JP2010187547A - 精神疾患の診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ストレス状態にある脳内での遺伝子発現の変化を、血液中において正確に観察できる新規なマーカー遺伝子の提供、および血液中で当該遺伝子発現を測定することにより、ストレスによって引き起こされる精神疾患を診断する方法の提供。
【解決手段】末梢血のTPH1遺伝子の発現量を測定することにより、ストレスの程度を定量化し、ストレスによって引き起こされる精神疾患を正確に診断することができる。

【選択図】なし

Description

本発明は、トリプトファン水酸化酵素1(tryptophan hydroxylase 1:TPH1)遺伝子の血液中での発現量を調べることによる精神疾患の要因となるストレス状態の評価方法、及び精神疾患の診断方法に関する。
現代社会では、将来への不安、職場や学校の人間関係、生活環境や騒音、家庭内の不和や子育てへの不安等の精神的なストレスにより自律神経系の失調をきたし、様々な精神疾患に至ることが多々ある。WHO国際疾病分類第10版(ICD−10)に基づくと、精神疾患は10種類1分類ほどに分けられ、脳の大きな病変による精神疾患、アルコール依存症、統合失調症、うつ病、摂食障害、睡眠障害、適応障害、多動性障害など様々な疾患を含むとされているが、これら精神疾患の発症には、遺伝と環境(ストレス)が非常に重要な危険因子であると考えられている。近年、精神疾患々者数が世界的に増加傾向にあり、社会的に大きな問題になっている。現在、多くの研究機関で精神疾患を診断・評価する技術の開発が行われており、これらの技術が精神疾患の予防や治療に役立てられるものと考えられる。
従来から、ヒトなど哺乳動物がストレス状態に置かれたときや、精神疾患に罹患したときに、体内で産生される各種のホルモンなど生理活性物質や化学物質の産生量、濃度が変化することに着目して、唾液中や血清中におけるこれらの物質量を測定し、ストレスの状態を評価する方法、精神疾患を診断又は評価する方法が、多数提案されている。例えば、体液中のクロモグラミンの濃度を定量する方法(特許文献1)、副腎又は下垂体における一酸化窒素合成酵素(NOS)活性を測定する方法(特許文献2)、唾液における副腎性性ホルモン又はその代謝物の濃度を指標にする方法(特許文献3)、血液中のグルタチオン付加ヘモグロビン量を測定する方法(特許文献4)、唾液中のデヒドロエピアントステロンとコルチゾール濃度を測定する方法(特許文献5)、血中のトリプトファン又はその代謝物の濃度の変化率を測定する方法(特許文献8)、血清中のアポリポタンパク質E、アポリポタンパク質A−IV、ハプトグロビン、及びビタミンD結合タンパク質をマーカーとして使用する方法(特許文献11)、血清中の抗上皮細胞成長因子量を定量する方法(特許文献15)、血液中の血小板付随抗体(PAA)試料のFc領域欠失抗ヒト免疫グロブリン抗体に対する結合度を評価する方法(特許文献16)などがある。
また、ストレスによって増減する各種の遺伝子の発現量に注目した評価法も多数提案されており、血球中の遺伝子の発現プロファイルによる評価法として、例えば、末梢血白血球由来の遺伝子について、神経系、内分泌系、免疫系など複数の特定遺伝子群に着目して発現プロファイル解析する評価法(特許文献10)、末梢血単核球の遺伝子発現プロファイルを指標として統合失調症を診断する方法(特許文献14)などがあり、また、肝臓、心臓などの臓器中での時計遺伝子であるperl遺伝子、per2遺伝子の発現レベルを指標とする方法(特許文献9)や、血球などの細胞内グルタチオン(GSH)レベル調節関与遺伝子の発現レベルを指標とする方法(特許文献13)などもある。
しかしながら、ストレスが中枢神経系に影響を及ぼし、精神・神経疾患に至るのは、あくまでも脳内での事象であり、血液中など末梢組織、細胞で観察される各種の現象や生理活性物質又はその遺伝子などの増減は必ずしも脳内の環境変化を正確に再現しているものとはいえない。また、血液内などでの酵素活性や物質濃度を測定する場合には、物質の多段階の精製や放射性同位体による標識など煩雑な工程を必要とする場合が多いことも定量的な評価を難しくしている。したがって、従来提案されていたこれらの方法は、いずれも定性的に精神・神経疾患との関連性を予測させるにとどまり、定量的な評価や正確な診断には不十分なものであった。
脳内での神経伝達物質またはその関連物質もしくはその遺伝子の増減を直接測定しようとする手法も報告されており、例えば脳髄液もしくは脳環流液中のモノアミン類の濃度変化率を測定する方法(特許文献6)、脳内で発現するV−1蛋白質(カテコールアミン生合成促進物質)量又はV−1遺伝子発現量を測定する方法(特許文献7)、脳、海馬中の遺伝子であるトランスサイレチン遺伝子変化を検出する睡眠不足または睡眠障害の検出方法(特許文献12)、セロトニン調節異常に関連した化合物同定のための、トリプトファン水酸化酵素アイソフォーム2(TPH2)の脳内におけるmRNA発現量を測定する方法(特許文献17)などが知られているが、脳内での遺伝子発現を直接検出する方法は倫理的な問題により、実験動物にしか適用できないため、ヒトでのストレス状態や精神疾患の診断には用いることはできない。
ストレスの程度を評価し、かつ精神・神経疾患を発症する可能性を正確に、かつ迅速に診断して適切に治療するためには、ストレス状態にある脳内での遺伝子発現の変化を、血液などの末梢組織において、リアルタイムで簡便かつ正確に観察できるマーカー遺伝子の探索が急務であった。
