JP2010203022A - 芯鞘複合ポリエステル系繊維及びそれを用いた繊維構造物 - Google Patents

芯鞘複合ポリエステル系繊維及びそれを用いた繊維構造物 Download PDF

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壯夫 清水
Masaru Harada
大 原田
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Abstract

【課題】脂肪族ポリエステルと融点200℃以上の結晶性ポリエステルからなる芯鞘複合繊維に高い耐加水分解性を付与する。
【解決手段】 紡糸後の芯鞘複合繊維を末端封鎖剤により処理繊維内部に末端封鎖剤を吸尽させ末端カルボキシル基を封鎖する。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐加水分解性が向上した脂肪族ポリエステルを用いたポリエステル系芯鞘複合繊維に関するものであり、更に詳しくは、耐加水分解性とともに耐熱性や耐摩耗性が要求される用途、例えばYシャツやブラウス、外衣などの衣料用素材に好適に使用することができるポリエステル系芯鞘型複合繊維に関するものである。
近年は環境意識の高まりから、プラスチック廃棄物が問題となり、酵素や微生物による分解が期待される生分解性プラスチックが注目されている。また、地球温暖化の観点から、二酸化炭素の大気中への排気を抑制することが重要になっており、カーボンニュートラルという概念で表されるように、天然資源から作られる材料の使用が推奨されるようになってきている。近年では力学特性や耐熱性が比較的高く、製造コストの低い生分解性のプラスチックとして、でんぷんの発酵で得られる乳酸を原料としたポリ乳酸が脚光を浴びている。
ポリ乳酸は耐熱性や耐摩耗性が低いことが問題となっており、これらの欠点を補うため、例えばポリ乳酸にナイロンやポリエステル等の耐熱・耐摩耗性に優れたプラスチックをブレンドすることが考えられる。しかし、これらブレンド品は、均一にブレンドすることができないために、溶融紡糸では安定して繊維化することが困難であった。
さらに、ポリ乳酸繊維の特性を向上させる手法として、汎用プラスチックとの複合紡糸がいくつか提案されている。例えば、ポリアミド系重合体と脂肪族ポリエステルとから構成される複合繊維が提案されている(特許文献1)。しかしながら、該複合繊維は脂肪族ポリエステル成分をアルカリ減量して新機能を持たせることを目的としているため、脂肪族ポリエステル成分が繊維表面に露出している。そのため、衣料用としては実用に耐える耐熱性及び耐摩耗性を有していなかった。
また、芳香族含有ポリエステルを芯線とし、脂肪族ポリエステルをスキン層とした複合繊維が提案されている(特許文献2)。該複合繊維は、スキン層を形成する脂肪族ポリエステルを酵素により減量処理することで表面改質を行い、良好な風合いを可能にしている。しかしながら、酵素処理による改質では耐熱性、耐摩耗性ともに向上せず、むしろ悪化する傾向にあることがわかった。
また、ポリトリメチレンテレフタレート成分とポリ乳酸成分とのサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型の複合繊維が提案されている(特許文献3)。偏心芯鞘型複合繊維の場合、芯を形成するポリ乳酸を、高融点のポリトリメチレンテレフタレートが被覆した形態をとるため、従来のポリ乳酸繊維よりは耐熱性に優れている。しかしながら、偏心構造により部分的に薄皮となるため被膜強度が弱く、十分な耐熱性及び耐摩耗性の製品を得ることはできなかった。
そこで、芯鞘複合繊維の鞘部を形成する熱可塑性樹脂の皮膜厚さを0.4μm以上にすることが提案されている(特許文献4)。鞘部の厚さを大きくすることにより皮膜強度が向上し耐熱性及び耐摩耗性が向上するため、実用に耐えられる耐熱性と耐摩耗性を有する製品が得られる。しかしながら、ポリ乳酸に代表される脂肪族ポリエステルは、室温や高温の水中における加水分解性が非常に高く、さらには空気中の水分によっても分解されるという性質を持っている。これはポリ乳酸繊維だけの問題ではなく、ポリエステル系繊維に共通の問題であり、末端カルボキシル基から放出されるプロトンがエステルの加水分解の自己触媒として働くために促進される。このため、熱水の存在下、高温、高湿度条件化で分解による強度低下が著しいため、使用が制限されてきた。
これを解決する方法として、末端封鎖剤を添加することより末端カルボキシル基濃度を低下させる方法が提案されており(特許文献5、特許文献6)、前記特許文献4でも相溶化剤として用いられている。しかしながら、これらの方法は紡糸前にポリマーチップに混練・添加するため、紡糸時の高温により、末端封鎖剤が蒸発や分解による発煙を起こし、悪臭や有毒なガスが発生するという問題点があった。さらに紡糸性が悪化し生産性も低下するうえ、高次加工における精練工程や染色工程の湿熱処理時に、ポリマーが加水分解し末端封鎖剤が消費されるため、加水分解の抑制効果が低下するという問題があった。
特開2000−54228号公報 特開2000−136439号公報 特開2003−82530号公報 特開2005−187950号公報 特開2001−261797号公報 特開2002−30208号公報
本発明は、かかる従来の背景に鑑み、耐熱性及び耐摩耗性に優れるが耐加水分解性に問題を有する芯鞘型複合ポリエステル系繊維を、紡糸後に末端封鎖剤により処理することで、耐熱性及び耐摩耗性に優れかつ耐加水分解性にも優れた芯鞘型複合ポリエステル系繊維を提供せんとするものである。
本発明は、上記目的を達成するために下記の構成を有する。
(1) 芯部Aを形成する熱可塑性樹脂が脂肪族ポリエステルであり、鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂が芳香族ポリエステルである芯鞘複合繊維であって、繊維内部に吸尽した末端封鎖剤によって、ポリエステル分子鎖の末端カルボキシル基の一部が封鎖されていることを特徴とする芯鞘複合ポリエステル系繊維。
