以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態における車両用の内燃機関を示す。
図1に示す内燃機関101は、2つのバンク101a,101bからなるV型6気筒機関であり、その出力軸が図外の変速機を介して車両の駆動輪に連結されている。
内燃機関101の各気筒の燃焼室102内は、吸気ダクト103、吸気マニホールド104a,104b、吸気ポート105を介して大気側と連通している。
前記燃焼室102(シリンダ)の吸気口102aは、吸気バルブ106で開閉され、ピストン107が降下するときに前記吸気バルブ106が開くと、燃焼室102内に空気が吸引される。
一方、前記吸気バルブ106の上流側の吸気通路である、前記吸気マニホールド104a,104bのブランチ部140a,140bには、各気筒それぞれに燃料噴射弁108が配設されており、この燃料噴射弁108から噴射された燃料が空気と共に燃焼室102内に吸引される。
前記燃料噴射弁108は、その噴霧が吸気バルブ106の傘部(吸気口102a)を指向するように配置されている。
尚、燃料噴射弁108が燃焼室102内に燃料を直接噴射する筒内直接噴射式内燃機関であってもよく、また、内燃機関101をV型機関に限定するものではなく、直列型や水平対向型などであってもよい。
前記シリンダ102内の燃料は、点火プラグ109による火花点火によって着火燃焼し、これによって発生する爆発力がピストン107を押し下げ、該押し下げ力によってクランクシャフト110が回転駆動される。
また、前記燃焼室102(シリンダ)の排気口102bは、排気バルブ111で開閉され、ピストン107が上昇するときに前記排気バルブ111が開くと、燃焼室102内の排気ガスが排気ポート112に排出される。
前記クランクシャフト110の回転駆動力が伝達される吸気カムシャフト131及び排気カムシャフト132が各バンク101a,101bそれぞれに備えられ、前記吸気バルブ106及び排気バルブ111は、前記吸気カムシャフト131及び排気カムシャフト132が回転することで開駆動される。
ここで、前記排気バルブ111は、前記排気カムシャフト132に一体的に設けられたカム132aによって、一定の最大バルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミングで周期的に開駆動される。
一方、前記クランクシャフト110に対する吸気カムシャフト131の回転位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構133a,133bが各バンク101a,101bの吸気カムシャフト131それぞれに設けられている。
前記可変バルブタイミング機構133a,133bによって吸気カムシャフト131の回転位相を可変とすることで、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相が連続的に進角・遅角変化するようになっている。
また、吸気カムシャフト131と、吸気バルブ106のバルブリフタ106aに当接して吸気バルブ106を開駆動する後述の揺動カム4との間には、吸気バルブ106のバルブ作動角及びバルブリフト量(最大バルブリフト量)を連続的に変更する可変リフト機構134a,134bが各バンク101a,101b毎に設けられている。
上記のように、本実施形態では、吸気バルブ106のリフト特性を可変とする可変動弁機構として、上記の可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bを備えている。
但し、上記の可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bに代えて、電磁力で吸気バルブ106を開駆動する電磁駆動バルブを採用することができる。
前記排気ポート112には、排気マニホールド113a,113bの各ブランチ部が接続され、更に、排気マニホールド113a,113bの各集合部は合流されて、排気ダクト114に接続されている。
前記排気ダクト114には、排気を浄化するための三元触媒等の排気浄化触媒を備えた触媒コンバータ115が介装されている。
また、前記吸気ダクト103には、電子制御スロットル116(負圧調整弁)が介装されている。
前記電子制御スロットル116は、モータ等のアクチュエータでスロットルバルブを開閉する機構であり、モータ等のアクチュエータを制御することで、スロットル開度が調整される。
前記燃料噴射弁108による燃料噴射、点火プラグ109による点火、可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bによる吸気バルブ106のリフト特性の変更、更に、電子制御スロットル116におけるスロットル開度TVOなどは、ECM(エンジン・コントロール・モジュール)121によって制御される。
前記ECM121は、マイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)を含んで構成され、各種センサからの信号を入力処理し、該入力信号を予め記憶されているプログラムに従って演算処理して、各種の操作量(制御信号)を演算し、該操作量(制御信号)を出力処理する。
前記各種センサとしては、車両の運転者が操作するアクセルペダルの踏み込み量(ストローク量)に相当するアクセル開度ACCを検出するアクセル開度センサ122、内燃機関101の冷却水温度TW(機関温度)を検出する水温センサ123、内燃機関101が搭載される車両の走行速度(車速)VSPを検出する車速センサ124、クランクシャフト110が単位角度だけ回転する毎の単位クランク角信号POSと基準クランク角位置毎の基準クランク角信号REFとをそれぞれに出力するクランク角センサ125、各バンクの排気マニホールド113a,113bの集合部にそれぞれ配置され、排気中の酸素濃度に基づいて各バンクの空燃比AFをそれぞれに検出する空燃比センサ126a,126b、内燃機関101の吸入空気流量QAを検出するエアフローセンサ127、前記電子制御スロットル116の開度TVOを検出するスロットル開度センサ128、電子制御スロットル116下流側の吸気通路内の圧力(吸気管負圧)PBを検出する圧力センサ129などが設けられている。
そして、前記ECM121は、燃料噴射弁108による燃料噴射量を以下のようにして制御する。
まず、前記エアフローセンサ127による検出値などからシリンダ吸入空気量を演算し、該シリンダ吸入空気量に基づいて基本燃料噴射パルス幅TPを演算する。
前記シリンダ吸入空気量の演算は、特開2001−50091号公報に開示されるようにして行われる。
具体的には、エアフローセンサ127で検出される吸入空気量(質量流量)Qaからマニホールド部へ流入する空気量Ca(Ca=Qa・Δt)を算出する。ここで、Δtは、予め定められた時間であり、時間Δt毎にマニホールド部へ流入する空気量Caが算出される。