また、上述のように、血液内などでの酵素活性や物質濃度を測定する場合には、多段階の精製工程や標識工程など煩雑な工程を必要とする場合が多いのに対して、血液中の遺伝子発現を測定する場合は、RNA抽出、cDNA合成およびPCR反応という比較的簡単な工程のみであることから、脳だけでなく血液でも同時に検出できる遺伝子を用いることが望まれていたが、その場合の問題点として、血液中の微量のRNAを抽出する従来法では、採取した血液をそのまま用いる場合は、採取後すぐにRNAを抽出しなければならなかった点が上げられる。採取後すぐにRNAを抽出できない場合には凍結保存する必要があるが、特に、凍結血液からのRNA抽出は市販キットを使用しても抽出効率に大きな差が生じるために、安定したRNA抽出が難しく、血液中の微量RNAについての定量的な評価がしにくい問題もあったため、血液中での遺伝子発現の変化をリアルタイムで観察しようというときには、血液中の微量RNAを安定かつ簡便に測定するための手段も開発する必要があった。
特許公開平11−23572 特許公開平8−262025 特許公開平11−38004 特許公開2000−74923 特許公開平11−326318 特許公開2002−156378 特許公開2003−61654 特許公開2004−198325 特許公開2007−110912 特許公開2006−15 特許公開2007−225606 特許公開2007−75071 特許公表2007−524408 特許公開2004−135667 WO2002/037105 特許公表平9−504866 特許公表2007−510406
Mol Psychiat, 2006 Apr;11(4):336-51. Science,2003,Vol.299,p.76 Cell Mol. Neurobiol.,(2008)28:331-342 J.Neurochem.,86:1308-1311(2003)
本発明は、ストレス状態にある脳内での遺伝子発現の変化を、血液中において、リアルタイムで簡便かつ正確に観察できる新規なマーカー遺伝子を提供し、当該遺伝子発現を、血液中で正確かつ簡便に測定するための方法を提供し、そのことにより、ストレスによって引き起こされる精神疾患を簡便かつ正確に診断するための方法を提供することを課題としている。
本発明者らは、精神疾患の疾患マーカー探索のための研究を進める過程で、拘束ストレスを与えた精神疾患モデルラットの脳において、平常時に比較して発現量が顕著に増大する遺伝子として、トリプトファン水酸化酵素(TPH1)遺伝子を特定することができた。本発明者らは、凍結血液からも安定した効率でRNAの抽出が可能な技術を開発していたことから、同じく拘束ストレスを与えた精神疾患モデルラットの血液におけるTPH1遺伝子の発現量を測定したところ、血液内でも発現量が増大していることを確認した。そこで、さらに、脳内および血中での発現量の相関関係を詳細に検討した結果、TPH1遺伝子は、ストレス状態を与えた血中での発現量が平常時に比較して急激に高まるばかりか、ストレス負荷の程度に応じた発現量の変化に極めて高い相関関係があることを見出した。
ところで、人間の喜怒哀楽といった精神的な感情は、脳内で神経伝達物質であるドーパミン、セロトニンなどが分泌されることでコントロールされ、ストレス状態になると、脳内でのドーパミン及びセロトニンのバランスが崩れ、極端にセロトニン不足に陥った場合には、うつ病などの精神障害を引き起こすことが古くから知られているが、セロトニン合成の最初の反応は、トリプトファンの5位にトリプトファン水酸化酵素(TPH)の作用でヒドロキシル基を付加された5−ヒドロキシトリプトファン(5−HTP)を作成する反応であり、この反応がセロトニン合成の律速段階である。つまり、脳内のトリプトファン水酸化酵素(TPH)の産生が抑えられると、セロトニン合成が阻害されることから、従来から脳内におけるTPHのmRNA発現量及びその変化と、ストレス及び精神障害との関連性についての研究は、活発になされていた。
例えば、トリプトファン水酸化酵素1遺伝子のイントロン7にある779番目又は218番目の塩基がA(アデニン)からC(シトシン)に変化させる多型が、セロトニン合成を低下させ、衝動的な自殺が多くなるとの報告もある。(非特許文献1)しかしながら、従来は、トリプトファン水酸化酵素(TPH)遺伝子のうちでも、TPH1遺伝子のアイソフォームであるTPH2遺伝子が、脳などの中枢神経系に局在する遺伝子であり、TPH1遺伝子はむしろ腎臓など末梢組織中に局在していると報告されており(非特許文献2)、脳内のセロトニン合成に関わっているTPHは、TPH2であることが一般的な常識となっていた。脳における中枢セロトニン作動性神経伝達のグルココルチコイド妨害物質のスクリーニング方法に関する特許文献17においても、実験動物の脳内でのTPH2遺伝子の発現量の変化が注目されていた。
本発明者らは、これらの従来の固定観念にとらわれることなく、全く別のアプローチにより、TPH1遺伝子が、ストレス負荷により、ストレス負荷量と高い相関関係を持って血液中でも発現量が高まるという知見を得た。
最近、拘束ストレスを与えたラット脳内の背側縫線核において、TPH2は変化がないが、TPH1が2.5倍に発現が増加していることが確認された実験結果が報告されており(非特許文献3)、このことからも、本発明者らは、TPH1遺伝子が精神疾患の疾患マーカーとなる遺伝子であるとの確信が得られ、血液中でのストレス状態の評価、およびストレスを原因とする精神疾患診断についての本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 被験体から採取した血液試料からRNAを単離して、血液中のTPH1のmRNA発現量を測定する工程を含むことを特徴とする、精神疾患の要因となるストレス負荷の検出又は定量方法。
