JP2010207705A - カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法及び処理システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)微粉末と水を混合して、スラリーを調製する工程と、(B)工程(A)で得られたスラリーと硫化剤と硫酸を混合して、固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーを得る工程と、(C)工程(B)で得られたスラリーに疎水化剤を加えて、鉛硫化物を疎水化させる工程と、(D)工程(C)で得られたスラリーを浮遊選鉱処理して、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得る工程と、(E)微粉末と水とからなるスラリーの固形分濃度を所望の値にするために、工程(B)における硫酸の添加量に基づいて、微粉末と水との質量比を調整する工程を含む。
【選択図】図1
Description
例えば、(A)カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水と、硫酸を混合して、液性をpH1〜4に調整し、固体分である硫酸カルシウムを含むスラリーを得る硫酸カルシウム生成工程と、(B)工程(A)で得られた前記スラリーに硫化剤を加えて、固体分である硫酸カルシウム及び硫化鉛を含むスラリーを得る硫化鉛生成工程と、(C)工程(B)で得られたスラリーに捕収剤及び起泡剤を加えて、浮遊選鉱を行ない、硫化鉛を主成分とする浮鉱と、硫酸カルシウムを主成分とする沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程、を含むカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法が提案されている(特許文献1)。
しかし、処理対象物である微粉末と水を混合してスラリーを調製する際に、水の単位量当たりの微粉末の量を一定にしても、微粉末の種類によって、微粉末に含まれる不溶性成分の含有率が異なることから、スラリーの固形分濃度が、微粉末の種類によって異なるという問題があった。例えば、スラリーの固形分濃度が高すぎて、浮遊選鉱で得られる浮鉱中の鉛成分の含有率が小さくなったり、あるいは、スラリーの固形分濃度が低すぎて、浮遊選鉱の処理効率が低下するという問題があった。
そこで、本発明は、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末から、カルシウム成分及び鉛成分を浮遊選鉱処理によって分別して回収するに際し、微粉末と水とからなるスラリーの固形分濃度を常に最適値に保つことのできる微粉末の処理方法及び処理システムを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
[2] 前記微粉末が、塩素バイパスダストである前記[1]に記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
[3] カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水を混合して、スラリーを調製するためのスラリー調製手段と、前記スラリー調製手段で得られたスラリーと、硫化剤と、硫酸を混合して、固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーを得るための固体分生成手段と、前記固体分生成手段で得られたスラリーに疎水化剤を加えて、前記鉛硫化物を疎水化させるための疎水化手段と、前記疎水化手段で得られたスラリーに対して浮遊選鉱処理を行ない、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得るための浮遊選鉱機と、前記微粉末と水とからなるスラリーの固形分濃度を所望の値にするために、前記固体分生成手段における硫酸の添加量に基づいて、前記微粉末と水との質量比を調整するための固液比調整手段と、を含むことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理システム。
図1は、本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法の一例を示すフロー図である。
本発明の微粉末の処理方法は、(A)カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水を混合して、スラリーを調製するスラリー調製工程と、(B)工程(A)で得られたスラリーと、硫化剤と、硫酸を混合して、固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーを得る固体分生成工程と、(C)工程(B)で得られたスラリーに疎水化剤を加えて、前記鉛硫化物を疎水化させる疎水化工程と、(D)工程(C)で得られたスラリーに対して浮遊選鉱処理を行ない、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程と、(E)前記微粉末と水とからなるスラリーの固形分濃度を所望の値にするために、工程(B)における硫酸の添加量に基づいて、前記微粉末と水との質量比を調整する固液比調整工程と、を含む。
