JP2010214801A - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子 - Google Patents

液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 圧電素子の変位低下が抑制された液体噴射ヘッド及び液体噴射装置、並びに変位低下を抑制することができる圧電素子を提供する。
【解決手段】 液体噴射ヘッドは、液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板上に、第一電極と、鉛、ジルコニウム、及びチタンを少なくとも含有する圧電体膜を複数層積層してなる圧電体層と、第二電極とからなる圧電素子を備え、前記圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各圧電体膜の焼成後の膜厚が140nm以上である。
【選択図】図8

Description

本発明は、液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子に関する。
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが実用化されている。例えば、このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電体層を形成し、この圧電体層をリソグラフィー法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある。
このようなインクジェット式記録ヘッドに用いられる圧電素子としては、圧電素子を構成する圧電体層のX線回折広角法によって測定される(100)面半価幅を0.2度以下であると共に、(200)面半価幅が0.25度以上であることを規定したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この圧電素子は、このように半価幅を規定していることから、優れた変位特性を有するものである。
特開2006−278489号公報(請求項1等)
ところで、インクジェット式記録ヘッドの印刷物の見た目の粒状感等の印刷品質の低下の原因の一つとして、経時劣化による圧電素子の変位低下が挙げられるが、特許文献1に記載された圧電素子は、この経時劣化による変位低下が生じてしまうことがあるという問題がある。即ち、特許文献1に記載された圧電素子では、初期状態における圧電素子の変位特性、つまり変位量は優れているが、かかる規定を満たしていたとしても経時劣化による変位特性が低下しやすい場合がある。
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、その他の液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、圧電素子の変位低下が抑制された液体噴射ヘッド及び液体噴射装置、並びに変位低下を抑制することができる圧電素子を提供することを目的とする。
本発明の液体噴射ヘッドは、液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板上に、第一電極と、鉛、ジルコニウム、及びチタンを少なくとも含有する圧電体膜を複数層積層してなる圧電体層と、第二電極とからなる圧電素子を備え、前記圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各前記圧電体膜の焼成後の膜厚が140nm以上であることを特徴とする。
圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各圧電体膜の焼成後の膜厚が140nm以上であることで、図9に示すパルス波形を190億回印加する耐久試験での使用時において圧電素子の変位低下が5%以内に抑制されるため、本発明の液体噴射ヘッドは、吐出特性の経時劣化が抑制されている。ここで、「半価幅」とは、X線回折広角法により測定されたX線回折チャートで示される各結晶面に相当するピーク強度の半価での幅のことをいう。なお、本発明においては、この回折強度は、リガク社製:商品名GXR300により、測定条件:スキャンステップ0.02°、スキャン速度2°/min、スリット幅DS:0.2×5mm、RS:0.2×5mmで測定したものである。
本発明の好適な実施形態としては、前記圧電体膜がチタン酸ジルコン酸鉛からなることが挙げられる。
また、図9に示すパルス波形を190億回印加する耐久試験での使用時において圧電素子の変位低下を3%以内に抑制すべく、前記圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.240度以下であると共に、各前記圧電体膜の焼成後の膜厚が240nm以上であることが好ましい。
本発明の液体噴射装置は、上記いずれかに記載の変位低下が抑制された液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする。
本発明の圧電素子は、第一電極と、鉛、ジルコニウム、及びチタンを少なくとも含有する圧電体膜を複数層積層してなる圧電体層と、第二電極とからなり、前記圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各前記圧電体膜の焼成後の膜厚が140nm以上であることを特徴とする。圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各圧電体膜の焼成後の膜厚が140nm以上であることで、図9に示すパルス波形を190億回印加する耐久試験での使用時において変位低下を5%以内に抑制することができる。
本発明の記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。 本発明の記録ヘッドの平面図及び断面図である。 本発明の記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 本発明の記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。 耐久試験後の変位低下率を示すグラフである。 耐久試験条件を示す模式図である。 本発明の液体噴射装置を示す斜視図である。
(インクジェット式記録ヘッド)
まず、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法により製造される液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドについて説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のリザーバー部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバーの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えばガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第一電極60と圧電体層70と第二電極80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第一電極60、圧電体層70及び第二電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第一電極60を圧電素子300の共通電極とし、第二電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第一電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第一電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
