JP2010207200A - アトピー素因判定マーカー、アレルギー性皮膚疾患素因判定マーカー及びそれらの使用法 - Google Patents

アトピー素因判定マーカー、アレルギー性皮膚疾患素因判定マーカー及びそれらの使用法 Download PDF

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Kenji Matsumoto
健治 松本
Shoko Yagami
晶子 矢上
Kyoko Nimura
恭子 二村
Hirohisa Saito
博久 斎藤
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Abstract

【課題】 アトピー素因判定用マーカー及びアトピー性皮膚炎診断用マーカーを提供すること、及び、そのマーカーを利用したアトピー素因判定方法、アトピー素因判定剤、アトピー性皮膚炎診断方法、アトピー性皮膚炎診断剤を提供すること。
【解決手段】 FcεR1α遺伝子発現物質またはCD207遺伝子発現物質を含むマーカーは、アトピー素因判定及びアトピー性皮膚炎診断用マーカーとして利用できる。さらに、健康な皮膚における表皮を用いてこれらのマーカーを測定することによって、アトピー素因を判定でき、アトピー性皮膚炎の予防につなげることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アトピー素因判定マーカー、アレルギー性皮膚疾患素因判定マーカー、及びそれらの使用法に関する。
アトピー性皮膚炎は、免疫が介在する皮膚の慢性炎症であり、湿疹とそう痒が主な症状である。皮膚病変は軽度な紅斑から重度な苔癬化まで様々である(例えば、非特許文献1参照)。全世界において、子供の20%がアトピー性皮膚炎に罹患しているとされ、また成人になっても症状が改善しない場合も少なくない。アトピー性皮膚炎に罹患する患者では喘息や皮膚細菌感染などを頻繁に併発し、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)に大きく影響する(例えば、非特許文献2参照)。
アトピー素因とは、低濃度のアレルゲンに反応してIgE抗体を分泌し、喘息、鼻結膜炎、湿疹などの典型的なアレルギー症状(I型アレルギー)を発症しやすい個人的または家族性の体質と定義されており、通常、血液検査、皮膚試験等により上記IgE抗体の存在を証明することによりアトピー素因の有無が推定される(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、アトピー素因は遺伝的な要素も関係しているのにもかかわらず、上記IgE抗体の証明できない個人においては、アトピー素因を有しているかどうか、将来、上記IgE抗体を獲得しやすい体質であるのかどうか、判断できなかった。
アトピー性皮膚炎は、アトピー素因をもつ個人に発症することの多い皮膚疾患として提唱された疾患概念であり(実際、多くの患者では多数のアレルゲン特異的なIgE抗体が検出される)、現在では(1)半年以上続くそう痒をともなう皮膚の湿疹、及び(2)特定の部位において、おおむね左右対称に発症することを診断基準とする。したがって、診断の多くは医師の主観的判断によって行われる。また、重症度判定に関しても判定基準は提唱されているものの、やはり皮疹に対する主観的な判定によって行われる(例えば、非特許文献3参照)。アトピー性皮膚炎の予後、つまり、将来、増悪あるいは軽快していくのか、を判断する手段は存在しない。
福島雅典日本語版総監修「メルクマニュアル第18版日本語版」 日経BP出版社、2006年12月25日初版発行 Benedetto AD et al., Journal of Investigative Dermatology 129, 14-30, 2009 斎藤博久「小児のアトピー・喘息・皮膚炎の病態生理と診断・治療」真興交易医書出版部、2000年3月1日初版発行
そこで、本発明は、簡便に用いることができるアトピー素因判定マーカーやアレルギー性皮膚疾患素因判定マーカー、アトピー素因やアレルギー性皮膚疾患素因の判定やアトピーやアレルギー性皮膚疾患の診断を簡便に行うことができる方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、アトピー性皮膚炎を発症していない皮膚であっても、アトピー素因のある被検体の皮膚表皮においてはFcεR1及びCD207が高く発現していることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明に係るマーカーは、健康な皮膚における表皮を用いてアトピー素因を判定するためのアトピー素因判定用マーカーまたはアレルギー性皮膚疾患素因判定マーカーであって、FcεR1α遺伝子発現物質またはCD207遺伝子発現物質であることを特徴とする。
