JP2004169166A - 廃シリコンスラッジの利用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造に際して、シリコンインゴットやシリコンウエハー(以下、単にウエハーともいう。)を研削、あるいは研磨した際に大量に排出される廃シリコンスラッジの有効利用に関する。
【解決手段】半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造に際して、シリコンインゴットやシリコンウエハーを研削し、あるいは研磨する際に排出される廃シリコンスラッジを製鉄用副原料として利用する。
【解決手段】半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造に際して、シリコンインゴットやシリコンウエハーを研削し、あるいは研磨する際に排出される廃シリコンスラッジを製鉄用副原料として利用する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造において、シリコンインゴットやシリコンウエハー(以下、単にウエハーともいう。)を研削、あるいは研磨した際に大量に排出される廃シリコンスラッジの有効利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造に用いられるシリコンインゴット、シリコンウエハーを研削、研磨する際に排出される廃シリコンスラッジは、粒度が0.1 〜10μmと非常に細かく、かつシリコン以外にもイオン注入法によってウエハー表面に不純物として打ち込まれたボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素などが含まれ、又、廃シリコンスラッジを凝集沈殿させる際に添加される凝集剤としてのポリ塩化アルミニウムや硫酸ばん土が含有されている。
【0003】
更には、研削、研磨する際に、設備の温度上昇を防ぎ、潤滑性を向上させるために水が利用されているが、この水の中には油等を添加することから、廃シリコンスラッジには油等をはじめとして多くの不純物が含まれる。
このように、廃シリコンスラッジにはシリコン以外に、多くの金属元素や有機・無機物が含まれているために、これまでは、いわゆる廃スラッジとして埋め立て処理する以外になかったのが実情である。
【0004】
すなわち、シリコンインゴット、シリコンウエハーを研削、研磨する際に発生する研削、研磨屑を含む排水から水を分離・除去して生成される大量の廃スラッジは、適当な利用方法もなく、その後の処理方法に大きな問題をかかえていた。
また、排水中に含まれるシリコンインゴット、シリコンウエハーの研削、研磨屑は、その粒度が0.1 〜10μmと非常に細かく、かつ濃度も50〜300 ng/リットルと非常に低いため、分離・除去には多大の費用と時間がかかるのが実情である。
【0005】
更に、大量に発生した廃シリコンスラッジは、埋め立て処理する以外に処理方法がなく、かつ埋め立て処理するにも、埋め立て処分場の規制等があり無害化処理をして埋め立てなければならない。また、近年、埋め立て処分場がなくなりつつあるということも問題である。
このように、非常に粒度が細かく、かつシリコン以外にも多くの不純物を含む廃シリコンスラッジの処理には、多大の時間とコストがかかっていた。
【0006】
ところで、従来の廃シリコンスラッジには、ポリ塩化アルミニウムや硫酸ばん土のような凝集剤や油分が含まれているが、これらの凝集剤や油分を全く使用せずに、フィルターを用いて効率的に廃シリコンスラッジと水を分離する方法については既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−38352号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
まず、以下の各項において、シリコン製品の製造にあたって廃シリコンスラッジがどのように発生するかについて半導体の製造工程を例にとり説明する。
(1) 半導体製造の前段階として、単結晶あるいは多結晶のシリコンインゴットから厚さ数百μmのシリコン基盤を切り出す際、シリコンインゴットの切削屑として多量のシリコン切削屑が排出されるが、この切削屑が廃シリコンスラッジとなる。
(2) 半導体の製造工程は、適用する技術や装置設備、製造環境等によって、ウエハー工程、組み立て(アセンブリ)工程、検査(テスト)工程の3つに大きく分けられるが、ウエハー工程とは、単結晶のシリコンインゴットから切り出され、表面研磨された5〜8インチ径のシリコンウエハー(シリコン基盤)上に、不純物注入、薄膜形成、フォトエッチングを繰り返すことによりトランジスタや配線等を形成し、チップを完成させる工程である。また、そのウエハー工程を完了したシリコンウエハー(すなわち、ICチップ群)は、組み立て工程で個々のICチップ単位に切断、分離される。これらのウエハー工程、組み立て工程で排出される切削屑、研磨屑が廃シリコンスラッジとなる。
