JP2010202980A - 焼結金属部品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大きな焼結密度及び機械的強度を、気孔孔径及び形態とは無関係に有する歯車及び同様な製品を製造するための簡単でコスト的に効果的な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、緻密化された表面及び少なくとも7.35、好ましくは少なくとも7.45g/cmの芯密度を有する焼結部品で、然も、その芯構造が、ダイ壁潤滑を適用することなく、少なくとも7.35g/cm、好ましくは少なくとも7.45g/cmまで1回プレスし、粗い鉄又は鉄基粉末粒子を有する鉄基粉末混合物を1回焼結することにより得られる気孔マトリックスにより区別される焼結金属部品及びそのような金属部品を製造する方法に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、粉体金属部品に関する。特に、本発明は、緻密化表面を有し、力を必要とする用途に適した焼結金属部品に関する。本発明は、それらの金属部品を製造する方法も包含する。
構造部品を製造するために粉末冶金法を用いることには、完全稠密鋼(full dense steel)を整合させる慣用的方法と比較して、幾つかの利点が存在する。例えば、エネルギー消費が遥かに少なく、材料の利用性が遥かに高い。粉末冶金経路に都合のよい別の重要な因子は、旋盤加工、粉砕、穿孔、或いは研磨のようなコストのかかる成形を行うことなく、焼結工程直後に正確な形又は正確に近い形を有する部品を製造することができることである。しかし、通常完全稠密鋼材料は、PM部品と比較して優れた機械的性質を有する。従って、完全稠密鋼の密度値にできるだけ近い値に到達させるため、PM部品の密度を増大する努力が払われてきた。
高密度粉体金属部品を利用した将来性のある一つの分野は、自動車工業である。この分野で特に重要なものは、動力伝達用途、例えば、歯車のような一層力を必要とする用途における粉体金属部品の利用である。粉末金属処理により形成される歯車についての問題は、粉体金属歯車が、棒原材料又は鍛造品により機械加工された歯車と比較して、その歯車の歯の根元領域の曲げ疲労強度が低く、歯の側面の接触疲労強度が低いことである。これらの問題は、表面緻密化として一般に知られている方法により歯の根元及び側面領域の表面の塑性変形により減少させるか、又は無くすことさえできる。これらの力を必要とする用途で用いることができる製品は、例えば、米国特許第5,711,187号、第5,540,883号、第5,552,109号、第5,729,822号、及び第6,171,546号明細書に記載されている。
米国特許第5,711,187号明細書(1990)は、特に表面硬度の程度に関係し、それは、高荷重用途で用いるための充分な摩耗抵抗を有する歯車を製造するために必要である。この特許によれば、表面硬度又は緻密化度は、少なくとも380μで、1,000μまでの深さで完全理論密度の90〜100%の範囲内になっているべきである。製造方法に関して特別に詳細な点は記載されていないが、混合粉末が好ましいことが述べられている。なぜなら、それらは一層圧縮し易い利点を有し、成形(compaction)段階で一層大きな密度に到達させることができるからである。更に、その混合粉末は、鉄の外に、黒鉛を0.2重量%、モリブデン、クロム、及びマンガンをそれぞれ0.5重量%含むべきであることが記述されている。
米国特許第5,711,187号明細書に記載されているのと同様な方法が、米国特許第5,540,883号明細書(1994)に記載されている。米国特許第5,540,883号明細書によれば、炭素及びフェロ合金及び潤滑剤を、圧縮可能な元素状鉄粉末と混合し、その混合物をプレスして粉体金属素材を形成し、その素材を還元雰囲気中で高温焼結し、その粉体金属素材を圧縮し、ベアリング表面を有する緻密化層を形成し、次にその緻密化層を熱処理することにより粉体金属素材からベアリング表面を製造している。焼結粉体金属物品は、重量%で0.5〜2.0%のクロム、0〜1.0%のモリブデン、0.1〜0.6%の炭素、及び残余の鉄及び微量の不純物の組成を持つべきである。成形圧力に関しては広い範囲が言及されている。例えば、成形は約390〜770MPa(25〜50ton/inch)の圧力で行うことができることが述べられている。
