JP2010202569A - 抗アレルギー及び抗炎症用組成物 - Google Patents

抗アレルギー及び抗炎症用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】
抗アレルギー作用及び抗炎症に優れ、かつ副作用がなく人体に緩和な物質を見出し、その医薬、化粧料、あるいは食品としての利用を提供すること。
【解決手段】
キノア抽出物又はヴォイ抽出物を有効成分とするヒスタミン遊離抑制剤(TNF-α産生抑制剤)、及びこれらを含有する抗炎症あるいは抗アレルギーのための組成物(医薬、化粧料、及び食品)を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、キノア抽出物又はヴォイ抽出物を有効成分とする抗炎症あるいは抗アレルギー用組成物に関する。より詳しくは、キノア抽出物又はヴォイ抽出物のヒスタミン遊離抑制作用及び抗TNF-α産生抑制作用に基づく、炎症あるいはアレルギーの予防又は治療ための組成物に関する。
キノア(Chenopodium quinoa)はアカザ科アカザ属の一年草で、南アメリカのアンデス山脈に沿ったエクアドル、ペルー、ボリビアからチリ北部に至る、2,500〜4,000mの比較的降雨の少ない荒れた土地で生育する。古くはインカ帝国の人々の間で主食として広く供されていた。近年では栄養価の高さや栄養バランスのよさから、健康志向に合わせて栽培が拡大してきている。キノアはグルテンを含まず、小麦アレルギー有するひとも摂取できるため、アレルギー代替食品としても用いられている(非特許文献1)。また、その安全性の高さから、食品の粘稠性を高めるために配合されたり(特許文献1)、生薬として化粧品に配合されたている(特許文献2)。最近では、過敏反応を起こすことなく殺菌性、抗真菌性作用を有することも報告されている(特許文献3)。
キノアに関する研究報告は少なく、そのほとんどがキノア種子に関するものである。今のところキノアの葉に関する生理活性の研究報告はされていない。キノアの外皮及び種子可食部中にはサポニンが多く含まれており、コレステロール低下作用があることなどが報告されている。
ヴォイ(Eugenia operculata)は北ベトナムの農村地帯に多くみられる常緑樹であり、中国やラオス、タイ、インドなどにもみられるフトモモ科の植物である。ヴォイは約15mの高さの木で、この木にある蕾や葉を乾燥後炒り、緑茶のような飲料として使用されている。ベトナムでは下痢止めなどの伝統的医療にも用いられ、ヴォイ茶とも呼ばれている(非特許文献2)。ヴォイ茶に関する研究報告も少なく、血糖値上昇抑制に関する報告はあるもの、他の生理活性に関する研究報告はない。最近、ヴォイの蕾のエッセンシャルオイルが、LPSで刺激したRAW 264.7細胞におけるTNF-αやIL-βの増加や、ホルボールエステルで誘発したマウスの耳介浮腫を抑制するという報告がなされた(非特許文献3)。しかしヴォイ茶のような水性抽出物や、経口摂取については同様の報告はない。
特開2000−32951号 特開2003−95967号 特開2008−19264号 小西洋太郎ら:特集 アマランスとキノア,食の科学 No.253 p17〜58,光琳,1993.3 ギュエン・ヴァン・チュエンら:ベトナム産Nu Voiよる血糖値上昇抑制効果,New Food Industry 2008 No.3 p16〜19,食品資材研究会,2008.3 Merr and Perry, Food Chem. Toxicol. 2009 Feb;47(2):449-53. Anti-inflammatory effects of essential oil isolated from the buds of Cleistocalyx operculatus (Roxb.).
今日、環境条件の悪化や生活様式の変化、社会生活の複雑化にともなうストレスの増加等により、花粉症や食物アレルギーなどの免疫性疾患が子供から成人に及ぶまでの広い年代層でその増加し、現代病のひとつとして注目されている。また、同様にクローン病やリューマチなどの炎症性免疫性疾患に悩む人は多い。
本発明の課題は、抗アレルギー作用及び抗炎症に優れ、かつ副作用がなく人体に緩和な物質を見出し、その医薬、化粧料、あるいは食品としての利用を提供することにある。
発明者らは、抗アレルギー作用及び抗炎症に優れ、かつ副作用がなく人体や緩和である物質を、天然物である植物からスクリーニングすることを試みた。その結果、キノア、ヴォイの抽出物が安全性が高く、ヒスタミン遊離抑制作用及びTNF-α産生抑制効果を有することを確認した。
すなわち、本発明は、キノア(Chenopodium quinoa)抽出物、又はヴォイ(Eugenia operculata)抽出物を有効成分とする、ヒスタミン遊離抑制剤を提供する。
前記ヒスタミン遊離抑制剤において、用いられる植物体の部位は特に限定されないが、一例として、キノア抽出物については、キノアの葉又は種子を、ヴォイ抽出物についてはヴォイの葉又は花(蕾)を挙げることができる。
抽出溶媒としては、たとえば、水、有機溶媒、又はそれらの混合物を挙げることができる。なかでも、水、温水、エタノール、ヘキサンあるいは、これらを混合した溶媒が好ましく、水(熱水)がとくに好ましい。
本発明のヒスタミン遊離抑制剤は、TNF-α産生抑制作用も有する。
本発明はまた、上記ヒスタミン遊離抑制剤を含む、抗アレルギーあるいは抗炎症用組成物を提供する。
本発明の抗アレルギーあるいは抗炎症用組成物が対象とするアレルギー性疾患としては、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、花粉症等を、また炎症性疾患としては、クローン病、大腸炎、喘息、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、乾癬、ループス、皮膚炎等を挙げることができる。