(3) シリコン基盤は、最初、数百μの厚みを有しているが、これは強度を持たせるための厚みである。実際に使用されるシリコンウエハーは、組み立て工程で使用されるのに有利なようにこの半分の厚みにまで研磨して薄くされるが、この研磨だけでも約半分のシリコンが廃棄される。その際に発生する研磨屑もまた廃シリコンスラッジとなる。
【0009】
これらのシリコン切削、研磨屑である廃シリコンスラッジは、粒度が0.1 〜10μmと非常に細かい。また、研削、研磨には通常、湿式法が用いられ、排水中にシリコン研削、研磨屑の粒子が分散された状態となっているが、その濃度が50〜300 ng/リットルと非常に低い。しかも不純物として、シリコンスラッジは、金属シリコン以外にシリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素などの不純物元素や、凝集剤、油等の無機、有機物が多く含まれる。
【0010】
以上のような問題から、水と分離するのに多大の費用と時間を要し、また、分離した廃シリコンスラッジの適当な再利用方法が無いために、得られた廃シリコンスラッジを埋め立て処理していたのである。本発明は、多大の時間とコストがかかっていた廃シリコンスラッジの埋め立て処理を不要とし、有効に再利用することを可能とした廃シリコンスラッジの利用方法を提供するものである。
【0011】
本発明の主たる発明は、従来、埋め立て処理されていたシリコンスラッジを、製鉄用副原料として再使用することにある。これによって、発生する廃スラッジの後処理の問題が解決されるばかりでなく、従来、廃スラッジとして廃棄していた廃棄物を、廃棄物としてでは無く、シリコンを主体とする製鉄用副原料として使用する、すなわち原材料として再使用できる点に大きな意味がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究を行った結果、以下に述べる内容を要旨とする本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シリコン製品の製造に際して、シリコンインゴットやシリコンウエハーを研削し、あるいは研磨する際に排出される廃シリコンスラッジを回収し、製鉄用副原料として利用することを特徴とする廃シリコンスラッジの利用方法に関するものである。
【0013】
ここで、前記廃シリコンスラッジは、シリコンインゴットやシリコンウエハーを研削し、あるいは研磨する際に排出される排水中に含まれるシリコンを分離・回収したものであって、かつ、含有するシリコンの粒度を0.1 〜10μmとしたものであることを好適とする。
また、以上の廃シリコンスラッジの利用方法であって、前記廃シリコンスラッジを乾燥、造粒し、その水分を1質量%以下、かつ、その金属シリコンの含有率を50質量%以上となるように調製してなることを特徴とするものである。
【0014】
なお、当該廃シリコンスラッジは、金属シリコン以外に含まれる元素が、シリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素などであって、粒度が0.1 〜10μmであることを特徴とする。
すなわち、本発明者らは、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造に際して、シリコンインゴットおよびシリコンウエハーを研削し、研磨する際に排出される廃シリコンスラッジのうち上記の特性を満足する廃シリコンスラッジが製鉄用副原料として有用であることを見出したのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造において発生する廃シリコンスラッジを工業用原料として利用することができないか鋭意研究の結果、特定の成分および含有量を有する廃シリコンスラッジが、製鉄用副原料として極めて有効であることを見出した。
【0016】
すなわち、本発明に適用する廃シリコンスラッジは、金属シリコン濃度50質量%以上(無水ベース)、含水率1質量%以下、かつ凝集剤や油分を全く含まないものであり、シリコンの粒度が0.1 〜10μmの特性を有するものとする。また、シリコン以外に含まれる微量元素は、シリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素などである。
【0017】
ここでいう金属シリコンは、いわゆるメタリックシリコン(Me. Si)のことであり、シリコンの酸化物であるシリカ(SiO2 )や炭化物である炭化珪素(SiC)とは区別される。すなわち、本発明者らは、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造時にシリコンインゴットおよびシリコンウエハーを研削・研磨する際に排出される廃シリコンスラッジのうち、これらの特性を満足する廃シリコンスラッジのみが優れた製鉄用副原料として使用可能であることを見出したのである。
【0018】