(2) 該鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂が融点200℃以上の結晶性ポリエステルであることを特徴とする上記(1)記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
(3) 該末端封鎖剤がカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物およびエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
(4) 該繊維の外層から内層に向けて、末端封鎖剤濃度が小さくなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
(5) 該繊維の鞘部Bに含まれる末端封鎖剤量(N1)と、芯部Aに含まれる末端封鎖剤量(N2)において、N1に含まれる末端封鎖剤濃度がN2に含まれる末端封鎖剤濃度よりも大きいことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
(6) 該芯部Aを形成する脂肪族ポリエステルが融点150℃以上のポリ乳酸であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
(7) 該鞘部Bを形成する結晶性ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートから選択される熱可塑性樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維を用いたことを特徴とする繊維構造物。
(9) 芯部を形成する熱可塑性樹脂が脂肪族ポリエステルであり、鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂が芳香族ポリエステルである芯鞘複合繊維を、カルボキシル末端基と反応する末端封鎖剤を含有する処理液に投入し、該処理液を循環させながら浴中加工した後、脱水、乾燥することを特徴とする芯鞘複合ポリエステル系繊維の製造方法。
(10)該鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂が融点200℃以上の結晶性芳香族ポリエステルである芯鞘複合繊維であることを特徴とする上記(9)記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維の製造方法。
本発明は、ポリエステル系繊維を含む繊維構造物に対して、高い耐加水分解性と、優れた力学特性、耐熱性及び耐摩耗性を与えることができる。
本発明は、優れた力学的特性、耐熱性及び耐摩耗性を有する芯鞘複合ポリエステル系繊維の耐加水分解性を向上させることについて鋭意検討した結果、該繊維に末端封鎖剤を吸尽させることで、さらに耐加水分解性を向上させることができることを見出したものである。
本発明の複合繊維の芯部Aを形成する脂肪族ポリエステルとは、脂肪族アルキル鎖がエステル結合で連結された熱可塑性重合体のことをいい、例えばポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン等が挙げられる。このうち、力学特性、耐熱性及び製造コストの面からポリ乳酸が好ましい。ここでポリ乳酸とは、-(O-CHCH3-CO)n-を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やそのオリゴマーを重合したものをいう。
ポリ乳酸としては、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、DL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体から選ばれる重合体、あるいはこれらのブレンド体等が用いられる。中でも、汎用性の面からは、L−乳酸を主成分とするポリ乳酸が好ましく使用される。L−乳酸を主成分とするとは、脂肪族ポリエステル中、50重量%以上がL−乳酸であることを意味する。
ポリ乳酸中のD−乳酸、あるいはL−乳酸の光学純度は、低くなるとともに結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。そのため、耐熱性を高めるために光学純度は90%以上であることが好ましい。より好ましい光学純度は93%以上、さらに好ましい光学純度は97%以上である。なお、光学純度は融点と強い相関が認められ、光学純度90%程度で融点が約150℃、光学純度93%で融点が約160℃、光学純度97%で融点が約170℃となり、ポリ乳酸の融点は、耐熱性の点から150℃以上であることが好ましい。
また、上記のように2種類の光学異性体が単純に混合している系とは別に、前記2種類の光学異性体をブレンドして繊維に成型した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を飛躍的に高めることができ、より好ましい。
かかるポリ乳酸の製造方法としては、乳酸を原料としていったん環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行なう二段階のラクチド法と、乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行なう一段階の直接重合法が知られている。本発明で用いられるポリ乳酸は、いずれの製法によって得られたものであってもよい。
本発明の複合繊維の鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂として芳香族ポリエステルが用いられる。
芳香族ポリエステル繊維はポリ乳酸繊維に比べ融点が高く、かつ耐摩耗性も優れているので、芯部にポリ乳酸、鞘部に芳香族ポリエステルを配した繊維は、ポリ乳酸繊維に比べ耐熱性および耐摩耗性を大きく向上することができる。
芳香族ポリエステルとしては、耐熱性の観点から融点は高い方が好ましいが、芯成分との複合紡糸を容易にするため融点は200〜260℃であることが好ましい。
