JP2010202136A - 能動振動騒音制御装置 - Google Patents

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吉郎 高松
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Noriaki Fujiki
教彰 藤木
Eiji Furukawa
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Abstract

【課題】アクチュエータに飽和、異常等の不具合が発生した場合に、騒音低減制御による効果の低減を最小限に押さえることが可能な能動振動騒音制御装置を提供する。
【解決手段】車両内に生じる振動を検出する加速度センサ10と、車両内に波動を加えるアクチュエータ20と、各加速度センサ10によって検出された振動に応じて、車両内の騒音を低減するようにアクチュエータ20へ出力する制御指令値を演算する制御指令値算出部32を備える。そして、制御指令値算出部32は、アクチュエータ20に不具合が生じた場合に、アクチュエータ20に出力する制御指令値を再設定する。
【選択図】図3

Description

本発明は、車両等の構造体の内部に生じる騒音を、波動を出力することにより低減する能動振動騒音制御装置に関する。
従来より、車両の車室内において車両の走行に伴い発生する騒音を計測し、その騒音を打ち消すような音波を発生して騒音を低減する騒音制御装置や騒音制御方法が提案されている。例えば、車両の車体の振動を検出するための振動検出手段を複数設け、検出した車体の振動に基づいて車両に設置したスピーカや加振器等のアクチュエータを作動させ、車室内の騒音を低減する騒音制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、アクチュエータへの入力信号が飽和した場合に、別の制御指令値演算手段に切り替えることによりアクチュエータの飽和を回避する方法が提案されている。例えば、アクチュエータの飽和を検知した際に、予め保持しておいた複数の制御指令値演算手段を使用した場合にこのアクチュエータの飽和を回避できるか否かをシミュレーションにより検査し、飽和を回避できると判定した場合にはその制御指令値演算手段に切り替えて騒音制御を行う方法が提案されている(特許文献2参照)。
更に、アクチュエータが異常な状態になった場合(故障した場合)に、アクチュエータ数が冗長であるという仮定の下で正常なアクチュエータへの制御指令値を最適化して再設定するという方法が提案されている(特許文献3参照)。
特開平8−292771号公報 特許第2815800号明細書 特開平4−97655号公報
しかしながら、上述した特許文献1では、アクチュエータへの制御指令値が飽和した場合には、飽和した制御指令値をそのままアクチュエータが出力してしまうため、騒音低減効果が減少するという問題点がある。また、閉ループが存在する場合には、最悪の場合には発散してしまうという問題点がある。更に、アクチュエータが異常な状態になった場合にも騒音低減効果が減少するという問題点がある。ここで、飽和を回避するために、制御指令値演算手段のゲインを一律に減少させる方法が考えられるが、この方法では騒音低減効果も同程度減少してしまうという問題点がある。
特許文献2に記載の方法を用いた場合には、制御指令値演算手段を切り替えるか否かの判断をシミュレーションにより繰り返し演算するため、アクチュエータ数が増えるに連れて切り替えるべき制御指令値演算手段の探索が困難になるばかりか、切り替えたとしても最適な制御指令値演算手段が選択される保証が無いという問題点があった。
また、特許文献3に記載の方法を用いた場合には、アクチュエータの数が冗長である必要があるので、少ないアクチュエータで制御することが容易でないという問題があった。
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、アクチュエータに飽和、異常等の不具合が発生した場合に、騒音低減制御による効果の低減を最小限に押さえることが可能な能動振動騒音制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は、車両等の構造体の振動を検出する複数のセンサと、前記構造体に、波動を加える波動印加手段と、前記各センサによって検出された振動に応じて、前記構造体内部の騒音を低減するように前記波動印加手段へ出力する制御指令値を演算する制御指令値演算手段とを備える。そして、前記制御指令値演算手段は、前記波動印加手段に生じる不具合を検出または推定または予測する不具合計測手段を含み、前記不具合計測手段が前記波動印加手段に生じる不具合を検出または推定または予測した場合に、前記制御指令値演算手段より出力する制御指令値を切り替える。
本発明では、波動印加手段に飽和、或いは異常等の不具合が発生した場合に、その不具合に応じて制御指令値を再設定するので、騒音低減制御による効果の減少を最小限に抑えることができる。
本発明に係る能動振動騒音制御装置の概略を示す説明図であり(a)は車両全体、(b)はタイヤ周辺を示す。 本発明に係る能動振動騒音制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、制御指令値算出部の詳細な構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、制御装置本体による処理動作を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、騒音推定部の詳細な構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、騒音推定部による処理動作を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、演算部の詳細な構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、演算部の処理動作を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、飽和時のフィルタ係数再設定ルーチンの処理動作を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、異常時のフィルタ係数再設定ルーチンの処理動作を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、騒音を低減しない場合、アクチュエータの出力に制限がない場合、アクチュエータの出力が飽和した場合における騒音レベルの変化を示す特性図である。