JP2010189571A - ディールス・アルダー反応付加部を有する化合物 - Google Patents

ディールス・アルダー反応付加部を有する化合物 Download PDF

Info

Publication number
JP2010189571A
JP2010189571A JP2009036641A JP2009036641A JP2010189571A JP 2010189571 A JP2010189571 A JP 2010189571A JP 2009036641 A JP2009036641 A JP 2009036641A JP 2009036641 A JP2009036641 A JP 2009036641A JP 2010189571 A JP2010189571 A JP 2010189571A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
compound
group
substituent
film
carbon atoms
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009036641A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5153680B2 (ja
Inventor
Kyohei Arayama
恭平 荒山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2009036641A priority Critical patent/JP5153680B2/ja
Publication of JP2010189571A publication Critical patent/JP2010189571A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5153680B2 publication Critical patent/JP5153680B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Organic Insulating Materials (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Other Resins Obtained By Reactions Not Involving Carbon-To-Carbon Unsaturated Bonds (AREA)
  • Silicon Polymers (AREA)
  • Internal Circuitry In Semiconductor Integrated Circuit Devices (AREA)
  • Formation Of Insulating Films (AREA)

Abstract

【課題】半導体素デバイスなどにおける層間絶縁膜用の材料として使用するのに適し、硬膜時における膜減りが小さく、かつ誘電率に優れた膜を製造することができる化合物、およびその化合物を含む組成物、さらにはその組成物より得られる膜を提供。
【解決手段】化合物は、ジエノフィル構造を有する化合物(A)と、環状もしくは直鎖状のいずれかで表される共役ジエン構造を有する化合物(B)とのディールス・アルダー反応により形成され、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応を介して前記共役ジエン構造を有する化合物(B)を放出する化合物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、化合物に関し、さらに詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料として有用で、適当な均一な厚さを有する塗膜が形成可能で、かつ、誘電率特性などに優れた絶縁膜を製造することができる化合物、および該化合物を含む組成物に関する。
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、気相成長(CVD)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
しかし、無機材料の膜の中で最も低い誘電率を示すCVD−SiO2膜でも、比誘電率は約4程度である。また、低誘電率CVD膜として最近検討されているSiOF膜の比誘電率は約3.3〜3.5であるが、この膜は吸湿性が高く、使用しているうちに誘電率が上昇するという問題がある。
かかる状況下、有機ポリマーに低分子のカゴ型化合物を添加した溶液を塗布して、低屈折率、低密度の膜を得る方法などが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、得られる膜の誘電率および機械的強度が実用的な観点からは必ずしも満足いくものではなかった。さらに、膜の硬膜時における焼成時の膜減りが大きいため、得られる膜にクラックなどが生じやすく、デバイスなどへの応用が制限されるという問題があった。
特開2000−334881号公報
本発明は、上記問題点を解決するため、半導体素子デバイスなどにおける層間絶縁膜用の材料として使用するのに適し、硬膜時における膜減りが小さく、かつ誘電率および機械的強度に優れた膜を製造することができる化合物、およびその化合物を含む組成物、さらにはその組成物より得られる膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討行った結果、所定の炭素数の置換基を有する共役ジエン構造を有する化合物と、ジエノフィル構造を有する化合物とから得られるディールス・アルダー反応付加部を有する化合物を用いることによって、上記課題が解決されることを見出した。
つまり、本発明の上記目的は、下記の手段より達成されることが見出された。
<1> ジエノフィル構造を有する化合物(A)と、下記一般式(B−1)〜一般式(B−3)のいずれかで表される共役ジエン構造を有する化合物(B)とのディールス・アルダー反応により形成され、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応を介して前記共役ジエン構造を有する化合物(B)を放出する化合物。
Figure 2010189571
(一般式(B−1)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X1〜X6およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X1〜X6のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X1〜X6、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X1〜X6およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(B−2)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X7〜X10およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X7〜X10のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X7〜X10、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X7〜X10およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(B−3)中、X11〜X16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。)
<2> 前記共役ジエン構造を有する化合物(B)の分子量が150〜600の範囲である、<1>に記載の化合物。
<3> 前記ジエノフィル構造を有する化合物(A)が、シロキサン構造を有する化合物である、<1>または<2>に記載の化合物。
<4> 前記ジエノフィル構造を有する化合物(A)が、m個のRSi(O0.5)3ユニット(mは8〜16の整数を表し、Rは、水素原子または置換基を表す。)を有し、各ユニットが各ユニットにおける酸素原子を共有して他のユニットに連結しカゴ構造を形成している化合物(I)またはその重合体である、<3>に記載の化合物。
<5> 前記化合物(I)が、下記一般式(Q−1)〜(Q−7)のいずれかで表される化合物である、<4>に記載の化合物。
Figure 2010189571
(一般式(Q−1)〜(Q−7)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)のそれぞれにおいて、Rのうち少なくとも1つは、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
<6> <1>〜<5>のいずれかに記載の化合物を含有する組成物。
<7> さらに、溶剤を含む<6>に記載の組成物。
<8> 絶縁膜形成用途に用いられる<6>または<7>に記載の組成物。
<9> <6>〜<8>のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布した後、硬膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
<10> <9>に記載の製造方法を用いて製造された絶縁膜。
<11> <10>に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
本発明は、半導体素子デバイスなどにおける層間絶縁膜用の材料として使用するのに適し、硬膜時における膜減りが小さく、かつ誘電率および機械的強度に優れた膜を製造することができる化合物、およびその化合物を含む組成物、さらにはその組成物より得られる膜を提供する。
以下、本発明の化合物、この化合物を含む組成物、および組成物より得られる膜について詳細に記述する。
本発明の化合物(以後、化合物(X)とも記す)は、ジエノフィル構造を有する化合物(A)と、一般式(B−1)〜一般式(B−3)のいずれかで表される共役ジエン構造を有する化合物(B)の少なくとも1種とのディールス・アルダー反応により形成される。さらに、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応が進行して、共役ジエン構造を有する化合物(B)が脱離する化合物である。
この化合物(X)を含む塗膜において、加熱、光照射、放射線照射、またはそれらの組み合わせを用いた硬膜処理を行うことにより、逆ディールス・アルダー反応を進行させることができる。これにより化合物(X)から共役ジエン構造を有する化合物(B)が揮発して膜空隙が増大し、更に残基間で硬化反応が生ずるため、低誘電率、高機械強度、高耐熱性を示し、膜減りが小さい膜を形成できる。特に、本発明においては嵩高い置換基を有する化合物(B)を使用することにより、膜中における化合物(B)の占有体積が増大し、化合物(B)が揮発した後の膜空隙が増大することで、より低誘電率な膜を形成することができる。さらに、嵩高い置換基(炭素数5以上)を有する化合物(B)を使用することで、化合物(B)の逆ディールス・アルダー反応温度が上昇するため、膜空隙形成前に一部硬膜が進行し、膜空隙形成時の膜減りを抑制することができる。
まず、化合物(X)の原料であるジエノフィル構造を有する化合物(A)、共役ジエン構造を有する化合物(B)について説明する。
<ジエノフィル構造を有する化合物(A)>
本発明の化合物の原料の一つは、ジエノフィル構造を有する化合物(A)である。
ジエノフィル構造とは、後述する共役ジエン構造と付加的に反応(ディールス・アルダー反応)して環式構造を与える不飽和構造であれば特に限定されず、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基や、炭素−炭素三重結合を有するアルキニル基などが挙げられる。ジエノフィル構造の好適な例としては、例えば、以下のような構造が挙げられる。なかでも、(E-1)骨格、(E-2)骨格、(E-3)骨格などが好ましい。
Figure 2010189571
なお、(E−1)〜(E−16)骨格中、Y1〜Y7は、それぞれ独立に、水素原子また置換基を表す。置換基の定義は、後述する一般式(I)中のRで説明した置換基と同義である。
化合物(A)は、上記のようなジエノフィル構造を有する化合物であれば特に限定されず、低分子化合物または高分子化合物(例えば、樹脂化合物)であってもよい。例えば、ポリアリーレン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリキノリン樹脂、ポリキノキサリン樹脂などの高耐熱性樹脂、または、これらの樹脂の前駆体が挙げられる。他には、アダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、およびドデカヘドランからなる群から選ばれるカゴ型構造を有する化合物(以後、単にカゴ型構造を有する化合物とも記す)、シロキサン構造(Si−O結合)を有する化合物などが好ましく挙げられる。
これらの中で、耐熱性や低誘電性などの観点から、カゴ型構造を有する化合物またはシロキサン構造を有する化合物が好ましく、特にシロキサン構造を有する化合物が好ましい。
高耐熱性樹脂の具体例としては、特開平11−322929号公報、特開2003−12802号公報、特開2004−18593号公報に記載のポリベンゾオキサゾール、特開2001−2899号公報に記載のキノリン樹脂、特表2003−530464号公報、特表2004−535497号公報、特表2004−504424号公報、特表2004−504455号公報、特表2005−501131号公報、特表2005−516382号公報、特表2005−514479号公報、特表2005−522528号公報、特開2000−100808号公報、米国特許第6509415号明細書に記載のポリアリール樹脂、特開2003−252992号公報、特開2004−26850号公報に記載のポリイミドなどが挙げられる。カゴ型構造を有する化合物の具体例としては、特開平11−214382号公報、特開2001−332542号公報、特開2003−252982号公報、特開2003−292878号公報、特開2004−2787号公報、特開2004−67877号公報、特開2004−59444号公報に記載のポリアダマンタンなどが挙げられる。
<シロキサン構造を有する化合物>
化合物(A)が、シロキサン構造(Si−O結合)を有する化合物である場合、本発明の効果を損なわない限り、いかなるシロキサン構造を有する化合物であってもよい。シロキサン構造を有する化合物は、低分子化合物および高分子化合物を含む。ケイ素原子と酸素原子とでなるシロキサン構造を有する化合物は、優れた耐熱性を示す。シロキサン構造を有する化合物中におけるシロキサン構造の含有量としては、シロキサン構造を有する化合物全量に対して、30〜100質量%が好ましく、60〜100質量%がより好ましい。
シロキサン構造を有する化合物としては、低誘電特性、機械的特性が優れるという観点から、シルセスキオキサン化合物が好ましい。シルセスキオキサン化合物は、少なくともシルセスキオキサン構造を有する化合物である。シルセスキオキサン構造とは、各ケイ素原子が3個の酸素原子と結合し、各酸素原子が2個のケイ素原子と結合している構造(珪素原子数に対する酸素原子数が1.5)である。シルセスキオキサン化合物としては、例えば、ラダー型、カゴ型、カゴ型の一部が欠損した不完全カゴ型、およびこれらの混合物などが挙げられ、耐熱性、経時安定性などの観点から、カゴ型が好ましい。なお、カゴ型構造は、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような構造を指す。カゴ型構造を有するシルセスキオキサン化合物は、カゴ型シルセスキオキサン化合物とも称する。
上記カゴ型シルセスキオキサン化合物としては、m個のRSi(O0.5ユニットが、その酸素原子を共有しながら他のRSi(O0.5ユニットと互いに連結することで形成されるカゴ型構造を含む化合物(以下、化合物(I)とも称する)、およびそれを繰り返し単位とする重合体等が挙げられる。
なお、Rは水素原子または置換基を表す。
Rの置換基の例としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基、またはそれらを組み合わせた基が好ましく挙げられる。
Rで表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。
Rで表されるシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、多環でもよく、環内に酸素原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。
