素発生油泥の処理方法を提案し、特許出願を行った(特許文献1)。
特開2008−86975号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術にあっては、水素発生油泥に酸を添加混合する際に発生する多量の水素の処理が必須となり、その処理設備が大掛かりなものとなるとともに、その処理に際しての安全性が懸念される。
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑み成されたものであって、その目的は、廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の水素発生油泥中からの水素の発生自体を抑制し、以後の取り扱いを容易かつ安全なものとする水素発生油泥の処理方法、及び該処理方法を施した水素発生油泥の有効な利用方法を提供することにある。
本発明者等は、上記した課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、水素発生油泥に鉱物油系油泥を添加混合すれば、水素発生油泥からの水素の発生を抑制し得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、次の〔1〕〜〔8〕の水素発生油泥の処理方法及び水素発生油泥の利用方法を提供するものである。
〔1〕 水素発生油泥に鉱物油系油泥を混合することを特徴とする、水素発生油泥の処理方法。
〔2〕 上記水素発生油泥が、水又は水素原子含有化合物の還元によって水素を発生する、液状又はスラッジ状の油泥であることを特徴とする、上記〔1〕に記載の水素発生油泥の処理方法。
〔3〕 上記水素発生油泥が、シリコン粒子及び/又はアルミ粒子や金属粒子を含有した、廃ワイヤソーオイル、廃切削油、廃研削油、廃研磨油のいずれか一種以上であることを特徴とする、上記〔1〕に記載の水素発生油泥の処理方法。
〔4〕 上記鉱物油系油泥が、原油、重油、灯油、軽油、クレオソート、シリコンオイル、流動パラフィン、ワセリン、エンジンオイル、潤滑油、ワックス、或いはこれらの廃棄物のいずれか一種以上であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の水素発生油泥の処理方法。
〔5〕 上記水素発生油泥と鉱物油系油泥の混合割合が、水素発生油泥100重量部に対して、鉱物油系油泥100重量部以上であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の水素発生油泥の処理方法。
〔6〕 上記〔1〕〜〔5〕のいずれかの水素発生油泥の処理方法を施した水素発生油泥を、燃料として利用することを特徴とする、水素発生油泥の利用方法。
〔7〕 上記水素発生油泥を燃料として利用するに際して、バイオマスと混合することを特徴とする、上記〔6〕に記載の水素発生油泥の利用方法。
〔8〕 上記バイオマスが、廃畳の破砕物、木材チップ、木粉、おが屑、紙屑のいずれか一種以上であることを特徴とする、上記〔7〕に記載の水素発生油泥の利用方法。
上記した本発明によれば、詳細な理由は明らかではないが、水素発生油泥に混合した鉱物油系油泥が水素発生油泥の表面に皮膜を形成すること、及び/又は、水素発生油泥と鉱物油系油泥とが合体すること等により、水素発生油泥と水、酸或いは塩基等の刺激物との反応性を低下させ、水素の発生を抑制することができ、該水素発生油泥の以後の取り扱いを容易かつ安全なものに処理することができる。そのため、従来においては廃棄処分されていた廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の水素発生油泥を、資源、例えば燃料として有効に利用することが可能となる。
以下、上記した本発明に係る水素発生油泥の処理方法、及び該処理方法を施した水素発生油泥の利用方法を、詳細に説明する。
本発明に係る水素発生油泥の処理方法は、水素発生油泥に鉱物油系油泥を混合し、水素発生油泥からの水素の発生自体を抑制するものである。
以下、上記本発明が対象とする水素発生油泥、鉱物油系油泥、及びその混合割合等について詳述する。
本発明において水素発生油泥とは、水又は水素原子含有化合物の還元によって水素を発生する、液状又はスラッジ状の油泥をいう。具体的には、シリコンウエハーの切り出しに使用されたシリコン粒子を含有する廃ワイヤソーオイル、各種金属工作機械においてワークの冷却、潤滑等に使用されたアルミ粒子や金属粒子を含有する廃切削油、廃研削油、廃研磨油等が挙げられ、これらを単独でも、またこれらの二種以上を混ぜた物であってもよい。
上記した中でも、シリコン粒子を含有した廃ワイヤソーオイルは、近年の半導体デイバイスや太陽光電池等の部材として有用であるシリコンウエハーの需要の増大から、大量に発生しており、その処理が急務になっているとともに、アルカリ性、酸性の両状態において水素の発生が懸念される取り扱いの特に困難な油泥であることから、本発明において、その処理物として特に対象となる。