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、騒音を低減しない場合、アクチュエータの出力に制限がない場合、アクチュエータに不具合が発生したときに制御指令値の演算を再構成する場合における騒音レベルの変化を示す特性図である。 本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、騒音を低減しない場合、アクチュエータの出力に制限がない場合、アクチュエータに不具合が発生したときに制御指令値の演算を再構成したものの制御指令値を大きく低下させた場合における騒音レベルの変化を示す特性図である。 本発明の第2実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、制御指令値算出部の詳細な構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、演算部の詳細な構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、フィルタ係数を再計算する構成を示すブロック線図である。 本発明の第3実施形態に係る能動振動騒音制御装置の、フィルタ係数を再計算する構成を示すブロック線図である。
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。車両(構造体)の外部から侵入する車室内騒音の原因は、代表的なものとして、エンジンの振動に起因するエンジン騒音、走行時に路面の凹凸の影響がタイヤから進入することに起因する騒音(以下、ロードノイズと称する)、走行時に空気の気流によって発生する風切音等が存在する。本実施形態では、上記の各騒音の中から主としてロードノイズの低減について説明する。
図1は、車両が走行している場合の、路面の凹凸の影響による車体の振動、及びロードノイズの主な伝播経路を模式的に示す説明図であり、図1(a)はフロアパネル110と4個のタイヤ200を示した説明図、図1(b)はタイヤ200の側面図である。
図1(a)に示すように、4個のタイヤ200から車体に進入したロードノイズの主成分となる振動は、まず図1(b)に示す車軸120及びサスペンション130の取り付け部(図示省略)からメンバ140と称する剛性の高い梁状の部材に進入する。その後、メンバ140によって囲まれた比較的剛性の低い板状の部材であるフロアパネル110に振動が伝播し、このフロアパネル110が振動する。
更に、フロアパネル110の振動により車室内の空気振動が引き起こされ、車室内に共振現象が発生するので、車室内の所定の空間100a(運転席)、100b(助手席)、100c(右後席)、100d(左後席)(以下、総称して「制御空間100」という)においてロードノイズが聞こえる。フロアパネル110の他にルーフパネルや窓ガラス(いずれも図示省略)が振動することによっても騒音が発生するが、主にサスペンション130の取り付け部から進入するロードノイズの大部分は、フロアパネル110の振動に起因することが判っている。このため、フロアパネル110の振動に起因するロードノイズを打ち消すように騒音低減制御を行えば、ロードノイズをほぼ低減できると言える。
本実施形態では、フロアパネル110にセンサ(後述する加速度センサ10)を配置して、そのセンサの出力信号に基づいて車室内騒音を推定し、制御指令値生成手段により制御指令値を生成し、この制御指令値に基づいてフロアパネル110に設けたアクチュエータ(波動印加手段)にて制御音を発生させ、この制御音を車室内に入力する手法を採用する。
ここで、本発明ではセンサとしてマイクロフォンを使用せず、加速度センサ10の信号から制御空間100の騒音を推定する場合について説明する。フロアパネル110に設置した加速度センサ10を用いるため、制御対象としてフロアパネル110に起因するロードノイズを扱う。ここで、加速度センサ10の設置場所としてフロアパネル110を選択した理由は、車室内騒音との間のコヒーレンス(後述するCxy(ω))が高いからである。なお、フロアパネル110を発生源とする騒音が制御対象としてすべて含まれるため、エンジン騒音の一部や車体底部を流れる空気が発生する風切音についても同様に扱うことができる。
また、本発明では、フロアパネル110の振動による騒音低減の範疇にとどまらず、例えば、ダッシュパネルやフロントグラス、ルーフパネル(いずれも図示省略)といった同様のメカニズムで発生する車室内の騒音発生源に対しても、本発明を当該部位に対して用いるようにすれば、同様の効果を達成することができる。
図2は、本実施形態に係る騒音制御装置のブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る騒音制御装置は、フロアパネル110の振動を測定するセンサである加速度センサ10a,10b,10c,10d(以下、区別する必要がない場合には「加速度センサ10」と示す)と、フロアパネル110に振動を与える波動印加手段としてのアクチュエータ20a,20b(以下、区別する必要がない場合には「アクチュエータ20」と示す)と、加速度センサ10で得られた信号に基づいて車室内騒音を低減する制御指令値を算出し、アクチュエータ20の制御を行う制御装置本体30を備えている。
ここで、図2に示すアクチュエータ20の一例として、いわゆるピエゾアクチュエータ(Piezo-electric actuator)を用いることができる。なお、アクチュエータ20の設置場所は、フロアパネル110に限定されるものではなく、ダッシュパネルやフロントグラス、ループパネル等に設置することも可能である。更に、車室内に設置したスピーカをアクチュエータとして用いることも可能である。
制御装置本体30の入力信号は加速度センサ10の出力であり、出力信号はアクチュエータ20への制御指令値である。