Rで表されるアリール基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
Rで表されるアラルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基が挙げられる。
Rで表されるアルコキシ基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基などが挙げられる。
Rで表されるケイ素原子含有基は、ケイ素が含有されていれば特に制限されないが、下記式で表される基が好ましい。
*−L1−Si−(R203
上記式中、*はケイ素原子との結合位置を表す。L1はアルキレン基、−O−、−S−、−Si(R21)(R22)−、−N(R23)−または、これらを組み合わせた2価の連結基を表す。L1は、アルキレン基、−O−または、これらを組み合わせた2価の連結基が好ましい。
アルキレン基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。R21、R22、R23およびR20は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基を表す。R21、R22、R23およびR20で表される基として好ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、エチニル基などが挙げられる。
ケイ素原子含有基としては、シリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)がもっとも好ましい。
Rで表されるアルケニル基は、例えば、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、およびケイ素原子含有基の任意の位置に2重結合を有する基が挙げられる。炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられ、重合制御性の容易さ、機械強度の観点から、ビニル基が好ましい。
Rで表されるアルキニル基は、例えば、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、およびケイ素原子含有基の任意の位置に3重結合を有する基が挙げられる。炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。重合制御性の容易さ、機械強度の観点から、エチニル基が好ましい。
化合物(I)におけるmは8〜16の整数を表す。誘電率低下効果の点から、mは8、10、12、14、16が好ましく、入手性の観点から8、10、12がより好ましく、更に重合制御性の観点から8、12が最も好ましい。
化合物(I)の好適な例としては、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表される化合物が挙げられる。なかでも、入手性、重合制御性、溶解性の観点から、一般式(Q−6)で表される化合物が最も好ましい。
Figure 2010189571
一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表される化合物におけるRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を表す。複数のRは、同一でも異なっていてもよく、少なくとも1つはアルケニル基、アルキニル基を示す。
Rで表される置換基は、上記で詳述した置換基の定義と同義あり、好ましくは炭素数1〜20であり、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基、またはそれらを組み合わせた基などが挙げられる。
Rのうち、少なくとも1つはアルケニル基、アルキニル基を示す。好ましくは、Rのうち2つ以上がアルケニル基またはアルキニル基であることが好ましく、3つ以上がより好ましく、全部が特に好ましい。このように複数のアルケニル基、アルキニル基があると、硬膜時に逆ディールス・アルダー反応によってジエノフィルであるアルケニル基、アルキニル基が膜中において数多く生成され、これらによる架橋反応(硬化反応)がより良好に進行する。これにより得られる膜の機械強度が向上し、硬膜時における膜減りもより改善される。
化合物(I)で表されるカゴ型シルセスキオキサン化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2010189571
化合物(I)は、アルドリッチ、Hybrid Plastics社から購入できるものを使用してもよいし、Polymers, 20, 67-85, 2008, Journal of Inorganic and Organometallic Polymers, 11(3), 123-154, 2001, Journal of Organometallic Chemistry, 542, 141-183, 1997, Journal of Macromolecular Science. A. Chemistry, 44(7), 659-664, 2007, Chem. Rev., 95, 1409-1430, 1995, Journal of Inorganic and Organometallic Polymers, 11(3), 155-164, 2001, Dalton Transactions, 36-39, 2008, Macromolecules, 37(23), 8517-8522, 2004, Chem. Mater., 8, 1250-1259, 1996などに記載の公知の方法で合成してもよい。
本発明の化合物(I)におけるRが、下記一般式(II)で表される基である場合も好ましい。この場合、一般式(II)で表される基は、下記一般式(III)で表される化合物と下記一般式(IV)で表される化合物を反応させることで合成できる。
(R13−Si−O− (II)
〔MO-Si(O0.5)3m (III)
(R13−Si−Cl (IV)
一般式(II)で表される化合物は、例えば、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1997, 36, No.7, 743-745などに記載の方法に従って合成できる。
これらの式中、R1はそれぞれ独立に置換基を表すが、R1で表される置換基の具体例としては、アルキル基、アリール基、ビニル基、エチニル基などが挙げられる。mおよびR1は、化合物(I)におけるmとRとそれぞれ同義である。Mは金属原子(例えば、Na、K、Cu、Ni、Mn)またはオニウムカチオン(例えば、テトラメチルアンモニウム)を表す。なお、Mが多価の金属原子である場合は、複数の−O−Si(O0.5)3が多価の金属原子Mに結合した形態を意味する。
一般式(III)で表される化合物と、一般式(IV)で表される化合物との反応は、例えば、溶媒中に、一般式(III)で表される化合物と、一般式(III)で表される化合物中に含まれるSi−OM基数の1〜100倍モルの一般式(IV)で表される化合物を添加し、撹拌しながら、通常0〜180℃、10分〜20時間行う。
溶媒としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶剤が好ましい。一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物を反応させる際には、トリエチルアミン、ピリジンなどの塩基を添加してもよい。
<重合体>
化合物(A)の好適な実施態様の一つとしては、化合物(I)を繰り返し単位とする重合体(好ましくは、上記一般式(Q−1)〜(Q−7)のいずれかで表される化合物の重合体)が挙げられ、複数の異なった化合物(I)の重合物が含まれていてもよい。その場合、複数の異なった化合物(I)からなる共重合体であってもよいし、ホモポリマーの混合物であってもよい。本発明の組成物が、複数の異なった化合物(I)からなる共重合体を含む場合、m=8、10、および12から選ばれる2種以上の化合物(I)の混合物の共重合体であることが好ましい。
重合体は、化合物(I)以外の化合物との共重合物であってもよい。その場合に用いられる化合物としては、重合性炭素−炭素不飽和結合またはSiH基を複数有する化合物が好ましい。好ましい化合物の例としては、ビニルシラン類、ビニルシロキサン類、フェニルアセチレン類、ビニルアダマンタン類、[(HSiO0.53]8等が挙げられる。
この場合、化合物(I)由来の成分は、共重合物中の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが最も好ましい。
化合物(I)を繰り返し単位とする重合体を製造した際に含まれる未反応の化合物(I)の含量は、全固形分に対して、15質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下であり、最も好ましくは7質量%以下である。これにより塗布面状が改善できる。なお、全固形分とは、化合物(I)の重合体と未反応物との合計成分を意味する。
重合体の重量平均分子量(M)は、化合物(I)単量体を除いて、2.0×10〜70×10であることが好ましく、3.0×10〜30×10であることがより好ましく、4.0×10〜20×10であることが最も好ましい。
重合体の数平均分子量(M)は、化合物(I)単量体を除いて、1.0×10〜30×10であることが好ましく、1.0×10〜15×10であることがより好ましく、2.0×10〜10×10であることが最も好ましい。
重合体のZ+1平均分子量(MZ+1)は、化合物(I)単量体を除いて、1.0×10〜60×10であることが好ましく、2.0×10〜45×10であることがより好ましく、3.0×10〜30×10であることが最も好ましい。
上記範囲の重量平均分子量および数平均分子量に設定することにより、有機溶剤に対する溶解性およびフィルターろ過性が向上し、塗布膜の面状が改善された、低誘電率である膜を形成することができる。
有機溶剤に対する溶解性、フィルターろ過性の観点から、上記重合体は分子量300万以上の成分を実質的に含まないことが好ましく、200万以上の成分を実質的に含まないことがより好ましく、100万以上の成分を含まないことが最も好ましい。
化合物(I)の重合体には、化合物(I)由来の未反応のアルケニル基およびアルキニル基が残存していることが好ましく、化合物(I)由来のアルケニル基およびアルキニル基のうち、10〜90モル%が未反応で残存していることが好ましく、20〜80モル%が未反応で残存していることが好ましく、30〜70モル%が未反応で残存していることが最も好ましい。上記範囲内であれば、得られる膜の硬化性、機械強度がより向上する。
化合物(I)の重合体には、重合開始剤、添加剤または重合溶媒が重合体全量に対して0.1〜40質量%結合していてもよい。それらの含有量は、重合体全量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%が、より好ましく、0.1〜5質量%が最も好ましい。
これらについては、組成物のNMRスペクトル等から定量することができる。
化合物(I)の重合体を製造するための方法としては、化合物(I)の炭素−炭素不飽和結合の重合反応、ハイドロシリレーション反応(特開2007−092019号公報の段落番号[0037]参照)、酸あるいは塩基触媒を用いたゾルゲル反応を用いた製造法(ゾル−ゲル法のナノテクノロジーへの応用(CMC、2005)、ゾル-ゲル法応用の展開(CMC、2008)参照)が挙げられる。
化合物(I)の炭素−炭素不飽和結合の重合反応としてはどのような重合反応でもよいが、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合などが挙げられる。
上記重合体を製造するための方法としては、化合物(I)の炭素−炭素不飽和結合の重合反応が好ましく、ラジカル重合が最も好ましい。合成方法としては、化合物(I)および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、化合物(I)を溶剤に溶解させ加熱し、開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法(連続添加)、開始剤を複数回分割して加える分割添加重合法(分割添加)などが挙げられる。膜強度および分子量再現性がより改善される点で、分割添加および連続添加が好ましい。
重合反応の反応温度は、通常0℃〜200℃であり、好ましくは40℃〜170℃、さらに好ましくは80℃〜160℃である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
重合時の反応液中の化合物(I)の濃度は、反応液全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下が最も好ましい。上記濃度範囲に設定することにより、ゲル化成分などの不純物の生成を抑制することができる。
上記重合反応で使用する溶剤は、化合物(I)が必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成される膜の特性に悪影響を与えないものであれば、特に制限はない。
溶剤としては、例えば、特開2008−218639号公報の段落番号[0038]に記載の溶媒が挙げられる。より好ましい溶剤は、エステル系溶剤、エーテル系溶剤および芳香族炭化水素系溶剤であり、具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、t−ブチルベンゼンが好ましく、特に好ましくは酢酸エチル、酢酸ブチル、ジフェニルエーテル、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応時に重合開始剤を分解させるのに必要な温度まで反応液を加温できるために、溶剤の沸点は65℃以上であることが好ましい。
化合物(I)の重合反応は、非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤の存在下で重合することができる。
重合開始剤としては、特に、有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。有機過酸化物および有機アゾ系化合物としては、特許公開2008−239685号公報の段落番号[0033]〜[0035]に記載の化合物を使用することができる。
重合開始剤としては、試薬自体の安全性および重合反応の分子量再現性から、有機アゾ系化合物が好ましく、なかでも重合体中に有害なシアノが取り込まれないV−601などのアゾエステル化合物が好ましい。
重合開始剤の10時間半減期温度は、100℃以下であることが好ましい。10時間半減期温度が100℃以下であれば、重合開始剤を反応終了時に残存しないようにすることが容易である。
重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.0001〜2モル、より好ましくは0.003〜1モル、特に好ましくは0.001〜0.5モルである。
重合反応終了時の重合体の重量平均分子量(M)は、2×10〜50×10であることが好ましく、3×10〜40×10であることがより好ましく、4×10〜40×10であることが最も好ましい。
重合反応終了時のポリマーのZ+1平均分子量(MZ+1)は10×10〜60×10であることが好ましく、9×10〜55×10であることがより好ましく、8×10〜40×10であることが最も好ましい。
重合反応終了時の重合体は、分子量300×10以上の成分を実質的に含まないことが好ましく、200×10以上の成分を実質的に含まないことがより好ましく、100×10以上の成分を含まないことが最も好ましい。
重合時に、これらの分子量条件を満たすと、塗布面状がよく、焼成時の膜減りが小さい膜形成用組成物を収率よく製造することができる。
本発明の化合物(X)を製造する際には、化合物(I)の重合反応を行った反応液をそのまま用いてもよいが、反応終了後、精製処理を実施することが好ましい。精製の方法としては、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過、遠心分離処理、カラムクロマトグラフィー等の溶液状態での精製方法や、重合体溶液を貧溶媒へ滴下することで重合体を貧溶媒中に凝固させ、残留単量体等を除去する再沈澱法や、ろ別した重合体スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法など通常の方法を適用できる。
<カゴ型構造を有する化合物>