圧電体層70は、第一電極60上に形成され、電気機械変換作用を示す圧電材料からなる。圧電体層70は、ペロブスカイト構造の結晶膜である圧電体膜を積層してなるものであり、Pb、Ti及びZrを少なくとも含むものである。圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電性材料(強誘電性材料)や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適であり、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)等も用いることができる。本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛を用いている。圧電体層70の厚さについては、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成する。
また、圧電体層70は、その表面がX線回折広角法によって測定される(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各圧電体膜の焼成後の厚みが140nm以上となっている。なお、本実施形態でいう各圧電体膜とは、第一電極60上面に接触して作製された一層目の圧電体膜を除き、一括して焼成されるものをいう。なお、一層目の圧電体膜は、配向及び粒径を制御するものであるため、ここでは除いている。このように(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各圧電体膜の焼成後の厚みが140nm以上となっていることで、本実施形態では、圧電体層70の経時変化、即ち変位低下を図9に示すパルス波形を190億回印加する耐久試験での使用時において5%以内に抑制することが可能である。なお、圧電体膜の焼成後の厚みの上限は330nmである。また、好ましくは、X線回折広角法によって測定される(100)面半価幅が0.240度以下であると共に、各圧電体膜の厚みが240nm以上となっていることである。この範囲であれば図9に示すパルス波形を190億回印加する耐久試験での使用時において変位低下を3%以内に抑制することが可能である。
また、圧電素子300の個別電極である各第二電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第一電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバー部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバー100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第一電極60と第二電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第一電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出される。
(インクジェット式記録ヘッドの製造方法)
以下、上述したインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図7を参照して説明する。なお、図3〜図7は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
まず、図3(a)に示すように、流路形成基板10が複数一体的に形成されるシリコンウエハーである流路形成基板用ウエハー110の表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO)からなる二酸化シリコン膜51を形成する。次いで、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、ジルコニウム(Zr)層を形成後、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図3(c)に示すように、絶縁体膜55上の全面に第一電極60を形成する。この第一電極60の材料は、圧電体層70がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)であることに鑑みれば、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ない材料であることが望ましい。このため、第一電極60の材料としては白金、イリジウム等が好適に用いられる。また、第一電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)などにより形成することができる。
次に、流路形成基板用ウエハー110の第一電極60が形成された面にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾル(塗布溶液)を塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図3(c)に示すように、第一電極60上に圧電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、第一電極60が形成された流路形成基板10上に金属有機化合物を含むゾル(溶液)を塗布する(塗布工程)。次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を150〜180℃で3〜10分間保持することで乾燥することができる。
次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を300〜400℃程度の温度に加熱して約3〜10分保持することで脱脂した。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。
次に、圧電体前駆体膜71を赤外線加熱装置によって所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。なお、本実施形態では、一層目の圧電体膜72の厚みは、120nmであった。このように本実施形態で後述するように一層目の圧電体膜72の厚みを他の圧電体膜72の厚みよりも薄くするのは、圧電体層70の配向、結晶粒径を制御するためである。
なお、このような赤外線加熱装置を用いて加熱する焼成工程では、圧電体前駆体膜71を700〜760℃に加熱するのが好ましく、本実施形態では、赤外線加熱装置によって、740℃で5分間加熱を行って圧電体前駆体膜71を焼成して圧電体膜72を形成した。また、焼成工程では、昇温レートは100℃/sec以上が好適である。このように圧電体膜72の焼成時の昇温レートを100℃/sec以上とすることで、低温の昇温レートで長時間行うのに比べて、短時間で行うことができると共に、圧電体膜72を比較的粒径が小さく且つ均一な結晶で形成することができ、大粒結晶の形成を実質的に防止することができる。
なお、上述した乾燥工程及び脱脂工程においても、焼成工程で用いる赤外線加熱装置を用いることで、使用する装置の種類を減少させて製造コストを低減することができるが、乾燥工程及び脱脂工程では、赤外線加熱装置とは別の装置、例えば、ホットプレート等を用いるようにしてもよい。
そして、図4(a)に示すように、第一電極60上に一層目の圧電体膜72を形成した段階で、第一電極60及び1層目の圧電体膜72を同時にパターニングする。なお、第一電極60及び圧電体膜72のパターニングは、例えば、イオンミリング等のドライエッチングにより行うことができる。
次いで、パターニング後、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程からなる前駆体膜形成工程を繰り返して、図4(b)に示すように圧電体前駆体膜71を複数層(図中では3層)形成し、その後、一括して焼成工程を行い、複数層からなる圧電体膜72を一括して形成する(一括焼成工程)。本実施形態では、この一括焼成工程で一括して焼成されて得られる圧電体膜72の膜厚が、140nm以上、好ましくは240nm以上である。
これらの前駆体膜形成工程を複数繰り返した後一括焼成工程を行う工程を繰り返し、図4(c)に示すように複数層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。例えば、本実施形態では、前駆体膜形成工程を三回繰り返した後一括焼成工程を行う工程を三回繰り返し、その後、圧電体前駆体膜71を2層形成した後に一括焼成工程を行い、計12回の塗布により全体で1330nm程度の厚みの圧電体層70を得た。
