JP2010223335A - 差動歯車装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピニオンギヤの偏心や傾きを抑制することにより、耐磨耗性を向上した差動制限装置を提供する。
【解決手段】サンギヤ、リングギヤ、ピニオンギヤP、キャリアCA、および、ピニオンギヤPを保持するスラストワッシャ56とを備え、ピニオンギヤPは、軸方向両端に第1凸部78および第2凸部74を有し、スラストワッシャ56はピニオンギヤPの第1凸部76と嵌合し、そのピニオンギヤPのスラストワッシャ56に対する相対回転を許容する、円周方向に延びる溝76を有し、キャリアCAはピニオンギヤPの第2凸部74と嵌合し、そのピニオンギヤPのキャリアCAに対する相対回転を許容し、円周方向に延びるピニオン支持部71を有する。スラストワッシャ56と第1凸部76との嵌合、およびピニオン支持部71と第2凸部74との嵌合により、ピニオンギヤPの傾きや偏心を低減する。
【選択図】図7
【解決手段】サンギヤ、リングギヤ、ピニオンギヤP、キャリアCA、および、ピニオンギヤPを保持するスラストワッシャ56とを備え、ピニオンギヤPは、軸方向両端に第1凸部78および第2凸部74を有し、スラストワッシャ56はピニオンギヤPの第1凸部76と嵌合し、そのピニオンギヤPのスラストワッシャ56に対する相対回転を許容する、円周方向に延びる溝76を有し、キャリアCAはピニオンギヤPの第2凸部74と嵌合し、そのピニオンギヤPのキャリアCAに対する相対回転を許容し、円周方向に延びるピニオン支持部71を有する。スラストワッシャ56と第1凸部76との嵌合、およびピニオン支持部71と第2凸部74との嵌合により、ピニオンギヤPの傾きや偏心を低減する。
【選択図】図7
Description
本発明は、差動歯車装置に関するものであり、特に、ピニオンギヤとキャリアとが摺動することにより差動制限機能を発揮する差動歯車装置に関するものである。
差動制限装置として、遊星歯車式の差動制限装置が知られている。例えば特許文献1に記載の車両用差動歯車装置がそれである。かかる差動制限装置は、例えば車両のセンターデフ等に用いられることにより、前後輪間での駆動力配分および差動時における差動制限力を発生させることができる。
かかる遊星歯車式の差動制限装置においては、ピニオンギヤはサンギヤとリングギヤとに噛合うと同時に、そのピニオンを収納するキャリアの円筒状の収容空間を構成する摺動面に接触するように嵌合される。そして、ピニオンギヤとキャリアの収容空間との摺動面において両者が摺動することなどにより、LSD(Limited Slip Differential;差動制限)機能が発揮される。
このとき、キャリアの円筒状の収容空間とピニオンギヤとは、理想的には、サンギヤおよびリングギヤの軸心を中心とする同心円上にそれらの中心が位置させられる。しかしながら、ピニオンギヤの位置は、サンギヤおよびリングギヤの例えばピッチ円径や歯厚などによって決定されるので、これらの部品精度によってはピニオンギヤの位置が変化してしまう。
また、ピニオンギヤはキャリアの円筒状の収容空間に位置するように組付けられるので、該円筒状の収容空間の位置や大きさのずれによってもピニオンギヤの位置が変化してしまう可能性がある。
そして、ピニオンギヤの位置が変化することにより、キャリアの円筒状の収容空間の中心およびピニオンギヤの軸心が前記同心円上に位置しなくなると、ピニオンギヤとキャリアの摺動面との接触に偏当たりが生じ、両者が高面圧で接触することにより、キャリアの円筒部における摺動面やピニオンギヤのトップランド部が磨耗する可能性があり、かかる磨耗により、差動制限装置におけるLSD機能が低下したり、あるいは、差動時において異音が発生するという問題が生じる可能性があった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ピニオンギヤの偏心や傾きを抑制することにより、耐磨耗性を向上した差動制限装置を提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明は、(a)サンギヤおよびリングギヤと、該サンギヤおよびリングギヤと噛み合った状態で複数本のピニオンギヤを収容する円柱状空間を一端面に開口した状態で有する厚肉有底円筒状のキャリアと、該キャリアの円柱状空間の開口を塞ぐように該キャリアの一端面に配置された円環板状のワッシャと、を備える差動歯車装置において、(b)前記ピニオンギヤは、軸方向両端に第1凸部および第2凸部を有し、(c)前記ワッシャは、該第1凸部と嵌合し、前記ピニオンギヤの該ワッシャに対する相対回転および公転を許容する、円周方向に延びる第1凹部を有し、(d)前記キャリアは、該第2凸部と嵌合し、前記ピニオンギヤの該キャリアに対する相対回転を許容し、円周方向に所定長さを有する第2凹部を有すること、を特徴とする。