米国特許第5,552,109号明細書(1995)は、大きな密度を有する焼結物品を形成する方法に関する。この特許は、特に結合用棒を製造することに関連している。米国特許第5,711,187号明細書の場合と同じように、米国特許第5,552,109号明細書には製造方法に関する特別な詳細な点は記載されていないが、粉末は予め合金化された鉄基粉末であり、成形は一つの工程で行われるべきであり、成形圧力は、6.8〜7.1g/cmの圧粉体密度まで390〜770MPa(25〜50ton/inch)の間で変動し、焼結は高温、特に1270〜1350℃で行われるべきであることが記述されている。7.4g/cmより大きな密度を有する焼結生成物が得られ、従って、大きな焼結密度は、高温焼結の結果であることが明らかである。
米国特許第5,729,822号明細書(1996)には、少なくとも7.3g/cmの芯密度及び硬化浸炭表面を有する粉体金属歯車が記載されている。推奨されている粉末は、米国特許第5,711,187号及び第5,540,883号明細書に記載されているものと同じであり、即ち、炭素、フェロ合金、及び潤滑剤と、圧縮可能な元素状鉄粉末とを混合することにより得られた混合物である。大きな焼結芯密度を得るために、その特許は、温間プレス;二重プレス、二重焼結;米国特許第5,754,937号明細書に記載されているような高密度形成;粉末成形中に混合潤滑剤を用いる代わりに、ダイ壁潤滑の使用;及び焼結後の回転形成;に言及している。典型的には、約620MPa(40ton/inch)の成形圧力が用いられている。
焼結PM鋼の表面緻密化は、例えば、技術論文シリーズ(Technical Paper Series)820234〔ミシガン州デトロイトの国際評議会及び展示会(International Congress & Exposition)、1982年2月、第22頁〜第26頁〕に記載されている。この論文には、焼結歯車の表面転造(surface rolling)の研究が報告されている。その研究ではFe−Cu−C及びNi−Mo合金材料が用いられていた。その論文は、焼結部品の表面を6.6及び7.1g/cmの密度で転造する基本的研究及び焼結歯車へのそれを適用した結果を明らかにしている。その基本的研究には、異なった直径のロールを使用した表面転造が含まれており、小さな直径のロールを用い、通過1回毎の圧減を小さくし、全圧減を大きくすることにより強度について最良の結果が達成されている。一例として、Fe−Cu−C材料については、30mm直径のロールを用い、1.1mmの深さまで理論密度の90%の緻密化が達成されている。同じレベルの緻密化が、7.5mm直径のロールでは約0.65mmの深さまで達成された。しかし、小さな直径のロールでは、表面でほぼ完全密度まで緻密化を増大することができたのに対し、大きな直径のロールでは、表面で約96%までの密度増大であった。表面転造法を、焼結油ポンプ歯車及び焼結クランクシャフト歯車に適用した。「粉末冶金の最近の発展」(Modern Developments in Powder Metallurgy)第16巻、第33頁〜第48頁(1984年)〔1984年6月17〜22日、カナダ、トロントでの国際PM会議から〕の文献で、著者は、ショット・ピーニング、炭窒化、及びそれらの組合せが焼結Fe+1.5%Cu及びFe+2%Cu+2.5%Ni合金の耐久性限界に与える影響を研究している。これらの合金について報告されている密度は7.1及び7.4g/cmであった。この表面転造法の理論的評価及び表面転造部品の曲げ疲労試験の両方が、「粉末冶金の展望」(Horizon of Powder Metallurgy)第1部、第403頁〜第406頁、1986年予稿集〔1986年6月7〜11日、デュッセルドルフ、粉末冶金国際会議及び展示会(International Powder Metallurgy Conference and Exhibition)の文献で公表されている。
従来法によれば、粉末冶金部品で大きな焼結密度を達成するために多くの異なった方法が示唆されてきている。しかし、示唆されている方法は、全てコストを増加する工程を含んでいる。例えば、温間圧縮及びダイ壁潤滑は、大きな圧粉体密度を得易くする。二重プレス及び二重焼結は大きな焼結密度及び収縮を与える結果になる。なぜなら、高温焼結の結果は、大きな焼結密度を与える結果にもなるからである。