その後、図5(a)に示すように、圧電体層70上に亘って、例えば、イリジウム(Ir)からなる第二電極80を形成する。そして、図5(b)に示すように、圧電体層70及び第二電極80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。圧電体層70及び第二電極80のパターニングとしては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチングが挙げられる。
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の全面に亘ってリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングすることで形成される。
次に、図6(a)に示すように、流路形成基板用ウエハー110の圧電素子300側に、シリコンウエハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウエハー130を接着剤35を介して接合する。
次に、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウエハー110を所定の厚みに薄くする。次いで、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウエハー110にマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図7に示すように、流路形成基板用ウエハー110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウエハー110及び保護基板用ウエハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウエハー110の保護基板用ウエハー130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウエハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウエハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、インクジェット式記録ヘッドとする。なお、このように各チップサイズに分割した後は、各圧電素子300を駆動させて変位量を安定させるエージング工程を実施する。
(試験例)
エージング後の各インクジェット式記録ヘッドに対して、耐久試験を実施して変位低下を調査した。この点について、図8、図9を用いて詳細に説明する。図8(a)は、変位低下率とX線回折広角法によって測定される(100)面半価幅の関係を示すグラフであり、半価幅の異なる圧電素子300を有するインクジェット式記録ヘッドIに対し、エージング後、耐久試験を行って変位低下率を測定したものである。図8(b)は、変位低下率と焼成後の圧電体膜72の厚みとの関係を示すグラフであり、膜厚の異なる圧電素子300を有するインクジェット式記録ヘッドIに対し、エージング後、耐久試験を行って変位低下率を測定したものである。図9は、耐久試験条件、即ち上記耐久試験に用いたパルス波形を示したものである。また、変位低下率とは図9に示すパルス波形を圧電素子に190億回印加する耐久試験中の変位の低下率を意味するものである。
図8(a)に示すように、変位低下率と半価幅とは相関があり、半価幅が増加すると、変位低下が大きくなった。この相関を示す近似直線から、この半価幅が0.262°以内であると変位低下率が5%以内となることが分かった。また、図8(b)に示すように、変位低下率と圧電体膜72の膜厚とも関係があり、焼成後の膜厚が厚くなるほど変位低下率は低下した。この相関を示す近似直線から、膜厚を140nm以上とすると、変位低下率が5%以内となることが分かった。そして、この(100)面半価幅が0.262度以下であるか、又は各圧電体膜の厚みが140nm以上となっているかどちらか一方のみを満たした場合には、変位低下率は5%より大きくなり、圧電素子300の経時劣化を抑制することはできなかった。
従って、上記のような、その表面がX線回折広角法によって測定される(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各圧電体膜の焼成後の厚みが140nm以上となっている圧電体層70を有する圧電素子300は、変位低下を抑制でき、この圧電素子300を備えたインクジェット式記録ヘッドIは、変位低下が抑制されたことで、吐出特性の劣化を抑制できる。
(液体噴射装置)
さらに、これらインクジェット式記録ヘッドIは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図10は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図10に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
(他の実施形態)
上述した実施形態では、第一電極60上に圧電体膜72を形成したが、特にこれに限定されず、例えば、圧電体前駆体膜71を形成する前に、第一電極60上に圧電体膜72を結晶成長させる際の核となる種チタン等を設けるようにしてもよい。
上述した実施形態では、第一電極60上に初めに一層、圧電体膜72を形成しその後第一電極60と圧電体膜72とをパターニングしたが、第一電極60上に圧電体前駆体膜72を複数層形成した後に焼成してもよいし、第一電極60をパターニングにより形成した後に、圧電体膜72を複数層積層してもよい。このように形成した場合、一層目の圧電体膜72を140nm以上となるように形成してもよい。
また、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子の製造方法に限られず、他の装置に搭載される圧電素子の製造方法にも適用することができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバー部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 第一電極、 70 圧電体層、 71 圧電体前駆体膜、 72 圧電体膜、 80 第二電極、 90 リード電極、 100 リザーバー、 110 流路形成基板用ウエハー、 120 駆動回路、 121 接続配線、 300 圧電素子

Claims (5)

  1. 液体を噴射するノズル開口に連通する液体流路が設けられた流路形成基板上に、第一電極と、鉛、ジルコニウム、及びチタンを少なくとも含有する圧電体膜を複数層積層してなる圧電体層と、第二電極とからなる圧電素子を備え、
    前記圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各前記圧電体膜の焼成後の膜厚が140nm以上であることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 前記圧電体膜がチタン酸ジルコン酸鉛からなることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
  3. 前記圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.240度以下であると共に、各前記圧電体膜の焼成後の膜厚が240nm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
  5. 第一電極と、鉛、ジルコニウム、及びチタンを少なくとも含有する圧電体膜を複数層積層してなる圧電体層と、第二電極とからなり、
    前記圧電体層の表面をX線回折広角法により測定した(100)面半価幅が0.262度以下であると共に、各前記圧電体膜の焼成後の膜厚が140nm以上であることを特徴とする圧電素子。
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