本発明の抗アレルギーあるいは抗炎症用組成物の使用方法は特に限定されないが、経口、経管投与により使用されることが望ましい。
本発明のヒスタミン遊離抑制剤は、アレルギーをはじめとする各種炎症状態の治療及び予防に有用である。有効成分であるキノアやヴォイ抽出物は、古くから食品として用いられてきたものであり、アレルギー反応による疾患や、クローン病などの炎症性疾患に対し、安全に使用することが可能である。
本発明のヒスタミン遊離抑制剤を配合した組成物は、アレルギーあるいは炎症の予防あるいは治療のための医薬、化粧料、食品(機能性食品)として利用することができる。
図1は、細胞培養と試料印加の概要を示す。 図2は、各試料添加時のヒスタミン遊離濃度を示す(平均±標準偏差, a,b,c: p<0.05, n=3)。 図3は、各試料添加時のTNF-α産生量を示す(平均±標準偏差, a,b,c: p<0.05, n=6)。
1. キノア及びヴォイ抽出物
本発明は、キノア抽出物又はヴォイ抽出物を有効成分とするヒスタミン遊離抑制剤、ならびにこれらを含有する抗炎症あるいは抗アレルギー用組成物に関する。
1.1 キノア抽出物
本発明で用いられる「キノア(Chenopodium quinoa)」は、アカザ科アカザ属の一年草で、南アメリカのアンデス山脈に沿ったエクアドル、ペルー、ボリビアからチリ北部に至る、2,500〜4,000mの比較的降雨の少ない荒れた土地で生育する。古くから、キノアの種子は脱穀して食用に供されて来たが、栄養価が非常に高く、アミノ酸のバランスが優れていることより、最近は健康食品としても注目されている。
キノアは、タンパク質の含有率が他の穀物より高く、グルテンを含まないため、小麦アレルギーのような対グリアジンアレルギーを持つ人でも摂取できる。また、アミノ酸は、リシン、メチオニン、イソロイシンなどの必須アミノ酸を多く含み、その量は白米と同じかそれよりも多い。キノアの脂質含量はあまり高くはなく(乾燥品で8%程度)、その大部分はリノレン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸である。また、サポニンを多く含み、コレステロール低下作用を有することが知られている。
本発明で用いられる「キノア抽出物」は、キノア植物体を粉砕圧搾したもの、あるいは粉砕後、適当な溶媒で抽出したもの、あるいはそれらの乾燥粉体を意味する。植物体の用いられる部位は特に限定されず、種子又はその穀部、花、茎、葉、枝、全草等を用いることができる。本発明では、一例として、その葉と種子(穀部)の抽出物の効果を、後述する実施例に記載する。
溶媒抽出する場合、用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール或いは含水低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール或いは含水多価アルコール、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒、あるいはこれらの混合液を用いることができる。好ましくは、水、熱水やエタノール、ヘキサン等の有機溶媒の溶媒を1種又は2種以上使用する。
抽出時間は、用いる部位や溶媒によって異なり、葉であれば通常水を溶媒として用いて3分〜5時間、好ましくは5分〜2時間程度、穀部であれば通常10%エタノール水溶液を溶媒として用いて、0.5〜24時間、好ましくは2〜24時間程度である。
抽出温度(抽出溶媒の温度)は、通常4℃〜100℃、好ましくは15℃〜80℃程度である。
抽出液は、遠心分離により不溶物を除去し、濃縮液としてそのまま使用するか、あるいは凍結乾燥して粉末状態で使用する。必要に応じて、抽出液は、遠心分離ののち適当な手段で精製して用いてもよい。精製手段としては、イオン交換カラム、活性炭、ゲル濾過など、当該分野で公知の手段を用いることができる。
1.2 ヴォイ抽出物
ヴォイ(学名:Eugenia operculata、科学名:Cleistocalyx operculatus)は、北ベトナムの農村地帯に多くみられるフトモモ科の常緑樹で、中国やラオス、タイ、インドなどにも分布する。ヴォイの蕾や葉を乾燥させたものは、ベトナム等で“ヴォイ茶”と呼ばれる緑茶のような飲料として使用されている。ヴォイ茶は、下痢止めとして伝統的医療に用いられており、最近では、血糖値上昇抑制作用を有するとの報告もある(前掲)。
本発明で用いられる「ヴォイ抽出物」は、ヴォイ植物体を粉砕圧搾したもの、あるいは粉砕後、適当な溶媒で抽出したもの、あるいはそれらの乾燥粉体を意味する。植物体の用いられる部位は特に限定されず、種子、花、茎、葉、枝、全草等を用いることができる。本発明では、その葉の抽出物を後述する実施例に記載する。
溶媒抽出する場合、用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール或いは含水低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール或いは含水多価アルコール、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒、あるいはこれらの混合液を用いることができる。好ましくは、水、熱水、エタノールやヘキサン等の有機溶媒及びこれらの溶媒を1種又は2種以上使用する。
抽出時間は、用いる部位や溶媒によって異なり、葉であれば通常水やエタノール水溶液を溶媒として用いて3分〜5時間、好ましくは5分〜2時間程度、花(蕾)であれば通常水やエタノール水溶液を溶媒として用いて3分〜5時間、好ましくは5分〜2時間程度、である。
抽出温度(抽出溶媒の温度)は、通常4℃〜100℃、好ましくは15℃〜85℃程度である。
キノア抽出物と同様に、その抽出液は、遠心分離により不溶物を除去し、濃縮液としてそのまま使用するか、あるいは凍結乾燥して粉末状態で使用する。必要に応じて、抽出液は、遠心分離ののち適当な手段で精製して用いてもよい。精製手段としては、イオン交換カラム、活性炭、ゲル濾過など、当該分野で公知の手段を用いることができる。
