JP4421889B2 - 慢性関節リウマチの発症危険度を予測する方法 - Google Patents
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a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基に存在する一塩基多型
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基に存在する一塩基多型
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基に存在する一塩基多型
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基に存在する一塩基多型
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基に存在する一塩基多型
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基のシトシンからチミンへの置換
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基のアデニンからグアニンへの置換
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基のシトシンからチミンへの置換
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基のシトシンからグアニンへの置換
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基のシトシンからチミンへの置換
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基
(ただし、上記ポリヌクレオチドがRNAである場合、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする)
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基
(ただし、上記ポリヌクレオチドがRNAである場合、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする)
さらにまた、本発明は、前記プローブ、プライマー、および固相化試料から選ばれるの少なくとも一つ以上を含む、慢性関節リウマチを発症する危険度を判定するための試薬またはキットを提供する。
本発明の方法は、ヒトゲノムDNAを含む試料において、ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ・タイプIV(以下、「PADI4」とも記載する。)遺伝子の遺伝子多型を検出することにより、該試料を提供した被験者が慢性関節リウマチを発症する危険度を判定する方法である。
本発明で検出対象とする遺伝子多型は、本発明者らによってRA患者に高い頻度で現れることが確認された、PADI4遺伝子上の遺伝子多型である。
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基がシトシンかチミンである一塩基多型
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基がアデニンかグアニンである一塩基多型
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基がシトシンかチミンである一塩基多型
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基がシトシンかグアニンである一塩基多型
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基がシトシンかチミンである一塩基多型
本発明の方法で用いられる「ヒトゲノムDNAを含む試料」は、被験者から単離されたあらゆる細胞(生殖細胞を除く)、組織、臓器等を材料として調製される。該材料としては、末梢血から分離した白血球または単核球が好ましく、特に白血球が最も好適である。これらの材料は、臨床検査において通常用いられる方法にしたがって単離される。
次に、得られたヒトゲノムDNAを含む試料から、本発明者らによって解明された、RAと極めて関連の深い遺伝子多型を検出する。以下、代表的な遺伝子多型の検出方法について説明する。