更に、歯車のような高荷重用途では、充分な疲労特性を達成するために気孔孔径及び気孔形態に関することを考慮に入れて特別な注意を払わななければならない。従って、大きな焼結密度及び機械的強度を、気孔孔径及び形態とは無関係に有する歯車及び同様な製品を製造するための簡単でコスト的に効果的な方法が魅力的であり、本発明の主たる目的である。
簡単に述べると、動力伝達用途のような一層力を要する用途での粉体金属部品、例えば、歯車を、鉄又は鉄基粉末を、700MPaより大きな圧力で一軸成形にかけて7.35g/cmより高い密度にし、得られた圧粉体生成物を焼結し、その焼結した生成物を緻密化工程にかけることにより得ることができることが今度判明した。本発明による金属部品の芯の特徴は、比較的大きな気孔により区別される気孔構造にある。
具体的に、本発明は、緻密化された表面及び少なくとも7.35、好ましくは少なくとも7.45g/cmの芯密度を有する焼結部品で、然も、その芯構造が、ダイ壁潤滑を適用することなく、少なくとも7.35g/cm、好ましくは少なくとも7.45g/cmまで1回プレスし、粗い鉄又は鉄基粉末粒子を有する鉄基粉末混合物を1回焼結することにより得られる気孔マトリックスにより区別される焼結金属部品及びそのような金属部品を製造する方法に関する。気孔構造は、気孔孔径に関連した気孔領域分布を与えるASTM E1245による画像分析を用いる評価で測定された。
上記密度レベルは、純粋又は低合金化鉄粉末に基づく製品に関する。
図1は、例1に従い、混合物1A及び1Bから製造した試料の表面緻密化処理前及び後の曲げ疲労強度を示すグラフである。 図2は、混合物1Aから製造した表面緻密化試料の断面の光学顕微鏡写真である。 図3は、混合物1Bから製造した表面緻密化試料の断面の光学顕微鏡写真である。 図4は、例2に従って混合物2C及び2Dから製造した試料の表面緻密化処理前及び後の曲げ疲労強度を示すグラフである。 図5は、混合物2Cから製造した表面緻密化試料の断面の光学顕微鏡写真である。 図6は、混合物2Dから製造した表面緻密化試料の断面の光学顕微鏡写真である。
本発明の詳細な記述
粉末の種類
成形過程のための出発材料として用いることができる適切な金属粉末は、鉄のような金属から調製された粉末である。最終的焼結生成物の性質を修正するため、炭素、クロム、マンガン、モリブデン、銅、ニッケル、燐、硫黄等のような合金用元素を粒子として、予め合金化して、又は拡散合金化して添加することができる。鉄基粉末は、実質的に純粋な鉄粉末、予め合金化した鉄基粒子、拡散合金化鉄基鉄粒子、及び鉄粒子又は鉄基粒子と合金用元素との混合物からなる群から選択することができる。粒子の形に関しては、粒子は水噴霧により得られるような不規則な形を有するのが好ましい。不規則な形をした粒子を有するスポンジ状鉄粉末も重要になることがある。
大きな力を要する用途のためのPM部品に関しては、合金用元素Mo及びCrの一種類以上を5%までのような低い量を含有する予め合金化した水噴霧粉末を用いて特に有望な結果が得られている。そのような粉末の例は、スウェーデンのヘガネス

からのアスタロイ(Astaloy)Mo(1.5%Mo)及びアスタロイ85Mo(0.85%Mo)のほか、アスタロイCrM(3Cr、0.5Mo)及びアスタロイCrL(1.5Cr、0.2Mo)の化学組成に相当する化学組成を有する粉末である。
本発明の重要な特徴は、用いられる粉末が粗い粒子であるということ、即ち、粉末は本質的に微細な粒子を含まないということである。用語「本質的に微細な粒子を含まない」とは、SS−EN24497に記載されている方法により測定して、45μmより小さい粒径を有する粉末粒子が、約10%より少なく、好ましくは5%より少ないことを意味するものとする。平均粒径は、典型的には75〜300μmである。212μmより大きい粒子の量は、典型的には20%より多い。最大粒径は約2mmになることがある。
PM工業内で通常用いられる鉄基粒子の粒径は、30〜100μmの領域内に平均粒子直径を有するガウス分布曲線に従って分布しており、それら粒子の約10〜30%が45μmより小さい。従って、本発明により用いられる粉末は、通常用いられるものとは逸脱した粒径分布を有する。これらの粉末は、粉末の一層微細な部分を除去するか、又は希望の粒径分布を有する粉末を製造することにより得ることができる。