制御装置本体30は、信号増幅用の増幅部31(31a〜31f)と、車室内騒音を低減する制御指令値を算出して出力する制御指令値算出部(制御指令値演算手段)32を備える。
増幅部31a〜31dは、加速度センサ10がいわゆるチャージタイプである場合には、電荷と電圧との間の変換の機能も担う。
図3は、制御指令値算出部32の内部構成を示すブロック図である。制御指令値算出部32は、A/D変換部33(33a〜33f)と、騒音推定部34と、演算部38と、D/A変換部39とを備えている。
A/D変換部33(33a〜33f)は、各加速度センサ10(10a〜10d)で検出され、増幅部31で増幅されたアナログの加速度信号α1、α2、α3、α4をディジタル信号に変換し、更に、D/A変換部39より出力されるアナログの制御指令値u1、u2をディジタル信号に変換する。
D/A変換部39は、演算部38により算出されるディジタルの制御指令値をアナログ信号に変換する。
制御指令値算出部32は、各加速度センサ10(10a〜10d)より出力される各加速度信号に基づき、制御空間100における騒音を低減するための制御指令値を算出してアクチュエータ20に出力する。
アクチュエータ20は、フロアパネル110に振動を与えるものであり、制御空間100での騒音を低減するために十分な数のアクチュエータ20(本実施形態では、20a,20bの2個)が、車体のフロアパネル110の適切な位置に貼り付けられている。
加速度センサ10の数は、一般に振動源の数より多いことが必要とされ、本実施形態では、4個の加速度センサ10(10a〜10d)が用いられる。具体的な加速度センサ10の個数、及び設置位置は、下記(1)式にて示される各加速度センサ10と、制御空間100における騒音の音圧との間のコヒーレンスCxy(ω)が十分高くなるように(例えば0.9以上)決定される。
Figure 2010202136
但し、Pxy(ω)は加速度と音圧の間のクロスパワースペクトラムを示し、Pxx(ω)及びPyy(ω)は、それぞれ加速度と音圧のオートパワースペクトラムを表している。また、PはPのエルミート転置行列を示す。
本実施形態では、加速度センサ10を、10a、10b、10c、10dの4個とし、アクチュエータ20を、アクチュエータ20a、20bの2個とした。
図3に示す騒音推定部34では、加速度信号α1〜α4と、1ステップ前の処理サイクルにおける制御指令値u1,u2を用いて、制御空間100における騒音の推定値SPL_est(以下、「推定騒音信号」という)を算出する。
図3の演算部38は、いかなるフィードバック制御を用いて設計してもよいが、例えばH∞制御として設計する場合は以下の手順に従えばよい。
システムのモデルは、アクチュエータ20の入力電圧から騒音までの伝達関数Gp(s)とする。ここで、「s」はラプラス変換の変数である。
この伝達関数Gp(s)に対して、文献「D. McFarlane and K. Glover. "A Loop Shaping Design Procedure Using H∞ Synthesis"、 IEEE Transactions on Automatic Control. vol.37、 no.6、 June 1992、 pp.759-769」に記載の設計手法を用いることで、騒音を低減する制御部を設計することができる。
この手法では、下記(2)式で示されるの評価式を満足するようなコントローラC∞(s)を設計する。
Figure 2010202136
ここで、(2)式に示すGs(s)は、下記(3)式に示すように、重み関数Wc1(s)とWc2(s)により重み付けされた伝達関数である。
Figure 2010202136
また、(2)式に示す
Figure 2010202136
は、下記(4)式に示す伝達関数Gs(s)の正規化規約分解によって求められる。
Figure 2010202136
最終的に、コントローラC(s)は、上記(2)式に示した評価式を満足するコントローラC∞(s)を用いて、次の(5)式で算出することができる。
Figure 2010202136
また、定数「ε」はコントローラの安定余裕を決定するパラメータであり、通常0.2〜0.3が推奨される。CPUに実装する場合には、例えばコントローラC(s)に双一次変換を施すことで該コントローラC(s)を離散化し、IIRフィルタとして実装すればよい。
本実施形態では、この制御指令値算出部32をいわゆるCPU上に実装する。なお、本実施形態ではA/D変換部33e及び33fを介して制御指令値u1、u2を騒音推定部34に入力しているが、演算部38の出力信号を直接騒音推定部34にフィードバックしてもよい。その場合は、制御指令値u1、u2を1制御ステップ分遅らせて入力する。
以下、図4に示すフローチャートを参照して、制御装置本体30による処理手順を説明する。
ステップS101では、A/D変換部33によりA/D変換された加速度信号α1〜α4が騒音推定部34に入力される。この後に、フローはステップS102へ移行する。
ステップS102では、A/D変換部33によりA/D変換された1ステップ前の制御指令値u1、u2が騒音推定部34に入力される。この後に、フローはステップS103へ移行する。
ステップS103では、騒音推定部34により騒音推定処理を実行し、S101及びS102の処理で取得した信号から制御空間100での推定騒音信号SPL_estを算出する。この後に、フローはステップS104へ移行する。
ステップS104では、S103で算出された推定騒音信号SPL_estを用いて、演算部38により制御空間100での騒音を低減する制御指令値u1,u2を算出する。この後に、フローはステップS105へ移行する。
ステップS105では、S104の処理で取得した制御指令値u1、u2をD/A変換部39に出力し、アクチュエータ20への出力信号が出力される。
図5は、図3に示した騒音推定部34の詳細な構成を示すブロック図である。図5に示すように騒音推定部34は、加速度α(α1〜α4)から制御空間100での騒音レベルまでの伝達関数50(図5中ではGαと記載)と、制御指令値(u1,u2)から加速度センサ出力値までの伝達関数70(図5中ではGpαと記載)と、制御指令値(u1,u2)から制御空間100での騒音レベルまでの伝達関数60(図5中ではGpと記載)と、加算器36と、を備えている。
