JP2012033700A - 絶縁膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、半導体素子などにおける層間絶縁膜として使用するのに適し、誘電特性などの膜特性、特に、機械強度に優れた絶縁膜、および、該絶縁膜を効率よく製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】一般式(1)で表されるカゴ型シルセスキオキサン化合物の重合体を含む膜に、大気圧下にて低温プラズマ処理を施し、硬化させて得られる絶縁膜。
一般式(1) (RSiO3/2n
(一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して非加水分解性基を表し、Rのうち少なくとも2つはビニル基またはエチニル基を含む基を表す。nは、8〜16の整数を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁膜およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料として好適に使用することができる、機械的特性などに優れた絶縁膜およびその製造方法に関する。
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、気相成長(CVD)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
かかる状況下、絶縁性、耐熱性、耐久性に優れた絶縁膜材料として、カゴ型シルセスキオキサン化合物を重合させた高分子化合物に紫外線を照射して硬膜することによって得られる絶縁膜が開示されている(特許文献1)。
特開2009−88256号公報
一方、近年、半導体素子の高集積化に伴い、絶縁材料の誘電特性や機械的特性に求められるレベルが高まっており、特に、より機械強度に優れた材料が要望されている。また、製造コストの低減の観点から、高スループットでより生産性よく半導体素子を製造することも求められている。
上述のような紫外線照射によって得られる絶縁材料では、昨今要求される機械強度などのレベルを必ずしも満足しておらず、製造プロセスの点においても紫外線照射では十分な高スループット性が満たされず、作業環境の安全性からも更なる改良が必要であった。
本発明は、上記問題点を解決するため、半導体素子などにおける層間絶縁膜として使用するのに適し、誘電特性などの膜特性、特に、機械強度に優れた絶縁膜、および、該絶縁膜を効率よく製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、従来技術の問題点について検討を行った結果、所定の材料を含む膜に対して、大気圧下における低温プラズマ処理を行うことにより、上記課題が解決できることを見出した。
つまり、本発明の上記目的は、下記の手段より達成されることが見出された。
<1> 後述する一般式(1)で表されるカゴ型シルセスキオキサン化合物の重合体を含む膜に、大気圧下にて低温プラズマ処理を施し、硬化させて得られる絶縁膜。
<2> カゴ型シルセスキオキサン化合物が、後述する一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)のいずれかで表される化合物である、<1>に記載の絶縁膜。
<3> 重合体を含む膜が、後述する一般式(2)または一般式(3)で表される空孔形成剤を含む、<1>または<2>に記載の絶縁膜。
<4> <1>〜<3>のいずれかに記載の絶縁膜を備える電子デバイス。
<5> 後述する一般式(1)で表されるカゴ型シルセスキオキサン化合物の重合体を含む膜に、大気圧下にて低温プラズマ処理を施して絶縁膜を得る、絶縁膜の製造方法。
本発明によれば、半導体素子などにおける層間絶縁膜として使用するのに適し、誘電特性などの膜特性、特に、機械強度に優れた絶縁膜、および、該絶縁膜を効率よく製造することができる製造方法を提供することができる。
以下、本発明の絶縁膜およびその製造方法について詳細に記述する。
本発明の絶縁膜は、後述する一般式(1)で表されるカゴ型シルセスキオキサン化合物の重合体を含む膜に、大気圧下にて低温プラズマ処理を施して、硬化させて得られる。大気圧下での低温プラズマ処理を行うことにより、得られる絶縁膜の高機械強度化が可能になるといった利点がある。
まず、低温プラズマ処理が施される膜中に含まれる各種材料について詳述する。
<カゴ型シルセスキオキサン化合物の重合体>
本発明で使用される重合体は、後述する一般式(1)で表される、2つ以上の不飽和基を置換基として有するカゴ型シルセスキオキサン化合物を重合させて得られる。該重合体を使用することにより、低誘電性および高機械強度を示す絶縁膜を作製することができる。
まず、モノマーであるカゴ型シルセスキオキサン化合物について詳述する。
(カゴ型シルセスキオキサン化合物)
本発明で使用されるカゴ型シルセスキオキサン化合物は、以下の一般式(1)で表される化合物(以後、適宜化合物(1)と表記する)である。
一般式(1) (RSiO3/2n
なお、シルセスキオキサン構造とは、各ケイ素原子が3個の酸素原子と結合し、各酸素原子が2個のケイ素原子と結合している構造(珪素原子数に対する酸素原子数が1.5)である。また、カゴ型シルセスキオキサン化合物とは、各ユニット(RSiO3/2)が、各ユニットにおける酸素原子を共有して他のユニットに連結し、カゴ構造を形成している化合物である。ここでカゴ構造とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような構造を指す。
Rは、それぞれ独立して非加水分解性基を表す。非加水分解性基とは室温で1当量の中性水と1時間接触させた場合に95%以上残存する基であり、この条件で99%以上残存していることが好ましい。Rのうち、少なくとも2つはビニル基またはエチニル基を含む基である。
Rの非加水分解性基の例としては、具体的には、置換または無置換の炭化水素基、ケイ素原子含有基、およびそれらを組み合わせた基などが挙げられる。炭化水素基とは、脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基などが挙げられ、より具体的には、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基またそれらを組み合わせた基などが挙げられる。なお、炭化水素基中に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。Rは、同一でも異なっていてもよい。