ここでいう製鉄用副原料とは、鋼を製造する転炉および電気炉で仕上げに用いられる合金材や脱酸剤、ノロ湧き防止材等のことをいう。金属シリコンを鋼に添加すると、鋼の耐熱性が高まり、少量でも鋼の強さが高まり、また、電気的特性を向上させる。更に、金属シリコンは、鋼中に存在する不純物である酸素を除いたり、また、ノロ湧きを防止したりする等の効果もある。
【0019】
従来、これらの製鉄用副原料は、フェロアロイ(合金鉄)とよばれる、シリコン、マンガン、クロムなどと鉄との合金材が用いられていた。
本発明者らは、従来用いられていたこれらのフェロアロイの代替として廃シリコンスラッジを用いて種々実験した結果、その製鉄用副原料としての効果を充分に確認することができた。
【0020】
ところで、従来の廃シリコンスラッジには、ポリ塩化アルミニウムや硫酸ばん土のような凝集剤や油分が含まれていたが、本発明においては、凝集剤や油分を全く使用せずに廃シリコンスラッジと水を分離することを前提とする。この具体的方法としては、例えば、特許文献1に開示のフィルター方式等を好適に採用することができる。
【0021】
フィルターで廃シリコンスラッジと水を分離する際に、廃シリコンスラッジの内、金属シリコン濃度50質量%以上(無水ベース)、含水率1質量%以下、金属シリコン以外に含まれる元素として、シリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素であり、シリコンスラッジの粒度が0.1 〜10μmの特性を有するものとなるように調整することで、本発明に好適な製鉄用副原料としての廃シリコンスラッジを容易に得ることができる。
【0022】
ここで、廃シリコンスラッジを製鉄用副原料として利用するには、乾燥し水分を1%質量以下にすることが重要である。水分が1質量%以上あると、作業性のうえで問題がある。
また、廃シリコンスラッジをそのまま使用しても良いが、圧縮成型等の加工処理を行い、その大きさが1mm〜30mm程度の造粒物として使用することを好適とする。
【0023】
なお、廃シリコンスラッジの金属シリコン濃度は、50質量%以上(無水ベース)とすることが好ましい。金属シリコン濃度が50質量%以下であれば、純度が低くなりすぎ、その結果、合金材や脱酸剤、ノロ湧き防止材としての機能が発現しないことになる。
ここで、金属シリコン以外に含まれる微量成分として、シリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素が廃シリコンスラッジに含まれることになるが、金属シリコン濃度が50質量%以上(無水ベース)であれば、これらの微量成分が存在していても製鉄用副原料としての機能が損なわれることは全くない。
【0024】
ところで、以上の説明は、シリコン製品として半導体や太陽電池を例にとって、シリコンインゴット、シリコンウエハーを研削、研磨する際に排出される廃シリコンスラッジを製鉄用副原料として利用することに言及したが、本発明におけるシリコン製品とはこれに限るものではなく、シリコンを素材とした各種の電気・電子デバイス用に単結晶および多結晶のシリコンインゴットからウエハーを作成する際に排出されるシリコン規格品外の塊状のシリコンにも適用されるものであることは言うまでもない。
【0025】
【実施例】
以下、実施例にて具体的に説明する。
半導体の製造において、シリコンウエハーを研削・研磨した際に排出されたシリコン研削・研磨屑を含む排水を瀘過により、廃シリコンスラッジと水とに分離した。排水中のシリコン研削・研磨屑の濃度は、150 ng/リットルで、レーザー法による粒度分布の結果、0.1 〜10μmまで分布し、平均粒子径は1.4 μmであることを確認した。
【0026】
濾過により得られた廃シリコンスラッジは、含水率が80質量%であり、この廃シリコンスラッジを窒素中において90℃で24時間乾燥し、水分を0.5 質量%とした。
この廃シリコンスラッジを分析した結果、シリコン:90.3質量%、酸素:5.2 質量%、チタン:0.02質量%、ボロン:0.02質量%、リン:0.05質量%、であり、タングステン、クロム、砒素、ガリウム、鉄は含まれていなかった。
【0027】
以上の廃シリコンスラッジを10kgの袋詰めにして製鉄現場に搬入し、これを出鋼直後の取鍋の溶鋼に80kg/charge(1chargeは約120 トン)となるように上添加した。なお、取鍋の溶鋼温度は約1620℃であった。
この結果、出鋼後のシリコン濃度は0.045 %上昇し、製鉄用の副原料であるシリコン濃度調整材としての機能を充分発揮することが確認できた。
【0028】
【発明の効果】
