JP5642406B2 - 低引火点廃液の処理方法及び固体燃料 - Google Patents

低引火点廃液の処理方法及び固体燃料 Download PDF

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Description

本発明は、低引火点廃液の処理方法に関し、特に、油性、水性を問わず、その引火点を上昇させ、低引火点廃液を燃料として安全且つ経済的に使用し得るものとする低引火点廃液の処理方法及び該処理方法によって得られた固体燃料に関するものである。
近年、原油、石炭等の燃料の価格高騰に伴い、各種代替燃料の活用への取り組みが種々行われている。特に、可燃性廃棄物を燃料として利用することは、当該廃棄物の処理と、燃料費の低減という両面に資することから、格別の意義が認められるものである。
ここで、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、エチルベンゼン、エタノール、メタノール等の低引火点成分を含む廃溶剤、廃塗料、廃インキ、廃シンナー、副生グリセリン、廃塗料蒸留残渣等の低引火点廃液は、高いエネルギーを有するため、廃棄物として焼却処分せずに、上記した如く燃料として有効利用することが期待されるが、廃溶剤等は引火点が低いことから、火災や爆発の危険性があり、防火対策、防爆対策などを行う必要があるなど、その取扱いが困難なものであった。
一方、取扱いが困難な低引火点物質の引火点を上昇させ、その取扱性を向上させる技術が種々創案されている。
例えば、特許文献1には、石油系溶剤に、フッ素系不燃溶剤(パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン等)を、3体積%を越える割合で混合し、引火点を上昇させる技術が開示されている。そして、この特許文献1には、引火点が50℃の第2石油類に属するサンプルに、パーフルオロカーボンを約4体積%溶解混合することにより引火点を75℃まで上昇でき、ハイドロフルオロカーボンを約9体積%溶解混合することにより引火点を97℃まで上昇できた実施例の開示がある。
また、特許文献2には、シクロデキストリン類などをホスト化合物として、低引火点の物質を包接化することでクラスレート化合物を作り、引火点を上昇させる技術が開示されている。そして、この特許文献2には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを用いたメタノールの包接化により、引火点を11℃から61℃まで上昇させた実施例、また、ジフェン酸ビス(ジシクロヘキシルアミド)を用いたアセトンの包接化により、引火点を−20℃から132℃まで上昇させた実施例などの開示がある。
また、特許文献3には、シール油の循環経路中において、常温のシール油中に純度の高い不活性ガスを吹き込み、油中に含有されている引火点低下物質を除去し、引火点を上昇させる技術が開示されている。そして、この特許文献3には、引火点45〜50℃のシール油を、窒素ガスの吹き込みにより76℃まで上昇させた実施例の開示がある。
特開平09−194890号公報 特開2005−126419号公報 特公昭52−004770号公報
上記した特許文献に開示された技術は、いずれも顕著な引火点の上昇効果が認められるものではあるが、その処理に他に有効な利用方法が存在する高価な化合物或いは不活性ガスを使用するものであるため、経済的な方法ではなかった。
また、低引火点廃液には、高い粘稠性を有しているものや、常温で流動性がないもの、更には固形分が沈降分離して固着しているものなどが存在するが、これらの廃液に対しては、上記した特許文献に開示された技術は、いずれもその適用が困難であったと共に、これらの廃液の輸送管内等における流動性を改善し、燃料としての取扱性を向上できるものでもなかった。
更に、低引火点廃液には、エチレン、キシレン等を主に含有し、油性を示す廃液があれば、エタノール、メタノール等を主に含有し、水性を示す廃液もあるが、上記した特許文献に開示された技術は、これらのいずれの性状の廃液に対しても区別することなく、その引火点の上昇効果が認められるものではなかった。
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑み成されたものであって、その目的は、油性、水性を問わず、その引火点を経済的に上昇できる低引火点廃液の処理方法を提供することにある。