上記アルキル基は、特に限定されず、直鎖、分岐鎖、または環状でもよい。なかでも、炭素数1〜6が好ましく、さらに炭素数1〜2が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。
上記アルケニル基は、特に限定されず、直鎖、分岐鎖、または環状でもよい。なかでも、炭素数1〜6が好ましく、さらに炭素数1〜2が好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基などが挙げられ、好ましくはビニル基である。
上記アルキニル基は、特に限定されず、直鎖、分岐鎖、または環状でもよい。なかでも、炭素数1〜6が好ましく、さらに炭素数1〜2が好ましい。具体的には、エチニル基などが挙げられる。
アリール基は、芳香族性を有する環であれば特に制限されないが、炭素数1〜10が好ましく、さらに炭素数1〜6が好ましい。アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基であり、好ましくはフェニル基である。
ケイ素原子含有基としては、ケイ素が含有されていれば特に制限されないが、一般式(X)で表される基が好ましい。*はケイ素原子との結合位置を表す。
一般式(X)
*−L1−Si−(R20)3
一般式(X)中、L1はアルキレン基、−O−、−S−、−Si(R21)(R22)−、−N(R23)−、またはこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。なかでも、アルキレン基、−O−または、これらを組み合わせた2価の連結基が好ましい。アルキレン基としては、炭素数1〜6が好ましく、炭素数1〜2がより好ましい。
一般式(X)中、R21、R22、R23およびR20は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、各基の定義は上述のRの定義と同じであり、好ましくはメチル基、ビニル基、エチニル基などが挙げられる。
Rで表される基のうち、少なくとも2つが、ビニル基またはエチニル基を含む基であるが、少なくとも2つがビニル基であることが好ましい。Rがビニル基またはエチニル基を含む基の場合、ビニル基またはエチニル基は、直接または2価の連結基を介して、Rが結合するケイ素原子に結合することが好ましい。言い換えると、*−L2−R30で表される基であることが好ましい(L2は単結合または2価の連結基、R30はビニル基またはエチニル基)。
2価の連結基としては、−[C(R11)(R12)]k−、−CO−、−O−、−N(R13)−、−S−、−O−Si(R14)(R15)−、およびこれらを任意に組み合わせてできる2価の連結基が挙げられる。(R11〜R15はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、またはフェニル基を表し、kは1〜6の整数を表す。)。
なかでも、−[C(R11)(R12)]k−、−O−、−O−Si(R14)(R15)−またはこれらを任意に組み合わせてできる2価の連結基が好ましい。
化合物(1)中において、Rで表されるビニル基またはエチニル基が、ケイ素原子に直接結合することが好ましい。なかでも、化合物(1)中において、Rの少なくとも2つがビニル基であることが好ましく、Rの少なくとも半数(4〜8個)がビニル基であることがさらに好ましく、Rが全てビニル基であることが特に好ましい。
nは8〜16の整数を表す。なかでも、nは8、10、12、14、16が好ましく、入手性の観点から、8、10、12がより好ましい。
化合物(1)としては、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)のいずれかで表される化合物が好ましい。なかでも、入手性、重合制御性、溶解性の観点から、一般式(Q−6)で表される化合物が最も好ましい。
上記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)中、Rは非加水分解性基を表し、Rのうち少なくとも2つはビニル基またはエチニル基を含む基を表す。Rの具体例としては上述したものと同様のものを挙げることができる。
化合物(1)の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
化合物(1)は、市販のものを使用してもよいし、公知の方法で合成してもよい。
化合物(1)におけるRが下記一般式(II)で表される基である場合も好ましく、この場合、下記一般式(III)で表される化合物と下記一般式(IV)で表される化合物を反応させることで合成できる。
(R1)3−Si−O− (II)
〔MO-Si(O0.5)3m (III)
(R1)3−Si−Cl (IV)
一般式(III)で表される化合物は、例えば、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1997,36, No.7, 743-745等に記載の方法に従って合成できる。
これらの式中、R1はそれぞれ独立に非加水分解性基を表すが、R1で表される非加水分解性基の具体例としては、アルキル基、アリール基、ビニル基、エチニル基等が挙げられる。mおよびR1は、化合物(1)におけるnおよびRと同義である。Mは金属原子(例えば、Na、K、Cu、Ni、Mn)またはオニウムカチオン(例えば、テトラメチルアンモニウム)を表す。なお、Mが多価の金属原子である場合は、複数の−O−Si(O0.5)3が多価の金属原子Mに結合した形態を意味する。
一般式(III)で表される化合物と、一般式(IV)で表される化合物との反応は、例えば、溶媒中に、一般式(III)で表される化合物と、一般式(III)で表される化合物中に含まれるSi−OM基数の1〜100倍モルの一般式(IV)で表される化合物を添加し、撹拌しながら、通常0〜180℃、10分〜20時間行う。
溶媒としては、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が好ましい。一般式(III)で表される化合物と一般式(IV)で表される化合物を反応させる際には、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基を添加してもよい。
(重合体およびその製造方法)