また、本発明において使用する鉱物油系油泥としては、原油、重油、灯油、軽油、クレオソート、シリコンオイル、流動パラフィン、ワセリン、エンジンオイル、潤滑油、ワックス、或いはこれらの廃棄物等を挙げることができ、これらの混合物であってもよい。また、これらの中でもエンジンオイル、潤滑油、ワックス、或いはこれらの廃棄物が、揮発性が低く、引火の危険性が低い観点から、本発明において好ましく使用できる。
上記水素発生油泥と上記鉱物油系油泥との混合割合は、混合する両者の種類、性状、更には混合機の種類、混合条件等によっても相違するが、概ね、水素発生油泥100重量部に対して、鉱物油系油泥100重量部以上、更に好ましくは120重量部以上混合すれば、所期の目的、即ち、水素発生油泥からの水素の発生を抑制することができる。
上記水素発生油泥に上記鉱物油系油泥を混合する方法は、特には限定されないが、例えば、混合容器内に入れられた水素発生油泥中に鉱物油系油泥を投入する方法を採用することができ、この際、空気を混合容器内に導入し、混合の初期において発生する水素を希釈した状態で行うことが好ましい。
また、混合容器には、常時水素の濃度を検知する水素検出器を設け、万一所定以上の濃度の水素が検出された場合には、混合容器内への空気導入量を増加する構成、或いは場合によっては二酸化炭素等の不活性なガスを混合容器内へ導入する構成を更に設けることが、爆発等の事故を確実に防止できるために好ましい。
本発明により処理された水素発生油泥は、詳細な理由は明らかではないが、その表面に鉱物油系油泥の皮膜が形成されること、及び/又は、水素発生油泥と鉱物油系油泥とが合体すること等により、水素発生油泥と水、酸或いは塩基等の刺激物との反応性が低下し、水素の発生が抑制された状態となる。そのため、輸送、貯留等に際して水素の発生による爆発等の危険がなく、取り扱いが容易かつ安全な水素発生油泥となる。
従って、従来においては廃棄処分されていた廃ワイヤソーオイル、廃切削油等の水素発生油泥を、資源、例えば燃料として有効に利用することが可能となる。
本発明に係る水素発生油泥の利用方法は、上記した本発明の水素発生油泥の処理方法を施こした水素発生油泥を、燃料として利用するものである。
燃料として利用するに際しては、処理を施こした水素発生油泥をそのまま、即ち、液状又はスラッジ状のまま焼成炉等に投入し、燃料として燃焼させる利用方法が挙げられる。 ここで、焼成炉としては、クリンカを製造するためのセメントキルンや、生石灰や軽量骨材を焼成するためのキルン等が挙げられる。また、水素発生油泥の焼成炉への投入方法としては、同様に液状又はスラッジ状である再生重油、廃潤滑油等の焼成炉への投入方法に準じた方法で行えばよい。
また、本発明の水素発生油泥の処理方法を施した水素発生油泥を、バイオマス等と混合し、ハンドリング性が良好な固体燃料して利用してもよい。
以下、この場合の混合するバイオマス、及びその混合量等について詳述する。
バイオマスの例としては、畳(使用済みの廃畳)の破砕物、木材チップ(例えば、建設廃木材の破砕物)、木粉、おが屑、紙屑等が挙げられる。
なお、本発明においてバイオマスとは、燃料等として利用可能な、生物由来の有機質資源(ただし、化石燃料を除く。)の総称をいう。
上記畳の破砕物の材料となる廃畳は、植物性の材料を少なくとも部分的に含むものであればよく、具体的には、稲藁を畳床の材料とする本畳のみならず、ポリスチレンフォーム板或いはインシュレーションボードを畳床の材料とする建材畳や、稲藁、ポリスチレンフォーム板を畳床の材料とする藁サンド畳も含む。上記木材チップは、最大粒径(篩の残分が5重量%以内となる目開き寸法)が5mmを超え、10mm以下である木材の破砕物又は粉砕物をいう。上記木粉とは、最大粒径(篩の残分が5重量%以内となる目開き寸法)が5mm以下である木材の粉砕物をいう。また、上記おが屑は、通常、0.5〜5mm程度の粒度分布を有するものである。上記紙屑としては、例えばシュレッダー切断物等が用いられる。
上記したバイオマスは、単独でも、また二種以上を混合して用いてもよい。また、これらのバイオマスの平均粒径(篩の残分が50重量%以内となる目開き寸法)は、0.5mm以上であることが好ましく、最大粒径(篩の残分が5重量%以内となる目開き寸法)は、10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。
水素発生油泥の吸収材として、上記バイオマスの他、有機質粉体を用いることができ、さらに品質を損なわない限度において、その他の材料を配合することもできる。
有機質粉体の例としては、トナー、重油灰、微粉炭、活性炭粉末、肉骨粉、廃プラスチック粉末、紙粉、有機蒸留残渣粉末等が挙げられる。これらの有機質粉体は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
上記有機質粉体の平均粒径は、上記バイオマスの平均粒径に対し、1/2以下、好ましくは1/3以下である。
上記各材料の配合割合は、先ず吸収材であるバイオマスと有機質粉体については、バイオマスと有機質粉体の重量比は、40/60〜95/5、好ましくは50/50〜80/20である。また、水素発生油泥の配合量は、上記バイオマスと有機質粉体の合計量100重量部に対して、30〜300重量部、好ましくは50〜200重量部、より好ましくは80〜150重量部、特に好ましくは100〜140重量部である。
