JP2010190906A - 高感度分析用溶媒及びその保存方法。 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルカリ金属類が溶媒中に溶出されにくくすることにより長期間保存した場合でも不純物の少ない(不純物含量が増加しにくい)溶媒の提供。
【解決手段】アルカリ金属類除去処理がなされたガラス容器中に保存された、液体クロマトグラフィー法、液体クロマトグラフィー/マススペクトル法(LC/MS)、液体クロマトグラフィー/マススペクトル/マススペクトル法(LC/MS/MS)、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP/AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)、キャピラリー電気泳動法、又はイオンクロマトグラフ法用メタノール又はアセトニトリルに関する。
【選択図】なし
【解決手段】アルカリ金属類除去処理がなされたガラス容器中に保存された、液体クロマトグラフィー法、液体クロマトグラフィー/マススペクトル法(LC/MS)、液体クロマトグラフィー/マススペクトル/マススペクトル法(LC/MS/MS)、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP/AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)、キャピラリー電気泳動法、又はイオンクロマトグラフ法用メタノール又はアセトニトリルに関する。
【選択図】なし
Description
本発明は、アルカリ金属類除去処理がなされたガラス容器中に保存された分析溶媒に関する発明である。
従来、LC(液体クロマトグラフィー法)を用いた分析方法では、様々な生体試料、化学物質等の分離定量が行われてきた。しかしながら、該方法を用いた、微量の化学物質を含む薬物動態調査や、微量のペプチド、アミノ酸等の生体試料及び環境成分中の極微量化学物質の分離定量に於いては、感度及び分離精度の点で限界があった。そこで、LCによる化学物質の分離とMS(マススペクトル法)による質量分離を結合するLC/MS(液体クロマトグラフィー/マススペクトル法)並びに、LC/MSに更にMSを組み合わせて質量分離能力を向上させたLC/MS/MS分析法において、ESI(エレクトロスプレーイオン化法)などのイオン化法が開発されることにより、その問題は克服され、該LC/MS、LC/MS/MS等は様々な分野で利用され、急速に普及してきている。
このようなLC/MS分析法等では、微量成分を高感度に定量するため、使用される溶媒は高純度試薬(溶媒)が用いられてきた。しかしながら、該方法は高感度な測定方法であるために、溶媒が多少でも汚染され不純物質が混入した場合には、バックグランドが高くなり測定感度も低下し、高感度な分析が行えない場合があった。また、高純度試薬を用いても保存中にバックグランドが高くなり、測定感度が低下する場合があるという問題もあった。そのため、長期保存してもこのような問題が生じにくい試薬(溶媒)の開発が現在望まれている。
本発明者らは、上記した状況を鑑みて溶媒中の不純物について鋭意検討をした結果、溶媒の容器であるガラス瓶から微量の不純物が溶出されることを見いだし、当該溶出成分がナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類及びこれらアルカリ金属類の存在により溶出してくる珪酸塩類であることを見出した。そこで、該アルカリ金属類が溶媒中に溶出されにくくすることにより長期間保存した場合でも不純物の少ない(不純物含量が増加しにくい)溶媒を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、アルカリ金属類除去処理がなされたガラス容器中に保存された、液体クロマトグラフィー法、液体クロマトグラフィー/マススペクトル法(LC/MS)、液体クロマトグラフィー/マススペクトル/マススペクトル法(LC/MS/MS)、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP/AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)、キャピラリー電気泳動法、又はイオンクロマトグラフ法用メタノール又はアセトニトリルに関するものである。