また、本発明に係る素因判定剤は、健康な皮膚における表皮を用いてアトピー素因またはアレルギー性皮膚疾患素因を判定するための素因判定剤であって、FcεR1α遺伝子発現物質またはCD207遺伝子発現物質を検出するためのプライマー、プローブ、または抗体を含有することを特徴とする。
さらに、本発明に係る素因判定キットは、健康な皮膚における表皮を用いてアトピー素因またはアレルギー性皮膚疾患素因を判定することを目的とし、本発明に係る素因判定剤を含有することを特徴とする。
本発明に係る測定方法は、健康な皮膚における表皮の抽出物において、FcεR1α遺伝子の発現またはCD207遺伝子の発現を検出することを特徴とする。
本発明に係る測定方法は、被検者から採取した健康な頭髪を用いて、FcεR1α遺伝子の発現またはCD207遺伝子の発現を調べる工程を含むことを特徴とする。ここで、頭髪は3〜7本であることが好ましい。
さらに、本発明に係るアトピー素因またはアレルギー性皮膚疾患素因の判定方法は、上記いずれかの測定方法を一工程として含む。
また、本発明に係るアトピー性皮膚炎を含むアレルギー性皮膚疾患の診断方法は、上記いずれかの測定方法を一工程として含む。
本発明により、簡便に用いることができるアトピー素因判定マーカーやアレルギー性皮膚疾患素因判定マーカー、アトピー素因やアレルギー性皮膚疾患素因の判定やアトピーやアレルギー性皮膚疾患の診断を簡便に行うことができる方法を提供することができる。
本発明の一実施形態における、頭髪毛根組織におけるKRT14mRNAの発現量(縦軸)とLOXL2mRNAの発現量(横軸)を示した図である。 本発明の一実施形態における、頭髪毛根組織におけるFcεR1αmRNA発現量を示した図である。 本発明の一実施形態における、頭髪毛根組織におけるCD207mRNA発現量を示した図である。 本発明の一実施形態における、図2及び3のグラフにおけるデータ表示法を示した図である。
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されない。
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.等の標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==マーカー==
本発明に係るマーカーはHigh affinity immunoglobulin E receptor (FcεR1)α遺伝子の遺伝子発現物質あるいはCD207遺伝子の遺伝子発現物質である。
ランゲルハンス細胞や好酸球、単核白血球に発現するFcεR1は3つのサブユニット(α、2γ)から構成されるIgE受容体であり、マスト細胞や好塩基球に発現するFcεR1は4つのサブユニット(α、β、2γ)から構成されることが知られている(Ganguly S et al., Journal of Biological Chemistry 282(45), 32758-32764, 2007)。このうち、樹状細胞の一種であるランゲルハンス細胞においてFcεR1にIgE抗体とアレルゲンが結合することにより、免疫応答がおこりB細胞からのIgE抗体の産生が促進され、また、アトピー性皮膚炎増悪の原因となるアレルギー反応が引き起こされる(Novak N, Bieber T, Amedican Academy of Dermatology 53 (2)S171-S176, 2005;Ganguly S et al., Journal of Biological Chemistry 282(45), 32758-32764, 2007)。また、CD207(langerin)は、その機能の詳細は不明であるが、ランゲルハンス細胞に特異的に発現することが知られるレクチンであり、ランゲルハンス細胞のマーカーとして使用されている(Merad M et al., Nature Review of Immunology 8(12)935-947, 2008)。