また、吸気バルブ106の閉時期IVCにおけるシリンダ容積を、吸・排気バルブ106,111のオーバーラップ量に応じたシリンダ内新気割合ηに基づいて補正して、シリンダ容積Vcを算出する。
前記吸気バルブ106の閉時期IVCは、前記可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bの制御量に応じて決定される。
そして、マニホールド部へ流入する空気量Ca及びマニホールド部からシリンダ部へ流出するシリンダ吸入空気量Ccの収支計算を行って、マニホールド部の空気量Cm(n)(Cm(n)=Cm(n-1) +Ca−Cc(n))を算出しつつ、マニホールド部の空気量Vmとシリンダ容積Vcとに基づいてシリンダ吸入空気量Cc(Cc=Vc・Cm/Vm)を算出する。
更に、前記基本燃料噴射パルス幅TPを、冷却水温度TWに応じた補正係数や、空燃比センサ126a,126bの出力から検出される実際の空燃比を目標空燃比に近づけるように設定される空燃比フィードバック補正係数などによって補正することで、最終的な燃料噴射パルス幅TIを演算する。
そして、各気筒の吸気行程にタイミングを合わせ、各気筒の燃料噴射弁108に対して個別に前記燃料噴射パルス幅TIの噴射パルス信号を出力する。
前記燃料噴射弁108は、前記燃料噴射パルス幅TIに相当する時間だけ開弁し、開弁時間に比例する量の燃料を噴射する。
また、前記点火プラグ109には、それぞれに点火コイル及び該点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタを内蔵した点火モジュール138が直付けされている。
前記ECM121は、例えば、機関負荷(基本燃料噴射パルス幅TP)と機関回転速度NEとに基づいて点火時期を算出し、該点火時期及び点火エネルギを得るための通電時間から、前記点火コイルへの通電開始時期及び通電遮断時期を決定し、該通電開始時期及び通電遮断時期に対応する点火制御信号で前記パワートランジスタのオン・オフを制御し、前記点火時期での火花点火を気筒毎に実行させる。
また、前記可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bの制御においては、例えば目標トルク(機関負荷)と機関回転速度NEとから目標中心位相及び目標バルブリフト量(目標バルブ作動角)を演算し、実際の中心位相・実際のバルブリフト量(実際のバルブ作動角)が前記目標に近づくように、各機構に出力する操作量を算出する。
前記可変バルブタイミング機構133a,133bの制御においては、例えば、低負荷・低回転時に、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を進角させ、吸気バルブ106の開期間と排気バルブ111の開期間とをオーバーラップさせることで、筒内の残留ガス量を増大させ、燃料消費量を低減させる。
また、高負荷・高回転時など、機関出力を必要とする機関運転状態では、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を遅角させ、前記オーバーラップを小さくすることで、筒内の残留ガスが減少させて相対的に新気の導入量が増大させ、また、吸気バルブ106の閉時期IVCを下死点BDCよりも遅角側(下死点後)とすることで、慣性過給効果によって充填効率を向上させ、出力を向上させる。
一方、可変リフト機構134a,134bの制御においては、内燃機関101の要求空気量(アイドル回転制御分の空気量を含む)に応じた目標値が設定され、要求される吸入空気量が大きいほど、吸気バルブ106のバルブリフト量及びバルブ作動角が増大するように、換言すれば、吸気バルブ106の閉時期IVCが遅角するように制御される。
即ち、アイドル運転を含む低負荷・低回転域では、バルブリフト量及びバルブ作動角を小さくし、閉時期IVCを下死点前の設定することで吸入空気量を低く抑え、負荷・回転の増大に応じて閉時期IVCを下死点に近づけることで吸入空気量を増大させ、高負荷・高回転時には、閉時期IVCを下死点後にまで遅角させ、下死点よりも高い充填効率を得る。
このように、可変バルブタイミング機構133a,133bと、可変リフト機構134a,134bとを制御することで、筒内への導入吸気量(シリンダ吸入空気量)を制御するようになっており、係る可変動弁機構の制御機能が、空気量制御手段に相当する。
また、前記電子制御スロットル116の制御においては、目標負圧を算出し、圧力センサ129で検出される実際の吸気管負圧PBが、前記目標負圧に近づくように操作量を算出して出力する。係る電子制御スロットル116の制御機能が、負圧制御手段に相当する。
前記目標負圧は、内燃機関101の吸気管負圧を用いる各種装置の要求から設定されるものであり、前記吸気負圧を用いる装置として、本実施形態では、油圧ブレーキ装置200、及び、排気還流装置250が、内燃機関101に備えられている。
前記油圧ブレーキ装置200は、内燃機関101の吸気負圧(吸気管負圧)を利用してブレーキペダル201の操作力を倍力する負圧倍力手段としてのマスタバック202(ブレーキブースタ)と、該マスタバック202で倍力された操作力に応じてマスタシリンダ圧を発生するタンデム型のマスタシリンダ203と、前記マスタシリンダ圧を各ホイールシリンダ204〜207に供給する油圧ユニット208とから構成される。
前記マスタバック202には、前記電子制御スロットル116下流の吸気管負圧が、負圧導入管209を介して導入されるようになっており、前記負圧導入管209の途中には、負圧の漏れ出しを防止しつつ吸気負圧を導入するためのチェックバルブ(一方向弁)210が介装されている。
前記マスタバック202には、負圧室の負圧(ブースタ負圧)BNPを検出するブースタ負圧センサ211が設けられ、該ブースタ負圧センサ211の出力は、前記ECM121に出力される。
一方、前記排気還流装置250は、排気マニホールド113bと前記電子制御スロットル116下流の吸気ダクト103(吸気管負圧発生領域)とを連通させる排気還流通路251と、該排気還流通路251に介装され、前記ECM121からの制御信号によって開動作する排気還流制御弁252(電磁弁)とから構成される。
そして、吸気管負圧の発生状態で前記排気還流制御弁252を開制御すると、排気マニホールド113b内の圧力と前記電子制御スロットル116下流の吸気ダクト103内の圧力(吸気管負圧)との差圧によって、排気の一部が吸気ダクト103内に還流するようになっている。
前記排気還流装置250によって排気を吸気系に還流させると、排気は不活性ガスであるため最高燃焼温度が低下し、内燃機関101から排出される窒素酸化物NOxの量を少なくすることができる。
このように、前記油圧ブレーキ装置200では、マスタバック202で倍力作用を行わせるための倍力源として吸気管負圧が必要であり、また、排気還流装置250では、排気を吸気系に還流させるための圧力差を生じさせるために吸気管負圧が必要となる。
そこで、前記ECM121は、前記倍力作用や排気還流に必要な目標負圧を設定し、該目標負圧に圧力センサ129で検出される実際の吸気負圧が近づくように、電子制御スロットル116の開度をフィードバック制御する。