本発明の溶媒は、ナトリウム、アルカリ等のアルカリ金属類の除去処理がなされたガラス容器又はテフロンTM容器に保存されているため、長期間保存してもこれらアルカリ金属類が溶出しにくく、結果として溶媒中の不純物が増加しにくい溶媒であり、これを用いることにより、従来LC/MS、LC/MS/MS等の高感度分析で問題となっていた微量不純物による、バックグラウンドの上昇や感度の低下を抑えることが可能となる。これらLC/MS、LC/MS/MS等の高感度分析に於ける上記した問題が、保存容器由来のアルカリ金属類に起因するということは本発明者らが初めて見いだしたものである。そのため、本発明の方法によりこれら問題が解決し得るということは意外なことであった。
a,c,e,gは、アルミキャップをした通常のガラス瓶(1L瓶又は3L瓶)中で1ヶ月間保存したメタノールを用いて移動相を調製した場合の結果を、b,d,f,hは、アルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶中(1L瓶又は3L瓶)で1ヶ月間保存したメタノールを用いて移動相を調製した場合の結果を夫々示す。
本発明の溶媒としては、通常高感度分析で用いられ、ガラス瓶又はテフロンTM瓶に保存されるものであれば特に限定はされないが、水性溶媒、有機溶媒等が好ましく、水性溶媒、親水性有機溶媒等がより好ましいものとして挙げられ、具体的には、例えば水、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、塩酸、過塩素酸、硝酸、硫酸、アンモニア水、テトラメチルアミン、テトラエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等の水性溶媒、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の親水性有機溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、n−ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン等の疎水性有機溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の親水性有機溶媒が好ましく、中でもメタノール、アセトニトリルがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
本発明に係るガラス容器は、通常この分野で用いられるガラス容器であり、アルカリ金属類除去処理がし得るものであればよく、透明容器であっても着色容器であってもよいが、褐色容器は重金属成分が溶出する可能性があるということに留意する必要がある。また、本発明に係るテフロンTM容器は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定はされず、透明容器であっても着色容器であってもよく、用いられるテフロンTMとしては、通常用いられるものであれば特に限定はされないが、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。尚、遮光容器として本発明に係るガラス容器及びテフロンTM容器を用いる場合には、ガラス容器の場合には上記の如きアルカリ金属類除去処理を行う前又は行った後に、テフロンTM容器の場合には容器形成後に、外側部分にフィルムコーティングする等の遮光処理を施せばよい。また、これらガラス容器及びテフロンTM容器の形状としては、通常溶媒等の試薬が保存される容器の形状であればよく、具体的にはガロン瓶等の細口瓶、バイアル瓶や、アンプル瓶等が挙げられ、ガロン瓶等の細口瓶が特に好ましい。
これらガラス容器及びテフロンTM容器は、キャップ等により密封されるのが好ましく、該キャップとしては、通常この分野で用いられ上記容器形状に合うものであればよく、例えば、ポリプロピレン製キャップ、テフロンTMコーティングポリプロピレン製キャップ、アルミ製キャップ、尿素樹脂製キャップ、ポリエチレン製キャップ等が挙げられるが、テフロンTMコーティングポリプロピレン製キャップ、アルミ製キャップが好ましく、アルミ製キャップがより好ましい。
本発明に係るアルカリ金属類除去処理は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、好ましくはナトリウム、カリウム等を除去し得る方法、或いは、ガラス容器からこれらアルカリ金属類を溶出し得ないようにする方法であればよく、例えばガラス容器を硫酸アンモニウム、亜硫酸ガス、無水亜硫酸、濃硫酸等で処理するブルーム処理、例えばガラス容器を、トリメチルクロロシラン、ジメチルクロロシラン、アルキルクロロシラン等でコーティングするシリコンコーティング処理、テフロンTMでコーティングするテフロンTMコーティング処理、ポリマーでコーティングするポリマーコーティング処理等のコーティング処理等が挙げられ、中でも硫酸アンモニウム、亜硫酸ガス、無水亜硫酸、濃硫酸等で処理するブルーム処理が好ましく、硫酸アンモニウムを用いるブルーム処理等がより好ましい。尚、本発明に係るテフロンTM容器を用いる場合には、上記処理は不要であるが、用途によってはこれら処理を施しても構わない。
