以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
医療用デバイスは、本実施形態ではPFO閉鎖デバイスであるが、まず、PFO閉鎖デバイスを、図1、2について概説する。なお、図2では、紙面の都合上、手元操作部70のみを縮小した状態で記載している。
PFO閉鎖デバイスは、基端側に設けられた手元操作部70と、手元操作部70に基端が取り付けられたガイディングカテーテル31と、ガイディングカテーテル31内に設けられたカテーテル30と、カテーテル30の先端部分に設けられ、卵円孔弁M2及び心房中隔M1を挟持する挟圧手段Kと、挟圧手段Kにより挟持した部分の生体組織M(M1,M2の総称)を融着あるいは壊死させるエネルギを供給するエネルギ供給手段20(熱エネルギ付与手段)と、挟圧手段Kによる手技を安定かつ正確に行なうための位置決め保持手段60(図2参照)と、を有している。なお、以下の説明において、デバイスの手元操作部側を「基端側」、挟圧手段K側を「先端側」と称す。
このデバイスの使用を概説すれば、まず、ガイディングカテーテル31を、例えば、大腿静脈Jから挿入するが、このガイディングカテーテル31は、内部にカテーテル30の先端に設けられた挟圧手段Kをカテーテル30内に収納した状態で挿入する。先端が手技を行なう心臓の部位まで到達すれば、挟圧手段Kをカテーテル30から突出し、卵円孔の欠損O(以下、単に卵円孔Oと称することもある)が生じている心臓の心房中隔M1と卵円孔弁M2の組織を挟持する。この挟持状態で挟圧手段Kに電気エネルギを供給し、両組織を加熱融着し、欠損Oを閉鎖する。なお、図中、「L」は左心房、「R」は右心房を示す。
さらに詳述する。挟圧手段Kは、心房中隔M1の一側面に直接接触する挟持部材1と、卵円孔弁M2に穿刺する穿刺部2とから構成されている。挟持部材1と穿刺部2は、いずれも電極部材として機能するものであり、図2に示すように、基部がカテーテル30の先端に接合された先端チップ50に保持され、先端チップ50から突出されると、相互に対向する位置を取るようにルーメン内に位置規制されて収納されている。
まず、挟持部材1は、全体的に扁平な板状で所定の幅Lを有する平板部1aと、基端部に接続された一対の線材部1bとから構成され、ルーメンL3,L4(図11参照)によりその平面位置が規制されており、また、U字状に形成された線材部1bの基端側に1本の操作コード7bが接続され、操作コード7bを軸方向に進退させることにより、先端チップ50から突出して穿刺部2との間に所定の挟持巾を形成したり、あるいは穿刺部2側に向って接近し生体組織を挟持するように変位する。
つまり、線材部1bは、折曲部1cと直状部1dを有し、直状部1dが先端チップ50のルーメンL3,L4に進退可能に挿通されているので、操作コード7bを牽引操作すれば、折曲部1cが先端チップ50のルーメンL3,L4の入口部分に入り込むとき、挟持部材1を穿刺部2に対し、平面位置が規制された状態で接近するように変位させることができ、細いカテーテル30の先端部であっても両電極部材による生体組織Mの挟持を容易にかつ円滑に行うことができる。また、操作コード7bを押し出し操作すれば、逆に先端チップ50から突出して穿刺部2との間に所定の挟持巾を形成する。
挟持部材1は、平板部1aの材質としては、SUS材であってもよいが、電極としての機能を果たし、生体に悪影響を及ぼさないもの、例えば、金、銀、白金、タングステン、パラジウムまたはこれらを含む合金や、Ni-Ti合金、チタン合金等を使用することが好ましい。
一方、穿刺部2は、先端チップ50に形成されたルーメンL1,L2(図11参照)によりその平面位置が規制された状態で進退可能に保持されており、また、U字状に形成された基端側に接続されている操作コード7cを操作することにより先端部が先端チップ50より出没し得るようになっている。
穿刺部2は、図2に示すように、軸直角断面が円形の、先端が鋭利に尖った極めて細い2本の針部材が相互に離間し、かつ、突出されると先端が拡開するように弾性が付与されている。このような穿刺部2により卵円孔弁M2を穿刺すれば、様々な形態の卵円孔弁M2や心房中隔M1であっても、針部材(電極部材)を卵円孔弁M2に位置決めすることができ、生体組織Mの挟持操作が容易になる。また、先端が拡開するよう構成すれば、卵円孔弁M2を融着させる範囲が広範囲になり、手技の容易化、迅速化、確実化に寄与する。
穿刺部2は、針部材として機能するものであればどのようなものであってもよく、中実の針部材のみでなく、中空の円環状のものであってもよい。針部材の外径としては、0.1mm〜2mmのものが好ましい。材質としては、SUSが使用されるが、生体に悪影響を及ぼさないもの、例えば、金、銀、白金、タングステン、パラジウム、チタンまたはこれらを含む合金、Ni−Ti合金等を使用することもできる。本実施形態では、2本の針部材を使用しているが、さらに多数であってもよい。
挟持部材1や穿刺部2をカテーテル30から出没させる操作コード7b、7cは、挟圧手段Kをカテーテル30内で進退させることができる細い線状の部材であり、電気導通性があれば、どのようなものであってもよい。例えば、ステンレス、Ni-Ti、チタンなどのワイヤーを使用することが好ましい。
各操作コード7b、7cは、カテーテル30内を挿通し、後述の手元操作部70のソケット部材27、これに嵌合されるカプラー87、導線d(d1、d2の総称)及び制御部22と電気的に接続され、電気エネルギ供給手段20からの電気エネルギが供給されるようになっている。