より好ましくは210〜240℃である結晶性芳香族ポリエステルであることが好ましい。さらに、結晶性芳香族ポリエステルで形成される皮膜厚さは、0.4μm以上であることでより高い耐熱性が得られる。結晶性ポリエステルの皮膜厚さと耐熱性には明確な相関関係がみられ、皮膜が厚くなるほど耐熱性が向上する。そのため、結晶性ポリエステルの皮膜厚さは0.6μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましい。一方、皮膜厚さの上限は特に限定されないが、脂肪族ポリエステルの特性を損なわないという点で10μm以下が好ましい。また、複合繊維の断面形状は、0.4μm以上の皮膜厚さを有していれば丸断面、多角断面、多葉断面、中空断面、その他公知の断面形状のいずれでもよく、芯鞘構造も単芯の他、2芯、3芯といった多芯構造であってもよい。
結晶性芳香族ポリエステルとは、例えばジカルボン酸成分とグリコール成分からなるポリエステルであって、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’ジフェニルジカルボン酸、4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸成分が用いられる。これらの酸成分を1種類でも良く、2種以上併用してもよい。さらに、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分等を1種以上併用しても良い。また、グリコール成分として、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができる。これらのグリコール成分は1種類でもよく、2種類以上併用してもよい。
ただし、前記した様に結晶性芳香族ポリエステルの融点は200℃以上であることが好ましく、芯成分との複合紡糸を容易にするため融点は205〜260℃であることがさらに好ましい。より好ましくは210〜240℃である。また、耐熱性の向上とともに耐摩耗性を向上させるためには、結晶性ポリエステルの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを用いることが好ましく、ポリトリメチレンテレフタレートを用いることが最も好ましい。結晶性ポリエステルは、ホモポリマーや前記ポリマーのブレンド物、共重合ポリマーであってもよく、さらには粒子、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤や紫外線吸収剤等の添加物を含有していてもよい。
また、芯部と鞘部との複合界面の接着性を高め、界面剥離を抑制するために、芯成分及び/又は鞘成分に相溶化剤が含有されていても良い。相溶化剤としては、芯成分と鞘成分のいずれの成分とも相溶性のある化合物や、芯・鞘両成分の末端と反応して架橋構造をとる化合物等が好ましく用いられるが、これらに限られるものではない。例えば、前者の相溶化剤としては、芯・鞘各成分と基本構造が類似した部分を併せ持つ界面活性剤コポリマーや、ブロックコポリマー等が挙げられる。また、架橋構造を形成するものとして、両末端にエポキシ基を有するエポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物やそれらのコポリマー、カルボジイミド化合物やそれらのコポリマー等が挙げられる。架橋剤を用いる場合は、架橋剤を芯・鞘各成分のいずれか、又は両成分に添加し、架橋剤が複合界面近傍に存在するそれぞれの成分の末端基と反応することで、界面接着性が向上する。また、芯成分にポリ乳酸を用いた場合には、オリゴマーの反応活性末端が封鎖されるため、ポリ乳酸中の反応活性末端が不活性化し、ポリ乳酸の加水分解を抑制することができる。この反応活性末端は水酸基、カルボキシル基があるが、カルボキシル基の封鎖性に優れているものとして、以下の化合物が挙げられる。
カルボキシル基封鎖剤として好ましく用いられるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。
グリシジルエーテル化合物の例としては、ブチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応から得られるビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などを挙げることができる。なかでも、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
グリシジルエステル化合物の例としては、安息香酸グリシジルエステル、p−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどを挙げることができる。なかでも、安息香酸グリシジルエステルやバーサティック酸グリシジルエステルが好ましい。
グリシジルアミン化合物の例としては、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロモアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
グリシジルイミド化合物の例としては、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジクロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミド、N−グリシジルステラミドなどを挙げることができる。なかでも、N−グリシジルフタルイミドが好ましい。
脂環式エポキシ化合物の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−トリル−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミドなどを挙げることができる。
また、その他のエポキシ化合物として、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノゾラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。
カルボキシル基封鎖剤として好ましく用いられるオキサゾリン化合物の例としては、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物なども挙げることができる。