2. キノア及びヴォイ抽出物の作用
発明者らは、キノア抽出物及びヴォイ抽出物が、ヒスタミン遊離抑制作用及びTNA-α産生抑制作用を有することを初めて見出した。
キノアがグルテンを含まず、小麦アレルギー等の過敏反応を起こすことのない安全な素材であることは知られているが、ヒスタミン遊離抑制作用やTNA-α産生抑制作用を有し、積極的にアレルギ性疾患や炎症性疾患を予防あるいは治療しうることは未だ知られていない。
また前述したように、ヴォイの蕾のエッセンシャルオイルが、LPSで刺激したRAW 264.7細胞におけるTNF-αやIL-βの増加や、ホルボールエステルで誘発したマウスの耳介浮腫を抑制することが今年2月に報告された(Merr and Perry, Food Chem. Toxicol. 2009 Feb;47(2):449-53. Anti-inflammatory effects of essential oil isolated from the buds of Cleistocalyx operculatus (Roxb.))。しかし、ヴォイ茶のような水性抽出物や、経口摂取でのTNA-α産生抑制作用についてはこれまで報告がない。
2.1 ヒスタミン遊離抑制作用
ヒスタミン遊離抑制作用とは
本来、生体には、体内に侵入した異物(細菌、花粉、ダニ等:抗原)を排除する機構を備えている。すなわち、体内に侵入した異物を抗原といい、これを排除しようとする一連の反応のことを免疫反応という。この中で、本来ならば生体にとって何らかの影響がない食品のようなものまでも抗原として認識し、それを排除しようとするための免疫反応が生体にとって傷害的に作用したものを「アレルギー」と呼ぶ。抗原として認識されるものには、細菌、カビ、ウイルス、花粉、化学物質、食品など様々なものがある。このうち、アレルギーを引き起こす抗原のことをアレルゲンという。
抗原が体内に侵入すると抗原提示細胞(マクロファージ)がこれを取り込む。そして適当な分子サイズのペプチドに分解し、抗原提示細胞の表面に分解し、B細胞に作用する。サイトカインを受け取ったB細胞はプラズマ細胞へと変化し、抗体を大量に産生、放出する。放出された抗体は抗原と特異的に反応し、抗原を排除する。
抗体は免疫グロブリンと呼ばれ、現在ではIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類のたんぱく質が確認されている。この免疫グロブリンのうちIgEはマスト細胞や好塩基球に付着し、ある種の寄生虫に対する防御効果を持っている。生体内に入った花粉や食品などを寄生虫の抗原として誤読し、IgEが大量に産生されることがアレルギーを発生させる原因といれている。また、食生活の欧米化による食肉の増加、大気汚染の進行などもアレルギーを発生させる一因といわれている。
アレルゲンが体内に侵入するとIgE抗体が産生される。このIgE抗体に対するレセプターは気管や粘膜などに多く分布しているマスト細胞の表面に存在する。マスト細胞は哺乳類の粘膜下組織や結合組織などに存在する造血幹細胞由来の細胞で、肥満細胞ともいう。マスト細胞はランゲルハンス細胞とともに炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ。
このマスト細胞とIgE抗体の複合体にアレルゲンが結合するとマスト細胞が刺激され、マスト細胞内ではアラキドン酸カスケードが進行する。アラキドン酸カスケードにより産生された局所ホルモンにより生体では気管支炎や粘液過剰分泌、血管透過性亢進などの生理的な変化を引き起こす。また、アラキドン酸カスケードの進行と並行して、マスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が遊離される。
ヒスタミンは、血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などの薬理作用があり、アレルギー反応や炎症の発現に介在物質として働く。遊離されたヒスタミンは、ヒスタミン1型受容体(H1受容体)と結合して、アレルギー疾患の原因となる。すなわち、気道などの平滑筋に作用し、急激に収縮させ咳やくしゃみを起こし、また血管を拡張させることで皮膚にじんましんを生じる。
本発明にかかる「ヒスタミン遊離抑制」作用とは、上記したマスト細胞等からヒスタミン遊離を抑制する作用を意味し、上記したように、アレルギー反応の抑制につながることはすでにこの分野で広く知られている。
ヒスタミン遊離抑制作用の評価
「ヒスタミン遊離抑制」作用は、培養細胞を用いてin vitroで容易に評価することができる。たとえば、ヒトやマウスより単離されたマスト細胞、あるいは適当な細胞株(たとえば、マウス由来マスト細胞株RBL-2H3細胞等)を、被験物質を添加した培地で培養し、培地中のヒスタミン量を対照(ポジティブコントロール、ネガティブコントロール(非添加))と比較して、そのヒスタミン遊離抑制作用を評価する。なお、被験物質によるヒスタミン遊離抑制作用は、必要であれば、適当なヒスタミン遊離刺激剤によりあらかじめ細胞刺激してから評価してもよい。あるいは、被験物質の存在/非存在下におけるヒスタミン量から、ヒスタミン遊離抑制率=1−(被験物質存在下でのヒスタミン量/被験物質非存在下でのヒスタミン量)を求めて評価することもできる。このとき、必要であれば、前記ヒスタミン量は、それぞれ自発遊離によるヒスタミン量の補正を行う。
培地中のヒスタミン量(濃度)は、市販のELISAキット(Oxford Biochemical Research社)や、オルトフタルアルデヒドを用いたポストラベル法により定量することができる。
2.2 TNF-α産生抑制作用
TNF-α産生抑制作用とは