遺伝子多型部位が制限酵素認識部位に含まれる場合、その制限酵素の消化により生じるDNA断片の長さの違いにから、当該遺伝子多型の検出が可能である。この場合、(i)ゲノムDNAを制限酵素で分解後、サザンブロットを行なう方法と、(ii)多型部位を含むDNA断片をPCR増幅後、制限酵素で切断し、電気泳動により切断されたDNA断片の大きさを解析する方法が挙げられる。(i)の方法で用いられるプローブとしては、目的の多型部位を含んで、かつその多型部位から5’末端側および3’末端側にそれぞれ約0.05〜2kbにわたる配列に相当するDNA断片(アイソトープ、ビオチンあるいは蛍光色素等で標識されたもの)が好ましい。また、(ii)の方法に用いられるPCRプライマーとしては、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドが好ましい。
PCR−SSCP法は、遺伝子多型部位を含むDNA断片をPCRで増幅後、熱変性し、電気泳動により、高次構造の異なる1本鎖DNAを分離する方法である〔Biotechniques, 16,296-297 (1994), Biotechniques, 21, 510-514 (1996)〕。遺伝子多型の有無により、1本鎖DNAの泳動距離が異なるため、そのパターンを解析することにより、多型のタイピングが可能である。タイピングの標準とするために、予め多型部位のヌクレオチド配列が確認されているヒトゲノム由来のDNA試料を、PCRの際の鋳型DNAとして、被検試料と同時に用いることが好ましい。PCR増幅用プライマーとしては、5’末端を蛍光色素で標識した、多型部位を含む約50〜500bpのDNA断片を増幅するための15〜30merのオリゴヌクレオチドが好ましい。
ASOハイブリダイゼーション法は、遺伝子多型部位を含むPCR産物をナイロンフィルターなどの支持体にドットブロットし、それぞれの遺伝子多型に対応したプローブとのハイブリダイゼーション後、そのプローブのTm値に準じた洗浄操作を行い、多型を検出(ミスマッチがあればハイブリッドが外れる)する方法である〔Clin. Chim. Acta, 189, 153-157 (1990)〕。プローブとしては、通常15〜25mer程度の合成オリゴヌクレオチド(シグナルを得るにはラジオアイソトープ、ビオチンまたは蛍光色素による標識が必要)が用いられる。また、PCRプライマーとしては、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドが好ましい。
ダイレクトシークエンス法は、遺伝子多型部位を含むDNA断片をPCR増幅した後、増幅されたDNAのヌクレオチド配列を直接ダイデオキシ法により解析する方法である〔Biotechniques, 11, 246-249 (1991)〕。この方法で用いられるPCRプライマーは、好ましくは、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドである。また、シークエンスプライマーとしては、好ましくは、多型部位から50〜300ヌクレオチド程度5’末端側の位置に相当する15〜30merのオリゴヌクレオチドを用いる。
PCRでは、鋳型DNAにプライマーがアニールした後、DNAポリメラーゼにより5’末端側から3’末端側に相補鎖DNAが合成される。プライマーの3’末端ヌクレオチドにミスマッチがあると、PCRの効率が低下し、電気泳動による検出が不可能になる。ARMS法は、その3’末端ヌクレオチドが検出しようとする変異ヌクレオチドに相補的になるように設計されたプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物の有無で遺伝子多型を検出する方法である〔Nuc. Acids. Res., 19, 3561-3567 (1991), Nuc. Acids. Res., 20,4831-4837 (1992)〕。この方法で用いられるPCRプライマーは、1つは3’末端に多型部位が位置するように設計された、好ましくは15〜30merのオリゴヌクレオチドであり、もう1つは、好ましくは、多型部位から0.05〜2kb程度離れた部分の15〜30merのオリゴヌクレオチドである。
DGGE法は、PCR産物中の、ミスマッチを有するヘテロデュプレックスが、ホモデュプレックスよりも解離が容易であることを利用して遺伝子多型を検出する方法である〔Biotechniqus, 27, 1016-1018 (1999)〕。ヘテロデュプレックスは、解離が進むにつれ、ゲル電気泳動における移動度が低下するので、使用するポリアクリルアミドゲル中に尿素およびホルムアミドの密度勾配を設定しておくと、ホモデュプレックスとの移動度の差がさらに強調され、ミスマッチを含む2本鎖DNAの存在、すなわち変異の存在が検出される。この方法で用いられるPCRプライマーは通常、多型部位を含む約0.05〜0.5kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドである。
RNaseA(RNA分解酵素)は、2本鎖RNAもしくはRNA/DNAコンプレックスを分解せず、1本鎖のRNAのみを分解する特性を有する。したがって、多型部位を含むDNA断片をPCR増幅した後、アイソトープ標識したRNAプローブを、変性して1本鎖にしたPCR産物とハイブリダイズさせ、RNaseA処理後、電気泳動により分離すれば、変異型とハイブリダイズしたRNAプローブはミスマッチ部位で切断されるため、2本のバンドとして検出できる〔DNA Cell. Biol., 14, 87-94 (1995)〕。この方法で用いられるRNAプローブとしては、多型部位を含む通常15〜30merのオリゴヌクレオチドが好ましい。