前記電子制御スロットル116の開度のフィードバック制御は、例えば、目標負圧と実際の吸気負圧との偏差に基づく比例・積分・微分動作などによって操作量を演算し、該操作量を前記電子制御スロットル116に出力することで実行される。
ここで、前記目標負圧は、機関負荷と機関回転速度NEとに応じて設定させることができ、また、前記ブースタ負圧センサ211の出力から、マスタバック202の負圧室の負圧が不足していると判断した場合に、前記負圧を回復させるべく目標負圧を設定させることができる。
そして、前記倍力作用や排気還流に必要な最小限の負圧を発生させるようにすることで、吸気管負圧の発生によるポンピングロスを低減し、内燃機関101の燃費性能を向上させている。
尚、内燃機関101の吸気管負圧を動作源として用いる装置としては、この他、燃料タンクにて発生した燃料蒸気をキャニスタの吸着剤に一旦吸着させ、該吸着剤に吸着させた燃料蒸気を、内燃機関101の吸気管負圧によって脱離させて電子制御スロットル116下流の吸気ダクト103内に吸引させる、燃料蒸気処理装置などがある。
図2は、吸気バルブ106のバルブリフト量(最大バルブリフト量)及びバルブ作動角を連続的に可変とする可変リフト機構134a,134bの構造を示す斜視図である。
前記吸気バルブ106の上方に、前記クランクシャフト110によって回転駆動される吸気カムシャフト131が、気筒列方向に沿って回転可能に図外のシリンダヘッドに支持されている。
前記吸気カムシャフト131には、吸気バルブ106のバルブリフタ106aに当接して吸気バルブ106を開駆動する揺動カム4が相対回転可能に外嵌されている。
前記吸気カムシャフト131と揺動カム4との間には、吸気バルブ106のバルブ作動角及びバルブリフト量を連続的に変更するための可変リフト機構134a,134bが設けられている。
また、前記吸気カムシャフト131の一端部には、クランクシャフト110に対する前記吸気カムシャフト131の回転位相を変化させることにより、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を連続的に変更する可変バルブタイミング機構133a,133bが配設されている。
前記可変リフト機構134a,134bは、図2及び図3に示すように、吸気カムシャフト131に偏心して固定的に設けられる円形の駆動カム11と、この駆動カム11に相対回転可能に外嵌するリング状リンク12と、吸気カムシャフト131と略平行に気筒列方向へ延びる制御軸13と、この制御軸13に偏心して固定的に設けられた円形の制御カム14と、この制御カム14に相対回転可能に外嵌すると共に、一端がリング状リンク12の先端に連結されたロッカアーム15と、このロッカアーム15の他端と揺動カム4とに連結されたロッド状リンク16と、を有している。
前記制御軸13は、モータ17等のアクチュエータによりギア列(減速機)18を介して所定の制御範囲内で回転駆動される。
上記の構成により、クランクシャフト110に連動して吸気カムシャフト131が回転すると、駆動カム11を介してリング状リンク12がほぼ並進移動すると共に、ロッカアーム15が制御カム14の軸心周りに揺動し、ロッド状リンク16を介して揺動カム4が揺動して吸気バルブ106が開駆動される。
また、前記モータ17を駆動制御して制御軸13の角度を変化させることにより、ロッカアーム15の揺動中心となる制御カム14の軸心位置が変化して揺動カム4の姿勢が変化する。
これにより、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相が略一定のままで、吸気バルブ106のバルブ作動角及びバルブリフト量(最大バルブリフト量)が連続的に変化する。
尚、バルブ作動角及びバルブリフト量の変化に伴って、バルブ作動角の中心位相が変化するように構成した可変リフト機構134a,134bであってもよい。
また、前記制御軸13を回転駆動するアクチュエータとしては、ブラシレスモータ,直流モータなどの電動アクチュエータ、電磁力を用いる電磁アクチュエータ、油圧式アクチュエータなどを用いることができる。
図4は、前記クランクシャフト110に対する吸気カムシャフト131の回転位相を連続的に可変とすることで、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を可変とする前記可変バルブタイミング機構133a,133bの構造を示す。
前記可変バルブタイミング機構133a,133bは、クランクシャフト110によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット51(タイミングスプロケット)と、前記吸気カムシャフト131の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、該回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54と、カムスプロケット51と回転部材53との相対回転位置を所定位置で選択的にロックするロック機構60とを備えている。
前記カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて前記回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の前後開口を閉塞するフロントカバー,リアカバー(図示省略)とから構成される。
前記ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング56の軸方向に沿って設けられる4つの隔壁部63が90°間隔で突設されている。
前記回転部材53は、吸気カムシャフト131の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
前記第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が略逆台形状を呈し、各隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン78a〜78dの両側と各隔壁部63の両側面との間に、進角側油圧室82と遅角側油圧室83を構成する。
前記ロック機構60は、ロックピン84が、回転部材53の初期位置において係合孔(図示省略)に係入するようになっている。
前記油圧回路54は、進角側油圧室82に対して油圧を給排する第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対して油圧を給排する第2油圧通路92との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路91,92には、供給通路93とドレン通路94a,94bとがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁95を介して接続されている。
前記供給通路93には、オイルパン96内の油を圧送する機関駆動のオイルポンプ97が設けられている一方、ドレン通路94a,94bの下流端がオイルパン96に連通している。
前記第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に略放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dに接続される。
前記電磁切換弁95は、内部のスプール弁体が各油圧通路91,92と供給通路93及びドレン通路94a,94bとを相対的に切り換え制御するようになっている。
前記ECM121は、前記電磁切換弁95を駆動する電磁アクチュエータ99に対する通電量を、ディザ信号が重畳されたデューティ制御信号(操作量)に基づいて制御する。
可変バルブタイミング機構133a,133bにおいては、電磁アクチュエータ99にデューティ比(オン時間割合)0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、オイルポンプ47から圧送された作動油は、第2油圧通路92を通って遅角側油圧室83に供給されると共に、進角側油圧室82内の作動油が、第1油圧通路91を通って第1ドレン通路94aからオイルパン96内に排出されるようにしてある。
従って、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいては、電磁アクチュエータ99にデューティ比0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、遅角側油圧室83の内圧が高くなる一方で、進角側油圧室82の内圧が低くなり、回転部材53は、ベーン78a〜78bを介して最大遅角側に回転し、この結果、吸気バルブ106の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に遅角変化する。
即ち、可変バルブタイミング機構133a,133bの電磁アクチュエータ99への通電を遮断すると、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相は遅角変化し、最終的には、ベーン78a,78b,78c,78dが隔壁部63に突き当たる最遅角位置で停止する。
また、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいて、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%の制御信号(ON信号)を出力すると、作動油は、第1油圧通路91を通って進角側油圧室82内に供給されると共に、遅角側油圧室83内の作動油が第2油圧通路92及び第2ドレン通路94bを通ってオイルパン96に排出され、遅角側油圧室83が低圧になる。
このため、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいて、デューティ比100%の制御信号(ON信号)を出力すると、回転部材53は、ベーン78a〜78dを介して進角側へ最大に回転し、これによって、吸気バルブ106の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に進角変化し、最終的には、ベーン78a,78b,78c,78dが隔壁部63に突き当たる最進角位置で停止する。
尚、吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量を連続的に可変とする機構、及び、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする機構は、上記の図2〜図4に示した、可変リフト機構134a,134b及び可変バルブタイミング機構133a,133bに限定されない。
例えば、バルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする機構としては、上記のベーン式の他、歯車を用いてクランクシャフト110に対し前記吸気カムシャフト131を相対回転させる機構などを用いることができ、更に、油圧アクチュエータの他、モータや電磁ブレーキをアクチュエータとして用いる機構を採用できる。
また、可変リフト機構として、特開2008−291742号公報に開示されるように、制御軸をアクチュエータによって軸線方向に変位させることで、機関バルブ(吸・排気バルブ)のリフト特性を可変とする機構を採用することができる。
前記ECM121には、前記制御軸13の角度を検出する角度センサ(例えばポテンショメータ)135の信号が入力され、角度センサ135で検出される前記制御軸13の実際の角度が、前記吸気バルブ106のバルブ作動角・バルブリフト量の目標値に相当する目標角度に近づくように、可変リフト機構134a,134bのモータ17の操作量をフィードバック制御する。
また、前記ECM121は、クランク角センサ125で検出されるクランクシャフト110の基準角度位置から、吸気カムセンサ136で検出される吸気カムシャフト131の基準角度位置までの角度を計測することで、バルブ作動角の中心位相の実際値を検出し、該中心位相が目標値に近づくように、可変バルブタイミング機構133a,133bの電磁アクチュエータ99に出力する制御信号(操作量)をフィードバック制御する。
前記可変リフト機構134a,134b及び可変バルブタイミング機構133a,133bのフィードバック制御は、制御エラーに基づく比例・積分・微分動作などによって操作量を演算し、該操作量を、各機構134a,134b,133a,133bに出力することで実行される。
尚、前述のように、可変バルブタイミング機構133a,133bにおいては、電磁アクチュエータ99をオフすることで、初期位置(デフォルト位置)である最遅角位置に戻るようになっているため、中心位相の目標が、最遅角位置からの進角量(進角角度)として設定されるようになっている。
図5は、可変バルブタイミング機構133a,133b及び可変リフト機構134a,134bによる吸気バルブ106のリフト特性の変化を示す。
図5に示すように、可変リフト機構134a,134bを動作させると、矢印(イ)に示すように、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相が略一定のままで、吸気バルブ106のバルブ作動角及びバルブリフト量(最大バルブリフト量)の双方が連続的に増減変化する。
一方、可変バルブタイミング機構133a,133bを動作させると、矢印(ロ)に示すように、吸気バルブ106のバルブ作動角及びバルブリフト量(最大バルブリフト量)が一定のままで、吸気バルブ106のバルブ作動角の中心位相が変化する。
ここで、前記ECM21による吸入空気量・吸気管負圧の制御を、図6のフローチャートに従って説明する。
図6のフローチャートに示す吸入空気量・吸気管負圧の制御ルーチンは、単位時間毎に実行されるようになっている。
まず、ステップS1001では、機関負荷(目標トルク)と機関回転速度NEとに基づいて吸気バルブ106のバルブリフト量の目標値TVELを設定する。
具体的には、機関回転速度NEが高いほど、また、機関負荷(要求吸入空気量)が高いほど、バルブリフト量の目標値TVELをより高い値に設定する。
次のステップS1002では、機関負荷(目標トルク)と機関回転速度NEとに基づいて吸気管負圧PBの目標値PBTを設定する。
具体的には、機関回転速度NEが高い低負荷領域(減速運転域)で、目標値PBTとして大気圧よりも低い値が設定され、高負荷・中負荷域では、大気圧により近い値(例えば−100mmHg)に設定される。
尚、吸気管負圧PBは、大気圧を0mmHgとし、大気圧よりも低いほど絶対値の大きなマイナスの値として示すものとする。即ち、本実施形態における吸気管負圧は、大気圧に対する相対圧として表される。
ステップS1003では、内燃機関101のアイドル運転時又は始動時であるかを判断する。
始動時とは、クランキング開始(スタータスイッチのオフ→オン)から完爆を経て、機関回転速度NEが目標アイドル回転速度付近(例えば±100rpm)に安定したと判断されるまでの時間である。
従って、前記時間の予測値を予め記憶しておき、クランキング開始からの時間が前記予測値に達するまでの間を始動状態として判断させても良いし、機関回転速度NEが目標アイドル回転速度付近(例えば±100rpm)に安定したことを検出するまでを始動状態として判断させることもできる。
また、アイドル運転時は、アクセル開度ACCの全閉時であって、始動時を除くものとする。
そして、アイドル運転時又は始動時であれば、ステップS1004へ進む。
ステップS1004では、アイドル運転時又は始動時における機関回転速度NEを目標値NETに収束させるための制御エラーの算出を行う。
即ち、アイドル運転時であれば、冷却水温度TWや内燃機関101に組み合わされる変速機がニュートラルであるか否かなどに基づいて目標回転速度NETを設定し、始動時であれば、冷却水温度TWなどに基づいて目標回転速度NETを設定する。
そして、そのときの実際の機関回転速度NEと前記目標値NETとの偏差ΔNE(ΔNE=NE−NET)を、前記制御エラーとして算出する。
又は、そのときの実際のバルブリフト量と目標リフト量との偏差ΔVEL(ΔVEL=実リフト量−目標リフト)を、前記制御エラーとして算出する。
前記実際のバルブリフト量は、制御軸13の角度検出値であり、前記目標リフト量は、目標リフト量に対応する制御軸13の目標角度であり、前記偏差ΔVELは、前記角度検出値と目標角度との偏差として求めることができる。
即ち、実際のバルブリフト量と目標リフト量との偏差ΔVELは、目標吸入空気量に対する実空気量の誤差を生じ、該誤差によって機関回転速度が目標からずれることになるので、前記偏差ΔVELを減少させるように制御することで、機関回転速度の目標からのずれを縮小させることになる。
次のステップS1005では、前記制御エラー(偏差ΔNE又は偏差ΔVEL)から、前記吸気管負圧の目標値PBTを補正するための補正値HPBを設定する。
前記補正値HPBは、フローチャート中に示すようなテーブルを参照して求めることができ、前記制御エラー(偏差ΔNE又は偏差ΔVEL)がマイナスであれば、補正値HPBとしてプラスの値が設定され、また、前記制御エラー(偏差ΔNE又は偏差ΔVEL)がプラスであれば、補正値HPBとしてマイナスの値が設定され、かつ、前記制御エラー(偏差ΔNE又は偏差ΔVEL)の絶対値が大きいほど、前記補正値HPBの絶対値が大きくなるように設定されている。
換言すれば、実際の機関回転速度NEが前記目標値NETよりも高い場合には、吸気管負圧の目標値PBTをマイナス補正することで、目標値PBTをより低く(大気圧からより離れる方向に)修正し、係る目標値PBTを実現すべく電子制御スロットル116の開度が減少されることで吸入空気量が減って、実際の機関回転速度NEが低下して、前記目標値NETに近づくようにする。
また、実際の機関回転速度NEが前記目標値NETよりも低い場合には、吸気管負圧の目標値PBTをプラス補正することで、目標値PBTをより高く(大気圧に近づく方向に)修正し、係る目標値PBTを実現すべく電子制御スロットル116の開度が増大されることで吸入空気量が増え、実際の機関回転速度NEが上昇して、前記目標値NETに近づくようにする。
ここで、前記偏差ΔVELに応じた補正値HPBの設定は、後述するステップS1008で固定されるバルブリフト量が、アイドル時又は始動時に、目標回転速度が得られる(目標回転速度となる吸入空気量が得られる)バルブリフト量として予め設定又は学習されている場合に実施されるものとする。
そして、実際のバルブリフト量が目標よりも高い場合には、目標よりも吸入空気量が多くなっているものと判断されるので、目標値PBTをより低く(大気圧からより離れる方向に)修正し、係る目標値PBTを実現すべく電子制御スロットル116の開度が減少されることで吸入空気量が減って、実際の機関回転速度NEが低下して、前記目標値NETに近づくようにする。
また、実際のバルブリフト量が目標よりも低い場合には、目標よりも吸入空気量が少なくなっているものと判断されるので、目標値PBTをより高く(大気圧に近づく方向に)修正し、係る目標値PBTを実現すべく電子制御スロットル116の開度が増大されることで吸入空気量が増え、実際の機関回転速度NEが上昇して、前記目標値NETに近づくようにする。
ステップS1006では、ステップS1002で設定した目標負圧PBTを、ステップS1005で設定した補正値HPBで補正し、該補正結果を、最終的な目標負圧PBTに設定する。
即ち、目標負圧を、実際の機関回転速度が目標回転速度に近づくように補正し、該目標負圧を実現すべく電子制御スロットル116を制御させることで、実際の機関回転速度を目標回転速度に近づける。
ステップS1007では、ステップS1003において始動時であると判断されて、ステップS1004〜1006の処理を行い、かつ、そのときにアクセルが開操作されている加速状態であるか否かを判断する。
即ち、始動時であるものの、同時にアクセルが開操作されている状態であるか否かを、ステップS1007において判断させる。
前記加速状態の判別においては、アクセル開度ACCの単位時間当たりの増大変化量ΔACCが閾値以上であって、アクセル開度ACCが所定速度以上で増大変化している場合に、加速状態であると判断する。
前記変化量ΔACCと比較させる閾値や前記所定速度は、バルブリフト量の可変制御による吸入空気量の変動が、吸気管負圧PBを目標負圧に近づけるための電子制御スロットル116の制御に干渉しない程度に小さくなるときの値として、予め実験やシミュレーションに基づき適合されている。
そして、アイドル運転時であるか、始動時であるもののアクセルが開操作されていない場合には、ステップS1008(空気量制御制限手段)へ進み、可変リフト機構134a,134b(可変動弁機構)の制御を通じての吸入空気量の制御動作を制限する。
即ち、前記可変リフト機構134a,134b(可変動弁機構)の制御を通じての吸入空気量の制御においては、アイドル回転速度を目標回転速度に近づけるための空気量補正分を要求吸入空気量に付加し、該要求吸入空気量が得られるように、バルブリフト量を制御するが、ステップS1008では、係る吸入空気量制御動作による吸入空気量の変化を小さく抑制する。
具体的には、目標のアイドル回転速度となる空気量が得られるものとして予め設定又は学習したバルブリフト量(目標値)に固定する。
前述のように、バルブリフト量を固定する場合には、機関温度(冷却水温度)、換言すれば、フリクションの大きさによる要求空気量の違いに対応するために、機関温度(冷却水温度)に応じて固定リフト量を可変に設定することが好ましい。
また、バルブリフト量を固定する代わりに、可変リフト機構134a,134b(可変動弁機構)の制御における入出力のゲインを,後述するステップS1010(空気量制御手段)で前記可変リフト機構134a,134bの制御(空気量制御)を行わせる場合よりも低下させ、前記可変リフト機構134a,134bの制御による吸入空気量の変動を小さく抑制する。
前述のように、ステップS1004〜ステップS1006では、実際の機関回転速度NEを目標値NETに近づけるように、吸気管負圧の目標値PBTを補正するが、係る制御に並行して可変リフト機構134a,134bの制御を通じて吸気バルブ106のバルブリフト量(閉時期IVC)が変化し、該バルブリフト量(閉時期IVC)の変化によっても吸入空気量が変化すると、係る吸入空気量の変化が、前記吸気管負圧の補正制御に干渉し、機関回転速度制御の収束安定性が損なわれ、ハンチングが発生したり、目標への収束応答性が低下したりしてしまう。
そこで、実際の機関回転速度NEを目標値NETに近づけるように吸気管負圧の目標値PBTを補正する場合には、可変リフト機構134a,134bの制御を通じて吸気バルブ106のバルブリフト量(閉時期IVC)の制御動作を制限し、バルブリフト量(閉時期IVC)の制御によって発生する吸入空気量の変動を充分に小さく抑制した状態で、実際の機関回転速度NEを目標値NETに近づけるための吸気管負圧の補正制御を実行させることで、制御干渉を抑制し、吸気管負圧の補正制御によって、実際の機関回転速度NEを目標値NET付近に応答よくかつ安定的に収束させることができるようにした。
例えば、吸気管負圧を高めて(大気圧に近づけて)吸入空気量を増やそうとしているときに、可変リフト機構134a,134bの制御を通じて吸気バルブ106のバルブリフト量(閉時期IVC)を下死点に近づけて同じく吸入空気量を増やそうとすると、吸入空気量が過剰に増え、機関回転速度が目標回転よりも大きくなってしまい、機関回転速度を応答良くかつ安定的に目標付近に収束させることが困難となる。
ここで、可変リフト機構134a,134bの制御におけるゲインの低下には、機関回転速度(アイドル回転速度)を目標回転に近づけるためのアイドル空気量分の演算におけるゲインの低下(比例・積分動作における比例定数・積分定数の低下)や、実バルブリフト量を目標リフト量に近づけるためのフィードバック動作におけるゲインの低下(比例・積分動作における比例定数・積分定数の低下)や、可変リフト機構134a,134b(モータ17)の操作量の変化量を限界値以下に制限することや、操作量を加重平均するなどのフィルタリング処理や、制御エラーを実際よりも小さく補正することなどが含まれる。
即ち、ステップS1008におけるゲインの低下は、ステップS1010での制御時よりも、同じ入力変化に対する出力(操作量)の変化を小さくする処理であればよい。
ステップS1003でアイドル運転時又は始動時でないと判断された場合、即ち、内燃機関101がアイドル運転状態でなく、かつ、始動時でもない場合には、ステップS1009へ進み、ステップS1002で設定された目標値PBTをそのまま最終的な目標値PBTに設定して、電子制御スロットル116(負圧調整弁)を制御させるようにする。
また、次のステップS1011では、実際のバルブリフト量をステップS1001で設定された目標リフト量に近づけるように、可変リフト機構134a,134b(モータ17)を制御する。
ステップS1010における可変リフト機構134a,134bの制御は、前記ステップS1008のように制限が加えられることはなく、ステップS1008での制御に比べて高いゲインでバルブリフト量を目標値に向けて応答良く変化させる。
ステップS1010へ進んだ場合には、実際の機関回転速度NEを目標値NETに近づけるための吸気管負圧の補正制御は行われないから、可変リフト機構134a,134b(バルブリフト量)の制御が、吸気管負圧の制御に干渉することはない。
従って、ステップS1010では、可変リフト機構134a,134bの制御に制限を加えずに、換言すれば、バルブリフト量を固定せず、また、ゲインを低下させることなく、ステップS1008に比べて高い応答でバルブリフト量を変化させる。
また、ステップS1007で、始動時でありかつアクセル開度が増大変化している加速時であると判断された場合にも、ステップS1010へ進み、可変リフト機構134a,134b(バルブリフト量)の制御に制限を加えず、高い応答でバルブリフト量を制御させる。
即ち、加速時には、吸入空気量の増大制御が要求されるので、可変リフト機構134a,134b(バルブリフト量)の制御によって加速要求に見合った吸入空気量の増大変化が得られるようにすると共に、加速時には、可変リフト機構134a,134b(バルブリフト量)の制御が吸気管負圧の制御に干渉して、吸気管負圧の制御性を低下させることはないので、可変リフト機構134a,134b(バルブリフト量)の制御の制限を解除する。
そして、ステップS1008又はステップS1010で、可変リフト機構134a,134b(バルブリフト量)の制御を行うと、ステップS1011(負圧制御手段)へ進み、最終的な目標値PBTに基づいて、電子制御スロットル116(負圧調整弁)を制御する。
尚、可変リフト機構134a,134bは、機関101の始動時にフリクションが大きいため、応答良く動作させることが困難であり、前述のように、始動時に電子制御スロットル116(負圧調整弁)による吸気管負圧の制御によって機関回転速度を制御するようにすれば、応答良く機関回転速度を目標に収束させることができる。
しかし、吸気バルブ106のバルブリフト量(閉時期IVC)の制御によって、吸入空気量を制御し、電子制御スロットル116(負圧調整弁)によって吸気管負圧を調整するシステムでは、可変リフト機構134a,134bによるバルブリフト量(閉時期IVC)の制御の方が、吸気管負圧の制御に比べて、吸入空気量変化における応答が速く感度が高い。
従って、高い回転安定性が要求されるアイドル運転時においては、可変リフト機構134a,134bによるバルブリフト量(閉時期IVC)の制御によって、実際の機関回転速度を目標に近づける制御を行わせることが好ましい。