マスト細胞は多くのサイトカインを放出している。サイトカインとは細胞が産生する産生するタンパク質の一種で、微量で、特異的な細胞表面レセプターに作用し、細胞の増殖、分化、機能発現を調節する。サイトカインは1つのサイトカインが複数の作用をしめす一方、複数のサイトカインが同一の作用を示すこともある。また、種々のサイトカイン間での相互依存性が認められる。サイトカインには複雑なネットワークが存在し、互いに機能を相補したり、制御したりすることによって生体の恒常性を維持している。
TNF-α(TNF-α:Tumor Necrosis Factor-alpha)は、炎症性サイトカインの一つであり、腫瘍壊死因子、すなわち腫瘍細胞を壊死させる作用のある物質として発見された。TNF-αは細胞接着分子の発現やアポトーシスの誘導、炎症メディエーターや形質細胞による抗体産生の亢進により感染防御や抗腫瘍作用に関与する。また、その過剰な発現は、クローン病やリューマチなどの炎症性疾患の発症や進展に深く関連していることが知られている。
クローン病は消化管全域に起こりうる原因不明の慢性炎症性疾患で、小腸、大腸、肛門が好発部位です。10代後半から20代前半の若年者に多く、炎症が深いため瘻孔(炎症でひっついて腸管同士や腸管と皮膚に交通ができる状態)、膿瘍(膿の塊)などを起こす場合もある。主な症状は発熱、腹痛、下痢、体重減少だが、長期の発熱、関節炎、口内炎や肛門が繰り返しひどく膿む(痔ろう)など、腹部症状以外の症状のみの場合もある。クローン病の軽減には食餌療法が有効である場合があるが、寛解になってもすぐ再燃してしまう場合がある。そのような場合には抗TNF-α剤による治療などが行われている。
本発明にかかる「TNF-α産生抑制」作用とは、マスト細胞、マクロファージ、単球、T細胞やNK細胞等によるTNF-αの産生を抑制する作用のことで、上記したように、各種炎症反応の抑制につながることはこの分野で広く知られている。
TNF-α産生抑制作用の評価
「TNF-α産生抑制」作用も、培養細胞を用いてin vitroで容易に評価することができる。たとえば、ヒトやマウスから単離されたマクロファージやマスト細胞、あるいは適当な細胞株(たとえば、マウス由来マスト細胞株RBL-2H3細胞やマクロファージ細胞株Raw264.7を用いることができる。後述する実施例においては、経口摂取モデルとして、Caco2とRBL-2H3の組合わせ培養を用いてNF-α産生抑制を評価した。この系は、腸管モデルであるCaco2細胞を通過した成分が、ヒスタミンやTNF-αを産生するRBL-2H3に影響を与えるように設計されており、経口摂取された食品成分が腸管に与える影響を評価できるようになっている。
マウスやラットなどから単離されたマクロファージ、マスト細胞など、を、被験物質を添加した培地で培養し、培地のTNF-α量を対照(ポジティブコントロール、ネガティブコントロール(非添加))と比較してそのTNF-α産生抑制作用を評価する。なお、被験物質によるヒスタミン遊離抑制作用は、必要であれば、適当なヒスタミン遊離刺激剤によりあらかじめ細胞刺激してから評価してもよい。あるいは、被験物質の存在/非存在下におけるTNF-α量から、TNF-α産生抑制率=1−(被験物質存在下でのTNF-α量/被験物質非存在下でのTNF-α量)を求めて評価することもできる。必要であれば、前記TNF-α量は、それぞれ自発産生によるTNF-α量の補正を行う。
TNF-α量は、TNF-αタンパクやそのmRNAの発現量のほか、TNF-αの生理活性を指標として評価できる。TNF-αタンパクの発現量は、抗TNF-α抗体を用いた免疫化学的方法、たとえば市販のELISAキット(株式会社JIMRO ヒトTNF-α測定キット)により定量することができる。また、TNF-αのmRNA発現量は常法にしたがいRT-PCR等により簡便に定量することができる。なお、TNF-αの塩基配列はすでに公知であり、その配列は、GenBank等の公共のデータベースにより容易に取得できる。たとえば、ヒトTNF-αの配列はNM_000594として公開されている。さらに、TNF-α活性は、アポトーシスの誘導など、その生理活性を指標として評価することができる。
2.3 製剤化
キノア抽出物及びヴォイ抽出物は、そのまま、あるいは適当な担体を加えて、所望の形態に製剤化して、ヒスタミン遊離抑制剤あるいはTNA-α産生抑制剤として利用できる。
本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤として利用する場合も同様)の形態は、液体、固形、ゲル、エマルジョンいずれでもよく、その剤型としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤等が挙げられる。
本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤として利用する場合も同様)に配合可能な担体としては、たとえば賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、緩衝剤、結合剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水等を挙げることができる。
賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。結合剤としては、プルラン、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン等を用いることができる。滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、ケイ酸マグネシウムを用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。また、必要に応じて、緩衝剤、香料等を加えてもよい。なお、製剤化のための手法は、当業者にはよく知られており、常法にしたがい容易に実施できる。