このように、上で言及した粉末について、アスタロイ85Moの化学組成に相当する化学組成を有する粉末についての適切な粒径分布は、45μmより小さい粒子が、多くても5%になる分布であり、平均粒子直径は、典型的には106〜300μmである。アスタロイCrLに相当する化学組成を有する粉末についての対応する値は、45μmより小さいものが5%より少なく、平均粒子直径が典型的には、106〜212μmであるのが適切である。
本発明に従い、満足すべき機械的焼結特性を有する焼結金属部品を得るためには、成形すべき粉末混合物に黒鉛を添加することが必要であろう。例えば、成形すべき全混合物の0.1〜1、好ましくは0.2〜1.0、一層好ましくは0.2〜0.7、最も好ましくは0.2〜0.5重量%の量の黒鉛を、成形前に添加してもよいであろう。しかし、或る用途では、黒鉛の添加は不要である。
鉄基粉末は、それをダイへ移す前に潤滑剤と一緒にしてもよい(内部潤滑)。潤滑剤は、成形又はプレス工程中の金属粉末粒子間の摩擦及び粒子とダイとの間の摩擦を最小にするために添加する。適当な潤滑剤の例は、例えば、ステアレート、ワックス、脂肪酸及びそれらの誘導体、オリゴマー、重合体、及び潤滑効果を有する他の有機物質である。潤滑剤は粒子の形で添加してもよいが、粒子に結合及び/又は被覆されてもよい。
WO 2004/037467に記載されている型のシラン化合物の潤滑性被覆を粉末混合物に含有させるのが好ましい。特に、シラン化合物は、アルキルアルコキシ又はポリエーテルアルコキシシランでもよく、この場合、アルキルアルコキシシランのアルキル基及びポリエーテルアルコキシシランのポリエーテル鎖は、8〜30個の炭素原子を含み、アルコキシ基は、1〜3個の炭素原子を含む。そのような化合物の例は、オクチル−トリ−メトキシシラン、ヘキサデシル−トリ−メトキシシラン、及び10個のエチレンエーテル基を有するポリエチレンエーテル−トリメトキシシランである。
本発明により鉄基粉末に添加される潤滑剤の量は、混合物の0.05〜0.6重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の間で変化させることができる。
場合による添加剤硬質相として、結合剤、機械加工性改良剤、及び流動性改良剤を添加してもよい。
成形
少量(0.6重量%未満)の潤滑剤と混合した慣用的に用いられている微細粒子含有粉末を用いた高圧、即ち、600MPaより高い圧力での慣用的成形は、ダイから成形体を放出させるのに必要な大きな力、付随するダイの大きな摩耗、及び部品の表面の輝きが少なくなるか又は劣化する傾向をもつ事実により、一般に不適切であると考えられている。本発明による粉末を用いることにより、高圧で放出力が減少し、許容可能な、或いは完全になることさえある表面を有する部品を、ダイ壁潤滑を用いなくても得ることができることが全く思いがけず判明した。
成形は標準的装置を用いて行うことができ、そのことは、この新規な方法を高価な投資をせずに実施することができることを意味する。成形は、周囲又は上昇させた温度で1回の工程で一軸的に行われる。成形圧力は、好ましくは約700MPaより大きく、一層好ましくは約800MPaより大きく、最も好ましくは900MPaより大きく、1000MPaにさえなることがある。本発明による利点を得るためには、好ましくは成形は7.45g/cmより大きい密度まで行うべきである。
焼結
どのような慣用的焼結炉を用いてもよく、焼結時間は約15〜60分の範囲にすることができる。焼結炉の雰囲気は、内部生成ガス雰囲気(endogas atmosphere)でもよく、水素と窒素との混合物でもよく、或いは真空でもよい。焼結温度は1100〜1350℃の範囲にすることができる。約1250℃より高い焼結温度を用いて、最良の結果が得られている。二重プレス及び二重焼結を含む方法と比較して、本発明による方法は、一つのプレス工程と一つの焼結工程を省略し、それでも7.64g/cmより大きな焼結密度を得ることができる利点を有する。
構造
