JP2010189571A - ディールス・アルダー反応付加部を有する化合物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】化合物は、ジエノフィル構造を有する化合物(A)と、環状もしくは直鎖状のいずれかで表される共役ジエン構造を有する化合物(B)とのディールス・アルダー反応により形成され、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応を介して前記共役ジエン構造を有する化合物(B)を放出する化合物である。
【選択図】なし
Description
つまり、本発明の上記目的は、下記の手段より達成されることが見出された。
<1> ジエノフィル構造を有する化合物(A)と、下記一般式(B−1)〜一般式(B−3)のいずれかで表される共役ジエン構造を有する化合物(B)とのディールス・アルダー反応により形成され、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応を介して前記共役ジエン構造を有する化合物(B)を放出する化合物。
一般式(B−2)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X7〜X10およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X7〜X10のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X7〜X10、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X7〜X10およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(B−3)中、X11〜X16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。)
<2> 前記共役ジエン構造を有する化合物(B)の分子量が150〜600の範囲である、<1>に記載の化合物。
<3> 前記ジエノフィル構造を有する化合物(A)が、シロキサン構造を有する化合物である、<1>または<2>に記載の化合物。
<4> 前記ジエノフィル構造を有する化合物(A)が、m個のRSi(O0.5)3ユニット(mは8〜16の整数を表し、Rは、水素原子または置換基を表す。)を有し、各ユニットが各ユニットにおける酸素原子を共有して他のユニットに連結しカゴ構造を形成している化合物(I)またはその重合体である、<3>に記載の化合物。
<5> 前記化合物(I)が、下記一般式(Q−1)〜(Q−7)のいずれかで表される化合物である、<4>に記載の化合物。
<6> <1>〜<5>のいずれかに記載の化合物を含有する組成物。
<7> さらに、溶剤を含む<6>に記載の組成物。
<8> 絶縁膜形成用途に用いられる<6>または<7>に記載の組成物。
<9> <6>〜<8>のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布した後、硬膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
<10> <9>に記載の製造方法を用いて製造された絶縁膜。
<11> <10>に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
本発明の化合物(以後、化合物(X)とも記す)は、ジエノフィル構造を有する化合物(A)と、一般式(B−1)〜一般式(B−3)のいずれかで表される共役ジエン構造を有する化合物(B)の少なくとも1種とのディールス・アルダー反応により形成される。さらに、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応が進行して、共役ジエン構造を有する化合物(B)が脱離する化合物である。
この化合物(X)を含む塗膜において、加熱、光照射、放射線照射、またはそれらの組み合わせを用いた硬膜処理を行うことにより、逆ディールス・アルダー反応を進行させることができる。これにより化合物(X)から共役ジエン構造を有する化合物(B)が揮発して膜空隙が増大し、更に残基間で硬化反応が生ずるため、低誘電率、高機械強度、高耐熱性を示し、膜減りが小さい膜を形成できる。特に、本発明においては嵩高い置換基を有する化合物(B)を使用することにより、膜中における化合物(B)の占有体積が増大し、化合物(B)が揮発した後の膜空隙が増大することで、より低誘電率な膜を形成することができる。さらに、嵩高い置換基(炭素数5以上)を有する化合物(B)を使用することで、化合物(B)の逆ディールス・アルダー反応温度が上昇するため、膜空隙形成前に一部硬膜が進行し、膜空隙形成時の膜減りを抑制することができる。
まず、化合物(X)の原料であるジエノフィル構造を有する化合物(A)、共役ジエン構造を有する化合物(B)について説明する。
本発明の化合物の原料の一つは、ジエノフィル構造を有する化合物(A)である。
ジエノフィル構造とは、後述する共役ジエン構造と付加的に反応(ディールス・アルダー反応)して環式構造を与える不飽和構造であれば特に限定されず、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基や、炭素−炭素三重結合を有するアルキニル基などが挙げられる。ジエノフィル構造の好適な例としては、例えば、以下のような構造が挙げられる。なかでも、(E-1)骨格、(E-2)骨格、(E-3)骨格などが好ましい。
これらの中で、耐熱性や低誘電性などの観点から、カゴ型構造を有する化合物またはシロキサン構造を有する化合物が好ましく、特にシロキサン構造を有する化合物が好ましい。
化合物(A)が、シロキサン構造(Si−O結合)を有する化合物である場合、本発明の効果を損なわない限り、いかなるシロキサン構造を有する化合物であってもよい。シロキサン構造を有する化合物は、低分子化合物および高分子化合物を含む。ケイ素原子と酸素原子とでなるシロキサン構造を有する化合物は、優れた耐熱性を示す。シロキサン構造を有する化合物中におけるシロキサン構造の含有量としては、シロキサン構造を有する化合物全量に対して、30〜100質量%が好ましく、60〜100質量%がより好ましい。
なお、Rは水素原子または置換基を表す。
*−L1−Si−(R20)3
アルキレン基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。R21、R22、R23およびR20は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基を表す。R21、R22、R23およびR20で表される基として好ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、エチニル基などが挙げられる。
ケイ素原子含有基としては、シリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)がもっとも好ましい。
(R1)3−Si−O− (II)
〔MO-Si(O0.5)3〕m (III)
