JP2010212045A - ランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】PSA用途に最適な光源を提供するために、モノマーを重合させるために必要となる波長300−380nmの波長域の紫外光を効率良く放射するランプを提供する。
【解決手段】クリプトンガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスが封入された放電容器1と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極5,6とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、前記放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%であると共に、前記放電空間に印加される電界強度をE(kV/cm)、前記希ガスの分圧をp1(kPa)、前記ヨウ素ガスの分圧をp2(kPa)としたとき、次式の関係が成立することを特徴とするランプ。E/p1≧(6.6×p2+124)×exp(−0.0093×p1)
【選択図】図1

Description

この発明は、クリプトンガス、アルゴンガスの一種類以上から選択される希ガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスを使用して励起ヨウ素分子を形成することによって放射される紫外光を放射するランプに関する。
液晶ディスプレイの製造工程においては、液晶の画素を構成する際に液晶にモノマーを混入させ、液晶分子を傾斜させた状態でモノマーを重合させることによって液晶分子の傾斜方向を固定させる技術(PSA:Polymer Sustained Alignment)が用いられている。PSAについて開示する特許文献1によれば、モノマーを重合させるための光源として、液晶に与えるダメージが少ないこと、モノマーの感度、液晶用ガラスの透過率等を考慮して、モノマーに対して例えば波長300−380nmの紫外光を照射することが好ましいとされている(特許文献1の段落0237)。
モノマーを重合させるために必要とされる波長300−380nmの紫外光を放射する紫外線光源としては種々のものが知られているが、現状ではPSA用途に最適な光源については検討が重ねられている段階である。例えば、水銀を放電媒体として波長365nmの紫外光を主として放射する水銀ランプ、金属ハロゲン化物を放電媒体とするメタルハライドランプ等がPSA用途の光源の候補とされている。しかしながら、水銀ランプは、複数の水銀ランプを搭載して紫外線照射装置を構成しようとした場合に紫外線照射装置が大型化するといった問題があり、また、水銀を放電媒体とするために環境への負荷が大きいといったデメリットがある。メタルハライドランプは投入電力に比して放射される紫外線の出力が低いというエネルギー効率の面で問題があり、また、ハロゲン化金属を放電媒体とするために環境への悪影響を無視できない。
一方、互いに対向して配置される誘電体材料よりなる一対の壁部と一対の壁部の端部に接続された封止用壁部とで構成される放電容器を備え、放電容器の内部に形成された放電空間内に、希ガス、ハロゲンガス、またはこれらの混合ガスを充填して、前記壁部を介して交流電圧またはパルス電圧を印加することにより紫外線を放電容器外部に放射するランプが知られている。この種のランプは、複数のランプを搭載して紫外線照射装置を構成しようとした場合に紫外線照射装置を比較的小型化することができると共に、投入電力に比して放射される紫外線の出力が高いためにエネルギー効率に優れ、しかも、キセノンガス、クリプトンガス等の希ガスを放電媒体として使用するので環境への負荷が小さい、という実用的な面でメリットが大きいため、PSA用の光源として有望視されている。
このようなランプは、従来より主として液晶基板等の被処理物の表面に対して真空紫外線を照射することによって被処理物の表面改質をするための光源として使用されているが、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる波長300−380nmの波長域の紫外光の出力が不十分であった。
特開2003−149647号
以上から本発明は、PSA用途に最適な光源を提供するために、モノマーを重合させるために必要となる波長300−380nmの波長域の紫外光を効率良く放射するランプを提供することを目的とする。