カルボキシル基封鎖剤で用いることのできるオキサジン化合物の例としては、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−エトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−プロポキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ブトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘプチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−オクチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ノニルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−デシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−アリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−メタアリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−クロチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどが挙げられ、さらには、2,2′−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−プロピレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ブチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−m−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ナフチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−P,P′−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサジン化合物などが挙げられる。
上記オキサゾリン合物やオキサジン化合物の中では、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)が好ましい。
カルボジイミド化合物としては、分子内に少なくともひとつの(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を有する化合物であり、例えば適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。
カルボジイミド化合物の例としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジ−o−トルイルカルボジイミド、ジ−p−トルイルカルボジイミド、ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−o−トルイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert −ブチルフェニルカルボジイミド、N−トルイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トルイルカルボジイミド、N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどのモノ又はジカルボジイミド化合物、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどが挙げられる。中でもN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドが好ましく、また、ポリカルボジイミドが好ましい。
上記のカルボキシル基封鎖剤は1種または2種以上の化合物を任意に選択して使用することができる。カルボキシル基封鎖剤を添加する場合、添加する成分のカルボキシル基末端量に対して決めることが重要である。さらに、ラクチド等の残存オリゴマーも加水分解によりカルボキシル基末端を生じることから、ポリマーのカルボキシル基末端だけでなく残存オリゴマーやモノマー由来のものも併せたトータルカルボキシル末端量が重要である。例えば、架橋剤としてポリカルボジイミドを用いる場合、ポリカルボジイミドのカルボジイミド基当量としてトータルカルボキシル末端量の1.1〜3倍当量添加することで、フリーのポリカルボジイミド化合物を減じることができる。また、芯・鞘両成分のカルボキシル基末端の封鎖により形成される架橋構造により、界面接着性を飛躍的に向上させることができる。ポリカルボジイミド化合物の添加量は、より好ましくはトータルカルボキシル末端量の1.2〜2.5倍当量であり、さらに好ましくは1.3〜2.0倍当量である。
本発明に用いるポリエステル系芯鞘複合繊維の製造方法としては、まず、前記したポリマーの中から芯部Aを形成する脂肪族ポリエステルと鞘部Bを形成する結晶性ポリエステルを選択する。例えば、芯部Aに重量平均分子量が10万〜20万、光学純度97%のポリL乳酸(融点:170℃)、鞘部Bにポリトリメチレンテレフタレート(融点228℃)を用いる。別々のホッパーで溶解した各ポリマーを、溶融・押し出して紡糸ブロックに溶融ポリマーを移送する。さらに紡糸ブロックに内蔵された紡糸パックに送り、パック内でポリマーを濾過した後、紡糸口金で芯鞘構造に貼り合わせた後、吐出して糸条を得る。紡糸ブロックの温度は芯鞘各成分の高融点側の融点で決まるが、高融点側にポリトリメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートを用いた場合は240〜255℃で溶融紡糸すればよい。次いで延伸機により延伸するか、または仮撚加工機により延伸仮撚する。なお、紡糸と延伸を連続的に行うスピンドロー方式も好ましく用いられる。