これらの分子が共通して発現するランゲルハンス細胞は、アトピー性皮膚炎(I型アレルギー)や接触性皮膚炎(IV型アレルギー)を含むアレルギー性皮膚疾患の患部皮膚に多く存在する抗原提示細胞として知られる(Incorvaia C et al., Clinical and Experimental Immunology 153 Suppl 1, 27-29, 2008;Novak N, Bieber T, Amedican Academy of Dermatology 53 (2)S171-S176, 2005)。しかしながら、これまで、アレルギー性皮膚疾患のない健康な皮膚において、ランゲルハンス細胞のマーカーであるFcεR1αあるいはCD207が、アレルギー性皮膚疾患素因を有さない健常人の皮膚より、高発現していることは知られていなかった。
一方、ランゲルハンス細胞は、皮膚を通じて食物抗原に感作することによって、食物アレルギーの発症を介在し、従って、皮膚にランゲルハンス細胞が多く存在する場合、食物アレルギーに罹患しやすいと考えられている(Merk HF, Z Arztl Fortbild Qualitatssich 91(6)507-517, 1997)。従って、アトピー性皮膚炎の素因を有する患者は、アレルギー性皮膚疾患だけではなく、食物アレルギーを含むI型アレルギー全般に対する素因を有していると考えられる。
このような当業者の技術常識、及び、本発明者らが、アトピー素因患者の健康な皮膚で、FcεR1α及びCD207がアトピー素因を有さない健常人の皮膚より高発現していることを見出した発見に基づき、本発明に係るマーカーを、アトピー素因及びアレルギー性皮膚疾患素因の判定に用いることができる。
なお、本明細書において、アトピー素因とは、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどのI型アレルギーを発症している患者の体質、または、現在アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどのI型アレルギーを発症していないが、将来アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどのI型アレルギーに罹患する可能性のある体質の両方を指す。
また、アレルギー性皮膚疾患素因とは、身体のいずれかの部位においてアトピー性皮膚炎(I型アレルギー)や接触性皮膚炎(IV型アレルギー)などのアレルギー性皮膚疾患を発症している患者の体質、または、現在身体のいずれの部位においてもアトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎などのアレルギー性皮膚疾患を発症していないが、将来アトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎などのアレルギー性皮膚疾患に罹患する可能性のある体質の両方を指す。
本発明に係るマーカーである遺伝子発現物質とは、FcεR1α遺伝子あるいはCD207遺伝子の情報に基づいてタンパク質が合成される過程において生合成される物質であれば制限されないが、例えばhnRNA、mRNAやタンパク質を例示でき、具体的には、FcεR1αhnRNA、CD207hnRNA、FcεR1αmRNA、CD207mRNA、及び、FcεR1αタンパク質、CD207タンパク質が挙げられる。FcεR1α遺伝子あるいはCD207遺伝子の由来となる動物種は特に限定されず、ヒト遺伝子であっても、そのホモログであっても良い。
本発明に係るマーカーを用いたアトピー素因またはアレルギー性皮膚疾患素因の判定、及び、アトピーまたはアレルギー性皮膚疾患の診断対象となる患者(以下、被検体とも呼ぶ)はヒトであることが好ましいが、これらの疾患に罹患する可能性のある動物であれば特に制限がなく、イヌ、ネコをはじめとする哺乳動物であってもよい。また、診断対象の年齢は制限されない。
==マーカーの測定==
マーカーの測定は被検体の表皮組織を採取することにより行う。表皮は被検体の身体のいずれの部位から採取した表皮であってもよく、例えば、バイオプシーにより採取した皮膚から単離した表皮であっても、粘着性のあるパッチなどではがし取った表皮であってもよいが、被検体への侵襲度と簡易性を考慮すると、採取した体毛の毛根周囲に付着した表皮であることが好ましく、体毛は頭髪であることがより好ましい。頭髪を採取する場合、一被検体からの採取数は1本であっても、複数本であってもよいが、被検体の苦痛を考慮すると、3本から7本であることが好ましく、より安定した結果を得るためには5本以上であることがさらに好ましい。なお、ここで用いる体毛あるいは頭髪は、自然に抜け落ちた毛より、生育中の健康な毛であることが好ましい。