多型部位を含むDNA断片をPCRにより増幅後、2本鎖DNAのミスマッチ部位の「c(シトシン)」に対してはヒドロキシルアミン、「t(チミン)」に対してはオスミウムテトラオキシドで別個に修飾し、ピペリジン処理をすると、糖が切断される。標識プローブを用いて2本鎖を形成させ、上記処理を行った後、電気泳動し、プローブのサイズが短くなっていれば変異が検出されたことになる〔Biotechniques, 21, 216-218 (1996)〕。この方法で用いられるPCRプライマーは通常、多型部位を含む約0.05〜4kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドである。
DOL法は、遺伝子多型を含むDNA断片をPCR増幅した後、蛍光標識された多型部位の直前の塩基まで含むダイプライマーと、それぞれのアレルに特異的な蛍光色素で標識されたダイターミネーターを耐熱性DNAリガーゼで連結させる方法である〔Genome Res., 8, 549-556 (1998)〕。この方法で用いられるPCRプライマーは、通常多型部位を含む約0.05〜2kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドである。
TaqMan PCR法は、蛍光標識したアレル特異的オリゴヌクレオチド(TaqManプローブ)とTaqDNAポリメラーゼによるPCRを利用した方法である〔Genet. Anal., 14, 143-149 (1999), J. Clin. Microbiol., 34, 2933-2936 (1996)〕。この方法で用いられるPCRプライマーは、通常多型部位を含む約0.05〜2kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドである。また、TaqManプローブは、多型部位を含む15〜30塩基程度のオリゴヌクレオチドであり、5’末端は蛍光レポーター色素によって標識されており、3’末端はクエンチャー(消光物質)によって標識されている。このプローブを用いることにより、野生型と変異型のヌクレオチド変化の検出が可能である。
インベーダー法では、2種類の非蛍光標識オリゴヌクレオチドと1種類の蛍光標識オリゴヌクレオチドが使用される。非蛍光標識オリゴヌクレオチドの一つは、その5’末端側に、検出しようとする多型部位の存在するゲノム配列(以下「鋳型」という)とは無関係な配列(以下「フラップ」という)を有しており、フラップより3’末端側は、鋳型の多型部位から5’末端側の配列に特異的な相補配列となっている(以下「アレルプローブ」という)。すなわちアレルプローブの鋳型に特異的な相補配列部分の5’末端は鋳型の多型部位に相当する。もう一つの非蛍光標識オリゴヌクレオチドは、鋳型の多型部位から3’末端側の配列に特異的な相補配列を有する(以下「インベーダープローブ」という)。インベーダープローブの3’末端も鋳型の多型部位に相当するが、鋳型の多型部位のヌクレオチドとは相補的でなくてもよい。蛍光標識オリゴヌクレオチド(以下「FRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブ」という)は、3’末端側部分がフラップと相補的な配列であり、5’末端側はパリンドローム配列になっているため自ら二本鎖を形成している。またFRETプローブの5’末端近傍は蛍光色素で標識され、5’末端にはその蛍光を打ち消すクエンチャーが結合している。まず鋳型にアレルプローブとインベーダープローブをハイブリダイズさせると、アレルプローブと鋳型とが多型部位において相補的である場合は、その多型部位において、鋳型、アレルプローブの5’末端およびインベーダープローブの3’末端が特殊な構造を形成する。この構造を特異的に認識してエンドヌクレアーゼ活性を表す酵素(以下「クリベース」という)が、アレルプローブからフラップ部分を切り離す。遊離したフラップはFRETプローブの3’末端側とハイブリダイズする。このとき、フラップとFRETプローブとが、FRETプローブのクエンチャーが結合している5’末端の位置において、クリベースに特異的に認識される構造を形成するため、クエンチャーが結合している5’末端ヌクレオチドがクリベースによりFRETプローブから切り離されて、FRETプローブに残った蛍光色素が蛍光を発する。一方、鋳型配列に変異が存在し、アレルプローブと鋳型とが多型部位において相補的でなく、ミスマッチとなっている場合は、クリベースに特異的に認識される構造が形成されないため、フラップはアレルプローブから切り離されない。このとき、切り離されずにアレルプローブに残ったままのフラップもFRETプローブの3’末端側とハイブリダイズ可能であるが、アレルプローブから切り離されたフラップがハイブリダイズした場合と比較すると、クエンチャーが結合している5’末端ヌクレオチドがクリベースによってFRETプローブから切り離される反応効率が低いため、FRETプローブが発する蛍光強度も低い。以上の原理により、多型の検出が可能となる〔Science, 5109, 778-783(1993), J. Biol. Chem., 30, 21387-21394 (1999), Nat. Biotechnol., 17, 292-296 (1999)〕。