アルカリ金属類除去処理の具体的な方法としては、例えばブルーム処理によりなされる場合には、自体公知の例えば特許第3047357号特許公報3頁カラム5 49行目〜カラム6 25行目に記載の方法に準じて行えばよい。また、シリコンコーティング処理を行う場合には、自体公知の例えば特開平6-127922号3頁カラム4 4〜11行目に記載の方法に準じて、テフロンTMコーティング処理やポリマーコーティング処理を行う場合には、自体公知の例えば特公平7-78194号6頁カラム11 27〜40行目、特開2003-246881号19頁カラム36 21〜41行目等に記載の方法に準じて行えばよい。尚、テフロンTMコーティングで用いられるテフロンTMとしては、上記テフロンTM瓶と同じものを用いればよく、ポリマーコーティングで用いられるポリマーとしては、これら公報に記載のもの等を用いればよい。
本発明に係る高感度分析としては、通常この分野で用いられる微量成分の分析等に用いられるものであればよく、例えば、液体クロマトグラフィー法(LC)、LC/MS、LC/MS/MS、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP/AES)、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP/MS)、キャピラリー電気泳動法、イオンクロマトグラフ法等が挙げられるが、中でもLC/MS、LC/MS/MS、ICP/MS等のMSを用いた測定方法が好ましいものとして挙げられる。
本発明の溶媒の保存方法は、アルカリ金属類除去処理したガラス容器又はテフロンTM容器中に上記溶媒を、通常溶媒が保存される方法で保存されればよく、溶媒の種類等により室温(15〜25℃)、低温(5〜10℃)で保存すればよい。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(1)メタノール中の塩素イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンの測定
(i)ガラス瓶のブルーム処理
ガラス瓶のブルーム処理は、特許第3047357号特許公報3頁カラム5 49行目〜カラム6 25行目に記載の方法に準じて行った。
(ii)メタノール中の塩素イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンの測定
アルミキャップをした通常のガラス瓶2本(1L瓶及び3L瓶)とアルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶2本(1L瓶と3L瓶)中で1ヶ月間保存したメタノールを試料溶液とした。また、1000ppmイオンクロマトグラフ用標準液の塩素イオン標準液1ml、硝酸イオン標準液2mlおよび硫酸イオン標準液3mlを夫々量り取り、水を加えて100mlとしたものを混合標準溶液とした。
(i)ガラス瓶のブルーム処理
ガラス瓶のブルーム処理は、特許第3047357号特許公報3頁カラム5 49行目〜カラム6 25行目に記載の方法に準じて行った。
(ii)メタノール中の塩素イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンの測定
アルミキャップをした通常のガラス瓶2本(1L瓶及び3L瓶)とアルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶2本(1L瓶と3L瓶)中で1ヶ月間保存したメタノールを試料溶液とした。また、1000ppmイオンクロマトグラフ用標準液の塩素イオン標準液1ml、硝酸イオン標準液2mlおよび硫酸イオン標準液3mlを夫々量り取り、水を加えて100mlとしたものを混合標準溶液とした。
上記試料溶液、標準溶液及び空試験としての水各100μlを、下記条件のイオンクロマトグラフ法で測定を行った。得られた、試料溶液、混合溶液および空試験の各イオンのピーク面積から、自動積分法により溶液中の各イオン濃度を求めた。尚、水は全て超純水を用いた。得られた結果を表1に示す。
イオンクロマトグラフ法条件
検出器 :電気伝導率計