以下、工程(A)〜工程(E)の各々について詳しく説明する。
工程(A)は、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水を混合して、スラリーを調製する工程である。
本発明の処理対象となる微粉末としては、例えば、前記の背景技術の欄で説明した塩素バイパスダストや、焼却飛灰、溶融飛灰等が挙げられる。
本発明の処理対象物である微粉末中のカルシウムの酸化物換算の含有率(CaOの質量割合)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。該含有率が5質量%未満では、工程(D)(鉛・カルシウム分離工程)で分離回収した硫酸カルシウム中に鉛が多く残留することがある。
本発明の処理対象物である微粉末中のカルシウムの酸化物換算の含有率(CaOの質量割合)の上限値は、特に限定されないが、好ましくは70質量%、より好ましくは60質量%、特に好ましくは50質量%である。該上限値が70質量%を超えると、工程(D)(鉛・カルシウム分離工程)における浮鉱への鉛の分配率が低下して、その結果、鉛の回収率が低下することがある。
硫化剤の例としては、水硫化ソーダ(NaSH)、硫化ソーダ(Na2S)、硫化水素ガス(H2S)等が挙げられる。
工程(A)で得られるスラリー中に生成する鉛硫化物の例としては、硫化鉛(PbS)等が挙げられる。
本発明においては、処理対象物である微粉末と水との合計量中の固形分の質量割合を調整する。これについては、工程(E)で説明する。
工程(A)における混合方法としては、例えば、撹拌翼付きの混合槽内に、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水を収容し、5〜60分間撹拌して、均一なスラリーを得る方法が挙げられる。
工程(B)は、工程(A)で得られたスラリーと、硫化剤と、硫酸を混合して、固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーを得る工程である。
工程(B)の一例としては、図1に示すように、工程(A)で得られたスラリーに硫化剤を加えて、固体分である鉛硫化物を含むスラリーを得て、次いで、このスラリーに硫酸を加えて、固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーを得るものが挙げられる。
工程(B)の他の例としては、工程(A)で得られたスラリーに硫酸を加えて、固体分である硫酸カルシウムを含むスラリーを得て、次いで、このスラリーに硫化剤を加えて、固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーを得るものが挙げられる。
工程(B)において、pHを特定の値または特定の狭い数値範囲内(例えば、pH2.5〜3.5のようにpHの幅が1、または1より小さな範囲内)に調整することは、工程(E)(固液比調整工程)における固液比の正確な調整の観点から、好ましい。
工程(B)における混合方法としては、例えば、撹拌翼付きの混合槽を2つ直列に配設して、前流側の混合槽内のスラリーに一方の薬剤(硫化剤または硫酸)を加えて、5〜60分間撹拌した後、得られたスラリーを後流側の混合槽に導き、他の薬剤(硫酸または硫化剤)を加えて、5〜60分間撹拌する方法が挙げられる。
工程(C)は、工程(B)で得られたスラリーに疎水化剤を加えて、鉛硫化物を疎水化させる工程である。
工程(C)は、工程(D)(鉛・カルシウム分離工程)における浮遊選鉱の前処理として、鉛硫化物を疎水化させるものである。
浮遊選鉱とは、疎水性の表面を有する粒子及び親水性の表面を有する粒子を含む水中にガスを供給して、このガスからなる泡の表面に、疎水性の表面を有する粒子を付着させ、該粒子が付着している泡を、水中で浮力により浮上させることによって、沈鉱である親水性の表面を有する粒子と、浮鉱である疎水性の表面を有する粒子とに分離するものである。
なお、通常、粒子の表面の疎水性及び親水性を人為的に調節して、分離性能を高めるために、捕収剤と呼ばれる種々の化学薬剤が用いられる。従来知られている個々の捕収剤は、粒子の種類によってその効果(適否)が異なることが知られている。本発明においては、粒子の表面の疎水性を高めるための捕収剤(疎水化剤)として、例えば、ザンセートを用いることができる。
本発明で用いられるザンセートは、工程(B)で生成した鉛硫化物の疎水性を高めるためのものである。鉛硫化物は、ザンセートによって疎水性を高められた後、泡の表面に付着して、水中を浮上し、浮鉱となる。