MALDI−TOF/MS法は、遺伝子多型のアレルに対応して異なるヌクレオチドを含む1本鎖オリゴヌクレオチドを合成してその質量を測定し、その差異を質量分析器により検出することによりタイピングする方法である〔Genome Res., 7, 378-388 (1997), Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem., 35, 545-548 (1997)〕。MALDI−TOF/MS法では、はじめに多型部位を含むDNA断片をPCR増幅し、その後、多型部位に隣接するプライマーを用いた伸張反応により、それぞれのアレルに特異的なDNA伸張反応物をマススペクトルに基づき解析する。このときに用いられPCRプライマーは、通常多型部位を含む約0.05〜0.5kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドである。また、多型を検出するためのプライマーは、多型部位に隣接した15から30merのオリゴヌクレオチドを用いる。
TDI法は、遺伝子多型を含むDNA断片をPCRで増幅させた後、多型部位の直前に設計されたプライマーを用いて、プライマー伸張反応により、それぞれのアレルに対応する異なる蛍光色素で標識されたダイデオキシヌクレオチドを多型部位に取りこませる方法である〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 10756-10761 (1997)〕。プライマー伸張産物は、DNAシークエンサー(ABIプリズム377、アプライドバイオシステムズ社製)などを用いて解析する。このときに用いられるPCRプライマーは、通常多型部位を含む約0.05〜1kbのDNA断片を増幅するための、15〜30merのオリゴヌクレオチドである。
Molecular Beaconsは両末端に発光抑制体(Quencher)と蛍光体(Fluorophore)を持ったオリゴヌクレオチドである。通常はステム部分が5−7ヌクレオチドでループ構造が15−30ヌクレオチドのステムループ構造である。したがって蛍光体は発光抑制体の働きにより、励起光照射下でも発光しない。一方、ループ構造内の塩基配列と相同なターゲットのDNAとループ構造内の塩基配列がハイブリダイズすると、発光抑制体と蛍光体の距離が離れるために蛍光体が励起光下で励起し蛍光を発する〔Nat. Biotechnol.,1, p49-53 (1998)、遺伝子医学、4, p46-48(2000)〕。Molecular Beaconのステム部分の塩基配列は、ターゲットDNAとは相補的でない。Molecflar Beaconsのステム構造のTm値(溶解温度:melting temperature)は、ターゲットDNAとPCRプライマーのTm値より、7−10℃高くなるように設計する。そして、ターゲット領域をPCRで増幅させるときにMolecular Beaconsを反応液にいれて、PCRのアニーリング温度で励起光を当て蛍光を測定するとMolecular Beaconsがターゲット遺伝子に完全に相同な配列であればHybridizeするため蛍光を発する。逆にミスマッチがあれば、Molecular Beaconsはターゲットにハイブリダイズできず蛍光を発することができない。この方法により遺伝子多型を見つけることができる。
ターゲットDNA(60−90塩基対)をゲノムDNAからPCRで増幅する際に、末端をビオチン化したプライマーを用いて行う方法である〔Nat. Biotechnol.,1, p87-88, (1999)、遺伝子医学, 4, p47-48 (2000)〕。PCR終了後、ビオチン化したプライマー側のストランド(strand)はストレプトアビジン(Streptavidin)でコーティングされたマイクロタイターウェルに結合する。これに対して未修飾のPrimer側のストランドは結合することができず、アルカリ溶液でリンスすると除去される。その後、このビオチン化したプライマーのストランドに対して、プローブDNA(15−21ヌクレオチド)をハイブリダイズさせる。この時に2本鎖DNAに特異的に結合し蛍光を発する蛍光物質(Syber Green I dye)を一緒に取込ませる。その後、この蛍光強度を観察しながら変性(denature)させる。ターゲットDNAとプローブDNAが完全に相補的でなくミスマッチが有ったときには完全に相補的である場合に比べ変性し発光しなくなる温度が低くなる。この温度の違いを観察することにより、遺伝子多型を検出することができる。