カラム :IonPac AS14 4mmI.D.×250mm(ダイオネクス社製)
カラム温度 :30℃
移動相 :4.5mM NaHCO3及び1.5mM Na2CO3の混合溶液
流速 :1.2ml/min
サプレッサー:ASRS-ULTRA 50mA(除去液:水、2ml/min)
測定時間 :20分間
イオンクロマトグラフ法条件
検出器 :電気伝導率計
カラム :IonPac AS14 4mmI.D.×250mm(ダイオネクス社製)
カラム温度 :30℃
移動相 :4.5mM NaHCO3及び1.5mM Na2CO3の混合溶液
流速 :1.2ml/min
サプレッサー:ASRS-ULTRA 50mA(除去液:水、2ml/min)
測定時間 :20分間
表1の結果から、塩素イオン及び硝酸イオンについては、通常のガラス瓶及びブルーム処理したガラス瓶両者とも検出されなかったが、硫酸イオンについては、ブルーム処理したガラス瓶の方がその含量が低いことが分かった。即ち、ガラス瓶をブルーム処理することにより硫酸イオンが除去され、メタノール中への溶出を減らすことができることが分かった。
(2)金属イオン濃度の測定
(i)標準溶液の調製
先ず、CONOSTAN K(K 5000ppm標準試料、コノスタン社製)200mgを取り、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、ダイセル化学工業社製)を加えて10gとした。該希釈液およびCONOSTAN 21(各100ppmの21種類金属:Ag,Al,B,Ba,Ca,Cd,Cr,Cu,Fe,Mg,Mn,Mo,Na,Ni,P,Pb,Si,Sn,Ti,U,Znを含む混合標準試料、コノスタン社製)各100mgを取り、PGMEAを加えて100gとし、混合標準原液(各100ppb)とした。測定時に混合標準液5mlを取り、メタノールを加えて50mlにメスアップし、夫々を標準溶液とした。(各10ppb)
(ii)試料溶液の調製
アルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶2本(1L瓶及び3L瓶)中で1ヶ月保存したメタノール、並びにアルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶(3L瓶)中で10ヶ月保存したメタノール(総量10L)を試料溶液aとした。また、比較として、アルミキャップをした通常のガラス瓶2本(1L瓶及び3L瓶)中で1ヶ月保存したメタノール、並びにアルミキャップをした通常のガラス瓶(3L瓶)中で2ヶ月保存したメタノール(総量10L)を同様に試料溶液aとした。上記標準溶液1mlを取り、試料溶液aを加えて10mlにメスアップし、試料溶液bとした。更に、標準溶液2mlを取り、試料溶液aを加えて10mlにメスアップし、試料溶液cとした。試料溶液a、b、c夫々を下記条件で元素分析装置(MIP-MS元素分析装置P-6000型、日立株式会社製)を用いて測定し、得られたCPSから標準添加検量線を求め、試料溶液中の各金属含量を求めた。得られた値を表2に示す。
(i)標準溶液の調製
先ず、CONOSTAN K(K 5000ppm標準試料、コノスタン社製)200mgを取り、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、ダイセル化学工業社製)を加えて10gとした。該希釈液およびCONOSTAN 21(各100ppmの21種類金属:Ag,Al,B,Ba,Ca,Cd,Cr,Cu,Fe,Mg,Mn,Mo,Na,Ni,P,Pb,Si,Sn,Ti,U,Znを含む混合標準試料、コノスタン社製)各100mgを取り、PGMEAを加えて100gとし、混合標準原液(各100ppb)とした。測定時に混合標準液5mlを取り、メタノールを加えて50mlにメスアップし、夫々を標準溶液とした。(各10ppb)
(ii)試料溶液の調製
アルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶2本(1L瓶及び3L瓶)中で1ヶ月保存したメタノール、並びにアルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶(3L瓶)中で10ヶ月保存したメタノール(総量10L)を試料溶液aとした。また、比較として、アルミキャップをした通常のガラス瓶2本(1L瓶及び3L瓶)中で1ヶ月保存したメタノール、並びにアルミキャップをした通常のガラス瓶(3L瓶)中で2ヶ月保存したメタノール(総量10L)を同様に試料溶液aとした。上記標準溶液1mlを取り、試料溶液aを加えて10mlにメスアップし、試料溶液bとした。更に、標準溶液2mlを取り、試料溶液aを加えて10mlにメスアップし、試料溶液cとした。試料溶液a、b、c夫々を下記条件で元素分析装置(MIP-MS元素分析装置P-6000型、日立株式会社製)を用いて測定し、得られたCPSから標準添加検量線を求め、試料溶液中の各金属含量を求めた。得られた値を表2に示す。