(R1)3−Si−Cl (IV)
溶媒としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶剤が好ましい。一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物を反応させる際には、トリエチルアミン、ピリジンなどの塩基を添加してもよい。
化合物(A)の好適な実施態様の一つとしては、化合物(I)を繰り返し単位とする重合体(好ましくは、上記一般式(Q−1)〜(Q−7)のいずれかで表される化合物の重合体)が挙げられ、複数の異なった化合物(I)の重合物が含まれていてもよい。その場合、複数の異なった化合物(I)からなる共重合体であってもよいし、ホモポリマーの混合物であってもよい。本発明の組成物が、複数の異なった化合物(I)からなる共重合体を含む場合、m=8、10、および12から選ばれる2種以上の化合物(I)の混合物の共重合体であることが好ましい。
この場合、化合物(I)由来の成分は、共重合物中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが最も好ましい。
化合物(I)を繰り返し単位とする重合体を製造した際に含まれる未反応の化合物(I)の含量は、全固形分に対して、15質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下であり、最も好ましくは7質量%以下である。これにより塗布面状が改善できる。なお、全固形分とは、化合物(I)の重合体と未反応物との合計成分を意味する。
重合体の数平均分子量(Mn)は、化合物(I)単量体を除いて、1.0×104〜30×104であることが好ましく、1.0×104〜15×104であることがより好ましく、2.0×104〜10×104であることが最も好ましい。
重合体のZ+1平均分子量(MZ+1)は、化合物(I)単量体を除いて、1.0×104〜60×104であることが好ましく、2.0×104〜45×104であることがより好ましく、3.0×104〜30×104であることが最も好ましい。
上記範囲の重量平均分子量および数平均分子量に設定することにより、有機溶剤に対する溶解性およびフィルターろ過性が向上し、塗布膜の面状が改善された、低誘電率である膜を形成することができる。
化合物(I)の重合体には、重合開始剤、添加剤または重合溶媒が重合体全量に対して0.1〜40質量%結合していてもよい。それらの含有量は、重合体全量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%が、より好ましく、0.1〜5質量%が最も好ましい。
これらについては、組成物のNMRスペクトル等から定量することができる。
化合物(I)の炭素−炭素不飽和結合の重合反応としてはどのような重合反応でもよいが、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合などが挙げられる。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
溶剤としては、例えば、特開2008−218639号公報の段落番号[0038]に記載の溶媒が挙げられる。より好ましい溶剤は、エステル系溶剤、エーテル系溶剤および芳香族炭化水素系溶剤であり、具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、t−ブチルベンゼンが好ましく、特に好ましくは酢酸エチル、酢酸ブチル、ジフェニルエーテル、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応時に重合開始剤を分解させるのに必要な温度まで反応液を加温できるために、溶剤の沸点は65℃以上であることが好ましい。
重合開始剤としては、特に、有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。有機過酸化物および有機アゾ系化合物としては、特許公開2008−239685号公報の段落番号[0033]〜[0035]に記載の化合物を使用することができる。
重合開始剤の10時間半減期温度は、100℃以下であることが好ましい。10時間半減期温度が100℃以下であれば、重合開始剤を反応終了時に残存しないようにすることが容易である。
重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.0001〜2モル、より好ましくは0.003〜1モル、特に好ましくは0.001〜0.5モルである。
重合反応終了時のポリマーのZ+1平均分子量(MZ+1)は10×104〜60×104であることが好ましく、9×104〜55×104であることがより好ましく、8×104〜40×104であることが最も好ましい。
重合反応終了時の重合体は、分子量300×104以上の成分を実質的に含まないことが好ましく、200×104以上の成分を実質的に含まないことがより好ましく、100×104以上の成分を含まないことが最も好ましい。
重合時に、これらの分子量条件を満たすと、塗布面状がよく、焼成時の膜減りが小さい膜形成用組成物を収率よく製造することができる。
化合物(A)がカゴ型構造を有する化合物である場合は、アダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、およびドデカヘドランからなる群から選ばれるカゴ型構造を含む化合物であり、「カゴ型構造」の定義は上記と同様である。カゴ型構造を有する化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物(例えば重合体(ポリマー))であってもよいが、好ましくはカゴ型構造を有するモノマー(該モノマーは前駆体と同義である)の重合体である。ここでカゴ型構造を有するモノマーとは、互いに重合して2量体以上の重合体になるものを指す。この重合体は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。
カゴ型構造を有する化合物が重合体である場合、その重量平均分子量は、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは5,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。カゴ型構造を有する化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3,000、より好ましくは200〜2,000、特に好ましくは220〜1,000である。
カゴ型構造を有するモノマーの重合反応は、特開2008−239685号公報の段落番号[0030]〜[0031]に記載の遷移金属触媒存在下で行うことも好ましい。
一般式(G−1)〜(G−6)中、Z1〜Z8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素など)、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アリール基(好ましくは、炭素数6〜20)またはシリル基(好ましくは、炭素数0〜20)を表す。より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくはアルキル基(メチル基など)である。