化合物(A)がカゴ型構造を有する化合物である場合は、アダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、およびドデカヘドランからなる群から選ばれるカゴ型構造を含む化合物であり、「カゴ型構造」の定義は上記と同様である。カゴ型構造を有する化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物(例えば重合体(ポリマー))であってもよいが、好ましくはカゴ型構造を有するモノマー(該モノマーは前駆体と同義である)の重合体である。ここでカゴ型構造を有するモノマーとは、互いに重合して2量体以上の重合体になるものを指す。この重合体は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。
カゴ型構造を有する化合物が重合体である場合、その重量平均分子量は、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは5,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。カゴ型構造を有する化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3,000、より好ましくは200〜2,000、特に好ましくは220〜1,000である。
カゴ型構造を有する化合物のカゴ型構造としては、より好ましくはアダマンタン、ビアダマンタンまたはジアマンタンであり、低誘電率である点で、特に好ましくはビアダマンタンまたはジアマンタンである。該カゴ型構造は、飽和、不飽和結合のいずれを含んでいてもよく、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を含んでもよいが、低誘電率の見地から飽和炭化水素が好ましい。
カゴ型構造を有する化合物のカゴ型構造は、2〜4価の基であることが好ましい。このとき、カゴ型構造に結合する基は、1価以上の置換基でも2価以上の連結基でもよい。カゴ型構造は、より好ましくは2または3価の基であり、特に好ましくは2価の基である。
カゴ型構造を有する化合物のカゴ型構造は、1つ以上の置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子または沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニルなど)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニルなど)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなど)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイルなど)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニルなど)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイルなど)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシなど)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニルなど)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリルなど)などである。
カゴ型構造を有するモノマーの重合反応は、モノマーに置換した重合性基によって起こる。ここで重合性基とは、モノマーを重合せしめる反応性の置換基を指す。該重合反応としてはどのような重合反応でもよいが、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、または、遷移金属触媒重合などが挙げられる。
カゴ型構造を有するモノマーの重合反応は非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカルなどの遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが、特に有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、上記の有機過酸化物が好ましく用いられる。有機アゾ系化合物としては、上記の有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。
重合開始剤は1種のみ、または、2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の使用量は、カゴ型構造を有するモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
カゴ型構造を有するモノマーの重合反応は、特開2008−239685号公報の段落番号[0030]〜[0031]に記載の遷移金属触媒存在下で行うことも好ましい。
カゴ型構造は、ポリマー中にペンダント基として置換していてよく、ポリマー主鎖の一部となっていてもよいが、ポリマー主鎖の一部となっている形態がより好ましい。ここで、ポリマー主鎖の一部になっている形態とは、本ポリマーからカゴ型構造を除去するとポリマー鎖が切断されることを意味する。この形態においては、カゴ型構造は直接単結合するかまたは適当な2価の連結基によって連結される。連結基の例としては例えば、−C(R35)(R36)−、−C(R37)=C(R38)−、−C≡C−、アリーレン基、−CO−、−O−、−SO2−、−N(R39)−、−Si(R40)(R41)−またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。ここで、R35〜R41はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基または芳香族炭化水素基を表す。この中でより好ましい連結基は、−C(R35)(R36)−、−CH=CH−、−C≡C−、アリーレン基、−O−、−Si(R40)(R41)−またはこれらを組み合わせた基であり、特に好ましいものは、低誘電率である見地から−C(R35)(R36)−、−CH=CH−である。
本発明に用いるカゴ型構造を有する化合物は、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーまたはその重合体であることが好ましい。さらには、下記一般式(G−1)〜(G−6)のいずれかで表される化合物またはその重合体であることがより好ましい。
Figure 2010189571
(一般式(G−1)〜(G−6)中、V〜Vはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基またはカルバモイル基などを表し、Z〜Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表し、m、mは1〜16の整数を表し、n、nは0〜15の整数を表し、m、m、m、mはそれぞれ独立に1〜15の整数を表し、n、n、n、nは0〜14の整数を表し、m、mは1〜20の整数を表し、n、nは0〜19の整数を表す。)
一般式(G−1)〜(G−6)中、V〜Vはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルケニル基(好ましくは、炭素数2〜10)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜10)、アリール基(好ましくは、炭素数6〜20)、シリル基(好ましくは、炭素数0〜20)、アシル基(好ましくは、炭素数2〜10)、アルコキシカルボニル(好ましくは、炭素数2〜10)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜20)などを表す。このうち、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(G−1)〜(G−6)中、Z〜Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素など)、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アリール基(好ましくは、炭素数6〜20)またはシリル基(好ましくは、炭素数0〜20)を表す。より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくはアルキル基(メチル基など)である。
〜V、Z〜Zは、さらに別の置換基で置換されていてもよい。
一般式(G−1)または一般式(G−4)中、m、mはそれぞれ独立に1〜16の整数を表し、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、特に好ましくは2である。
一般式(G−1)または一般式(G−4)中、n、nはそれぞれ独立に0〜15の整数を表し、好ましくは0〜4、より好ましくは0または1、特に好ましくは0である。
一般式(G−2)または一般式(G−5)中、m、m、m、mはそれぞれ独立に1〜15の整数を表し、好ましくは1〜4で、より好ましくは1〜3、特に好ましくは2である。
一般式(G−2)または一般式(G−5)中、n、n、n、nはそれぞれ独立に0〜14の整数を表し、好ましくは0〜4、より好ましくは0または1、特に好ましくは0である。
一般式(G−3)または一般式(G−6)中、m、mはそれぞれ独立に1〜20の整数を表し、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、特に好ましくは2である。
一般式(G−3)または一般式(G−6)中、n、nはそれぞれ独立に0〜19の整数を表し、好ましくは0〜4、より好ましくは0または1、特に好ましくは0である。
カゴ型構造を有するモノマーとしては、好ましくは一般式(G−1)、一般式(G−2)、一般式(G−4)または一般式(G−5)で表される化合物であり、より好ましくは一般式(G−1)または一般式(G−2)で表される化合物であり、特に好ましくは一般式(G−2)で表される化合物である。
カゴ型構造を有する化合物は、2種以上を併用してもよい。また、本発明に用いることができるカゴ型構造を有するモノマーを2種以上共重合してもよい。
カゴ型構造を有する化合物としては、例えば、特開2008−166384号公報の段落番号[0041]〜[0044]に記載の化合物を使用することができる。
カゴ構造を有する化合物は、有機溶剤へ十分な溶解性を有することが好ましい。カゴ構造を有する化合物の溶解度は、25℃でシクロヘキサノンまたはアニソールに対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
重合反応で使用する溶媒は、原料であるカゴ型構造を有するモノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、特開2008−218639号公報の段落番号[0038]に記載の溶媒が挙げられる。
反応液中のカゴ型構造を有するモノマーの濃度は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
重合反応の最適な条件は、重合開始剤、カゴ型構造を有するモノマー、溶媒の種類、濃度などによって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴンなど)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
重合して得られるポリマーの重量平均分子量の好ましい範囲は1,000〜500,000、より好ましくは5,000〜300,000、特に好ましくは10,000〜200,000である。
カゴ型構造を有する化合物の合成方法としては、まず、例えば市販のジアマンタンを原料として、臭化アルミニウム触媒存在下または非存在下で臭素と反応させて臭素原子を所望の位置に導入する。続けて、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄などのルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応を行い、2,2−ジブロモエチル基を導入する。さらに、続けて強塩基で脱HBr化してエチニル基に変換することで合成することができる。具体的には、Macromolecules, 1991年 24巻 5266〜5268頁、1995年 28巻 5554〜5560頁、Journal of Organic Chemistry, 39, 2995-3003 (1974)などに記載された方法に準じて合成することが出来る。
また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウムなどでアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
<共役ジエン構造を有する化合物(B)>
共役ジエン構造を有する化合物(B)は、上述化合物(A)とディールス・アルダー反応可能な共役ジエン構造を有する化合物であり、下記一般式(B−1)〜一般式(B−3)のいずれかで表される。なお、共役ジエン構造を有する化合物(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
Figure 2010189571
一般式(B−1)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X1〜X6およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X1〜X6のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X1〜X6、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X1〜X6およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(B−2)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X7〜X10およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X7〜X10のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X7〜X10、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X7〜X10およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(B−3)中、X11〜X16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(B−1)〜(B−3)中のX1〜X19で表される置換基は特に制限されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基、カゴ型構造を有する置換基、またはそれらを組み合わせた基が好ましく挙げられる。なかでも、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ケイ素原子含有基、カゴ型構造を有する置換基などが好ましい。
アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、およびケイ素原子含有基は、上記一般式(I)中のRで説明した各基と同義である。
カゴ型構造を有する置換基としては、具体的には、アダマンチル基、ジアマンチル基、トリアマンチル基、テトラマンチル基などが挙げられる。
上記の炭素数5以上の置換基は、炭素原子が5個以上含まれている置換基であれば特に制限されない。なかでも、炭素数5〜18が好ましく、5〜12がより好ましい。上記範囲内であれば、得られる膜の誘電率の向上と膜減りの低減とがよりバランス良く達成される。なお、炭素数が5より小さいと、化合物(B)が逆ディールス・アルダー反応によって脱離する温度が低いため、硬膜時における膜減りが大きくなり好ましくない。炭素数が18を超えると、揮発しにくくなるため膜中に残存して十分に膜空隙が形成せず、低誘電率化の効果が小さく場合がある。
なお、この置換基の具体例としては、炭素数5以上の芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基)、炭素数5以上の鎖状または環状脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基)、炭素数5以上のカゴ型構造を有する置換基(アダマンチル基、ジアマンチル基、トリアマンチル基)などが挙げられる。これら炭素数5以上の置換基は、さらにハロゲン原子(例えば、フッ素原子など)やアルキル基などの置換基をさらに有していてもよい。
炭素数5以上の置換基としては、環状構造(芳香族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、カゴ型構造を有する置換基)を有することが好ましい。
より具体的には、以下の一般式(K)で表される置換基であることが好ましい。