本発明は、(1)クリプトンガス、アルゴンガスから選択される1種類以上の希ガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、前記放電空間には、前記放電空間の全体にわたって放電が発生しているような状態の拡散放電と、前記拡散放電に比べて空間的に収縮した帯状の形状を有するフィラメント放電との双方が混在して発生することを特徴とするランプ。
本発明は、(2)クリプトンガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、前記放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%であると共に、前記放電空間に印加される電界強度をE(kV/cm)、前記希ガスの分圧をp1(kPa)、前記ヨウ素ガスの分圧をp2(kPa)としたとき、次式の関係が成立することを特徴とするランプ。
E/p1≧(6.6×p2+124)×exp(−0.0093×p1)
本発明は、(3)アルゴンガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、前記放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%であると共に、前記放電空間に印加される電界強度をE(kV/cm)、前記希ガスの分圧をp1(kPa)、前記ヨウ素ガスの分圧をp2(kPa)としたとき、次式の関係が成立することを特徴とする。
E/p1≧(236×p2+1598)×p1−0.83
本発明は、(4)クリプトンガスおよびアルゴンガスを混合した混合ガス並びにヨウ素ガスを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、前記放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%であると共に、前記放電空間に印加される電界強度をE(kV/cm)、前記希ガスの分圧をp1(kPa)、前記ヨウ素ガスの分圧をp2(kPa)としたとき、次式の関係が成立することを特徴とする。
E/p1≧(1337×p20.0177)×p1−0.74
本発明は、(1)−(4)において、前記放電ガスの全圧が100kPa以上であることを特徴とする。
本発明は、(1)−(4)において、前記ランプに供給される点灯周波数が1〜120kHzであることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、放電空間には前記放電空間の全体にわたって放電が発生しているような状態の拡散放電と、前記拡散放電に比べて空間的に収縮した帯状の形状を有するフィラメント放電との双方が混在して発生するため、励起ヨウ素分子I から放射される波長342nmのヨウ素分子発光が効率良く放出されることから、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる波長域の紫外光の出力を向上させることができる。
請求項2ないし請求項4の発明によれば、放電容器内に封入された放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度および放電空間に印加される電界強度を所定の関係が成立するように最適化したことによって、波長342nmのヨウ素分子発光を放射する励起ヨウ素分子I が放電容器の内部空間に効率良く形成されるため、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる波長域の紫外光の出力を向上させることができる。
請求項5の発明によれば、放電容器内に封入された放電ガスの全圧が100kPa以上とされていることによって、励起ヨウ素分子I が放電空間に形成され易くなるため、ピーク波長が342nmのヨウ素分子発光が効率良く放射されることになって、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる波長域の紫外光の出力をより高いものとすることができる。
請求項6の発明によれば、ランプに供給される点灯周波数が1〜120kHzであるため、励起ヨウ素分子I が分解されることなく、また、単位時間当たりの発光回数が極端に短いということがないため、波長342nmのヨウ素分子発光が効率良く放射されることになって、PSA用途においてモノマーを重合させるために必要とされる波長域の紫外光の出力をより高いものとすることができる。
本発明のランプの構成の概略を示す斜視図である。 図1に示すA−A線断面図である。 実験1を行うために使用した実験装置の構成の概略を示す概念図である。 ヨウ素ガスの濃度とヨウ素分子発光強度との関係を示す図である。 換算電界E/p1とヨウ素分子発光強度との関係を示す図である。 表1に示す臨界換算電界強度E/p1の数値を希ガスの分圧p1の関数として近似するための近似方法を説明する図である。 拡散放電とフィラメント放電の双方が混在して発生した放電空間の様子を模式的に示す。 フィラメント放電が単独で発生した放電空間の様子を模式的に示す。
図1は、本発明のランプの構成の概略を示す斜視図である。図2は図1に示すA−A線断面図である。ランプ10は、例えば石英ガラスなどの誘電体材料によって図2に示すように断面が方形状となるように構成された放電容器1を備える。放電容器1の内部には、クリプトン、アルゴンの何れか1種類以上の希ガスとヨウ素ガスとを主として含む放電ガスが封入されている。放電容器1は、放電容器の長手方向の両端近傍の内部に封止部材2を配置して放電容器1と封止部材2とを溶着することによって、放電ガスが外部に漏れ出ることのないように気密に封止される。また、放電容器1の上下の壁面3、4のそれぞれの外表面には、メッシュ状の一対の電極5、6が、放電容器1の内部に形成された放電空間Sおよび放電容器1を構成する誘電体材料を挟んで対向するように設けられている。電極5、6は、所定のメッシュ状パターンが形成されるように例えば蒸着などによって形成されている。さらに、放電容器1の内部には、例えばSiOを主成分として含む紫外線反射膜7が光出射方向側の壁面3と反対側の壁面4に形成されており、放電空間S内で発生した紫外線が紫外線反射膜7によって光出射方向に反射されて光出射方向側に位置する壁面3から出射するようになっている。
このような構成のランプは、一対の電極5、6間に例えば1〜120kHzの交流電圧またはパルス電圧を供給することにより、放電空間Sに面する内壁面において、放電空間の全体にわたって放電が発生しているような状態の拡散放電と、前記拡散放電に比べて空間的に収縮した帯状の形状を有するフィラメント放電との双方が混在して発生する。
このような放電により、放電容器に封入されたヨウ素Iの正イオンIおよび陰イオンIは、ヨウ素以外のアルゴン、クリプトンのうちから選択される1種類以上の原子又は分子と次式のようにして反応することによって、励起ヨウ素分子I を形成する。以下の化学式に示すMは、ヨウ素、クリプトンおよびアルゴンの原子または分子である。
〔化学式1〕
+ I + M → I + M
励起ヨウ素分子I は、放電ガスに含まれるヨウ素イオンIおよびIが放電ガスに含まれるヨウ素、クリプトンおよびアルゴンの原子または分子と衝突を繰り返すことによって放電空間に形成され、ピーク波長が342nmのヨウ素分子発光を放射する。
励起ヨウ素分子を形成する基となるヨウ素イオンは、準安定励起原子のエネルギーによりヨウ素が電離されるぺニング効果と呼ばれる反応が主な要因となって生成する。このぺニング効果は、クリプトンおよびアルゴンの準安定励起原子のエネルギーがヨウ素原子の電離エネルギーよりもわずかに高いことによって発生する。参考までに、準安定励起原子のエネルギーは、クリプトンが10.5eV、アルゴンが11.5、11.7eVであり、ヨウ素原子の電離エネルギーは10.4eVである。したがって、クリプトン、アルゴンから選択される一種類以上の希ガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスを放電容器に封入すれば、放電空間においてヨウ素イオンがより多く生成され、多数の励起ヨウ素分子が形成されることになるので、波長342nmのヨウ素分子発光の出力が向上するものと期待される。
放電ガスは、クリプトン、アルゴン以外のその他の希ガスを含んでいても良いが、クリプトンやアルゴンといった希ガスの分圧に比してこれら以外の希ガスの分圧が高くなると、上記したぺニング効果を弱めることになるため、その他の希ガスの分圧の割合が高くなり過ぎないように注意することが必要である。例えば、クリプトン、アルゴン以外のその他の希ガスの分圧は、クリプトン、アルゴンの分圧の10%以下とすることが好ましい。
ここで、励起ヨウ素分子から放射される波長342nmのヨウ素分子発光の出力は、本発明者が検討したところ、(1)放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度と、(2)放電空間に印加される電界の強度と、に特に関係することが判明した。(1)のヨウ素の濃度は、ヨウ素ガスの分圧p2を放電ガスの全圧で割ることにより算出される。放電ガスの全圧はクリプトン、アルゴンのうちの一種類以上から選択される希ガスの分圧p1に近似される。なお、(2)の電界の強度は、クリプトン、アルゴンのうちの一種類以上から選択される希ガスの分圧p1と、ヨウ素Iの分圧p2とに依存する。以下、波長342nmの励起ヨウ素分子I の発光強度を高めるために必要となる、放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度および放電空間に印加される電界強度の条件を定めるために行った実験について説明する。実験では以下の実施例1〜3に係るランプを使用した。
実施例1のランプは、肉厚2mmの石英ガラスにより、全長200mm、幅42mm、高さ14mm、放電ギャップ10mmとなるように構成され、全長130mm、幅32mmの金によって形成される電極を備える。放電容器には、クリプトンガスおよびヨウ素ガスを含む放電ガスを封入した。
実施例2のランプは、肉厚2mmの石英ガラスにより、全長200mm、幅42mm、高さ14mm、放電ギャップ10mmとなるように構成され、全長130mm、幅32mmの金によって形成される電極を備える。放電容器には、アルゴンガスおよびヨウ素ガスを含む放電ガスを封入した。
実施例3のランプは、肉厚2mmの石英ガラスにより、全長200mm、幅42mm、高さ14mm、放電ギャップ10mmとなるように構成され、全長130mm、幅32mmの金によって形成される電極を備える。放電容器には、クリプトンガスおよびアルゴンガスが1:1の混合比で混合された希ガスの混合ガス並びにヨウ素ガスを含む放電ガスを封入した。
(実験1)
実験1は放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度の最適範囲を調べるために行った。実験1は、各実施例1〜3に係るランプのそれぞれについて放電ガスの全圧を120kPaで統一し、ヨウ素ガスの濃度が0.01〜2%の範囲内で互いに異なる7種類のランプを各実施例1〜3毎に個別に準備した。つまり、実験1は、各実施例1〜3のそれぞれについて7種類ずつ合計21種類のランプを使用した。
図3は、実験1を行うために使用した実験装置の構成の概略を示す概念図である。22はアルミニウム製のランプハウス、23はセラミックス製の支持台、24は受光部である。受光部24はファイバーにより不図示の分光器本体に接続されている。ランプ1をランプハウス22の内部に配置された支持台23の上に固定すると共に、受光部24をランプ1の表面から5mm離した位置にランプ1と対向するように配置し、ランプハウス22の内部雰囲気を窒素ガスで置換する。実施例1〜3のランプのそれぞれについて、一対の電極5、6に交流電圧(矩形波)を印加することによって放電空間に放電を発生させ、メッシュ状の電極5の隙間から放射される波長342nmのヨウ素分子発光の発光強度を測定する。
実験1の結果を図4に示す。図4は、縦軸がヨウ素分子発光強度の規格データを示し、横軸が放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度(%)を示す。同図に示すように、実施例1、2、3の何れについても、ヨウ素濃度を0.04〜0.9%の範囲としたものは、ヨウ素濃度が当該範囲外のものと比べて励起ヨウ素分子I の発光強度が格段に高くなった。
(実験2)
実験2は、放電ガスの全圧およびヨウ素ガスの分圧をそれぞれ一定としたときに、ピーク波長が342nmのヨウ素分子I の発光強度を高めるために必要とされる換算電界強度の下限値(以下、臨界換算電界強度ともいう)を調べた。換算電界強度とは、電界強度Eを希ガスの分圧p1で割った数値である。
各実施例1〜3に係るランプは、それぞれ放電ガスの全圧(希ガスの分圧p1およびヨウ素ガスの分圧p2の合計)を120kPa、ヨウ素ガスの分圧p2を0.14kPaとした。
実施例1〜3に係るランプについて、各々異なる7通りの換算電界強度となるように点灯駆動させ、実験1と同様に波長342nmのヨウ素分子発光の発光強度を測定した。つまり、実験2では、各実施例1〜3に係るランプについて各々7通りずつ合計21通りのヨウ素分子発光強度のデータを測定した。
放電空間に印加される電界強度Eは、数式1〜3のようにして算出される。Vは印加電圧、Cgapは単位長さあたりの放電空間の静電容量、Cglassは単位長さあたりの誘電体の静電容量、dgapは放電ギャップ、dglassは誘電体の厚み、εgapは放電空間の誘電率、εglassは誘電体の誘電率、Wは電極幅である。なお、εgap≒εであり、εglass≒3.7×εである。εは、真空の誘電率:8.85×10−12(F/m)である。
〔数式1〕
E=V/dgap×1/Cgap/(2/Cglass+1/Cgap
〔数式2〕
gap=εgap×W/dgap
〔数式3〕
glass=εglass×W/dglass
実験2の結果を図5に示す。図5は縦軸がヨウ素分子発光の強度の規格データ、横軸が換算電界強度である。換算電界強度は、基本的には電界強度Eを放電ガスの圧力(希ガスの分圧p1およびヨウ素ガスの分圧p2の合計)で割って得られるE/(p1+p2)と示されるが、ヨウ素ガスの分圧p2が希ガスの分圧p1に比べて遥かに小さいため、電界強度Eを希ガスの分圧p1で割って得られるE/p1と近似した。
図5に示す実験結果から以下のことが明らかとなった。実施例1のランプは、点灯駆動時の換算電界強度E/p1を40.8以上とすることにより換算電界強度E/p1を40.8未満としたときに比べてヨウ素分子発光強度が格段に高くなることが確認された。実施例2のランプは、点灯駆動時の換算電界強度E/p1を30.7以上とすることにより、換算電界強度E/p1を30.7未満としたときに比べてヨウ素分子発光強度が格段に高くなることが確認された。実施例3のランプは、点灯駆動時の換算電界強度E/p1を37.5以上とすることにより換算電界強度E/p1を37.5未満としたときに比べてヨウ素分子発光強度が格段に高くなることが確認された。
実験2により、臨界換算電界強度は、希ガスの分圧p1が120kPa、ヨウ素ガスの分圧が0.14kPaとした場合において、それぞれ、実施例1のランプが40.8、実施例2のランプが30.7、実施例3のランプ37.5であることが確認された。
(実験3)
実験3は、放電ガスに含まれる希ガスの全圧およびヨウ素ガスの分圧を各々変えて、実験2の如くピーク波長が342nmの励起ヨウ素分子I の発光強度を高めるために必要とされる換算電界強度E/p1の下限値(即ち、臨界換算電界強度)を調べた。
実験3では、希ガスの分圧p1およびヨウ素ガスの分圧p2が互いに異なるランプを各実施例1〜3毎に20種類ずつ計60種類使用した。希ガスの分圧p1は40〜133kPaの範囲、ヨウ素ガスの分圧p2は0.05〜1.09kPaの範囲とされている。
実験3は、各実施例1〜3に係る合計60種類のランプのそれぞれについて、実験2の如く換算電界強度E/p1の値を種々変えて点灯駆動させ、波長342nmのヨウ素分子発光の強度を実験1と同様に測定することによって、臨界換算電界強度E/p1を調べた。実験3の結果を表1に示す。
Figure 2010212045
表1は、各実施例1〜3に係る合計60種類のランプのそれぞれについて測定した臨界換算電界強度E/p1の数値をまとめたものである。表2は、表1に示す各実施例1〜3に係るランプの臨界換算電界強度E/p1を、ヨウ素ガスの分圧p2毎に希ガスの分圧p1の関数として近似した近似式をまとめたものである。
Figure 2010212045
参考までに、表2に示す各近似式の求め方に関し説明を補足する。図6は、表1に示す臨界換算電界強度E/p1の数値を希ガスの分圧p1の関数として近似するための近似方法を説明する図である。同図において、縦軸は臨界換算電界強度E/p1、横軸は希ガスの分圧p1である。同図では、便宜のため、表1に示す臨界換算電界強度のうち、ヨウ素の分圧p2が0.14kPaである縦列のみについて各実施例1〜3に係るランプ毎に個別にプロットした。
図6に示す5つの菱形のプロットは、表1の実施例1の欄における、ヨウ素の分圧p2が0.14kPaであると共に希ガスの分圧p1がそれぞれ40kPa、67kPa、93kPa、120kPa、133kPaである5つの臨界換算電界強度の数値データを表す。図6に示す菱形の各プロットを結んだ曲線は、表2の実施例1の欄の上から2行目に示すように希ガスの分圧p1の関数として近似される。
図6に示す5つの正方形のプロットは、表1の実施例2の欄における、ヨウ素の分圧p2が0.14kPaであると共に希ガスの分圧p1がそれぞれ40kPa、67kPa、93kPa、120kPa、133kPaである5つの臨界換算電界強度の数値データを表す。図6に示す正方形の各プロットを結んだ曲線は、表2の実施例2の欄の上から2行目に示すように希ガスの分圧p1の関数として近似される。
図6に示す5つの三角形のプロットは、表1の実施例3の欄における、ヨウ素の分圧p2が0.14kPaであると共に希ガスの分圧p1がそれぞれ40kPa、67kPa、93kPa、120kPa、133kPaである5つの臨界換算電界強度の数値データを表す。図6に示す三角形の各プロットを結んだ曲線は、表2の実施例3の欄の上から2行目に示すように希ガスの分圧p1の関数として近似される。
図6に示すように、各実施例1〜3に係るランプの臨界換算電界強度E/p1と希ガス分圧p1との関係を示す曲線グラフは、同図の紙面において、下方側から実施例2、実施例3、実施例1の順に並んで配置される。実施例3の曲線グラフは実施例1の曲線グラフと実施例2の曲線グラフの概ね中間に位置している。
表2に示すその他の近似式は、上記のようにして、ヨウ素の分圧0.05kPa、0.14kPa、0.57kPa、1.09kPaのそれぞれについて、各実施例1〜3に係るランプ毎に近似を行うことにより得られた希ガスの分圧p1の関数である。
さらに、表2に示す各実施例1〜3に係るランプの臨界換算電界強度E/p1の近似式は、希ガスの分圧p1およびヨウ素ガスの分圧p2の関数として、以下のように近似することができる。
<実施例1>
〔数式4〕
E/p1=(6.6×p2+124)×exp(−0.0093×p1)
<実施例2>
〔数式5〕
E/p1=(236×p2+1598)×p1−0.83
<実施例3>
〔数式6〕
E/p1=(1337×p20.0177)×p1−0.74
数式4〜6に示す臨界換算電界強度E/p1は、前述したとおり、励起ヨウ素分子I の発光強度を高めるために必要とされる下限値である。したがって、各実施例1〜3に係るランプは、以下の関係式が成立するように、臨界換算電界強度E/p1、放電ガスに含まれる希ガスの分圧p1およびヨウ素ガスの分圧p2をそれぞれ適宜設定することにより、励起ヨウ素分子I から放射される波長342nmの発光強度を格段に高いものとすることができる。
<実施例1>
〔数式7〕
E/p1≧(6.6×p2+124)×exp(−0.0093×p1)
<実施例2>
〔数式8〕
E/p1≧(236×p2+1598)×p1−0.83
<実施例3>
〔数式9〕
E/p1≧(1337×p20.0177)×p1−0.74
このように、本発明の各実施例1〜3に係るランプは、(1)放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度が最適な範囲とされていると共に、(2)換算電界強度E/p1が臨界換算電界強度以上となる条件で点灯駆動されるため、ヨウ素発光分子I から放射されるピーク波長が342nmの紫外光の放射強度を従来のランプよりも格段に高めることができる。この理由は、定かでないが例えば次のように考えられる。
ヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%の範囲内であると共に換算電界強度E/p1が数式7〜9に示す関係を満たす各実施例1〜3に係るランプにおいては、放電空間の全体にわたって放電が発生しているような状態の拡散放電と拡散放電に比べて空間的に収縮した帯状の形状を有するフィラメント放電との双方が放電空間において混在して発生することが実験3によって確認された。図7は、拡散放電とフィラメント放電の双方が混在して発生した放電空間の様子を模式的に示す。同図のKが拡散放電、Fがフィラメント放電である。フィラメント放電が発生すると、空間的に収縮した形状であるために拡散放電に比べて電流密度が高いことから、多数のヨウ素イオンI、Iが放電空間に存在するものと考えられる。そのため、放電空間において励起ヨウ素分子I が形成され易くなるため、励起ヨウ素分子I から放射されるピーク波長が342nmのヨウ素分子発光の放射強度が高くなるものと考えられる。
これに対し、ヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%の範囲外であると共に換算電界強度E/p1が数式7〜9の関係を満たさない各実施例1〜3に係るランプにおいては、フィラメント放電のみが放電空間に発生することが実験3によって確認された。図8はフィラメント放電が単独で発生した放電空間の様子を模式的に示す。同図のFがフィラメント放電である。このようなランプにおいては、放電空間において放電が局所的にしか形成されないために、励起ヨウ素分子I から放射されるピーク波長が342nmのヨウ素分子発光の放射強度が低下するものと考えられる。
ピーク波長が342nmのヨウ素分子発光は、前述したように、ヨウ素イオンIおよびIがクリプトン、アルゴンといった希ガスに衝突することによって形成される励起ヨウ素分子I から放射される。つまり、励起ヨウ素分子I は、放電ガスに含まれる希ガスの原子又は分子を多くすることにより形成され易くなる。したがって、放電ガスの全圧(希ガスの分圧p1+ヨウ素ガスの分圧p2との合計)を高くすることによって、ヨウ素イオンIおよびIに衝突する希ガスの原子又は分子が増えて励起ヨウ素分子I が形成され易くなるため、ピーク波長が342nmのヨウ素分子発光の強度を高めることができる。本発明の各実施例1〜3に係るランプは、放電ガスの全圧(p1+p2)を100kPa以上とすることが好ましい。
なお、本発明の各実施例1〜3に係るランプは、放電ガスの温度が高すぎると、ピーク波長342nmのヨウ素分子発光を放射する励起ヨウ素分子I が分解して元のヨウ素イオンI若しくはIに戻ってしまうといった特性を有するため、放電ガスの温度を最適に維持することが好ましい。各実施例1〜3に係るランプは、放電ガスの温度を最適に維持するため、1〜120kHzの交流電圧またはパルス電圧を供給することによって点灯駆動することが好ましい。ランプに供給する交流電圧またはパルス電圧の周波数が120kHzを超える場合は、放電ガスの温度が高くなりすぎて励起ヨウ素分子I が分解し易くなるので、ピーク波長342nmのヨウ素分子発光の強度が低下する、といった弊害がある。また、交流電圧またはパルス電圧の周波数が1kHzを下回る場合は、単位時間当たりの発光回数が少なくなるので、ピーク波長342nmのヨウ素分子発光の強度が低下する、といった弊害がある。
10 ランプ
1 放電容器
2 封止部材
3、4 壁面
5、6 電極
7 紫外線反射膜

Claims (6)

  1. クリプトンガス、アルゴンガスから選択される1種類以上の希ガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、
    前記放電空間には、前記放電空間の全体にわたって放電が発生しているような状態の拡散放電と、前記拡散放電に比べて空間的に収縮した帯状の形状を有するフィラメント放電との双方が混在して発生することを特徴とするランプ。
  2. クリプトンガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、
    前記放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%であると共に、前記放電空間に印加される電界強度をE(kV/cm)、前記希ガスの分圧をp1(kPa)、前記ヨウ素ガスの分圧をp2(kPa)としたとき、次式の関係が成立することを特徴とするランプ。
    E/p1≧(6.6×p2+124)×exp(−0.0093×p1)
  3. アルゴンガスとヨウ素ガスとを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、
    前記放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%であると共に、前記放電空間に印加される電界強度をE(kV/cm)、前記希ガスの分圧をp1(kPa)、前記ヨウ素ガスの分圧をp2(kPa)としたとき、次式の関係が成立することを特徴とするランプ。
    E/p1≧(236×p2+1598)×p1−0.83
  4. クリプトンガスおよびアルゴンガスを混合した混合ガス並びにヨウ素ガスを含む放電ガスが封入された放電容器と、前記放電容器の内部に形成された放電空間を挟んで対向するように配置された一対の電極とを備え、励起ヨウ素分子を形成することによって波長342nmの紫外光を放射するランプであって、
    前記放電ガスに含まれるヨウ素ガスの濃度が0.04〜0.9%であると共に、前記放電空間に印加される電界強度をE(kV/cm)、前記希ガスの分圧をp1(kPa)、前記ヨウ素ガスの分圧をp2(kPa)としたとき、次式の関係が成立することを特徴とするランプ。
    E/p1≧(1337×p20.0177)×p1−0.74
  5. 前記放電ガスの全圧が100kPa以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4記載のランプ。
  6. 前記ランプに供給される点灯周波数が1〜120kHzであることを特徴とする請求項1ないし請求項4記載のランプ。
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