〔2〕 前記血液試料が,凍結血液を解凍処理したものであることを特徴とする、前記〔1〕に記載の検出又は定量方法。
〔3〕 前記凍結処理した血液試料から、以下の工程により単離したRNA試料を用いて、血液中のTPH1のmRNA発現量を測定する、前記〔2〕に記載の検出又は定量方法;
(1)凍結血液を徐々に氷温(約2℃)にまで下げて完全に溶かし、同時に細胞を溶解して全ての核酸を放出させる。
(2)細胞溶解液を加えた有機溶媒で氷温下に一定時間放置後,遠心分離して上清を回収する。
(3)DNase処理を行い、DNAを分解し、RNAのみを回収する。
〔4〕 被験体の血液試料中のTPH1遺伝子のmRNA発現量を測定することでストレス負荷の検出又は定量するためのキットであって、TPH1遺伝子に特異的な領域を増幅可能なプライマーセットを含むことを特徴とする、検出又は定量用キット。
〔5〕 前記プライマーセットが、配列番号3及び4からなるDNAを含むプライマーのセットである、前記〔4〕に記載の検出又は定量用キット。
〔6〕 前記ストレス負荷の検出又は定量用キットが、以下の各工程により、ストレス状態の存在を判定するために用いられる、前記〔4〕または〔5〕に記載のキット;
(1)被験体から採取した血液試料又は凍結血液試料からRNAを単離する工程;
(2)工程(1)で調製したRNAを鋳型とし、逆転写酵素を作用させ、cDNAを合成する工程;
(3)工程(2)で合成されたcDNAを鋳型とし、TPH1特異的プライマーを用いてRT-PCR法を適用し、TPH1遺伝子のmRNA発現量を、健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較する工程;および
(4)健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較して有意な差があればストレス状態が存在すると判定する工程。
〔7〕 前記ストレス負荷の検出又は定量用キットが、以下の各工程により、ストレスを原因とする精神疾患に罹患しているか否かを診断するために用いられる、前記〔4〕または〔5〕に記載のキット;
(1)被験体から採取した血液試料又は凍結血液試料からRNAを単離する工程;
(2)工程(1)で調製したRNAを鋳型とし、逆転写酵素を作用させ、cDNAを合成する工程;
(3)工程(2)で合成されたcDNAを鋳型とし、TPH1特異的プライマーを用いてRT-PCR法を適用し、TPH1遺伝子のmRNA発現量を、健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較する工程;および
(4)健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較して有意な差があれば、ストレスを原因とする精神疾患に罹患している可能性が高いと診断する工程。
本発明のマーカー遺伝子、TPH1遺伝子の発現量の変化を血液中で観察することにより、ストレス状態にある脳内での遺伝子発現の変化を正確に定量的に評価することができるため、ストレスによって引き起こされる精神疾患を簡便かつ正確に診断することができ、また、このマーカー遺伝子の発現を指標とすることにより、精神疾患の原因因子の特定や精神疾患の治療剤の研究・開発にも大きく貢献することができた。
RT-PCR解析で得られた血液中TPH1遺伝子の発現変化を示したものである。 RT-PCR解析での目的のバンドの強度をグラフ化しTPH1遺伝子の発現変化を表したものである。 RT-PCR解析で得られた血液中actin遺伝子、TPH2遺伝子、TPH1遺伝子の発現変化を示したものである。 RT-PCR解析での目的のバンドの強度をグラフ化しactin遺伝子、TPH2遺伝子、TPH1遺伝子の発現変化を表したものである。
1.TPH1遺伝子について
トリプトファン水酸化酵素(TPH)は、神経伝達物質であるセロトニン合成における律速段階を担う酵素であるが、脳の松果腺から分泌される睡眠に関連したホルモンであるメラトニン合成の最初のステップを触媒する酵素でもある。
ヒトゲノムには2種のアイソフォームが存在する(非特許文献2)が、ラット松果腺においては、TPH1遺伝子がTPH2遺伝子の約100,000倍の発現量を示し、光に対してTPH2の発現量は変化しないがTPH1の発現は明暗サイクルと共に変動することが知られている(非特許文献4)。また、最近、拘束ストレスを与えたラット脳内の背側縫線核において、TPH2は変化がないが、TPH1発現が2.5倍に増加していることが報告されており(非特許文献3)、脳内におけるストレス負荷状態を正確に反映するマーカーとしての条件を備えている。
本発明においては、拘束ストレスを与えた精神疾患モデルラットの血液中でTPH1遺伝子発現量が増大していることを見出し、しかも、ストレス負荷の程度に応じた発現量の増大変化が見られることから、血液中のTPH1遺伝子発現量とストレス負荷の状態と高い相関関係があること、すなわちTPH1遺伝子が好適なストレスマーカーであり、かつストレス負荷が原因となる精神疾患マーカーともなることを見出したものである。このような高い相関関係を確認できた背景には、本発明者らによる、血液、特に凍結血液を用いた効率的なRNA抽出技術の確立により、血液中の微量mRNAに対しても各種の定量的な観察の可能な測定方法が適用できるようになったことがある。(下記3.参照)