挟圧手段Kでは、穿刺部2も挟持部材1もそれぞれ独立にカテーテル30内で軸線方向に移動可能となっている。このように穿刺部2及び挟持部材1を操作コード7b,7cを用いて相互に独立移動可能とすれば、穿刺部2では、任意の位置で穿刺でき、生体組織Mの状況に応じての手技が極めて容易で円滑になり、挟持部材1では、穿刺された状態の卵円孔弁M2に対し心房中隔M1を押しつける移動乃至操作や、肉厚方向での生体組織Mの位置決めが容易となる。
なお、先端チップ50は、図11に示すように、複数のルーメンL1〜L5を有しているが、これら各ルーメンL1〜L5をそれぞれカテーテルにより構成してもよい。
手元操作部70は、図2に示すように、全体的には術者が片手で把持し易い形状、つまり、外周面が滑らかな円弧状を呈する矩形箱状の本体部75と、本体部75に対し近接離間するように設けられたスライド部100とを有し、本体部75の上面には穿刺部2を操作する操作部材P2の一部である針操作レバー78が設けられている。
ここに、挟持部材1を操作する操作部材P1はスライド部100、作動バー81、端子24及び操作コード7bから構成され、穿刺部2を操作する操作部材P2は針操作レバー78、端子23及び操作コード7cから構成されている(図3参照)。
本体部75は、図2に示すように、最中合せされる左右一対の本体ピース75a,75bからなり、内部には、後述する穿刺端子用のチャンバ47や挟持端子用のチャンバ48が区画形成され、また、主管63なども収容されている。
さらに詳述する。図3は図2の3−3線に沿う矢視端面図、図4(A)は仕切り部材の斜視図、図4(B)は図4(A)のB−B線に沿う断面図、図5は図2の5−5線に沿う矢視端面図、図6は図2の6−6線に沿う断面図である。なお、図4Aは、図2あるいは図3に示す取付状態より反時計方向に90度回転させた状態を示している。
図3に示すように、左側の本体ピース75aの内部には、比較的幅広の中央凹溝77が、中心軸線に沿い本体ピース75aの先端部より所定長Y1だけ形成され、中央凹溝77の右端部位はさらに幅広に形成され、ここに、穿刺用の端子23と挟持用の端子24との間で血液を介して通電が生じないようにする通電防止手段Tとしての仕切り部材40が嵌合されている。
仕切り部材40は、図4Bに示すように、長手方向中心軸線に沿って開設された中央ルーメンLcと、中央ルーメンLcを中心として等角放射位置に中央ルーメンと平行に設けられた4つのサブルーメンLsとを備え、図4Aに示すように、両端にフランジ部41,42を有するものである。仕切り部材40の製作に当っては、5ルーメンが形成された円柱状棒材を利用し、これの両側を削落することにより2つのサブルーメンLsを露出させ、ここに後述の端子摺動面43,44を形成する。なお、先端側のフランジ部41には、連結管45が軸線方向に突出され、ここにカテーテル30の基端側が連結される。基端側のフランジ部42には、ガイド管46が軸線方向に突出され、内部に主管63などが挿通されている。
本実施形態の通電防止手段Tは、図6に示すように、本体部75を構成する左右一対の本体ピース75a,75bを左右から最中合せすることにより仕切り部材40を挟圧保持し、上方の穿刺端子用のチャンバ47(第1のチャンバ)と下方の挟持端子用のチャンバ48(第2のチャンバ)に仕切ることにより形成している。なお、両チャンバ47,48間のシール性を高めるために、仕切り部材40を、接着剤を用いて本体ピース75a,75bに接合している。ただし、このような方法のみでなく、例えば、本体ピース75a,75bと仕切り部材40とを凹凸嵌合させる方法、あるいは両者間にシール部材を介在させる方法などを用いてもよい。
仕切り部材40は、本体部75内中央に設けられ、主管63を支持する機能や、両チャンバ47,48間に血流の入り込みを防止する機能など、種々の機能を備えている。
本実施形態は、入り込んだ血流を外部に排出する排出口B(図6参照)を、穿刺端子用のチャンバ47と挟持端子用のチャンバ48にそれぞれ形成している。排出口Bは、両チャンバ47,48に形成することが好ましいが、いずれか一方であってもよい。このような排出口Bを形成すれば、仮に血流がチャンバ47,48内に流れ込んでも、これを容易に外部に排出し、通電防止をより確実なものにし、また、デバイスの内部を洗浄あるいはガス殺菌する場合も、洗浄液やガスの流れを円滑にし、極めて容易にかつ円滑に行うことができる。
仕切り部材40の中央ルーメンLcは、図3に示すように、本体部75の内部に形成されている内部通路Qa及びスライド部100の内部通路Qbと共に、主通路Qの一部ともなっている。
本体部75の内部通路Qaには、主管63、主管63内に設けられた主操作ロッド7a、主管63の側部を伸延する操作コード7b,7cが設けられているが、主通路Q自体は、カテーテル30の先端から本体部75の内部通路Qa及びスライド部100の内部通路Qbを通り、スライド部100の後端まで貫通して形成されている。
先端から後端まで貫通する主通路Qの形成により、例えば、デバイスを使用する前にプライミングを行う場合に、カテーテル30の先端からプライミング液を注入でき、プライミング作業が容易でかつ円滑にでき、空気混入のリスクが大幅に低減する。加えて、デバイス内部などの洗浄あるいはガス殺菌も容易となる。
上方の穿刺端子用のチャンバ47では、図6に示すように、仕切り部材40の上方側端子摺動面43に沿って穿刺用の端子23がスライド移動し、下方の挟持端子用のチャンバ48では、仕切り部材40の下方側端子摺動面44に沿って挟持用の端子24がスライド移動する。