上述した化合物(1)を用いて重合体を製造するための方法は特に制限されないが、化合物(1)中の不飽和基同士の重合反応を用いて製造することが好ましい。特に、化合物(1)を溶媒に溶解させ、重合開始剤を添加してビニル基またはエチニル基を含む基を反応させることが特に好ましい。
重合反応としてはどのような重合反応でもよいが、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合等が挙げられる。
化合物(1)の重合反応は、非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤の存在下で重合することができる。重合開始剤としては、特に有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。
重合開始剤としては、試薬自体の安全性および重合反応の分子量再現性から、有機アゾ系化合物が好ましく、なかでも重合体中に有害なシアノが取り込まれないV−601などのアゾエステル化合物が最も好ましい。
重合開始剤の10時間半減期温度は100℃以下であることが好ましい。
重合開始剤の使用量は化合物(1)1モルに対して、好ましくは0.0001〜2モル、より好ましくは0.003〜1モル、特に好ましくは0.001〜0.5モルである。
重合反応で使用する溶媒は、化合物(1)が必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成される膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。
例えば、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒などが利用できる。これらの中でより好ましい溶媒はエステル系溶媒であり、中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエートであり、特に好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチルである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応時に重合開始剤を分解させるのに必要な温度まで反応液を加温でき、反応終了後に溶媒を留去できるために、溶媒の沸点は75℃以上140℃以下であることが好ましい。重合開始剤の添加方法としては一括添加、分割添加、連続添加等が挙げられるが、少ない重合開始剤添加量で高分子量化でき、膜強度の点からも有利であるので、分割添加および連続添加が好ましい。
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、化合物(1)、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0〜200℃、より好ましくは40〜170℃、特に好ましくは70〜140℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
重合反応終了時に残存している化合物(1)は添加量の25%質量以下が好ましく、20%質量以下がより好ましく、15質量%以下が最も好ましい。重合時にこの条件を満たせば、塗布面状がよく、焼成時の膜減りが小さい膜形成用組成物を収率よく製造することができる。
また、化合物(1)を重合させた後、ろ過や遠心分離処理により高分子量成分を除く、カラムクロマトグラフィーを用いて精製する、などの方法で処理してもよい。
特に、重合反応によって生成した固形物に再沈澱処理を行い、低分子量成分および残存する化合物(1)を除去することによりMを大きくし、残存する化合物(1)量を減少させることが好ましい。
重合体の重量平均分子量(M)は、3〜30万が好ましく、4〜25万がより好ましく、5〜20万が最も好ましい。
重合体の数平均分子量(M)は、1〜20万であることが好ましく、1.5〜17.5万であることがより好ましく、2〜15万であることが最も好ましい。
重合体のZ+1平均分子量(MZ+1)は、9〜70万が好ましく、12〜55万がより好ましく、15万〜40万が最も好ましい。
重合反応終了時の重合体には、分子量300万以上の成分を実質的に含まないことが好ましく、200万以上の成分を実質的に含まないことがより好ましく、100万以上の成分を含まないことが最も好ましい。
重合体がこれらの分子量条件を満たすと、フィルターろ過性がよく、低密度、低誘電率の膜を形成できる、該重合体を含む膜形成用組成物を製造することができる。
上記の分子量条件を満たすために、重合時の反応中の化合物(1)の濃度は12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
反応時の生産性の観点では、重合時の化合物(1)の濃度が高いほど有利である。その意味では、重合時の化合物(1)の濃度は0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。
重合体は、2種以上(好ましくは2〜3種)の異なった化合物(1)の重合物であってもよい。
重合体が複数の異なった化合物(1)からなる共重合体である場合、m=8、10、および12から選ばれる2種以上の化合物(1)の混合物の共重合体であることが好ましい。
重合体は、化合物(1)以外の化合物との共重合物であってもよい。その場合に用いられる化合物としては、重合性炭素−炭素不飽和結合またはSiH基を複数有する化合物が好ましい。好ましい化合物の例としては、ビニルシラン類、ビニルシロキサン類、フェニルアセチレン類、[(HSiO0.5)3]8等が挙げられる。
重合体中では、化合物(1)の不飽和基(例えば、ビニル基またはエチニル基を含む基)のうち、10〜90モル%が未反応で残存していることが好ましく、20〜80モル%が未反応で残存していることがより好ましく、30〜70モル%が未反応で残存していることが最も好ましい。
つまり、該重合体が不飽和基(例えば、ビニル基またはエチニル基を含む基)を有することが好ましい。
<任意成分:空孔形成剤>
低温プラズマ処理が施される膜中においては、上記重合体以外に、一般式(2)または一般式(3)で表される空孔形成剤が含まれていてもよい。