高密度圧粉体及び焼結金属部品の芯の顕著な特徴は、大きな気孔が存在することである。例えば、一例として、本発明による焼結金属部品の芯の断面では、気孔領域の少なくとも約50%が、少なくとも100μmの気孔面積を有する気孔からなるのに対し、対応する通常の粉末(即ち、同じ密度に到達させるために二重プレス及び二重焼結をしなければならない通常の量の微細粒子を含有する粉末)から製造された芯の断面では、気孔領域の少なくとも約50%が、約65μmの気孔面積を有する気孔からなる。
表面緻密化
表面の緻密化は、径方向、又は軸方向の転造、ショット・ピーニング、サイジング(sizing)等により行うことができる。好ましい方法は、径方向の転造である。なぜなら、この方法は、大きな緻密化深さと組合せて短いサイクル時間を与えるからである。粉体金属部品は、緻密化深さが増大すると共に、一層よい機械的性質を得るであろう。緻密化深さは、好ましくは少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.2mm、最も好ましくは少なくとも0.3mmである。
これに関連して、焼結した部品の中に大きな気孔が存在することは欠陥であると通常見なされ、それら気孔を一層小さく丸くするために種々の対策が取られていることを思い起こすべきである。しかし、驚いたことに本発明により、比較的多量の一層大きな気孔によるマイナスの効果を、表面緻密化処理により完全に解消できることが見出された。即ち、芯の中に大きな気孔を含む焼結試料の曲げ疲労強度に対する表面緻密化の影響を、小さな気孔を含む試料に対する効果と比較すると、上で論じた粒径分布を有する金属粉末から試料を製造した場合、表面緻密化処理により曲げ疲労強度が遥かに高い程度まで増大されることが判明した。表面緻密化処理後、これらの粉末から製造された試料の曲げ疲労強度は、驚いたことに、通常の粒径分布を有する粉末から製造した(同じ化学組成及び同じ焼結密度レベルが与えられた)表面緻密化試料のレベルと同じレベルに到達する。従って、1回プレス、1回焼結処理で大きな焼結密度を達成することができるので、二重プレス・二重焼結、温間成形のようなコストのかかる処理は、例えば歯車を製造する場合、本発明による方法を用いることにより回避することができる。
本発明を、次の実施例により更に例示するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
次の鉄基粉末を用いた。即ち、
粉末A;
粉末Aは、アスタロイ85Mo、0.80〜0.95%のMo含有量、多くても0.02%の炭素含有量、及び多くても0.20%の酸素含有量を有する予め合金化した噴霧鉄基粉末である。
粉末Aの粒径分布は、粉末冶金で通常用いられている粉末の粒径分布と同様である;即ち250μmより大きいものは約0%、150〜250μmのものは約15〜25%、45μmより小さいものは約15〜30%である。
粉末B;
粉末Bは、粉末Aと同じ化学組成を有するが、下の表による一層粗い粒径分布を有する。
粒径(μm) 重量%
>500 0
425−500 1.9
300−425 20.6
212−300 27.2
150−212 20.2
106−150 13.8
75−106 6.2
45−75 5.9
<45 4.2
粉末C;
粉末Cは、アスタロイCrL、1.35〜1.65%のCr含有量、0.17〜0.27%のMo含有量、多くても0.010%の炭素含有量、及び多くても0.25%の酸素含有量を有する予め合金化した噴霧Mo−、Cr−鉄基粉末である。
粉末Cの粒径分布は、粉末冶金で通常用いられている粉末の粒径分布と同様である;250μmより大きいものは約0%、150〜212μmのものは約15〜25%、45μmより小さいものは約10〜25%。
粉末D;
粉末Dは、粉末Cと同じ化学組成を有するが、下の表による一層粗い粒径分布を有する; 粒径(μm) 重量%
>500 0
425−500 0.2
300−425 7.4
212−300 21.9
150−212 25.1
106−150 23.4
75−106 11.2
45−75 7.1
<45 3.7
例1
二つの混合物、即ち、混合物1A及び混合物1Bを、成形前に完全に混合することにより調製した。
混合物1Aは、粉末Aに、0.2重量%の黒鉛及び0.8重量%のHワックスを添加したものに基づいていた。
混合物1Bは、粉末Bに、0.2重量%の黒鉛、及び0.2重量%のヘキサデシルトリメトキシシランを添加したものに基づいていた。
ISO 3928によるFS−強度試験棒を成形した。