請求項1にかかる発明によれば、前記ピニオンギヤにおける第1凸部と前記ワッシャにおける第1凹部とが嵌合させられ、前記ピニオンギヤにおける第2凸部と前記キャリアにおける第2凹部とが嵌合させられるので、前記ピニオンギヤは前記ワッシャおよび前記キャリアのそれぞれに対し相対回転可能および公転可能に保持され、前記ピニオンギヤが傾いたり偏心することが低減される。
好適には、(a)前記第1凹部の径方向幅は、前記第1凸部の径方向幅よりも大きく、且つ該第1凸部の径方向幅に前記ピニオンギヤの前記サンギヤおよび前記リングギヤに対する噛合隙を加えた長さよりも小さいものであり、(b)前記第2凹部の径方向幅は、前記第2凸部の径方向幅よりも大きく、且つ該第2凸部の径方向幅に前記ピニオンギヤの前記サンギヤおよび前記リングギヤに対する噛合隙を加えた長さよりも小さいものであること、を特徴とする。このようにすれば、前記第1凹部に嵌合された前記第1凸部、および前記第2凹部に嵌合された前記第2凸部を有する前記ピニオンギヤは、前記ピニオンギヤの前記サンギヤおよび前記リングギヤに対する噛合隙の範囲内で径方向の移動が許容されることから、ピニオンギヤPの偏心や傾きが低減されるとともに、前記サンギヤおよび前記ピニオンギヤあるいは前記ピニオンギヤおよび前記リングギヤとの相対回転が良好に行なわれる。
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される車両用動力伝達装置10を有する前置エンジン前輪駆動(FF)を基本とする前後輪駆動車両の構成を説明する骨子図である。この図1において、駆動力源であるエンジン12により発生させられた駆動力(トルク)は、自動変速機14を介してトランスファ22に伝達される。トランスファ22に伝達された駆動力は、前輪用差動歯車装置(フロントデフ)16および駆動力伝達軸であるプロペラシャフト24に分配される。前輪用差動歯車装置16に伝達された駆動力は、左右1対の前輪車軸18l、18rを介して左右1対の前輪20l、20rへ伝達される。一方、プロペラシャフト24に伝達された駆動力は、後輪用差動歯車装置26、及び左右1対の後輪車軸28l、28rを介して左右1対の後輪30l、30rへ伝達される。
上記エンジン12は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記自動変速機14は、例えば、上記エンジン12から入力される回転を所定の変速比γで減速或いは増速して出力する有段式の自動変速機(オートマチックトランスミッション)であり、前進変速段、後進変速段、及びニュートラルのうち何れかが選択的に成立させられ、それぞれの変速比γに応じた速度変換が成される。なお、この自動変速機14の入力軸は、図示しないトルクコンバータ等を介して上記エンジン12の出力軸に連結されている。
図2は、図1の車両用動力伝達装置のトランスファ22の構造を説明するための断面図である。トランスファ22は、ケーシング40内に自動変速機14からの駆動力が入力される入力軸42、差動制限機能を有する中央差動歯車装置44、前輪用差動歯車装置(フロントデフ)16に駆動力を出力する第1出力軸46、プロペラシャフト24に駆動力を出力する第2出力軸48を備えている。入力軸42の駆動力は、中央差動歯車装置44によって分配され、第1出力軸46および第2出力軸48に分配されて出力される。第1出力軸46に出力された駆動力は、一点鎖線で示されるように、カウンタ歯車50および出力歯車52を介して前輪用差動歯車装置16(フロントデフ)に伝達される。また、第2出力軸48に出力された駆動力は、破線で示されるように、プロペラシャフト24に伝達される。なお、本実施例の中央差動歯車装置44が、本発明の遊星歯車装置に対応している。