測定条件
[滞在時間入力]滞在時間:1sec
[共通条件]スキャン回数:3回、測定点数:1
[データ処理条件]ピーク検知モード:高さ
[試料測定条件]測定繰り返し数:3
[滞在時間入力]滞在時間:1sec
[共通条件]スキャン回数:3回、測定点数:1
[データ処理条件]ピーク検知モード:高さ
[試料測定条件]測定繰り返し数:3
表2から明らかなように、通常のガラス瓶では何れも溶出されるナトリウムが、ブルーム処理したガラス瓶に保存したメタノールではほとんど溶出されないことが分かった。更に、10ヶ月保存後であっても1.0ppbとほとんど溶出されないことが分かった。
また、通常のガラス瓶で2ヶ月保存したメタノールでは、カリウムが3.8ppbも溶出されているが、ブルーム処理したガラス瓶では、10ヶ月経過したものでも0.1ppbとほとんど溶出されておらず、その溶出量を劇的に低減できることが分かった。
また、通常のガラス瓶で2ヶ月保存したメタノールでは、カリウムが3.8ppbも溶出されているが、ブルーム処理したガラス瓶では、10ヶ月経過したものでも0.1ppbとほとんど溶出されておらず、その溶出量を劇的に低減できることが分かった。
(3)メタノール中不純物質の蛍光X線回折による元素解析
通常のガラス瓶及びブルーム処理したガラス瓶中で1週間保存したメタノール各0.8Lを1Lのクデルダダニシュ濃縮装置(硬質ガラス製フラスコ)に入れ加熱濃縮した。液量が少なくなったら継ぎ足して、合計5Lを濃縮し、濃縮液が約5mlになったら別の試験管に移し、液量20μLとなるまで窒素ガスを流し更に濃縮した。その際に沈殿物が生じたら、それを採取して水に溶かし、その液をろ紙に染み込ませて下記条件で蛍光X線分析装置により元素分析を行った。
通常のガラス瓶及びブルーム処理したガラス瓶中で1週間保存したメタノール各0.8Lを1Lのクデルダダニシュ濃縮装置(硬質ガラス製フラスコ)に入れ加熱濃縮した。液量が少なくなったら継ぎ足して、合計5Lを濃縮し、濃縮液が約5mlになったら別の試験管に移し、液量20μLとなるまで窒素ガスを流し更に濃縮した。その際に沈殿物が生じたら、それを採取して水に溶かし、その液をろ紙に染み込ませて下記条件で蛍光X線分析装置により元素分析を行った。
分析条件
装置:SHIMADZU XRF-1700(島津社製)
電圧 :40kV 電流 :95mA
絞り :20 スピン :する
雰囲気 :真空 予備排気速さ:低速
エアパージ速さ:低速 真空度安定器:OFF
測定圧力 :25 試料形態 :バルク
化合物形態 :金属
装置:SHIMADZU XRF-1700(島津社製)
電圧 :40kV 電流 :95mA
絞り :20 スピン :する
雰囲気 :真空 予備排気速さ:低速
エアパージ速さ:低速 真空度安定器:OFF
測定圧力 :25 試料形態 :バルク
化合物形態 :金属
測定の結果、通常瓶に保存されたメタノールを濃縮すると、白色結晶が析出し、分析の結果、珪素、ナトリウム、酸素の成分が検出された。従って、得られた白色結晶は、珪酸水素ナトリウムであると推測された。一方、ブルーム処理したガラス瓶では沈殿物は析出されなかった。通常、ガラスの組成物である珪素酸はメタノールに溶解されないことを考慮すると、該珪酸水素ナトリウムは、ガラス瓶から溶出されたアルカリ金属類と反応して塩を作り、それがメタノール中に溶出したものと考えられた。
(4)メタノール中不純物質の分析
通常の褐色ガラス瓶中で2ヶ月保存したメタノール10Lをクデルダダニシュ濃縮装置(硬質ガラス製フラスコ)で1mLまで加熱濃縮した。次いで、該濃縮液をビーカーに移し、窒素ガスをを吹き付けて濃縮乾固した。
得られたメタノール中の不純物質の重量を測定した結果、4.4mg(白色結晶)であった。該白色結晶は、上記蛍光X線回折による元素解析の結果、珪酸水素ナトリウムとして推測されたので、得られた4.4mgが全て珪酸水素ナトリウムであると仮定してそこに含まれるナトリウム濃度の理論値を算出した。
蒸発残分のメタノール中の濃度:4.4mg/10L=440μg/L(ppb)
珪酸水素ナトリウムNaHSiO3・4H2Oの分子量:172g/mol , ナトリウムの分子量:23g/mol
ナトリウムの理論値=440×23/172=59(ppb)