穿刺用の端子23は、図3、図4Aに示すように、上方側端子摺動面43に沿って移動する摺動片23aと、摺動片23aに一体に形成された突出片23bとからなり、摺動片23aには、操作コード7cの基端が半田などにより接合され、摺動片23bの上端は、針操作レバー78に形成された嵌合溝23cに嵌合されている。
針操作レバー78は、図6に示すように、頭部78a、首部78b、脚部78cを有し、首部78bが本体部75に形成されたスリット79(図2参照)を挿通し、頭部78aと脚部78cでレール79aを挟持している。したがって、穿刺用の端子23は、針操作レバー78をスリット79に沿って摺動すると、穿刺用操作コード7cを介して穿刺部2を進退させることができる。
一方、挟持用の端子24は、図3、図4Aに示すように、端子摺動面44に沿って移動する摺動片24aと、摺動片24aに一体に形成された突出片24bとからなり、摺動片24aには挟持用操作コード7bの基端が半田などにより接合され、突出片24bは,一部にくびれ部が形成され、このくびれ部が作動バー81の軸線に沿って所定長Y2切除された作動溝部81aに嵌合されている。
作動バー81は、図3に示すように、本体部70からスライド部100にわたって設けられ、基端側がスライド部100に凹凸係合され、先端側が本体ピース75aに形成された溝部82に嵌合されている。したがって、挟持用の端子24は、スライド部100を後方にスライド移動すると、作動バー81がこれに伴って移動し、作動溝部81aの端部が突出片24bに当り、後退移動する。また、逆に、スライド部100を前方にスライド移動すると、作動溝部81aの反対側の端部が突出片24bに当り、突出片24bを前進移動することになる。これによって挟持部材1は、挟持用操作コード7bを介して穿刺部2に対し近接離間することになる。
本体ケース75aの主通路Qには、図3に示すように、主管63が挿通されている。主管63は、このデバイスの、いわば中心軸的機能を発揮するものであるが、主管63の基端側は、断面T字状の管状ホルダー63a(図8参照)が固着され、管状ホルダー63aをスライド部100に形成されたT字状溝部に嵌合することによりスライド部100に連結されている。したがって、主管63もスライド部100の前後進スライド動作に応じて両ケース75a,75b及び仕切り部材40にガイドされて摺動する。
主管63を構成するものとしては、変形可能な弾性材料、例えば、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、PET、ナイロン、フッ素樹脂、ポリプロピレンなどを使用することができる。
また、主管63内に設けられた主操作ロッド7aは、軸方向に牽引操作し挟圧手段Kの操作を補助する機能を有するものであるが、主管63内で軸線を中心として360度回転可能となっている。主操作ロッド7aが360度回転可能であれば、主操作ロッド7aの先端を卵円孔Oの近傍まで挿入し、これを回転的に位置変位させることにより卵円孔Oに挿通させることができる。この結果、卵円孔Oの状態が種々変形していても、その形状状態如何に拘わらず、デバイスの先端を卵円孔Oに挿通させることができ、手技を容易化、迅速化を図ることができる。
主操作ロッド7aとしては、細い中空線材で、比較的剛性を有するものであれば、どのようなものであってもよいが、例えば、ステンレス、Ni-Ti、チタンなどの細管を使用することが好ましい。
図5に示すように、前述した端子23,24の移動終端位置近傍には、接触部材25,26が設けられている。接触部材25,26は、導線d1、d2を介してエネルギ供給手段20のソケット部材27と接続されている。
接触部材25,26をさらに詳述する。図3と図5は、最中合わせされる本体ピース75aと75bの内部構成の理解を容易にするため、矢視方向を相違させて示し、天地の対応関係が逆の位置となっており、図3の下部と図5の上部、図3の上部と図5の下部が合体される部分である。また、図3と図5では、最中合わせされる本体ピース75aと75b内の各部材の対応関係が理解しやすいように対応して図示すると共に、各部材は断面せず、両本体ピース75aと75bの内端面のみを示している。
図5において、接触部材25,26は、端子23,24と接触する当接部S1と、当接部S1から突出する脚部S2と、脚部S2の突出端が内部に収容される筒状カラーS3と、脚部S2を外方に向って弾発するバネS4とを有している。したがって、各当接部S1は、常時はバネS4により突出されるが、端子23,24により押されて後退する場合には、図示のように所定長の導通可能範囲X1内で移動することになる。このように所定長の導通可能範囲を有していると、人により卵円孔弁M2などの厚さや形状に相違により、穿刺部2の穿刺状態あるいは挟持部材1の挟持状態が異なり、端子23,24の移動完了位置が区々となっても、接触部材25,26が端子23,24と確実に接触して電気的に導通し、生体組織の融着あるいは壊死を確実に行うことができる。また、摺動的に電気的接触状態を形成する構成のものもあるが、このようなものに比べると、接触部材25,26と端子23,24との接触が確実になり、しかも故障も少なく、端子23,24のスライド操作も摩擦抵抗力が少なく軽いものとなる。
ただし、接触部材25,26と端子23,24の組が両方とも弾性的接触する必要はなく、一方のみを弾性的接触とし、他方は常時接触状態の構成としてもよい。