Lizardiらによって開発された方法である〔Nat. Genet., 3, p225-232 (1998)、遺伝子医学, 4, p50-51 (2000)〕。一本鎖ターゲットDNAにハイブリダイズするとプローブが環状になるように設計したプローブを用い、ターゲットDNAにハイブリダイズした後にDNAリガーゼで結合させて完全な環状にしその後アルカリフォスファターゼ(Calf intestinal Alkaline Phosphatase (CIAP))の脱リン酸化酵素でリン酸基を除去する。末端にミスマッチがあり環状になれなかった場合リン酸基がなくなり環状化できなくなる。この環状DNAに対してプライマー(1)を設計し、DNAポリメラーゼで複製してレプリコン多量体を得る。このレプリコンに対してもプライマー(2)を設計し、この2種類のプライマーを一緒に混ぜてDNAポリメラーゼで反応し、2本鎖DNAを増幅する。プライマー(1)はターゲットDNAとは相補的でない部分に設計し、プライマー(2)は環状になったプローブ(Padlock Probe)の末端部分(ターゲットDNAと相補的な配列(3'末端に遺伝子多型を含む)に設計し、多型検出には3’末端の一塩基置換させたプライマーを用いる。環状化したプローブ(Padlock Probe)に対してローリング・サイクル・反応(Rolling Circle-Reaction:RCR)を改良したハイパーブランチド・ローリング−サークル増幅法(Hyperbranched Rolling-Circle Amplification (HRCA))法を用いて増幅させた後に、Padlock Probe内にある制限酵素認識サイトの制限酵素で処理し、電気泳動でバンドの有無を確認する。
UCAN法[タカラ酒造株式会社ホームページ(http://www.takara.co.jp)参照]は、RNAをDNAが両側からはさんだ型のDNA−RNA−DNAプライマー(DRDプライマー)の3'末端のDNAを化学変化させておき、DNAポリメラーゼによる鋳型DNAの複製が起こらないようにしておく。次に、一塩基変換が起こっている可能性のある塩基部分に、RNA部分が結合するように設計したDRDプライマーと鋳型DNAを対合させる。DRDプライマーと鋳型が完全にマッチしている場合のみRNaseHにより、対合したDRDプライマーのRNA部分が切断される。この切断によって3'末端が新しく出現するのでDNAポリメラーゼによる伸長反応が進み、鋳型DNAが増幅される。一方、DRDプライマーと鋳型DNAがその場所でマッチしていない場合、つまりSNPが存在するときは、RNaseHがDRDプライマーを切断しないので、DNA増幅が起こらない。この遺伝子増幅の有無を検出することで遺伝子多型を検出することができる。
DNAチップまたはDNAマイクロアレイは多種類の多型部位を含むDNAプローブをガラス基盤上に固定したもので、これに標識した核酸試料をハイブリダイゼーションして、蛍光シグナルによって多型の有無を検出する。一般にガラス基盤上にcDNAを乗せていくものをDNAマイクロアレイ、DNAをガラス基盤上で合成していくものをDNAチップ(オリゴDNAチップ)という。基盤上に固定(または合成)されるプローブは、オリゴDNAアレイであれば、通常多型部位を含む20mer程度のオリゴヌクレオチド、cDNAマイクロアレイであれば、100〜1500mer程度の2本鎖DNAが用いられる。
ECA(Electrochemical Array)法は、DNAの2本鎖に結合するインターカレーターの電気化学的性質を利用した遺伝子タイピング法である。すなわち、ゲノム上の多型を含む領域をPCR法により増幅し、基盤に固定化したそれぞれのアレルと相補するプローブとハイブリダイズ後にインターカレーターを作用させる。このとき、プローブに対して完全相補と不完全相補の場合で結合するインターカレーターの量が異なる。ECA法で用いるインターカレーターは、電気化学的性質を有するフェロセンという物質を含有しているため、結合したインターカレーターの量に比例して電気的シグナルが異なる。ECA法は、この違いを利用して遺伝子多型を検出する方法である〔Anal. Chem., 72, p1334-1341, 2000〕。
本発明の判定方法では、RAの発症に関連した遺伝子多型を検出するために、検出すべき遺伝子多型が存在する部位またはその近傍の配列を検出するためのプローブまたは固相化試料、もしくは該配列を特異的に増幅するためのプライマーが用いられる。これらのプローブ、プライマーおよび固相化試料は、本発明の判定方法を実施するための試薬、またはキットとして有用である。
本発明の方法で用いられるプローブは、PADI4遺伝子上の遺伝子多型を含む部位に特異的にハイブリダイズし、該多型部位を検出するためのポリヌクレオチドプローブである。
