JP2010206023A - クラスター並びにこれを用いたスピンram及びスピントルク発振器 - Google Patents

クラスター並びにこれを用いたスピンram及びスピントルク発振器 Download PDF

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Abstract

【課題】スピンRAM、スピントルク発振器などに適用できるクラスターを提案する。
【解決手段】本発明の例に係わるクラスターは、磁性発振素子としての第一磁気抵抗効果素子MTJ1と、メモリセルとしての第二磁気抵抗効果素子MTJ2とを備える。第一及び第二磁気抵抗効果素子MTJ1,MTJ2は、磁化方向が可変の磁気フリー層11−1,11−2、磁化方向が不変の磁気ピンド層12−1,12−2、及び、これらの間に配置されるスペーサー層13−1,13−2を基本構造とする。第一磁気抵抗効果素子MTJ1の磁気フリー層11−1は、第一磁気抵抗効果素子MTJ1に発振閾値電流よりも大きい電流を流したときに、第二磁気抵抗効果素子MTJ2の磁気フリー層11−2と磁気ピンド層12−2との残留磁化の磁化方向に依存した周波数で磁化振動する。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の磁気抵抗効果素子から構成されるクラスター並びにこれを用いたスピンRAM及びスピントルク発振器に関する。
主に、L. Berger(例えば、非特許文献1を参照)及びJ. C. Slonczewski(例えば、非特許文献2を参照)により、「電流による磁化操作」というパラダイムがもたらされ、2000年ごろにパラダイムシフトが起こって以来、電流による磁化操作という概念の精密化に関する研究やその概念を応用するという研究が活発に行なわれている。
その応用面においては、電流による磁化操作において中心的な役割を演ずる物理量の一つがスピントルクであることから、スピントルクデバイス、或いは、スピン注入デバイスと呼ばれる一群のデバイスに関する開発が盛んに行なわれている(スピントロニクスの勃興)。
金属強磁性体を用いるスピントルクデバイスの基本構造は、フリー層、スペーサー層、ピンド層の3層積層構造である。その代表的なデバイスとして、スピン注入磁化反転を活かしたスピン注入磁気ランダムアクセスメモリ(スピンRAM)や、スピン注入自励発振を活かした磁性発振素子(スピントルク発振器;Spin-Torque Oscillator)などがある。
フリー層の磁化を大きさが普遍な単磁区磁化とし、その方向2自由度の動力学を考えると、Poincare-Bendixson定理の見地から、スピンRAMは静的状態を活かしたデバイス、磁性発振素子はリミットサイクルを活かしたデバイス、と見做すことができる。
スピンRAMは、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子に関し、フリー層の磁化とピンド層の磁化が平行であるか反平行であるかに応じて、素子抵抗が小さくなったり大きくなったりすることを利用して磁気データを記憶する。
しかし、スピンRAMでは、通常、一つのメモリセルに一つの選択トランジスタが付加されている。また、書き込み(磁化反転)をスピントルクにより行うに当って、そのために必要なスピン注入電流の電流密度を十分に下げられず、メモリセルが微細化されても、選択トランジスタが微細化できない、という事態が発生している。
このため、一つのメモリセルに一つの選択トランジスタを付加する 1 to 1のセル構造ではなく、複数のメモリセルに一つの選択トランジスタを付加する many to 1の新たなセル構造の開発が望まれている。
これが実現できれば、スピンRAM全体の体積を減らすことができ、その分、更なるメモリ容量の大容量化を図ることができる。
また、スピンRAMでは、通常、読み出し或いは書き込みは、メモリセル毎に行われる。ここで、複数のメモリセルに対して同時に読み出し或いは書き込みができれば、高速かつ省電力のスピンRAMとすることができる。
一方、磁性発振素子は、数〜数十GHzの磁化振動を活かしたサブミクロンサイズの高周波発振器であり、さまざまな用途が考案されている。
例えば、高周波出力の周波数(磁化振動の周波数に他ならない)が外部磁場によって変調する特徴を生かして磁気センサーへの適用が提案されている(例えば、特願2007-249650、特願2008-222294を参照)。
また、高周波出力の周波数が素子に通電する電流に依存する特徴を生かしてカレントチューナブル発振器への適用が提案されている(例えば、非特許文献3及び非特許文献4を参照)。
さらに、磁化の振動に由来する振動磁場が素子から発生する特徴を生かして振動磁場発生器が提案されている。この振動磁場発生器としての磁性発振素子を磁気記録装置の高周波書き込み時のアシスト用素子として用いる、といった用途も検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
そこで、例えば、このような磁性発振素子を発振器として使用する場合、発振周波数をオンデマンドにチューンすることができれば、非常に好ましい。
特許第4050245号公報
L. Berger: Journal of Applied Physics 3, 2156 (1978). J. C. Slonczewski: J. Magn. Magn. Mat., 159, L1 (1996). S.I. Kiselev et al., Nature (London) 425, 380 (2003). W. H. Rippard et al., Phys. Rev. Lett. 92, 027201 (2004).