なお、エネルギ供給手段20からの電流をオンオフ制御するスイッチSW(図1参照)が導線d1又はd2のいずれか一方に設けられているが、このスイッチSWは、手元操作しやすい手元スイッチであってもよいが、足元に設置するフットスイッチであれば、両手の自由度が増し、好ましい。
図3に示すように、本体部75の左端部には、連結機構90(図7に詳示)が設けられている。連結機構90は、本体部75に対するYコネクタ72の脱着を容易にするためのもので、後に詳述するが、Yコネクタ72の基端部に設けられたフランジ部を、本体部75に形成された環状溝mに嵌合させると、摺動部材91がバネ部材92により弾発され、フランジ部の抜け止め機能を発揮し、Yコネクタ72が脱着可能となる。
なお、手元操作部70の先端には、造影剤などを注入することができるYコネクタ72を連結部材71により連結することが好ましいが、Yコネクタ72を使用しない場合には、本体部75にフランジ部を有するガイディングカテーテル31を直接連結することになる。なお、Yコネクタ72は、ガイディングカテーテル31の任意の位置に設けてもよい。
図7は連結機構の概略図である。連結機構90は、通孔94を有する平板である摺動部材91をバネ部材92により常時上方に弾発し、両本体ピース間に摺動可能に設置したものである。したがって、摺動部材91に設けられた押し片93をバネ部材92に抗して下方に向って押すと、通孔94が全開し、Yコネクタ72やガイディングカテーテル31などのフランジ部が挿通し得る大きさとなり、押し片93を放すとバネ部材92が上昇し、本体ピースと摺動部材91との間で通孔94の開口領域が狭められ、Yコネクタ72やガイディングカテーテル31などを本体部75に保持できる。
図8は図3の8−8線に沿う概略断面図である。本体部75の両側方端部位には、図8に示すように、本体部75に対しスライド部100を進退させるための一対のガイドバー95が溝96内に設けられている。ガイドバー95の一端には、抜け止め用の大端部97が設けられ、スライド部100に形成された溝96の大端部に嵌合され、他端部は、本体部75内の溝96a内に摺動可能に挿入されている。
主管63内を挿通した主操作ロッド7aは、図8に示すように、スライド部100の中央に形成された内部通路Qbを通って外部まで伸延されているが、出口部分には、ロック−アンロック機構102が設けられている。
図9はロック−アンロック機構を示す断面図、図10は図9の10−10線に沿う断面図である。本実施形態のロック−アンロック機構102は、作動部材104を昇降動作することによりスライド部100と本体部75とを連結したり、スライド移動を可能にするスライド部用の第1ロック部R1と、主操作ロッド7aの先端部に設けられた、後述の位置決め保持部60が生体組織Mの保持あるいは位置決めするとき、主操作ロッド7aの軸線方向の進退操作を一時的に停止させる主操作ロッド用の第2ロック部R2と、を併有している。
第1ロック部R1は、図9、図10に示すように、スライド部100に形成されたスライド孔103内に摺動自在に設けられた作動部材104と、作動部材104に一体的に設けられ、本体部75に対しスライド部100の移動を規制する規制ロッド110とから構成されている。なお、図中、符号「107」はバネ、「108」はストッパ部材、「109」は押し片である。
規制ロッド110には、本体部75aの係合凹部111bと係合する係合突起111aが先端に設けられているので、作動部材104を押圧すると、係合突起111aと係合凹部111bとの係合が解除され、スライド部100は、本体部75aに対しスライド可能になる。したがって、スライド部100を後退動作すれば、作動レバー81を介して挟持部材1を穿刺部2に対し近接作動させることができる。また、作動部材104には第2ロック部R2も設けられ、作動部材104の押圧により第2ロック部R2も解除されることになる。
このように第1ロック部R1の解除と、第2ロック部R2の解除とを連動すれば、挟持操作1のカテーテル内への格納操作と、長尺な主操作ロッド7aを左心房側から引き抜く際に、必ず主操作ロッド7aを直状にする操作とを連動させることでき、生体組織Mを損傷させる可能性がある主操作ロッド7aが湾曲している状態での牽引操作や、挟持状態にある挟持部材1の後退動作を未然に防止でき、生体組織Mを損傷あるいは破断する事態を未然に防止できる。
一方、主操作ロッド用の第2ロック部R2は、作動部材104に形成された係止部105と、主操作ロッド7aに形成された大径部106とから構成されている。
特に、本実施形態の第2ロック部R2は、主操作ロッド7aの軸線方向の進退操作を一時的に停止させるために、作動部材104に設けられた係止部105を、広幅部G1と狭幅部G2とを有する通孔としている。広狭2種類の通孔であれば、大径部106の係止と離脱が確実で、簡単にでき、手技の安全性あるいは確実性が向上する。
この通孔を楔形の通孔とすれば、主操作ロッド7aを通孔内で移動させるのみで、大径部106の挟持がより強力となり、別途加圧手段などを設けなくても、主操作ロッド7aを固定位置に保持でき、手技を容易に、安全かつ確実に行なうことができる。