本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤として利用する場合も同様)において、有効成分であるキノア抽出物及びヴォイ抽出物の含量(乾燥粉末として)は一般に剤型によって異なるが、液体製剤の場合は約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは0.01重量%〜約3重量%であり、錠剤等固形剤の場合は0.1重量%〜約90重量%、好ましくは1重量%〜約50重量%である。
3. 抗炎症、抗アレルギー用組成物
上記したように、ヒスタミン遊離抑制作用はアレルギーの抑制につながり、TNA-α産生抑制作用は炎症の抑制につながる。したがって、本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤)を含有した組成物は、抗炎症あるいは抗アレルギー用の医薬、化粧料、食品組成物として利用できる。
「抗アレルギー作用」は、前述したヒスタミン遊離抑制作用と密接に関連しているが、市販のアレルギーモデル動物(たとえば、卵アレルギーモデル OVA-IgEマウス、卵アレルギー経口投与発症マウスであるOVA23-3マウス、化学物質アレルギーモデル TNP-IgEマウス等:いずれも日本クレアなど)を用いた試験により、in vivoでその効果を評価することができる。
たとえばOVA-IgEマウスに10%となるよう植物抽出液を混合した食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する(試験群)。また、植物抽出物を含まない通常の食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する(対照群)。その後、両群ともエバンスブルーと共にOVAを静脈注射により投与し、直腸温や血管透過性の亢進を皮膚の青色を測定し、アレルギー発症を解析する。
あるいはOVA23-3マウスの食餌に、10%となるよう植物抽出液を混合し食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する。その後、植物抽出物及び未変性卵白を20%含む抽出物未変性卵白食で28日間飼育する(試験群)。及び、植物抽出液を含まない通常の食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する。その後、未変性卵白を含む卵白食で28日間飼育する(対照群)。飼育終了後、両群の血中のIgE抗体値及び腸管組織におけるマスト細胞の浸潤性、ヒスタミン産生量を測定し、アレルギー発症の有無を解析する。
かくして、対照群に比較して、試験群でアレルギーの発症が有意に抑制されている場合、上記植物抽出液は抗アレルギー作用を有すると判定できる。
アレルギーを伴う疾患としては、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、花粉症等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
「抗炎症作用」は、前述したTNA-α産生抑制作用と密接に関連しているが、カラゲニン足蹠浮腫ラット、コラーゲン誘発関節炎ラット等のモデル動物や市販の炎症モデル動物等(たとえば、アトピー性皮膚炎モデルNCマウス等)を用いた試験により、in vivoでその効果を評価することができる。
たとえば、SD系雄性ラットに植物抽出物を10%となるよう植物抽出液を混合した食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する(試験群)。また、植物抽出液を含まない通常の食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する(対照群)。その後、両群とも1%カラゲニン溶液の0.1mLを後肢皮下に注射する。
あるいは、植物抽出物溶液をカラゲニン注射の30分前に強制経口投与した後、1%カラゲニン溶液の0.1mLを後肢皮下に注射する(試験群)。また、植物抽出物溶液の強制経口投与することなく、1%カラゲニン溶液の0.1mLを後肢皮下に注射する(対照群)。その後、両群ともカラゲニン注射の4時間後にエーテル麻酔下に放血致死させて踝より下部を切断し、浮腫部位の皮膚に切開を加え遠心後の浸出液を採取する。浸出液のIL-6、TNFα及びプロスタグランジンE2を測定し、炎症反応を解析する。
あるいは、Mycobacterium butyriumの油性懸濁液をDark Agoutiラットの右足踵及び尾部に投与することで作製できる関節リウマチの動物モデルであるアジュバント誘発関節炎(AA)ラットに、10%となるよう植物抽出液を混合した食餌を調製し、自由摂取により60日間飼育する(試験群)。また、植物抽出液を含まない通常の食餌を用いて60日間飼育する(対照群)。その後、両群とも飼育期間中定期的に両群の足浮腫の程度及び胃粘膜損傷度を測定し、炎症反応を解析する。
かくして、対照群に比較して、試験群で炎症の発症・誘発が有意に抑制されている場合、上記植物抽出液は抗炎症作用を有すると判定できる。
炎症を伴う疾患としては、前述したクローン病、大腸炎のほか、炎症、喘息、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、乾癬、ループス、皮膚炎等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
3.1 医薬組成物
本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤)を含有した医薬組成物は、上記したアレルギー性疾患あるいは炎症性疾患の予防あるいは治療のために利用できる。
医薬組成物は、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤等、目的に応じて所望の剤型とすることができる。