尚、該メタノール10L中のナトリウム濃度を測定した結果は、60ppb(実施例1(1))であり、理論値と計算値がほぼ一致することが分かった。よって、通常のガラス瓶から溶出される不純物質は、珪酸水素ナトリウムであることが分かった。
従って、(3)の結果と併せて考えると、通常のガラス瓶では、珪酸水素ナトリウムが多量に溶出されるが、ブルーム処理することによりこれらはほとんど溶出されないことが分かった。
(5)LC/MS分析
アルミキャップをした通常のガラス瓶2本(1L瓶及び3L瓶)とアルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶2本(1L瓶と3L瓶)中で1ヶ月間保存したメタノールを用いて移動相を調製し、注入操作を行わずに移動相のみを導入し、次の条件で測定した。得られたクロマトグラフを図1に示す。尚、図1−1は、1L瓶に保存したメタノールを移動相として用い、ネガティブで測定を行った結果を示し、aは通常のガラス瓶を用いた場合の結果を、bはブルーム処理済みガラス瓶を用いた場合の結果を示す。図1−2は、1L瓶に保存したメタノールを移動相として用い、ポジティブで測定を行った結果を示し、cは通常のガラス瓶を用いた場合の結果を、dはブルーム処理済みガラス瓶を用いた場合の結果を示す。図1−3は、3L瓶に保存したメタノールを移動相として用い、ポジティブで測定を行った結果を示し、eは通常のガラス瓶を用いた場合の結果を、fはブルーム処理済みガラス瓶を用いた場合の結果を示す。図1−4は、1L瓶に保存したメタノールを移動相として用い、ネガティブで測定を行った結果を示し、gは通常のガラス瓶を用いた場合の結果を、hはブルーム処理済みガラス瓶を用いた場合の結果を示す。
また、図1−1〜1−4の結果から、クロマトグラフのベースラインが安定しているものを「良」、不安定のものを「悪い」として、その結果を表4にポジティブとネガティブでの結果を夫々示した。
(4)メタノール中不純物質の分析
通常の褐色ガラス瓶中で2ヶ月保存したメタノール10Lをクデルダダニシュ濃縮装置(硬質ガラス製フラスコ)で1mLまで加熱濃縮した。次いで、該濃縮液をビーカーに移し、窒素ガスをを吹き付けて濃縮乾固した。
得られたメタノール中の不純物質の重量を測定した結果、4.4mg(白色結晶)であった。該白色結晶は、上記蛍光X線回折による元素解析の結果、珪酸水素ナトリウムとして推測されたので、得られた4.4mgが全て珪酸水素ナトリウムであると仮定してそこに含まれるナトリウム濃度の理論値を算出した。
蒸発残分のメタノール中の濃度:4.4mg/10L=440μg/L(ppb)
珪酸水素ナトリウムNaHSiO3・4H2Oの分子量:172g/mol , ナトリウムの分子量:23g/mol
ナトリウムの理論値=440×23/172=59(ppb)
尚、該メタノール10L中のナトリウム濃度を測定した結果は、60ppb(実施例1(1))であり、理論値と計算値がほぼ一致することが分かった。よって、通常のガラス瓶から溶出される不純物質は、珪酸水素ナトリウムであることが分かった。
従って、(3)の結果と併せて考えると、通常のガラス瓶では、珪酸水素ナトリウムが多量に溶出されるが、ブルーム処理することによりこれらはほとんど溶出されないことが分かった。
(5)LC/MS分析
アルミキャップをした通常のガラス瓶2本(1L瓶及び3L瓶)とアルミキャップをしたブルーム処理済みガラス瓶2本(1L瓶と3L瓶)中で1ヶ月間保存したメタノールを用いて移動相を調製し、注入操作を行わずに移動相のみを導入し、次の条件で測定した。得られたクロマトグラフを図1に示す。尚、図1−1は、1L瓶に保存したメタノールを移動相として用い、ネガティブで測定を行った結果を示し、aは通常のガラス瓶を用いた場合の結果を、bはブルーム処理済みガラス瓶を用いた場合の結果を示す。図1−2は、1L瓶に保存したメタノールを移動相として用い、ポジティブで測定を行った結果を示し、cは通常のガラス瓶を用いた場合の結果を、dはブルーム処理済みガラス瓶を用いた場合の結果を示す。図1−3は、3L瓶に保存したメタノールを移動相として用い、ポジティブで測定を行った結果を示し、eは通常のガラス瓶を用いた場合の結果を、fはブルーム処理済みガラス瓶を用いた場合の結果を示す。図1−4は、1L瓶に保存したメタノールを移動相として用い、ネガティブで測定を行った結果を示し、gは通常のガラス瓶を用いた場合の結果を、hはブルーム処理済みガラス瓶を用いた場合の結果を示す。
また、図1−1〜1−4の結果から、クロマトグラフのベースラインが安定しているものを「良」、不安定のものを「悪い」として、その結果を表4にポジティブとネガティブでの結果を夫々示した。
測定装置 :Finnigan LCQ Duo(イオントラップ型)
イオン化法 :ESI
スキャンモード :MS
スキャンタイプ :SIM (or Full)
質量範囲 : 50-2000 m/z
極性 :ポジティブ/ネガティブ
ネブライザーガス流量(L/分):1.2/1.2(ポジティブ/ネガティブ)
追加ガス流量(L/分) :3.6/3.6
イオンスプレー電圧(kV) :3.50/3.50
スプレー電流(μA) :0.24/0.24
キャピラリー温度(℃) :300/300
キャピラリー電圧(V) :110/-46
チューブレンズ電圧(V) :110/-20
グラジエント条件(流速:100μl)
イオン化法 :ESI
スキャンモード :MS
スキャンタイプ :SIM (or Full)
質量範囲 : 50-2000 m/z
極性 :ポジティブ/ネガティブ
ネブライザーガス流量(L/分):1.2/1.2(ポジティブ/ネガティブ)
追加ガス流量(L/分) :3.6/3.6
イオンスプレー電圧(kV) :3.50/3.50
スプレー電流(μA) :0.24/0.24
キャピラリー温度(℃) :300/300
キャピラリー電圧(V) :110/-46
チューブレンズ電圧(V) :110/-20
グラジエント条件(流速:100μl)
検出感度
レセルピンを2ppm含有するメタノール溶液10μlを注入し、レセルピンのイオンを検出する感度に設定した。
レセルピンを2ppm含有するメタノール溶液10μlを注入し、レセルピンのイオンを検出する感度に設定した。
得られた結果から明らかなように、通常のガラス瓶で保存したメタノールを移動相として用いた場合、ベースラインが上昇し、また、不安定となっていた。一方、ブルーム処理したガラス瓶では、3L瓶のメタノールをポジティブで測定すると多少ベースラインが乱れてはいるが、それ以外は安定しており、通常のガラス瓶に保存したメタノールと比較してもベースラインが低いことが分かる。これは、(1)及び(2)の結果から考えると、珪酸水素ナトリウム等の溶媒中に含まれる微量不純物のイオン化がアルカリ金属類により促進されるため、バックグラウンドの上昇を引き起こしたものと推測された。また、アルカリ金属類はイオン化し易いため、測定対象化合物のイオン化を妨害し、結果として感度低下につながる可能性も考えられた。
(6)添加試験
溶媒中に珪酸ナトリウムが存在すると、LC/MS測定の感度に影響を及ぼすかについて、農薬標準品8種を試料溶液として実験を行った。
(i)試料溶液の調製
和光純薬工業(株)製の農薬8種混合アセトニトリル溶液[アシュラム、ベンスリド(SAP)、イプロジオン、メコプロップ(MCPP)、ペンシクロン、チウラム、クロロタロニル(TPN)、シデュロン各100μg/mlアセトニトリル溶液] 1.0mlにアセトニトリルを加えて10mlにメスアップし、試料溶液とした。
(ii)LC/MSでの測定
以下のLC/MS条件で上記試料溶液5μlの測定を行った。測定は、移動相に0.15%酢酸とアセトニトリル溶媒を用いた場合と、0.15%酢酸とナトリウム添加アセトニトリル溶媒を用いた場合の2回行った。尚、ナトリウム添加アセトニトリル溶媒は、以下のように調製した。
溶媒中に珪酸ナトリウムが存在すると、LC/MS測定の感度に影響を及ぼすかについて、農薬標準品8種を試料溶液として実験を行った。
(i)試料溶液の調製
和光純薬工業(株)製の農薬8種混合アセトニトリル溶液[アシュラム、ベンスリド(SAP)、イプロジオン、メコプロップ(MCPP)、ペンシクロン、チウラム、クロロタロニル(TPN)、シデュロン各100μg/mlアセトニトリル溶液] 1.0mlにアセトニトリルを加えて10mlにメスアップし、試料溶液とした。
(ii)LC/MSでの測定
以下のLC/MS条件で上記試料溶液5μlの測定を行った。測定は、移動相に0.15%酢酸とアセトニトリル溶媒を用いた場合と、0.15%酢酸とナトリウム添加アセトニトリル溶媒を用いた場合の2回行った。尚、ナトリウム添加アセトニトリル溶媒は、以下のように調製した。
即ち、珪酸ナトリウム(和光純薬製、化学用、Na含量15W/W%)67mgを取り、水を適量加えて加温溶解し、室温まで冷却し、水で100mlとし珪酸ナトリウム溶液とした。アセトニトリル100mlに対して該珪酸ナトリウム溶液1mlを加えて溶解したものをナトリウム添加アセトニトリル溶媒(1ppmナトリウム添加アセトニトリル)とした。尚、希釈用の水はミリポア水を用いて調製した。
LC条件
測定装置 : Finnigan LCQ Duo(イオントラップ型)
カラム : Navi C18-5 2.0mmφ×150mm
カラム温度 : 40℃
検出器 : 紫外吸光光度計 波長230nm
移動相(リニアグラジエント方式):
A:0.15%酢酸、B:アセトニトリル又はナトリウム添加アセトニトリル
測定装置 : Finnigan LCQ Duo(イオントラップ型)
カラム : Navi C18-5 2.0mmφ×150mm
カラム温度 : 40℃
検出器 : 紫外吸光光度計 波長230nm
移動相(リニアグラジエント方式):
A:0.15%酢酸、B:アセトニトリル又はナトリウム添加アセトニトリル
MS条件
イオン化法 : ESI(正イオン/負イオン)
スキャンモード : スキャン
スキャンタイプ : Full
質量範囲 : 50-2000 m/z
極性 :ポジティブ/ネガティブ
ネブライザーガス : 1.2L/min
追加ガス : 3.6L/min
イオンスプレー電圧 : 3.5kV
スプレー電流 : 0.24μA
キャピラリー温度 : 240℃
キャピラリー電圧 : 正イオン(46V),負イオン(-46V)
フォーカスレンズ電圧 : 20V
得られた結果を、図2−1及び2−2に示す。尚、図2−1は、0.15%酢酸とアセトニトリル溶媒を移動相として用いた場合の結果を、図2−2は、0.15%酢酸と1ppmナトリウム添加アセトニトリル溶媒を移動相として用いた場合の結果を夫々示す。
イオン化法 : ESI(正イオン/負イオン)
スキャンモード : スキャン
スキャンタイプ : Full
質量範囲 : 50-2000 m/z
極性 :ポジティブ/ネガティブ
ネブライザーガス : 1.2L/min
追加ガス : 3.6L/min
イオンスプレー電圧 : 3.5kV
スプレー電流 : 0.24μA
キャピラリー温度 : 240℃
キャピラリー電圧 : 正イオン(46V),負イオン(-46V)
フォーカスレンズ電圧 : 20V
得られた結果を、図2−1及び2−2に示す。尚、図2−1は、0.15%酢酸とアセトニトリル溶媒を移動相として用いた場合の結果を、図2−2は、0.15%酢酸と1ppmナトリウム添加アセトニトリル溶媒を移動相として用いた場合の結果を夫々示す。
LC/MSの測定条件農薬8種の標準液を、HPLCで分離した後、TICでイオンを検出した結果、図2の結果に示す様に珪酸ナトリウムを添加した移動相を用いて測定した結果では、ノイズが大きく、ベースラインは上昇し、測定対象の農薬試料のピークが殆ど検出できなかった。即ち、珪酸ナトリウムが微量存在することで、測定に大きな影響を及ぼすことが分かった。
よって、ガラス瓶中で珪酸ナトリウム等の珪酸アルカリ金属塩を溶出させるナトリウムやカリウム等のアルカリ金属類を除去することによりMS測定時のベースラインの安定化やノイズの除去をすることができるといえ、ナトリウムを含むアルカリ金属類の混入を防止し得る条件で保存されている本発明の溶媒を用いることにより、瓶等のガラス容器に長期間保存された溶媒であっても高感度且つ高精度にMSの測定を行うことができるようになることが分かる。
Claims (3)
- アルカリ金属類除去処理がなされたガラス容器中に保存された、液体クロマトグラフィー法、液体クロマトグラフィー/マススペクトル法(LC/MS)、液体クロマトグラフィー/マススペクトル/マススペクトル法(LC/MS/MS)、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP/AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)、キャピラリー電気泳動法、又はイオンクロマトグラフ法用メタノール又はアセトニトリル。
- アルカリ金属類除去処理が、ブルーム処理である請求項1記載のメタノール又はアセトニトリル。
- 測定方法が、液体クロマトグラフィー/マススペクトル法(LC/MS)、液体クロマトグラフィー/マススペクトル/マススペクトル法(LC/MS/MS)又は誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS)である、請求項1又は2記載のメタノール又はアセトニトリル。
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2004
- 2004-10-19 WO PCT/JP2004/015435 patent/WO2005047884A1/ja active Application Filing
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