本発明は、例えば、many to 1のセル構造に対応可能なスピンRAMのメモリセルユニットとして、発振周波数をオンデマンドにチューンできる発振器として使用可能な複数の磁気抵抗効果素子から構成される新たなユニット(クラスター)について提案する。
(1) 本発明の例に係わるクラスターは、磁性発振素子としての第一磁気抵抗効果素子と、前記第一磁気抵抗効果素子に隣接して配置されるメモリセルとしての第二磁気抵抗効果素子とを備える。前記第一及び第二磁気抵抗効果素子は、磁化方向が可変の磁気フリー層、磁化方向が不変の磁気ピンド層、及び、これらの間に配置されるスペーサー層を基本構造とする。前記第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層との残留磁化の磁化方向は、平行又は反平行に設定される。前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層は、前記第一磁気抵抗効果素子に発振閾値電流よりも大きい電流を流したときに、前記第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層との残留磁化の磁化方向に依存した周波数で磁化振動する。これは、前記第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層の残留磁化による磁場は、前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層にとっての外部磁場であること、及び、スピン注入自励発振の磁化振動を起源とする高周波発振周波数は、外部磁場に依存するという特徴を有すること、に起因する。
(2) 本発明の例に係わるクラスターは、磁性発振素子としての第一磁気抵抗効果素子と、前記第一磁気抵抗効果素子に隣接して配置されるメモリセルとしての複数の第二磁気抵抗効果素子とを備える。前記第一及び第二磁気抵抗効果素子は、磁化方向が可変の磁気フリー層、磁化方向が不変の磁気ピンド層、及び、これらの間に配置されるスペーサー層を基本構造とする。前記複数の第二磁気抵抗効果素子は、前記第一磁気抵抗効果素子に対して静磁気的に非対称に配置される。前記複数の第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層との残留磁化の磁化方向は、平行又は反平行に設定される。前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層は、前記第一磁気抵抗効果素子に発振閾値電流よりも大きい電流を流したときに、前記複数の第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層との残留磁化の磁化方向に依存した周波数で磁化振動する。前記複数の第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層の残留磁化による重ね合わせ磁場は、前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層にとっての外部磁場であるためである。
(3) 本発明の例に係わるスピンRAMは、上述の(2)のクラスターと、前記クラスターの前記第一磁気抵抗効果素子に接続される読み出し回路とを備える。前記読み出し回路は、前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層の磁化振動の周波数に基づいて、前記複数の第二磁気抵抗効果素子のそれぞれに記憶されたデータを判定する。
また、本発明の例に係わるスピンRAMは、上述の(2)のクラスターと、前記クラスターの前記複数の第二磁気抵抗効果素子のうち選択された磁気抵抗効果素子にデータを書き込む書き込み回路とを備える。前記選択された磁気抵抗効果素子にデータを書き込んでいるときに、前記第一磁気抵抗効果素子に前記発振閾値電流よりも大きい電流を流す。
(4) 本発明の例に係わるスピントルク発振器は、上述の(2)のクラスターと、前記クラスターの前記第一磁気抵抗効果素子に接続される変換回路とを備える。前記変換回路は、前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層の磁化振動に由来する出力の高周波成分を取り出す。
本発明によれば、複数の磁気抵抗効果素子から構成される新たなユニット(クラスター)により、例えば、many to 1のセル構造のスピンRAMや、発振周波数をオンデマンドにチューンできる発振器などを実現できる。
本発明に係わるクラスターを示す図である。 本発明に係わるクラスターを示す図である。 第一実施例のクラスターを示す図である。 第二実施例のクラスターを示す図である。 第三実施例のクラスターを示す図である。 静磁結合を説明する図である。 静磁結合を説明する図である。 磁化状態と発振周波数との関係を示す図である。 静磁気的対称性を示す図である。 静磁気的非対称性の例を示す図である。 クロスポイント型スピンRAMを示す図である。 1トラ1セル型スピンRAMを示す図である。 振動磁場アシストを示す図である。 many to 1のセル構造を示す図である。 発振器を備えた磁気ランダムアクセスメモリを示す図である。 磁気抵抗効果素子の製造方法を説明する図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
1. 原理
本発明は、複数の磁気抵抗効果素子から構成される新たなユニット(以下、クラスターと称する)を提案するものである。
図1及び図2は、本発明に係わるクラスターの原理を示している。
クラスター10は、互いに隣接して配置される複数の磁気抵抗効果素子MTJ1,MTJ2から構成される。
磁気抵抗効果素子MTJ1は、磁化方向が可変の磁気フリー層11−1、磁化方向が不変の磁気ピンド層12−1、及び、これらの間に配置されるスペーサー層13−1を基本構造とし、磁性発振素子として機能する。
即ち、磁気抵抗効果素子MTJ1の磁気フリー層11−1は、読み出し回路14を用いて、磁気抵抗効果素子MTJ1に発振閾値電流よりも大きい電流を流したときに、磁化振動する。
ここで、図1のクラスター10は、磁気フリー層11−1と磁気ピンド層12−1との残留磁化の磁化方向が平行の状態で磁化振動(平行発振)するクラスターである。
また、図2のクラスター10は、磁気フリー層11−1と磁気ピンド層12−1との残留磁化の磁化方向が反平行の状態で磁化振動(反平行発振)するクラスターである。
ところで、平行とは、磁気フリー層と磁気ピンド層との磁化方向の相対角度θが0°≦θ<90°の範囲内にあることを意味し、反平行とは、磁気フリー層と磁気ピンド層との磁化方向の相対角度θが90°<θ≦180°の範囲内にあることを意味する。
磁気抵抗効果素子MTJ2は、磁化方向が可変の磁気フリー層11−2、磁化方向が不変の磁気ピンド層12−2、及び、これらの間に配置されるスペーサー層13−2を基本構造とし、メモリセルとして機能する。
即ち、磁気抵抗効果素子MTJ2の磁気フリー層11−2と磁気ピンド層12−2との残留磁化の磁化方向は、書き込み回路15により、平行又は反平行に設定される。
書き込み回路15は、磁気抵抗効果素子MTJ2にスピン注入電流を流して磁気フリー層11−2にスピントルクを発生させることにより、又は、磁気抵抗効果素子MTJ2に磁場を与えることにより、書き込み(平行又は反平行の設定)を行う。
この状態において、磁気抵抗効果素子MTJ1に作用する外部磁場Hextは、磁気抵抗効果素子MTJ2の磁気フリー層11−2と磁気ピンド層12−2との残留磁化の磁化方向に依存する。
従って、磁気抵抗効果素子MTJ1の磁気フリー層11−1は、磁気抵抗効果素子MTJ1に発振閾値電流よりも大きい電流を流したときに、磁気抵抗効果素子MTJ2の磁気フリー層11−2と磁気ピンド層12−2との残留磁化の磁化方向に依存した周波数で磁化振動する。
そして、例えば、この周波数を読み出し回路14により測定することにより、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2の磁気フリー層11−2と磁気ピンド層12−2との残留磁化の磁化方向を確認することができる。
即ち、クラスター10を利用してスピンRAMを構成することができる。
また、例えば、書き込み回路15を用いて、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2の磁気フリー層11−2と磁気ピンド層12−2との残留磁化の磁化方向を決めることにより、この周波数をオンデマンドにチューンすることができる。
即ち、読み出し回路14に、磁気抵抗効果素子MTJ1の磁気フリー層11−1の磁化振動に由来する出力の高周波成分を取り出す変換回路としての機能を持たせれば、クラスター10を利用して発振器を構成することができる。
このクラスター10の特徴は、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1と、これに外部磁場Hextを作用させるメモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2とがほぼ同一の積層基本構造を有している点にある。各素子の個性は、その形状、大きさ等で付与される。
このため、例えば、従来型磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)プロセスに類似のプロセスを用いて、半導体基板上に本発明に係わるクラスターを容易に形成することができる。
また、図1及び図2は、本発明の原理を説明するための基本構造であり、例えば、これを応用することにより、高速化、省電力化及び大容量化が可能なスピンRAMや、発振周波数を細かく制御可能なスピントルク発振器を構成することができる。
具体的には、一つの磁性発振素子に複数のメモリセルを対応させる。
即ち、一つのクラスターを一つの磁性発振素子と複数のメモリセルとから構成し、これらの間に静磁気的な相互作用を発生させる。
このようにすれば、磁性発振素子からの高周波出力は、クラスター内の複数のメモリセルが有するデータを反映したものになるため、複数のメモリセルのデータをまとめて一気に読み出し、高速化を実現できる。
また、読み出しに際して、複数のメモリセルのそれぞれに電流を流す必要がないため、省電力化を実現できる。
さらに、このクラスターを用いれば、複数のメモリセルに一つの選択トランジスタを付加する many to 1の新たなセル構造により、大容量化を実現できる。
また、磁性発振素子を振動磁場発生器として機能させれば、クラスター内の選択されたメモリセルにデータを書き込んでいるときに振動磁場を発生させ、この振動磁場を選択されたメモリセルの磁化反転のアシストとして用いることが可能になる。
この振動磁場は、書き込み対象となるメモリセルの選択に用いることもできる。
さらに、一つのクラスター内のメモリセルの数が多ければ多いほど、発振器の発振周波数を細かく制御することができる。
本発明に係わるクラスターにより発振器を構成するときは、発振器は、高出力化及び発振周波数の安定化を図るため、複数のクラスターから構成するのが好ましい。
2. 実施形態
(1) クラスターの構成例
本発明に係わるクラスターの最小限の要件は、磁性発振素子としての一つの磁気抵抗効果素子とメモリセルとしての一つの磁気抵抗効果素子であるが、実用上は、一つのクラスターを複数のメモリセルから構成するのが好ましい。
以下では、実用上好ましいクラスターの例のいくつかについて説明する。
図3は、クラスターの第一例を示している。
クラスター10は、磁性発振素子として機能する1個の磁気抵抗効果素子MTJ1と、メモリセルとして機能する4個の磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4から構成される。
クラスター10を構成する磁気抵抗効果素子MTJ1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4の基本構造は、図1及び図2に示すように、磁気フリー層/スペーサー層/磁気ピンド層の積層構造である。
また、同図に示す構造は、基本構造であるから、例えば、磁気フリー層又は磁気ピンド層が複数の層からなる応用構造なども、当然に本発明の範疇に含まれる。
メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4は、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に隣接し、かつ、これを取り囲むように配置される。
ここで、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4は、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に対して非対称に配置される。
非対称とは、静磁気的に非対称であることを意味する。
このように配置することにより、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4に記憶されたデータに依存した周波数(2=16通り)で、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1の磁気フリー層を磁化振動させることができるからである。これについては後に詳述する。
静磁気的に非対称にするには、磁気抵抗効果素子MTJ1と磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4との距離を異ならせたり、磁気抵抗効果素子MTJ1, MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4の材料、形状、構造及び一軸異方性の方向のうちの少なくとも一つを異ならせたりすればよい。
このようなクラスター10を、例えば、スピンRAMに適用すれば、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4に記憶された4ビットデータを一度に読み出すことができる。
また、このようなクラスター10を、例えば、発振器に適用すれば、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4に記憶された4ビットデータに応じて、16通りの高周波出力を得ることができる。
図4は、クラスターの第二例を示している。
クラスター10は、磁性発振素子として機能する1個の磁気抵抗効果素子MTJ1と、メモリセルとして機能する8個の磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8から構成される。
クラスター10を構成する磁気抵抗効果素子MTJ1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8の基本構造は、図1及び図2に示すように、磁気フリー層/スペーサー層/磁気ピンド層の積層構造である。
メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8は、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に隣接し、かつ、これを取り囲むように配置される。
ここで、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8は、第一例と同様に、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に対して、静磁気的に非対称に配置される。
このように配置することにより、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8に記憶されたデータに依存した周波数(2=256通り)で、磁気抵抗効果素子MTJ1の磁気フリー層を磁化振動させることができる。
このようなクラスター10を、例えば、スピンRAMに適用すれば、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8に記憶された8ビットデータを一度に読み出すことができる。
また、このようなクラスター10を、例えば、発振器に適用すれば、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8に記憶された8ビットデータに応じて、256通りの高周波出力を得ることができる。
図5は、クラスターの第三例を示している。
クラスター10は、磁性発振素子として機能する1個の磁気抵抗効果素子MTJ1と、メモリセルとして機能する12個の磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8,MTJ2−9,MTJ2−10,MTJ2−11,MTJ2−12から構成される。
クラスター10を構成する磁気抵抗効果素子MTJ1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8,MTJ2−9,MTJ2−10,MTJ2−11,MTJ2−12の基本構造は、磁気フリー層/スペーサー層/磁気ピンド層の積層構造である。
メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8,MTJ2−9,MTJ2−10,MTJ2−11,MTJ2−12は、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に隣接し、かつ、これを取り囲むように配置される。
ここで、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8,MTJ2−9,MTJ2−10,MTJ2−11,MTJ2−12は、第一例と同様に、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に対して、静磁気的に非対称に配置される。
このように配置することにより、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8,MTJ2−9,MTJ2−10,MTJ2−11,MTJ2−12に記憶されたデータに依存した周波数(212=4096通り)で、磁気抵抗効果素子MTJ1の磁気フリー層を磁化振動させることができる。
このようなクラスター10を、例えば、スピンRAMに適用すれば、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8,MTJ2−9,MTJ2−10,MTJ2−11,MTJ2−12に記憶された12ビットデータを一度に読み出すことができる。
また、このようなクラスター10を、例えば、発振器に適用すれば、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8,MTJ2−9,MTJ2−10,MTJ2−11,MTJ2−12に記憶された12ビットデータに応じて、4096通りの高周波出力を得ることができる。
(2) 磁性発振素子と複数のメモリセルとの静磁結合について
次に、クラスターを構成する磁性発振素子と複数のメモリセルとの静磁結合について説明する。ここでは、図4のクラスターを例とする。
図6は、図4のクラスターを示している。
同図に示すように、メモリセルとしての複数の磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8には、データが記憶される。
例えば、磁気抵抗効果素子MTJ2−1の磁気フリー層と磁気ピンド層との磁化方向は、反平行の関係にあり、磁気抵抗効果素子MTJ2−2の磁気フリー層と磁気ピンド層との磁化方向は、平行の関係にある。
ここで、クラスター10を構成する磁気抵抗効果素子MTJ1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8は、アレイ状に配置されている。
即ち、このような配置は、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)のメモリセルアレイの配置と同じである。
従って、クラスター10内の磁気抵抗効果素子MTJ1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8は、磁気ランダムアクセスメモリのメモリセルアレイと同様に、各メモリセル内の磁化に起因する磁場によって互いに静磁結合している。本発明では、従来型MRAMでは望まれない、メモリセルが互いに磁気的結合するという“クロストーク”を積極利用する。
図7は、磁性発振素子と複数のメモリセルとの静磁結合を示している。
模式的に、静磁結合を矢印で示す。但し、複数のメモリセル間の静磁結合については省略する。
磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1には、その周囲に配置されるメモリセルとしての複数の磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8の磁化状態に依存した外部磁場Hextが作用する。
従って、磁気抵抗効果素子MTJ1の磁気フリー層は、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8に記憶されたデータに依存した周波数(2=256通り)で磁化振動する。
例えば、図8のAに示すように、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8の磁化状態が、それぞれ、反平行、平行、平行、反平行、反平行、反平行、反平行、平行であれば、磁気抵抗効果素子MTJ1からの高周波出力の発振周波数は、fとなる。
また、図8のBに示すように、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8の磁化状態が、それぞれ、反平行、平行、平行、平行、平行、反平行、反平行、反平行であれば、磁気抵抗効果素子MTJ1からの高周波出力の発振周波数は、fとなる。
即ち、例えば、f>fとすれば、fとfは、区別される。
このように、磁性発振素子と複数のメモリセルとが静磁結合することにより、磁性発振素子の高周波出力の発振周波数は、それに作用する複数のメモリセルからの外部磁場Hextの大きさによって変化する。
なお、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8が、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に対して静磁気的に非対称であることが好ましい。
なぜなら、複数のメモリセルが磁性発振素子に対して静磁気的に対称に配置されていると、例えば、図9のAの磁化状態と図9のBの磁化状態とを区別することができなくなるためである。これは、データの縮退を意味し、大容量化という観点からは好ましくない。
即ち、図9のAでは、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,2−8の磁化状態が平行であり、磁気抵抗効果素子MTJ2−4,2−5の磁化状態が反平行である。また、図9のBでは、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,2−8の磁化状態が反平行であり、磁気抵抗効果素子MTJ2−4,2−5の磁化状態が平行である。
しかし、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,2−8と磁気抵抗効果素子MTJ2−4,2−5とは、磁気抵抗効果素子MTJ1に対して静磁気的に対称に配置されているため、図9Aの磁化状態から得られる発振周波数と図9Bの磁化状態から得られる発振周波数とは、同じになる。
従って、図9のAの磁化状態と図9のBの磁化状態とを区別することができない(データの縮退)。
そこで、例えば、図10に示すように、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8を、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に対して静磁気的に非対称に配置する。
ここでは、磁気抵抗効果素子MTJ1と磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8との距離及び磁気抵抗効果素子MTJ1の形状により、非対称性を持たせているが、これに限られることはない。
(3) まとめ
このように、本発明の例によれば、複数の磁気抵抗効果素子から構成されるクラスターにより、例えば、高速化、省電力化及び大容量化が可能なスピンRAMや、発振周波数をオンデマンドにチューンできる発振器などを実現できる。
3. 適用例
本発明に係わるクラスターは、スピンRAM及び発振器に適用することができる。
(1) スピンRAM
・ クロスポイント型スピンRAM
図11は、クロスポイント型スピンRAMを示している。
ワード線WL1,WL2,WL3,WL4,WL5は、第一方向に延び、その一端は、ロウ選択スイッチ16を介してワード線ドライバ/シンカー17に接続される。
ビット線BL1,BL2,BL3,BL4,BL5,BL6は、第一方向に交差する第二方向に延び、その一端は、カラム選択スイッチ18を介してビット線ドライバ/シンカー(読み出し回路)19に接続される。
そして、ワード線WL1,WL2,WL3,WL4,WL5とビット線BL1,BL2,BL3,BL4,BL5,BL6の交点には、磁気抵抗効果素子が配置される。
ここまでは、一般的なクロスポイント型スピンRAMと全く同じである。
このようなスピンRAMに本発明を適用すると、例えば、互いに隣接する9個(=3×3)の磁気抵抗効果素子によりクラスター10が構成される。
クラスター10を構成する9個の磁気抵抗効果素子のうち、中央の1つは、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1である。残りの8個は、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8である。
データの読み出しは、クラスター10単位で行う。
例えば、選択されたクラスター10(select)内の8個の磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8のデータを読み出す場合を考える。
まず、ロウ選択スイッチ16によりロウROW3を選択し、カラム選択スイッチ18によりカラムCOL5を選択する。
そして、読み出し回路19を用いて、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ1に、発振閾値電流よりも大きい電流を流す。
この時、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1は、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8のデータ(磁化状態:平行/反平行)に応じた周波数で磁化振動する。
従って、この周波数を読み出し回路19で判定することにより、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8のデータをまとめて一度に読み出すことができる。
また、データの書き込みは、メモリセル単位で行う。
一般的なクロスポイント型スピンRAMの書き込みと同様に、スピン注入磁化反転を利用する。即ち、選択されたメモリセル(磁気抵抗効果素子)に書き込みデータに応じた向きのスピン注入電流を流すことによりスピントルクを発生させ、その磁化状態(平行/反平行)を制御することで書き込みを実行する。
例えば、選択されたメモリセルが、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−1である場合を考える。
まず、ロウ選択スイッチ16によりロウROW4を選択し、カラム選択スイッチ18によりカラムCOL5を選択する。
そして、ワード線ドライバ/シンカー17及びビット線ドライバ/シンカー19を用いて、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−1に、書き込みデータに応じた向きのスピン注入電流を流す。
これにより、磁気抵抗効果素子MTJ2−1の磁化状態(平行/反平行)は、スピン注入電流の向きに応じた状態になり、書き込みが完了する。
ここで、スピン注入電流の大きさは、スピントルクによる磁化反転を行うために、磁化反転閾値電流よりも大きいことが必要である。
また、スピン注入電流による書き込み時に、磁性発振素子から振動磁場を発生させ、これを磁化反転のアシストとして使用する(共鳴励起スピン注入磁化反転の利用)ことも可能である。
例えば、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−1に対するデータの書き込み時に、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ1を磁化振動させる。
これにより、例えば、図13に示すように、スピントルクによる書き込み時に、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1の磁化振動20Aによる振動磁場20Bが、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1に作用するため、磁化反転閾値電流が小さくなる。
即ち、スピン注入電流Isの値を小さくすることができ、スピンRAMの省電力化に貢献することができる。
・ 1トラ1セル型スピンRAM
図12は、1トラ1セル型スピンRAMを示している。
ワード線WL1,WL2,WL3,WL4,WL5,WL6は、第一方向に延び、その一端は、ワード線ドライバ(デコーダ)21に接続される。
上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,BLu4,BLu5,BLu6,BLu7は、第一方向に交差する第二方向に延び、その一端は、カラム選択スイッチ22を介してビット線ドライバ/シンカー23に接続される。
下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,BLd4,BLd5,BLd6,BLd7は、第一方向に交差する第二方向に延び、その一端は、カラム選択スイッチ24を介してビット線ドライバ/シンカー(読み出し回路)25に接続される。
そして、上部ビット線BLu1,BLu2,BLu3,BLu4,BLu5,BLu6,BLu7と下部ビット線BLd1,BLd2,BLd3,BLd4,BLd5,BLd6,BLd7との間には、磁気抵抗効果素子と選択トランジスタTrが配置される。
選択トランジスタTrは、電界効果トランジスタから構成され、そのゲートは、ワード線WL1,WL2,WL3,WL4,WL5,WL6に接続される。
ここまでは、一般的な1トラ1セル型スピンRAMと全く同じである。
このようなスピンRAMに本発明を適用すると、例えば、互いに隣接する9個(=3×3)の磁気抵抗効果素子によりクラスター10が構成される。
クラスター10を構成する9個の磁気抵抗効果素子のうち、中央の1つは、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1である。残りの8個は、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8である。
データの読み出しは、クラスター10単位で行う。
例えば、選択されたクラスター10(select)内の8個の磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8のデータを読み出す場合を考える。
まず、ワード線ドライバ(デコーダ)21によりロウROW5を選択し、カラム選択スイッチ22,24によりカラムCOL3を選択する。
そして、読み出し回路25を用いて、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ1に、発振閾値電流よりも大きい電流を流す。
この時、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1は、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8のデータ(磁化状態:平行/反平行)に応じた周波数で磁化振動する。
従って、この周波数を読み出し回路25で判定することにより、磁気抵抗効果素子MTJ2−1,MTJ2−1,MTJ2−2,MTJ2−3,MTJ2−4,MTJ2−5,MTJ2−6,MTJ2−7,MTJ2−8のデータをまとめて一度に読み出すことができる。
また、データの書き込みは、メモリセル単位で行う。
一般的な1トラ1セル型スピンRAMの書き込みと同様に、スピン注入磁化反転を利用する。即ち、選択されたメモリセル(磁気抵抗効果素子)に書き込みデータに応じた向きのスピン注入電流を流すことによりスピントルクを発生させ、その磁化状態(平行/反平行)を制御することで書き込みを実行する。
例えば、選択されたメモリセルが、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−1である場合を考える。
まず、ワード線ドライバ(デコーダ)21によりロウROW5を選択し、カラム選択スイッチ22,24によりカラムCOL4を選択する。
そして、ビット線ドライバ/シンカー23,25を用いて、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−1に、書き込みデータに応じた向きのスピン注入電流を流す。
これにより、磁気抵抗効果素子MTJ2−1の磁化状態(平行/反平行)は、スピン注入電流の向きに応じた状態になり、書き込みが完了する。
ここで、スピン注入電流の大きさは、スピントルクによる磁化反転を行うために、磁化反転閾値電流よりも大きいことが必要である。
また、スピン注入電流による書き込み時に、磁性発振素子から振動磁場を発生させ、これを磁化反転のアシストとして使用する(共鳴励起スピン注入磁化反転の利用)ことも可能である。
例えば、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−1に対するデータの書き込み時に、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ1を磁化振動させる。
これにより、例えば、図13に示すように、スピントルクによる書き込み時に、磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1の磁化振動20Aによる振動磁場20Bが、メモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−1に作用するため、磁化反転閾値電流が小さくなる。
即ち、スピン注入電流Isの値を小さくすることができ、スピンRAMの省電力化に貢献することができる。
・ many to 1のセル構造
図14は、many to 1のセル構造を有するスピンRAMを示している。
クラスター10は、図11及び図12のスピンRAMのクラスターと同じである。
このスピンRAMの特徴は、複数のクラスター10内のメモリセルとしての磁気抵抗効果素子MTJ2−i(iは、1〜8のうちの一つ)に共通に一つの選択トランジスタSWが接続されている点にある。
但し、同図では、図面の複雑化を回避するため、複数のクラスター10内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6に共通に接続される選択トランジスタSWのみを示す。
このようにすることで、例えば、図12の1トラ1セル型スピンRAMに比べて、選択トランジスタの数を減らすことができ、メモリ容量の大容量化に貢献できる。
このスピンRAMの読み出し動作は、例えば、図11及び図12の場合と同様に、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ1に、発振閾値電流よりも大きい電流を流すことにより行う。
また、書き込み動作では、磁性発振素子を用いて書き込み対象となるメモリセル(磁気抵抗効果素子)を選択する。
例えば、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6にデータを書き込む場合を考える。
この場合、制御信号φを“H”にし、選択トランジスタSWをオンにする。
この時、全てのクラスター10内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6にスピン注入電流Isが流れる。
また、選択されたクラスター10(select)内の磁性発振素子としての磁気抵抗効果素子MTJ1に、発振閾値電流よりも大きい電流を流す。これにより、磁気抵抗効果素子MTJ1からは、振動磁場20Bが発生する。
選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6には、この振動磁場20Bが作用するため、磁化反転(平行→反平行、又は、反平行→平行)に必要な磁化反転閾値電流は、小さくなる。
これに対し、非選択のクラスター10内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6には、この振動磁場20Bが作用しないため、非選択のクラスター10内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6の磁化反転閾値電流は、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6の磁化反転閾値電流よりも大きくなる。
従って、スピン注入電流Isの大きさを、選択されたクラスター10(select)内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6の磁化反転閾値電流よりも大きく、非選択のクラスター10内の磁気抵抗効果素子MTJ2−6の磁化反転閾値電流よりも小さくすれば、書き込み時において、磁性発振素子を用いて書き込み対象となるメモリセル(磁気抵抗効果素子)を選択することができる。
(2) スピントルク発振器
本発明に係わるクラスターは、磁気抵抗効果素子から構成される。このため、このクラスターを、磁気ランダムアクセスメモリの動作を制御するクロック発振器に適用することは非常に有効である。
図15は、磁気ランダムアクセスメモリを示している。
メモリセルアレイ31は、アレイ状に配置された複数の磁気抵抗効果素子から構成される。メモリセルアレイ構造は、クロスポイント型、1トラ1セル型などがよく知られているが、これに限定されることはない。
メモリセルアレイ31の第一方向の一端には、ワード線ドライバ(デコーダ)34が配置される。また、メモリセルアレイ31の第二方向の両端には、それぞれ、ビット線ドライバ/シンカー35が配置される。読み出し回路36は、メモリセルアレイ31の第二方向の一端に配置される。
制御回路33は、ワード線ドライバ34、ビット線ドライバ/シンカー35及び読み出し回路36の動作を制御する。
発振器32は、本発明に係わるクラスターから構成される。
また、高出力化及び発振周波数の安定化を図るため、発振器32は、複数のクラスターから構成するのが好ましい。
本発明に係わるクラスターは、磁気抵抗効果素子から構成されるため、メモリセルアレイ31内のメモリセル(磁気抵抗効果素子)と同時に発振器32内の磁気抵抗効果素子を形成することができる。
また、発振器32は、発振周波数をオンデマンドにチューンできるため、磁気ランダムアクセスメモリとしての用途が広がる。
(3) その他
本発明に係わるクラスターから出力される高周波出力は、アナログ信号である。このアナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路を設けてもよいし、このアナログ信号を用いてそのまま演算を行うロジックデバイスを構成してもよい。
4. 製造方法
磁気抵抗効果素子の製造方法と材料例について、図16を参照しながら説明する。
まず、CVD法により、半導体基板41上に、例えば、SiOから構成される絶縁層42を形成する。また、スパッタリング法により、絶縁層42上に、例えば、Ta/Cu/Taの積層構造から構成される下部電極43を形成する。
この後、下部電極43上に磁気抵抗効果素子51を形成する。
磁気抵抗効果素子51は、下部電極43上に、強磁性層48、非磁性層49及び強磁性層50の積層構造を形成することにより形成される。
磁気抵抗効果素子51をボトムピン型にするときは、強磁性層48は、磁気ピンド層になり、強磁性層50は、磁気フリー層になる。また、磁気抵抗効果素子51をトップピン型にするときは、強磁性層48は、磁気フリー層になり、強磁性層50は、磁気ピンド層になる。
ここでは、磁気抵抗効果素子51をボトムピン型にする場合について説明する。
この場合、強磁性層48は、例えば、反強磁性層44/強磁性層45/非磁性層46/強磁性層47の積層構造から構成される。
反強磁性層44は、例えば、IrMnから構成される。
強磁性層45、非磁性層46及び強磁性層47は、例えば、二つの強磁性層が磁気交換結合するSAF(synthetic anti-ferromagnetic)構造を有する。強磁性層45は、例えば、CoFeから構成され、非磁性層46は、例えば、Ruから構成され、強磁性層47は、例えば、CoFeBから構成される。
非磁性層49は、例えば、MgOから構成され、トンネルバリア層となる。
そして、強磁性層48、非磁性層49及び強磁性層50の積層構造は、フォトリソグラフィーとRIEにより、パターニングされる。その結果、例えば、平面形状が長方形又は楕円形の磁気抵抗効果素子51が形成される。
また、この磁気抵抗効果素子51の周囲を取り囲む絶縁層52を形成する。絶縁層52は、例えば、SiOから構成される。