混合物1Aに基づく試験棒は、7.1g/cmの圧粉体密度(green density)まで成形し、窒素90%及び水素10%の雰囲気中で780℃で30分間予め焼結した。焼結後、1100MPaの圧力で第二の成形にかけ、最後に窒素90%及び水素10%の雰囲気中で1280℃で30分間焼結した。焼結密度を測定し、7.61g/cmであった。
混合物1Bから調製した試料を、1100MPaで1回成形処理で成形し、次に窒素90%及び水素10%の雰囲気中で1280℃で30分間焼結した。焼結密度は7.67g/cmであった。
結果を下の表1に要約する。
得られた焼結体の数の半分を、0.4mmの直径を有する鋼球を用いて6バール空気圧でのショット・ピーニングによる表面緻密化処理にかけた。
表面緻密化した試料と、表面緻密化処理にかけていない試料との両方を0.8%の炭素ポテンシャルで920℃で75分間浸炭し、次に200℃で120分間焼き戻し操作にかけた。
試料の全てについて曲げ疲労限界(BFL)を決定した。
図1は、表面緻密化試料と、表面緻密化にかけていない試料との両方についての曲げ疲労限界を示している。
図1から、一層粗い粉末を用いて製造した試料の表面緻密化が、慣用的粒径分布を有する粉末を用いて製造した試料の表面緻密化により得られたBFLの増大と比較して、遥かに大きなBFL増大に寄与していることを結論付けることができる。
図2は、混合物1Aから調製した表面緻密化試料の断面を示す光学顕微鏡写真であり、図3は、混合物1Bから調製した表面緻密化試料の同様な顕微鏡写真である。
試料1Aから製造された表面緻密化試料の断面のASTM E1245による画像分析は、全断面気孔領域の約50%は、65μm以上の表面積を有する気孔からなっていることを示しているのに対し、混合物1Bから製造された表面緻密化試料の同じ測定は、全断面積の約50%が200μm以上の表面積を有する気孔からなっていることを示している。
例2
二つの混合物、混合物2C及び混合物2Dを、成形前に完全に混合することにより調製した。
混合物2Cは、粉末Cに、0.7重量%のニッケル粉末、0.2重量%の黒鉛、及び0.8重量%のHワックスを添加したものに基づいていた。
混合物2Dは、粉末Dに、0.7%のニッケル粉末、0.2%の黒鉛、及び0.2%のヘキサデシルトリメトキシシランを添加したものに基づいていた。
ISO 3928によるFS−強度試験棒を製造した。
混合物2Cに基づく試験棒は、7.1g/cmの圧粉体密度まで成形し、窒素90%及び水素10%の雰囲気中で780℃で30分間予め焼結した。焼結後、1100MPaの圧力で第二の成形にかけ、最後に窒素90%及び水素10%の雰囲気中で1280℃で30分間焼結した。焼結密度を測定し、7.63g/cmであった。
混合物2Dから製造した試料棒を、1100MPaで1回成形処理で成形し、次に窒素90%及び水素10%の雰囲気中で1280℃で30分間焼結した。焼結密度を測定し、7.64g/cmであった。
結果を下の表3に要約する。
得られた焼結物体の数の半分を、0.4mmの直径を有する鋼球を用いて6バール空気圧でのショット・ピーニングによる表面緻密化処理にかけた。
表面緻密化した試料と、表面緻密化処理にかけていない試料との両方を、0.8%の炭素ポテンシャルで920℃で75分間浸炭し、次に200℃で120分間焼き戻し操作にかけた。
試料の全てについて曲げ疲労限界(BFL)を決定した。
図5は、表面緻密化試料と、表面緻密化にかけていない試料との両方についての曲げ疲労限界を示している。
図5から、一層粗い粉末を用いて製造した試料の表面緻密化が、慣用的粒径分布を有する粉末を用いて製造した試料の表面緻密化により得られたBFLの増大と比較して、遥かに大きなBFL増大に寄与していることを結論付けることができる。
図6は、混合物2Cから製造した表面緻密化試料の断面を示す光学顕微鏡写真であり、図7は、混合物2Dから製造した表面緻密化試料の同様な顕微鏡写真である。
試料2Cから製造された表面緻密化試料の断面のASTM E1245による画像分析は、全断面気孔領域の約50%が、50μm以上の表面積を有する気孔からなっていることを示しているのに対し、混合物2Dから製造された表面緻密化試料の同じ測定は、全断面積の約50%が110μm以上の表面積を有する気孔からなっていることを示している。

Claims (18)