医薬組成物には、本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤)に加えて、製薬上許容しうる担体を配合することができる。製薬上許容しうる担体としては、たとえば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、緩衝剤、結合剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水等を配合することができる。その例は、前項に記載したとおりである。
本発明の医薬組成物の投与経路は特に限定されず、経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、腹腔内注射、経皮など)いずれを選択してもよい。なかでも、経口投与は、安全性という本発明の特徴を生かすことができ、患者の負担が小さいという点で好ましい。
医薬組成物への本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤)の配合量はその目的や剤型によって異なるが、液体製剤の場合は約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは0.01重量%〜約3重量%、とりわけ好ましくは0.1重量%〜約1重量%であり、錠剤等固形剤の場合は0.1重量%〜約90重量%、好ましくは1重量%〜約50重量%、とりわけ好ましくは3重量%〜約30重量%である。
3.2 化粧料組成物
本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤)を含有した化粧料組成物(医薬部外品を含む)は、上記したアレルギー性疾患あるいは炎症性疾患を有する患者に、予防等の目的で、好適に利用できる。
化粧料組成物の形態は特に限定されず、局所用又は全身用の皮膚用化粧品類(たとえば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック等の基礎化粧料、洗顔料や皮膚洗浄料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、除毛剤、脱毛剤、髭剃り処理料、ファンデーション、口紅、頬紅等のメークアップ化粧料、シート型化粧料等)、頭皮・頭髪に適用する薬用又は/及び化粧用の製剤類(たとえば、シャンプー剤、リンス剤、ヘアートリートメント剤、染毛料、整髪料、ヘアートニック剤、育毛・養毛料等)、浴用剤、消臭剤、防臭剤、制汗剤、衛生用品等に用いることができる。
化粧料組成物には上記した必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で通常化粧品や医薬部外品等に用いられる他の成分、たとえば油分、湿潤剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、保湿剤、アミノ酸、香料、水、アルコール、増粘剤、色剤、粉末、薬剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
化粧料組成物の剤型は任意であり、たとえば、化粧水などの可溶化系、乳液、クリームなどの乳化系、又は軟膏、分散液などの任意の剤型をとることができる。
化粧料組成物への本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤)の配合量はその目的や形態によって異なり、0.0001重量%〜約10重量%の間で適宜設定される。
3.3 食品(機能性食品)
本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤)を含有した食品は、上記したアレルギー性疾患あるいは炎症性疾患を有する患者に、予防あるいは治療等の目的で使用される機能性食品として利用できる。
食品の形態は特に限定されず、飲料、ゼリーやキャンディー等の菓子類、米飯等の栄養食品など、目的に応じて所望の形態を選択することができる。
食品には上記した必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常食品に用いられる材料、添加物(例えば賦形剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、滑沢剤、緩衝剤、香料等)を必要に応じて適宜配合することができる。
食品への本発明のヒスタミン遊離抑制剤(TNA-α産生抑制剤)の配合量はその目的や形態によって異なり、0.0001重量%〜約10重量%の間で適宜設定される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:キノア、ヴォイ抽出物のヒスタミン遊離抑制作用及びTNA-α産生抑制作用
試験の概要:
本試験においては、Caco-2細胞を腸管モデル細胞として、RBL-2H3細胞をマスト細胞のモデルとして使用した。Caco-2細胞はヒト結腸癌由来細胞で、多孔性メンブレンフィルター上に融合性単層膜を形成する。Caco-2細胞単層膜の腸管側には微細柔突起が多く小腸の刷子縁膜や密着結合の特徴に類似している。細胞は培養条件や期間によってはトランスポーターやペプチダーゼなどの代謝酵素などの小腸機能を発現することから、小腸膜モデルとして使用した。
RBL-2H3細胞はマスト細胞株で、IgE刺激によりヒスタミンを放出する機能やTNF-αや各種サイトカイン類を産生する機能を有している。
本研究ではCaco-2細胞とRBL-2H3の二重培養系を用い、試料が小腸粘膜を通過した状況をつくり出し、試料の小腸粘膜を通過した成分のみがマスト細胞へ影響を与える状態を作り出した。また、RBL-2H3細胞にDNP-specific IgEにより感作し、DNP-BSAにより刺激を加えることで実験的にアレルギー状態を作り出した。
ヒスタミン遊離量はEIA法により、TNF-αの産生はRT-PCR法により測定した。
1.試料の調製
キノアの葉を粉砕した後、葉重量の10倍量の80℃の温水を添加し、80℃で撹拌しながら1時間抽出した。抽出後、抽出液をNo.2ろ紙でろ過し、ロ液を遠心分離(10,000gx15分)して上清を取得した。取得した上清をロータリーエバポレーターにより真空濃縮後、凍結乾燥により粉末を得、キノア葉抽出物とした。