溶融紡糸を行う際、混練時および溶融紡糸時の滞留時間が長いと、原料ポリマーや相溶化剤の熱劣化により、ポリマーが着色するという問題がある。そのため、滞留時間は短い程良く、30分以下とすることが好ましい。また、このときの溶融ポリマーの温度も流動性を確保しつつ、出きるだけ低温にすることが好ましい。滞留時間はより好ましくは20分以下であり、さらに好ましくは15分以下である。同様に、相溶化剤の添加方法も工夫することが好ましい。相溶化剤は予め原料ポリマーに混練させてもよいが、滞留時間を抑制するためには溶融紡糸時に相溶化剤を直接添加することが好ましい。例えば、ポリ乳酸を混練機で溶融する際、サイドフィーダー等で相溶化剤を計量しながら添加することで、相溶化剤の溶融状態での滞留時間を短くすることができる。
また、芯鞘複合界面の接着性を向上させるためには、紡糸速度が重要な条件となる。芯部を構成する脂肪族ポリエステルと、鞘部を構成する結晶性ポリエステルとは、比較的親和性がよく、さらに相溶化剤を添加することによって、より界面接着性を向上させることができる。好ましい紡糸速度は2000m/以上、より好ましくは2500m/分以上、さらに好ましくは3000m/分以上である。一方、紡糸での工程安定性を考慮すると、紡糸速度は7000m/分以下であることが好ましい。
本発明に用いる複合繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸、混繊糸などのフィラメントヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、紡績糸、あるいは布帛など各種形態の繊維であってもよい。
本発明に用いる複合繊維には、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維などを混用することができる。複合の形態としては、混紡、交織、交編等いかなる形態でも良い。繊維構造物の形態としては、フィラメント、紡績糸、そしてそれらより得られる織物、編み物、不織布、製品などの繊維構造物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
天然繊維とは、綿、カポック、麻、亜麻、大麻、苧麻、羊毛、アルパカ、カシミヤ、モヘヤ、シルクなどが挙げられる。再生繊維とは、ビスコース、キュプラ、ポリノジック、ハイウエットモジュラスレーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維などが挙げられる。半合成繊維とは、アセテート、ジアセテート、トリアセテート、などが挙げられる。合成繊維とは、ポリアミド、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、プロミックスなどが挙げられる。
本発明では、芯鞘複合繊維に他の繊維を任意の手法で任意に混用して良いが、芯鞘複合繊維の混率が小さいと本発明の効果が小さくなるため、芯鞘複合繊維の混率は30%以上が好ましく、50%以上がさらに好ましい。
本発明では芯鞘複合繊維に、末端封鎖剤を吸尽処理する。
芯鞘複合繊維を、末端封鎖剤を含有する処理液に投入し、該処理液を循環させながら浴中加工を行う。
被処理物の形態としては、布帛、糸、製品、トウ、ワタ等を例示できるが、それらに限定されるものではない。浴中加工の処理装置としては、ウインス染色機、ジッガー染色機、パドル染色機、ドラム染色機、液流染色機、気流染色機、ビーム染色機、チーズ染色機、オーバーマイヤー等の装置が利用できるが、これらに限定されるものではない。
末端封鎖剤を含有する処理液に布帛を浸し、常圧または加圧の下、80〜130℃で加熱処理することが好ましい。その加熱処理時間は10〜120分間が好ましい。芯鞘複合繊維の芯部を構成するのがポリ乳酸の場合、90〜110℃で20〜60分間処理することはより好ましい。このときに末端封鎖剤が繊維に付着し、繊維内部に吸尽・拡散する。
かかる方法において液中処理した後、乾燥を行い、テンターなどで80〜170℃の乾熱処理をすることが好ましい。その処理時間は15秒〜8分間でよい。芯鞘複合繊維の芯部を構成するのがポリ乳酸の場合、より好ましくは、90〜130℃で30秒〜5分間がよい。がよい。末端封鎖剤の種類によっては乾熱処理を必要としないものもある。
連続加工処理装置としては、通常のマングルが液付与装置として好適に用いられるが、繊維に均一に液を付与できる装置であれば良く、装置を限定するモノではない。コーティング法等で付与しても良い。乾燥・熱処理装置としては、テンター、ショートループ、シュリンクサーファー、スチーマー、シリンダー乾燥機等が利用できるが、該繊維に均一に熱を付与できる装置であればこれらに限定されるものではない。末端封鎖剤を含有する処理液に布帛を浸漬し、均一に絞った後、乾燥し、80〜170℃の乾熱処理をすることが好ましい。その処理時間は15秒〜8分間でよい。より好ましくは、90〜130℃で30秒〜5分間がよい。末端封鎖剤の種類によっては乾熱処理を必要としないものもある。
末端封鎖剤を含有する処理液に分散染料に代表される疎水性染料を混合すると、末端封鎖処理とともに染色を行うことができる。末端封鎖処理を染色と同時に行うと染色濃度が高くなる。さらに湿熱処理工程を通る回数が減るため、複合繊維中の脂肪族ポリエステルの加水分解が抑制される。
本発明で末端封鎖剤として用いられる化合物は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物から選ばれる付加反応型化合物であることが好ましい。
また上述したカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物のうち、2種類以上の化合物を表面から吸尽するための末端封鎖剤として併用することもできる。
本発明では、上述のとおり末端封鎖剤を繊維中に含有する場合には、さらに末端封鎖剤を付与することとなる。吸尽するための末端封鎖剤としては、上述した薬剤の中で、高分子量型はポリエステル系繊維内に吸尽しにくい場合もあるため、比較的分子量の小さいルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物を好適に用いることができる。