通常手技を行う場合、位置決め保持部60が生体組織Mの保持や位置決めを行った後に、穿刺部2による穿刺操作を行うが、生体組織Mの保持や位置決めは、主操作ロッド7aを牽引して行う。ところが、主操作ロッド7aを牽引して生体組織Mの保持や位置決めを行っても、この保持状態や位置決め状態を維持していなければ、穿刺操作を行うことができない。したがって、本実施形態では、主操作ロッド7aを牽引操作したときに、第2ロック部R2において、大径部106を係止部105(場合によっては通孔の口縁部105a)に係止し、主操作ロッド7aを一時的にロックした状態にし、主操作ロッド7aを持つ手を離しても、前記保持状態や位置決め状態を維持できるようにし、穿刺部2による穿刺操作のみを単独で行うことを可能にしている。
大径部106は1箇所のみでなく、複数箇所に設けてもよい。複数箇所に設けると、各大径部106により主操作ロッド7a先端の状態あるいは位置を手元で知ることができ、手技の利便性、安全性あるいは確実性が向上する。
第2ロック部R2における大径部106は、主操作ロッド7aの一部にテープを巻回することにより大径部を形成しているが、このような方法のみでなく、段差部が形成された別部材を主操作ロッド7aの一部に固着してもよい。
また、第2ロック部R2では、大径部106を設ける位置により操作の利便性を高めることができる。例えば、主操作ロッド7aにおける大径部106を、保持部62が卵円孔弁M2を保持した状態のとき楔形の通孔105に対応する位置に設けると、後述する保持部62が卵円孔弁M2を保持する場合、つまり、主操作ロッド7aをスライド部100から引き出す方向に牽引する場合、主操作ロッド7aは引き出すことにより行うが、この引き出しを停止した位置で大径部106を係止部105に押し込み係止すれば、主操作ロッド7aを保持部62の保持状態でロックし、この保持状態を維持できる。また、ロックを解除すれば、保持部62における弾性線材66,67の弾性により主操作ロッド7aの先端部分は自動的に直状になり、卵円孔弁M2の保持状態を簡単に解除できる。
第2ロック部R2は、必ずしもスライド部100に設けられたロック−アンロック機構102の作動部材104に設ける必要はなく、主操作ロッド7aを一時的にロックし得る位置であれば、どのような位置であってもよい。例えば、本体部75の端部に設けてもよく、また、スライド部100や本体部75とは別途独立したものであってもよい。
エネルギ供給手段20は、挟圧手段Kに電気エネルギを供給するもので、公知のシステム構成のため詳述は避けるが、制御の容易性からすれば、直流電源や交流電源を問わず、電気的なものが好ましい。ただし、これのみでなく、挟圧手段Kにより挟持した卵円孔弁M2と心房中隔M1とを熱により溶融し、コラーゲンやエラスチンなどの接着因子で圧着させることが可能なエネルギを供給できるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、超音波、レーザー、マイクロ波あるいは高周波などを使用することもできる。
また、電気エネルギ供給方式としては、右心房R側の穿刺部2あるいは挟持部材1と体表に設けられた対極板との間で通電するモノポーラ方式、右心房R側の挟持部材1と左心房L側の穿刺部2との間で通電するバイポーラ方式などを使用することができる。特に、穿刺部2と挟持部材1との間の生体組織Mのインピーダンスにより電流を制御するバイポーラ方式であれば、人により相違する卵円孔弁M2と心房中隔M1の組織の状態に応じて容易に対応することができ、安全性と手技の利便性が得られるという利点がある。
図11は図2の11−11線に沿う断面図である。先端チップ50は、図11に示すように、5つのルーメンL1〜L5が開設されており、第1及び第2のルーメンL1,L2と、第3及び第4のルーメンL3、L4には、前述のように穿刺部2と挟持部材1が挿通されている。また、中央の口径が最大の第5のルーメンL5には、主管63のほかに、主操作ロッド7aも挿通乃至収容され、主操作ロッド7aに位置決め保持手段60が設けられている。
位置決め保持手段60は、図2に示すように、概して、穿刺部2を卵円孔Oに対し位置決めする位置決め部61と、穿刺部2の穿刺方向に対し卵円孔弁M2を後退不能に保持する保持部62とから構成され、常時はガイディングカテーテル31内に収納されているが、使用時には、図示のように主操作ロッド7a及び主管63を操作することによりガイディングカテーテル31から押し出される。
さらに詳述すれば、中央のルーメンL5には、主管63と、主管63内で軸方向に進退自在に設けられた主操作ロッド7aが設けられている。主管63は、主通路Q内を伸延するもので、中心軸的な機能を発揮し、またカテーテル30を補強するものでもあるが、さらに、位置決め保持手段60をカテーテル30内に引き込み回収するものでもある。主操作ロッド7aは、カテーテル30の先端から主管63内を通りスライド部100の内部通路Qbを通って、後端より突出されている。
主管63の先端部には、位置決め保持手段60(位置決め部61と保持部62の総称)が設けられている。位置決め保持手段60における位置決め部61は、卵円孔Oに対し穿刺部2を位置決めするもので、図2に示すように、主操作ロッド7aの操作により拡開縮小作動される一対の第1弾性線材66から構成されている。第1弾性線材66の基端は、先端チップ50に形成されたガイド溝51にガイドされた後に、先端チップ50内で主管63の外面に取り付けられ、先端は、内部に主操作ロッド7aが挿通された中間スリーブ体64の基端側に取り付けられている。
このように第1弾性線材66の基端側を、カテーテル30の先端部内に設けられた先端チップ50に形成されたガイド溝51で支持した状態で主管と連結すると、第1弾性線材66を長くすることができ、種々の欠損に対応して確実に位置決めできる位置決め部となる。
位置決め部61は、主操作ロッド7aを主管63の先端より突出し、主操作ロッド7aを軸方向に進退する操作により、主管63に取り付けた基端を支点として第1弾性部材66を外方に変位させ、各第1弾性部材66が卵円孔Oの内縁を略等しい弾性力で押圧し、穿刺部2を卵円孔Oに対して調心する。つまり、両第1弾性部材66間に位置する穿刺部2を卵円孔Oの中央部に位置させる機能を発揮する。
一方、保持部62は、穿刺部2が卵円孔弁M2を穿刺しやすいように背面側から保持するもので、図2に示すように、主操作ロッド7aの先端部に設けられた当り部材68、先端スリーブ体65、及び、中間スリーブ体64と先端スリーブ体65とを連結する一対の第2弾性線材67を有している。当り部材68は主操作ロッド7aの先端にかしめ固定され、先端スリーブ体65及び中間スリーブ体64は内部に主操作ロッド7aが挿通し、第2弾性線材67は基端が中間スリーブ体64の先端に溶着され、先端側が先端スリーブ体65に溶着されている。
これら中間スリーブ体64、先端スリーブ体65、両スリーブ体64,65を連結する第2弾性線材67、当り部材68は、主操作ロッド7aの先端部を屈曲乃至湾曲させる湾曲機構Wを構成している。
湾曲機構Wは、卵円孔弁M2を保持するために用いられるものである。穿刺部2が卵円孔弁M2を穿刺するとき、薄い卵円孔弁M2は背面側から保持すると穿刺が容易になる。したがって、湾曲機構Wは、主操作ロッド7aを軸方向に後退させることにより、当り部材68と第1弾性部材66の先端側との間で第2弾性線材67を屈曲乃至湾曲させ、当り部材68及び先端スリーブ体65により卵円孔弁M2を背面側から保持するようにしている。つまり、湾曲機構Wは、主管63に取り付けた第1弾性部材66の先端側を支点として、主操作ロッド7aの先端部が屈曲乃至湾曲するようになっている。
ただし、保持部62の湾曲機構Wは、位置決め部61の第1弾性部材66が穿刺部2を卵円孔Oに対して調心して位置決めを行った後に、湾曲して卵円孔弁M2を保持するように構成する必要があるので、第1弾性部材66が第2弾性線材67に先んじて変形する必要がある。
この構成としては、例えば、材質的に第2弾性線材67の方が第1弾性線材66よりも高剛性のものを使用する方法、第1弾性線材66の一部を予め屈曲変形するなどの易変形部を形成し、牽引力が作用すると易変形部の変形により第1弾性線材66が第2弾性線材67より先に湾曲させる方法なども使用できる。
第1及び第2の弾性線材66,67の具体例としては、外径が、0.1mm〜0.5mm程度で、ステンレス鋼、ニッケル−チタン、超弾性合金(例えば、Ni−Ti合金)などの金属ワイヤーを使用することが好ましい。また、金属ワイヤーに樹脂(軟性)チューブを被覆することで組織の傷付きを防止させてもよい。
なお、ロック−アンロック機構102の第2ロック部R2のロック時には、湾曲機構Wが発揮する弾性力と第2弾性線材67の弾性力が主操作ロッド7a及び大径部106を介して第2ロック部R2に作用するが、楔形の通孔である係止部105は大径部106を押し込むことにより強烈に大径部106を保持するので、外れるおそれは少ない。ただし、大径部106を楔形の通孔の口縁部105aに係止すれば、さらに強力に係止でき、湾曲機構Wや第2弾性線材67の湾曲状態を保持できる。
本体部75に対しスライド部100を進退させると、スライド部100に固着されている主管63をカテーテル30の中央のルーメンL5内に引き込むことができ、これに伴って位置決め保持手段60全体をカテーテル30内に回収できる。
本実施形態のガイディングカテーテル31は、卵円孔弁M2と心房中隔M1との間の卵円孔Oに容易に向うことができるように、先端が円弧状に緩やかに湾曲してもよい。卵円孔弁M2と心房中隔M1とは、人により相違するので、ガイディングカテーテル31の先端を湾曲させると、ガイディングカテーテル31自体を回動するのみで卵円孔Oに向けることでき、直状の場合よりも手技の安全性と利便性が向上する。
次に、本実施形態の作用を説明する。
図12は主操作ロッドを卵円孔に挿入する断面概略図、図13は卵円孔弁を保持し穿刺部を穿刺した状態の断面概略図、図14は穿刺部と挟持部材とにより卵円孔弁及び心房中隔を挟持した断面概略図、図15(A)〜(D)はPFO閉鎖デバイスの先端部の操作状態を示す概略図である。なお、図15(A)〜(D)において、第2弾性線材66の形状及び位置は、挟持部材1や穿刺部2と略面一の状態であるが、理解を容易にするために、図示の位置を90度変位した状態で示しており、実際の変形状態とは相違する。
まず、術者は、ロック−アンロック機構102における第1ロック部R1の押し片109をスライド部100の内方に押圧すると、作動部材104がスライド孔103内で下降する。作動部材104の下降に伴って規制ロッド110も下降し、規制ロッド110の係合突起111a(図3参照)と本体部75の係合凹部111bとの係合が外れる。これにより、スライド部100は本体部75に対し可動状態になる。
スライド部100を本体部75に対し後退させると共に、針操作レバー78も後退させると、挟持部材1や穿刺部2などがカテーテル30内に収納された状態となる。ただし、カテーテル30の先端部は、ガイディングカテーテル31の先端より少し突出した状態とする。この状態で、ガイドワイヤーをガイドとしてガイディングカテーテル31の先端を生体の所定位置から挿入し、大腿静脈Jを通り右心房Rまで到達させる。なお、ガイディングカテーテル31のみを生体に挿入し、後にこれをガイドにカテーテル30を挿入してもよい。
カテーテル30の先端が右心房Rに到達すると、スライド部100を少し前進させ、主管63を前進移動させると共に、ロック−アンロック機構102の押し片109を押圧し、作動部材104に形成された通孔105の狭幅部G2に、主操作ロッド7aの大径部106が当らない状態、つまり第2ロック部R2をアンロック状態とし、主操作ロッド7aをフリーな状態にする。
そして、主管63の先端から主操作ロッド7aを押し出し、卵円孔弁M2と心房中隔M1との間の卵円孔Oに向わせる。なお、ガイディングカテーテル31の先端は湾曲しているので、カテーテル30もガイディングカテーテル31にガイドされて湾曲し、カテーテル30を介して湾曲した主操作ロッド7aを比較的容易に卵円孔Oに向わせることができる。
次に、主操作ロッド7aを前進させ、図15(A)に示すように、主操作ロッド7aの先端を先端スリーブ体65から突出し、左心房L内に挿入する。この突出状態は、当り部材68などにX線不透過マーカーを設けていると、X線画像により外部から視認することができるが、この突出により主操作ロッド7aの先端が左心房Lの内壁などに当ると、視認が困難な場合であっても、感覚的に主操作ロッド7aの位置を確認できる。本実施形態では、主操作ロッド7aを360度回転可能としているので、図12に示すように、主操作ロッド7aを回転しながら前進でき、卵円孔Oに容易に挿通させることができる。
主操作ロッド7aの先端位置の確認後、図15(B)に示すように、主操作ロッド7a先端の当り部材68が先端スリーブ体65に当接するまで主操作ロッド7aを後退させる(後退量は図15Bの「δ1」)。
主操作ロッド7aを後退させると、大径部106も後退するが、ロック−アンロック機構102では、押し片109を押圧しない限りバネ107の弾発力により作動部材104が上方に付勢されているので、主操作ロッド7aは、楔形の通孔105の狭幅部G2と内部通路Qbの内周面との間で挟圧保持される。この時点では、主操作ロッド7aの先端側に設けられた弾性線材66,67は屈曲乃至湾曲されていないので、その弾性が主操作ロッド7aに作用することはなく、前記挟圧保持により主操作ロッド7aをロックできる。したがって、主操作ロッド7aを後退させる必要が生じても、主操作ロッド7aの後退を停止した時点でロックされる。そして、本体部75を操作し、第2弾性線材67、挟持部材1及び穿刺部2を卵円孔弁M2の近傍に位置させ、保持部62全体を左心房L側に挿入する。
主操作ロッド7aをさらに後退させると(後退量は図15Cの「δ2」)、この後退させる操作力が、主操作ロッド7aにより、当り部材68、先端スリーブ体65、第2弾性線材67及び中間スリーブ体64を介して、基端が主管63に取り付けられた第1弾性線材66に伝達され、第1弾性線材66を、図15(C)に示すように、径方向外方に向って円弧状に突出変形させる。ただし、この時点では第2弾性線材67は変形していない。主操作ロッド7aの後退は、第1弾性線材66の弾性力が主操作ロッド7aに作用するので、本実施形態では、主操作ロッド7aに設けられた大径部106の外周面を楔形通孔である係止部105に押し込むことによりあるいは楔形通孔の口縁部105aに当接することにより第2ロック部R2をロックし、これに対抗してもよい。
この結果、第1弾性線材66は、卵円孔Oの口縁部分を押し広げつつ変形することになるので、第1弾性線材66の直近に設けられている穿刺部2を卵円孔Oに対して調心し、穿刺部2を卵円孔Oの中心に位置させる。
さらに主操作ロッド7aを後退操作し(第2ロック部R2をロックしている場合はこのロックを外し)、図15(D)に示すように、中間スリーブ体64の後端が主管63の先端に当接すると、第1弾性線材66はあまり変形せず、先端側の第2弾性線材67が、操作力により径方向外方に向って円弧状に突出変形する。この結果、図13に示すように、左心房L内において、当り部材68と先端スリーブ体65が穿刺部2に近付くように湾曲するので、当り部材68と先端スリーブ体65は、卵円孔弁M2の左心房側の面に当接し、これを保持することになる。
ロック−アンロック機構102における第2ロック部R2では、大径部106の楔形通孔である係止部105への押し込み係合か、あるいは大径部106の端部が楔形通孔の口縁部105aに係合する、いわゆる引っ掛け係合により第1弾性線材66と第2弾性線材67の両弾性力の合力に対抗し、主操作ロッド7aを常時前方移動しないようにロックする。この結果、術者が主操作ロッド7aから手を放しても保持状態は確実に維持され、卵円孔弁M2の保持が緩むことはなく、術者は、片手のみで針操作レバー78を前進させることができる。
針操作レバー78を前進させると、端子23,操作コード7cを介して穿刺部2をカテーテル30の先端から突出し、卵円孔弁M2の所定位置に穿刺部2を穿刺する。卵円孔弁M2の保持の緩みによる穿刺不能という事態が生じるおそれはない。
穿刺部2の位置は、位置決め保持部62により定められるので、ズレるおそれはなく、また一旦穿刺部2を穿刺すると、穿刺部2の位置は、卵円孔弁M2との関係では固定的な位置となる。したがって、術者は、穿刺操作が極めて容易になる。
この穿刺により手元操作部70では、端子23が接触部材25に弾性的に接触した状態になる。