なお、頭髪を用いた方法は、非侵襲的であって、従来のバイオプシーなどより、被検体に対するストレスが少ないが、これまで、このような少ない本数を用いて、表皮組織における遺伝子発現物質を検出できるとは考えられていなかった。従って、この方法は、アレルギー性皮膚疾患の症状のない健康な皮膚を用いてアトピー素因またはアレルギー性皮膚疾患素因を判定するだけでなく、アレルギー性皮膚疾患のある皮膚を用いてアトピー性皮膚炎またはアレルギー性皮膚疾患であるという診断をする際にも用いることができる。
採取した表皮におけるマーカーの測定方法は、マーカーの種類に従って、当業者が周知の方法から適宜選択できる。
例えば、マーカーがFcεR1αmRNAあるいはCD207mRNAである場合には、当業者に周知のmRNA発現量を測定するための方法を用いることができる。具体的には、リアルタイム定量PCR法、ノーザンブロット法、マクロアレイ法、マイクロアレイ法等を例示できるが、これらに限定されない。これらの定量方法に供するため、被検体から採取された表皮組織からRNA試料やcDNA試料を調製する方法は当業者に周知の方法から適宜選択でき、市販の試薬やキットを利用してもよい。
PCR法に用いるプライマー、及び、ノーザンブロット法、マクロアレイ法、マイクロアレイ法に用いるプローブ配列は、FcεR1αmRNAあるいはCD207mRNAを特異的に検出することができる範囲で特に限定されず、当業者が適宜設計することができる。例えば、リアルタイム定量PCR法に用いるプライマーとして、
FcεR1α-Forward: GCAAAGTGTGGCAGCTGGAC(配列番号1)
FcεR1α-Reverse: TCCACAGCAAACAGAATCACCA(配列番号2)
CD207-Forward: TTGGCCAAACCCCCTAGAA(配列番号3)
CD107-Reverse: CACTGCAAACACAGCCAGCT(配列番号4)
を例示することができる。
マーカーがFcεR1αタンパク質あるいはCD207タンパク質である場合には、当業者に周知のタンパク質発現量を測定するための方法を用いることができる。具体的には、FcεR1αタンパク質あるいはCD207タンパク質に対する特異的な抗体を用いた方法を利用することが好ましく、例えば、ウエスタンブロット法、酵素免疫測定法(ELISA法)、フローサイトメトリー法等を例示できるが、これらに限定されない。これらの方法に供するため、被検体から採取された表皮組織からタンパク質試料を抽出する方法は当業者に周知の方法から適宜選択でき、市販の試薬やキットを利用してもよい。ここで、測定に用いる抗体は、FcεR1αタンパク質あるいはCD207タンパク質を特異的に検出することができれば制限がなく、例えば、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。また、測定の際、一種類の抗体を用いても、あるいは一つのタンパク質における異なる抗原部位に対する複数の抗体を同時に用いてもよい。
==アトピー素因判定剤及びアレルギー性皮膚疾患素因判定剤==
上記のようにマーカーの測定に用いるプライマー、プローブ、抗体を、当業者に周知の薬学的に許容される担体、希釈剤、腑形剤等を用いて剤形化して、アトピー素因判定剤またはアレルギー性皮膚疾患素因判定剤として利用することができる。この剤形化に伴って、FcεR1α及びCD207の2種のmRNAを同時に検出できるように、プローブやプライマーを混合してもよく、また、FcεR1α及びCD207の2種のタンパク質を同時に検出できるように抗体を混合してもよい。
さらに、上記のアトピー素因判定剤及びアレルギー性皮膚疾患素因判定剤は、被検体から採取した表皮組織の測定用試料調製から測定までを簡易に行うための判定キットに利用してもよい。一例として、表皮組織からのタンパク質抽出のためのバッファー、マーカーを検出するための抗体、結果を表示するための可視化薬剤等を含むELISAキットを挙げることができる。粘着性パッチや頭髪採取等の非侵襲性の表皮採取方法と合わせてこのキットを用いれば、病院等の専門施設以外、例えば保健所や自宅などにおいてアトピー素因判定あるいはアレルギー性皮膚疾患素因判定を簡便に行うことが可能である。
==アトピー素因判定及びアレルギー性皮膚疾患素因判定==