*−L−U 一般式(K)
(一般式(K)中、Uはフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、およびジアマンチル基からなる群から選択されるいずれかの官能基を表す。Lは、単結合または2価の連結基を表す。)
Uで表される官能基は、さらに置換基を有していてもよい。例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など)、アルキル基、アルキレンオキシ基、アリール基などが挙げられる。
Lで表される2価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基など)、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、ブテン基など)、アルキレンオキシ基、アリーレン基(例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基など)、アリーレンオキシ基、−Si(X20)(X21)−、−O−、−COO−などが好ましく挙げられる。なかでも、アルキレン基、アルキレンオキシ基が好ましい。なお、X20およびX21は、それぞれ独立にアルキル基(好ましくはメチル基)またアリール基(好ましくはフェニル基)を表す。なお、LとUで表される基の合計炭素数が、上記範囲内(炭素数5以上)であればよい。
単結合の場合、一般式(K)中のUが一般式(B−1)〜(B−3)中の炭素原子と直接結合する。
一般式(B−1)および一般式(B−2)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。なかでも、得られる膜がより低誘電性を示す点より、−C(X17)(X18)−が好ましい。
共役ジエン構造を有する化合物(B)の分子量は特に制限されないが、100〜1000であることが好ましく、120〜800であることがより好ましく、150〜600であることが特に好ましい。分子量が600以下であれば、硬膜処理時に逆ディールス・アルダー反応により放出される化合物(B)が十分に揮発し、低誘電率化のための十分量の膜空隙を形成することができる。また、分子量が150以上であれば、硬膜時の膜収縮率がより小さくなる。従って、化合物(B)の分子量が150〜600の範囲にあると、低誘電率およびプロセス適性の点で優れた膜を形成できる。
共役ジエン構造を有する化合物(B)は、得られる膜が低誘電性を示す点から、熱重量分析(窒素流量100 ml/min,昇温速度20℃/min)において5%重量減少温度が100℃〜450℃であることが好ましく、150℃〜400℃であることがより好ましく、200℃〜350℃であることが特に好ましい。なかでも、5%重量減少温度が200℃〜350℃の範囲にあると、低誘電率およびプロセス適性の点で優れた膜を形成できる。
以下に、共役ジエン構造を有する化合物(B)の具体例を記載するが、本発明はこれらに限定はされない。
Figure 2010189571
Figure 2010189571
Figure 2010189571
化合物(X)中における共役ジエン構造を有する化合物の付加量(含有量)は、化合物(X)全量に対して、5〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。上記範囲であれば、連結孔の生成が抑えられ、また膜平坦性の点で好ましい。共役ジエン構造を有する化合物の付加量はNMRスペクトルや、加熱または冷却しながら質量変化を測定する熱重量分析(TGA)、比熱や反応熱の変化を測定する示差熱分析(DTA)や示差走査熱量測定(DSC)によって定量できる。
<反応条件>
上記化合物(A)と化合物(B)とをディールス・アルダー反応を行う条件は、使用する化合物の種類などにより適宜最適な条件が選択される。
ディールス・アルダー反応を行う反応溶媒としては、使用する化合物が溶解し、反応に影響を与えない溶媒であれば特に限定されない。例えば、上記の化合物(I)の重合反応に使用される溶媒などが挙げられる。
反応温度は、特に制限されないが、通常25℃〜250℃であり、好ましくは50℃〜200℃、さらに好ましくは80℃〜200℃である。
反応液中の化合物(A)の濃度は、反応液全量に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。上記濃度範囲に設定することにより、ゲル化成分などの不純物の生成を抑制することができる。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
反応終了後、精製処理を実施することが好ましい。
化合物(X)の製造工程においては、重合反応を抑制するために重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤の例としては4−メトキシフェノール、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、カテコールなどが挙げられる。なかでも、4−メトキシフェノール、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノールが特に好ましい。重合禁止剤の添加量は、化合物(A)全量に対して、5質量%以上が好ましい。
<化合物(X)>
上記の化合物(A)と化合物(B)とのディールス・アルダー反応により、共役ジエン構造とジエノフィル構造から形成される官能基(以後、ディールス・アルダー反応付加部とも記す)を有する化合物(X)が得られる。
化合物(X)は、上述のように低分子化合物および高分子化合物(例えば、樹脂)であってもよく、その構造は特に制限されない。例えば、高分子化合物の場合、その重量平均分子量(M)は、2.0×10〜50×10であることが好ましく、3.0×10〜30×10であることがより好ましい。数平均分子量(M)は、1.0×10〜25×10であることが好ましく、1.5×10〜15×10であることがより好ましい。
<ディールス・アルダー反応付加部>
上述のようにディールス・アルダー反応付加部は、上記共役ジエン構造とジエノフィル構造との付加反応により得られる官能基であり、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応が進行して共役ジエン構造とジエノフィル構造が生成される。
なお、加熱条件、光照射条件などは、使用される化合物によって最適な条件は変化する。なお、通常、後述する膜形成時の加熱処理または高エネルギー線照射の条件において、逆ディールス・アルダー反応が進行する。
化合物(X)中におけるディールス・アルダー反応付加部の数は特に限定されず、用途により適宜最適な個数が選択される。
ディールス・アルダー反応付加部の好適な例としては、以下の一般式(F−1)〜一般式(F−4)で表される官能基が挙げられる。これらの官能基であれば、逆ディールス・アルダー反応の進行がより制御しやすく、後述する絶縁膜などの用途に好適に使用することができる。
Figure 2010189571
(一般式(F−2)〜一般式(F−4)中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)−、−C(Y12)(Y13)−または−N(Y14)−を表す。Y1〜Y14は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。
一般式(F−1)〜一般式(F−4)中、*は化合物(X)との結合位置を表す。)
1〜Y14で表される置換基は、上記一般式(B−1)〜(B−3)中のX1〜X19で表される置換基と同義である。なかでも、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基、カゴ型構造を有する置換基が好ましい。
一般式(F−2)〜一般式(F−4)中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)−、−C(Y12)(Y13)−または−N(Y14)−を表す。なかでも、−O−、−C(O)−、−C(Y12)(Y13)−が好ましい。
12〜Y14は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、なかでも、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基、カゴ型構造を有する置換基が好ましい。
化合物(X)は、種々の用途に用いることができ、膜(例えば、絶縁膜)を製造するため(膜形成用組成物)や、低屈折率膜、低屈折率材料、ガス吸着材料、レジスト材料などが挙げられる。
<組成物>
本発明の組成物には、上記の化合物(X)が含有される。なお、本発明の組成物は、化合物(X)が有機溶剤に溶解した溶液であってもよいし、化合物(X)の反応物を含む固形物であってもよい。
本発明の組成物は、種々の用途に用いることができ、その目的に応じて化合物(X)の含有量や添加する添加剤などの種類が決められる。
組成物に含まれる固形分のうち、化合物(X)の含有量は、特に限定されないが、後述する膜形成に使用する場合には、全固形分に対して、70質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。固形分中のこれらの含量が大きいほど、塗布性が改善し、更に誘電率の低い膜を形成することができる。なお、固形分とは、後述する膜を構成する固形成分を意味し、溶媒などは含まれない。
本発明の組成物に含まれる固形分中の未反応の化合物(A)および未反応の共役ジエン構造を有する化合物(B)の合計含有量は、全固形分に対して、15質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下であり、最も好ましくは7質量%以下である。上記範囲であれば、より塗布面状がよい膜、低誘電率の膜を形成できる。
本発明の組成物は、溶剤を含有していてもよい。つまり、化合物(X)は、適当な溶剤に溶解させて、支持体上に塗布して使用することが好ましい。
溶剤としては、25℃で化合物(X)を5質量%以上(好ましくは10質量%以上)溶解する溶剤が好ましい。具体的には、特開2008−214454号公報の段落番号[0044]に記載の溶剤が挙げられる。
上記の中でも、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
本発明の組成物を適当な溶剤に溶解させて得られる溶液も、本発明の組成物の範囲に含まれる。組成物が溶剤を含む場合、組成物中の全固形分濃度は、組成物全量に対して、好ましくは1〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。上記範囲内であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、塗布液の保存安定性もより優れるものとなる。
本発明の組成物には、重合開始剤が含まれていてもよい。特に、本発明の組成物を低温で硬膜する必要がある場合は、重合開始剤は含んでいることが好ましい。その場合の重合開始剤の種類は特に制限されないが、例えば、上述した化合物(I)の重合の際に使用される重合開始剤などが挙げられる。また、この目的で、放射線により重合を引きおこす開始剤を使用することもができる。
<添加剤>
更に、本発明の組成物には、組成物を用いて得られる膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなる界面活性剤を使用してもよい。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。使用する界面活性剤は、一種類のみでもよいし、二種類以上を併用してもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
本発明で使用する界面活性剤の添加量は、組成物全量に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
本発明に使用するシリコーン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
本発明に使用するノニオン系界面活性剤としては、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
本発明に使用する含フッ素系界面活性剤としては、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
本発明に使用するアクリル系界面活性剤としては、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなる密着促進剤を使用してもよい。密着促進剤としては、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。他には、特開2008−243945号公報の段落番号[0048]に記載の化合物が使用される。本発明で使用する密着促進剤は、一種類のみを用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
密着促進剤の好ましい使用量は、特に制限されないが、通常、組成物中の全固形分に対して、10質量%以下、特に0.05〜5質量%であることが好ましい。
本発明の組成物はフィルターろ過により、不溶物、ゲル状成分等を除いてから膜形成に用いることが好ましい。その際に用いるフィルターの孔径は0.005〜0.5μmが好ましく、孔径0.005〜0.2μmがより好ましく、孔径孔径0.005〜0.1μmが最も好ましい。フィルターの材質はポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンがより好ましい。
<膜製造方法>
本発明の組成物は、上記のように種々の用途に用いることができる。例えば、その用途としては、膜(好ましくは、絶縁膜)を作製するために使用することができる(以下、適宜、膜形成用組成物とも称する。)。
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜(塗膜)は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法、スプレー法、バー塗布法等の任意の方法により、シリコンウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハ、ガラス、プラスチックフィルムなどの基板に塗布した後、溶剤を必要に応じて加熱処理で除去することにより形成することができる。
基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D-スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。
スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1300rpm程度の回転速度が好ましい。また組成物溶液の吐出方法においては、回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出、静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D-スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、αシリーズ(東京エレクトロン製)等が好ましく使用できる。
本発明の組成物は基板上に塗布して塗膜を形成した後に硬膜することが好ましい。硬膜とは、基板上の組成物を硬化し、膜に溶剤耐性を与えることを意味する。硬膜の方法としては、加熱処理(焼成)することが特に好ましい。例えば、重合体中に残存するビニル基の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜600℃、より好ましくは200〜500℃、特に好ましくは200℃〜450℃で、好ましくは1分〜3時間、より好ましくは1分〜2時間、特に好ましくは1分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。また、この後加熱は、酸素による熱酸化を防ぐために、窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
また、本発明では加熱処理ではなく、光照射や放射線照射などの高エネルギー線を照射することで、例えば、重合体中に残存するビニル基またはエチニル基の重合反応を起こして硬膜してもよい。高エネルギー線とは、例えば、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは0.1〜50keVが好ましく、より好ましくは0.2〜30keV、特に好ましくは0.5〜20keVである。電子線の総ドーズ量は好ましくは0.01〜5μC/cm2 、より好ましくは0.01〜2μC/cm 2 、特に好ましくは0.01〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は0〜500℃が好ましく、より好ましくは20〜450℃、特に好ましくは20〜400℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。