穿刺が完了すると、スライド部100を本体部75に対しさらに前進させる。これにより作動レバー81が前進し、端子23及び操作コード7bを介して挟持部材1の平板部1aがカテーテル30の先端から突出する。そして、平板部1aが心房中隔M1に対向する位置になると、スライド部100を本体部75より多少後退させる。これにより作動レバー81も後退し、端子23及び操作コード7bを介して平板部1aが後退され、線材部1bの曲げが先端チップ50のルーメン内に入るときの影響を受け、平板部1aは穿刺部2に近付くように変位する。この変位により平板部1aは、心房中隔M1を卵円孔弁M2に向って押圧し、心房中隔M1と卵円孔弁M2が肉厚方向、つまり操作状態では前後方向の位置が固定され、図14に示すように、挟持部材1と穿刺部2の間に心房中隔M1と卵円孔弁M2が存在している状態となる。
この段階で、ロック−アンロック機構102における第2ロック部R2のロックを解除すべく、押し片109を押し、主操作ロッド7aのロックを解除すれば、主操作ロッド7aと当り部材68による第1弾性線材66と第2弾性線材67の加圧がなくなり、第1弾性線材66と第2弾性線材67が自らの弾性力により直状に伸びた状態になる。この状態で、スライド部100を後退操作すると、主管63を介して位置決め保持手段60全体がカテーテル30のルーメンL5内に回収される。
スライド部100の後退は、操作コード7bを介して挟持部材1の折曲部1cが先端チップ50の端部により穿刺部2側に近づくように変形されるので、図14に示すように、心房中隔M1と卵円孔弁M2は、挟持部材1と穿刺部2との間で強固に挟持されることになる。一方、手元操作部70では、主管63に取り付けられている端子24も後退し接触部材26に接触することになる。
つまり、この段階でのスライド部100の後退は、生体組織Mの挟持と、端子24と接触部材26との接触状態を一挙に行うことになる。しかも、端子23と接触部材25とは先に接触状態となっているので、端子24と接触部材26との接触により挟持部材1と穿刺部2に電気エネルギを供給可能な状態となる。
したがって、術者がスイッチSWを作動させると、制御部22により制御された所定の電気エネルギが操作コード7b,7cを介して挟持部材1と穿刺部2に供給され、心房中隔M1と卵円孔弁M2が加熱される。
電気エネルギの制御部22は、出力を低く制御し、血栓の付着が生じにくくしているので、挟持部材1と穿刺部2の一部が血液中に露出していても、挟持部材1や穿刺部2に血栓の付着を防止できる。ただし、挟持部材1や穿刺部2の血液露出面に熱伝導を抑えるコーティングをすれば、血栓の付着は一層確実に防止されることになり、好ましい。
融着温度を維持しつつ加熱を継続すると、心房中隔M1と卵円孔弁M2の組織が溶融し、コラーゲンやエラスチンなどの接着因子により相互に融着される。
この治療中に、血液がカテーテル30内、あるいはカテーテル30とガイディングカテーテル31との間を通り手元操作部70の内部にまで流れ込み、これが両端子23,24間に至ると、血流を介して通電するおそれがある。
しかし、本実施形態では、穿刺用の端子23と挟持用の端子24が作動するチャンバ47,48が仕切り部材40により仕切られ、血液が両端子23,24間に入り込まないようにしているので、血流を介しての通電が防止される。したがって、術者は、生体組織Mを穿刺部と挟持部材により挟持するという手技に専念でき、手技も円滑かつ確実に行うことができる。
融着が完了すると、電気エネルギの供給を停止し、スライダ部100を後退し、穿刺部2を収容する。そして、連結機構90の93を押し、ガイディングカテーテル31と本体部75との連結を解き、本体部75を生体から離すように後退させると、ガイディングカテーテル31をガイドとしてデバイスが引き出される。この後、ガイディングカテーテル31を生体から抜去すると、手技は完了する。なお、手技の完了後、穿刺部2の抜去により卵円孔弁M2には極めて小さな穴が残るが、後に治癒され、血栓の発生などの悪影響が生じることはない。
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、前述の実施形態における位置決め保持手段60は、中間スリーブ体64を有するものであるが、これのみに限定されるものではない。例えば、図16は位置決め保持手段の他の例を示す概略図であるが、図16(A)のように、本実施形態において設けられる中間スリーブ体64は設けずに、先端スリーブ体65と主管63の間に、第1弾性線材66および第2弾性線材67を設けてもよい。この形態においては、主操作ロッド7aを後退させると、図16(B)のように、第1弾性線材66が径方向外方に向って円弧状に突出変形しつつ、第2弾性線材67が円弧状に屈曲変形する。すなわち、第1弾性線材66による穿刺部2の卵円孔Oの中心への位置決めと、第2弾性線材67によって屈曲した当り部材68と先端スリーブ体65による卵円孔弁M2の保持を、主操作ロッド7aの後退による1動作で同時に行うこととなる。
実施形態では、PFOの欠損を閉鎖する治療に使用されるものについて説明したが、本発明は、これのみに限定されるものではなく、左心耳閉鎖デバイス(Left Atrial Appendage)といった通路状の欠損を閉鎖する場合や、あるいは所定の部位の生体組織Mを熱的に壊死させる場合にも使用可能である。
前記実施形態のPFO閉鎖デバイスは、単にカテーテル内に収納して操作コードにより挟圧手段を操作しているが、これのみでなく、例えば、いわゆるバルーンを有するカテーテルと組み合わせ、所定位置まで搬送することも可能である。