V1〜V8、Z1〜Z8は、さらに別の置換基で置換されていてもよい。
一般式(G−1)または一般式(G−4)中、n1、n5はそれぞれ独立に0〜15の整数を表し、好ましくは0〜4、より好ましくは0または1、特に好ましくは0である。
一般式(G−2)または一般式(G−5)中、m2、m3、m6、m7はそれぞれ独立に1〜15の整数を表し、好ましくは1〜4で、より好ましくは1〜3、特に好ましくは2である。
一般式(G−2)または一般式(G−5)中、n2、n3、n6、n7はそれぞれ独立に0〜14の整数を表し、好ましくは0〜4、より好ましくは0または1、特に好ましくは0である。
一般式(G−3)または一般式(G−6)中、m4、m8はそれぞれ独立に1〜20の整数を表し、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、特に好ましくは2である。
一般式(G−3)または一般式(G−6)中、n4、n8はそれぞれ独立に0〜19の整数を表し、好ましくは0〜4、より好ましくは0または1、特に好ましくは0である。
カゴ型構造を有する化合物としては、例えば、特開2008−166384号公報の段落番号[0041]〜[0044]に記載の化合物を使用することができる。
反応液中のカゴ型構造を有するモノマーの濃度は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴンなど)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
重合して得られるポリマーの重量平均分子量の好ましい範囲は1,000〜500,000、より好ましくは5,000〜300,000、特に好ましくは10,000〜200,000である。
また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウムなどでアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
共役ジエン構造を有する化合物(B)は、上述化合物(A)とディールス・アルダー反応可能な共役ジエン構造を有する化合物であり、下記一般式(B−1)〜一般式(B−3)のいずれかで表される。なお、共役ジエン構造を有する化合物(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
一般式(B−2)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X7〜X10およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X7〜X10のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X7〜X10、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X7〜X10およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(B−3)中、X11〜X16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
なお、この置換基の具体例としては、炭素数5以上の芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基)、炭素数5以上の鎖状または環状脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基)、炭素数5以上のカゴ型構造を有する置換基(アダマンチル基、ジアマンチル基、トリアマンチル基)などが挙げられる。これら炭素数5以上の置換基は、さらにハロゲン原子(例えば、フッ素原子など)やアルキル基などの置換基をさらに有していてもよい。
炭素数5以上の置換基としては、環状構造(芳香族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、カゴ型構造を有する置換基)を有することが好ましい。
より具体的には、以下の一般式(K)で表される置換基であることが好ましい。
*−L−U 一般式(K)
(一般式(K)中、Uはフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、およびジアマンチル基からなる群から選択されるいずれかの官能基を表す。Lは、単結合または2価の連結基を表す。)
単結合の場合、一般式(K)中のUが一般式(B−1)〜(B−3)中の炭素原子と直接結合する。
上記化合物(A)と化合物(B)とをディールス・アルダー反応を行う条件は、使用する化合物の種類などにより適宜最適な条件が選択される。
ディールス・アルダー反応を行う反応溶媒としては、使用する化合物が溶解し、反応に影響を与えない溶媒であれば特に限定されない。例えば、上記の化合物(I)の重合反応に使用される溶媒などが挙げられる。
反応温度は、特に制限されないが、通常25℃〜250℃であり、好ましくは50℃〜200℃、さらに好ましくは80℃〜200℃である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
反応終了後、精製処理を実施することが好ましい。
化合物(X)の製造工程においては、重合反応を抑制するために重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤の例としては4−メトキシフェノール、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、カテコールなどが挙げられる。なかでも、4−メトキシフェノール、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノールが特に好ましい。重合禁止剤の添加量は、化合物(A)全量に対して、5質量%以上が好ましい。
上記の化合物(A)と化合物(B)とのディールス・アルダー反応により、共役ジエン構造とジエノフィル構造から形成される官能基(以後、ディールス・アルダー反応付加部とも記す)を有する化合物(X)が得られる。
化合物(X)は、上述のように低分子化合物および高分子化合物(例えば、樹脂)であってもよく、その構造は特に制限されない。例えば、高分子化合物の場合、その重量平均分子量(Mw)は、2.0×104〜50×104であることが好ましく、3.0×104〜30×104であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)は、1.0×104〜25×104であることが好ましく、1.5×104〜15×104であることがより好ましい。
上述のようにディールス・アルダー反応付加部は、上記共役ジエン構造とジエノフィル構造との付加反応により得られる官能基であり、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応が進行して共役ジエン構造とジエノフィル構造が生成される。
なお、加熱条件、光照射条件などは、使用される化合物によって最適な条件は変化する。なお、通常、後述する膜形成時の加熱処理または高エネルギー線照射の条件において、逆ディールス・アルダー反応が進行する。
一般式(F−1)〜一般式(F−4)中、*は化合物(X)との結合位置を表す。)
Y12〜Y14は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、なかでも、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基、カゴ型構造を有する置換基が好ましい。
本発明の組成物には、上記の化合物(X)が含有される。なお、本発明の組成物は、化合物(X)が有機溶剤に溶解した溶液であってもよいし、化合物(X)の反応物を含む固形物であってもよい。
本発明の組成物は、種々の用途に用いることができ、その目的に応じて化合物(X)の含有量や添加する添加剤などの種類が決められる。
溶剤としては、25℃で化合物(X)を5質量%以上(好ましくは10質量%以上)溶解する溶剤が好ましい。具体的には、特開2008−214454号公報の段落番号[0044]に記載の溶剤が挙げられる。
上記の中でも、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
更に、本発明の組成物には、組成物を用いて得られる膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
密着促進剤の好ましい使用量は、特に制限されないが、通常、組成物中の全固形分に対して、10質量%以下、特に0.05〜5質量%であることが好ましい。
本発明の組成物は、上記のように種々の用途に用いることができる。例えば、その用途としては、膜(好ましくは、絶縁膜)を作製するために使用することができる(以下、適宜、膜形成用組成物とも称する。)。
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜(塗膜)は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法、スプレー法、バー塗布法等の任意の方法により、シリコンウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハ、ガラス、プラスチックフィルムなどの基板に塗布した後、溶剤を必要に応じて加熱処理で除去することにより形成することができる。
基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D-スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。
スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1300rpm程度の回転速度が好ましい。また組成物溶液の吐出方法においては、回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出、静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D-スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、αシリーズ(東京エレクトロン製)等が好ましく使用できる。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは0.1〜50keVが好ましく、より好ましくは0.2〜30keV、特に好ましくは0.5〜20keVである。電子線の総ドーズ量は好ましくは0.01〜5μC/cm2 、より好ましくは0.01〜2μC/cm 2 、特に好ましくは0.01〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は0〜500℃が好ましく、より好ましくは20〜450℃、特に好ましくは20〜400℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。
本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
カゴ構造が焼成時に分解しないために、組成物および膜の製造中にSi原子に求核攻撃する基(水酸基、シラノール基など)が実質的に存在しないことが好ましい。
上述した膜形成用組成物から得られる膜(多孔質膜)の厚さは、特に限定されないが、絶縁膜などへの応用の点から、0.005〜10μmが好ましく、0.01〜5.0μmがより好ましく、0.01〜1.0μmがさらに好ましい。
ここで、本発明の膜の厚さは、光学干渉式膜厚測定器にて任意の3箇所以上を測定した場合の単純平均値を意味するものとする。
本発明の膜は、多様の目的に使用することができ、特に絶縁膜として電子デバイスへ好適に用いることができる。電子デバイスとは、半導体装置や、磁気記録ヘッドなどを含めた広範な電子機器を意味する。例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。また、光学装置用の表面保護膜、反射防止膜、位相差膜としても用いることができる。
冷却管を備えた三つ口フラスコを窒素置換し、フェニルマグネシウムブロミド(1M,THF溶液)43.4mLを加え、これに2,3,4,5−テトラメチル−2−シクロペンテノン5gを室温で3分間かけて滴下した。その後2時間加熱還流し、室温まで冷却した。これに氷を添加し、撹拌しながら濃塩酸15mLを加え、室温で30分間撹拌した。反応液をシクロペンチルメチルエーテルで抽出し、有機層を水で2回、食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量のヘキサンに溶解してシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、液体の目的物(ジエンC−1)6.6gを得た(収率:92%)。熱重量分析(窒素流量100 ml/min,昇温速度20℃/min)の結果、5%重量減少温度は234℃であった。1H−NMR測定の結果は以下の通りであった。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :0.95 (d, 3H), 1.87 (s, 3H), 1.93 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 3.19 (m, 1H), 7.16-7.37 (m, 5H)
文献(Tetrahedron Lett., Vol.40, 7449-7454 (1999))に記載の方法に従って、ペンタフルオロフェニルマグネシウムブロミドを合成した。ジエンC−1の合成において、フェニルマグネシウムブロミドの代わりにペンタフルオロフェニルマグネシウムブロミドを用いた以外は、ジエンC−1の合成と同様に反応を行い、ジエンC−2を得た。