ヴォイの葉及び花を粉砕した後、葉重量の10倍量の80℃の温水を添加し、80℃で撹拌しながら1時間抽出した。抽出後、抽出液をNo.2ろ紙でろ過し、ロ液を遠心分離(10,000gx15分)して上清を取得した。取得した上清をロータリーエバポレーターにより真空濃縮後、凍結乾燥により粉末を得、ヴォイ抽出物とした。
キノアの穀部(を粉砕した後、重量の10倍量の10%エタノールを添加し、25℃で撹拌しながら20時間抽出した。その後、抽出液をNo.2ろ紙でろ過し、濾液を取得した。ロ液を遠心分離(10,000gx15分)して上清を取得した。取得した上清をロータリーエバポレーターにより真空濃縮後、凍結乾燥により粉末を得、キノア穀部抽出物とした。
ヒエの穀部(種子の外皮を取り除いた部分)を粉砕した後、重量の10倍量の10%エタノールを添加し、25℃で撹拌しながら20時間抽出した。その後、抽出液をNo.2ろ紙でろ過し、ロ液を取得した。ロ液を遠心分離(10,000gx15分)して上清を取得した。取得した上清をロータリーエバポレーターにより真空濃縮後、凍結乾燥により粉末を得、ヒエ抽出物とした。
ヴォイの葉及び花を粉砕した後、熱水により1時間抽出後、不要物を遠心分離(10,000gx15分)により取り除き、真空濃縮、凍結乾燥により粉末を得、ヴォイ抽出物とした。
2.試験方法
(1)Caco-2細胞の培養
Caco-2細胞はMEM培地に10%となるよう牛血清を添加し、37℃、5%二酸化炭素環境下で角形フラスコを用いて前培養を行った。培養後細胞を取得し、バイオコートセルカルチャーインサート(BD BioCoat社製)を用いて本培養を行った。すなわち12穴プレート用バイオコートインサートに、各インサートに4.0x105個となるよう播種し、14日間、10%牛血清添加MEM培地にて37℃、5%二酸化炭素環境下で本培養した。
(2)RBL-2H3細胞の培養
RBL-2H3細胞はMEM培地に10%となるよう牛血清を添加し、37℃、5%二酸化炭素環境下で角形フラスコを用いて前培養を行った。培養後細胞を取得し、DNP-IgEで感作後、12穴プレートに、各穴1x106個となるよう播種し、18時間、10%牛血清添加MEM培地にて、37℃、5%二酸化炭素環境下で本培養した。
(3)統計処理
平均及び標準偏差を算出すると共に、Stat view ver.5.0を使用しTukey-Kramer(有意水準5%)を用いて検定処理を行った。
(4)試料の印加
インサートで培養したCaco-2細胞及び、RBL-2H3細胞のの培地を廃棄し、PBS(リン酸緩衝液)にて洗浄した。洗浄後12穴プレートにPBSを添加した。添加後、図1に示した様に、インサートと12穴プレートをセットした。
セット後、インサートにPBSに溶解したキノア葉抽出物(10μg/ml/穴)、キノア穀部抽出物(10μg/ml/穴)、ヒエ抽出物(10μg/ml/穴)、ヴォイ抽出物(1μg/ml/穴)を添加した。同時にPBSのみを添加した対照群を用意した。各試料添加後、37℃、5%二酸化炭素環境下で1時間印加処理を行った。印加処理後、12穴プレートにDNP-BSAを添加し、1時間、37℃、5%二酸化炭素環境下で刺激処理を行った。刺激処理後、12穴プレートのPBS及びRBL-2H3細胞を取得した。
(5)ヒスタミン遊離量の測定
取得したPBSを用いて各試料のヒスタミン遊離量の測定をEIA法により行った。測定は12穴プレートより取得したPBSを適宜希釈し、HISTAMINE ENZYME IMMUNOASSAY KIT A05890-96wells(SPIbio社製)を使用して行った。
(6)TNF-α産生量の測定
取得したRBL-2H3細胞を用いてTNF-α産生量をRT-PCR法により行った。
すなわち取得したRBL-2H3細胞をPBSにより洗浄後、トリゾル(インビトロジェン社製)を0.5ml添加した。添加後クロロフォルムを0.1ml添加し混合後、遠心分離及びイソプロパノール沈殿し、エタノール洗浄によりtotalRNAを取得した。totalRNAをRNaseを含まない純水に溶解した。溶解後、ランダムプライマー法により、SuoerScripIII(インビトロジェン社製)を用いて逆転写を行い、cDNAを取得した。
取得したcDNAを用いて、TNF-αについてはCAA GGA GGA GAA GTT CCC AA(配列番号1)とCGG ACT CCG TGA TGT CTA AG(配列番号2)の2種のプライマーを用いて、94℃60秒、49℃45秒、72℃45秒、30サイクルの条件でPCRを行った。
同様にハウスキーパー遺伝子であるβ-アクチンについて、TAA CCA ACT GGG ACG ATA TG(配列番号3)とATA CAG GGA CAG CAC AGC CT(配列番号4)のプライマーを用いて、94℃60秒、45℃45秒、72℃45秒、30サイクルの条件でPCRを行った。PCR処理後、PCR産物の量を蛍光キャピラリー電気泳動(バイオアナライザー2100,アジレント社製)により測定し、β-アクチンをベースとしたTNF-α産生量を算出した。
3.結果
(1)ヒスタミン遊離抑制試験
図2に示したようにキノア葉抽出物、キノア穀部抽出物、ヴォイ抽出物は、PBSに比べ有意にヒスタミン遊離量を抑制した。また、既にヒスタミン遊離抑制作用の報告されているヒエに比べても、キノア葉抽出物のヒスタミン遊離量は有意に低値を示した。
(2)TNA-α産生抑制試験
図3に示したように、キノア葉抽出物、キノア穀部抽出物、ヴォイ抽出物はPBSに比べ、有意にTNF-α産生量が低値を示した。
4.考察
キノア葉抽出物、キノア穀部抽出物、ヴォイ抽出物はアレルギー発症の原因物質であるヒスタミンの遊離を抑制した。これにより、ピー性皮膚炎に於けるかゆみや花粉症に於ける鼻炎症状の改善及び予防等に利用することができる。