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基
本発明の方法で用いられるプライマーは、PADI4遺伝子上の遺伝子多型を含む部位を特異的に増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーである。
センス鎖プライマーとしては、好適には配列番号1の5927から6176番目に示される塩基配列中、より好適には同6077から6176番目に示される塩基配列中の、15塩基以上(好ましくは15〜30塩基)の連続した塩基配列を選択する。
センス鎖プライマーとしては、好適には配列番号1の821から1070番目に示される塩基配列中、より好適には同971から1070番目に示される塩基配列中の、15塩基以上(好ましくは15〜30塩基)の連続した塩基配列を選択する。
センス鎖プライマーとしては、好適には配列番号1の903から1152番目に示される塩基配列中、より好適には同1053から1152番目に示される塩基配列中の、15塩基以上(好ましくは15〜30塩基)の連続した塩基配列を選択する。
センス鎖プライマーとしては、好適には配列番号1の3786から4035番目に示される塩基配列中、より好適には同3936から4035番目に示される塩基配列中の、15塩基以上(好ましくは15〜30塩基)の連続した塩基配列を選択する。
センス鎖プライマーとしては、好適には配列番号1の5950から6199番目に示される塩基配列中、より好適には同6100から6199番目に示される塩基配列中の、15塩基以上(好ましくは15〜30塩基)の連続した塩基配列を選択する。
本発明の固相化試料は、(1)記載のプローブとして用いられるポリヌクレオチドを、ガラス板、ナイロンメンブレン、マイクロビーズ、シリコンチップ、キャピラリー等の固相に固定することにより作製される。固相への固定は、予め合成したポリヌクレオチドを固相上に乗せる方法であってもよいし、目的とするポリヌクレオチドを固相上で合成する方法であってもよい。固定方法は、例えばDNAマイクロアレイであれば、市販のスポッター(Amersham社製等)を利用するなど、目的とする固相化試料に適した方法が、当該技術分野で周知である。このような固相化試料としては、例えば、遺伝子チップ、cDNAマイクロアレイ、オリゴアレイ、メンブレンフィルター等を挙げることができる。
本発明のキットは、上記プローブまたはプライマーとして用いられ得るポリヌクレオチド(あるいは、オリゴヌクレオチド)、ならびに固相化試料から選ばれる少なくとも一つ以上を含む。本発明のキットは上記した構成要素のほか、必要に応じて、ハイブリダイゼーション、プローブの標識、ラベル体の検出等、本発明の判定方法に必要な他の試薬、器具等を適宜含んでいてもよい。
RA患者および健常人における、前記遺伝子多型検出の統計解析結果から、本発明の方法は高い確率でRAを発症する潜在的危険度の判定が可能であることが判明している。
a)PADI4遺伝子上の第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基のシトシンからチミンへの置換
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基のアデニンからグアニンへの置換
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)のシトシンからチミンへの置換
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基のシトシンからグアニンへの置換
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基のシトシンからチミンへの置換
本発明にかかる4つのSNPsはいずれもほぼ完全連鎖(98.9〜100%)の関係にあり、かつエクソン部分の3つの多型はいずれもPADI4タンパクのアミノ酸置換をもたらす。
1)RAに関連していると考えられるPADI4のタイプは、RAとの関連が認められないタイプに比べてmRNAの安定性が高い
2)RAに関連していると考えられるPADI4のタイプは、RAとの関連が認められないタイプに比べて酵素活性が高い
1. 解析対象患者の選択
日本各地の臨床施設より846人のRA患者と658人の非患者とからゲノムDNA抽出用の血液を採取した。すべての検体提供者は日本人である。提供者からは、理化学研究遺伝子多型研究センター倫理委員会によるインフォームドコンセントに対する同意を得た。RA患者については、The revised criteria of the American College of Rheumatology for the classification of rheumatoid arthritisの以下の7つの基準のうち少なくとも3項目に該当する者をRA患者群として選択した。
(1) 朝のこわばり
(2) 3領域以上の関節炎
(3) 手関節炎