冷却管を備えた500mL三つ口フラスコに、1−アダマンタンエタノール5g、四臭化炭素18.4g、アセトニトリル220mLを加え、加熱還流した。これに、アセトニトリル200mLに溶解したトリフェニルホスフィン21.8gを10分間かけて滴下した。その後3時間加熱還流し、室温まで冷却した。反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物を少量の酢酸エチルに溶解してシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、1−(2−ブロモエチル)アダマンタン7.4gを白色固体として得た(収率:97%)。
冷却管を備えた三つ口フラスコにマグネシウム片0.81gを入れ、窒素置換した後、テトラヒドロフラン30mLに溶解した1−(2−ブロモエチル)アダマンタン7.4gを15分間かけて滴下した。その後、30分間加熱還流し、2−(1−アダマンチル)エチルマグネシウムブロミドのTHF溶液を得た。
冷却管を備えた三つ口フラスコを窒素置換し、上記で得られた2−(1−アダマンチル)エチルマグネシウムブロミドのTHF溶液を全量加え、これに2,3,4,5−テトラメチル−2−シクロペンテノン3.83gを室温で3分間かけて滴下した。その後2時間加熱還流し、室温まで冷却した。これに氷を添加し、撹拌しながら濃塩酸15mLを加え、室温で30分間撹拌した。反応液をシクロペンチルメチルエーテルで抽出し、有機層を水で2回、食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量のヘキサンに溶解してシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、白色固体の目的物(ジエンC−5)5.8gを得た(収率:74%)。熱重量分析(窒素流量100 ml/min,昇温速度20℃/min)の結果、5%重量減少温度は264℃であった。1H−NMR測定の結果は以下の通りであった。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :1.41-1.81 (m, 28H), 1.93 (br s, 3H), 2.61 (m, 1H)
文献(J. Chem. Soc. Dalton Trans., 1879-1887 (1980))に記載の方法に従って、1−アダマンタンメチルマグネシウムブロミドを合成した。ジエンC−5の合成において、2−(1−アダマンチル)エチルマグネシウムブロミドの代わりに1−アダマンタンメチルマグネシウムブロミドを用いた以外は、ジエンC−5の合成と同様に反応を行い、ジエンC−4を得た。
三つ口フラスコにジルコノセンジクロリド20.3gを加え、窒素置換した後、トルエン700mLを加えて−78℃に冷却した。これにn−ブチルリチウム(1.6M,ヘキサン溶液)87mLを1時間かけて滴下した。滴下中、反応液は次第に黄色になった。−78℃で10分間攪拌した後、7−テトラデシン27.1gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間攪拌した。反応液は次第に黄色から赤褐色へと変化した。室温で1−ヘプタナール15.9g、塩化アルミニウム(III)18.6gを加え、室温でさらに1時間攪拌した。反応液を0℃まで冷却した後、3規定塩酸100mLを加え、反応を停止した。得られた反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で2回、食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量のヘキサンに溶解してシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、白色固体の目的物(ジエンC−6)20.3gを得た(収率:60%)。1H−NMR測定の結果は以下の通りであった。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :0.68-1.01 (m, 15H), 1.13-1.65 (m, 40H), 1.92-2.57 (m, 11H)
文献(J. Med. Chem., Vol.48, 5025-5037 (2005))に記載の方法に従って、1−アダマンタンカルバルデヒドを合成した。ジエンC−6の合成において、7−テトラデシンの代わりに2−ブチンを、1−ヘプタナールの代わりに1−アダマンタンカルバルデヒドを用いた以外は、ジエンC−6の合成と同様に反応を行い、ジエンC−3を得た。
冷却管とディーンスタークを備えた1L三つ口フラスコにベンジルアルコール328gを加え、窒素置換した後、ナトリウム片25gを内温が120℃以下になるように注意しながら1時間かけて添加した。これにテトラリン200mLを加え、さらにテトラリン50mLに溶解したジシクロペンタジエン7gを加えた。24時間加熱還流した後、室温まで冷却した。ディーンスタークには反応系中で発生した水(約8mL)がトラップされていた。反応液を水600mLで洗浄した後、トルエンで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を加熱したメタノール2Lに溶解し、室温で一晩放置した。さらに−30℃で6時間静置し、析出した結晶を濾過することで、白色固体の目的物(ジエンC−8)17.3gを得た(収率:36%)。1H−NMR測定の結果は以下の通りであった。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :3.07 (s, 2H), 3.19-3.22 (m, 1H), 3.43 (d, 2H), 3.48 (d, 2H), 3.56 (d, 2H), 3.84 (d, 2H), 6.70-6.73 (m, 4H), 7.02-7.28 (m, 21H)
文献(Org. Lett., Vol.8, 2945-2947 (2006))に記載の方法に従って、ジエンC−10を合成した。
文献(J. Mater. Chem., Vol.11, 2974-2978 (2001))に記載の方法に従って、ジエンC−11を合成した。
電子グレード濃塩酸67g、n-ブタノール305g、イオン交換水133gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン59gを15分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール50gで洗浄した。これをテトラヒドロフラン42gに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール42g、続いてイオン交換水127gを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−m)4.2gを得た。1H−NMR測定の結果は以下の通りであった。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :6.13-5.88 (m, 24H)
電子グレード濃塩酸136g、n-ブタノール1L、イオン交換水395gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン78.3gとメチルトリエトキシシラン73.3gの混合溶液を15分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。これをテトラヒドロフラン500mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール200mL続いてイオン交換水200mLを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−k)7.8gを得た。1H−NMR測定の結果は以下の通りであった。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :0.28-0.18 (m, 12H), 6.08-5.88 (m, 12H)
化合物(I−m)50gを電子グレード酢酸ブチル1320gに加えた。得られた溶液を窒素気流中120℃に加熱し、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)0.47gと2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール113mgとを電子グレード酢酸ブチル235mlに溶解させた溶液50.4mlを80分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間120℃にて攪拌した。攪拌終了後、反応液に電子グレードメタノール3L、イオン交換水3Lを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。これをテトラヒドロフラン724gに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール50g、続いて水150gを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール200gを加えた。析出した固体を濾取、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−1)17.7gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=8.7×104、Mn=5.4×104であった。固形物中には未反応の化合物(I−m)は2質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が2.6/5.4の積分比率で観察された。
化合物(I−m)109gをジフェニルエーテル2878gに加えた。得られた溶液を窒素気流中120℃に加熱し、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)168mgをジフェニルエーテル74gに溶解させた溶液15.0mlを30分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間120℃にて攪拌した。攪拌終了後に、反応液に電子グレードメタノール5.4L、水200mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール200mLで洗浄した。これをテトラヒドロフラン1Lに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール2L、続いてイオン交換水125gを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール200mLで洗浄した。この操作を計2回繰り返し、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−2)7.26gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=8.1×104、Mn=4.98×104であった。固形物中には未反応の化合物(I−m)は0.2質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が2.2/5.8の積分比率で観察された。
化合物(I−m)30gをジフェニルエーテル792gに加えた。得られた溶液を窒素気流中150℃に加熱し、重合開始剤として和光純薬工業社製VR−110(Azodi−tert−octane、10時間半減温度110℃)112mgと2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール22mgをジフェニルエーテル49.8gに溶解させた溶液11.4mlを30分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間150℃にて攪拌した。攪拌終了後、反応液に電子グレードメタノール3.5L、イオン交換水150mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール200mLで洗浄した。これをテトラヒドロフラン300mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール30mL、続いてイオン交換水60mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。この操作を計2回繰り返し、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−3)12.5gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=18.3×104、Mn=5.58×104であった。固形物中には未反応の化合物(I−m)は2質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が1.3/6.7の積分比率で観察された。
化合物(I−m)1gを電子グレード酢酸ブチル26.4gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温127℃で加熱還流しながら、重合開始剤として和光純薬工業製V−601(10時間半減温度66℃)1.8mgを電子グレード酢酸ブチル2mlに溶解させた溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間加熱還流した。重合禁止剤として4−メトキシフェノール20mgを加えた後、室温まで冷却した。その後、液重量2gまで減圧濃縮し、電子グレードメタノール20mlを加え、1時間攪拌した後、固形物を濾取、乾燥した。これをテトラヒドロフラン15mlに溶解し、攪拌しながらイオン交換水5mlを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール10mlを加えた。固形分を濾取、乾燥し、白色固体の目的物(樹脂A−4)0.60gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=11.8×104、Mn=3.1×104、Mz+1=27×104であった。固形物中には未反応の化合物(I−m)は3質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分の1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が42/58の積分比率で観察された。