工程(C)におけるザンセートの合計の使用量は、例えば、本発明の処理対象物である微粉末中の鉛(Pb)の通常の含有率から推測して定めることができる。具体的には、ザンセート/Pbのモル比が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上となる量のザンセートを添加することが望ましい。該値が、0.01未満では、鉛硫化物を浮鉱として十分に浮上させることが困難となる。
ザンセートの全量の上限値は、特に限定されないが、薬剤コストの削減等の観点から、ザンセート/Pbのモル比が、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.2以下となる量であることが望ましい。
起泡剤の例としては、メチルイソブチルカルビノール(MIBC;4−メチル−2−ペンタノール)、メチルイソブチルケトン、パイン油、エチレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、クレゾール酸等が挙げられる。起泡剤として、前記の例示物の他に、例えば、炭素数6〜8の鎖状の炭化水素基(アルキル基等)や炭素数10〜15の環状の炭化水素基(芳香族基、シクロアルキル基等)等の疎水性基、及び、水酸基、カルボキシル基等の親水性基を有する化合物も、使用することができる。
起泡剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、好ましくは5〜100mgである。
なお、本発明において、起泡剤の添加は必須ではなく、任意である。
工程(D)は、工程(C)で得られたスラリーに対して浮遊選鉱処理を行ない、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得る工程である。
浮遊選鉱を行う手段としては、ファーレンワルド型浮選機(FW型浮選機)、MS型浮選機、フェジャーグレン型浮選機、アジテヤ型浮選機、ワーマン型浮選機等の浮選機が挙げられる。
浮鉱は、例えば、スラリーの上部領域の部分を回収し、この上部領域の部分をフィルタープレス等によって固液分離することによって得ることができる。
浮鉱は、鉛(Pb)の分配率(換言すれば、浮鉱中のPbと沈鉱中のPbの合計量中の浮鉱中のPbの質量割合)が大きいので、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末に由来する鉛含有物質として分離回収することができる。浮鉱は、非鉄精錬原料等として用いることができる。
沈鉱は、例えば、スラリーの下部領域の部分を回収し、この下部領域の部分をフィルタープレス等によって固液分離することによって得ることができる。
沈鉱は、浮鉱とは逆に、硫酸カルシウムの分配率が大きく、かつ、鉛硫化物の分配率が小さいので、セメント原料等として用いることができる。沈鉱には、ケイ素、アルミニウム、鉄等の化合物が含まれることがある。
工程(E)は、本発明の処理対象物である微粉末と水とからなるスラリーの単位体積当たりの固形分含有量(乾燥質量;スラリーの固形分濃度ともいう。)を所望の値にするために、工程(B)における硫酸の添加量に基づいて、本発明の処理対象物である微粉末と水との質量比を調整する工程である。
工程(E)において、微粉末と水のみを対象にした理由は、硫化剤または硫酸の添加によって生成する固形分を除外するためである。
微粉末と水との質量比の調整方法としては、水の量を一定にして微粉末の量を変化させる方法、微粉末の量を一定にして水の量を変化させる方法、微粉末及び水の量を変化させる方法、のいずれでもよい。
例えば、工程(B)において、硫酸を添加してスラリーのpHを3に調整する場合、微粉末aを処理対象物としかつ硫酸の添加量がX(リットル)であるときに最適の固形分濃度が得られるとすると、微粉末bを処理対象物としかつ硫酸の添加量が2X(リットル)であれば、微粉末bの処理において、水の添加量を微粉末aの場合に比べて2倍にするか、あるいは、微粉末bの添加量を微粉末aの添加量の1/2にするなどして対処すればよい。なお、実際には、硫酸の添加量は、通常、添加速度(リットル/時間)として連続的に変化するので、この変化に応じて微粉末または水の供給速度(g/時間)を変化させればよい。
工程(E)で水の量を変化させる方法の一例としては、微粉末との混合時に水の量を増減させる方法が挙げられる。他の例としては、微粉末の単位量に対して常時、一定の量の水を加えて混合し、その後、工程(D)(鉛・カルシウム分離工程)の前の任意の時点で追加の水を加えて、微粉末と水との質量比を調整する方法が挙げられる。
図2中、本発明の微粉末の処理システムは、図1に示す処理方法に対応する処理システムであって、処理対象物である微粉末と、水を混合して、スラリーを得るための混合槽1と、混合槽1で得られたスラリーに硫化剤を添加して、鉛硫化物を生成させるための鉛硫化物生成槽4と、鉛硫化物を含むスラリーに硫酸を添加して、硫酸カルシウムを生成させるための硫酸カルシウム生成槽6と、鉛硫化物及び硫酸カルシウムを含むスラリーに、疎水化剤を添加するための疎水化反応槽9と、疎水化反応槽9で得られたスラリーを導入して浮遊選鉱処理を行ない、鉛硫化物を含む浮鉱及び硫酸カルシウムを含む沈鉱を得るための浮遊選鉱機11を備えている。