本発明に係るマーカーを上記に例示したような任意の方法で測定することにより、アトピー素因判定あるいはアレルギー性皮膚疾患素因判定を行うことができる。アトピー素因判定あるいはアレルギー性皮膚疾患素因判定のためには、あらかじめ測定した複数人の健常体表皮組織におけるマーカー測定値から平均値や正常値範囲等の指標を設定し、この指標と被検体における測定値を比較することにより行うことが好ましく、被検体の測定値が指標より高い場合に、アトピー素因あるいはアレルギー性皮膚疾患素因があると判定する。なお、ここで、健常体とは、アトピー性皮膚炎を含むI型アレルギー性疾患を発症していない被検体をいう。
本発明に係るマーカーを用いてアトピー素因あるいはアレルギー性皮膚疾患素因を判定することにより、例えば、湿疹があるが、アトピー性皮膚炎と診断できない時期に湿疹が出ている皮膚以外の組織(好ましくは頭髪)を用いて簡便に、また迅速に診断したり、あるいは、被検体はその身体のいずれの部位においてもアトピー性皮膚炎を発症していないが、将来被検体がアレルギー性皮膚疾患を発症する可能性を推測したりすることができる。従って、このアトピー素因判定あるいはアレルギー性皮膚疾患素因判定はヒトの乳児や幼児の検診の際に行うことが特に有効である。その結果、例えばアトピー素因があると判定された場合には、アトピー性皮膚炎の原因となる抗原への暴露を避けるなどの対策により、アトピー性皮膚炎の発症を予防することができると考えられる。
[実験方法]
==試料採取==
頭部にアトピー性皮膚炎を発症している患者(日本皮膚炎学会アトピー性皮膚炎重症度分類では重症に分類される患者群)(頭部AD、N=8、女性6名、男性2名、15歳〜54歳 平均34歳)、頭部以外の身体の一部に重度のアトピー性皮膚炎を発症している患者(日本皮膚炎学会アトピー性皮膚炎重症度分類では重症に分類される患者群)(体AD、N=8、女性7名、男性1名、5歳〜54歳、平均34歳)、頭部が乾癬に罹患している患者(頭部乾癬、N=5、男性3名、女性2名、20歳〜56歳、平均41歳)、頭以外の身体の一部が乾癬に罹患している患者(体乾癬、N=3、男性1名、女性2名、29歳〜56歳、平均44歳)、健常被検者(N=15、男性7名、女性8名、21歳〜38歳、平均25歳)から健康な頭髪を5本ずつ採取した。なお、健常被検者各群は異なる被験者から異なる時期に試料を採取した。なお、アトピー性皮膚炎の診断は、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会が作成した診断基準に基づき行った(日皮会誌:118(3), 325-342, 2008)。
==cDNA調製法==
上記のように採取した頭髪の毛根部分(根元から1cm程)を QIAGEN RNAlater(QIAGEN社) 1mlに浸し、4℃にて保存した。遠心してRNAlaterを除去した後に、 QIAGEN RNeasy Mini Kit (QIAGEN社)のBuffer RLTを加えて毛根組織を溶解し、QIAshredderを用いてホモゲナイズした後に、RNeasy Mini Kitのプロトコールに従って全RNAを抽出した。抽出した全RNAは、iScript cDNA Synthesis Kit(BIO-RAD社)を用いてcDNAを合成した。
==リアルタイム定量PCR法==
SYBR Green Realtime PCR Master Mix-Plus(TOYOBO社)を用いて、Applied Biosystems 7300 リアルタイムPCRシステムにて測定した。測定に際しては、Human Universal Reference Total RNA(Clontech社)を使って調製したスタンダードを用いて検量線を作成し、House keeping geneとしてACTB(Forward: CCCAGCCATGTACGTTGCTAT(配列番号5), Reverse: TCACCGGAGTCCATCACGAT(配列番号6))で補正を行って全 RNA 1ngあたりのコピー数を算出した。測定のためのプライマーセットとして、FcεR1α (Forward: GCAAAGTGTGGCAGCTGGAC(配列番号1), Reverse: TCCACAGCAAACAGAATCACCA(配列番号2))CD207 (Forward: TTGGCCAAACCCCCTAGAA(配列番号3), Reverse: CACTGCAAACACAGCCAGCT(配列番号4)),を使用した。
[実施例1]
本実施例では健康な頭髪及び患者から採取した頭髪において、毛根組織量と、その毛根に付着する表皮組織量の比が一定であることを示す。