化合物(I−m)1gを電子グレード酢酸ブチル13.2gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温127℃で加熱還流しながら、重合開始剤として和光純薬工業製V−40(10時間半減温度88℃)1mgを電子グレード酢酸ブチル1mlに溶解させた溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間加熱還流した。重合禁止剤として4−メトキシフェノール20mgを加えた後、室温まで冷却した。その後、液重量2gまで減圧濃縮し、電子グレードメタノール20mlを加え、1時間攪拌した後、固形物をろ取、乾燥した。これをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、攪拌しながらイオン交換水1.8mlを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール10mlを加えた。固形分を濾取、乾燥し、白色固体の目的物(樹脂A−5)0.41gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=12.8×104、Mn=3.3×104、Mz+1=38×104であった。固形物中には未反応の例示化合物(I−m)は3質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分の1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が53:47の積分比率で観察された。
特開2007−161788号公報に記載の方法に従い、1,3−ジエチニルアダマンタンの重合体(G−1)を合成した。得られた重合体をGPCで分析すると、Mw=1.37×104、Mn=0.39×104であった。
重合体(G−1)12.9gをトルエン30mLに溶解し、このトルエン溶液を0℃に冷却しながらDIBAL−H(1M,ヘキサン溶液)175mLを加えた。その後室温で3時間攪拌した。次に、飽和塩化アンモニウム水溶液230mLを冷却し、ここに反応液を加え、ろ過した後、ろ液を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量のテトラヒドロフランに溶解して、その溶液をメタノール300mLに加え、析出固体を濾取、乾燥し、白色固体の目的物(樹脂H−1)10.3gを得た。得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=1.35×104、Mn=0.39×104であった。
特開2007−161786号公報に記載の方法に従い、4,9−ジエチニルジアマンタンの重合体(G−2)を合成した。得られた重合体をGPCで分析すると、Mw=1.66×104、Mn=0.54×104であった。
樹脂(H−1)の合成において、重合体(G−1)の代わりに重合体(G−2)を用いた以外は、樹脂(H−1)の合成と同様に反応を行い、樹脂(H−2)を得た。得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=1.65×104、Mn=0.51×104であった。
特表2003−520864号公報に記載の方法に準じて、ビニル基を有するポリアリーレンエーテル(樹脂H−3)を合成した。
特表2004−504455号公報に記載のテトラキス(トラニル)アダマンタンの合成法において、フェニルアセチレンの代わりにフェニルアセチレンと(トリメチルシリル)アセチレンの混合物(等モル量)を用いて化合物(G−4)を合成した。次に、特開2007−314778号に記載の方法に従い、(トリメチルシリル)エチニル基をビニル基に変換し、化合物(H−4)を得た。
国際公開第2005−019305号パンフレットに記載の方法に準じて、ビニル基を有するポリベンゾオキサゾール(樹脂H−5)を合成した。
樹脂(A−1)800mg、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール278mg、ジエン(C−1)1.16gをジフェニルエーテル5gに加えた。得られた溶液を窒素気流中180℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌終了後、反応液を電子グレードメタノール200mlに加え、析出固体を濾取、乾燥し、一般式(F−2)で表わされるディールス・アルダー反応付加部を有する白色固体の目的物(樹脂X−1)1.10gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=9.29×104、Mn=5.70×104であった。固形物中には未反応のジエン(C−1)および分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分の1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基およびディールス・アルダー反応して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基由来のプロトンピーク(4.9〜6.5ppm)と、フェニル基由来のプロトンピーク(6.5〜7.8ppm)が62:18:20の積分比率で観察された。熱重量分析(TA Instruments社SDT Q600を使用、窒素流量 100 ml/min, 20℃/minで昇温)の結果、350℃で33%の重量減少が観測され、樹脂X−1中におけるジエン(C−1)の付加量(質量%)が確認された。
樹脂(A−1)800mg、4−メトキシフェノール157mg、ジエン(C−8)3.03gをジフェニルエーテル5gに加えた。得られた溶液を窒素気流中180℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌終了後、反応液を電子グレードメタノール200mlに加え、析出固体を濾取、乾燥し、一般式(F−2)で表わされるディールス・アルダー反応付加部を有する白色固体の目的物(樹脂X−3)0.91gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=10.1×104、Mn=5.96×104であった。固形物中には未反応のジエン(C−8)および分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分の1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基およびディールス・アルダー反応して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基由来のプロトンピーク(4.9〜6.5ppm)と、フェニル基由来のプロトンピーク(6.5〜7.8ppm)が30:26:44の積分比率で観察された。熱重量分析 (TA Instruments社SDT Q600を使用、窒素流量 100 ml/min, 20℃/minで昇温)の結果、320℃で16%の重量減少が観測され、樹脂X−3中におけるジエン(C−8)の付加量(質量%)が確認された。