本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は160〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm−2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
加熱処理と光照射や放射線照射などの高エネルギー線処理照射を、同時にまたは順次行うことにより硬膜してもよい。
膜を形成する際の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜1.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜3μm程度の塗膜を形成することができる。
カゴ構造が焼成時に分解しないために、組成物および膜の製造中にSi原子に求核攻撃する基(水酸基、シラノール基など)が実質的に存在しないことが好ましい。
より具体的には、本発明の膜形成用組成物を、例えばスピンコート法により、基板(通常は金属配線を有する基板)上に塗布し、予備熱処理を行うことにより溶媒を乾燥させ、次いで300℃以上430℃以下の温度で最終熱処理(アニール)を行うことにより低誘電率の絶縁膜を形成できる。
<膜>
上述した膜形成用組成物から得られる膜(多孔質膜)の厚さは、特に限定されないが、絶縁膜などへの応用の点から、0.005〜10μmが好ましく、0.01〜5.0μmがより好ましく、0.01〜1.0μmがさらに好ましい。
ここで、本発明の膜の厚さは、光学干渉式膜厚測定器にて任意の3箇所以上を測定した場合の単純平均値を意味するものとする。
上述の本発明の方法により得られる膜の比誘電率は、使用する材料によって異なるが、実用的な観点から、測定温度25℃において、比誘電率が2.5以下、好ましくは2.4以下、つまり1.8〜2.4であることが好ましい。
本発明の膜は上記の硬膜時における膜厚の減り(以後、膜減りとも記す)が小さく、実用的な観点から、0〜15%であることが好ましく、0〜10%であることがより好ましい。なお、0%は、膜厚の減りがないことを意味する。
<用途>
本発明の膜は、多様の目的に使用することができ、特に絶縁膜として電子デバイスへ好適に用いることができる。電子デバイスとは、半導体装置や、磁気記録ヘッドなどを含めた広範な電子機器を意味する。例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。また、光学装置用の表面保護膜、反射防止膜、位相差膜としても用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により制約されるものではない。
以下のGPC測定は、Waters2695およびShodex製GPCカラムKF−805L(カラム3本を直結)を使用し、カラム温度40℃、試料濃度0.5質量%のテロラヒドロフラン溶液を50μl注入し、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流量でフローさせ、RI検出装置(Waters2414)およびUV検出装置(Waters2996)にて試料ピークを検出することでおこなった。M、MおよびMz+1は標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて計算した。
以下の合成例に記載の方法に従って、共役ジエン構造を有する化合物(ジエンC−1からC−11)を合成した。ジエンC−7(1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン)およびジエンC−9(テトラフェニルシクロペンタジエノン)は東京化成製の試薬を用いた。
<ジエンC−1の合成>
冷却管を備えた三つ口フラスコを窒素置換し、フェニルマグネシウムブロミド(1M,THF溶液)43.4mLを加え、これに2,3,4,5−テトラメチル−2−シクロペンテノン5gを室温で3分間かけて滴下した。その後2時間加熱還流し、室温まで冷却した。これに氷を添加し、撹拌しながら濃塩酸15mLを加え、室温で30分間撹拌した。反応液をシクロペンチルメチルエーテルで抽出し、有機層を水で2回、食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量のヘキサンに溶解してシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、液体の目的物(ジエンC−1)6.6gを得た(収率:92%)。熱重量分析(窒素流量100 ml/min,昇温速度20℃/min)の結果、5%重量減少温度は234℃であった。H−NMR測定の結果は以下の通りであった。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :0.95 (d, 3H), 1.87 (s, 3H), 1.93 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 3.19 (m, 1H), 7.16-7.37 (m, 5H)
<ジエンC−2の合成>
文献(Tetrahedron Lett., Vol.40, 7449-7454 (1999))に記載の方法に従って、ペンタフルオロフェニルマグネシウムブロミドを合成した。ジエンC−1の合成において、フェニルマグネシウムブロミドの代わりにペンタフルオロフェニルマグネシウムブロミドを用いた以外は、ジエンC−1の合成と同様に反応を行い、ジエンC−2を得た。
<ジエンC−5の合成>
冷却管を備えた500mL三つ口フラスコに、1−アダマンタンエタノール5g、四臭化炭素18.4g、アセトニトリル220mLを加え、加熱還流した。これに、アセトニトリル200mLに溶解したトリフェニルホスフィン21.8gを10分間かけて滴下した。その後3時間加熱還流し、室温まで冷却した。反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物を少量の酢酸エチルに溶解してシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、1−(2−ブロモエチル)アダマンタン7.4gを白色固体として得た(収率:97%)。
冷却管を備えた三つ口フラスコにマグネシウム片0.81gを入れ、窒素置換した後、テトラヒドロフラン30mLに溶解した1−(2−ブロモエチル)アダマンタン7.4gを15分間かけて滴下した。その後、30分間加熱還流し、2−(1−アダマンチル)エチルマグネシウムブロミドのTHF溶液を得た。
冷却管を備えた三つ口フラスコを窒素置換し、上記で得られた2−(1−アダマンチル)エチルマグネシウムブロミドのTHF溶液を全量加え、これに2,3,4,5−テトラメチル−2−シクロペンテノン3.83gを室温で3分間かけて滴下した。その後2時間加熱還流し、室温まで冷却した。これに氷を添加し、撹拌しながら濃塩酸15mLを加え、室温で30分間撹拌した。反応液をシクロペンチルメチルエーテルで抽出し、有機層を水で2回、食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量のヘキサンに溶解してシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、白色固体の目的物(ジエンC−5)5.8gを得た(収率:74%)。熱重量分析(窒素流量100 ml/min,昇温速度20℃/min)の結果、5%重量減少温度は264℃であった。H−NMR測定の結果は以下の通りであった。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :1.41-1.81 (m, 28H), 1.93 (br s, 3H), 2.61 (m, 1H)
<ジエンC−4の合成>
文献(J. Chem. Soc. Dalton Trans., 1879-1887 (1980))に記載の方法に従って、1−アダマンタンメチルマグネシウムブロミドを合成した。ジエンC−5の合成において、2−(1−アダマンチル)エチルマグネシウムブロミドの代わりに1−アダマンタンメチルマグネシウムブロミドを用いた以外は、ジエンC−5の合成と同様に反応を行い、ジエンC−4を得た。
<ジエンC−6の合成>
三つ口フラスコにジルコノセンジクロリド20.3gを加え、窒素置換した後、トルエン700mLを加えて−78℃に冷却した。これにn−ブチルリチウム(1.6M,ヘキサン溶液)87mLを1時間かけて滴下した。滴下中、反応液は次第に黄色になった。−78℃で10分間攪拌した後、7−テトラデシン27.1gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間攪拌した。反応液は次第に黄色から赤褐色へと変化した。室温で1−ヘプタナール15.9g、塩化アルミニウム(III)18.6gを加え、室温でさらに1時間攪拌した。反応液を0℃まで冷却した後、3規定塩酸100mLを加え、反応を停止した。得られた反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で2回、食塩水で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量のヘキサンに溶解してシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、白色固体の目的物(ジエンC−6)20.3gを得た(収率:60%)。H−NMR測定の結果は以下の通りであった。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :0.68-1.01 (m, 15H), 1.13-1.65 (m, 40H), 1.92-2.57 (m, 11H)
<ジエンC−3の合成>
文献(J. Med. Chem., Vol.48, 5025-5037 (2005))に記載の方法に従って、1−アダマンタンカルバルデヒドを合成した。ジエンC−6の合成において、7−テトラデシンの代わりに2−ブチンを、1−ヘプタナールの代わりに1−アダマンタンカルバルデヒドを用いた以外は、ジエンC−6の合成と同様に反応を行い、ジエンC−3を得た。
<ジエンC−8の合成>
冷却管とディーンスタークを備えた1L三つ口フラスコにベンジルアルコール328gを加え、窒素置換した後、ナトリウム片25gを内温が120℃以下になるように注意しながら1時間かけて添加した。これにテトラリン200mLを加え、さらにテトラリン50mLに溶解したジシクロペンタジエン7gを加えた。24時間加熱還流した後、室温まで冷却した。ディーンスタークには反応系中で発生した水(約8mL)がトラップされていた。反応液を水600mLで洗浄した後、トルエンで3回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を加熱したメタノール2Lに溶解し、室温で一晩放置した。さらに−30℃で6時間静置し、析出した結晶を濾過することで、白色固体の目的物(ジエンC−8)17.3gを得た(収率:36%)。H−NMR測定の結果は以下の通りであった。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :3.07 (s, 2H), 3.19-3.22 (m, 1H), 3.43 (d, 2H), 3.48 (d, 2H), 3.56 (d, 2H), 3.84 (d, 2H), 6.70-6.73 (m, 4H), 7.02-7.28 (m, 21H)
<ジエンC−10の合成>
文献(Org. Lett., Vol.8, 2945-2947 (2006))に記載の方法に従って、ジエンC−10を合成した。
<ジエンC−11の合成>
文献(J. Mater. Chem., Vol.11, 2974-2978 (2001))に記載の方法に従って、ジエンC−11を合成した。
以下に、m個のRSi(O0.5ユニットから構成されるカゴ型構造を含む化合物(化合物(I))の合成方法について詳述する。
<化合物I−mの合成>
電子グレード濃塩酸67g、n-ブタノール305g、イオン交換水133gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン59gを15分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール50gで洗浄した。これをテトラヒドロフラン42gに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール42g、続いてイオン交換水127gを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−m)4.2gを得た。H−NMR測定の結果は以下の通りであった。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :6.13-5.88 (m, 24H)
<化合物I−kの合成>
電子グレード濃塩酸136g、n-ブタノール1L、イオン交換水395gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン78.3gとメチルトリエトキシシラン73.3gの混合溶液を15分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。これをテトラヒドロフラン500mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール200mL続いてイオン交換水200mLを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−k)7.8gを得た。H−NMR測定の結果は以下の通りであった。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) :0.28-0.18 (m, 12H), 6.08-5.88 (m, 12H)
上記製造例を参照して、化合物I−a、化合物I−j、化合物I−rを合成した。なお、それぞれの化合物は、上記の化合物(I)の例示化合物として記載した化合物に該当する。
<樹脂A−1の合成>
化合物(I−m)50gを電子グレード酢酸ブチル1320gに加えた。得られた溶液を窒素気流中120℃に加熱し、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)0.47gと2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール113mgとを電子グレード酢酸ブチル235mlに溶解させた溶液50.4mlを80分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間120℃にて攪拌した。攪拌終了後、反応液に電子グレードメタノール3L、イオン交換水3Lを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。これをテトラヒドロフラン724gに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール50g、続いて水150gを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール200gを加えた。析出した固体を濾取、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−1)17.7gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=8.7×10、M=5.4×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−m)は2質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が2.6/5.4の積分比率で観察された。
<樹脂A−2の合成>