図3は、図2のトランスファ22内に配設されている中央差動歯車装置44の構造を詳細に説明するために拡大した断面斜視図である。なお、図3においてはケーシング40は省略されている。中央差動歯車装置44は、遊星歯車式の差動歯車装置となっており、キャリヤCAと、キャリヤCAに保持されているピニオンギヤPにそれぞれ互いに噛み合うサンギヤSおよびリングギヤRとを相対回転可能に且つ同心に備えている。なお、図3においては説明のため2個のピニオンギヤPが図示されているが、ピニオンギヤの個数はこれに限定されるものではない。
キャリヤCAは、内周側にスプライン溝66を有している。このスプライン溝66とキャリアCAの内周側に挿入された図示しないスプライン溝を有する入力軸42とがスプライン嵌合することによって両者は相対回転不能に連結され、一体的に回転させられる。キャリアCAは、厚肉の周壁に端面に開口し且つ径方向にも開口する部分円柱状の収容空間68が形成された有底円筒状部材であって、円環状の底板部61と、周方向に収容空間68を挟んで軸方向に延びる複数の突出部62とを含んで構成されている。複数の突出部62の間にリングギヤRおよびサンギヤSの回転軸心に平行な軸心となるようにそれぞれ設けられた円柱状の収容空間68内に、ピニオンギヤPが収容されている。円柱状の収容空間68を形成する突出部62の周方向の対向面72が、ピニオンギヤPの歯先と摺接する摺動面72となる。なお、前記収容空間68が本発明の円柱状空間に対応する。
ピニオンギヤPの外周側には、リングギヤRが配置されると共に、ピニオンギヤPの内周側には、サンギヤSが配置されている。リングギヤR、サンギヤS、およびピニオンギヤPは、それぞれ回転可能に噛み合わされており、それぞれの噛合歯は例えばねじれ角を有するヘリカル歯となっている。前記突出部62の径方向幅がピニオンギヤPの径よりも短くされることにより、ピニオンギヤPはその歯先は収容空間68の内周側開口部および外周側開口部から突き出すように収容空間68に収容されており、収容空間68の内周側開口部から突き出したピニオンギヤPの歯先はサンギヤSと、外周側開口部から突き出したピニオンギヤPの歯先はリングギヤRとそれぞれ噛み合う様にされている。
リングギヤRは、一方が開口する有底円筒形状となっており、第2出力軸48の端部から径方向に伸びるフランジ部63と、そのフランジ部63の外周縁より軸心方向に伸びる筒部64とを備えている。リングギヤRの開口側には蓋壁部材54が設けられている。この蓋壁部材54は、図示しないが、リングギヤRの内周面に相対回転不能に嵌合されると共に、リングギヤRに嵌め着けられているスナップリングなどによって軸心方向の移動不能に固定されている。
このように、キャリヤCAは、その両端がリングギヤRのフランジ部63および蓋壁部材54によって軸方向において挟まれる構造となっている。また、この蓋壁部材54とキャリヤCAとの間には、スラストワッシャ56が介装されている。このスラストワッシャ56は、その中心が前記サンギヤSおよびリングギヤRの軸心と同一となるように配設された円環板状の形状とされており、キャリアCAの円柱状の収容空間68の開口を塞ぐようにキャリアCAの一端面に配置されている。さらに、サンギヤSとキャリヤCAとの間、並びにキャリヤCAとリングギヤRのフランジ部63との間にも同様に、スラストワッシャ58および60が介装されている。また、サンギヤSは、内周面が第1出力軸46の端部とスプライン嵌合するためのスプライン溝65が設けられており、対応するスプライン溝を有する第1出力軸46が挿入されて嵌合することによって相対回転不能に連結され、一体的に回転させられる。一方、リングギヤRは、第2出力軸48と一体成形により連結され、一体回転させられる。なお、入力軸42と第2出力軸48とは同軸心C上に直列に配置されている。なお、このスラストワッシャ56が本発明のワッシャに対応する。
このように構成されたこの中央差動歯車装置44は、駆動力を前輪および後輪に分配するためのものであり、入力軸42からの駆動力を、車両の状態に応じて第1出力軸46および第2出力軸48に適宜分配して出力する。