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちカルボジイミド化合物としては、例えば、N,N´−ジ−o−トリルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミドなどが挙げられる。
さらには、これらのカルボジイミド化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸のカルボキシル末端を封鎖すればよく、カルボジイミド化合物の種類により本発明はなんら制限されるものではない。
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちエポキシ化合物の例としては、例えば、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジクロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミド、N−グリシジルステラミド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−トリル−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、3−(2−キセニルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、α−クレシルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどが挙げられ、さらには、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジメチルジグリシジルエステル、フェニレンジグリシジルエーテル、エチレンジグリシジルエーテル、トリメチレンジグリシジルエーテル、テトラメチレンジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸のカルボキシル末端を封鎖すればよく、エポキシ化合物の種類により本発明はなんら制限されるものではない。
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちオキサゾリン化合物の例としては、例えば、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、さらには、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。これらのオキサゾリン化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸のカルボキシル末端を封鎖すればよく、オキサゾリン化合物の種類により本発明はなんら制限されるものではない。
また本発明に用いることのできる末端封鎖剤として上述したカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物のうち、2種類以上の化合物を末端封鎖剤として併用することもできる。
本発明で用いる末端封鎖剤は、平均粒径が100μm以下の状態で使用することが好ましい。ここでいう平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定機(島津SALD2000J)で測定した値をいう。末端封鎖剤の粒径は、被処理物と末端封鎖剤の接触機会に相関しており、粒径が小さいほど浴中で分散性が向上し、繊維に吸尽されやすい。そのため、末端封鎖剤の平均粒径は30μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
その状態にする方法は特に限定されるものではないが、例えば常温で固体の末端封鎖剤は、乾式・湿式で微粉砕化したり、溶融させた後に微結晶化したり、適当な非水溶媒に溶解させた後水に希釈したりすることで微粒子化できるが、これらの方法に限定されるものではない。安定化ため乳化剤等の活性剤を併用しても良い。常温で液体の末端封鎖剤は、機械乳化、転相乳化、液晶乳化、転相温度乳化、D相乳化、可溶化領域を利用した超微細化乳化等の方法で微粒子化させることができるが、これらの方法に限定されるものではない。
末端封鎖剤を含む溶液に、分散剤、均染剤、柔軟剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、浸透剤、pH調整剤など末端封鎖剤の反応を阻害しないものであれば含んでいてもかまわない。
末端封鎖剤の量は対象となる芯鞘複合繊維の末端カルボキシル基の量にあわせて任意に決定すればよい。
該繊維に末端封鎖剤を吸尽させることにより、末端封鎖剤がポリマー中のカルボキシル末端基と反応し、末端カルボキシル基濃度が低下するために耐加水分解性が付与されるが、末端封鎖剤が吸尽される際には、繊維の外側に末端封鎖剤が接触した後、繊維内部に末端封鎖剤が拡散していくため、繊維の外層部の末端封鎖剤濃度と内層の末端封鎖剤濃度には差が生じ、外層部に含有される末端封鎖剤濃度の方が大きくなる。したがって、鞘部に含まれる末端封鎖剤濃度は芯部に含まれる末端封鎖剤濃度よりも大きくなる。
分散染料のようなポリエステル系繊維を構成するポリマーと強い相互作用をしない物質では、処理時間を十分長くとると、繊維内部に均一に拡散して外層と内層の濃度差が解消する方向に進行するが、末端封鎖剤はポリエステルポリマーの末端カルボキシル基との反応と拡散が同時に進行するため、外層部と内層部の濃度差が生じやすく、繊維の外層から内層に向けて、末端封鎖剤濃度が小さくなる。本件では繊維が芯鞘複合構造であるため、 部Aを形成する脂肪族ポリエステルに吸尽された末端封鎖剤量が、鞘部Bを形成する結晶性ポリエステルに吸尽された末端封鎖剤量よりも小さくなる。
したがって、予め末端封鎖剤(相溶化剤)を含有しているのみで、末端封鎖剤を吸尽していないポリエステルポリマーでは末端封鎖剤が繊維内部に均一に存在するため、本発明技術とは区別することが可能である。
