JP2010196462A - 鉄道用レールの温度上昇抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レールと、これを支持する支持面とを備えた軌道において、該レールの側面に、塗膜のJIS A 5759に定義される日射反射率が15%以上でかつCIE1976L*a*b*色空間におけるL*値が50〜80である塗料を塗布することを特徴とする鉄道用レールの温度上昇抑制方法。
【選択図】なし
Description
そして、このような支障の有無確認のために、頻繁に点検作業を行う必要があった。
また、レールの伸縮によりバラスト部の砕石分布が不均一となるために、これを修正するための作業を行う必要があった。
さらに、レールを含む軌道の温度上昇による周辺環境への影響も問題となってきた。
これらの課題を解決するために、特許文献1に示すレール面塗装装置が提案された。
すなわち、レール面のみに塗装する装置なので、レール伸縮の問題は解決できるが、周辺環境の問題を解決するには温度低減効果が不十分である。
さらに、好ましい態様として、塗装前に下地処理が必要であり手間がかかる。
本発明は、第4に、前記防錆剤が、錆変性剤または錆付着防止剤であることを特徴とする上記第3に記載の方法である。
本発明は、第6に、前記金属酸化物が、酸化錫、カオリン、酸化珪素、酸化アルミニウムまたは酸化チタンであることを特徴とする上記第3〜第5のいずれかに記載の方法である。
本発明は、第8に、さらに、前記支持面を構成する枕木および/またはバラストの上面にも前記塗料を塗布することを特徴とする上記第1〜第7のいずれかに記載の方法である。
本発明は、第10に、前記塗料が、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する熱交換塗料であることを特徴とする上記第1〜第9のいずれかに記載の方法である。
本発明は、第12に、上記第1〜第11のいずれかに記載の方法を実施したあと、前記塗料を塗布した塗膜面に異物付着抑制剤を塗布することを特徴とする方法である。
夏期高温時のレール温度が低減され、軌道の歪みや締結部分の損耗を抑制できる。
レール点検作業の頻度が少なくなり、他作業に労力を振り分けられる。
(鉄道会社では、レール温度が45℃以上になるとレールの点検を行う。)
保線作業員の熱中症対策として有効である。
レールどうしの隙間を狭くして、列車の振動を抑制し乗り心地を改善できる。
L*値が50〜80の遮熱性塗料を用いることにより、日射反射によるまぶしさで運転士の視認が損なわれるおそれが少ない。
レールを除く枕木および/またはバラストに塗布するので、レールのみに塗布する場合と比べて養生の手間がかからない。
第3の発明による効果
中性化抑制剤の作用により、枕木コンクリートの中性化による破壊を抑制できる。
付着性向上剤の作用により、塗料とレールやバラストとの付着性が向上する。
防錆剤または防腐剤の作用により、レールや枕木の発錆や腐食を抑制できる。
異物付着抑制剤の作用により、油や金属粉などの異物付着を抑制できる。
金属酸化物の作用により、金属であるレールの温度上昇抑制効果が向上する。
錆変性剤の作用により、レールの錆がこれ以上錆の進行しない物質に変化する。
錆付着防止剤の作用により、塗膜表面への錆の付着を抑制できる。
第5の発明による効果
光触媒、フッ素樹脂またはシリコン樹脂の作用により、異物付着を抑制できる。
第6の発明による効果
酸化錫、カオリン、酸化珪素、酸化アルミニウムまたは酸化チタンの作用により、レールの温度上昇抑制効果が向上する。
レール上面への塗料付着を確実に回避できるので、塗布した塗料が列車走行により剥がれるというムダを防ぐことができる。
第8の発明による効果
レール温度の低減のみならず、周辺環境の温度低減効果も大きくなる。
第9の発明による効果
バラストに熱が吸収されるので、周辺温度の上昇を抑制できる。
熱を反射せずに運動エネルギーに変換するので、照り返しによる温度上昇がない。
第11の発明による効果
塗布前に、レール側面に付着した酸化物や異物を取り除くことにより、レールへの塗料の付着性が向上する。
第12の発明による効果
上記方法の実施後に、塗膜面に異物付着抑制剤を塗布することにより、塗膜面への酸化物や異物の付着を抑制できる。
本発明ではレールの車輪が接する以外の外表面に、JIS A 5759に定義される日射反射率が15%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上でかつCIE1976L*a*b*色空間におけるL*値が50〜80である塗料を塗布するが、この塗料は既存の顔料を組合せて塗料化して塗膜の日射反射率とL*値を測定することによって簡単に調製することができる。