伝達関数70、及びこれに接続される減算器80は、それぞれアクチュエータ20にホワイトノイズ、或いはインパルス信号を入力し、そのとき得られた制御空間100での音圧信号と入力信号を用いてシステム同定を行うことにより得ることができる。その方法は、例えば、制御系設計ツールMATLABのツールボックスである「Structural Dynamical Toolbox」や、文献「足立、『制御のためのシステム同定』、東京電機大学出版局、1996」に記載の部分空間同定法を用いればよい。また、伝達関数50は、走行時の加速度信号と騒音レベルを計測し、上記の方法を用いることで取得することができる。
以下、図6に示すフローチャートを参照して、騒音推定部34による処理手順を説明する。
ステップS201では、制御指令値u1,u2と、加速度センサ10a〜10dの加速度信号α1〜α4がA/D変換部33a〜33dでA/D変換され、騒音推定部34に入力される。この後に、フローはステップS202へ移行する。
ステップS202では、制御指令値u1,u2に伝達関数70(Gpα)を乗じる。ここで、伝達関数70は、離散時間システムとして同定した上で逆Z変換をすることでIIRフィルタとして予め設定しておく。この後に、フローはステップS203へ移行する。
ステップS203では、S201の処理で入力された加速度信号α1〜α4から、S202の処理で出力された信号を減算する。この後に、フローはステップS204へ移行する。
ステップS204では、S203の処理の出力信号に伝達関数50(Gα)を乗じる。この後に、フローはステップS205へ移行する。
ステップS205では、制御指令値u1,u2に伝達関数60(Gp)を乗じる。この後に、フローはステップS206へ移行する。
ステップS206では、S204の処理、及びS205の処理で取得した信号全ての和を取り、得られた信号(推定騒音信号SPL_est)を出力する。
以上に示した処理によって、車室内における騒音を高い精度で推定し、車室内の騒音を低減する騒音制御を効果的に行うことができる。
ここで、アクチュエータ20の出力信号が飽和もしくは異常な状態になった場合には、車室内の騒音を低減するための適切な波動を発生することができなくなり、騒音制御を効果的に行うことが難しくなる。更には、飽和もしくは異常化の状況によっては、アクチュエータ20から不適切な波動が発生されてしまい、騒音が増えてしまうことが考えられる。また、制御系における閉ループ系が発散してしまうことが考えられる。
なお、上記の「アクチュエータの異常化」とは、電気的な故障のみならず、ピエゾアクチュエータの剥がれやパネルの変形も含めた、ピエゾアクチュエータが所望の動作をできなくなった状態を示す。
本実施形態は、アクチュエータ20の出力信号の飽和(不具合)を検出した場合(或いは、飽和を推定、予測した場合)にはその飽和を回避し、更に飽和していないアクチュエータ20への制御指令値をオンラインで再設定することにより、制御効果の低下を最小限にとどめながらアクチュエータ20の飽和を解消する。また、本実施形態では、アクチュエータ20の異常(不具合)を検出して(或いは、推定、予測して)正常なアクチュエータ20への制御指令値を再設定することで、アクチュエータ20が異常な状態になった場合にも制御効果の低下を最小限にとどめる。
図7は、図3に示した演算部38の詳細な構成を示すブロック図である。図7に示すように、演算部38は、制御指令値生成フィルタ42と、一定ゲイン43と、駆動部不具合検出部(不具合計測手段)35と、フィルタ再計算部41、及び再計算終了判定部44を備えている。
制御指令値生成フィルタ42は、入力された推定騒音信号SPL_estを用いて制御空間100での騒音が小さくなるようアクチュエータ20への制御指令値を計算する。制御指令値生成フィルタ42の設計手法は前述の(2)〜(5)式に示した手法を用いればよい。
一定ゲイン43は、通常時は1を保持しており、アクチュエータ20の飽和を検知した場合には、制御指令値生成フィルタ42のフィルタ係数の再計算が終了するまでの間、ゲインを下げてアクチュエータ20の飽和を防止する。即ち、制御指令値を再設定する際に、この再設定に必要とする演算時間が所定時間を超える場合には、一旦全てのアクチュエータ20の出力値が飽和レベル以下となるようにゲインを低下させる。
また、アクチュエータ20の異常を検出した場合には、ゲインを0にすることにより、アクチュエータ20の異常による閉ループの発散や騒音の悪化を防ぐ。即ち、制御指令値を再設定する際に、この再設定に必要とする演算時間が所定時間を超える場合には、一旦全ての前記波動印加手段に対する制御を中止する。
駆動部不具合検出部35は、制御指令値と予め規定されているアクチュエータ20への最大信号レベルとを比較することにより、アクチュエータ20の飽和を検出する。或いは、車速がある一定以上になった場合にはロードノイズ成分は必然的に大きくなるため、車速情報からアクチュエータ20の飽和を推定してもよい。更に、車両の加速度情報に基づき、将来において車速がある一定以上の値になることを予測することで、アクチュエータ20の飽和を予測してもよい。更に、駆動部不具合検出部35ではアクチュエータ20の飽和のみならず異常検出も行う。
フィルタ再計算部41は、上述した(5)式における重み関数Wc1、或いはWc2を変更し、(5)式を用いてアクチュエータ20の飽和を回避するためのフィルタ係数を再設定する。また、アクチュエータ20が異常な状態になった場合には、アクチュエータ20への正常な制御指令値を再計算する。
以下、図8に示すフローチャートを参照して、演算部38の処理手順を説明する。まず、ステップS401では、推定騒音信号SPL_estが演算部38に入力される。この後、フローはステップS402へ移行する。
ステップS402では、制御指令値生成フィルタ42によって推定騒音信号SPL_estがフィルタリングされ、制御指令値が計算される。この後、フローはステップS403へ移行する。
ステップS403では、駆動部不具合検出部35によって制御指令値が飽和するか否かを判定する。このとき、予め備えてアクチュエータ20の飽和レベルとフィルタリングされた制御指令値を比較することで、アクチュエータ20の飽和を検出することができる。アクチュエータ20の飽和を検出した場合にはステップS405に進み、検出しなかった場合には、ステップS404へ移行する。