樹脂(A−2)800mg、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン281mg、ジエン(C−5)1.67gをジフェニルエーテル5gに加えた。得られた溶液を窒素気流中180℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌終了後、反応液を電子グレードメタノール200mlに加え、析出固体を濾取、乾燥し、一般式(F−2)で表わされるディールス・アルダー反応付加部を有する白色固体の目的物(樹脂X−5)1.24gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、Mw=8.74×104、Mn=5.21×104であった。固形物中には未反応のジエン(C−5)および分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分の1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基およびディールス・アルダー反応して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基由来のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が83:17の積分比率で観察された。熱重量分析 (TA Instruments社SDT Q600を使用、窒素流量 100 ml/min, 20℃/minで昇温)の結果、345℃で39%の重量減少が観測され、樹脂X−5中におけるジエン(C−5)の付加量(質量%)が確認された。
なお、表1および表2中におけるジエンBの付加量は、樹脂X中におけるジエンBの質量%(wt%)である。
上記で得られた樹脂を下記表3に示すように溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度10質量%の溶液を調製した。得られた溶液を0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、スピンコート法で4インチシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレート上にて110℃で1分間、ついで200℃で1分間、基板を予備乾燥し、膜厚600nmの塗布膜を形成させた。
(1)加熱
光洋サーモ社製クリーンオーブンCLH-21CD(III)により、窒素雰囲気下、クリーンオーブン中で400℃、60分間加熱した。
(2)EB照射
ウシオ電機社製Mini−EBにてAr雰囲気、圧力100kPa、基板温度350℃の条件で、電子加速電圧20keV、電子線ドーズ量1μCcm−2を5分間照射した。
(3)UV照射
ウシオ電機社製誘電体バリア放電方式エキシマランプUER20−172を用い、窒素気流下、350℃のホットプレート上で172nmの波長光100mJ/cm2を5分照射した。
なお、表3中において、界面活性剤の含有量は、組成物(塗布液)全量に対する質量%を表す。一方、密着促進剤の含有量は、組成物(塗布液)中の全固形物に対する質量%で表される。
フォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて、1MHzにおける容量値(測定温度25℃)から算出した。
<硬膜時の膜減り率>
予備乾燥後の膜厚と、加熱、EB照射、またはUV照射による硬膜後の膜厚から算出した。
一方、硬化処理時にジエン化合物を放出しない比較例1および2において得られた膜は、比誘電率は高く、硬膜処理時にシクロペンタジエンを放出する比較例3において得られた膜は、硬膜時の膜収縮率が大きかった。また、炭素数4の置換基を有するt−ブチルシクロペタンジエンを用いた比較例4においても、硬膜時の膜収縮率が大きかった。
MTS社ナノインデンターSA2を使用して、実施例1〜2および比較例1〜2のヤング率を測定した。実施例1では5.6GPa、実施例2では5.3GPa、比較例1では3.1GPa、比較例2では2.9GPaであった。本発明の化合物を使用して得られる膜は、より優れた機械的強度を示すことがわかった。
Claims (11)
- ジエノフィル構造を有する化合物(A)と、下記一般式(B−1)〜一般式(B−3)のいずれかで表される共役ジエン構造を有する化合物(B)とのディールス・アルダー反応により形成され、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応を介して前記共役ジエン構造を有する化合物(B)を放出する化合物。
一般式(B−2)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X7〜X10およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X7〜X10のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X7〜X10、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X7〜X10およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(B−3)中、X11〜X16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。) - 前記共役ジエン構造を有する化合物(B)の分子量が150〜600の範囲である、請求項1に記載の化合物。
- 前記ジエノフィル構造を有する化合物(A)が、シロキサン構造を有する化合物である、請求項1または2に記載の化合物。
- 前記ジエノフィル構造を有する化合物(A)が、m個のRSi(O0.5)3ユニット(mは8〜16の整数を表し、Rは、水素原子または置換基を表す。)を有し、各ユニットが各ユニットにおける酸素原子を共有して他のユニットに連結しカゴ構造を形成している化合物(I)またはその重合体である、請求項3に記載の化合物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の化合物を含有する組成物。
- さらに、溶剤を含む請求項6に記載の組成物。
- 絶縁膜形成用途に用いられる請求項6または7に記載の組成物。
- 請求項6〜8のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布した後、硬膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
- 請求項9に記載の製造方法を用いて製造された絶縁膜。
- 請求項10に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
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