本発明者等は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、親油性を有する油性溶媒成分と、親水性を有する水性溶媒成分との両者を含む高引火点の廃液に、低引火点廃液を混合することとすると、低引火点廃液の油性、水性の性状にかかわらず、その引火点を上昇できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕の低引火点廃液の処理方法及び固体燃料を提供するものである。
〔1〕廃エンジンオイル、廃切削油、廃研磨油、廃ワイヤーソーオイルのいずれか一種以上からなる廃油に、水道水、地下水、工業用水、廃水、廃酸性水、廃アルカリ性水のいずれか一種以上を混合し、油性溶媒成分と水性溶媒成分との容積割合が9:1〜5:5となるように調整した引火点40℃以上のベース廃液100容積%に、廃溶剤、廃塗料、廃インキ、廃シンナー、副生グリセリン、廃塗料蒸留残渣のいずれか一種以上からなる引火点21℃未満の低引火点廃液を、10〜40容積%の割合で混合することを特徴とする、低引火点廃液の処理方法。
〔2〕上記ベース廃液と低引火点廃液との混合物を、更にバイオマスと混合することを特徴とする、上記〔1〕に記載の低引火点廃液の処理方法。
〔3〕上記バイオマスが、廃畳の破砕物、稲藁の破砕物、木材チップ、木粉、おが屑、紙屑、繊維屑のいずれか一種以上であることを特徴とする、上記〔2〕に記載の低引火点廃液の処理方法。
〔4〕上記ベース廃液と低引火点廃液との混合物を更にバイオマスと混合することにより、引火点が40℃以上の固体燃料とすることを特徴とする、上記〔2〕又は〔3〕に記載の低引火点廃液の処理方法。
〔5〕上記〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の低引火点廃液の処理方法によって得られた固体燃料。
上記した本発明によれば、引火点が低いが故に火災や爆発の危険性があり、取扱いが困難であった低引火点廃液を、油性、水性を問わず、その引火点を経済的に上昇させることができる。また、得られたベース廃液と低引火点廃液との混合物を、更にバイオマスと混合することにより、更にその引火点を上昇できると共に、輸送管内や搬送機等における流動性が改善され、輸送、貯留等の安全性及び取扱性が良好な混合物に低引火点廃液を処理することができる。
そのため、従来においては燃料としての使用が困難であった廃溶剤等の低引火点廃液を、燃料として有効に利用することが可能となる。
各種模擬ベース廃液(水、エンジンオイル、水+エンジンオイル)に、エタノール(水性の模擬低引火点廃液)を種々の割合で混合した場合の、得られた模擬廃液混合物の引火点を示したグラフである。 各種模擬ベース廃液(水、エンジンオイル、水+エンジンオイル)に、キシレン(油性の模擬低引火点廃液)を種々の割合で混合した場合の、得られた模擬廃液混合物の引火点を示したグラフである。
以下、本発明に係る低引火点廃液の処理方法、及び該処理方法によって得られた固体燃料を詳細に説明する。
本発明に係る低引火点廃液の処理方法は、油性溶媒成分と水性溶媒成分の両者を含む引火点の高いベース廃液に、低引火点廃液を混合するものである。
上記本発明において処理対象としている低引火点廃液は、低引火点成分、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、エチルベンゼン、エタノール、メタノール等を含み、全体としての引火点が低い廃液である。具体的には、火災や爆発の危険性が高い引火点が21℃未満の第1石油類に属する廃液が好適な処理対象である。処理対象とする低引火点廃液は、液状のものに限らず、エマルジョン、スラリー等の状態のものも含まれる。また、エチレン、キシレン等を主に含有し、油性を示す低引火点廃液、或いは、エタノール、メタノール等を主に含有し、水性を示す低引火点廃液であっても良い。このような低引火点廃液の具体例としては、例えば、廃溶剤、廃塗料、廃インキ、廃シンナー、副生グリセリン、廃塗料蒸留残渣等が挙げられ、これらを単独でも、またこれらの二種以上を混ぜた混合物であっても良い。
また、上記本発明において用いるベース廃液は、油性溶媒成分と水性溶媒成分の両者を含む高引火点の廃液である。これによって、処理する低引火点廃液が油性、水性のいずれであっても、この両者の成分を含むベース廃液との混合によって区別なく低引火点廃液を溶解し、その引火点を上昇させることができる。ベース廃液中の油性溶媒成分としては、油、特に廃油中の油性成分を挙げることができ、水性溶媒成分としては、廃油に添加した或いは廃油に含まれていた水、低級アルコール等を挙げることができる。これらの油性溶媒成分と水性溶媒成分のベース廃液中における容積割合は、燃料価値の観点等から、9:1〜5:5が適当である。具体的には、引火点が40℃以上で、分散剤を含有したベース廃液が好適に用いることができ、このような好適なベース廃液としては、例えば、廃エンジンオイル、廃切削油、廃研磨油、廃ワイヤーソーオイル等の分散剤を含有した高引火点の廃油に、地下水、工業用水、廃水、廃低級アルコール、廃酸性水、廃アルカリ性水等を混合して油性溶媒成分と水性溶媒成分の容積割合を上記した好ましい範囲内のものに調整した廃液が挙げられる。
上記したベース廃液への処理対象である低引火点廃液の混合量は、10〜40容積%、より好ましくは20〜35容積%である。これは、該混合量が10容積%未満では、低引火点廃液の処理量が少なく、低引火点廃液の利用を促進しようとする本発明の趣旨に合致しなくなる。逆に、該混合量が40容積%を超えると、低引火点廃液の引火点の上昇効果が十分には得られない場合がある。
上記ベース廃液と低引火点廃液との混合は、上記配合割合で混合機、例えば立形攪拌機等に投入して行うことができる。
この際、空気を混合機内に導入し、低引火点廃液から揮発した低引火点成分等を爆発下限濃度未満まで希釈した状態で混合を行うことが好ましい。これは、上記したベース廃液と低引火点廃液とを混合すると、特にその混合初期の段階、即ち、混合したベース廃液に低引火点廃液が未だ十分に溶解していない段階にあっては、低引火点廃液から低引火点成分が揮発し、該低引火点成分に混合機の回転部等で発生した火花が引火し、火災や爆発を起こす危険があるためである。
そこで、空気を混合機内に導入し、揮発した低引火点成分等の濃度を爆発を起こさない濃度まで希釈させることが好ましい。具体的な空気の混合機内への導入量は、揮発する低引火点成分の量、更には混合機の容積、混合物の量等によって適宜決定されるが、無料の空気で希釈するものであることから、必要十分な量の空気を、混合機内に導入することとすれば良い。
上記したベース廃液と低引火点廃液との混合操作により得られた混合物は、低引火点廃液がベース廃液に溶解し、低引火点成分の揮発が抑えられるため、引火点が高い、具体的には、21℃以上40℃未満の引火点を有する混合物となり、輸送、貯留、更にはバイオマスとの混合の際の安全性が向上したものとなる。ここで、本発明において用いるベース廃液は、上記したように油性溶媒成分と水性溶媒成分の両者を含む廃液であるため、安価であり経済的であると共に、処理する低引火点廃液が油性、水性のいずれであっても、この両者の成分を含むベース廃液との混合によって区別なく低引火点廃液を溶解させることができ、その引火点を上昇させることができる。また、用いるベース廃液が分散剤を含有するものである場合には、混合物は高い分散性及び安定性を有するものとなり、より取扱性の良好なものとなる。
上記した本発明における処理を行った低引火点廃液、即ち、ベース廃液と低引火点廃液との混合物(以下、「廃液混合物」と言う場合もある。)は、そのままの状態で燃料として使用しても良いが、本発明においては、該廃液混合物を、更にバイオマスと混合する処理を行うことが好ましい。
上記本発明において用いるバイオマスの例としては、畳(使用済みの廃畳)の破砕物、稲藁の破砕物、木材チップ(例えば、建設廃木材の破砕物)、木粉、おが屑、紙屑、繊維屑等が挙げられる。
なお、本発明においてバイオマスとは、燃料等として利用可能な、生物由来の有機質資源(ただし、化石燃料を除く。)の総称をいう。
上記バイオマスの平均粒径(篩の残分が50質量%以内となる目開き寸法)は、0.5mm以上であることが好ましい。これは、該平均粒径が0.5mm未満では、粒子系全体が微細化するため流動性、分散性が低下し、取扱性の向上等の効果を得ることが困難となると共に、廃液混合物中の液分の吸収、担持が困難となり、引火点の更なる上昇効果が得られ難いために好ましくない。
また、上記バイオマスの最大粒径(篩の残分が5質量%以内となる目開き寸法)は、本発明に係る低引火点廃液の処理方法で得られた混合物を固体燃料として、例えばセメントキルンのバーナーで使用する場合、10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。これは、該最大粒径が10mmを超えると、セメントキルンのバーナーで使用する場合、火炎(フレーム)を形成し難く、燃料が着地した後も燃焼を継続するため、セメントクリンカーの品質を低下させるおそれがある。該最大粒径を5mm以下とすれば、着地燃焼する粒体の割合が少なくなり、燃料としての使用割合を大きくすることができるので好ましい。一方、例えばセメントキルンの仮焼炉に投入して使用する場合、スクリューコンベヤー、バケットエレベーター、ベルトコンベヤー等の機械式搬送装置にて搬送が可能であり、かつ2重のフラップダンパー、ロータリーフィーダ等の機械式投入装置によって投入が可能な必要最小限のサイズであれば良く、この場合の上記バイオマスの最大粒径は、100mm以下、好ましくは50mm以下である。
廃液混合物と混合する物質として、上記バイオマスの他、有機質粉体が好適に用いられ、更に品質を損なわない限度において、その他の材料を配合することもできる。有機質粉体の例としては、トナー、重油灰、微粉炭、活性炭粉末、肉骨粉、廃プラスチック粉末、紙粉、有機蒸留残渣粉末等が挙げられる。これらの有機質粉体は、一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
上記各材料の混合割合は、先ず吸収材であるバイオマスと有機質粉体については、有機質粉体は必ずしも配合する必要はないが、有機質粉体を配合する場合には、バイオマスと有機質粉体の質量比は、40/60〜95/5、好ましくは50/50〜80/20である。これは、該質量比が40/60未満では、バイオマスの配合量が小さいため、バイオマスの粒体の間隙を有機質粉体が埋めてしまい、混合物(固体燃料)の流動性が著しく低下することがある。逆に該質量比が95/5を超えると、有機質粉体の配合量が小さいため、混合物(固体燃料)の比重の増大等の効果を十分に得ることができない。
廃液混合物の配合量は、上記バイオマスと有機質粉体の合計量100質量部に対して、30〜300質量部、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは80〜150質量部である。これは、該配合量が30質量部未満では、廃液混合物の処理量が少なく、廃液、特に低引火点廃液の利用を促進しようとする本発明の趣旨に合致しなくなる。逆に、該配合量が300質量部を超えると、廃液混合物中の液分、特に低引火点成分を混合したバイオマスによって吸収、担持しきれず、引火点の上昇効果が得られない場合があり、また、混合物(固体燃料)の粒子表面に油が残留して、粒子表面に光沢及び付着性が生じ、輸送管内や搬送機等における流動性が低下する。
上記廃液混合物とバイオマス等の混合は、上記各材料を、上記配合割合で混合機に投入して行うことができる。混合機は特に限定しないが、例えば、単に攪拌羽根が設けられているものではなく、その混合容器自体をも回転する構造のものを使用することが好ましい。これは、廃油のように粘稠性の高い材料と、バイオマス等のかさ密度の低い材料とを良好に混合できるためである。このような容器自体をも回転する構造の混合機としては、アイリッヒ社製のインテンシブミキサー等が挙げられる。
上記廃液混合物とバイオマス等との混合操作により得られた混合物は、廃液中の液分、特に低引火点成分がバイオマス等に吸収、担持されていることから、低引火点成分の揮発が更に抑えられ、引火点が高い、具体的には、40℃以上の引火点を有する混合物となり、輸送、貯留等の安全性が高いものとなる。
上記に加えて、得られた混合物は、高いエネルギーを有する廃油と燃焼し易いバイオマス等との混合物であると共に、輸送管や搬送機等を用いた輸送が可能な流動性も良好なものであることから、取扱性の良好な固体燃料として好適に用いることができる。
上記した本発明に係る低引火点廃液の処理方法によって得られた混合物(固体燃料)の使用方法の一例としては、管路を介して焼成炉内に該混合物を投入し、燃料として燃焼させる使用方法が挙げられる。また、低引火点廃液とベース廃液等との混合時に発生した低引火点成分を含む可燃性ガスは、焼成炉の燃焼用空気に混合することでその熱量を有効利用することが好ましい。
ここで、焼成炉としては、クリンカを製造するためのセメントキルンや仮焼炉、更には生石灰や軽量骨材を焼成するためのキルン等が挙げられる。
試験例
〔1〕予備試験
模擬ベース廃液として、水、エンジンオイル、水+エンジンオイル(容積割合3:7混合)の3種類を用意し、それぞれに対して模擬低引火点廃液(エタノール、キシレン)の混合テストを行った。
その結果を、図1、図2に示した。
なお、引火点の測定は、セタ密閉式引火点試験器を用いて行った。
図1より、エタノール(引火点:13℃、水性の模擬低引火点廃液)は、水、及び水+エンジンオイル(油性溶媒成分と水性溶媒成分の両者を含む模擬ベース廃液)と混合することにより引火点を上昇させることができるが、エンジンオイル(油性溶媒成分のみの模擬ベース廃液)と混合しても引火点を上昇させることはできないことが分かる。また、混合物の引火点を例えば30℃以上にするには、水+エンジンオイルに対してエタノールを約22容積%まで混同可能であることが分かる。
一方、図2より、キシレン(引火点:28℃、油性の模擬低引火点廃液)は、エンジンオイル、及び水+エンジンオイル(油性溶媒成分と水性溶媒成分の両者を含む模擬ベース廃液)と混合することにより引火点を上昇させることができるが、水(水性溶媒成分のみの模擬ベース廃液)と混合しても引火点を上昇させることはできないことが分かる。また、混合物の引火点を例えば35℃以上にするには、水+エンジンオイルに対してキシレンを約26容積%まで混同可能であることが分かる。
上記から、水+エンジンオイル(油性溶媒成分と水性溶媒成分の両者を含む模擬ベース廃液)であれば、エタノール、キシレンの両者(水性、油性の両者の模擬低引火点廃液)に対して、引火点を上昇させることが可能であることが分かった。
〔2〕試験例
1.使用材料
(1)低引火点廃液
種々の低引火点廃液(実廃液A,B及び模擬廃液C,D)の処理を行った。
ここで、実廃液A,Bは、いずれも廃棄物業者から引き受けた廃液で、油性であるか水性であるか不明であった。また、その引火点をセタ密閉式引火点試験器を用いて測定したところ、実廃液Aは14℃、実廃液Bは17℃であった。また、模擬廃液Cとして、エタノール(一級試薬、引火点13℃)を使用し、模擬廃液Dとして、キシレン(一級試薬、引火点28℃)を使用した。
(2)ベース廃液
廃棄物業者から引き受けた廃エンジンオイルに水を混合し、ベース廃液を調整した。このベース廃液の油性溶媒成分と水性溶媒成分の容積割合は、約7:3であった。また引火点は100℃以上であった。
(3)バイオマス
木材チップを用いた。木材チップは、次の方法にて水分調整を行った。
平均粒径が20mmの木材チップを、105℃で3日間乾燥後、霧吹きで水分を約30%に調整し、それをポリエチレン袋に密封して24時間以上なじませたものを用いた。
2.低引火点廃液の処理
上記ベース廃液に、上記各種の低引火点廃液をそれぞれ表1に示した割合で混合した。この廃液混合物の引火点を、それぞれ混合直後にセタ密閉式引火点試験器を用いて測定した。
その測定結果を表1に記載する。
また、引火点測定直後の上記廃液混合物を、上記調整した木材チップが入れられた容器に、バイオマス対廃液混合物が約2対1の質量割合になるように投入し、ハンドミキサーで混合を行った。なお、廃液混合物は、ベース廃液中の分散剤の作用によって乳化されており、バイオマスと混合する以前に二層分離することはなかった。
得られた混合物(固体燃料)について、それぞれ引火点をセタ密閉式引火点試験器を用いて測定した。その測定結果を表1に併記する。
Figure 0005642406
3.まとめ
表1から、本発明に係る低引火点廃液の処理方法によって、低引火点廃液の油性、水性の性状にかかわらず、その引火点を上昇できることが分かる。この試験例で示された効果は、当然に実機にスケールアップした場合にも有効と考えられ、このことから本発明によって、輸送、貯留等の安全性及び取扱性が良好な混合物に低引火点廃液を処理することができることが分かった。

Claims (5)

  1. 廃エンジンオイル、廃切削油、廃研磨油、廃ワイヤーソーオイルのいずれか一種以上からなる廃油に、水道水、地下水、工業用水、廃水、廃酸性水、廃アルカリ性水のいずれか一種以上を混合し、油性溶媒成分と水性溶媒成分との容積割合が9:1〜5:5となるように調整した引火点40℃以上のベース廃液100容積%に、廃溶剤、廃塗料、廃インキ、廃シンナー、副生グリセリン、廃塗料蒸留残渣のいずれか一種以上からなる引火点21℃未満の低引火点廃液を、10〜40容積%の割合で混合することを特徴とする、低引火点廃液の処理方法。
  2. 上記ベース廃液と低引火点廃液との混合物を、更にバイオマスと混合することを特徴とする、請求項1に記載の低引火点廃液の処理方法。
  3. 上記バイオマスが、廃畳の破砕物、稲藁の破砕物、木材チップ、木粉、おが屑、紙屑、繊維屑のいずれか一種以上であることを特徴とする、請求項に記載の低引火点廃液の処理方法。
  4. 上記ベース廃液と低引火点廃液との混合物を更にバイオマスと混合することにより、引火点が40℃以上の固体燃料とすることを特徴とする、請求項2又は3に記載の低引火点廃液の処理方法。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載の低引火点廃液の処理方法によって得られた固体燃料
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