図4は、中央差動歯車装置44におけるサンギヤS、リングギヤR、ピニオンギヤP、およびキャリアCAの位置関係を説明する図であって、図3のA−A断面図である。図4を用いて中央差動歯車装置44における作動を説明する。入力軸42の回転は、その入力軸42にスプライン嵌合されているキャリヤCAに伝達され、キャリアCAは例えば図4において一点鎖線で表わされた方向に回転させられる。そして、キャリヤCAの回転はピニオンギヤPへ伝達される。ピニオンギヤPは、キャリヤCAにおけるピニオン支持部71およびスラストワッシャ56により回転可能に支持されているため、キャリヤCAが回転すると、ピニオンギヤPは、軸心Cを中心に公転する。この公転力がリングギヤRおよびサンギヤSへ伝達される。これにより、キャリヤCAの回転が、リングギヤRおよび第2出力軸48を介してプロペラシャフト24に伝達されると共に、サンギヤSおよび第1出力軸46を介して前輪用差動歯車装置16に伝達される。この場合、サンギヤSおよびリングギヤRは同じ回転速度によって回転させられる。すなわち、前輪20および後輪30が同じ回転速度で走行する場合に対応する。
次にサンギヤSおよびリングギヤRに回転差が生じた場合について説明する。サンギヤSおよびリングギヤRに回転差が生じると、その回転差によって互いに噛み合うピニオンギヤPがその回転差に応じた方向に自転させられる。ここで、このとき、ピニオンギヤPの歯面はキャリアCAの突出部62における接触面72に摺接させられて回転させられる。また、ピニオンギヤP、サンギヤSおよびリングギヤRの噛合歯は、ねじれ角を有するヘリカル歯となっているため、サンギヤSおよびリングギヤRには、それぞれスラスト力が発生する。例えば、ピニオンギヤPが回転差によって一方に自転させられ、サンギヤSにはスラストワッシャ58を押圧する方向にスラスト力が生じると、サンギヤSはそのスラスト力によってスラストワッシャ58を介してキャリヤCAに押し付けられる。また、リングギヤRは、サンギヤSとは反対方向のスラスト力が生じ、スラストワッシャ60を介してキャリヤCAに押し付けられる。このように、ピニオンギヤPがキャリアCAに押しつけられたり、サンギヤSおよびリングギヤRがキャリヤCAに押し付けられることで、ピニオンギヤPの回転速度が小さくなるように、また、キャリヤCA、サンギヤSおよびリングギヤRの回転差が少なくなるように差動が制限される。一方、ピニオンギヤPが回転差によって、前述とは逆方向に自転させられると、ピニオンギヤPの歯面はキャリアCAの収容空間68を構成する一対の摺動面のうち、前述の摺動面72と対向する他方の摺動面72に摺接されて回転させられる。また、リングギヤRには前述とは逆方向のスラスト力が生じ、リングギヤRに一体的に接続されている蓋壁部材54は、スラストワッシャ56を介してキャリヤCAに押し付けられる。このように、ピニオンギヤPがキャリアCAに押しつけられたり、リングギヤRが蓋壁部材54を介してキャリヤCAに押し付けられることで、ピニオンギヤPの回転速度が小さくなるように、また、リングギヤRおよびキャリヤCAの回転差が少なくなるように差動が制限される。なお、サンギヤSおよびリングギヤRに回転差が生じた場合とは、前輪20または後輪30のいずれか一方が濡れた路面にあり、他方が乾燥した路面にある場合のように、一方がスリップするなどして、両者の回転速度が同じでない場合に対応する。
ところで、ピニオンギヤPはキャリアCAの円柱状の収容空間68内に入り込むように組付けられているが、ピニオンギヤPの中心軸がキャリアCAの収容空間68の中心軸に対して傾いたり、偏心したりする可能性がある。図5および図6はそれぞれ、ピニオンギヤPの中心軸、すなわちピニオンギヤPの自転における回転軸がキャリアCAの収容空間68の中心軸に対して傾いた状態および、偏心した状態を説明するための図であって、図3に示した中央差動歯車装置44のB−B断面を表わした部分拡大図である。図5および図6においてPはピニオンギヤPの中心軸とキャリアCAの収容空間68の中心軸とが一致した状態を示しており、P’およびP’’はそれぞれピニオンギヤPの中心軸がキャリアCAの収容空間68の中心軸に対して傾いた状態、および、偏心した状態を示している。前述のように、差動制限状態とされた中央差動歯車装置44においてはピニオンギヤPはキャリアCAの摺動面72と摺動するので、図5のP’および図6のP’’に示すようにピニオンギヤPの中心軸が傾いた、あるいは偏心した状態で中央差動歯車装置44が差動制限状態とされると、ピニオンギヤPとキャリアCAの摺動面72との当りが均一にならず、両者の接触面における面圧が高くなる。そのため、ピニオンギヤPとキャリアCAの摺動面72の磨耗が発生する原因となる。
本実施例の中央差動歯車装置44においては、底板部61のうち、前記収容空間68の底面に対応する部分に、ピニオンギヤPを支持するための凹部であるピニオン支持部71が形成されている。また、ピニオンギヤPのキャリアCA側の軸端部には、前記ピニオン支持部71に嵌合される小径円柱状又は軸状の第2凸部74が軸心から突設されており、ピニオン支持部71と第2凸部74とが相対回転可能に嵌合されている。また、スラストワッシャ56のピニオンギヤP側面には、円周状に溝76が設けられている。また、ピニオンギヤPの蓋壁部材54側の軸端部には、前記溝76に嵌合される小径の円柱状又は軸状の第1凸部78が軸心から突設されており、溝76内に第1凸部78が相対回転可能に嵌め入れられている。なお、前記溝76が本発明の第1凹部に、ピニオン支持部71が本発明の第2凹部に、第1凸部78が本発明の第1凸部に、第2凸部74が本発明の第2凸部にそれぞれ対応している。
図7は、ピニオンギヤPとその両端に位置するキャリアCA、およびスラストワッシャ56構造を説明する図である。図7の(a)は図3におけるA−A断面におけるスラストワッシャ56をピニオンギヤP側から見た図である。図7の(b)は図3におけるB−B断面におけるピニオンギヤPを表わす図である。図7の(c)は図3におけるA−A断面におけるキャリアCAをピニオンギヤP側から見た図である。図7の(a)乃至(c)においては、スラストワッシャ56、ピニオンギヤP、およびキャリアCAの位置が、一点鎖線で表わされたピニオンギヤの中心軸C’を基準として相対的に表わされている。また、図7における一点鎖線Lは、中央差動歯車装置44の軸心に対して径方向を表わしている。
図7に示すように、スラストワッシャ56には、径方向の幅がφ1の溝76が円周方向に設けられており、その溝76にピニオンギヤPの第1凸部78が嵌め入れられている。これにより、ピニオンギヤPはスラストワッシャ56に対して相対的に回転可能とされるとともに、スラストワッシャ56の溝76に沿って、すなわち中央差動歯車装置44の軸心Cに対して回転する公転方向の相対回転が許容され、径方向の相対移動が以下のように規制されている。
また、キャリアCAの底板部61のうち、収容空間68の底面に対応する部分には、ピニオン支持部71が設けられている。ピニオン支持部71は径方向の幅がφ2の円弧状に設けられており、このピニオン支持部71にピニオンギヤPの第2凸部74が嵌め入れられている。これにより、ピニオンギヤPはキャリアCAに対して相対的に回転可能とされるとともに、キャリアCAのピニオン支持部71に沿って、すなわち中央差動歯車装置44の軸心Cに対して回転する公転方向の相対回転が、ピニオン支持部71の周方向の長さの範囲内で許容され、径方向の相対移動が以下のように規制されている。
溝76の径方向の幅φ1およびピニオン支持部71の径方向の幅φ2はそれぞれ次のように設定される。すなわち溝76の径方向の幅φ1は、ピニオンギヤPの第1凸部78の径方向幅b1(図7参照)よりも大きく、第1凸部78の径方向の幅b1にピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αを加えた長さb1+αよりも小さいものとして設定される。また、ピニオン支持部71の径方向の幅φ2は、ピニオンギヤPの第2凸部74の径方向幅b2(図7参照)よりも大きく、第2凸部74の径方向の幅b2にピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αを加えた長さb2+αよりも小さいものとして設定される。すなわち、
b1<φ1<b1+α
b2<φ2<b2+α
である。なお、第1凸部78の径方向幅b1および第2凸部74の径方向幅b2は同じ値であっても良いし異なる値であってもよい。
b1<φ1<b1+α
b2<φ2<b2+α
である。なお、第1凸部78の径方向幅b1および第2凸部74の径方向幅b2は同じ値であっても良いし異なる値であってもよい。
ここで、ピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αとは、例えば、図4に示すように、サンギヤSとピニオンギヤPとの径方向の間隙の長さα1と、ピニオンギヤPとリングギヤRとの径方向の間隙の長さα2との和(α1+α2)として定義される。言いかえればピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αは、中央差動歯車装置44が停止している状態において、ピニオンギヤPが中央差動歯車装置44の軸心Cに対する径方向Lに移動可能な距離αである。
このようにすれば、ピニオンギヤPの軸方向両端に設けられた第1凸部78および第2凸部74が、それぞれスラストワッシャ56の溝76およびキャリアCAのピニオン支持部71と嵌合するので、ピニオンギヤPの径方向の移動が規制され、ピニオンギヤPの傾きや偏心の発生が抑制される。
また、溝76の径方向の幅b1およびピニオン支持部71の径方向の幅b2の長さは、それぞれ、ピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αを考慮して設定されるので、スラストワッシャ56の溝76およびキャリアCAのピニオン支持部71とそれぞれ嵌合させられた第1凸部78および第2凸部74を有するピニオンギヤPは、中央差動歯車装置44の軸心を中心とする径方向の移動が、ピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αの範囲内に規制される。すなわち、ピニオンギヤPの位置の変化によっても前記サンギヤSおよび前記ピニオンギヤPあるいは前記ピニオンギヤPおよび前記リングギヤRとの相対回転が良好に行なわれる。
前述の実施例によれば、サンギヤSおよびリングギヤRと、これらサンギヤSおよびリングギヤRと噛み合った状態で複数本のピニオンギヤPを収容する円柱状の収容空間68を一端面に開口した状態で有する厚肉有底円筒状のキャリアCAと、そのキャリアCAの収容空間68の開口を塞ぐようにキャリアCAの一端面に配置された円環板状のスラストワッシャ58とを備える中央差動歯車装置44において、ピニオンギヤPは、軸方向両端に第1凸部78および第2凸部74を有し、スラストワッシャ56は、第1凸部78と嵌合し、ピニオンギヤPのスラストワッシャ56に対する相対回転および公転を許容する、円周方向に延びる溝76を有し、キャリアCAは、第2凸部74と嵌合し、ピニオンギヤPのキャリアCAに対する相対回転を許容し、円周方向に所定長さを有するピニオン支持部71を有する。そして、ピニオンギヤPにおける第1凸部78とスラストワッシャ56の溝76とが嵌合させられるとともに、ピニオンギヤPにおける第2凸部74とキャリアCAにおけるピニオン支持部71とが嵌合させられるので、ピニオンギヤPはスラストワッシャ56およびキャリアCAのそれぞれに対し相対回転可能に保持され、ピニオンギヤPが傾いたり偏心することが低減される。
また前述の実施例によれば、溝76の径方向幅φ1は、第1凸部78の径方向幅b1よりも大きく、第1凸部78の径方向幅b1にピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αを加えた長さb1+αよりも小さいものであり、ピニオン支持部71の径方向幅φ2は、第2凸部74の径方向幅b2よりも大きく、第2凸部74の径方向幅b2にピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αを加えた長さb2+αよりも小さいものであるので、溝76に第1凸部78を、また、ピニオン支持部71に第2凸部74をそれぞれ嵌合させた場合に、第1凸部78、および第2凸部74を有するピニオンギヤPは、ピニオンギヤPのサンギヤSおよびリングギヤRに対する噛合隙αの範囲内に径方向の移動が規制され、ピニオンギヤPの偏心や傾きが低減されるとともに、サンギヤSおよびピニオンギヤPあるいはピニオンギヤPおよびリングギヤRとの相対回転が良好に行なわれる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において本発明の遊星歯車装置は、差動制限時において車両の前輪及び後輪に駆動力を不等分配する中央差動歯車装置44、すなわちセンターデフとして用いられたが、これに限られない。例えば、駆動力を等分配する形式に変更することにより、前輪用差動歯車装置、すなわちフロントデフ、あるいは後輪用差動歯車装置、すなわちリアデフとして用いることも可能である。
また、前述の実施例においては、キャリアCAのピニオン支持部71は凹部、すなわち溝状に設けられたが、これに限られない。例えばキャリアCAの底板部61を貫通する穴状に設けられてもよい。
また、ピニオン支持部71の周方向の長さを短くすることにより、ピニオンギヤPとキャリアCAの突出部62に設けられた摺動面72とが摺動しないようにすることができる。このようにすれば、ピニオンギヤPの歯面と摺動部72とが摺接しないことから、両者の耐磨耗性がさらに向上する。このようにしても、サンギヤSとリングギヤRの回転速度に差が生じた場合には、サンギヤSあるいはリングギヤRがスラスト力によってキャリアCAの軸方向の端面に押しつけられることによって、差動が制限されるので、中央差動歯車装置44の差動制限機能は発揮される。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
44:中央差動歯車装置(差動歯車装置)
56:スラストワッシャ(ワッシャ)
68:収容空間(円柱状空間)
71:ピニオン支持部(第2凹部)
74:第2凸部
76:溝(第1凹部)
78:第1凸部
S:サンギヤ
R:リングギヤ
P:ピニオンギヤ
CA:キャリア
56:スラストワッシャ(ワッシャ)
68:収容空間(円柱状空間)
71:ピニオン支持部(第2凹部)
74:第2凸部
76:溝(第1凹部)
78:第1凸部
S:サンギヤ
R:リングギヤ
P:ピニオンギヤ
CA:キャリア
Claims (2)
- サンギヤおよびリングギヤと、該サンギヤおよびリングギヤと噛み合った状態で複数本のピニオンギヤを収容する円柱状空間を一端面に開口した状態で有する厚肉有底円筒状のキャリアと、該キャリアの円柱状空間の開口を塞ぐように該キャリアの一端面に配置された円環板状のワッシャと、を備える差動歯車装置において、
前記ピニオンギヤは、軸方向両端に第1凸部および第2凸部を有し、
前記ワッシャは、該第1凸部と嵌合し、前記ピニオンギヤの該ワッシャに対する相対回転および公転を許容する、円周方向に延びる第1凹部を有し、
前記キャリアは、該第2凸部と嵌合し、前記ピニオンギヤの該キャリアに対する相対回転を許容し、円周方向に所定長さを有する第2凹部を有すること、
を特徴とする差動歯車装置。 - 前記第1凹部の径方向幅は、前記第1凸部の径方向幅よりも大きく、且つ該第1凸部の径方向幅に前記ピニオンギヤの前記サンギヤおよび前記リングギヤに対する噛合隙を加えた長さよりも小さいものであり、
前記第2凹部の径方向幅は、前記第2凸部の径方向幅よりも大きく、且つ該第2凸部の径方向幅に前記ピニオンギヤの前記サンギヤおよび前記リングギヤに対する噛合隙を加えた長さよりも小さいものであること、
を特徴とする請求項1に記載の差動歯車装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009071383A JP2010223335A (ja) | 2009-03-24 | 2009-03-24 | 差動歯車装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009071383A JP2010223335A (ja) | 2009-03-24 | 2009-03-24 | 差動歯車装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010223335A true JP2010223335A (ja) | 2010-10-07 |
Family
ID=43040743
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009071383A Pending JP2010223335A (ja) | 2009-03-24 | 2009-03-24 | 差動歯車装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2010223335A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016148407A (ja) * | 2015-02-12 | 2016-08-18 | トヨタ自動車株式会社 | 車両用自動変速機 |
-
2009
- 2009-03-24 JP JP2009071383A patent/JP2010223335A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016148407A (ja) * | 2015-02-12 | 2016-08-18 | トヨタ自動車株式会社 | 車両用自動変速機 |
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