該化合物は、芳香族炭化水素を主成分とし、分子内の全ての水素原子が芳香族炭化水素を構成する炭素原子と結合している。化合物がこのような構造をとることにより、後述する低温プラズマ処理時に、化合物がラジカルを生じにくい。そのため、該化合物は、重合体間の架橋反応を阻害することなく、加熱処理によって揮発し、得られる絶縁膜中に空孔を形成させることができる。結果として、絶縁膜中の架橋密度が高まり、絶縁膜中の空孔がつぶれにくくなり、誘電率が低く、機械的強度に優れ、硬膜時に膜減りの小さい絶縁膜を得ることができる。
一般式(2)中、A1は一般式(A−1)〜一般式(A−6)で表される化合物から選ばれる一つの化合物からr個の水素原子を除いた基を表す。一般式(3)中、A2は一般式(A−1)〜一般式(A−6)で表される化合物から選ばれる一つの化合物から1個の水素原子を除いた基を表す。上記のような複数の芳香族炭化水素基を含む基を有することによって、分解などによるラジカルの発生がより抑制されるため好ましい。
なかでも、A1およびA2として、それぞれ一般式(A−1)、一般式(A−2)が好ましく、一般式(A−1)がより好ましい。
なお、一般式(2)中において、2つのA2は同一でも異なっていてもよい。
また、Aが一般式(A−1)でZがベンゼン環基である場合は、Z上のベンゼン環基の水素原子が除かれてもよい。
一般式(2)、一般式(3)、一般式(A−3)および一般式(A−6)中のXは、単結合、−O−、または−SiAr1Ar2−を表す。なかでも、塗布溶剤への溶解性が優れる点で、−O−がより好ましい。
なお、Xが単結合である場合は、例えば、一般式(2)中のA1とArが直接結合する。
一般式(2)中のAr、並びに、上記Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、ベンゼン環基、ナフタレン環基、またはビフェニル環基を表す。なかでも、膜減りがより抑制され、誘電率がより優れた膜が得られる点で、ベンゼン環基より好ましい。
一般式(A−2)中、Yは炭素原子またはケイ素原子を表し、好ましくは炭素原子である。
一般式(A−1)中、Zは、水素原子またはベンゼン環基を表し、3つのZのうち少なくとも1つはベンゼン環基を表す。なかでも、膜減りがより抑制され、誘電率がより優れた膜が得られる点で、2つ以上のZがベンゼン環基であることが好ましく、すべてがベンゼン環基であることが好ましい。
一般式(2)中、rは0〜5の整数を表す。なかでも、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0〜3である。
ただし、一般式(2)中のA1が一般式(A−2)〜一般式(A−6)のいずれかで表される化合物の場合は、rは1以上となる。
上記空孔形成剤の更なる好適な実施態様として、一般式(4)〜一般式(7)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
一般式(4)〜一般式(6)中、Arは、ベンゼン環基またはナフタレン環基を表す。なかでも、化合物の溶解がより優れ、得られる膜の特性がより優れる点から、ベンゼン環基が好ましい。
一般式(4)〜一般式(7)中、Xは、単結合、−O−、または−SiAr1Ar2−を表す。なかでも、化合物の溶解がより優れ、得られる膜の特性がより優れる点から、−O−が好ましい。
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、ベンゼン環基、ナフタレン環基またはビフェニル環基を表す。なかでも、ベンゼン環基が好ましい。
一般式(6)中、Yは、炭素原子またはケイ素原子を表し、好ましくは炭素原子である。
一般式(4)〜一般式(6)中、sは0〜2の整数を表す。なかでも、化合物の溶解がより優れ、得られる膜の特性がより優れる点から、sは1〜2が好ましい。
空孔形成剤は非対称構造を有していると、塗布溶剤への溶解性が向上する。さらに、化合物の塗布溶剤中での不溶化、凝集などが起きず、塗布液の経時安定性も向上する。
以下に、空孔形成剤の具体例を記載するが、本発明はこれらに限定されない。
上記の空孔形成剤は、熱重量分析(1mmHg真空下,昇温速度20℃/min)において5%重量減少温度が250〜450℃であることが好ましく、260〜450℃であることがより好ましく、270〜450℃であることが特に好ましい。5%重量減少温度が250〜450℃の範囲にあると、空孔形成剤が適度の揮発性を有するため、低誘電率化のための十分量の膜空隙を形成することができる。5%重量減少温度が低すぎると、塗膜後硬膜前に揮発してしまい、低誘電率化のための十分量の膜空隙を形成することができない場合がある。5%重量減少温度が高すぎると、硬膜時に空孔形成剤が揮発しにくく、膜中に残存してしまうため、低誘電率化のための十分量の膜空隙を形成することができない。なお、熱重量分析においては、公知の熱重量分析装置を使用することができる。
空孔形成剤の分子量は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、得られる絶縁膜の誘電特性がより優れる点で、100〜1500であることが好ましく、200〜1200であることがより好ましく、300〜1000であることが最も好ましい。分子量が小さすぎると、塗膜形成後硬膜前に揮発してしまい、十分量の膜空隙を膜中に形成しにくくなる。
空孔形成剤の主骨格は、芳香族炭化水素である。得られる膜の諸特性が優れる点で、空孔形成剤中における芳香族炭化水素の含有量は、化合物全量に対して、60質量%以上が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%が特に好ましい。
<化合物(1)の重合体を含む膜>
本発明において、低温プラズマ処理が施される膜は上記の化合物(1)の重合体を含む。
膜中における重合体の含有量は特に制限されないが、膜全量に対して、25〜100質量%が好ましく、25〜90質量%がより好ましく、50〜75質量%がさらに好ましい。
なお、該膜中においては、未反応の化合物(1)が含まれていてもよい。
膜中においては、1種の重合体のみが含まれていてもよく、構造が異なる2種以上(好ましくは2〜3種)の重合体が含まれていてもよい。
膜中に上記空孔形成剤が含有される場合、その含有量は特に制限されないが、より優れた低誘電性および機械特性を示す絶縁膜を形成できる点から、膜全量に対して、10〜75質量%が好ましく、25〜50質量%がより好ましい。
膜中における上記重合体と上記空孔形成剤との質量比(重合体/空孔形成剤)は特に制限されないが、より優れた低誘電性および機械特性を示す絶縁膜を形成できる点から、0.75〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。