毛根組織から得たcDNAにおいて、下記プライマーを用いて定量PCR法を行い、KRT14とLOXL2の発現を調べた。
KRT14-Forward: ACCAAGAACTGAGGCTGCCC(配列番号7)
KRT14-Reverse: TGAAGCTGTATTGATTGCCAGGA(配列番号8)
LOXL2-Forward: TCGAGGTTGCAGAATCCGATT(配列番号9)
LOXL2-Reverse: TCCGTCTCTTCGCTGAAGGAA(配列番号10)
なお、マイクロアレイ解析によって、培養皮膚角化細胞と培養毛乳頭細胞をさまざまなサイトカインで刺激しても変動が少なく、かつ培養皮膚角化細胞と培養毛培養乳頭細胞の間で遺伝子発現量が大きく異なる遺伝子を検索したところ、皮膚角化細胞ではKRT4が、毛乳頭細胞ではLOXL2が見出されている。
各被検者群から採取した、毛根組織におけるKRT14とLOXLの発現を図1に示す。いずれの被検者の群においても、KRT14とLOXL2の発現の比は一定であった。
この結果は、採取した頭髪の毛根には表皮組織が付着していること、さらに、毛根組織と表皮組織の量は常に正の相関することを示す。すなわち、頭皮組織中のマーカー遺伝子あるいはタンパク質量検出のために、頭皮が付着した毛根を使用することで安定したマーカー検出が行えることを示す。
[実施例2]
本実施例では、FcεR1α及びCD207がアトピー性皮膚炎に罹患した表皮及びアトピー素因を有する被検体の表皮で高く発現することを示す。
毛根組織から得たcDNAにおいて、上記プライマーセット(配列番号1、2(FcεR1α)及び配列番号3、4(CD207))を用いて定量PCR法を行い、FcεR1α及びCD207の発現を調べた。
図2に示すように、FcεR1αの発現は、頭部AD群及び体AD群において、健常被検者群及び頭部乾癬群に比して高かった。さらに、頭部乾癬群では、健常被検者群に比して発現が低い傾向が見られた。つまり、FcεR1αはアトピー性皮膚炎に罹患した皮膚、及び罹患していないがアトピー素因のある被検者の皮膚で高く、一方で乾癬に罹患した皮膚においては低かった。
また、図3に示すように、CD207の発現は、頭部AD群及び体AD群において、健常被検者群及び頭部乾癬群に比して高かった。一方で、頭部乾癬群及び体乾癬群では、健常被検者と比較して差がなかった。つまり、CD207の発現は、アトピー性皮膚炎に罹患した皮膚、及び罹患していないがアトピー素因のある被検者の皮膚で、亢進していた。
図2及び3の各グラフの読み方については別途、図4に示した。
このように、FcεR1α及びCD207は、アトピー性皮膚炎の患者で発現が高く、アトピー性皮膚炎と外見上類似した皮膚疾患である乾癬では発現が低いことから、アトピー性皮膚炎の診断のためのマーカーとして有用であることが示された。さらに、これらの遺伝子は、皮膚を採取した頭皮がアトピー性皮膚炎に罹患していない体AD群においても、健常被検者と比較して発現が高いことから、被検者のアトピー素因及びアレルギー性皮膚疾患素因を判定するためのマーカーとしても有用である。

Claims (6)

  1. 健康な皮膚における表皮を用いてアトピー素因またはアレルギー性皮膚疾患素因を判定するための素因判定マーカーであって、
    FcεR1α遺伝子発現物質またはCD207遺伝子発現物質であるマーカー。
  2. 健康な皮膚における表皮を用いてアトピー素因またはアレルギー性皮膚疾患素因を判定するための素因判定剤であって、
    FcεR1α遺伝子発現物質またはCD207遺伝子発現物質を検出するためのプライマー、プローブ、または抗体を含有することを特徴とする素因判定剤。
  3. 健康な皮膚における表皮を用いてアトピー素因またはアレルギー性皮膚疾患素因を判定するための素因判定キットであって、
    請求項2に記載の素因判定剤を含有することを特徴とするキット。
  4. 健康な皮膚における表皮の抽出物において、FcεR1α遺伝子の発現またはCD207遺伝子の発現を検出することを特徴とする測定方法。
  5. 被検者から採取した健康な頭髪を用いて、FcεR1α遺伝子の発現またはCD207遺伝子の発現を検出する工程を含むことを特徴とする測定方法。
  6. 前記頭髪が3〜7本であることを特徴とする、請求項5に記載の測定方法。
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