化合物(I−m)109gをジフェニルエーテル2878gに加えた。得られた溶液を窒素気流中120℃に加熱し、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)168mgをジフェニルエーテル74gに溶解させた溶液15.0mlを30分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間120℃にて攪拌した。攪拌終了後に、反応液に電子グレードメタノール5.4L、水200mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール200mLで洗浄した。これをテトラヒドロフラン1Lに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール2L、続いてイオン交換水125gを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール200mLで洗浄した。この操作を計2回繰り返し、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−2)7.26gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=8.1×10、M=4.98×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−m)は0.2質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が2.2/5.8の積分比率で観察された。
<樹脂A−3の合成>
化合物(I−m)30gをジフェニルエーテル792gに加えた。得られた溶液を窒素気流中150℃に加熱し、重合開始剤として和光純薬工業社製VR−110(Azodi−tert−octane、10時間半減温度110℃)112mgと2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール22mgをジフェニルエーテル49.8gに溶解させた溶液11.4mlを30分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間150℃にて攪拌した。攪拌終了後、反応液に電子グレードメタノール3.5L、イオン交換水150mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール200mLで洗浄した。これをテトラヒドロフラン300mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール30mL、続いてイオン交換水60mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。この操作を計2回繰り返し、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−3)12.5gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=18.3×10、M=5.58×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−m)は2質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が1.3/6.7の積分比率で観察された。
<樹脂A−4の合成>
化合物(I−m)1gを電子グレード酢酸ブチル26.4gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温127℃で加熱還流しながら、重合開始剤として和光純薬工業製V−601(10時間半減温度66℃)1.8mgを電子グレード酢酸ブチル2mlに溶解させた溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間加熱還流した。重合禁止剤として4−メトキシフェノール20mgを加えた後、室温まで冷却した。その後、液重量2gまで減圧濃縮し、電子グレードメタノール20mlを加え、1時間攪拌した後、固形物を濾取、乾燥した。これをテトラヒドロフラン15mlに溶解し、攪拌しながらイオン交換水5mlを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール10mlを加えた。固形分を濾取、乾燥し、白色固体の目的物(樹脂A−4)0.60gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=11.8×10、M=3.1×10、Mz+1=27×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−m)は3質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分のH−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が42/58の積分比率で観察された。
<樹脂A−5の合成>
化合物(I−m)1gを電子グレード酢酸ブチル13.2gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温127℃で加熱還流しながら、重合開始剤として和光純薬工業製V−40(10時間半減温度88℃)1mgを電子グレード酢酸ブチル1mlに溶解させた溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間加熱還流した。重合禁止剤として4−メトキシフェノール20mgを加えた後、室温まで冷却した。その後、液重量2gまで減圧濃縮し、電子グレードメタノール20mlを加え、1時間攪拌した後、固形物をろ取、乾燥した。これをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、攪拌しながらイオン交換水1.8mlを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール10mlを加えた。固形分を濾取、乾燥し、白色固体の目的物(樹脂A−5)0.41gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=12.8×10、M=3.3×10、Mz+1=38×10であった。固形物中には未反応の例示化合物(I−m)は3質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分のH−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が53:47の積分比率で観察された。
上記の製造例を参照して、樹脂A−6〜樹脂A−11を合成した。なお、それぞれの樹脂の合成に使用した化合物(I)の種類および組成、ならびに、重量平均分子量および数平均分子量を表1に示す。
<樹脂H−1の合成>
特開2007−161788号公報に記載の方法に従い、1,3−ジエチニルアダマンタンの重合体(G−1)を合成した。得られた重合体をGPCで分析すると、M=1.37×10、M=0.39×10であった。
重合体(G−1)12.9gをトルエン30mLに溶解し、このトルエン溶液を0℃に冷却しながらDIBAL−H(1M,ヘキサン溶液)175mLを加えた。その後室温で3時間攪拌した。次に、飽和塩化アンモニウム水溶液230mLを冷却し、ここに反応液を加え、ろ過した後、ろ液を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量のテトラヒドロフランに溶解して、その溶液をメタノール300mLに加え、析出固体を濾取、乾燥し、白色固体の目的物(樹脂H−1)10.3gを得た。得られた樹脂をGPCで分析すると、M=1.35×10、M=0.39×10であった。
Figure 2010189571
<樹脂H−2の合成>
特開2007−161786号公報に記載の方法に従い、4,9−ジエチニルジアマンタンの重合体(G−2)を合成した。得られた重合体をGPCで分析すると、M=1.66×10、M=0.54×10であった。
樹脂(H−1)の合成において、重合体(G−1)の代わりに重合体(G−2)を用いた以外は、樹脂(H−1)の合成と同様に反応を行い、樹脂(H−2)を得た。得られた樹脂をGPCで分析すると、M=1.65×10、M=0.51×10であった。
Figure 2010189571
<樹脂H−3の合成>
特表2003−520864号公報に記載の方法に準じて、ビニル基を有するポリアリーレンエーテル(樹脂H−3)を合成した。
Figure 2010189571
<化合物H−4の合成>
特表2004−504455号公報に記載のテトラキス(トラニル)アダマンタンの合成法において、フェニルアセチレンの代わりにフェニルアセチレンと(トリメチルシリル)アセチレンの混合物(等モル量)を用いて化合物(G−4)を合成した。次に、特開2007−314778号に記載の方法に従い、(トリメチルシリル)エチニル基をビニル基に変換し、化合物(H−4)を得た。
Figure 2010189571
(Rはフェニル基とトリメチルシリル基の混合物であり、Rはフェニルエチニル基とビニル基の混合物である。)
<樹脂H−5の合成>
国際公開第2005−019305号パンフレットに記載の方法に準じて、ビニル基を有するポリベンゾオキサゾール(樹脂H−5)を合成した。
Figure 2010189571
<樹脂X−1の合成>
樹脂(A−1)800mg、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール278mg、ジエン(C−1)1.16gをジフェニルエーテル5gに加えた。得られた溶液を窒素気流中180℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌終了後、反応液を電子グレードメタノール200mlに加え、析出固体を濾取、乾燥し、一般式(F−2)で表わされるディールス・アルダー反応付加部を有する白色固体の目的物(樹脂X−1)1.10gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=9.29×10、M=5.70×10であった。固形物中には未反応のジエン(C−1)および分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分のH−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基およびディールス・アルダー反応して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基由来のプロトンピーク(4.9〜6.5ppm)と、フェニル基由来のプロトンピーク(6.5〜7.8ppm)が62:18:20の積分比率で観察された。熱重量分析(TA Instruments社SDT Q600を使用、窒素流量 100 ml/min, 20℃/minで昇温)の結果、350℃で33%の重量減少が観測され、樹脂X−1中におけるジエン(C−1)の付加量(質量%)が確認された。
<樹脂X−3の合成>
樹脂(A−1)800mg、4−メトキシフェノール157mg、ジエン(C−8)3.03gをジフェニルエーテル5gに加えた。得られた溶液を窒素気流中180℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌終了後、反応液を電子グレードメタノール200mlに加え、析出固体を濾取、乾燥し、一般式(F−2)で表わされるディールス・アルダー反応付加部を有する白色固体の目的物(樹脂X−3)0.91gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=10.1×10、M=5.96×10であった。固形物中には未反応のジエン(C−8)および分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分のH−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基およびディールス・アルダー反応して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基由来のプロトンピーク(4.9〜6.5ppm)と、フェニル基由来のプロトンピーク(6.5〜7.8ppm)が30:26:44の積分比率で観察された。熱重量分析 (TA Instruments社SDT Q600を使用、窒素流量 100 ml/min, 20℃/minで昇温)の結果、320℃で16%の重量減少が観測され、樹脂X−3中におけるジエン(C−8)の付加量(質量%)が確認された。
<樹脂X−5の合成>
樹脂(A−2)800mg、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン281mg、ジエン(C−5)1.67gをジフェニルエーテル5gに加えた。得られた溶液を窒素気流中180℃に加熱し、3時間攪拌した。攪拌終了後、反応液を電子グレードメタノール200mlに加え、析出固体を濾取、乾燥し、一般式(F−2)で表わされるディールス・アルダー反応付加部を有する白色固体の目的物(樹脂X−5)1.24gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=8.74×10、M=5.21×10であった。固形物中には未反応のジエン(C−5)および分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分のH−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基およびディールス・アルダー反応して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基由来のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が83:17の積分比率で観察された。熱重量分析 (TA Instruments社SDT Q600を使用、窒素流量 100 ml/min, 20℃/minで昇温)の結果、345℃で39%の重量減少が観測され、樹脂X−5中におけるジエン(C−5)の付加量(質量%)が確認された。
上記の製造例を参照して、樹脂X−2、樹脂X−4、樹脂X−6〜樹脂X−29を合成した。なお、それぞれの樹脂の合成に使用した樹脂A、樹脂Hおよびジエン系化合物の種類、ならびに、重量平均分子量および数平均分子量を表1および表2に示す。
なお、表1および表2中におけるジエンBの付加量は、樹脂X中におけるジエンBの質量%(wt%)である。
Figure 2010189571
Figure 2010189571
<組成物の調製>
上記で得られた樹脂を下記表3に示すように溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度10質量%の溶液を調製した。得られた溶液を0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、スピンコート法で4インチシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレート上にて110℃で1分間、ついで200℃で1分間、基板を予備乾燥し、膜厚600nmの塗布膜を形成させた。
得られた塗布膜を以下の次の何れかの方法で硬化を実施した。
(1)加熱
光洋サーモ社製クリーンオーブンCLH-21CD(III)により、窒素雰囲気下、クリーンオーブン中で400℃、60分間加熱した。
(2)EB照射
ウシオ電機社製Mini−EBにてAr雰囲気、圧力100kPa、基板温度350℃の条件で、電子加速電圧20keV、電子線ドーズ量1μCcm−2を5分間照射した。
(3)UV照射
ウシオ電機社製誘電体バリア放電方式エキシマランプUER20−172を用い、窒素気流下、350℃のホットプレート上で172nmの波長光100mJ/cmを5分照射した。
得られた硬化膜について下記の方法で評価した。結果を表3に示す。
なお、表3中において、界面活性剤の含有量は、組成物(塗布液)全量に対する質量%を表す。一方、密着促進剤の含有量は、組成物(塗布液)中の全固形物に対する質量%で表される。
Figure 2010189571
<比誘電率>
フォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて、1MHzにおける容量値(測定温度25℃)から算出した。
<硬膜時の膜減り率>
予備乾燥後の膜厚と、加熱、EB照射、またはUV照射による硬膜後の膜厚から算出した。
表3の結果より、本発明の膜形成用組成物を使用した場合、加熱、EB照射、UV照射など種々の硬化方法により、比誘電率が低く、かつ、硬膜時の膜収縮率が小さい膜が得られることが確認された。
一方、硬化処理時にジエン化合物を放出しない比較例1および2において得られた膜は、比誘電率は高く、硬膜処理時にシクロペンタジエンを放出する比較例3において得られた膜は、硬膜時の膜収縮率が大きかった。また、炭素数4の置換基を有するt−ブチルシクロペタンジエンを用いた比較例4においても、硬膜時の膜収縮率が大きかった。
<ヤング率>
MTS社ナノインデンターSA2を使用して、実施例1〜2および比較例1〜2のヤング率を測定した。実施例1では5.6GPa、実施例2では5.3GPa、比較例1では3.1GPa、比較例2では2.9GPaであった。本発明の化合物を使用して得られる膜は、より優れた機械的強度を示すことがわかった。