該膜に対しては後述する低温プラズマ処理が施されるが、低温プラズマ処理が施される前に、該膜に対して加熱や露光による硬化処理は実施されないことが好ましい。つまり、硬化していない膜に対して、低温プラズマ処理が施されることが好ましい。硬膜処理が施されていない膜に対して低温プラズマ処理が施されると、機械的強度に優れると共に、膜の誘電率をより下げやすいという利点を有する。
なお、上記の硬化処理として実施される加熱とは、膜中において架橋などが進行して硬膜する温度条件での加熱を意味し、具体的には、350℃以上(通常、350〜400℃)での加熱が挙げられる。
該膜の好適態様としては、製造上および発明の効果の観点から、上記重合体および任意成分として溶媒を含む組成物を基板上に塗布して得られる膜(塗膜)であることが好ましい。つまり、本発明においては、得られた該膜(塗膜)に対して、加熱や露光による硬化処理(硬膜処理)を施さずに、低温プラズマ処理を施し、硬膜することが好ましい。
該組成物については、後段において詳述する。
(膜の製造方法)
重合体を含む膜の製造方法は特に制限されないが、上記重合体を含む組成物を用いて該膜を形成することが好ましい。より具体的には、製造上の観点から、上記重合体および溶媒を含む組成物(膜形成用組成物)を基板上に塗布して、膜を形成する方法が好ましい。
組成物は溶媒を含んでいてもよく、溶媒としては重合体を溶解させるものであれば、特に制限されない。溶媒としては、特開2008−214454号公報の段落番号[0044]に記載の溶媒が挙げられる。
上記の中でも、好ましい溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
該組成物中の全固形分濃度は、組成物全量に対して、好ましくは1〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。上記範囲内であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、組成物(塗布液)の保存安定性もより優れるものとなる。
なお、固形分とは、膜となりうる構成成分(上記重合体や、空孔形成剤など)を意図し、溶媒は含まれない。
組成物には、上記空孔形成剤が含まれていてもよい。組成物中における上記重合体と上記空孔形成剤の質量比は特に制限されず、上述した膜中における質量比と同じ範囲が挙げられる。
(添加剤)
更に、組成物には、得られる膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。なお、該組成物中には、未反応の化合物(1)が含まれていてもよい。
組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなる界面活性剤を使用してもよい。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。使用する界面活性剤は、1種類のみでもよいし、2種類以上を併用してもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
使用する界面活性剤の添加量は、組成物全量に対して、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.5質量%であることが更に好ましい。
組成物はフィルターろ過により、不溶物、ゲル状成分等を除いてから膜形成に用いることが好ましい。その際に用いるフィルターの孔径は0.005〜0.5μmが好ましく、孔径0.005〜0.2μmがより好ましく、孔径0.005〜0.1μmが最も好ましい。フィルターの材質はポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンがより好ましい。
上記重合体を含む膜は、上記した組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法、スプレー法、バー塗布法等の任意の方法により、シリコンウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハ、ガラス、プラスチックフィルムなどの基板に塗布した後、溶媒を必要に応じて予備加熱処理で除去することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法,スキャン法が好ましい。特に好ましくは,スピンコーティング法である。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
なお、予備加熱処理は、上記重合体間の架橋などが進行しない程度の温度条件で実施される処理である。具体的には、100〜200℃の条件下で、1〜3分程度、基板を乾燥する方法が挙げられる。
<大気圧低温プラズマ処理>
次に、上記重合体を含む膜に施される、大気圧下での低温プラズマ処理(以後、適宜大気圧低温プラズマ処理とも表記する)について詳述する。
本発明においては、大気圧低温プラズマ処理により、上述した重合体を含む膜が硬化(硬膜)される。より具体的には、該プラズマ処理によって、膜中の重合体間で架橋反応が進行し、硬化膜が得られる。なお、重合体中に不飽和基(例えば、ビニル基またはエチニル基を含む基)などが残存している場合、該プラズマ処理によって該基が活性化され、膜中においてより架橋反応が進行し、機械強度と誘電特性により優れた絶縁膜が得られる。なお、該プラズマ処理を用いた場合は、他の処理方法と比較して、特に、得られた絶縁膜の機械強度の向上、生産性の向上、高価なガスを使用しなくてよいという利点がある。
(装置)
本発明に用いられる大気圧プラズマ装置としては、誘電体で覆われた電極間に大気圧近傍の圧力の不活性気体などを通じつつ間欠放電を行うことにより低温プラズマを発生させることができる装置であれば、いずれの装置も用いることができ、使用目的等に応じて種々の変型例を選択できる。
例えば、特開2008−60115号公報において、基盤プラズマ処理に用いられる装置、特開2004−228136号公報に記載の常圧プラズマ装置、特開2006−21972号公報、特開2007−188690号公報、WO2005/062338号パンフレット、WO2007/024134号パンフレット、WO2007/145513号パンフレットなどの明細書に記載のプラズマ装置などが挙げられる。また、大気圧プラズマ装置は市販品としても入手可能であり、例えば、アリオス(株)のATMP−1000、株式会社ハイデン研究所の大気圧プラズマ装置、(株)魁半導体のS5000型大気圧低温プラズマジェット装置、(株)ウェルのMyPL100、ILP−1500、積水化学工業(株)のRD550など、現在上市されている大気圧プラズマ装置もまた好適に使用しうる。