本発明に用いられる顔料の例としては、一般式:
(1)下地処理工程
レール側面に付着している赤錆、車輪摩耗抑止用油、汚れなどの酸化物や異物をワイヤーブラシによる研磨、溶剤(シンナー)による拭き取り、二酸化炭素粒子によるブラスト処理などの除去手段により処理する。
遮熱性塗料に防錆剤を添加する場合には、下地処理を省略できる。
(2−1)遮熱性塗料の塗布
レールの側面に遮熱性塗料を、ローラ刷毛などで塗布するかスプレーノズルなどで噴霧する。
速乾性の遮熱性塗料を用いるとよい。
遮熱性塗料として塗膜のL*値が50〜80の塗料を用いると、日射反射によるまぶしさで運転士の視認が損なわれるおそれが少ない。
〔日射反射率が15%以上の塗膜〕
次のA,Bの顔料を組み合わせて調合した塗料からなる塗膜
A:赤外線波長域の日射を反射する顔料
クロモファインブラックA−1103
タイピロキサイドブラウン9290
B:着色顔料
モノアゾ系エローなどの黄色系顔料
酸化鉄、キナクリドンレッドなどの赤色系顔料
フタロシヤニンブルーなどの青色系顔料
フタロシヤニングリーンなどの緑色系顔料
〔L*値が50〜80の塗膜〕
前記A,Bの顔料に次の顔料を組み合わせて調合した塗料からなる塗膜
酸化チタン、亜鉛華などの白色系顔料
(a)遮熱性塗料に、ポリウレタン樹脂、亜硝酸リチウム、ケイ酸塩、亜硝酸塩などの中性化抑制剤を添加する。その添加量は塗料全体に対する重量比で0.5〜5%が好ましい。これにより、枕木が鉄筋コンクリート製の場合、コンクリートの中性化による破壊を防ぐことができる。
(d)遮熱性塗料に、アルキルアンモニウム化合物、ナフテン酸亜鉛、クレオソート油などの防腐剤を添加する。これにより木製枕木の腐食を抑制する。その添加量は塗料全体に対する重量比で5〜50%が好ましい。
(f)遮熱性塗料に、酸化チタンなどの光触媒、4フッ化フッ素樹脂などのフッ素樹脂、シリコン樹脂、シリケート化合物などの異物付着抑制剤を添加する。これにより油や金属粉の付着を抑制する。その添加量は塗料全体に対する重量比で0.5〜5%が好ましい。
異物付着抑制剤とは、塗膜に当該成分を配合することにより、塗膜への汚れ付着を抑制したり、付着した汚れを除去しやすくしたりする成分をいう。
(h)遮熱性塗料として、遮熱塗料に40℃程度の融点をもつ物質を配合した組成物などの熱交換塗料を用いる。これにより反射による照り返しを抑制する。
レール上面を覆うように、コ字型のマスキング板を配置する。
レール上面にマスキングテープを貼る。
これにより、施工時に、レール上面への塗料の付着を防ぐ。
(2−5)枕木・バラストへの遮熱性塗料の塗布
バラスト用の骨材として、蓄熱骨材を使用する。
バラスト表面に樹脂を塗布する。
これにより、バラストの締固めが少なくて済み空隙が残るので、騒音低減効果が期待できる。
上記方法の実施後に、塗膜面に光触媒、フッ素樹脂、シリコン樹脂などの異物付着抑制剤を塗布することにより、塗膜面への酸化物や異物の付着を抑制する。
(2−7)その他
ローラ刷毛などで塗布する場合には、2つのローラ刷毛でレール側面を挟むようにして塗装すると効率的である。
スプレーノズルで塗装する場合には、レール両側の斜め上方から噴霧する。
遮熱性塗料を2層塗りで塗布する場合には、1層目と2層目とで施工方向を逆向きとすることで、バラスト部の塗布ムラを抑制することができる。
本発明の施工は人力で行うこともできるが、施工延長が長い場合には機械施工で行い効率化を図ることが望ましい。
機械施工の場合には、下地処理工程と塗布工程を同時に行うとよい。
機械施工の場合には、複数のノズルを備えるスプレーバーを軌道全幅にわたり配設して散布すると効率的である。スプレーバーの周囲には飛散防止カバーを設ける。
機械施工の場合には、機械の走行速度とスプレーバーのポンプ吐出量とを連動させて制御することにより、安定した散布量で散布することができる。
遮熱性塗料を塗布する場合には、レール側面にゴム板を押し当てながら上から塗料を垂らして塗装してもよい。
バラスト表面は落下した錆などが付着して黒色をしているので、バラスト表面部の砕石を裏返してから遮熱性塗料を塗布すると、温度低減効果を高められる。
本発明の遮熱性塗料を駅ホームの床や駅舎の屋根に塗布すると、さらに周辺環境の温度低減効果が向上する。
レール側面に遮熱性塗料を塗布することにより、レール側面を鉄道車両の走行による摩耗から保護するという効果も得られる。
旅客の体感温度を低減する効果もあり、サービス向上に寄与することができる。
次に本発明の実施例を示す。
市販の着色顔料13%、体質顔料39%、アクリル樹脂エマルション34%、添加剤7%及び水7%を配合して、JIS A 5759に定義される日射反射率が60%以上でかつCIE1976L*a*b*色空間におけるL*値が66である塗膜を与える塗料(サンドベージュ色)を調整した。
ある私鉄の軌道現場で、軌道の一つの工区A(枕木間隔1.5m、枕木の両端各0.3mの直線工区)を長さ方向に6m間隔で区割りして、それぞれを一定面積のテスト区分として、上記塗料の塗布量をかえて塗布し、その遮熱効果を、夏期の晴天日に同時に検証した。結果を表1に示す。
その結果、「塗布量小」よりは「塗布量中」または「塗布量大」の方が温度低減効果は大きかったが、「塗布量中」と「塗布量大」とでは、ほとんど差がなかった。
塗布量が0.5kg/m2以下では十分な温度低減効果が得られず、塗布量が1.0kg/m2以上では温度低減効果に向上がみられず経済的ではない。
レール温度の低減という観点ではレール側面に遮熱性塗料を塗布すれば十分だが、周辺環境の温度低減という観点ではレールの側面に加えて枕木やバラストにも塗装する必要がある。
〔試験施工2〕
図2に示すB工区を区割りして、下地処理方法の違いによる効果を検証した。
施工から約2週間後に確認したところ、レール側面上部から錆のたれ落ちがあるものの、B工区すべてにおいて塗料の剥がれや内部からの錆浮きは確認されず良好な状態が保たれており、下地処理の有無による差異は短期的にはみられなかった。
〔試験施工3〕
図3に示すC工区において、ブレーキダストによる温度低減効果への影響を検証した。
(2−1)構内に枕木およびレール(軌間1,372mm×50kg、軌間1,067mm×60kg)を延長30mにわたり設置し、これを5mずつの6工区に分けて試験を行った。
(2−3)比較のため、遮熱性塗料のみを塗布したものを比較例1、塗料を塗布しないものを比較例2とした。
(2−5)試験期間中は降雨を想定して、10日に1回の頻度でレールに散水した。
(2−6)30日経過後、目視観察、レール表面温度の測定および洗浄試験(高圧水による洗浄)を行った。結果を下表に示す。
実施例1〜4は汚れが付着しにくく、温度低減性能を維持する効果がある。
実施例5は汚れが付着しやすいが、温度低減性能を維持する効果がある。
比較例1は汚れが付着しやすく、温度低減性能を維持する効果がない。
Claims (12)
- レールと、これを支持する支持面とを備えた軌道において、該レールの側面に、塗膜のJIS A 5759に定義される日射反射率が15%以上でかつCIE1976L*a*b*色空間におけるL*値が50〜80である塗料を塗布することを特徴とする鉄道用レールの温度上昇抑制方法。
- レールと、これを支持する支持面とを備えた軌道において、該支持面を構成する枕木および/またはバラストに、塗膜のJIS A 5759に定義される日射反射率が15%以上でかつCIE1976L*a*b*色空間におけるL*値が50〜80である塗料を塗布することを特徴とする鉄道用レールの温度上昇抑制方法。
- 前記塗料が、中性化抑制剤、付着性向上剤、防錆剤、防腐剤、異物付着抑制剤または金属酸化物を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
- 前記防錆剤が、錆変性剤または錆付着防止剤であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
- 前記異物付着抑制剤が、光触媒、フッ素樹脂またはシリコン樹脂であることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
- 前記金属酸化物が、酸化錫、カオリン、酸化珪素、酸化アルミニウムまたは酸化チタンであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記レールの上面に養生部材を配置してから前記塗料を塗布することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- さらに、前記支持面を構成する枕木および/またはバラストの上面にも前記塗料を塗布することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記バラストが、蓄熱骨材からなることを特徴とする請求項8に記載の方法。
- 前記塗料が、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する熱交換塗料であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記塗料の塗布前に、前記レールの側面に付着した酸化物や異物を取り除くことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法を実施したあと、前記塗料を塗布した塗膜面に異物付着抑制剤を塗布することを特徴とする方法。
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