従来から用いられている製鉄用副原料であるフェロアロイは値段が高く、その結果として鋼の製造コストを大きく押し上げていたが、本発明によって、従来廃棄していた廃シリコンスラッジを使用することが可能となり、鋼の製造コストを大幅に低減することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造において、シリコンインゴットやシリコンウエハー(以下、単にウエハーともいう。)を研削、あるいは研磨した際に大量に排出される廃シリコンスラッジの有効利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造に用いられるシリコンインゴット、シリコンウエハーを研削、研磨する際に排出される廃シリコンスラッジは、粒度が0.1 〜10μmと非常に細かく、かつシリコン以外にもイオン注入法によってウエハー表面に不純物として打ち込まれたボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素などが含まれ、又、廃シリコンスラッジを凝集沈殿させる際に添加される凝集剤としてのポリ塩化アルミニウムや硫酸ばん土が含有されている。
【0003】
更には、研削、研磨する際に、設備の温度上昇を防ぎ、潤滑性を向上させるために水が利用されているが、この水の中には油等を添加することから、廃シリコンスラッジには油等をはじめとして多くの不純物が含まれる。
このように、廃シリコンスラッジにはシリコン以外に、多くの金属元素や有機・無機物が含まれているために、これまでは、いわゆる廃スラッジとして埋め立て処理する以外になかったのが実情である。
【0004】
すなわち、シリコンインゴット、シリコンウエハーを研削、研磨する際に発生する研削、研磨屑を含む排水から水を分離・除去して生成される大量の廃スラッジは、適当な利用方法もなく、その後の処理方法に大きな問題をかかえていた。
また、排水中に含まれるシリコンインゴット、シリコンウエハーの研削、研磨屑は、その粒度が0.1 〜10μmと非常に細かく、かつ濃度も50〜300 ng/リットルと非常に低いため、分離・除去には多大の費用と時間がかかるのが実情である。
【0005】
更に、大量に発生した廃シリコンスラッジは、埋め立て処理する以外に処理方法がなく、かつ埋め立て処理するにも、埋め立て処分場の規制等があり無害化処理をして埋め立てなければならない。また、近年、埋め立て処分場がなくなりつつあるということも問題である。
このように、非常に粒度が細かく、かつシリコン以外にも多くの不純物を含む廃シリコンスラッジの処理には、多大の時間とコストがかかっていた。
【0006】
ところで、従来の廃シリコンスラッジには、ポリ塩化アルミニウムや硫酸ばん土のような凝集剤や油分が含まれているが、これらの凝集剤や油分を全く使用せずに、フィルターを用いて効率的に廃シリコンスラッジと水を分離する方法については既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−38352号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
まず、以下の各項において、シリコン製品の製造にあたって廃シリコンスラッジがどのように発生するかについて半導体の製造工程を例にとり説明する。
(1) 半導体製造の前段階として、単結晶あるいは多結晶のシリコンインゴットから厚さ数百μmのシリコン基盤を切り出す際、シリコンインゴットの切削屑として多量のシリコン切削屑が排出されるが、この切削屑が廃シリコンスラッジとなる。
(2) 半導体の製造工程は、適用する技術や装置設備、製造環境等によって、ウエハー工程、組み立て(アセンブリ)工程、検査(テスト)工程の3つに大きく分けられるが、ウエハー工程とは、単結晶のシリコンインゴットから切り出され、表面研磨された5〜8インチ径のシリコンウエハー(シリコン基盤)上に、不純物注入、薄膜形成、フォトエッチングを繰り返すことによりトランジスタや配線等を形成し、チップを完成させる工程である。また、そのウエハー工程を完了したシリコンウエハー(すなわち、ICチップ群)は、組み立て工程で個々のICチップ単位に切断、分離される。これらのウエハー工程、組み立て工程で排出される切削屑、研磨屑が廃シリコンスラッジとなる。
(3) シリコン基盤は、最初、数百μの厚みを有しているが、これは強度を持たせるための厚みである。実際に使用されるシリコンウエハーは、組み立て工程で使用されるのに有利なようにこの半分の厚みにまで研磨して薄くされるが、この研磨だけでも約半分のシリコンが廃棄される。その際に発生する研磨屑もまた廃シリコンスラッジとなる。
【0009】
これらのシリコン切削、研磨屑である廃シリコンスラッジは、粒度が0.1 〜10μmと非常に細かい。また、研削、研磨には通常、湿式法が用いられ、排水中にシリコン研削、研磨屑の粒子が分散された状態となっているが、その濃度が50〜300 ng/リットルと非常に低い。しかも不純物として、シリコンスラッジは、金属シリコン以外にシリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素などの不純物元素や、凝集剤、油等の無機、有機物が多く含まれる。
【0010】