最後に、スパッタリング法により、磁気抵抗効果素子51上に、例えば、Au/Cuの積層構造から構成される上部電極53を形成する。
5. その他
本発明に係わるクラスターを構成する磁気抵抗効果素子に関し、磁気フリー層及び磁気ピンド層は、例えば、面内磁化を有するが、垂直磁化を有していてもよい。
磁気フリー層に関して、面内磁化とは、磁化方向が磁気フリー層とスペーサー層との接合面に対して平行であることを意味し、垂直磁化とは、磁化方向が磁気フリー層とスペーサー層との接合面に対して垂直であることを意味する。
磁気ピンド層に関して、面内磁化とは、磁化方向が磁気ピンド層とスペーサー層との接合面に対して平行であることを意味し、垂直磁化とは、磁化方向が磁気ピンド層とスペーサー層との接合面に対して垂直であることを意味する。
また、磁気フリー層及び磁気ピンド層は、例えば、一軸磁気異方性を有する。
一軸磁気異方性は、結晶磁気異方性の高い材料を一様磁場内で成膜することにより、又は、成膜後に一様磁場内でアニールすることにより発生させることができる。これを結晶磁気異方性と呼ぶ。また、一軸磁気異方性は、強磁性体の形状を長方形又は楕円形にすることにより発生させることもできる。これを形状磁気異方性と呼ぶ。
磁気フリー層の平面形状は、例えば、磁気フリー層の一軸磁気異方性の方向を長軸とする楕円形とすることができる。磁気ピンド層の平面形状は、磁気フリー層の平面形状と同じであっても、異なっていてもよい。
磁気フリー層の平面形状とは、磁気フリー層とスペーサー層との接合面に平行な平面内での磁気フリー層の形状のことを意味する。また、磁気ピンド層の平面形状とは、磁気ピンド層とスペーサー層との接合面に平行な平面内での磁気ピンド層の形状のことを意味する。
6. むすび
本発明によれば、複数の磁気抵抗効果素子から構成される新たなユニット(クラスター)により、例えば、many to 1のセル構造のスピンRAMや、発振周波数をオンデマンドにチューンできる発振器などを実現できる。
本発明の例は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
なお、図面、発明の詳細な説明において、便宜上、磁気抵抗効果素子に対してMTJというラベルを用いたが、本発明は、スペーサー層がトンネル型の素子に限定されるものではない。本発明の構成要素に含まれる磁気抵抗効果素子は、スペーサー層がメタル型の素子(いわゆるGMR素子)であっても良い。
本発明は、スピンRAM、スピントルク発振器、それを応用した、携帯用電子機器におけるリファレンスクロック、単一の送受信回路チップ内リファレンスクロック、単一チップRFスペクトラムアナライザ用局部発振器、無線通信用送受信器、高周波アシスト記録用素子、磁気センサーなどに対して、産業上のメリットは多大である。
10: クラスター、 11−1,11−2: 磁気フリー層、 12−1,12−2: 磁気ピンド層、 13−1,13−2: スペーサー層、 14: 読み出し回路、 15: 書き込み回路、 16: ロウ選択スイッチ、 17: ワード線ドライバ/シンカー、 18: カラム選択スイッチ、 19,25: ビット線ドライバ/シンカー(読み出し回路)、 20A: 磁化振動、 20B: 振動磁場、 21,34: ワード線ドライバ(デコーダ)、 22,24: カラム選択スイッチ、 23,35: ビット線ドライバ/シンカー、 31: メモリセルアレイ、 32: 発振器、 33: 制御回路、 36: 読み出し回路、 41: 半導体基板、 42, 52: 絶縁層、 43: 下部電極、 44: 反強磁性層、 45, 47, 48, 50: 強磁性層、 46, 49: 非磁性層、 51: 磁気抵抗効果素子、 53: 上部電極。

Claims (5)

  1. 磁性発振素子としての第一磁気抵抗効果素子と、前記第一磁気抵抗効果素子に隣接して配置されるメモリセルとしての第二磁気抵抗効果素子とを具備し、
    前記第一及び第二磁気抵抗効果素子は、磁化方向が可変の磁気フリー層、磁化方向が不変の磁気ピンド層、及び、これらの間に配置されるスペーサー層を基本構造とし、
    前記第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層との残留磁化の磁化方向は、平行又は反平行に設定され、
    前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層は、前記第一磁気抵抗効果素子に発振閾値電流よりも大きい電流を流したときに、前記第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層との残留磁化の磁化方向に依存した周波数で磁化振動する
    ことを特徴とするクラスター。
  2. 磁性発振素子としての第一磁気抵抗効果素子と、前記第一磁気抵抗効果素子に隣接して配置されるメモリセルとしての複数の第二磁気抵抗効果素子とを具備し、
    前記第一及び第二磁気抵抗効果素子は、磁化方向が可変の磁気フリー層、磁化方向が不変の磁気ピンド層、及び、これらの間に配置されるスペーサー層を基本構造とし、
    前記複数の第二磁気抵抗効果素子は、前記第一磁気抵抗効果素子に対して静磁気的に非対称に配置され、
    前記複数の第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層との残留磁化の磁化方向は、平行又は反平行に設定され、
    前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層は、前記第一磁気抵抗効果素子に発振閾値電流よりも大きい電流を流したときに、前記複数の第二磁気抵抗効果素子の磁気フリー層と磁気ピンド層との残留磁化の磁化方向に依存した周波数で磁化振動する
    ことを特徴とするクラスター。
  3. 請求項2に記載のクラスターと、前記クラスターの前記第一磁気抵抗効果素子に接続される読み出し回路とを具備し、前記読み出し回路は、前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層の磁化振動の周波数に基づいて、前記複数の第二磁気抵抗効果素子のそれぞれに記憶されたデータを判定することを特徴とするスピンRAM。
  4. 請求項2に記載のクラスターと、前記クラスターの前記複数の第二磁気抵抗効果素子のうち選択された磁気抵抗効果素子にデータを書き込む書き込み回路とを具備し、前記選択された磁気抵抗効果素子にデータを書き込んでいるときに、前記第一磁気抵抗効果素子に前記発振閾値電流よりも大きい電流を流すことを特徴とするスピンRAM。
  5. 請求項2に記載のクラスターと、前記クラスターの前記第一磁気抵抗効果素子に接続される変換回路とを具備し、前記変換回路は、前記第一磁気抵抗効果素子の磁気フリー層の磁化振動に由来する出力の高周波成分を取り出すことを特徴とするスピントルク発振器。
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