混合は、上記各材料を、上記配合割合で混合機に投入して行うことができる。
この際、水素発生油泥は、本発明に係る処理を施したものであるため、水素の発生が懸念されることはなく、バイオマス等と安全に混合することができる。
また、混合機は、単に攪拌羽根が設けられているものではなく、その混合容器自体をも回転する構造のものを使用することが好ましい。これは、油泥のように粘稠性の高い材料とバイオマス等のかさ密度の低い材料とを良好に混合できるためである。このような容器自体をも回転する構造の混合機としては、アイリッヒ社製のインテンシブミキサー等が挙げられる。
上記水素発生油泥とバイオマス等との混合操作により得られた固体燃料は、水素発生油泥中の液分(油分及び水分)が混合したバイオマス等に吸収されていることから、粒子表面に液分が残留することによる表面の光沢及び付着性を有さず、貯留用のタンク内でブリッジを生じたり、或いは管路内で閉塞等を生じたりすることがなく、常に、優れたハンドリング性を示すものとなる。
また、混合した水素発生油泥には本発明の処理が施されているため、該固体燃料から水素が発生する懸念はなく、輸送、貯留等の安全性が高いものとなる。
上記に加えて、得られた固体燃料は、高いエネルギーを有する水素発生油泥と燃焼し易いバイオマス等との混合物であることから、取扱性の良好な固体燃料として好適に用いることができ、該固体燃料の利用方法としては、管路を介して空気圧送により焼成炉内に投入し、燃料として燃焼させる方法が挙げられる。
試験例
1.使用材料
(1)水素発生油泥
表1に記載した成分組成及び性状の廃ワイヤソーオイルの処理を行った。
Figure 2010227882
(2)処理材
表2に記載した性状の鉱物油系油泥(廃潤滑油)及び親水性油泥(廃インク)を用いて、上記廃ワイヤソーオイルの処理を行った。
Figure 2010227882
2.水素発生油泥の処理
混合容器に、上記廃ワイヤソーオイルと上記処理材とを、表3に示した割合でそれぞれ投入し、混合を行った。なお、混合機はイワタニ社製ミルサーを用い、回転速度300rpmで、60秒間行った。
Figure 2010227882
3.水素発生量の測定
上記廃ワイヤソーオイルの処理物に、それぞれ1規定の塩酸(1N:HCl)を表4に示した量添加し、更に60秒間混合した後、各試料中の廃ワイヤソーオイルの絶対量が同一(100mL)となる量計量し、テドラーパック内に封入した。120分間放置後、テドラーパック内のガスをシリンジで採取し、ガスクロマトグラフィーにて水素発生量を測定した。その測定結果を、表4に併記する。
Figure 2010227882
柱1)単位廃ワイヤソーオイル(1L)からの単位時間(1分)当たりの水素発生量(ml)
4.まとめ
表4から、本発明に係る水素発生油泥の処理方法、即ち、水素発生油泥である廃ワイヤソーオイルに鉱物油系油泥を混合することによって、廃ワイヤソーオイルからの水素の発生を効果的に抑制できることが分かる。また、この場合の水素発生油泥への鉱物油系油泥の混合割合は、水素発生油泥100重量部に対し、鉱物油系油泥100重量部以上が好ましいことが分かる。

Claims (8)

  1. 水素発生油泥に鉱物油系油泥を混合することを特徴とする、水素発生油泥の処理方法。
  2. 上記水素発生油泥が、水又は水素原子含有化合物の還元によって水素を発生する、液状又はスラッジ状の油泥であることを特徴とする、請求項1に記載の水素発生油泥の処理方法。
  3. 上記水素発生油泥が、シリコン粒子及び/又はアルミ粒子や金属粒子を含有した、廃ワイヤソーオイル、廃切削油、廃研削油、廃研磨油のいずれか一種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の水素発生油泥の処理方法。
  4. 上記鉱物油系油泥が原油、重油、灯油、軽油、クレオソート、シリコンオイル、流動パラフィン、ワセリン、エンジンオイル、潤滑油、ワックス、或いはこれらの廃棄物のいずれか一種以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水素発生油泥の処理方法。
  5. 上記水素発生油泥と鉱物油系油泥の混合割合が、水素発生油泥100重量部に対して、鉱物油系油泥100重量部以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の水素発生油泥の処理方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかの水素発生油泥の処理方法を施した水素発生油泥を、燃料として利用することを特徴とする、水素発生油泥の利用方法。
  7. 上記水素発生油泥を燃料として利用するに際して、バイオマスと混合することを特徴とする、請求項6に記載の水素発生油泥の利用方法。
  8. 上記バイオマスが、廃畳の破砕物、木材チップ、木粉、おが屑、紙屑のいずれか一種以上であることを特徴とする、請求項7に記載の水素発生油泥の利用方法。
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