本発明におけるTPH1遺伝子の発現を見る被検対象生物種は、ストレス負荷状態を評価し、精神疾患の診断の対象被験者となるヒトが典型的であるが、イヌ、ネコ,ウサギなどの愛玩動物、ウシ、ウマなどの家畜動物、マウス、ラットなどの実験動物などを含めた哺乳動物も対象生物種に含まれる。したがって、本発明でTPH1遺伝子というとき、ヒトのみならず、広く各種哺乳動物由来TPH1遺伝子を指す。
なお、各TPH1遺伝子の塩基配列およびその発現産物TPH1のアミノ酸配列は公知であり、例えばラット、ヒトおよびマウスの塩基配列は、公知データベースGenBankから入手できる(ラット:GenBank Accession No. X53501、ヒト:GenBank Accession No. NM_004179、マウス:GenBank Accession No. NM_009414)。
2.本発明で用いるプライマーセットについて
本発明では、血液試料中のTPH1遺伝子を特異的に増幅させるために、下記のプライマーセットを調製した。
TPH1プライマー配列
Forward Primer:5’- cagttcttgcttcccctaaaga -3’(配列番号1)
Reverse Primer:5’- atgaatttgagagggagggatt -3’(配列番号2)

ヒトの場合もラットと同様の位置の配列を用いることで、TPH1遺伝子を特異的増幅可能なプライマーセットを調製できる。具体的には、例えば下記のプライマー配列を用いることができる。
Forward Primer:5’- caaacatgcactttctggacat -3’(配列番号3)
Reverse Primer:5’- actgacaacatcgagatcatgc -3’(配列番号4)
使用するプライマーセットの設計には、プライマー設計用の市販のソフトウェア、例えばOligoTM[National Bioscience Inc.(米国)製]、GENETYX[ソフトウェア開発(株)(日本)製]等を用いることもできる。
3.血液からのmRNA抽出法
採取後の血液試料の場合は,抗凝固剤(ヘパリン)を添加し、できるだけ速やかに、(1)細胞溶解工程、(2)DNA分解後にRNAを回収する工程、を経た後、下記4.の解析手法を用いて,TPH1mRNA発現量を定量する。その際、必要に応じて、適宜、(3)ポリA抗体アフィメトグラフィーカラムなどにより、mRNAを濃縮又は回収する工程を設けてもよい。
本発明では、特に凍結保存された血液試料に対しても適用できる、効率的なRNAの抽出法を確立した点が特徴である。その際の、典型的な手順は以下の通りである。
(1)血液を採取後、凍結保存する。凍結温度は通常−80℃前後が用いられる。
(2)凍結血液を徐々に氷温(約2℃)にまで下げて完全に溶かし、同時に細胞を溶解して全ての核酸を放出させる。
具体的には、SolutionDなどの細胞溶解液及び有機溶媒(TE飽和フェノールとクロロホルムの混合溶液)中で氷温下に一定時間放置後,遠心分離して上清を回収する。
(3)DNase処理を行い、DNAを分解し、RNAのみを回収する。
具体的には、例えばキアゲン社のDNA分解キットを用いてRNAのみを回収する。
(4)必要に応じ、ポリAカラムなどを用いて、全RNAからmRNAのみを回収してもよい。
4.本発明におけるTPH1のmRNA発現量の解析法について
本発明のストレスマーカーであるTPH1遺伝子の発現は、具体的には、被験体血液試料中のTPH1遺伝子のmRNA量を測定することによって判定する。公知の遺伝子工学および分子生物学的技術に従い、当該分野で特定の遺伝子の発現を検知測定するために知られた手法、例えばin situハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットブロット、RNaseプロテクションアッセイ、RT-PCR、Rea1-Time PCR (Journal of Molecular Endocrinology,25,169-193(2000)およびそこで引用されている文献)、DNAアレイ解析法(Mark Shena編、″Microarray Biochip Technology″,Eaton Publishing,2000)などによってTPH1 mRNA発現量を検知・測定して実施することができる。
以下の手法には限定されないが、具体的に例示すると以下の通りである。
TPH1 mRNA量はマイクロアレイを使用して測定することができるが、その場合の手法は例えば以下の通りである。
被験体の血液試料から単離したmRNAを鋳型としてcDNAを合成し、PCR増幅する。その際に、標識dNTPを取り込ませて標識cDNAとする。この標識cDNAをマクロアレイに接触させ、マイクロアレイのキャプチャープローブにハイブリダイズしたcDNAを検出する。ハイブリダイゼーションは、96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注して標識cDNA水性液を、マイクロアレイ上に点着することによって実施することができる。点着の量は、1〜100n1程度とすることができる。ハイブリダイゼーションは、室温〜70℃の温度範囲で、6〜20時間の範囲で実施することが好ましい。ハイブリダイゼーション終了後、界面活性剤と緩衝液との混合溶液を用いて洗浄を行い、未反応の標識cDNAを除去する。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いることが好ましい。緩衝液としては、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液等を用いることができるが、クエン酸緩衝液を用いることが好ましい。
マイクロアレイを使用してTPH1 mRNA量を測定する際に、蛍光標識化したcRNAを調整し、専用スキャナーにより蛍光イメージを測定することにより、発現量を定量化することができる。具体的には、cDNAから蛍光ラベル化したcRNAを調整し、次にラベル化cRNAをフラグメント化し、フラグメント化したラベル化cRNAとチップ(Whole Rat Genome Oligo Microarray Kit G4131F、Agilent Technologiest社製)上のプローブとのハイブリダイズを行い、DNAマイクロアレイ解析を行うこともできる。その場合は、チップを洗浄後、マイクロアレイスキャナー(G2565BA、Agilent Technologiest社製)及びGeneSpring ver 7.3などを使用して遺伝子発現解析を行った。その際の蛍光ラベルとしては、Cy3-dCTP(PerkinElmer社製)、Cy5-dCTP(PerkinElmer社製)などを用いることができる。
また、血液試料中のTPH1 mRNA量は、RT-PCR法によって測定することができる。
RT-PCR法を用いて測定する典型的な手法は、以下の通りである。
血液試料から抽出したRNAから、市販キット例えば「AffinityScript QPCR cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)」を用いてcDNAを合成し、当該cDNAを鋳型としてTPH1特異的なプライマーを用いて、PCR反応(例えばTaKaRa社製Ex Taq Hot Start Versionを行う。PCR反応は、20〜50サイクル、好ましくは38〜45サイクル繰り返す。PCR反応後、電気泳動(例えば1.8%アガロースゲル)し、エチジウムブロマイド染色で目的遺伝子の検出をする。UVトランスイルミネーター(ATTO)を用いることで、遺伝子バンドの強度が測定でき、蛍光強度の積算値から、定量化することもできる。
また、オリゴヌクレオチドプローブを用いることで、血液試料中のTPH1遺伝子のmRNA量を検出することもできる。その際に用いるオリゴヌクレオチドプローブは、TPH1 mRNAとストリンジェントな条伴(例えば特表平10-508186号公報、特表平9−511236号公報に記載された条件)でハイブリダイズするため、mRNAの任意鎖域と正確に相補的な配列からなるDNA配列を用いる。このようなDNA配列は、例えばTPH1 cDNAを適当な制限酵素で切断することによっても得ることができる。あるいは、Carruthers(1982)Cold Spring Harbor Symp. Quant.Bio1.47:411−418; Adams (1983) J.Am.Chem.Soc.105:661;Belousov(1997)Nucleic Acid Res.25:3440-3444;Frenkel(1995)Free Radic.Biol.Med.19:373-380;Blommers(1994)Biochemistry 33:7886-7896;Narang(1979)Meth.Enzymol.68:90;Brown(1979)Meth.Enzymol.68:109;Beaucage(1981)Tetra.Lett.22:1859;米国特許第4,458,066号に記載されているような周知の化学合成技術により、in vitroにおいて合成することができる。
また、オリゴヌクレオチドプローブはラジオアイソトープ(RI)法または非RI法によって標識するが、非RI法を用いることが好ましい。非RI法としては、蛍光標識法、ビオチン標識法、化学発光法等が挙げられるが、蛍光標識法を用いることが好ましい。蛍光物質としては、オリゴヌクレオチドの塩基部分と結合できるものを適宜に選択して用いることができるが、シアニン色素(例えば、Cy Dye TMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N-アセトキシーN2-アセチルアミノフルオレン(AAF)、AAIF(AAFのヨウ素誘導体)などを使用することができる。また標識法としては、当該分野で知られた方法(例えばランダムプライム法、ニック・トランスレーション法、PCRによるDNAの増幅、ラベリング/テイリング法、in vitro transcription法等)を適宜選択して使用できる。例えば、HRFオリゴヌクレオチドに官能基(例えば、第一級脂肪族アミノ基、SH基など)を導入し、こうした官能基に前記の標識を結合して標識化オリゴヌクレオチドプローブを作成することができる。
5.本発明におけるストレス状態の判定方法について
例えば、血液試料中のTPH1 mRNA量をRT-PCT法を用いて測定する場合は、以下の各工程により被験体のストレス状態の存在を評価する。
(1)被験体から採取した血液試料又は凍結血液試料からRNAを調製する工程;
(2)工程(1)で調製したRNAを鋳型とし、逆転写酵素を作用させ、cDNAを合成する工程;
(3)工程(2)で合成されたcDNAを鋳型とし、TPH1特異的プライマーを用いてRT-PCR法を適用し、TPH1遺伝子のmRNA発現量を、健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較する工程;および
(4)健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較して有意な差があれば、ストレス状態の存在を判定する工程。
ここで、「健常被験体」というとき、通常の社会生活を営むことができる健康な被験体(被験者)であり,摂食行動,運動行動などに異常性が見られない被験体をいう。また、ストレス負荷がかかっていない平常時の被験体を指す。
また、健常被験体血液試料の結果と比較してTPH1遺伝子のmRNA発現量が有意な差があれば、ストレスが負荷されていると判定でき、精神疾患に至る引き金となるストレス状態を示す指標として評価する。さらに1.5倍以上、好ましくは2倍以上の数値を示した場合には、きわめて高ストレスが負荷されている,と判定することができる。
また、DNAマイクロアレイを使用する場合も、健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較することで、ストレス状態の判定ができる。
6.本発明における精神疾患の診断方法
本発明の精神疾患診断方法は、被験者から単離した血液試料を対象として、そのTPH1遺伝子の発現量を測定し、健常被験体における発現量と比較することによって、被験者が精神疾患の状態にあるか否かを診断する。
その際の判定手法としては、上記5.で示したストレス状態の判定方法と同様に行う。
この診断方法の対象となる「精神疾患」とは、軽度の抑うつ症状、不安神経症、から重度の躁うつ病、総合失調症などのストレス性の精神疾患である。
本発明の精神疾患評価方法は、被験者から単離した血液試料を対象として、そのTPH1遺伝子の発現変調を確認することによって、被験者が精神疾患の状態にあるか否か、あるいは精神疾患を発症する危険性があるか否かを評価する。なお、血液試料におけるTPH1遺伝子のmRNA発現量の測定は、通常の血液検査技術を有する者であれば容易に実施可能であり、またその発現についての判定も、医療従事者の関与を必要としない。
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
なお、本発明の実施例で用いたRT-PCR法を適用するための調整法、標識法、ハイブリダイゼーション方法及び条件,その他の手法などの具体的な手法は,特に断らない限り、Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,NY(2001)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989); D. M. Glover et al. ed., "DNA Cloning", 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995); Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995;日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人(1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸 III(組換えDNA技術)」、東京化学同人 (1992); R. Wu ed.,"Methods in Enzymology", Vol. 68 (Recombinant DNA), Academic Press, New York (1980); R. Wu et al. ed., "Methods in Enzymology",Vol. 100 (Recombinant DNA, PartB) & 101 (Recombinant DNA, Part C), Academic Press, New York (1983); R. Wu et al. ed., "Methods in Enzymology", Vol. 153 (Recombinant DNA, Part D), 154 (Recombinant DNA, Part E) & 155 (Recombinant DNA, Part F), Academic Press, New York (1987)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法またはそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる。
(実施例1)拘束ストレスを与えたラットの脳とストレスを与えないラットの脳での遺伝子発現量の比較(マイクロアレイ解析)
拘束ストレスを与えたラットと与えない9週齢以降の成熟ラット(精神疾患モデルラットであるWistar系雄性ラット(日本クレア))各3個体から摘出した脳を液体窒素中で粉末化し、約100mgほどをRNA抽出用に分けた。
RNAの調製は、RNeasy Mini kit(Qiagen社製)を用いて付属のプロトコールに従って行った。抽出したRNAはゲル電気泳動や吸光度測定でDNAマイクロアレイ解析に用いられる品質であるかどうかを確認し、DNAマイクロアレイ解析に用いた。
DNAマイクロアレイ解析は、ラベリング、ハイブリダイズ、スキャンの3つの作業に分けられる。まず、前述のRNA 450ngからLow RNA Input Linear Amp Kit(Agilent Technologiest社製)を用いcDNAを合成した。さらにcDNAからCy3-dCTP(PerkinElmer社製)を添加してラベル化cRNAを調整した。次にラベル化cRNAをフラグメント化し、フラグメント化したラベル化cRNAとチップ(Whole Rat Genome Oligo Microarray Kit G4131F、Agilent Technologiest社製)上のプローブとのハイブリダイズを行った。さらに、チップを洗浄し、マイクロアレイスキャナー(G2565BA、Agilent Technologiest社製)及びGeneSpring ver 7.3を使用した遺伝子発現解析を行った。蛍光ラベルとしてCy5-dCTPを用いた場合でも同様の方法でcRNAのラベリングを行い、DNAマイクロアレイ解析を行った。
DNAマイクロアレイ解析から得られた拘束ストレスを与えたラットと与えないラットの脳での遺伝子発現データを検討し、発現量に変化があった遺伝子を選択した。
(実施例2)拘束ストレスを与えたラットの血液とストレスを与えないラットの凍結血液からのRNA抽出
拘束ストレスを与えたラットと与えない9週齢以降の成熟ラット各3個体から血液を採取し-80℃に保存した。凍結血液を溶解し、約600μlを新しいチューブに移し、SolutionD (4M Guanidium thiocyanate、25mM Sodium citrate、0.5% Lauryl sarcosine、0.1M 2-Mercaptoethanol)を600μl添加して混合した後、60μlの3M Sodium Acetate (pH5.5)、600μl のTE飽和フェノール、120μlのクロロホルムを添加してよく混合した。混合液は氷中に15分間放置し、その後、遠心分離(13500rpm、5分間、4℃)して上清を回収した。この上清と等量のクロロホルムを加え、良く混合した後に、遠心分離(13500rpm、5分間、4℃)により上清を回収し、この上清に3μlのEtathinmateと、上清と等量の2-propanolを加え、良く混合した後に-80℃で15分間放置し、遠心分離(13500rpm、15分間、4℃)により沈殿(RNA)を得た。この沈殿(RNA)に100μlの滅菌水を加え、溶解した後にRNeasy Mini kit(Qiagen社製)を用いて、添付説明書に従いDNAase処理およびRNAの精製を行った。
(実施例3)拘束ストレスを与えたラットの血液とストレスを与えないラットの血液での遺伝子発現量の比較(マイクロアレイ解析)
実験例2で抽出したtotal RNAはゲル電気泳動や吸光度測定でDNAマイクロアレイ解析に用いられる品質であるかどうかを確認し、RNA 800ngからLow RNA Input Linear Amp Kit(Agilent Technologiest社製)を用いcDNAを合成した。さらにcDNAからCy3-dCTP(PerkinElmer社製)を添加してラベル化cRNAを調整した。次にラベル化cRNAをフラグメント化し、フラグメント化したラベル化cRNAとチップ(Whole Rat Genome Oligo Microarray Kit G4131F、Agilent Technologiest社製)上のプローブとのハイブリダイズを行った。さらに、チップを洗浄し、マイクロアレイスキャナー(G2565BA、Agilent Technologiest社製)及びGeneSpring ver 7.3を使用した遺伝子発現解析を行った。蛍光ラベルとしてCy5-dCTPを用いた場合でも同様の方法でcRNAのラベリングを行い、DNAマイクロアレイ解析を行った。
DNAマイクロアレイ解析から得られた拘束ストレスを与えたラットと与えないラットの血液の遺伝子発現データを検討し、発現量に変化があった遺伝子を選択した。
(実験例4)脳および血液に共通する遺伝子のRT-PCR解析による検出
実験例1および3で選択された遺伝子で共通する遺伝子の選択作業を進め、数種の共通遺伝子が選択された。その数種の遺伝子の特異的プライマーを作成し、実験例2の血液のRNAを用いたRT-PCRを行った。
拘束ストレスを与えたラットと与えないラットの血液より抽出したRNA各 1000ngからAffinityScript QPCR cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)を用いcDNAを合成した。
各遺伝子の特異的なプライマーを用いて、血液cDNAを鋳型として、Ex Taq Hot Start Version (TaKaRa社製)を使用し、添付プロトコールに従いPCR反応を行った。PCR反応は38〜45サイクル繰り返した。
PCR反応後、1.8%アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色で目的遺伝子の検出をした。検出にはUVトランスイルミネーター(ATTO)を用い、遺伝子バンドの強度を測定した。
拘束ストレスを与えたラットと与えないラットの血液のcDNAを鋳型としたRT-PCR解析において、得にTPH1遺伝子の結果は再現性および検出感度ともに良好であった。RT-PCR解析で得られた血液中TPH1遺伝子の発現変化の結果を図1に示す。また、RT-PCR解析での目的のバンドの強度をグラフ化したものを図2に示す。これらの結果からわかるように、TPH1遺伝子は拘束ストレス負荷により発現量が増加することがわかる。今回のRT-PCR解析の結果から、採取が簡単な血液においてTPH1遺伝子の発現量が明確に検出できることが確認でき、このことから、精神疾患に関するマーカー遺伝子として応用可能な遺伝子であると考えられた。
なお、RT-PCR解析で使用したTPH1遺伝子の特異的プライマーは以下のとおりである。
TPH1プライマー配列
Forward Primer:5’- cagttcttgcttcccctaaaga -3’(配列番号1)
Reverse Primer:5’- atgaatttgagagggagggatt -3’(配列番号2)
(実験例5)
拘束ストレスを与えたラット血液での遺伝子発現変化の比較
TPH1のアイソフォームであるTPH2との拘束ストレスを与えたラット血液での遺伝子発現変化を比較するため、実験例4と同様の方法でRT-PCR解析を行った。同時にハウスキーピング遺伝子としてよく用いられているactin遺伝子も用いた。
なお、その際にTPH2遺伝子増幅用に用いたプライマーセット、及びActin増幅用プライマーセットとしては、下記の通りのものを用いた。
ラットTPH2
Forward Primer : 5' - gtattgagaatgtggtgcagga -3’(配列番号5)
Reverse Primer : 5' - tgcctgggtttcttagatcatt -3’(配列番号6)
ラットActin
Forward Primer : 5' - cctgtatgcctctggtcgta -3’(配列番号7)
Reverse Primer : 5' - ccatctcttgctcgaagtct -3’(配列番号8)

各遺伝子の発現変化の結果を図3に示す。また、RT-PCR解析での目的のバンドの強度をグラフ化したものを図4に示す。これらの結果からわかるように、拘束ストレス負荷による発現量の変化はTPH1遺伝子の方がTPH2と比較して明確に増加していることが確認できた。この結果からも、TPH1遺伝子が精神疾患に関するマーカー遺伝子として応用可能な遺伝子であることが明らかである。

Claims (7)

  1. 被験体から採取した血液試料からRNAを単離して、血液中のTPH1のmRNA発現量を測定する工程を含むことを特徴とする、精神疾患の要因となるストレス負荷の検出又は定量方法。
  2. 前記血液試料が,凍結血液を解凍処理したものであることを特徴とする、請求項1に記載の検出又は定量方法。
  3. 前記凍結処理した血液試料から、以下の工程により単離したRNA試料を用いて、血液中のTPH1のmRNA発現量を測定する、請求項2に記載の検出又は定量方法;
    (1)凍結血液を徐々に氷温(約2℃)にまで下げて完全に溶かし、同時に細胞を溶解して全ての核酸を放出させる。
    (2)細胞溶解液を加えた有機溶媒で氷温下に一定時間放置後,遠心分離して上清を回収する。
    (3)DNase処理を行い、DNAを分解し、RNAのみを回収する。
  4. 被験体の血液試料中のTPH1遺伝子のmRNA発現量を測定することでストレス負荷の検出又は定量するためのキットであって、TPH1遺伝子に特異的な領域を増幅可能なプライマーセットを含むことを特徴とする、検出又は定量用キット。
  5. 前記プライマーセットが、配列番号3及び4からなるDNAを含むプライマーのセットである、請求項4に記載の検出又は定量用キット。
  6. 前記ストレス負荷の検出又は定量用キットが、以下の各工程により、ストレス状態の存在を判定するために用いられる、請求項4または5に記載のキット;
    (1)被験体から採取した血液試料又は凍結血液試料からRNAを単離する工程;
    (2)工程(1)で調製したRNAを鋳型とし、逆転写酵素を作用させ、cDNAを合成する工程;
    (3)工程(2)で合成されたcDNAを鋳型とし、TPH1特異的プライマーを用いてRT-PCR法を適用し、TPH1遺伝子のmRNA発現量を、健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較する工程;および
    (4)健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較して有意な差があればストレス状態が存在すると判定する工程。
  7. 前記ストレス負荷の検出又は定量用キットが、以下の各工程により、ストレスを原因とする精神疾患に罹患しているか否かを診断するために用いられる、請求項4または5に記載のキット;
    (1)被験体から採取した血液試料又は凍結血液試料からRNAを単離する工程;
    (2)工程(1)で調製したRNAを鋳型とし、逆転写酵素を作用させ、cDNAを合成する工程;
    (3)工程(2)で合成されたcDNAを鋳型とし、TPH1特異的プライマーを用いてRT-PCR法を適用し、TPH1遺伝子のmRNA発現量を、健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較する工程;および
    (4)健常被験体血液試料のTPH1遺伝子のmRNA発現量と比較して有意な差があれば、ストレスを原因とする精神疾患に罹患している可能性が高いと診断する工程。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013110969A (ja) * 2011-11-25 2013-06-10 Seiko Epson Corp ストレスの評価方法、ストレス評価マーカー、ストレス負荷モデル動物の作成方法、及びストレス負荷モデル動物

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