Claims (11)

  1. ジエノフィル構造を有する化合物(A)と、下記一般式(B−1)〜一般式(B−3)のいずれかで表される共役ジエン構造を有する化合物(B)とのディールス・アルダー反応により形成され、加熱、光照射、放射線照射またはそれらの組み合わせにより逆ディールス・アルダー反応を介して前記共役ジエン構造を有する化合物(B)を放出する化合物。
    Figure 2010189571
    (一般式(B−1)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X1〜X6およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X1〜X6のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X1〜X6、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X1〜X6およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
    一般式(B−2)中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(X17)(X18)−または−N(X19)−を表す。X7〜X10およびX17〜X19は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。なお、Wが−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)O−、−S(O)−または−S(O)2−の場合、X7〜X10のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−C(X17)(X18)−の場合は、X7〜X10、X17およびX18のうち少なくとも一つが炭素数5以上の置換基を表す。Wが−N(X19)−の場合は、X7〜X10およびX19のうち少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。
    一般式(B−3)中、X11〜X16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、少なくとも1つが炭素数5以上の置換基を表す。)
  2. 前記共役ジエン構造を有する化合物(B)の分子量が150〜600の範囲である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記ジエノフィル構造を有する化合物(A)が、シロキサン構造を有する化合物である、請求項1または2に記載の化合物。
  4. 前記ジエノフィル構造を有する化合物(A)が、m個のRSi(O0.5)3ユニット(mは8〜16の整数を表し、Rは、水素原子または置換基を表す。)を有し、各ユニットが各ユニットにおける酸素原子を共有して他のユニットに連結しカゴ構造を形成している化合物(I)またはその重合体である、請求項3に記載の化合物。
  5. 前記化合物(I)が、下記一般式(Q−1)〜(Q−7)のいずれかで表される化合物である、請求項4に記載の化合物。
    Figure 2010189571
    (一般式(Q−1)〜(Q−7)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)のそれぞれにおいて、Rのうち少なくとも1つは、アルケニル基またはアルキニル基を表す。)
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の化合物を含有する組成物。
  7. さらに、溶剤を含む請求項6に記載の組成物。
  8. 絶縁膜形成用途に用いられる請求項6または7に記載の組成物。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布した後、硬膜することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
  10. 請求項9に記載の製造方法を用いて製造された絶縁膜。
  11. 請求項10に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
JP2009036641A 2009-02-19 2009-02-19 ディールス・アルダー反応付加部を有する化合物 Expired - Fee Related JP5153680B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009036641A JP5153680B2 (ja) 2009-02-19 2009-02-19 ディールス・アルダー反応付加部を有する化合物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009036641A JP5153680B2 (ja) 2009-02-19 2009-02-19 ディールス・アルダー反応付加部を有する化合物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010189571A true JP2010189571A (ja) 2010-09-02
JP5153680B2 JP5153680B2 (ja) 2013-02-27