以上のような問題から、水と分離するのに多大の費用と時間を要し、また、分離した廃シリコンスラッジの適当な再利用方法が無いために、得られた廃シリコンスラッジを埋め立て処理していたのである。本発明は、多大の時間とコストがかかっていた廃シリコンスラッジの埋め立て処理を不要とし、有効に再利用することを可能とした廃シリコンスラッジの利用方法を提供するものである。
【0011】
本発明の主たる発明は、従来、埋め立て処理されていたシリコンスラッジを、製鉄用副原料として再使用することにある。これによって、発生する廃スラッジの後処理の問題が解決されるばかりでなく、従来、廃スラッジとして廃棄していた廃棄物を、廃棄物としてでは無く、シリコンを主体とする製鉄用副原料として使用する、すなわち原材料として再使用できる点に大きな意味がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究を行った結果、以下に述べる内容を要旨とする本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シリコン製品の製造に際して、シリコンインゴットやシリコンウエハーを研削し、あるいは研磨する際に排出される廃シリコンスラッジを回収し、製鉄用副原料として利用することを特徴とする廃シリコンスラッジの利用方法に関するものである。
【0013】
ここで、前記廃シリコンスラッジは、シリコンインゴットやシリコンウエハーを研削し、あるいは研磨する際に排出される排水中に含まれるシリコンを分離・回収したものであって、かつ、含有するシリコンの粒度を0.1 〜10μmとしたものであることを好適とする。
また、以上の廃シリコンスラッジの利用方法であって、前記廃シリコンスラッジを乾燥、造粒し、その水分を1質量%以下、かつ、その金属シリコンの含有率を50質量%以上となるように調製してなることを特徴とするものである。
【0014】
なお、当該廃シリコンスラッジは、金属シリコン以外に含まれる元素が、シリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素などであって、粒度が0.1 〜10μmであることを特徴とする。
すなわち、本発明者らは、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造に際して、シリコンインゴットおよびシリコンウエハーを研削し、研磨する際に排出される廃シリコンスラッジのうち上記の特性を満足する廃シリコンスラッジが製鉄用副原料として有用であることを見出したのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造において発生する廃シリコンスラッジを工業用原料として利用することができないか鋭意研究の結果、特定の成分および含有量を有する廃シリコンスラッジが、製鉄用副原料として極めて有効であることを見出した。
【0016】
すなわち、本発明に適用する廃シリコンスラッジは、金属シリコン濃度50質量%以上(無水ベース)、含水率1質量%以下、かつ凝集剤や油分を全く含まないものであり、シリコンの粒度が0.1 〜10μmの特性を有するものとする。また、シリコン以外に含まれる微量元素は、シリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素などである。
【0017】
ここでいう金属シリコンは、いわゆるメタリックシリコン(Me. Si)のことであり、シリコンの酸化物であるシリカ(SiO2 )や炭化物である炭化珪素(SiC)とは区別される。すなわち、本発明者らは、半導体や太陽電池などのシリコン製品の製造時にシリコンインゴットおよびシリコンウエハーを研削・研磨する際に排出される廃シリコンスラッジのうち、これらの特性を満足する廃シリコンスラッジのみが優れた製鉄用副原料として使用可能であることを見出したのである。
【0018】
ここでいう製鉄用副原料とは、鋼を製造する転炉および電気炉で仕上げに用いられる合金材や脱酸剤、ノロ湧き防止材等のことをいう。金属シリコンを鋼に添加すると、鋼の耐熱性が高まり、少量でも鋼の強さが高まり、また、電気的特性を向上させる。更に、金属シリコンは、鋼中に存在する不純物である酸素を除いたり、また、ノロ湧きを防止したりする等の効果もある。
【0019】
従来、これらの製鉄用副原料は、フェロアロイ(合金鉄)とよばれる、シリコン、マンガン、クロムなどと鉄との合金材が用いられていた。
本発明者らは、従来用いられていたこれらのフェロアロイの代替として廃シリコンスラッジを用いて種々実験した結果、その製鉄用副原料としての効果を充分に確認することができた。
【0020】
ところで、従来の廃シリコンスラッジには、ポリ塩化アルミニウムや硫酸ばん土のような凝集剤や油分が含まれていたが、本発明においては、凝集剤や油分を全く使用せずに廃シリコンスラッジと水を分離することを前提とする。この具体的方法としては、例えば、特許文献1に開示のフィルター方式等を好適に採用することができる。
【0021】