  1. 緻密化表面、少なくとも7.35g/cmの焼結密度を有し、粗い鉄又は鉄基粉末及び任意の添加剤の混合物を、少なくとも7.35g/cmへ1回プレスし、そして1回焼結することにより得られた気孔構造により区別される芯構造を有する焼結金属部品。
  2. 圧粉体及び焼結密度が、少なくとも7.45、好ましくは少なくとも7.5g/cmである、請求項1に記載の金属部品。
  3. 金属部品の芯が気孔構造を有し、然も、断面中の気孔領域の少なくとも50%が、少なくとも100μmの気孔面積を有する気孔からなる、請求項1又は2に記載の金属部品。
  4. 緻密化表面を有する粉体金属部品を製造する方法において、
    − 粗い粒子を有する鉄又は鉄基粉末を、少なくとも700MPaの成形圧力で1回成形工程で7.35g/cmより大きい密度まで一軸的に成形する工程;
    − 前記部品を、少なくとも1100℃の温度で1回の工程で少なくとも7.35g/cmの密度へ焼結する工程;及び
    − 前記部品を表面緻密化処理にかける工程;
    を含む金属部品製造方法。
  5. 粉末が、5重量%までの量で合金用添加剤を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 合金用添加剤を、黒鉛、クロム、モリブデン、マンガン、ニッケル、及び銅からなる群から選択された少なくとも一種類の元素からなる群から選択する、請求項5に記載の方法。
  7. 粉末が潤滑剤を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 潤滑剤が、アルキルアルコキシ又はポリエーテルアルコキシシランからなる群から選択された有機シランであり、然も、前記アルキルアルコキシシランのアルキル基及び前記ポリエーテルアルコキシシランのポリエーテル鎖が、8〜30個の炭素原子を含み、アルコキシ基が、1〜3個の炭素原子を含む、請求項7に記載の方法。
  9. 有機シランを、オクチル−トリ−メトキシシラン、ヘキサデシル−トリ−メトキシシラン、及び10個のエチレンエーテル基を有するポリエチレンエーテル−トリメトキシシランからなる群から選択する、請求項8に記載の方法。
  10. 鉄基粉末が、予め合金化された水噴霧粉末である、請求項4〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 鉄基粉末が、45μmより小さい粒子が多くても10%、好ましくは多くても5%であるような粒径を有する、請求項4〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 成形を、少なくとも800MPa、一層好ましくは少なくとも900MPa、最も好ましくは少なくとも1000MPaの圧力で行う、請求項4〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 焼結を、少なくとも1200℃、好ましくは少なくとも1250℃の温度で行う、請求項4〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 成形部品を、15〜60分の時間焼結する、請求項4〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 成形部品を、内部生成ガス雰囲気、水素と窒素との混合物、又は真空中で焼結する、請求項4〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 表面緻密化化を転造により行う、請求項4〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 表面緻密化部品を、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.2mm、最も好ましくは少なくとも0.3mmの深さまで緻密化する、請求項4〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 製造された粉体金属部品が、歯車、ベアリング、ロール、スプロケット、シャフトである、請求項4〜17のいずれか1項に記載の方法。
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