TNF-αは多くの炎症性疾患に関与するサイトカインの一つである。キノア葉抽出物、キノア穀部抽出物、ヴォイ抽出物は炎症の原因物質であるTNF-αの発現を抑制したことから、炎症性疾患の症状の改善及び予防等に利用することができる。
たとえば、炎症性疾患の一つであるクローン病の治療薬として高TNF-α抗体が開発され、高い効果を示しており、TNF-αの量がクローン病の症状の大きな原因の一つとなっている。すなわちキノア葉抽出物、キノア穀部抽出物、ヴォイ抽出物は炎症の原因物質であるTNF-αの発現量を抑制したことから、クローン病原因物質の産生を抑制することにより、クローン病の症状の改善及び予防等に利用することができる。
実施例2:抗アレルギー作用試験
(1) OVA-IgEマウスに10%となるようキノア又はヴォイ抽出物を混合した食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する(試験群)。また、キノア又はヴォイ抽出物を含まない通常の食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する(対照群)。その後両群ともエバンスブルーと共にOVAを静脈注射により投与し、直腸温や血管透過性の亢進を皮膚の青色を測定し、アレルギー発症を解析する。
(2) OVA23-3マウスの食餌に、10%となるようキノア又はヴォイ抽出物を混合し食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する。その後キノア又はヴォイ抽出物及び未変性卵白を20%含む抽出物未変性卵白食で28日間飼育する(試験群)。また、キノア又はヴォイ抽出液を含まない通常の食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する。その後未変性卵白を含む卵白食で28日間飼育する(対照群)。飼育終了後、両群の血中のIgE抗体値及び腸管組織におけるマスト細胞の浸潤性、ヒスタミン産生量を測定し、アレルギー発症の有無を解析する。
実施例3:抗炎症試験
(1)SD系雄性ラットにキノア又はヴォイ抽出物を10%となるように混合した食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する(試験群)。また、キノア又はヴォイ抽出物を含まない通常の食餌を調製し、自由摂取により14日間飼育する(対照群)。その後、両群とも1%カラゲニン溶液の0.1mLを後肢皮下に注射する。
(2)キノア又はヴォイ抽出物をカラゲニン注射の30分前に強制経口投与した後、1%カラゲニン溶液の0.1mLを後肢皮下に注射する(試験群)。また、キノア又はヴォイ抽出物の強制経口投与することなく、1%カラゲニン溶液の0.1mLを後肢皮下に注射する(対照群)。その後、両群ともカラゲニン注射の4時間後にエーテル麻酔下に放血致死させて踝より下部を切断し、浮腫部位の皮膚に切開を加え遠心後の浸出液を採取する。浸出液のIL-6、TNFα及びプロスタグランジンE2を測定し、炎症反応を解析する。
(3)Mycobacterium butyriumの油性懸濁液をDark Agoutiラットの右足踵及び尾部に投与することで作製できる関節リウマチの動物モデルであるアジュバント誘発関節炎(AA)ラットに、10%となるようキノア又はヴォイ抽出物を混合した食餌を調製し、自由摂取により60日間飼育する(試験群)。また、キノア又はヴォイ抽出物を含まない通常の食餌を用いて60日間飼育する(対照群)。その後、両群とも飼育期間中定期的に両群の足浮腫の程度及び胃粘膜損傷度を測定し、炎症反応を解析する。
本発明のTNF-α産生抑制剤やヒスタミン遊離抑制剤を配合した組成物は、抗アレルギーあるいは抗炎症用の医薬、化粧料、食品として利用することができる。
配列番号1:フォワードプライマー(TNA-α)
配列番号2:リバースプライマー(TNA-α)
配列番号3:フォワードプライマー(β-アクチン)
配列番号4:リバースプライマー(β-アクチン)

Claims (9)

  1. キノア(Chenopodium quinoa)抽出物、又はヴォイ(Eugenia operculata)抽出物を有効成分とする、ヒスタミン遊離抑制剤。
  2. キノア抽出物がキノアの葉及び/又は種子の抽出物であり、ヴォイ抽出物がヴォイの葉、茎、及び花から選ばれる1又は2以上の抽出物である、請求項1に記載のヒスタミン遊離抑制剤。
  3. キノア抽出物及びヴォイ抽出物が水、有機溶媒、又はそれらの混合物を抽出溶媒とした抽出物である、請求項1又は2に記載のヒスタミン遊離抑制剤。
  4. キノア抽出物及びヴォイ抽出物が、水、エタノール、又はヘキサンあるいはそれらの混合物を抽出溶媒とした抽出物である、請求項1又は2に記載のヒスタミン遊離抑制剤。
  5. さらに、TNF-α産生抑制作用を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒスタミン遊離抑制剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒスタミン遊離抑制剤を含む、抗アレルギーあるいは抗炎症用組成物。
  7. アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、及び花粉症から選らばれるアレルギー性疾患、あるいはクローン病、大腸炎、喘息、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、乾癬、ループス、及び皮膚炎から選ばれる炎症性疾患の予防あるいは治療に用いられる、請求項6に記載の組成物。
  8. クローン病あるいは大腸炎の予防あるいは治療に用いられる、請求項7に記載の組成物。
  9. 経口又は経管投与により使用されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の組成物。
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