(4) 対称性関節炎
(5) リウマトイド結節
(6) リウマトイド因子
(7) X線所見
非患者群については、日本人一般集団から患者とは独立に選抜した。RAの診断の有無以外ではRA患者群、非患者群の間に差がないようにサンプリングした。
RA患者および非患者の末梢血から分離した白血球を出発材料とし、ゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAの抽出にあたっては、EDTA・2Na入り採血菅(ベノジェクト)に採血し、QIAamp DNA Blood kit (QIAGEN)を使用した。得られた各試料の260nmの吸光度を測定し、各試料のDNA濃度を算出した。その後、調製したDNAは、1mM EDTA・2Naを含む10mM Tris-塩酸緩衝液 (pH8.0)に溶解し、使用するまで、-80℃で保存した。
以下に示す3種のプローブを用いて、PADI4の第3イントロンの2136(−15)番目の位置(配列番号1の6177番目)における塩基がシトシンであるかチミンであるかの検出を行った。
インベーダープローブ:
5'-CTGCGCACAGGGAGATTTCTGAAATCCCATCAT-3'(配列番号2)
シトシン検出用FAMプローブ:
5'-ATGACGTGGCAGACGGTAAGAGGAGAGGTTGGY-3'(配列番号3)
チミン検出用VICプローブ:
5'-CGCGCCGAGGAGTAAGAGGAGAGGTTGGY-3'(配列番号4)
ケース群(RA患者群)846人とコントロール群(非患者群)658人を対象とし、第3イントロン2136番目の塩基の1塩基多型についてケース・コントロール関連検定を行った。検定は2群間のアレル頻度分布比較・優性遺伝形式モデルによるジェノタイプ分布比較・劣性遺伝形式モデルによるジェノタイプ頻度比較にて行った。検定方法は2X2分割表χ2検定を用いた。解析結果を表1に示す。
1.検出方法
GenBankのアクセション番号:NT_030584.2に示されるゲノム配列の第415,085塩基から第470,600塩基に存在する、PADI4遺伝子上の新規遺伝子多型の検出を以下の方法により試みた。
各々の領域につき48人分の塩基配列を比較し、多型性の認められた塩基を1塩基多型とみなした。この結果、アミノ酸の置換を伴う以下の3種の新規エクソン一塩基多型とアミノ酸の置換を伴わない1種の新規エクソン多型が見出された。
1)第55番アミノ酸の置換(Ser/Gly)を伴う多型:
第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基がアデニンまたはグアニンである一塩基多型
2)第82番アミノ酸の置換(Ala/Val)を伴う多型:
第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基がシトシンまたはチミンである一塩基多型
3)第112番アミノ酸の置換(Ala/Gly)を伴う多型:
第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基がシトシンまたはグアニンである一塩基多型
4)第117番アミノ酸(Leu)における、アミノ酸の置換を伴わない多型:
第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基がシトシンまたはチミンである一塩基多型
1.解析方法
RAと強い関連が認められたPADI4第3イントロン2136番目(−15番目)のヌクレオチドの一塩基多型(以下、「PADI4 intron 3 -15 T/C」と示す。)とPADI4上の4つの新規一塩基多型とのPairwise Linkage Disequilibrium Index (D’)をEMアルゴリズムを用いて算出した。
その結果、4つの一塩基多型は相互にほぼ完全連鎖(98.9〜100%)の関係にあり、かつPADI4 intron 3 -15 T/Cともほぼ完全連鎖の関係にあることが、EMアルゴリズムによるハプロタイプ解析によって確認された。一方、PADI4近傍のPADI2、PADI1遺伝子内の公知の一塩基多型とPADI4 intron 3 -15 T/Cについては、ほとんど連鎖平衡に達していた。
1.分解度の測定
2つのPADI4ハプロタイプをコードする遺伝子は以下の方法で調製した。
まず、Bone marrow total RNA(Clontech社)を用いてfirst strand cDNA synthesis kit(Amersham Pharmacia社)により合成したcDNAをpDONR201(Invitrogen社)にクローニングした。得られたcDNAを、さらにT7プロモーターを含むpDEST14(Invitrogen社)にリクローニングし、それぞれpV18-T7およびpV9-T7 ベクターを作製し、それらについてシークエンシングを行った。次いで、pV18-T7およびpV9-T7 ベクターをClaIで消化し、RiboMaxTMLarge Scale RNA Production System-T7(Promega社)を用いてin vitro transcriptionを行い、V9、およびV18のmRNAを作製した。