繊維の鞘部または芯部のみを選択的に溶解する溶剤を用いて、鞘部または芯部どちらかを溶解し、残った鞘部または芯部を適当な溶剤で溶解し、それぞれに含まれる末端封鎖剤を検出することで、該繊維の鞘部に含まれる末端封鎖剤量(N1)と、芯部に含まれる末端封鎖剤量(N2)において、N1に含まれる末端封鎖剤濃度がN2に含まれる末端封鎖剤濃度よりも大きいことを明らかにすることができる。
鞘部にポリトリメチレン繊維、芯部にポリ乳酸繊維を用いた場合を例に挙げて、具体的に説明する。
まずは、ポリ乳酸のみを選択的に溶解する溶媒である、例えばクロロホルムに、芯鞘複合繊維を十分な時間浸漬すると、ポリ乳酸繊維だけが溶出する。なお、ポリ乳酸は繊維断面から溶出するので、浸漬時には、繊維を長さ方向にカットすることが好ましい。取り出したサンプルを例えばキャストフィルム化するなど任意の方法で試料化し、任意の方法で末端封鎖剤を検出する。
検出方法としては、IRスペクトルや、UVスペクトル、蛍光スペクトル、ラマン分光スペクトルなどの任意の方法で測定し、予め検量線を作成した上で、末端封鎖剤それぞれに固有のピークを検出することで外層部と内層部に含まれる末端封鎖剤の濃度を測定することができる。
繊維を断面方向に切断し、繊維断面をTOF−SIMSやラマン分光スペクトルで直接測定して末端封鎖剤特有のスペクトルピークの積分値から、繊維の外層と内層の末端封鎖剤の濃度分布を求めても良い。
もちろん外層部と内層部(鞘部と芯部)の末端封鎖剤の濃度分布の評価方法はこれらの方法に限定されるものではない。
該芯鞘複合繊維が相溶化剤を含有しており、その相溶化剤がポリエステルポリマーのカルボキシル基の封鎖性がある場合は、末端封鎖剤の使用量を減らしても良いが、求める耐加水分解性に応じて決定すればよい。相溶化剤がカルボキシル基の封鎖性がある場合でも、紡糸以降の高次加工段階における湿熱処理工程、具体的には精練工程、漂白工程、染色工程等で、特に芯部の脂肪族ポリエステルポリマーの加水分解が進行することは避けられないため、高次加工段階のどこかで末端封鎖剤を吸尽させることで、高次加工段階での加水分解により生成したカルボキシル基を封鎖することができ、耐加水分解性をさらに向上させ、保管中または着用中の製品としての寿命を延長することが出来る。
本発明により得られたポリエステル系繊維は、耐加水分解性に優れることから種々の繊維構造物として用いることができ、ドレスシャツ、ラウス、パンツ、スカート、ポロシャツ、Tシャツ、トレーニングウェア、コート、セーター、パジャマ、スクールユニフォーム、作業着、白衣、クリーンルームウェア、浴衣、肌着、裏地、芯地等として好ましく用いられる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の物性は次の方法で測定した値である。
(1)脂肪族ポリエステルの重量平均分子量
PLAについて、加水分解前、加水分解後のそれぞれについて、重量平均分子量を以下の方法により測定した。
試料をクロロホルムに浸漬させ、PLA部のみを溶解させたクロロホルム溶液を測定溶液とする。これをゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
(2)引張強度(cN/dtex):島津オートグラフAG−1Sを用い、試料から採取した分解糸を、試料長20cm、引張り速度20cm/分の条件で測定した。
(3)強度保持率(%):強度保持率は下記の式によって算出した。
強度保持率(%)={(加水分解処理後強度)/(加水分解処理前強度)}×100
(実施例1)
重量平均分子量16.5万、融点170℃、残留ラクチド量0.085重量%のポリL乳酸(光学純度97%L乳酸)を芯部Aとし、平均2次粒子径が0.4μmの酸化チタンを0.3重量%含有したPTT(融点228℃)を鞘部として、それぞれ別々に溶融し、紡糸温度250℃で芯鞘複合比(重量%)70:30、紡糸速度3000m/分で110デシテックス、36フィラメントの芯鞘複合構造の未延伸糸を得た。
さらに該未延伸糸を延伸速度800m/分、延伸倍率1.3倍、延伸温度90℃、熱セット温度130℃で延伸し、84デシテックス、48フィラメントの延伸糸を得た。
得られた延伸糸を用い、試験用丸編み機で筒編み地を作成した。
高圧染色試験機を用い、末端封鎖剤としてレーザー回折散乱式粒度分布測定機(島津SALD2000J)で測定した場合に、平均粒径約5μmに調整したN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(TIC)を繊維重量に対して3%owf使用し、浴比1:30とした処理液中(繊維重量に対し、30倍の水を使用した処理液)に筒編み地を浸し、UR・MINI−COLOR(赤外線ミニカラー(テクサム技研製))を用い、110℃、30分の条件で処理液を循環させながら加工を行った。
この後、水洗し、風乾させ、130℃、2分間乾熱処理を行った。
処理した筒編み地を(株)東洋製作所製恒温恒湿試験機THN064PBを用い、70℃、90%RHの条件下で7日間加水分解処理した。加水分解処理後の延伸糸は、分子量低下が小さく、高い強度保持率を示した(表1)。
上記の70℃、90%RHの条件下で7日間加水分解する前の試料について、クロロホルムに浸漬することにより、芯部のPLAのみを溶解させた。さらに、残った鞘部のPTTをo−クロロフェノールで溶解させた。PLAとPTTをそれぞれキャストフィルム化し、島津製作所製分光光度計UV3100を用いて両者のUVスペクトルを測定し、TICの特性ピーク(フェニル基の吸収約260nm)を観測したところ、鞘部のPTTにTICが顕著に含まれることが確認できた。
また、加水分解前の試料と、加水分解後の試料それぞれについて、以下の方法でPLAの分子量を測定した。結果を表に示す。
試料をクロロホルムに浸漬させ、PLA部のみを溶解させたクロロホルム溶液を測定溶液とする。これをゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
(実施例2)