そこで、ステップS1004〜ステップS1006における、実際の機関回転速度NEと目標値NETとの偏差に応じた吸気管負圧目標値PBTの補正を始動時に行わせ、機関回転速度を目標に近づけるための目標値TVELの補正をアイドル運転時に行わせる構成とすることができ、係る構成とした実施形態を、図7のフローチャートに従って説明する。
図7のフローチャートにおいて、ステップS2001及びステップS2002では、前記ステップS1001及びステップS1002と同様に、目標リフト量及び目標負圧を設定する。
また、ステップS2004〜ステップS2006では、図6のフローチャートのステップS1004〜ステップS1006と同様に、偏差ΔNE又は偏差ΔVELに基づいて目標負圧の補正を行うが、ステップ2003では、内燃機関101の始動時であってかつ加速要求がないと判断された場合に、ステップS2004〜2006の処理を行わせる用になっている。
即ち、アクセルを全閉に保持した状態での始動時には、実際の機関回転速度と目標値との偏差に応じて、実際の機関回転速度を目標値に近づけるように、目標負圧が補正される。
ステップS2006で目標負圧を補正すると、ステップS2007では、補正後の目標負圧に近づけるように、電子制御スロットル116(負圧調整弁)を制御する。
次のステップS2008では、前記ステップS1008と同様に、可変リフト機構134a,134b(可変動弁機構)の制御を通じての吸入空気量の制御動作を制限し、バルブリフト量(閉時期IVC)の変化による吸入空気量の変化を小さく抑制する。
一方、ステップS2003で、始動時でないと判断された場合、又は、始動時であっても加速状態であると判断された場合には、ステップS2009へ進む。
ステップS2009では、内燃機関101がアイドル運転状態であるか否かを判断する。
そして、アイドル運転状態であれば、ステップS2010へ進み、そのときの実際の機関回転速度NEと前記目標値NETとの偏差ΔNE(ΔNE=NE−NET)を演算する。
次のステップS2011では、前記ステップS2005と同様に、前記偏差ΔNEに基づいて補正値を設定する。
ステップS2011で設定する補正値は、目標リフト量を補正するための補正値HVELであり、前記偏差ΔNEがプラスであって実際の回転速度が目標よりも高ければ、補正値HVELはマイナスの値に設定されて目標リフトを減少補正し、前記偏差ΔNEがマイナスであって実際の回転速度が目標よりも低ければ、補正値HVELはプラスの値に設定されて目標リフトを増大補正するようにする。
ステップS2012では、前記ステップS2011で設定された補正値HVELを、ステップS2001で設定した目標リフト量に加算する補正を行い、係る補正の結果を、最終的な目標リフト量に設定する。
ステップS2013では、電子制御スロットル116(負圧調整弁)の開度制御を通じての吸気管負圧の制御動作を制限する。
即ち、前記電子制御スロットル116の開度(スロットル開度)は、圧力センサ129で検出される実際の吸気管負圧PBと前記目標負圧との偏差(制御エラー)に基づいて操作されるが、ステップS2013では、係るフィードバック動作、換言すれば、前記偏差(制御エラー)を減少させるための開度変更を小さく抑制する。
具体的には、アイドル運転に要求される吸入空気量が得られる開度に、前記電子制御スロットル116の開度(スロットル開度)を固定し、目標の吸気管負圧を得るためのフィードバック動作を停止させるか、又は、前記フィードバック動作のゲイン(制御エラーに対するスロットル開度操作量の制御ゲイン)を、後述するステップS2015(負圧制御手段)で前記電子制御スロットル116の制御(吸気管圧PBの制御)を行わせる場合よりも低下させる。
前記電子制御スロットル116の開度(スロットル開度)を固定する場合の開度は、前述のように、アイドル運転に要求される吸入空気量に相当する開度とするが、エンジンフリクションが大きい機関101の低温時には、アイドル運転に要求される吸入空気量がより多くなるので、機関温度を代表する冷却水温度に応じて固定開度を決定することが好ましい。
前述のように、ステップS2010〜ステップS2012では、実際の機関回転速度NEを目標値NETに近づけるように、吸気バルブ106のバルブリフト量がフィードバック制御されるが、係る制御に並行して目標負圧に実際の吸気管負圧PBを近づけるための前記電子制御スロットル116のフィードバック制御(吸気管圧PBのフィードバック制御)が実行されると、相互の制御が干渉し、各制御における収束安定性が損なわれ、ハンチングが発生したり、目標への収束応答性が低下したりしてしまう。
そこで、電子制御スロットル116(負圧調整弁)の開度制御を通じての吸気管負圧の制御動作を制限し、吸気管負圧の制御によって発生する吸入空気量の変動を十分に小さく抑制した状態で、実際の機関回転速度NEを目標値NETに近づけるためのバルブリフト量の制御を実行させることで、制御干渉を抑制し、吸気バルブ106のバルブリフト量の制御によって、実際の機関回転速度NEを目標値NET付近に応答よくかつ安定的に収束させることができるようにした。
例えば、機関101によって駆動される補機の負荷が投入され、機関回転速度NEが低下したために、バルブリフト量の制御によって吸入空気量を増やそうとしているときに、実際の吸気管負圧PBが目標負圧よりも大きいために電子制御スロットル116(負圧調整弁)の開度を増大させる制御が行われると、吸入空気量が過剰に増えることになってしまう。
また、機関101によって駆動される補機の負荷が投入され、機関回転速度NEが低下したために、バルブリフト量の制御によって吸入空気量を増やそうとしているときに、実際の吸気管負圧PBが目標負圧よりも低いために電子制御スロットル116(負圧調整弁)の開度を減少させる制御が行われると、回転速度制御から要求される吸入空気量の増大変化が得られなくなってしまう。
これに対し、前述のように、電子制御スロットル116(負圧調整弁)の開度を、アイドル運転に要求される吸入空気量に相当する開度に固定したり、スロットル開度操作量の制御ゲインを低下させるなどの制限を加えれば、バルブリフト量の制御によって吸入空気量を目標に向けて応答良くかつ精度良く変化させることができ、機関回転速度を目標に向けて応答良くかつ安定的に収束させることができる。
尚、電子制御スロットル116(負圧調整弁)の開度を、アイドル運転に要求される吸入空気量に相当する開度に固定したり、スロットル開度操作量の制御ゲインを低下させるなどの制限を加えることで、実際の吸気管負圧PBの目標負圧に対する追従性が低下するが、油圧ブレーキ装置200や排気還流装置250の動作源としての負圧には高い精度が要求されないので、ブレーキ性能や排気還流の制御への影響は充分に小さい。
一方、アイドル回転速度の制御においては、吸入空気量が応答良く変化しないと、機関回転速度の変動が大きくなって、エンストが発生し易くなり、エンスト回避のために目標アイドル回転速度を高めに設定する必要が生じる。