ステップS404では、駆動部不具合検出部35によってアクチュエータ20の異常を検出する。この際、アクチュエータ20の出力信号が所定の閾値よりも常にレベルが低いときに異常とみなす等の方法を用いて異常を検知することができる。また、アクチュエータ20の出力信号と制御指令値とを比較し、その差分がある一定値以内に収まっていない場合には、アクチュエータ20の貼付状態等の異常が発生しているものと判断することも可能である。アクチュエータ20の異常を検出した場合は、ステップS406に進み、異常を検出しなかった場合にはこの計算ルーチンを終了する。なお、アクチュエータ20の異常を検知するのみならず、異常を推定、予測するようにしても良い。
ステップS405では、アクチュエータ20の飽和時のフィルタ係数再設定ルーチンを実行し、アクチュエータ20の飽和を回避するためのフィルタ係数を算出する。この処理については、図9を参照して後述する。この後、フローはステップS407に進む。
ステップS406では、アクチュエータ20の異常時のフィルタ係数再設定ルーチンを実行し、正常なアクチュエータ20のみで制御をするためのフィルタ係数を導出する。この処理については、図10を参照して後述する。この後、フローはステップS407に進む。
ステップS407では、ステップS405、或いはステップS406の処理で再計算されたフィルタ係数をIIRフィルタの形式に変換し、制御指令値生成フィルタ42の係数をこの値に更新する。この後、フローはステップS408に進む。
ステップS408では、一定ゲイン43の値を1に戻す。この処理は、後述する図9のS504の処理、或いは図10のS603の処理で一定ゲインの値が変更されている場合に、その値を1に戻す。
以上のステップを実行することにより、ピエゾアクチュエータへの制御指令値が計算される。
図9は、図8のステップS405に示した「飽和時のフィルタ係数再設定ルーチン」の処理手順を示すフローチャートであり、以下この処理について説明する。
図9に示すステップS501では、アクチュエータ20の飽和量を検出する。この後、フローはステップS502へ移行する。
ステップS502では、上述した(2)〜(5)式を用いて、制御指令値生成フィルタ42のフィルタ係数を再計算する。このとき、重み関数Wc1もしくはWc2のレベルをアクチュエータ20が飽和しない程度まで大きくとることにより、アクチュエータ20の飽和が回避される。また、このときアクチュエータ20の出力値が飽和レベルと同一か若しくは飽和レベルに近い値である方がより騒音低減効果を向上させることができる。即ち、制御指令値算出部32は、飽和したアクチュエータ20へ出力する制御指令値の最大値が飽和レベルに等しいか、或いは飽和レベルよりも若干低い値となるように制御指令値を切り替え、これにより、騒音低減効果を向上させることができる。
また、このステップS502では、制御周期内で計算が終了しない場合(制御指令値の再設定に必要とする演算時間が所定時間を超える場合)もあり得るので、その場合は引き続き計算を行い、当該制御周期における返り値は無しとすれば良い。つまり、制御指令値の再設定が終了するまでは、一旦全てのアクチュエータ20の出力値が飽和レベル以下となるように制御指令値を変更し、制御指令値の再設定が終了した後に、再設定した制御指令値に再度変更する。この後、フローはステップS503へ移行する。
ステップS503では、ステップS502の処理で行うフィルタ係数の再計算ルーチンが終了したか否かを判定する。再計算が終了していなければ、ステップS504に進み、再計算が終了した場合にはこのサブルーチンを終了する。
ステップS504では、フィルタ係数の再計算を行っている間は、一定ゲイン43の値を所定の値に保持しておく。
図10は、図8のステップS406に示した「異常時のフィルタ係数再設定ルーチン」の処理手順を示すフローチャートであり、以下この処理について説明する。
図10に示すステップS601では、正常なアクチュエータ20のみを用いて制御を行うためのフィルタ係数を再計算する。この際、図9のステップS502の処理と同様に、前述した(2)〜(5)式を用いて計算を行う。この後、フローはステップS602へ移行する。
ステップS602では、ステップS601の処理で行うフィルタ係数の再計算ルーチンが終了したか否かを判定する。再計算が終了していなければ(制御指令値の再設定に必要とする演算時間が所定時間を超える場合には)、ステップS603に進み、再計算が終了していれば、このサブルーチンを終了する。
ステップS603では一定ゲイン43の値を0に保持しておく。即ち、制御指令値を再設定する際に、この再設定に必要とする演算時間が所定時間を超える場合には、一旦全てのアクチュエータ20による制御を中止し、制御指令値の再設定が終了した後に、この再設定した制御指令値に切り替えて制御を再開する。
こうして、アクチュエータ20が飽和した場合、或いは異常な状態となった場合に、制御指令値生成フィルタ42のフィルタ係数を再計算して、アクチュエータ20の飽和を回避し、確実に騒音を低減することができる。
図11は、時間経過に対する音圧[Pa]の変化を示す特性図であり、曲線S1(実線)は騒音低減制御を行わない場合を示し、曲線S2(一点鎖線)は従来の手法を用いた場合でアクチュエータ20の出力に制限が無い場合を示し、曲線S3(点線)は従来の手法を用いた場合でアクチュエータ20の出力が飽和した場合を示している。同図から理解されるように、従来の手法では、アクチュエータ20の出力が飽和した場合には、騒音を効果的に抑制できないことが理解される。
図12は、時間経過に対する音圧[Pa]の変化を示す特性図であり、曲線S11(実線)は騒音低減制御を行わない場合を示し、曲線S12(一点鎖線)はアクチュエータ20の出力に制限が無い場合を示し、曲線S13(点線)は本実施形態の手法を採用してフィルタ係数を再計算した場合を示している。同図から理解されるように、曲線S12とS13はほぼ一致しており、本実施形態の手法を採用することにより、アクチュエータ20に飽和、異常が発生する場合であっても、アクチュエータ20の出力に制限の無い場合に得られる制御効果とほぼ同等の騒音抑制効果が得られるといえる。
図13は、時間経過に対する音圧[Pa]の変化を示す特性図であり、曲線S21(実線)は騒音低減制御を行わない場合を示し、曲線S22(一点鎖線)はアクチュエータ20の出力に制限が無い場合を示し、曲線S23(点線)は本実施形態の手法を採用してフィルタ係数を再計算し、アクチュエータ20の出力が飽和レベルを大きく下回ってしまった場合を示している。同図から理解されるように、曲線S22及びS23は上下の大きく振幅しており、アクチュエータ20の出力が飽和レベルを大きく下回った場合には騒音の抑制効果は悪化するといえる。
このようにして、本発明の第1実施形態に係る能動振動騒音制御装置では、アクチュエータ20の不具合(飽和、または異常)が発生した場合に、その不具合に応じて制御指令値算出部32(制御指令値演算手段)内に設けられる制御指令値生成フィルタのフィルタ係数を再設定し、制御指令値を再計算することで、騒音低減効果の減少を最小限に抑えることができる。即ち、制御指令値演算手段より出力する制御指令値を切り替えることにより、騒音低減制御による効果を高めることができる。
また、あるアクチュエータ20が飽和した際に、この飽和したアクチュエータ20の飽和を回避するだけではなく、その他のアクチュエータ20へ出力する制御指令値を騒音低減効果が最適になるように切り替えることで、あるアクチュエータ20で飽和が発生した場合であっても、制御指令値の切り替えを最適に行うことができる。
また、飽和したアクチュエータ20に出力する制御指令値を、飽和レベルよりも若干小さい制御指令値に抑制することにより、飽和レベルを大きく下回るまで制御指令値を抑制する場合と対比して、騒音低減制御の効果の悪化を最小限にとどめることができる。更に、アクチュエータ20が異常な状態になった場合でも、演算部38より出力する制御指令値を切り替えることで、騒音低減制御による効果の減少を最小限に抑えることができる。
また、あるアクチュエータ20が異常な状態になった場合に、他の正常なアクチュエータ20を用いて騒音低減制御を行うように演算部38より出力する制御指令値を切り替えることができるため、騒音低減制御による効果の減少を最小限に抑えることができる。
更に、演算部38より出力する制御指令値をオンラインで再計算することにより、最適な制御指令値を得ることができる。
また、演算部38による制御指令値の再計算中には、制御指令値算出部32より出力する制御指令値を抑制することにより、再計算中のアクチュエータ20の飽和を防ぐことができる。
更に、制御指令値の再計算に長時間を要する場合には、この再計算中において制御を止めることで、アクチュエータ20が異常な状態になった時における騒音低減制御による効果の悪化を防止することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、図3に示したように騒音推定部34と演算部38とを分離して構成し、それぞれについてブロック内部のアルゴリズムを設計したが、第2実施形態では騒音推定部34を演算部38に含めてしまい、騒音推定と制御指令値の演算を同時に行うようにしている。
図14は、第2実施形態に係る制御指令値算出部32の構成を示すブロック図である。なお、図14において図3と同一の符号が付された構成要素は、同一の機能を有するものである。
図14に示す演算部38では、騒音の推定、及び制御指令値の演算を同時に実行する。演算部38では、A/D変換部33で変換された加速度信号α1〜α4、及び前回出力時のピエゾ素子等のアクチュエータ20への制御指令値u1、u2を用いて、今回アクチュエータ20へ出力する制御指令値を算出する。演算部38はIIRフィルタとしてCPU上で実現することができる。
図15は、図14に示した演算部38の詳細な構成を示すブロック図である。なお、図15において、前述した図7と同一の符号を付した構成要素は、同一の機能を有するものである。図15に示すブロック70は、制御指令値から加速度信号までの伝達関数である。減算器72は、加速度センサ10で得られた加速度信号から、制御指令値が加速度センサ10の位置において生成する振動成分を減算する。減算器72の出力信号が制御指令値生成フィルタ42に入力される。
図16は、制御指令値生成フィルタ42の係数を導出するためのブロック線図である。同図に示すブロック45(図16ではCと記載)は、設計する制御指令値生成フィルタ42のフィルタ係数を示す。また、ブロック50(図16ではGαと記載)は、加速度信号α1〜α4から制御空間100での騒音レベル(SPL*;Sound Pressure Level)までの伝達関数を示す。ブロック60(図16ではGpと記載)はピエゾアクチュエータから騒音レベルまでの伝達関数を示す。ここで、図16では1つのSPL*のみを低減する構成であるが、低減するSPL*の数を増加させるためには、ブロック50及びブロック60の出力として、対応する制御空間100への信号を選べばよい。
また、ブロック40a(図16ではWc3と記載)、及び40b(図16ではWc4と記載)は設計パラメータであり、この値を増加させると対応するアクチュエータ20のゲインが減少する。
また、上記の各設計パラメータWc3、Wc4が周波数特性を有する構成としても良い。この場合はある周波数帯域においてのみゲインを下げることができる。従って、各加速度センサ10の出力信号に基づいて、車室内の制御空間100での騒音レベルの高い周波数帯域を推定し、この推定した周波数帯域での騒音低減制御の効果が向上するように、制御指令値を設定することができる。
更に、ブロック46(図16ではWc5と記載)は、設計パラメータである。このとき、各加速度信号α(α1〜α4)から騒音レベルSPL*までの伝達関数と、各加速度信号α(α1〜α4)から制御指令値u1、u2までの伝達関数のノルムを最小化するようなコントローラCを設計する。設計方法は様々な方法が考えられるが、例えば、「細江、荒木,『制御系設計―H∞制御とその応用』,朝倉書店,1994」に記載のH∞制御法やH2制御法を用いれば設計することができる。
アクチュエータ20が飽和した場合、前述した図8のフローチャートに示したアルゴリズムに従って、フィルタ係数の再設定を行う。第2実施形態の場合は、図8のS405に示した「飽和時のフィルタ係数再設定ルーチン」において、設計パラメータWc3及びWc4の値を調整することで飽和を回避する。また、図8のS406に示した「異常時のフィルタ係数再設定ルーチン」の場合は、アクチュエータ20の異常が診断された場合に、図16に示すブロック46(Wc5)の異常な状態になったアクチュエータ20に対応する値を「0」とすることで、そのアクチュエータ20を用いずにブロック45に示すフィルタ係数Cを設計する。
このようにして、第2実施形態に係る能動振動騒音制御装置では、前述した第1実施形態と同様の効果を達成することができ、更に、アクチュエータ20に飽和が発生した場合、及び異常が発生した場合に、低減する騒音レベルのうちよりレベルが高い周波数帯域を重点的に制御することにより、全周波数帯域で一様に制御をした場合と対比して、当該周波数での騒音低減制御による効果の低下を防ぐことができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。アクチュエータ20が飽和した場合に、上述した第1実施形態、及び第2実施形態に示した手法を用いて該アクチュエータ20の飽和を回避した場合に、アクチュエータ20の出力電圧を低減することになるので、制御空間100での騒音低減制御による効果は減少する場合がある。
そこで、第3実施形態では、乗員が存在する空間と存在しない空間を区別し、乗員が存在しない空間での騒音低減制御による効果を低下させ、乗員が存在する空間のみで騒音低減制御による効果を向上させることにより、アクチュエータ20が飽和した場合であっても、乗員が存在する空間での騒音低減制御による効果の低減を最小限に抑える。
前述した第1実施形態における重み関数Wc1、Wc2の設計により、演算部38の演算パラメータを設定して騒音低減制御による効果を変更できるので、例えば、後部座席となる制御空間100(100c、100d)に乗員が存在せず、前部座席となる制御空間100(運転席100a、及び助手席100b)にのみ乗員が存在する場合には、アクチュエータ20の飽和時のフィルタ再計算方法として、乗員が存在する制御空間100a、100bを重点的に制御することが考えられる。
図17は、第3実施形態に係る制御指令値生成フィルタ42を導出するためのブロック線図である。図17は、前述した図16と対比して、ブロック47(図17ではWc6と記載)に示す設計パラメータを備える点で相違している。ブロック47は、それぞれの制御空間100aから100dに対応した設計パラメータを有している。
後部座席の制御空間100(100c、100d)に乗員が存在しない場合には、設計パラメータの値を0に設定することで、制御空間100c、100dの騒音低減制御を行わず、制御空間100a、100bのみを制御する。これにより運転席100a、及び助手席100bでの騒音低減制御による効果を大きくすることが可能となる。
また、前部座席となる制御空間100(運転席100a、助手席100b)における重み関数Wc1、Wc2、Wc3、Wc4、Wc5の周波数帯域幅を広くすれば、同一の制御空間100において広い周波数帯域に亘る騒音を低減することが実現できる。更に、制御対象とする制御空間100を少なくした分、アクチュエータ20の波動出力の余裕を用いて、運転席100a及び助手席100bにおける騒音低減制御が可能となるので、より広い周波数帯域の騒音を低減し、より騒音を低減できる制御指令値生成フィルタ42を選択することが可能になる。
上記の重み関数の調整法を用いて、乗員の有無による制御指令値生成フィルタ42の重み関数調整の手法を以下に示す。
まず、各座席に対して乗員の有無を確認する。乗員の有無は赤外線カメラや座席下に設置した加速度センサ等(乗員検知手段)を用いて検出する。乗員が存在しない座席がある場合には、その座席の騒音に対する重み関数を小さくして、騒音低減制御による効果を低下させる。他方、飽和する可能性のあるアクチュエータ20に対する重み関数40a(Wc3)、及び40b(Wc4)を大きくすることで、アクチュエータ20への指令信号を抑制する。
このようにして、第3実施形態に係る能動振動騒音制御装置では、制御指令値生成フィルタ42設計の際の重み関数Wc1、Wc2、Wc3、Wc4、Wc5を適切に調整することで、乗員が存在しない座席での騒音低減制御の効果を低下させて、乗員が存在する座席での騒音低減制御による効果を向上させることができる。更に、アクチュエータ20の飽和を回避することができる。
また、アクチュエータ20に飽和が発生した場合、及び異常が発生した場合には、乗員が存在しない制御空間100での騒音低減制御を行わずに、乗員が存在する制御空間100のみにて騒音低減制御を行うことにより、乗員が存在する制御空間100での騒音低減制御による効果の低下を防ぐことができる。
以上、本発明の能動振動騒音制御装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
例えば、上述した各実施形態では、ロードノイズ低減の場合への適用例を述べたが、本発明では他の騒音に対しても適用可能である。例えば、エンジン騒音に対して用いる場合には、加速度センサをフロアパネル及びダッシュパネルに貼ることにより同様の推定を行い、騒音推定部の再構成を行うことにより、騒音を低減することができる。また、風切り音に関してはフロントピラーとルーフに加速度センサを貼り付けることで同様の推定を行い、騒音推定部の再構成を行うことにより、騒音を低減することができる。
車両内に生じる騒音を低減する上で極めて有用である。
10a〜10d 加速度センサ
20a,20b アクチュエータ
30 制御装置本体
31a〜31f 増幅部
32 制御指令値算出部
33a〜33f A/D変換部
34 騒音推定部
36 加算器
38 演算部
39 D/A変換部
40a 重み関数(Wc3)
40b 重み関数(Wc4)
41 フィルタ再計算部
42 制御指令値生成フィルタ
43 一定ゲイン
44 再計算終了判定部
45 フィルタ係数(C)のブロック
46 重み関数(Wc5)
47 伝達関数(Wc6)
50 伝達関数(Gα)
60 伝達関数(Gp)
70 伝達関数(Gpα)
72 減算器
80 減算器
101 フロアパネル
120 車軸
130 サスペンション
140 メンバ
200 タイヤ

Claims (13)

  1. 構造体に配置され、該構造体の振動を検出する複数のセンサと、
    前記構造体に、波動を加える波動印加手段と、
    前記各センサによって検出された振動に応じて、前記構造体内部の騒音を低減するように前記波動印加手段へ出力する制御指令値を演算する制御指令値演算手段と、
    を有し、
    前記制御指令値演算手段は、前記波動印加手段に生じる不具合を検出または推定または予測する不具合計測手段を含み、
    前記不具合計測手段が前記波動印加手段に生じる不具合を検出または推定または予測した場合に、前記制御指令値演算手段より出力する制御指令値を切り替えることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  2. 請求項1に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記波動印加手段に生じる不具合は、該波動印加手段の飽和であることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  3. 請求項2に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記波動印加手段は複数設けられ、前記制御指令値演算手段は、
    前記飽和を計測した前記波動印加装置の出力信号を、飽和レベル以内に収まるように補正し、
    飽和を計測していない前記波動印加手段を用いて、前記構造体内部の騒音低減制御が最適となるように、前記制御指令値を切り替えることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  4. 請求項2または請求項3のいずれかに記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記構造体は車両であり、該車両の各座席毎の乗員の有無を検知する乗員検知手段を備え、
    前記制御指令値演算手段は、乗員が存在する座席の乗員頭部を囲む空間についてのみ騒音低減制御を実行して、前記波動印加手段の飽和を回避するように前記制御指令値を切り替えることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  5. 請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記制御指令値演算手段は、飽和した前記波動印加手段へ出力する制御指令値の最大値が、飽和レベルに等しいか、或いは飽和レベルよりも若干低い値となるように、前記制御指令値を切り替えることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  6. 請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記制御指令値演算手段は、前記各センサの出力信号に基づいて制御空間での騒音レベルの高い周波数帯域を推定し、該周波数帯域での騒音低減制御の効果が向上するように前記制御指令値を切り替えることにより、前記波動印加手段の飽和を回避することを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  7. 請求項1に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記波動印加手段に生じる不具合は、該波動印加手段の異常であることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  8. 請求項7に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記波動印加手段は複数設けられ、
    前記制御指令値演算手段は、正常な前記波動印加手段による騒音低減制御が最適となるように、前記制御指令値を切り替えることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  9. 請求項7または請求項8のいずれかに記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記構造体は車両であり、該車両の各座席毎の乗員の有無を検知する乗員検知手段を備え、
    前記制御指令値演算手段は、前記波動印加手段が異常となった場合に、
    乗員が存在する座席の乗員頭部を囲む空間についてのみ騒音低減制御を実行することにより、前記空間での騒音低下制御による効果の低下を最小化するように、前記制御指令値を切り替えることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  10. 請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記波動印加手段は複数設けられ、
    前記制御指令値演算手段は、前記各センサの出力信号に基づいて、制御空間での騒音レベルの高い周波数帯域を推定し、この推定した周波数帯域での騒音低減制御による効果が高くなるように、正常な前記波動印加手段に対応する前記制御指令値を切り替えることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記制御指令値演算手段による前記制御指令値の切り替えは、オンラインの再設定であることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  12. 請求項1〜請求項6または請求項11のいずれか1項に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記制御指令値演算手段は、
    制御指令値を再設定する際に、この再設定に必要とする演算時間が所定時間を超える場合には、一旦全ての前記波動印加手段の出力値が飽和レベル以下となるように前記制御指令値を変更し、前記制御指令値の再設定が終了した後に、この再設定した制御指令値に切り替えることを特徴とする能動振動騒音制御装置。
  13. 請求項7〜請求項11のいずれか1項に記載の能動振動騒音制御装置において、
    前記制御指令値演算手段は、
    制御指令値を再設定する際に、この再設定に必要とする演算時間が所定時間を超える場合には、一旦全ての前記波動印加手段に対する制御を中止し、前記制御指令値の再設定が終了した後に、この再設定した制御指令値に切り替えて制御を再開することを特徴とする能動振動騒音制御装置。
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