実施例1で作成した筒編み地を、高圧染色試験機を用い、末端封鎖剤として平均粒径20μmに調整したN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドを3%owf、染料としてDenapla Black GS(ナガセカラーケミカル(株)製ポリ乳酸繊維用染料) 4.5%owf使用し、浴比1:30とした処理液中に浸し、UR・MINI−COLOR(赤外線ミニカラー(テクサム技研製))を用い、110℃、30分の条件で処理液を循環させながら加工を行った。
この後、水洗し、風乾させた。処理した筒編み地を(株)東洋製作所製恒温恒湿試験機THN064PBを用い、70℃、90%RHの条件下で7日間加水分解処理した。加水分解処理後の延伸糸は分子量低下が小さく、高い強度保持率を示した(表1)。
上記の70℃、90%RHの条件下で7日間加水分解する前の試料をクロロホルムに浸漬することにより、芯部のPLAのみを溶解させた。さらに、残った鞘部のPTTをo−クロロフェノールで溶解させた。PLAとPTTをそれぞれキャストフィルム化し、島津製作所製分光光度計UV3100を用いて両者のUVスペクトルを測定し、TICの特性ピーク(フェニル基の吸収約260nm)を観測したところ、鞘部のPTTにTICが顕著に含まれることが確認できた。
(実施例3)
実施例1で作成した筒編み地を、高圧染色試験機を用い、末端封鎖剤として平均粒径20μmに調整したN,N´−ジジイソプロピルカルボジイミドエマルジョンを固形分3%owf、染料としてDenapla Black GS(ナガセカラーケミカル(株)製ポリ乳酸繊維用染料) 4.5%owf使用し、浴比1:30とした処理液中にポリ乳酸織物を浸し、UR・MINI−COLOR(赤外線ミニカラー(テクサム技研製))を用い、110℃、30分の条件で処理液を循環させながら加工を行った。この後、水洗し、風乾させた。処理した筒編み地を(株)東洋製作所製恒温恒湿試験機THN064PBを用い、70℃、90%RHの条件下で7日間加水分解処理した。加水分解処理後の後の延伸糸は分子量低下が小さく、高い強度保持率を示した(表1)。
(比較例1)
実施例1で使用した筒編み地を染料としてDenapla Black GS(ナガセカラーケミカル(株)製ポリ乳酸繊維用染料) 4.5%owf使用し、浴比1:30とした処理液中にポリ乳酸織物を浸し、UR・MINI−COLOR(赤外線ミニカラー(テクサム技研製))を用い、110℃、30分の条件で処理液を循環させながら加工を行った。この後、水洗し、風乾させた。
(株)東洋製作所製恒温恒湿試験機THN064PBを用い、70℃、90%RHの条件下で7日間加水分解処理した。加水分解処理後の延伸糸は分子量低下が大きく、強度保持率も小さく、加水分解が進行していることが分かる(表1)。
Figure 2010203022

Claims (10)

  1. 芯部Aを形成する熱可塑性樹脂が脂肪族ポリエステルであり、鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂が芳香族ポリエステルである芯鞘複合繊維であって、繊維内部に吸尽した末端封鎖剤によって、ポリエステル分子鎖の末端カルボキシル基の一部が封鎖されていることを特徴とする芯鞘複合ポリエステル系繊維。
  2. 該鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂が融点200℃以上の結晶性ポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
  3. 該末端封鎖剤がカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物およびエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
  4. 該繊維の外層から内層に向けて、末端封鎖剤濃度が小さくなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
  5. 該繊維の鞘部Bに含まれる末端封鎖剤量(N1)と、芯部Aに含まれる末端封鎖剤量(N2)において、N1に含まれる末端封鎖剤濃度がN2に含まれる末端封鎖剤濃度よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
  6. 該芯部Aを形成する脂肪族ポリエステルが融点150℃以上のポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
  7. 該鞘部Bを形成する結晶性ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートから選択される熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維を用いたことを特徴とする繊維構造物。
  9. 芯部を形成する熱可塑性樹脂が脂肪族ポリエステルであり、鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂が芳香族ポリエステルである芯鞘複合繊維を、カルボキシル末端基と反応する末端封鎖剤を含有する処理液に投入し、該処理液を循環させながら浴中加工した後、脱水、乾燥することを特徴とする芯鞘複合ポリエステル系繊維の製造方法。
  10. 該鞘部Bを形成する熱可塑性樹脂が融点200℃以上の結晶性芳香族ポリエステルである芯鞘複合繊維であることを特徴とする請求項9記載の芯鞘複合ポリエステル系繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2012081596A1 (ja) * 2010-12-16 2012-06-21 東レ株式会社 ポリエステル系繊維構造物の加工剤およびそれを用いたポリエステル系繊維構造物の製造方法
JP2013096021A (ja) * 2011-10-28 2013-05-20 Toray Ind Inc 難燃加工剤および難燃性脂肪族ポリエステル繊維構造物の製造方法
KR101463126B1 (ko) * 2014-04-14 2014-11-21 한국생산기술연구원 적외선 차폐섬유, 그의 제조방법 및 그를 이용한 용도

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