なお、プラズマの不均一な集中(ストリーマ)を避けて膜へのダメージを軽減するために、例えば、WO2005/062338号パンフレットおよびWO2007/024134号パンフレットに記載された、放電部への通電をパルス制御素子経由で行なうなどの電気回路の工夫をした装置を用いることが好ましい。
本発明における大気圧低温プラズマ処理は、非平衡プラズマジェット、交流パルス放電による低温プラズマなどを用いることができ、いずれも大気圧近傍の条件下で生成されたプラズマが用いられる。
大気圧低温プラズマ処理はバッチ方式でも、他の工程とつなげてインライン方式で行ってもよい。
(圧力条件)
大気圧低温プラズマ処理における「大気圧」としては、具体的には、70kPa以上130kPa以下の範囲を指し、好ましくは90kPa以上110kPa以下の範囲である。
(温度条件)
大気圧低温プラズマ処理における処理温度としては、プラズマ処理される材料の耐えうる温度以下であることが好ましく、具体的には、−196℃以上150℃未満が好ましく、−21℃以上100℃以下がより好ましい。特に好ましくは、環境温度雰囲気下である室温(25℃)近傍である。上記範囲内であれば、プロセスのハンドリングがより簡便となり好ましい。
大気圧低温プラズマ処理における処理温度は、プラズマ処理される材料の特性に応じて選択できるが、大気圧低温プラズマを照射することによってもたらされる温度上昇が小さいことが本発明の好ましい特徴の一つである。なお、後述するプラズマ適用領域をプラズマ発生装置から離間させることで、その効果がより向上する。
大気圧低温プラズマ処理が施される膜の温度上昇は、50℃以下が好ましく、20℃以下が特に好ましい。
本発明においては、大気圧低温プラズマを選択して照射することで、プラズマからの熱エネルギーの供給が少ないため、被処理物である膜の温度上昇はほとんど生じない。このため、高温にすると物性が変化するといった、通常ではプラズマ照射処理が行えない用途などにも適用可能である。
(ガス)
大気圧低温プラズマ処理時に用いられる放電ガスとしては、大気等の混合気体を用いることもできるが、不活性気体であるHe,Arなどの希ガス、あるいは窒素ガスを用いることが好ましく、HeまたはN2が特に好ましい。
(出力)
大気圧低温プラズマ処理におけるプラズマ出力は、圧力、温度などの種々の条件によって異なり、適宜最適な出力が選択される。なかでも、生産性および発明の効果がより優れる点から、250〜2000Wが好ましく、500〜1000Wがより好ましい。
(時間)
大気圧低温プラズマ処理の時間は、圧力、温度など種々の条件によって異なり、適宜最適な時間が選択される。なかでも、生産性および発明の効果がより優れる点から、1〜30分が好ましく、1〜15分がより好ましい。
膜表面へのダメージを抑制するという観点からは、プラズマ作用部位と放電部位とを離すこと、または、放電回路の工夫によりプラズマの局所的集中(ストリーマ)の発生を抑制して、均一なプラズマを発生させること、が有効であり、特に後者は、大面積にわたる均一なプラズマ処理ができる点で好ましい。
前者としては、放電により生じたプラズマを不活性気体の気流により膜表面まで搬送して接触させる方式が好ましく、特にいわゆるプラズマジェット方式が好ましい。この場合プラズマを含む不活性ガスを搬送する経路(導通管)はガラス、磁器、有機高分子などの誘電体であることが好ましい。
後者としては、WO2005/062338号パンフレットおよびWO2007/024134号パンフレットに記載の、パルス制御素子経由で誘電体により覆われた電極に通電することによりストリーマが抑制された均一なグロープラズマを発生させる方式が好ましい。
プラズマを含む不活性ガスの供給ノズルから塗膜表面までの距離は特に制限されないが、0.01mm〜100mmが好ましく、1mm〜20mmがより好ましい。
不活性ガスによる搬送方式の場合でも、WO2009/096785号パンフレットに記載の方式と同様にインライン方式でプラズマを膜表面に適用しうる。即ち、基材表面に連続的に塗布法により重合体を含む膜を形成し、塗布工程の川下側に不活性ガスとプラズマとを表面に適用しうる吹き出しノズルなどを設けることで、連続的に絶縁膜の形成が可能となる。
なお、重合反応時における酸素由来の化学種の取り込みを減少させるといった観点からは、プラズマ処理を施す領域に、不活性気体を十分に供給するか、その領域を不活性ガスで充満させることがより好ましい。このような不活性ガスによるプラズマの搬送を行う際には、プラズマ点灯以前からプラズマ発生部位に不活性ガスを流しておき、プラズマ消灯後にも不活性ガスを流し続けることが好ましい。
プラズマ処理後の不活性ガスについては、プラズマの寿命が短時間であることから、特段の処理を行わず排気してもよいが、処理領域の近傍に吸気口を設けて処理済みの不活性ガスを回収してもよい。
なお、上記プラズマ処理後、必要に応じて後加熱処理を設けてもよい。特に、上述した空孔形成剤を使用する場合は、該空孔形成剤を完全に揮発させ、より誘電特性に優れた絶縁膜を得るために該後加熱工程を実施することが好ましい。
なお、加熱条件は膜形成に使用された化合物に応じて適宜最適な条件が選択されるが、得られる膜の特性がより優れ、生産性に優れる点から、350〜450℃の条件下で、30〜90分程度行うことが好ましい。なお、雰囲気は特に制限されず、窒素、He、Arなどの不活性雰囲気などが適宜選択される。
<絶縁膜>
上述した方法によって得られる絶縁膜の厚さは特に限定されないが、電子デバイスなどへの応用の点から、0.005〜10μmが好ましく、0.01〜5.0μmがより好ましく、0.01〜1.0μmがさらに好ましい。
ここで、本発明の膜の厚さは、光学干渉式膜厚測定器にて任意の3箇所以上を測定した場合の単純平均値を意味するものとする。
得られる絶縁膜の比誘電率は、使用する材料によって異なるが、測定温度25℃において、比誘電率が3.0以下、好ましくは2.7以下、つまり2.0〜2.6であることが好ましい。
また、比誘電率の測定方法としては、測定温度25℃で、フォーディメンジョンズ社製水銀プローバおよび横河ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出する。
得られる絶縁膜のヤング率は、使用する材料によって異なるが、5.0〜15.0GPaであることが好ましく、8.0〜15.0GPaであることがより好ましい。
ヤング率の測定方法としては、例えば、MTS社ナノインデンターSA2を使用して測定する。
<用途>
本発明の絶縁膜は、多様の目的に使用することができ、特に電子デバイスなどの層間絶縁膜へ好適に用いることができる。電子デバイスとは、半導体素子や、磁気記録ヘッドなどを含めた広範な電子機器を意味する。例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により制約されるものではない。
以下のGPC測定は、Waters2695およびShodex製GPCカラムKF−805L(カラム3本を直結)を使用し、カラム温度40℃、試料濃度0.5質量%のテロラヒドロフラン溶液を50μl注入し、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流量でフローさせ、RI検出装置(Waters2414)およびUV検出装置(Waters2996)にて試料ピークを検出することでおこなった。Mw、MnおよびMZ+1は標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて計算した。
以下に高分子化合物A〜C、および、空孔形成剤の合成方法について説明する。なお、以下の化合物の番号は、上述したカゴ型シルセスキオキサン化合物の例示化合物、および、空孔形成剤の例示化合物の番号に対応する。
<合成例1:高分子化合物Aの合成>
カゴ型シルセスキオキサン化合物の例示化合物(I−d)(アルドリッチ社製)1gを、酢酸ブチル80gに加えた。窒素気流中で、加熱還流しながら(内温127℃)、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)5mgを酢酸ブチル4mlで希釈した液を2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間加熱還流した。重合禁止剤として4−メトキシフェノール20mgを加えた後、室温まで冷却し、液重量2gまで減圧濃縮し、メタノール20mlを加え、1時間攪拌した後、固形物をろ取、乾燥した。これをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、攪拌しながら水1.8mlを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、メタノール10mlを加えた。固形分をろ取、乾燥し固形分0.49gを得た(高分子化合物A)。
固形分をGPCで分析すると、例示化合物(I−d)より分子量が大きい成分は、Mw=15.8万、MZ+1=31万、Mn=8.9万であった。固形物中には未反応の例示化合物(I−d)は3質量%以下であった。分子量300万以上の成分は含まれなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分の1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合してできたアルキル基由来のプロトンピークと、残存したビニル基由来のプロトンピークが48:52の積分比率で観察され、ビニル基同士が重合していることがわかった。
なお、上記例示化合物(I−d)は、上述したカゴ型シルセスキオキサン化合物の例示化合物として記載した化合物に対応する。
<合成例2:高分子化合物Bの合成>
合成例1で使用したカゴ型シルセスキオキサン化合物の例示化合物(I−d)(アルドリッチ社製)の代わりに、カゴ型シルセスキオキサン化合物の例示化合物(I−a)(アルドリッチ社製)を使用した以外は、合成例1と同様の方法で、高分子化合物Bを合成した(固形分0.4g)。
固形分をGPCで分析すると、例示化合物(I−a)より分子量が大きい成分は、Mw=20万、MZ+1=40万、Mn=8万であった。固形物中には未反応の例示化合物(I−a)は5質量%以下であった。分子量300万以上の成分は含まれなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分の1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合してできたアルキル基由来のプロトンピークと、残存したビニル基由来のプロトンピークが49:51の積分比率で観察され、ビニル基同士が重合していることがわかった。
<合成例3:高分子化合物Cの合成>
合成例1で使用したカゴ型シルセスキオキサン化合物の例示化合物(I−d)(アルドリッチ社製)の代わりに、カゴ型シルセスキオキサン化合物の例示化合物(I−h)(アルドリッチ社製)を使用した以外は、合成例1と同様の方法で、高分子化合物Cを合成した(固形分0.6g)。
固形分をGPCで分析すると、例示化合物(I−h)より分子量が大きい成分は、Mw=13万、MZ+1=30万、Mn=5万であった。固形物中には未反応の例示化合物(I−h)は4質量%以下であった。分子量300万以上の成分は含まれなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、固形分の1H−NMRスペクトルを測定したところ、エチニル基が重合してできたアルキル基由来のプロトンピークと、残存したエチニル基由来のプロトンピークが47:53の積分比率で観察され、エチニル基同士が重合していることがわかった。
<合成例4:化合物P−2の合成>
冷却管を備えた三つ口フラスコに4−ブロモジフェニルエーテル50g、トリメチルシリルアセチレン34mL、トリフェニルホスフィン3.58g、トリエチルアミン260mLを加え、窒素置換した後、酢酸パラジウム0.25g、ヨウ化銅(I)0.497gを加え、80℃で20時間加熱撹拌した。室温まで反応液を冷却後、析出固体をセライト濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた粗生成物を少量の酢酸エチルに溶解させてシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、4−(トリメチルシリルエチニル)ジフェニルエーテルを白色固体として63.8g得た(収率:96%)。
ナスフラスコに4−(トリメチルシリルエチニル)ジフェニルエーテル63.8g、メタノール120mL、テトラヒドロフラン120mLを加え、0℃まで冷却した後、炭酸カリウム82.7gをゆっくりと加えた。室温で3時間撹拌後、酢酸エチル/水で抽出を行った。有機層を減圧濃縮することで得られた粗生成物を少量の酢酸エチルに溶解させてシリカゲルクロマトグラフィーに充填し、ヘキサンを溶離液に用いてカラム精製を行った。得られた溶液の溶媒を減圧留去することで、4−エチニルジフェニルエーテルを白色固体として43.6g得た(収率:94%)。
冷却管を備えた三つ口フラスコに4−エチニルジフェニルエーテル5.00g、テトラフェニルシクロペンタジエノン8.86g、キシレン50gを加え、160℃で6時間加熱還流した。室温まで冷却後、メタノール200mLを反応液に加え、析出固体を濾取、乾燥して、白色固体の目的物(化合物P−2)12.1gを得た(収率:95%)。熱重量分析(TA Instruments社SDT Q600を使用、1mmHg真空下, 20℃/minで昇温)の結果、5%重量減少温度は331℃であった。
<組成物の調製>
上記で得られた高分子化合物、空孔形成剤を下記表1に示す質量比で溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に溶解させ、それぞれについて固形分濃度5質量%の溶液を調製した。なお、空孔形成剤として使用した1,3,5−トリフェニルベンゼンは市販品を使用した(Wako社製)。
得られた溶液を0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、スピンコート法で4インチシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレート上にて110℃で1分間、ついで200℃で1分間、基板を予備乾燥し、膜厚500nmの塗布膜を形成させた。
(膜処理プロセス)
上記で得られた塗布膜に対して、表1に示す温度、処理時間、雰囲気にてプラズマ処理を行った(工程1:大気圧低温プラズマ処理)。なお、各工程1の圧力条件は101.3(大気圧)kPa、プラズマ出力1000Wであった。また、大気圧低温プラズマに使用された装置は、株式会社魁半導体製S5000型大気圧低温プラズマジェット装置であった。
工程1で得られた膜に対して、必要に応じて表1に示す温度、処理時間、雰囲気にて後加熱処理を行った(工程2:後加熱処理)。
なお、比較例1においては、工程1:大気圧低温プラズマ処理の代わりに、以下の工程3:加熱処理により絶縁膜を製造した。
工程3(加熱処理):処理温度400℃、処理時間60分、窒素雰囲気下
また、比較例2においては、工程1:大気圧低温プラズマ処理の代わりに、以下の工程4:UVキュアにより絶縁膜を製造した。
工程4(UVキュア、波長222nm):処理温度25℃、処理時間5分、窒素雰囲気下
得られた膜に対して、以下の測定を行った。結果を表1にまとめて示す。
<比誘電率>
フォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて、1MHzにおける容量値(測定温度25℃)から算出した。
<ヤング率>
MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定した。
上記実施例に示すように、低温プラズマ処理によって得られた膜は、優れた誘電特性および機械的特性を示すことが確認された。
また、空孔形成剤を含有する場合は、比較的良好な機械的強度を維持ししたまま、誘電特性がより向上することが確認された。
一方、加熱処理により絶縁膜の製造を行った比較例1では、実施例と比較すると、機械的特性に劣っていた。また、UVキュアを行った比較例2においても、実施例と比較すると、機械的特性に劣っていた。

Claims (5)

  1. 一般式(1)で表されるカゴ型シルセスキオキサン化合物の重合体を含む膜に、大気圧下にて低温プラズマ処理を施し、硬化させて得られる絶縁膜。
    一般式(1) (RSiO3/2n
    (一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して非加水分解性基を表し、Rのうち少なくとも2つはビニル基またはエチニル基を含む基を表す。nは、8〜16の整数を表す。)
  2. 前記カゴ型シルセスキオキサン化合物が、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載の絶縁膜。

    (一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)中、Rはそれぞれ独立して非加水分解性基を表し、Rのうち少なくとも2つはビニル基またはエチニル基を含む基を表す。)
  3. 前記重合体を含む膜が、下記一般式(2)または一般式(3)で表される空孔形成剤を含む、請求項1または2に記載の絶縁膜。

    (一般式(2)中、A1は一般式(A−1)〜一般式(A−6)で表される化合物から選ばれる一つの化合物からr個の水素原子を除いた基を表す。一般式(3)中、A2は一般式(A−1)〜一般式(A−6)で表される化合物から選ばれる一つの化合物から1個の水素原子を除いた基を表す。Xは、単結合、−O−、または−SiAr1Ar2−を表す。Ar、Ar1、およびAr2は、それぞれ独立に、ベンゼン環基、ナフタレン環基、またはビフェニル環基を表す。Yは、炭素原子またはケイ素原子を表す。Zは、水素原子またはベンゼン環基を表し、3つのZのうち少なくとも1つはベンゼン環基を表す。rは0〜5の整数を表す。
    ただし、一般式(2)中のA1が一般式(A−2)〜一般式(A−6)のいずれかの場合は、rは1以上となる。)
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁膜を備える電子デバイス。
  5. 一般式(1)で表されるカゴ型シルセスキオキサン化合物の重合体を含む膜に、大気圧下にて低温プラズマ処理を施して絶縁膜を得る、絶縁膜の製造方法。
    一般式(1) (RSiO3/2n
    (一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して非加水分解性基を表し、Rのうち少なくとも2つはビニル基またはエチニル基を含む基を表す。nは、8〜16の整数を表す。)
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