JP2010227327A - 腕時計用外装部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】腕時計には腕装身具として外観美や高級質感が強く求められるが、チタン製またはチタン合金製の腕時計用外装部材においては、一様に滑らかで美しい鏡面に仕上げることが難しいという課題があった。本発明は以上の課題を解決し、一様に滑らかで美しい外観で高級質感のある鏡面を有するチタン製またはチタン合金製の腕時計用外装部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】研磨加工を必要とする被研磨面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得る工程と、硬化層の表面を研磨して硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層を形成する工程とを有する製造方法を採用して、硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層の厚みが10μmから250μmであることを特徴とする腕時計用外装部材を製造する。硬化層を得るための圧縮残留応力付与手段には、ショットピーニング加工を採用する。
【選択図】図4

Description

本発明は、チタン製またはチタン合金製の腕時計用外装部材、およびそれらの製造方法に関するものである。
腕時計に要求される基本的な性能は、正確な時刻を表示するということであることは言うまでもない。しかし、その他、一般的に、腕時計には装飾品としての外観の美しさや高級質感を兼ね備えることが求められている。
腕時計は時刻を知るための道具であると同時に装身具でもあって、外観の美しさや高級質感は無くてはならないものであり、これによって製品価値が決まると言っても過言ではない。腕時計は単に時刻を知るための道具ではなく、ファッション衣料品と同様に自己を表現したり主張したりするために、愛着を持って身に付けるアクセサリーでもあるので、その外観の美しさや高級質感にこだわりを持つ消費者は多く、外観の美しさや高級質感に対してはより良いものを求める強い要求が不変的にある。
腕時計の外観を構成する腕時計用外装部材としては、側や裏蓋やガラス縁で構成されて時計駆動体を内蔵するケース、時分秒の時刻目盛を設けた文字板、時刻目盛を指し示す時針や分針や秒針などの指針、文字板や指針を保護する風防ガラス、時計を腕に装着するためのバンドなどがある。これらの腕時計用外装部材は、時計の外観質感の良し悪しを決定付けるものであるので、その外観には当然美しさや高級質感が求められる。
そのために、腕時計用のケースや文字板、指針、風防ガラス、バンドなどの腕時計用外装部材に対しては、外観美と高級質感とを付与する様々な創意工夫が提案されてきた。
チタンからなる腕時計用外装部材に関しては、チタン本来の銀色の光沢ある表面にして、しかも使用状態において細かな擦り傷や打痕が付き難いものにし、表面の鏡面光沢の美しさを長時間保つことができるものにするための表面処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に提案されているチタン製腕時計用外装部材の表面処理方法は、表面に炭化チタンおよび炭素固溶チタンからなる浸炭層を形成し、その浸炭層を研磨したものである。
なお、特許文献1に提案されているチタン製腕時計用外装部材の表面処理方法においては、チタンをプラズマ浸炭処理する前に上述の研磨処理により鏡面を形成しておけば、後の工程で銀色の光沢面に研磨する工程を容易に行うことができるので表面処理の作業性が向上するとされている。
チタンをプラズマ浸炭処理する前に研磨処理を行って、あらかじめ鏡面を形成しておけば後の研磨工程の作業負担が軽減されるので、後の研磨工程において銀色の光沢面に研磨することが容易になり、作業性が向上するのは確かである。
しかし、ここで、チタンをプラズマ浸炭処理によって表面を改質する前に、あらかじめ研磨処理して鏡面を形成しておくことは非常に難しい。表面改質をしていないチタン素材の表面を鏡面仕上げ研磨することは非常に難しいことである。
一般に、チタンは鏡面仕上げが難しい材料とされている。これは、機械研磨では、加工ひずみを生じやすいという性質と、他材との化学的親和力が大きいという性質が相乗し、研磨用砥粒との融着により、チタン表面層が毟り取られ、一様に平滑な面を得ることが難しいためである。
また、チタンは難削加工材料の代表的な金属材料として知られているが、チタンは軟質で粘っこいという機械的性質があるために加工工具と融着し易く、チタンの被加工表面にはツールマークの他に毟れ痕が生じてしまうので、平滑な面を得ることが難しい。
チタン素材の表面を鏡面仕上げ研磨することが難しいことであることは、チタン加工業者には一般的に知られている事実である。
腕時計用外装部材は、腕時計の外観質感の良し悪しを決定付けるものであり、その外観には美しさや高級質感が求められる。それ故に、チタンからなる腕時計用外装部材に対して、特許文献1には、表面に炭化チタンおよび炭素固溶チタンからなる浸炭層を形成しその浸炭層を研磨する表面処理方法が提案されている。
但し、特許文献1の表面処理方法においては、チタンをプラズマ浸炭処理する前に、あらかじめ鏡面研磨処理を行っておくことが、作業性が向上するので、好ましいとされている。
しかしながら、プラズマ浸炭処理で表面改質する前のチタン素材の表面を鏡面仕上げ研磨することは、上述したように非常に難しいことである。
以上のように、特許文献1で提案されている表面処理方法においては、プラズマ浸炭処理で表面改質する前のチタン素材の表面を鏡面仕上げ研磨することの難しさを伴っている。
特許第2941260号公報(第1頁)
チタンは、機械研磨では加工ひずみを生じやすいという性質と他材との化学的親和力が大きいという性質が相乗し、研磨用砥粒との融着によって表面層がむしりとられ、一様に平滑な面を得ることがむずかしいという問題点があった。すなわち、チタン素材の表面を鏡面仕上げ研磨することは困難であるという問題点があった。
特許文献1で提案されている表面処理方法においては、プラズマ浸炭処理で表面改質する前のチタン素材の表面を鏡面仕上げ研磨することの難しさを伴っているという問題点があった。
以上のような問題点から、装身具として外観美や高級質感が強く求められる腕時計のチタン製またはチタン合金製の外装部材においては、一様に滑らかで美しい鏡面を有するものが得難いという課題があった。
そこで、本発明は以上のような課題を解決しようとするものであり、一様に滑らかで美しい外観で高級質感のある鏡面を有するチタン製またはチタン合金製の腕時計用外装部材を提供することを目的とする。
なお、ここで、腕時計用外装部材とは、腕時計用外装ケースを構成する側や裏蓋やガラス縁、または腕時計を腕に装着するための装着バンドなどのことである。
また、本発明は、一様に滑らかで美しい外観で高級質感のある鏡面を有するチタン製またはチタン合金製の腕時計用外装部材の製造方法を提供することも目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の腕時計用外装部材は、チタンまたはチタン合金からなる腕時計用外装部材であって、圧縮残留応力が付与された硬化表面層を有することを特徴とする。
また、本発明の腕時計用外装部材は、硬化表面層の厚みが、10μm以上250μm以下の範囲にあることが好ましい。
更に、本発明の腕時計用外装部材は、ショットピーニング加工によって、圧縮残留応力を付与することがなお良い。
上記目的を達成するため、本発明の腕時計用外装部材の製造方法は、チタンまたはチタン合金からなる腕時計用外装部材の製造方法であって、研磨加工を必要とする被研磨面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得る圧縮残留応力付与工程と、硬化層の表面を研磨して圧縮残留応力が付与された硬化表面層を形成する研磨加工工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の腕時計用外装部材の製造方法は、硬化表面層の厚みが、10μm以上250μm以下の範囲にあることが好ましい。
更に、本発明の腕時計用外装部材の製造方法は、ショットピーニング加工によって、圧縮残留応力を付与することがなお良い。
以上のように、本発明によって、チタンまたはチタン合金において一様に平滑な美しい鏡面が得難いという課題を解決して、チタンやチタン合金が毟り取られることがなく、一様に滑らかで美しい外観で高級質感のある鏡面を有するチタン製またはチタン合金製の腕時計用外装部材が提供された。同時に、一様に滑らかで美しい外観で高級質感のある鏡面を有するチタン製またはチタン合金製の腕時計用外装部材の製造方法が提供された。
本発明の腕時計用外装部材における圧縮残留応力付与工程前の切削ブランクの説明図である。 本発明の腕時計用外装部材の製造方法における切削ブランクを形成する前工程のフローチャートである。 本発明の腕時計用外装部材の製造方法のフローチャートである。 本発明の腕時計用外装部材の一実施例であるチタン製の側の説明図であり、(a)は側の斜視図であり、(b)は(a)中のX−Z平面における足部の断面図である。
チタンまたはチタン合金からなる腕時計用外装部材およびその製造方法について説明する。
先ずは、種々の工程から編成される前工程で形作られたチタンまたはチタン合金からなる腕時計用外装部材ブランクの研磨加工を必要とする被研磨面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得る。
硬化層を得るための圧縮残留応力の付与は、ショットピーニング加工によって行う。
続けて、硬化層を砥石ホイールやバフホイールで研磨する。この研磨の際に、硬化層厚みの全てを研磨して除去するのではなく、適切な厚みの硬化層を残して研磨を仕上げて、硬化層の研磨残し層で硬化表面層を形成する。
以上のように、前工程で形作られたチタンまたはチタン合金からなる腕時計用外装部材ブランクの研磨加工を必要とする被研磨面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得てから、硬化層の表面を研磨し、硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層を形成する方法により、腕時計用外装部材を製造する。
以下に実施例を挙げて、本発明の一実施の形態を具体的に説明する。
以下に、図面を用いて本発明による一実施例を説明する。本実施例は本発明によって、チタン製腕時計用外装ケースを構成する一部材である側を一様に滑らかで美しい外観で高級質感のある鏡面に研磨加工して製造された腕時計用外装部材の一実施例である。腕時計用外装ケースを構成する部材には側や裏蓋やガラス縁などがあるが、本実施例は側についての一実施例である。
側はチタン製腕時計用外装ケースを構成する一部材であるので、その材質はチタンである。具体的には、JIS2種のチタンからなるものである。
図1は本実施例において、本発明によって、一様に滑らかな美しい外観で高級質感のある鏡面に研磨加工すべき切削ブランク110である。本発明の腕時計用外装部材の製造方法における圧縮残留付与工程前の状態の側であって、種々の工程から編成される前工程によって形成している。
図1に示した切削ブランク110の構造を簡単に説明しておくと、切削ブランク110は胴部110aと足部110bから成り立っている。胴部110aは時計駆動体(図示しない)を収納する部分であり、円筒形状をしており、下部および上部が開口している。上部の開口は、腕時計用ケースを組み立てる際に、ガラス縁および風防ガラスが取り付けられ、後に閉口することになる。下部の開口は、腕時計を完成体に組み立てる際、胴部110a内に時計駆動体を納めた後に、裏蓋が取り付けられて閉口することになる。また、胴部110aには、腕時計完成体となった際に、胴部110a内に納めた時計駆動体を胴部110aの外側から操作するための巻き芯やプッシュボタンの軸を通す為のパイプを嵌めこむパイプ穴111が設けてある。足部110bには、バネ棒を用いて装着バンドを取り付けるためのバネ棒穴112が設けてある。
本発明による腕時計用外装部材の製造方法における圧縮残留付与工程を実施する前に、本実施例の切削ブランク110は、図2に示す前工程を経て、圧縮残留付与工程に至る。図2は、本発明による腕時計用外装部材の製造方法における切削ブランク110を得るための前工程を示すフローチャートである。
本発明による腕時計用外装部材の製造方法における切削ブランク110が、前もって経て来る前工程について、図2を基に以下に説明する。
一番目は材料取り工程210である。材料取り工程210では、チタン製長尺丸棒材を旋盤で突っ切り加工するなどして、チタン製長尺丸棒材からチタン材料211を切り出して得る。なお、この時、チタン製長尺丸棒材の直径寸法や切り出し長さ寸法については、次の型打ち成形工程で成形し易い寸法を考慮し、なおかつチタン材料211の体積は切削ブランク110の体積よりも大きくなるように設定している。
二番目は型打ち成形工程220である。型打ち成形工程220では、プレス装置にセッティングした成形金型でチタン材料211を熱間鍛造して、型打ちブランク221を得る。なお、一番目の材料取り工程210において、チタン材料211の体積は切削ブランク110の体積よりも大きく設定しているので、型打ちブランク221の外周部には余肉221aが生じている。また、この段階においては、後に胴部110aの内側開口となる部分221bはまだ開口させておらず、材料肉厚を薄くした状態で残している。
三番目は型抜き成形工程230である。型抜き成形工程230では、プレス装置にセッティングした抜き金型で型打ちブランク221の余肉221aと胴部110aの内側開口となる部分221bとを抜き落として、型抜きブランク231を得る。
四番目は化学研磨工程240である。二番目の型打ち成形工程220において熱間鍛造したことによって、型抜きブランク231の成形面には酸化スケール層が形成されているが、化学研磨工程240では、組成や温度を管理した化学研磨液に型抜きブランク231を浸漬して、型抜きブランク231の成形面に形成されている酸化スケール層を溶解して除去し、化研ブランク241を得る。
五番目は切削加工工程250である。切削加工工程250では、側が側以外のケース構成部材と嵌合関係にある要所の寸法を切削加工によって必要な寸法精度に仕上げたり、型打ち成形工程220や型抜き成形工程230では加工不可能な穴あけ加工を施したりする。例えば、図1に示した切削ブランク110において、装着バンド(図示しない)と嵌合する二組の対になった足部110bの間隔寸法出しや、時計駆動体を納める胴部110aの内径寸法出し、ガラス縁との嵌合部寸法出し、裏蓋との嵌合部寸法出し、パイプを嵌めこむパイプ穴111の穴あけ加工、装着バンドを取り付けるためにバネ棒の先端を差し込むバネ棒穴112の穴あけ加工等である。切削加工工程250では、寸法精度が必要な要所の切削加工を施して、切削ブランク110を得る。
以上に説明したように、図1に示した本実施例の切削ブランク110は、圧縮残留付与工程前に、図2に示した材料取り工程210、型打ち成形工程220、型抜き成形工程230、化学研磨工程240、切削加工工程250から成る前工程によって形成している。
次に、上述の前工程で得た切削加工ブランク110の表面を圧縮残留付与工程および研磨工工程によって、一様に滑らかな美しい外観で高級質感のある鏡面に研磨加工する方法を図3に基づいて以下に説明する。図3には、上述の前工程で得た切削加工ブランク110の表面を本発明の腕時計用外装部材の製造方法で、一様に滑らかな美しい外観で高級質感のある鏡面に研磨加工する方法のフローチャートを示す。
本発明の腕時計用外装部材の製造方法は、研磨加工を必要とする被研磨面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得る工程と、硬化層の表面を研磨して硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層を形成する工程とを有することを特徴とする。したがって、本実施例においては、先ずは、研磨加工を必要とする切削加工ブランク110の表面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得る圧縮残留応力付与工程310を行う。
本実施例における圧縮残留応力付与工程310における圧縮残留応力付与手段としては、ショットピーニング加工を切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面に対して施す。
ショットピーニング加工とは、空気力や機械力で加速した金属やガラスやセラミックスの小球粒子を被加工物表面に打ち付け投射する作業であって、小球粒子のピーニング(槌打ち)作用によって被加工物表面に塑性変形を起こさせ、均一な圧縮残留応力を持った硬化層を作る効果がある。
圧縮残留応力付与工程310で実施するショットピーニング加工を具体的に説明すると、圧縮空気圧力で小球粒子をエアノズルから投射するショットピーニング加工装置を用いて、エアノズル先端から150mmの距離に設置した切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面に向けて、平均粒径50μmのスチール製小球粒子を5Kgf/m2の空気圧力で 投射する。
なお、この時、切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面全体に対して、小球粒子をまんべんなく均一に投射することが重要である。そのためには、エアノズル先端と切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面との間隔を一定に保ってエアノズルを動かし、切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面上で投射ビームを走査させる。投射ビームを切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面上で走査する方法としては、エアノズルを動かさず、切削加工ブランク110を動かしても構わない。要は、エアノズルと切削加工ブランク110との相対位置関係を変えながら、切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面上でまんべんなく均一に投射ビームを走査して、切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面全体に対し、小球粒子をまんべんなく均一に投射することが重要である。
本実施例においては、エアノズルを動かす方法で、切削加工ブランク110の研磨加工を要する表面全体に対して小球粒子をまんべんなく均一に投射したが、カバレージ条件が300%になるようにエアノズルを動かす移動速度と投射時間とを調節している。
以上のように本実施例の圧縮残留応力付与工程310では、圧縮残留応力の付与をショットピーニング加工によって行うため、前述したように、被加工物表面に塑性変形を起こさせて、均一な圧縮残留応力を持った硬化層を作る効果がある。
すなわち、圧縮残留応力の付与によって、切削加工ブランク110が本来有するチタン素材硬度以上に硬い硬化層を切削加工ブランク110の表面に形成できる。
この硬化層は素材硬度以上の硬度に改質されていることによって、チタン素材が有する軟質で粘っこいという機械的性質の改善もなされているので、後に切削加工ブランク110を研磨する際には研磨用砥粒とチタン素材との融着を防止し、被研磨面が毟り取られることを防止する効果を発揮することになる。
なお、本実施例の上述したショットピーニング加工条件によれば、切削加工ブランク110の表面に、深さ方向に厚みが300μmの硬化層が形成される。
本発明の腕時計用外装部材の製造方法は、研磨加工を必要とする被研磨面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得る工程と、硬化層の表面を研磨して硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層を形成する工程とを有することを特徴とする。したがって、本実施例において圧縮残留応力付与工程310に続いては、切削加工ブランク110の表面に形成した硬化層の表面を研磨して硬化層の研磨残し層からなる硬化表面層を形成する研磨加工工程3
20を行う。
研磨加工工程320は、整面研削工程321、粗バフ研磨工程322、中バフ研磨工程323、仕上げバフ研磨工程324の四段階に細分される。
整面研削工程321では、弾性体砥石ホイールを用いて、切削加工ブランク110の表面に形成した硬化層の表面を研削する。
整面研削工程321を実施する前段階においては、切削加工ブランク110に硬化層が設けられているが、その表面状態は圧縮残留応力付与工程310のショットピーニング加工によって面荒れが生じており、直ぐにバフ研磨をかける状態にはない。バフ研磨をかけられない訳ではないが、バフ研磨作業の負荷が大きくなってしまう。よって、整面研削工程321では、圧縮残留応力付与工程310のショットピーニング加工による面荒れを除去して、切削加工ブランク110に形成した硬化層の表面をバフ研磨に適した状態に整えることを行う。
粗バフ研磨工程322では、整面研削工程321においてバフ研磨に適した状態に整えた切削加工ブランク110に形成した硬化層の表面をバフ研磨する。ここで使用するバフ研磨剤に含まれる砥粒は、整面研削工程321で使用した弾性体砥石ホイールに含まれている砥粒よりも粒径が細かいものとする。また、ここで使用するバフ研磨ホイールは、整面研削工程321で使用した弾性体砥石ホイールよりも軟らかく柔軟性のあるものとする。粗バフ研磨工程322では、整面研削工程321を終えた段階よりも表面粗さを小さくして、鏡面性を高める。
中バフ研磨工程323では、粗バフ研磨工程322を終えた段階よりも表面粗さを更に小さくする。ここで使用するバフ研磨剤は、粗バフ研磨工程322で使用したバフ研磨剤よりも砥粒径が細かいものとする。また、ここで使用するバフ研磨ホイールは、粗バフ研磨工程322で使用したバフ研磨ホイールよりも軟らかく柔軟性のあるものとする。中バフ研磨工程323では、粗バフ研磨工程322を終えた段階よりも更に表面粗さを小さくして、更に鏡面性を高める。
仕上げバフ研磨工程324では、中バフ研磨工程323を終えた段階よりも表面粗さを更に小さくする。ここで使用するバフ研磨剤は、中バフ研磨工程323で使用したバフ研磨剤よりも砥粒径が細かいものとする。また、ここで使用するバフ研磨ホイールは、中バフ研磨工程323で使用したバフ研磨ホイールよりも軟らかく柔軟性のあるものとする。仕上げバフ研磨工程324では、中バフ研磨工程323を終えた段階よりも更に表面粗さを小さくして、更に鏡面性を高めた一様に滑らかな鏡面に仕上げる。
以上のように本実施例の研磨加工工程320では、研磨加工が必要な切削加工ブランク110の表面を整面研削工程321、粗バフ研磨工程322、中バフ研磨工程323、仕上げバフ研磨工程324の四段階の工程で、弾性体砥石ホイールや各種バフホイールや各種バフ研磨剤を使って、徐々に表面粗さを小さくしていき、最終的には一様に滑らかな鏡面に仕上げる。なお、この時、切削加工ブランク110の表面には、圧縮残留応力付与工程310におけるショットピーニング加工による圧縮残留応力の付与によって硬化層が形成されていて、チタン素材以上の硬度に硬くなっていて、チタン素材の軟質で粘っこいという機械的性質が改質されている。
この表面改質作用によって、研磨用砥粒とチタン素材との融着が抑制されて、チタン素材が毟り取られることが防止される。
なお、研磨加工工程320においては、圧縮残留応力付与工程310で切削加工ブランク110の表面に形成した深さ方向の厚みが300μmの硬化層全てを研磨除去せずに、適度な厚みの硬化層を残した状態で研磨を仕上げ、硬化層を研磨し残した層(硬化層の研磨残し層)によって硬化表面層を形成する。
硬化層を研磨し残しする層(硬化層の研磨残し層)の下限厚み、すなわち、硬化表面層の厚みは、10μm以上であることが好ましい。その理由は、硬化表面層の厚みが、10μmよりも小さくなる程まで研磨を進行させると、チタン素材が毟り取られる現象が現れて、一様に滑らかな鏡面には仕上げられなくなってしまうからである。
圧縮残留応力付与工程310において切削加工ブランク110に形成した硬化層は、圧縮残留応力の付与によって形成したものであり、圧縮残留応力は表面で最も高くて表面が最も硬く改質されているが、表面から深い部分になるにつれて圧縮残留応力が低くなり、硬さも低下する。したがって、研磨が進行して、表面から深い部分になるにつれて、チタン素材が毟り取られ易くなるので、適切な厚みで硬化層を研磨し残しする必要がある。したがって、その硬化層を研磨し残しする下限厚み、すなわち、硬化表面層は上述の10μm以上が好ましい。
また、研磨加工工程320において、整面研削工程321、粗バフ研磨工程322、中バフ研磨工程323、仕上げバフ研磨工程324の四段階の工程によって、徐々に表面粗さを小さくしていって、最終的に一様に滑らかな鏡面に仕上げるためには最小限50μmの研磨取り代が必要である。一方、圧縮残留応力付与工程310のショットピーニング加工で得られる硬化層の厚みは、上述したように300μmである。よって、これらの関係から、硬化層を研磨し残しする層(硬化層の研磨残し層)の上限厚み、すなわち、硬化表面層の厚みは、250μm以下が好ましい。
したがって、本発明の腕時計用外装部材は、圧縮残留応力の付与によって得た硬化層の表面を研磨し、硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層を有することを特徴とするが、硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層の厚みは10μm以上250μm以下の範囲が好ましく、一様に滑らかな美しい外観で高級質感のある鏡面を呈することになる。
以上に説明したように、本実施例では、一様に滑らかな美しい外観で高級質感のある鏡面を有するチタン製の側(腕時計用外装ケースを構成する一部材)を得ることができた。
図4に、本発明の腕時計用外装部材の実施例であるチタン製の側410を示す。図4(a)は、チタン製の側410の斜視図である。図4(b)は、図4(a)中のX−Z平面における足部410aの断面図である。
側410の表面部には、図4(b)に示したように、圧縮残留応力の付与によって得た硬化層の表面を研磨して、硬化層の研磨残し層で形成した硬化表面層411が存在する。硬化層の研磨残し層で形成した硬化表面層411の厚みは、10μm以上250μm以下の範囲にある。そして、硬化表面層411で構成された側410の表面は、毟れ痕の発生が無く、一様に滑らかな美しい外観で高級質感のある鏡面状態となっている。
なお、本実施例では研磨加工が必要な全表面を鏡面仕上げにした側を得たが、本発明の腕時計用外装部材の製造方法によって得られる側は全表面が鏡面仕上げに限られる訳ではない。腕時計用外装ケースのデザインに応じては、全表面を鏡面に仕上げた後に、必要部分に粗めの研磨砥粒を含む研磨工具を擦り付けて髪の毛のように細長い筋目を入れたヘアライン目付け面にしたり、砥粒噴射加工で梨地艶消し面にしたりして、鏡面とヘアライン目付け面あるいは梨地艶消し面とが混在した表面を呈する側に仕上げることも可能である
なお、ヘアライン目付け面や梨地艶消し面を設ける場合において、事前にその下地面を本発明による腕時計用外装部材の製造方法によって一様に滑らかな鏡面にしておくことは、むらが無くて一様な美しいヘアライン目付け面や梨地艶消し面を得るためにも有効な手段である。
また、本実施例においては全表面を鏡面に研磨加工仕上げした側を得たが、本発明の腕時計用外装部材の製造方法で研磨した鏡面上に、イオンプレーティング手法などにより被覆層を設けても構わない。腕時計用外装ケースの色調デザインに応じては、本発明の腕時計用外装部材の製造方法により設けた鏡面上に、チタン素材よりも明るい銀色または金色などの被覆層を設けるなどしても構わない。
更に、本実施例においてはチタン製の腕時計用外装ケースを構成する一部材であるチタン製の側について説明したが、チタンの鏡面研磨だけに適応可能な訳ではない。本発明の腕時計用外装部材およびその製造方法は、チタン合金にも適している。
また更に、本実施例においては腕時計の外装ケースを構成する一部材である側について説明したが、外装ケースを構成する部材としては裏蓋やガラス縁などもある。本発明の腕時計用外装部材は、製造する部材の形状や名称によって適応が限定される訳ではなく、側の他に外装ケースを構成する裏蓋やガラス縁などに対しても適応可能である。
腕時計用外装部材としては外装ケースを構成する部材の他に装着バンドを構成する部材もあるが、本発明の腕時計用外装部材はそれらへの適応も可能である。
以上のように、本発明の腕時計用外装部材およびその製造方法では、研磨加工を必要とする被研磨面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得る工程を有するが、圧縮残留応力を付与して得た硬化層はチタンまたはチタン合金の素材硬度以上の硬度に改質される。この素材以上に硬化改質した硬化層を設ける作用によって、チタン素材またはチタン合金素材が有する軟質で粘っこいという機械的性質を改善する効果が得られる。
また、硬化層の表面を研磨して硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層を形成するが、ここで研磨する硬化層は上述のように軟質で粘っこいという機械的性質が改善されているので、研磨の際には研磨用砥粒とチタン素材またはチタン合金素材との融着を防止する作用があり、チタン素材またはチタン合金素材の被研磨面が毟り取られることを防止する効果が得られる。
更に、硬化層の研磨残し層で形成する硬化表面層の厚みは、10μm以上250μm以下が好ましい。すなわち、被研磨面が毟り取られることを防止した硬化層を研磨するが、硬化層厚みの全てを研磨して除去するのではなく、10μm以上250μm以下の厚みで硬化層を残した状態で研磨を仕上げることによって、被研磨面に毟れ痕が無くて、一様に滑らかで美しい外観で高級質感のある鏡面を有するチタン製またはチタン合金製の腕時計用外装部材およびその製造方法が提供される。
なお、硬化層を得るための圧縮残留応力付与手段としてショットピーニング加工を使用した場合には、小球粒子のピーニング(槌打ち)作用によって被加工物表面に塑性変形を起こさせて、均一な圧縮残留応力を持った硬化層を作る効果がある。
110 切削ブランク
110a 胴部
110b 足部
111 パイプ穴
112 バネ棒穴
210 材料取り工程
211 チタン材料
220 型打ち成形工程
221 型打ちブランク
221a 余肉
221b 胴部110aの内側開口となる部分
230 型抜き成形工程
231 型抜きブランク
240 化学研磨工程
241 化研ブランク
250 切削加工工程
310 圧縮残留応力付与工程
320 研磨加工工程
321 整面研削工程、
322 粗バフ研磨工程
323 中バフ研磨工程
324 仕上げバフ研磨工程
410 チタン製の側
410a チタン製の側410の足部
411 硬化表面層


Claims (6)

  1. チタンまたはチタン合金からなる腕時計用外装部材であって、圧縮残留応力が付与された硬化表面層を有する腕時計用外装部材。
  2. 前記硬化表面層の厚みが、10μm以上250μm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の腕時計用外装部材。
  3. ショットピーニング加工によって、前記圧縮残留応力を付与することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の腕時計用外装部材。
  4. チタンまたはチタン合金からなる腕時計用外装部材の製造方法であって、研磨加工を必要とする被研磨面に圧縮残留応力を付与して硬化層を得る圧縮残留応力付与工程と、前記硬化層の表面を研磨して圧縮残留応力が付与された硬化表面層を形成する研磨加工工程とを有する腕時計用外装部材の製造方法。
  5. 前記硬化表面層の厚みが、10μm以上250μm以下の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の腕時計用外装部材の製造方法。
  6. ショットピーニング加工によって、前記圧縮残留応力を付与することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の腕時計用外装部材の製造方法。
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