フィルターで廃シリコンスラッジと水を分離する際に、廃シリコンスラッジの内、金属シリコン濃度50質量%以上(無水ベース)、含水率1質量%以下、金属シリコン以外に含まれる元素として、シリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素であり、シリコンスラッジの粒度が0.1 〜10μmの特性を有するものとなるように調整することで、本発明に好適な製鉄用副原料としての廃シリコンスラッジを容易に得ることができる。
【0022】
ここで、廃シリコンスラッジを製鉄用副原料として利用するには、乾燥し水分を1%質量以下にすることが重要である。水分が1質量%以上あると、作業性のうえで問題がある。
また、廃シリコンスラッジをそのまま使用しても良いが、圧縮成型等の加工処理を行い、その大きさが1mm〜30mm程度の造粒物として使用することを好適とする。
【0023】
なお、廃シリコンスラッジの金属シリコン濃度は、50質量%以上(無水ベース)とすることが好ましい。金属シリコン濃度が50質量%以下であれば、純度が低くなりすぎ、その結果、合金材や脱酸剤、ノロ湧き防止材としての機能が発現しないことになる。
ここで、金属シリコン以外に含まれる微量成分として、シリカ、炭化珪素、ボロン、リン、タングステン、クロム、チタン、砒素、ガリウム、鉄、酸素が廃シリコンスラッジに含まれることになるが、金属シリコン濃度が50質量%以上(無水ベース)であれば、これらの微量成分が存在していても製鉄用副原料としての機能が損なわれることは全くない。
【0024】
ところで、以上の説明は、シリコン製品として半導体や太陽電池を例にとって、シリコンインゴット、シリコンウエハーを研削、研磨する際に排出される廃シリコンスラッジを製鉄用副原料として利用することに言及したが、本発明におけるシリコン製品とはこれに限るものではなく、シリコンを素材とした各種の電気・電子デバイス用に単結晶および多結晶のシリコンインゴットからウエハーを作成する際に排出されるシリコン規格品外の塊状のシリコンにも適用されるものであることは言うまでもない。
【0025】
【実施例】
以下、実施例にて具体的に説明する。
半導体の製造において、シリコンウエハーを研削・研磨した際に排出されたシリコン研削・研磨屑を含む排水を瀘過により、廃シリコンスラッジと水とに分離した。排水中のシリコン研削・研磨屑の濃度は、150 ng/リットルで、レーザー法による粒度分布の結果、0.1 〜10μmまで分布し、平均粒子径は1.4 μmであることを確認した。
【0026】
濾過により得られた廃シリコンスラッジは、含水率が80質量%であり、この廃シリコンスラッジを窒素中において90℃で24時間乾燥し、水分を0.5 質量%とした。
この廃シリコンスラッジを分析した結果、シリコン:90.3質量%、酸素:5.2 質量%、チタン:0.02質量%、ボロン:0.02質量%、リン:0.05質量%、であり、タングステン、クロム、砒素、ガリウム、鉄は含まれていなかった。
【0027】
以上の廃シリコンスラッジを10kgの袋詰めにして製鉄現場に搬入し、これを出鋼直後の取鍋の溶鋼に80kg/charge(1chargeは約120 トン)となるように上添加した。なお、取鍋の溶鋼温度は約1620℃であった。
この結果、出鋼後のシリコン濃度は0.045 %上昇し、製鉄用の副原料であるシリコン濃度調整材としての機能を充分発揮することが確認できた。
【0028】
【発明の効果】
従来から用いられている製鉄用副原料であるフェロアロイは値段が高く、その結果として鋼の製造コストを大きく押し上げていたが、本発明によって、従来廃棄していた廃シリコンスラッジを使用することが可能となり、鋼の製造コストを大幅に低減することができた。
Claims (3)
- シリコン製品の製造に際して、シリコンインゴットやシリコンウエハーを研削し、あるいは研磨する際に排出される廃シリコンスラッジを回収し、製鉄用副原料として利用することを特徴とする廃シリコンスラッジの利用方法。
- 前記廃シリコンスラッジは、シリコンインゴットやシリコンウエハーを研削し、あるいは研磨する際に排出される排水中に含まれるシリコンを分離・回収したものであって、かつ、含有するシリコンの粒度を0.1 〜10μmとしたものであることを特徴とする請求項1に記載の廃シリコンスラッジの利用方法。
- 前記廃シリコンスラッジを乾燥、造粒し、その水分を1質量%以下、かつ、その金属シリコンの含有率を50質量%以上となるように調製してなることを特徴とする請求項1または2に記載の廃シリコンスラッジの利用方法。
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- 2002-11-22 JP JP2002339518A patent/JP2004169166A/ja active Pending
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