Family

ID=42815940

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009036641A Expired - Fee Related JP5153680B2 (ja) 2009-02-19 2009-02-19 ディールス・アルダー反応付加部を有する化合物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5153680B2 (ja)

Citations (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006249255A (ja) * 2005-03-10 2006-09-21 Fuji Photo Film Co Ltd 膜形成用組成物、それを用いた絶縁膜および電子デバイス
JP2006253573A (ja) * 2005-03-14 2006-09-21 Fuji Photo Film Co Ltd 絶縁膜とそれを製造する方法、およびそれを用いた電子デバイス
JP2006253577A (ja) * 2005-03-14 2006-09-21 Fuji Photo Film Co Ltd 絶縁膜、その製造方法及び該絶縁膜を有するデバイス
JP2006291160A (ja) * 2005-03-14 2006-10-26 Fuji Photo Film Co Ltd 膜形成用組成物、それを用いた絶縁膜および電子デバイス
JP2007186684A (ja) * 2005-12-14 2007-07-26 Nec Corp 再成形可能かつ優れた形状回復能を有する形状記憶樹脂の高強度化
JP2007521251A (ja) * 2003-04-02 2007-08-02 ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド 多官能性の、非対称的に置換されたモノマー類、および、そのポリアリーレン組成物。
JP2007254506A (ja) * 2006-03-20 2007-10-04 Fujifilm Corp 組成物、絶縁膜、およびその製造方法
JP2008056888A (ja) * 2006-07-31 2008-03-13 Fujifilm Corp レーザー分解性樹脂組成物及びそれを用いるパターン形成材料
JP2009088247A (ja) * 2007-09-28 2009-04-23 Fujifilm Corp 絶縁膜の製造方法
JP2010059417A (ja) * 2008-08-07 2010-03-18 Mitsubishi Chemicals Corp 重合体、発光層材料、有機電界発光素子材料、有機電界発光素子用組成物、これらを利用した有機電界発光素子、有機太陽電池素子、有機el表示装置、及び有機el照明
WO2010067683A1 (ja) * 2008-12-10 2010-06-17 富士フイルム株式会社 組成物
JP2010189569A (ja) * 2009-02-19 2010-09-02 Fujifilm Corp 多孔質膜

Patent Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007521251A (ja) * 2003-04-02 2007-08-02 ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド 多官能性の、非対称的に置換されたモノマー類、および、そのポリアリーレン組成物。
JP2006249255A (ja) * 2005-03-10 2006-09-21 Fuji Photo Film Co Ltd 膜形成用組成物、それを用いた絶縁膜および電子デバイス
JP2006253573A (ja) * 2005-03-14 2006-09-21 Fuji Photo Film Co Ltd 絶縁膜とそれを製造する方法、およびそれを用いた電子デバイス
JP2006253577A (ja) * 2005-03-14 2006-09-21 Fuji Photo Film Co Ltd 絶縁膜、その製造方法及び該絶縁膜を有するデバイス
JP2006291160A (ja) * 2005-03-14 2006-10-26 Fuji Photo Film Co Ltd 膜形成用組成物、それを用いた絶縁膜および電子デバイス
JP2007186684A (ja) * 2005-12-14 2007-07-26 Nec Corp 再成形可能かつ優れた形状回復能を有する形状記憶樹脂の高強度化
JP2007254506A (ja) * 2006-03-20 2007-10-04 Fujifilm Corp 組成物、絶縁膜、およびその製造方法
JP2008056888A (ja) * 2006-07-31 2008-03-13 Fujifilm Corp レーザー分解性樹脂組成物及びそれを用いるパターン形成材料
JP2009088247A (ja) * 2007-09-28 2009-04-23 Fujifilm Corp 絶縁膜の製造方法
JP2010059417A (ja) * 2008-08-07 2010-03-18 Mitsubishi Chemicals Corp 重合体、発光層材料、有機電界発光素子材料、有機電界発光素子用組成物、これらを利用した有機電界発光素子、有機太陽電池素子、有機el表示装置、及び有機el照明
WO2010067683A1 (ja) * 2008-12-10 2010-06-17 富士フイルム株式会社 組成物
JP2010159385A (ja) * 2008-12-10 2010-07-22 Fujifilm Corp 組成物
JP2010189569A (ja) * 2009-02-19 2010-09-02 Fujifilm Corp 多孔質膜

Also Published As

Publication number Publication date
JP5153680B2 (ja) 2013-02-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7820777B2 (en) Composition, film and producing method therefor
US8530583B2 (en) Thermo- and/or photo-sensitive material and insulator film made thereof
US7799843B2 (en) Film
US20090118458A1 (en) Insulating film-forming composition
JP2010212489A (ja) 組成物
JP2006291160A (ja) 膜形成用組成物、それを用いた絶縁膜および電子デバイス
US7820748B2 (en) Insulating film forming composition and electronic device
JP2007254551A (ja) 膜形成用組成物
JP2008218632A (ja) 電子デバイス
US20090247701A1 (en) Composition for forming an insulating film
JP5153680B2 (ja) ディールス・アルダー反応付加部を有する化合物
JP2006253577A (ja) 絶縁膜、その製造方法及び該絶縁膜を有するデバイス
JP2010189569A (ja) 多孔質膜
JP2006253573A (ja) 絶縁膜とそれを製造する方法、およびそれを用いた電子デバイス
JP2006257212A (ja) 膜形成用組成物、それを用いた絶縁膜および電子デバイス
JP2012033700A (ja) 絶縁膜およびその製造方法
JP4368319B2 (ja) 絶縁膜とそれを製造する方法、およびそれを用いた電子デバイス
JP2006257279A (ja) 膜形成用組成物、該組成物から得られた絶縁膜およびそれを有する電子デバイス
JP2010070618A (ja) 絶縁膜形成用組成物、絶縁膜、および電子デバイス
JP2004319977A (ja) 絶縁膜形成用材料及びそれを用いた絶縁膜
JP2004292767A (ja) 絶縁膜形成材料及びそれを用いた絶縁膜
JP2008078557A (ja) 組成物、膜、およびその製造方法
JP4802120B2 (ja) 絶縁膜形成用組成物および絶縁膜製造方法
JP2009046540A (ja) 膜形成用組成物、膜及び電子デバイス
JP2007005394A (ja) 絶縁膜の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110804

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120725

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120807

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121003

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121127

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121204

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151214

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees