JP2010222537A - ハードコーティング剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシアルキルトリアルコキシシランを加水分解縮合して得られるポリシラノール組成物とアルミニウム系硬化触媒とを含み、総Si原子に占める上記メチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合が50%以上であり、得られるコーティング膜の屈折率が1.45以下であるハードコーティング剤およびそれから得られるハードコート。
【選択図】なし
Description
本発明のハードコーティング剤の一成分であるポリシラノール組成物は、上記メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシアルキルトリアルコキシシランを加水分解縮合することによって得られる。なお、本明細書では、上記2種、またはそれぞれについて「原料アルコキシシラン」ということがある。なお、上記メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン以外のアルコキシシラン化合物は通常使用しなくてもよいが、本発明のハードコーティング剤およびそれから得られるコーティング膜の特性に悪影響を及ぼさない量であれば、加水分解縮合の際に併用しても構わない。
本発明のもう一つの成分であるアルミニウム系硬化触媒は、コーティング膜の硬化を促進するために用いられる。アルミニウム系硬化触媒を使用することで、シラノール基同士の縮合およびエポキシ基同士の縮合に加えて、シラノール基とエポキシ基との付加反応が進行し、より強固なコーティング膜が得られることが期待される。
なお、アルミニウム系硬化触媒については、先の加水分解縮合のところで説明した内容が適用される。
本発明のハードコーティング剤は、先のポリシラノール組成物およびアルミニウム系硬化触媒を含んでいる。アルミニウム系硬化触媒の含有量は、ポリシラノール組成物の固形分に対して、0.1〜10%であることが好ましい。0.1%未満であると、硬化が不十分となり、期待されるコーティング膜の物性が得られないおそれがある。また、10%を超えても、それに見合うだけのさらなる効果が期待できない。
本発明のハードコーティング剤は、上記方法によって得られるものであるが、本発明のハードコーティング剤の製造方法は、メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシアルキルトリアルコキシシランを、酸触媒として無機酸またはルイス酸を用いて加水分解縮合を行い、ポリシラノール組成物を得る工程、および、前記工程で得られたポリシラノール組成物にアルミニウム系硬化触媒、および、必要に応じてその他の成分を加える工程を含む。詳細については、すでに説明した内容がそれぞれ適用される。この製造方法によって得られたハードコーティング剤は、エポキシ基が残存しているので、優れた密着性および硬化性を有することが期待できる。
本発明のハードコートは、先のハードコーティング剤から得られるものであり、その屈折率は1.45以下であり、メチルトリメトキシシランの屈折率から好ましくは1.371〜1.45である。
メチルトリメトキシシラン408部をイソプロピルアルコール450部に溶解した。ここに、メトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水162部と酸触媒として塩酸1部とを添加して、40℃で1時間、攪拌し、さらに75℃で1時間、攪拌を行って、メチルトリメトキシシラン化合物の加水分解縮合体を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。メチルトリメトキシシラン化合物のメトキシシリル基が全て加水分解し、縮合は進行しなかったものとして計算される固形分は27.6質量%であった。
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン460部をイソプロピルアルコール390部に溶解した。ここに、メトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水105部と酸触媒として塩酸1部とを添加して、40℃で1時間、攪拌し、さらに75℃で1時間、攪拌を行って、グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解縮合体を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。また、H−NMRによる分析で、加水分解縮合反応の前後で、エポキシ基が95%残存していることを確認した。グリシドキシプロピルトリメトキシシランのメトキシシリル基が全て加水分解し、縮合およびエポキシ基の開環は進行しなかったものとして計算される固形分は39質量%であった。
製造例1において、酸触媒である塩酸1部を、アルミニウム系触媒であるアルミキレートD(商品名、川研ファインケミカル社製のアルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート)1.6部に変更し、40℃で1時間攪拌後の反応温度を85℃に変更した以外は同様にして、メチルトリメトキシシラン化合物の加水分解縮合体を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。メチルトリメトキシシラン化合物のメトキシシリル基が全て加水分解し、縮合は進行しなかったものとして計算される固形分は27.6質量%であった。
X−40−9225(商品名、信越化学工業製のポリメチルメトキシシロキサン)202部をエキネンF6(商品名、日本アルコール販売社製のエタノール/メタノール=89/11(質量比)の混合物)405部に溶解した。ここに、メトキシシリル基の2倍モル数に相当する水56部とアルミキレート系触媒としてアルミキレートDの3部を添加して、40℃で6時間、攪拌して、ポリメチルメトキシシロキサンの加水分解縮合体を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。ポリメチルメトキシシロキサンのメトキシシリル基が全て加水分解し、縮合は進行しなかったものとして計算される固形分は27質量%であった。
メチルトリメトキシシラン47.7部およびグリシドキシプロピルトリメトキシシラン79.8部をイソプロピルアルコールとメチルイソブチルケトンとの2/1(質量比)混合物154部に溶解した。ここに、系内のメトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水37.2部と酸触媒として塩酸1.9部とを添加して、40℃で2時間、攪拌し、さらに80℃で3時間、攪拌を行って、ポリシラノール組成物を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。H−NMRによる分析で、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン由来のエポキシ基が97%残存していることを確認した。メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシプロピルトリメトキシシランのメトキシシリル基が全て加水分解し、縮合およびエポキシ基の開環は進行しなかったものとして計算される固形分は31質量%であった。また、総Si原子に占めるメチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合は50%と計算された。
実施例1において、メチルトリメトキシシランの量を95.5部に、グリシドキシプロピルトリメトキシシランの量を40.5部に、および、塩酸の量を2.4部にそれぞれ変更すること以外は同様にして、ポリシラノール組成物を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。H−NMRによる分析で、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン由来のエポキシ基が94%残存していることを確認した。メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシプロピルトリメトキシシランのメトキシシリル基が全て加水分解し、縮合およびエポキシ基の開環は進行しなかったものとして計算される固形分は29質量%であった。また、総Si原子に占めるメチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合は80%と計算された。
実施例1において、メチルトリメトキシシランの量を117.2部に、グリシドキシプロピルトリメトキシシランの量を22.6部に、塩酸1.9部をアルミニウム系触媒であるアルミキレートDの0.6部にそれぞれ変更すること以外は同様にして、ポリシラノール組成物を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。H−NMRによる分析で、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン由来のエポキシ基が50%残存していることを確認した。メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシプロピルトリメトキシシランのメトキシシリル基が全て加水分解し、縮合およびエポキシ基の開環は進行しなかったものとして計算される固形分は29質量%であった。また、総Si原子に占めるメチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合は90%と計算された。
製造例1で得られたメチルトリメトキシシラン化合物の加水分解縮合体361部と製造例2で得られたグリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解縮合体0.5部とを混合して、ポリシラノール組成物を得た。総Si原子に占めるメチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合は99.9%と計算された。
製造例3で得られたメチルトリメトキシシラン化合物の加水分解縮合体190部と製造例2で得られたグリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解縮合体122部とを混合して、ポリシラノール組成物を得た。総Si原子に占めるメチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合は70%と計算された。
製造例4で得られたポリメチルメトキシシロキサンの加水分解縮合体363部と製造例2で得られたグリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解縮合体5.1部とを混合して、ポリシラノール組成物を得た。総Si原子に占めるメチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合は99%と計算された。
製造例1で得られたメチルトリメトキシシラン化合物の加水分解縮合体370部に、アルミニウム系硬化触媒としてアルミキレートDの6.5部、チヌビン928の2部を添加して、比較用のハードコーティング剤を得た。総Si原子に占めるメチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合は100%と計算された。この比較用のハードコーティング剤の固形分に対するエポキシ基の含有量は0質量%であった。
実施例1において、総Si原子に占めるメチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合は40%になるよう、メチルトリメトキシシランの量を34.7部に、グリシドキシプロピルトリメトキシシランの量を90.6部に、それぞれ変更すること以外は同様にして、ポリシラノール組成物を得た。H−NMRによる分析で、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン由来のエポキシ基が96%残存していることを確認した。メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシプロピルトリメトキシシランのメトキシシリル基が全て加水分解し、縮合およびエポキシ基の開環は進行しなかったものとして計算される固形分は32質量%であった。
実施例4において、アルミニウム系硬化触媒としてのアルミキレートDを加えないこと以外は同様にして、比較用のハードコーティング剤を得た。この比較用のハードコーティング剤の固形分に対するエポキシ基の含有量は、計算により16質量%と求められた。
実施例で得られたハードコーティング剤および比較例で得られた比較用のハードコーティング剤を#22バーコーターを用いて、無アルカリガラスにコーティングし、150℃で30分間、加熱することによって、透明なハードコートをそれぞれ得た。
プリズムカップリング方式の測定装置Metricon2010(Metricon社製)により、測定波長633nm、室温20.5℃でシリコンウエハーに塗装した膜厚10μmの塗膜の屈折率を測定した。
JIS K 5600−5−4に準じて、斜め45度の角度に固定した鉛筆に真上から750gの荷重をかけ引っかき試験を行った。
JIS K 5600−5−6に準じて、調製した塗膜にカッターにより1mm間隔の縦横6本ずつの切れ目を入れ、その上にセロハンテープを貼付してはがし、25個のます目のうち、残存したます目の数をカウントした(碁盤目試験、残ったます目数/全ます目数(25))。
これに対して、比較用のハードコーティング剤から得られたハードコートでは、それぞれ問題点を有していた。すなわち、グリシドキシアルキルトリアルコキシシランを原料アルコキシシランとして用いない比較例4では密着性の低下が見られた。また、メチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合が40%である比較例5では屈折率が1.45を上回った。さらに、アルミニウム系硬化触媒を含まない比較例6では鉛筆硬度が低下した。
Claims (4)
- メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシアルキルトリアルコキシシランを加水分解縮合して得られるポリシラノール組成物とアルミニウム系硬化触媒とを含むハードコーティング剤であって、
総Si原子に占める前記メチルトリメトキシシラン化合物由来のSi原子の割合が50%以上であり、
得られるコーティング膜の屈折率が1.45以下である、
ハードコーティング剤。 - 前記ポリシラノール組成物がエポキシ基を有している請求項1記載のハードコーティング剤。
- メチルトリメトキシシラン化合物およびグリシドキシアルキルトリアルコキシシランを、酸触媒として無機酸またはルイス酸を用いて加水分解縮合を行い、ポリシラノール組成物を得る工程、および、前記工程で得られたポリシラノール組成物にアルミニウム系硬化触媒を加える工程を含む、ハードコーティング剤の製造方法。
- 請求項1または2記載のハードコーティング剤から得られるハードコート。
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