ここで、混合槽1、鉛硫化物生成槽4、硫酸カルシウム生成槽6、及び疎水化反応槽9は、各々、スラリーを撹拌するための撹拌翼を備えている。
鉛硫化物生成槽4には、硫化剤を供給するための硫化剤供給手段5(例えば、硫化剤の貯留槽及び流通路を有するもの)が接続されている。
硫酸カルシウム生成槽6には、硫酸を供給するための硫酸供給手段7(例えば、硫酸の貯留槽及び流通路を有するもの)及びpH測定手段(pH計)8が接続されている。
疎水化反応槽9には、疎水化剤供給手段10(例えば、疎水化剤の貯留槽及び流通路を有するもの)が接続されている。
混合槽1、鉛硫化物生成槽4、硫酸カルシウム生成槽6、疎水化反応槽9、及び、浮遊選鉱機11の相互間には、各々、スラリーが混合槽1から浮遊選鉱機11まで一方向に流通するように、スラリーの流通路(例えば、ポンプ及び管路)が設けられている。
なお、本発明の処理システムは、疎水化反応槽9から浮遊選鉱機11までの流通路の途中に、起泡剤を供給するための起泡剤供給手段(図示略;例えば、起泡剤の貯留槽及び流通路を有するもの)を備えていてもよい。
本発明の処理システムは、硫酸供給手段7で供給された硫酸の量に基づいて、微粉末供給手段2で供給される微粉末の量または水供給手段3で供給される水の量を調整するための固液比調整手段12を備えている。
なお、水の量を調整するための手段としては、図2中の水供給手段3に加えて、浮遊選鉱機11の前流側の任意の地点に追加の水供給手段(図示せず)を設けることもできる。この場合、追加の水供給手段によって追加の水を供給して、微粉末と水との質量比を調整する。
本発明においては、連続式とバッチ式のいずれの処理方法及び処理システムを採用してもよいが、処理効率の観点からは、連続式の処理方法及び処理システムが好ましい。
(1)微粉末の準備
処理対象物である微粉末として、カルシウム成分の含有率(酸化物換算値)の異なる26種類の塩素バイパスダストを準備した(図3参照)。なお、これら26種類の塩素バイパスダストの中で、カルシウム成分の含有率(酸化物換算値)の最小値及び最大値は、各々、13質量%、42質量%であった。
なお、前記の26種類の塩素バイパスダストの中で、カルシウムの酸化物換算の含有率が25質量%である塩素バイパスダストを対象にして、水洗前の成分組成、及び水洗後の成分組成を測定した。結果を表1に示す。表1中、塩素(Cl)を除いて、酸化物換算の含有率(質量%)を示す。
これら26種類の塩素バイパスダストの各々について、塩素バイパスダスト130gと水1.3リットルを混合してスラリーを調製し、次いで、このスラリーに硫酸(濃度:98%)を加えてpHを3に調整し、硫酸カルシウムを生成させた場合における、塩素バイパスダスト(微粉末)中のカルシウム成分の含有率(酸化物換算;質量%)と、硫酸の添加量(g)の関係を調べた。
結果を図3に示す。図3から、塩素バイパスダスト(微粉末)中のカルシウム成分の含有率(酸化物換算;質量%)と、硫酸の添加量(g)は、正の強い相関関係があることがわかる。
(1)微粉末の準備
処理対象物である微粉末として、カルシウム成分の含有率(酸化物換算値)の異なる43種類の塩素バイパスダストを準備した(図4参照)。なお、これら43種類の塩素バイパスダストの中で、カルシウム成分の含有率(酸化物換算値)の最小値及び最大値は、各々、13質量%、39質量%であった。
(2)スラリーの固形分の質量(固形分濃度)の測定
これら43種類の塩素バイパスダストの各々について、塩素バイパスダスト130gと水1.3リットルを混合してスラリーを調製し、次いで、このスラリーを吸引ろ過器によって固液分離して固形分を得て、その後、この固形分を105℃で24時間乾燥させた。得られた固形分(微粉末の水洗残分)の質量を測定した。
結果を図4に示す。図4から、塩素バイパスダスト(微粉末)中のカルシウム成分の含有率(酸化物換算;質量%)と、スラリーの固形分の質量(g)は、正の相関関係があることがわかる。
前記のA、Bの実験で得られた図3及び図4から、硫酸の添加量と、スラリーの固形分濃度は、正の相関関係にあることがわかる。つまり、硫酸の添加量の変化に応じて水の量を増減させれば、スラリーの固形分濃度を一定に保つことができる。
(1)微粉末の準備
処理対象物である微粉末として、下記の表2に示す成分組成を有する試料A、試料B、試料Cの3種の塩素バイパスダストを用意した。
(2)微粉末をスラリー化したときの固形分濃度の測定
試料A〜試料Cの各々について、試料130gと水1.3リットルを混合してスラリーを調製し、次いで、このスラリーを吸引ろ過器によって固液分離して固形分を得て、その後、この固形分を105℃で24時間乾燥させた。得られた固形分(微粉末の水洗残分)の質量を測定した。この質量をスラリー1リットル当たりの値(g/L)に換算した値を、表2に示す。