そこで、アイドル回転速度制御を、負圧制御よりも優先させ、吸気管負圧PBとして必要充分な値を確保しつつ、アイドル回転速度の安定化を図り、耐エンスト性を向上させ、また、アイドル回転が安定すれば目標アイドル回転速度を低下させることができ、これにより、アイドル運転時の燃費性能や静粛性の改善を図ることができる。
但し、油圧ブレーキ装置200のマスタバック202の負圧室の負圧(ブースタ負圧)BNPが小さく(大気圧に近く)、倍力機能を発揮できない場合などの負圧要求時には、吸気管負圧の制御動作の制限をキャンセルし、目標負圧に実際の吸気管負圧PBを速やかに近づけるようにすることができる。
ここで、実際の吸気管負圧PBを目標負圧に近づけるための電子制御スロットル116の制御のゲイン低下には、比例・積分動作における比例定数・積分定数の低下の他、電子制御スロットル116の操作量の変化量を限界値以下に制限することや、操作量を加重平均するなどのフィルタリング処理や、制御エラーを実際よりも小さく補正することなどが含まれる。
即ち、ステップS2015での制御時よりも、同じ制御エラーに対して出力される操作量の変化を小さくする処理であればよい。
ステップS2013で、電子制御スロットル116(負圧調整弁)の開度制御を通じての吸気管負圧の制御動作を制限すると、次のステップS2014では、ステップS2012で補正した目標リフト量に従って、可変リフト機構134a,134bを制御する。
ここで、前記ステップS2012では、実際の機関回転速度を目標値に近づけるように、目標リフト量が補正されるから、ステップS2014における可変リフト機構134a,134bの制御によって、吸気バルブ106のバルブリフト量(閉時期)が、実際の機関回転速度を目標値に近づけるように補正されることになる。
また、ステップS2009でアイドル運転状態ではないと判断されると、ステップS2015及びステップS2016に進む。
ステップS2015では、ステップS2002で設定された目標負圧に実際の吸気管負圧を近づけるように、電子制御スロットル116(負圧調整弁)の開度を制御し、回転偏差ΔNEに基づく目標負圧の補正や、負圧制御の制限(ゲイン低下・スロットル開度固定)は行わない。
次のステップS2016では、ステップS2001で設定された目標リフト量に実際のバルブリフト量を近づけるように、可変リフト機構134a,134bを制御し、回転偏差ΔNEに基づく目標リフト量の補正や、バルブリフト量制御の制限(ゲイン低下・スロットル開度固定)は行わない。
上記のように、図7のフローチャートに示す実施形態では、始動時においては、バルブリフト量を始動時の目標値に制御し、回転速度エラーによるリフト量の修正は行わず、回転速度エラーに応じて目標値PBTを補正することで、電子制御スロットル116の開度を修正して、始動時の目標回転速度に近づけるようにする。
電子制御スロットル116の開度は、始動時であっても高い応答で変化させることが可能であるので、始動時の回転安定性を向上させることができる。
一方、アイドル時には、吸入空気量制御の応答性及び感度に優れたバルブリフト量(閉時期)の制御によって、機関回転速度を目標アイドル回転速度に近づけるので、アイドル運転時の機関回転速度を目標付近に安定的に収束させることができる。
尚、前記ステップS1008又はステップS2008でバルブリフト量を固定した状態で、実際の機関回転速度NEを目標速度に近づけることができない場合(実際の機関回転速度NEが目標速度に向けて変化しない又は変化するが目標速度への収束に時間を要する場合)には、動弁系の異常と判断し、バルブリフト量の固定を解除することが好ましい。
また、ステップS1008又はステップS2008でバルブリフト量を固定した状態で、実際の機関回転速度NEを目標速度に近づける制御を行うことで、実際の機関回転速度NEが目標に対して大きくオーバーシュートする場合には、前記固定するバルブリフト量を下げて、オーバーシュートの発生を抑制することができる。
また、前記バルブリフト量の固定状態を解除して、そのときの目標リフト量にまで変化させる場合には、バルブリフト量の変化(変化速度)を小さく制限し、トルク変動・回転変動の発生を抑制することが好ましい。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)吸気バルブのリフト特性を連続的に変更可能な可変動弁機構と、吸気管負圧を調整する負圧調整弁とを備えた内燃機関に適用される制御装置であって、
前記負圧調整弁の制御を通じて吸気管負圧を制御する負圧制御手段と、
前記可変動弁機構の制御を通じて前記内燃機関の吸入空気量を制御する空気量制御手段と、
前記内燃機関のアイドル運転時に、前記負圧調整弁の開度を固定し、前記可変動弁機構を制御して機関回転速度を目標値に近づけるアイドル時回転制御手段と、
前記内燃機関の始動時に、前記吸気バルブのリフト特性を固定し、前記負圧調整弁を制御して機関回転速度を目標値に近づける始動時回転制御手段と、
を含む内燃機関の制御装置。
上記発明によると、アイドル運転時には、前記負圧調整弁の開度を固定し、前記可変動弁機構を制御して機関回転速度を目標値に近づけるので、負圧調整弁の制御が干渉してアイドル回転が不安定になることを抑制でき、また、始動時には、前記吸気バルブのリフト特性を固定し、前記負圧調整弁を制御して機関回転速度を目標値に近づけるので、始動時に可変動弁機構を応答良く動作できない場合であっても、始動時の機関回転を応答良く目標に向けて制御できる。
(ロ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置において、
前記負圧制御手段が、機関回転速度を目標値に近づけるための吸気管負圧制御を、内燃機関のアイドル運転時及び/又は始動時に行う請求項1記載の内燃機関の制御装置。
上記発明によると、アイドル運転時及び/又は始動時に機関回転速度を目標速度に向けて安定的かつ応答良く制御できる。
(ハ)請求項1〜3,(ロ)のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置において、
始動時であって加速要求時において、前記空気量制御制限手段による前記空気量制御手段の動作制限を禁止する加速時禁止手段を設けた内燃機関の制御装置。
上記発明によると、前記可変動弁機構の制御を通じてのリフト特性の制御が、前記吸気管負圧の制御による機関回転速度の制御に干渉しない状態で、無用に空気量制御が制限されることを抑制でき、必要な空気量を得られる。
(ニ)請求項1〜3,(ロ),(ハ)のいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置において、
前記負圧制御手段における機関回転速度を目標値に近づけるための吸気管負圧制御が、実際の機関回転速度と目標回転速度との偏差、又は、実際のリフト特性と目標リフト特性との偏差に基づき、前記吸気管負圧の目標値を補正する制御である内燃機関の制御装置。
上記発明によると、機関回転速度のエラー又はリフト特性の制御エラーに基づいて、吸気管負圧の目標値を補正することで、機関回転速度を目標に近づける補正がなされる。