表2中、試料A、試料B、試料Cの固形分濃度は、各々、58.9g/リットル、77.9g/リットル、30.2g/リットルである。この実験では、試料Aが最適の固形分濃度を有するものとし、試料B及び試料Cの固形分濃度を試料Aの固形分濃度と同程度のものに変化させるものとする。
(a)試料Bを対象にした実験
表3に示すように、1リットル当たりの固形分濃度(固液比)が100g/リットルとなるように、撹拌翼付きの混合槽内に、本発明の処理対象物である微粉末(塩素バイパスダスト;試料Aまたは試料B)を毎時12kgの量で供給し、かつ、水を毎時120リットルの量で供給して、スラリーを得た。
このスラリーを吸引ろ過器によって固液分離して固形分を得た。この固形分を105℃で24時間乾燥させた後、固形分の質量を測定した。この質量をスラリー1リットル当たりの値(g/L)に換算して得た固形分濃度の値を、表3に示す。
一方、スラリーに硫酸を加えて、pHを3に調整した。これに要した硫酸の添加量を表3に示す。
試料Bの固形分濃度を試料Aの固形分濃度と同程度のものに変化させるために、試料Bの供給量を減少させた。試料Bの新たな供給量は、次の式で算出される。
試料Bの供給量=12kg×(6.2÷8.8)=8.5kg/時間(hr)
このスラリーを吸引ろ過器によって固液分離して、固形分を得た。この固形分を105℃で24時間乾燥させた後、固形分の質量を測定した。この質量をスラリー1リットル当たりの値(g/L)に換算して得た固形分濃度の値は、表4に示すように55.2g/Lであった。
一方、このスラリーに硫酸を加えて、pHを3に調整した。硫酸の添加量は、表4に示すように6.2kg/時間であった。
表3及び表4から、硫酸の添加量に基いて微粉末の供給量を調整すれば、スラリーの固形分濃度をほぼ一定に調整しうることがわかる。
試料Bに代えて試料Cを用いたこと以外は前記の(3)の(a)と同様にして実験した。結果を表5及び表6に示す。
表5及び表6から、硫酸の添加量に基いて微粉末の供給量を調整すれば、スラリーの固形分濃度をほぼ一定に調整しうることがわかる。
(a)試料Bを対象にした実験
微粉末の供給量を減少させることに代えて水の供給量を増大させたこと以外は前記の(3)の(a)と同様にして実験した。結果を表7及び表8に示す。
表7及び表8から、硫酸の添加量に基いて水の供給量を調整すれば、スラリーの固形分濃度をほぼ一定に調整しうることがわかる。
2 微粉末供給手段
3 水供給手段
4 鉛硫化物生成槽
5 硫化剤供給手段
6 硫酸カルシウム生成槽
7 硫酸供給手段
8 pH測定手段
9 疎水化反応槽
10 疎水化剤供給手段
11 浮遊選鉱機
12 固液比調整手段
Claims (3)
- (A)カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水を混合して、スラリーを調製するスラリー調製工程と、
(B)工程(A)で得られたスラリーと、硫化剤と、硫酸を混合して、固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーを得る固体分生成工程と、
(C)工程(B)で得られたスラリーに疎水化剤を加えて、前記鉛硫化物を疎水化させる疎水化工程と、
(D)工程(C)で得られたスラリーに対して浮遊選鉱処理を行ない、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程と、
(E)前記微粉末と水とからなるスラリーの固形分濃度を所望の値にするために、工程(B)における硫酸の添加量に基づいて、前記微粉末と水との質量比を調整する固液比調整工程と、
を含むことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。 - 前記微粉末が、塩素バイパスダストである請求項1に記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
- カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水を混合して、スラリーを調製するためのスラリー調製手段と、
前記スラリー調製手段で得られたスラリーと、硫化剤と、硫酸を混合して、固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーを得るための固体分生成手段と、
前記固体分生成手段で得られたスラリーに疎水化剤を加えて、前記鉛硫化物を疎水化させるための疎水化手段と、
前記疎水化手段で得られたスラリーに対して浮遊選鉱処理を行ない、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得るための浮遊選鉱機と、
前記微粉末と水とからなるスラリーの固形分濃度を所望の値にするために、前記固体分生成手段における硫酸の添加量に基づいて、前記微粉末と水との質量比を調整するための固液比調整手段と、
を含むことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理システム。
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