1.大腸菌によるHis-tag付加PADI4タンパク質の発現
His-tagを付加した2つのPADI4ハプロタイプ断片:RGS6-HisV18(配列番号5)、またはRGS6-HisV9(配列番号6)がpET11d(Stratagene社)のNcoI/BamHIへ挿入された発現プラスミドを作製した。このプラスミドで形質転換した大腸菌BL21-codonPlus(DE3)-RIL cell(Strategene社)をアンピシリン50μg/ml(Sigma社)とクロラムフェニコール50μg/ml(Sigma社)を添加したLB培地(Invitrogen社)に接種し、37℃で一晩培養した。10mLの培養液を1Lの2%グルコース(和光純薬)、アンピシリン50μg/ml(Sigma社)を添加した2倍濃度のLB培地(Invitrogen社)に添加し、600nm波長の吸光度が0.9 になるまで37℃で培養した。終濃度0.1mMになるようにイソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG:和光純薬)を添加し、20℃で4時間培養した。培養液を6000×gで10分遠心して、菌体を回収した。菌体を30mlの50mM トリス-塩酸(pH7.6)(和光純薬)、100mM 塩化ナトリウム(和光純薬)、2mM ジチオスレイトール(DTT:和光純薬)、規定量の完全蛋白分解酵素阻害剤カクテル(Roche Diagnostics社)を含む溶解用緩衝液へ懸濁して、4℃で超音波破砕し、97000×gで30分遠心して上清を回収した。さらにこの上清をMillex-HV (ミリポア社)フィルターにかけた。
前項で調製した上清を予めバッファーA {50mM トリス-塩酸(pH7.6)(和光純薬)、1mM エチレンヂアミンテトラ酢酸(EDTA:同仁化学)}で平衡化したSephadex-G25(アマシャム・バイオサイエンス社)に供し、0.1Mの塩酸ナトリウムが入ったバッファーAで分画した。活性が認められた画分をバッファーAで予め平衡化したDEAE-Sepharose(アマシャム・バイオサイエンス社)に供し、0.1Mの塩酸ナトリウムが入ったバッファーAで洗浄した後、バッファーAへ添加した塩酸ナトリウム濃度を0.1Mから0.2Mへ徐々に変化させて溶出し、分画した。活性が認められた画分に三倍量のバッファーB{50mM トリス-塩酸(pH7.6)(和光純薬)、0.1M 塩化ナトリウム(和光純薬)、0.1% トライトンX-100}を加え、Ni-NTA スーパーフローカラム(QIAGEN社)に供した。カラムを20mMのイミダゾールが入ったバッファーBで洗浄し、200mMのイミダゾールが入ったバッファーBで溶出した。活性が認められた画分をバッファーC{10mM トリス-塩酸(pH7.6) (和光純薬)、0.15M塩化ナトリウム(和光純薬)、2mM DTT(和光純薬)、1mM EDTA(同仁化学)}で透析し、濃縮後、終濃度10%になるようにグリセロール(Sigma社)を添加して、-80℃に保存した。
1.PADI4活性の測定方法(蛍光法)
酵素反応用の緩衝液として、100mM Tris/HCl(pH7.8)、10mM CaCl2、5mM DTT、10mM BAEE(Sigma)またはN-α-Benzoyl-l-arginine(東京化成)を含む溶液を調製した。この緩衝液40μlと、実施例5で調整したV18酵素原液(113μg/ml)の希釈列10μlをPCR反応プレート(Applied Biosystems社)内にて混合し、37℃で2時間反応させた。反応後、10μlの200mM EDTAを添加して反応を停止した。このうち50μl分をdeep well plate(日本ジェネティクス社)に移した。なお同時に、検量線作成のため、0-50nMの硫酸アンモニウム溶液も別のウェルへ添加した。さらにこれらのウェルへ、50mM ホウ酸を1ml、および50mM o-phthalaldehydeと50mM DTTの等量混合溶液を50μlずつ添加し、室温で2時間反応させた。反応溶液は200μl分を白色プレート(コースター・コーニング社)に移し、Spectra max GEMINI(Molecular Devices社)を用いて励起波長413nm、蛍光波長476nmの各波長を測定した。酵素を含まないウェルの測定値をバックグラウンドとして差し引き、検量線作成用硫酸アンモニウムを添加したウェルでの測定値から検量線を描くことにより、反応によって生成したアンモニウムイオンの濃度を求めた(図2A)。
酵素反応用の緩衝液として、100mM Tris/HCl(pH7.6)、10mM CaCl2、5mM DTT、10mM BAEE(Sigma)を含む溶液を調製した。この緩衝液40μlと、113μg/mlの実施例5で調整したV18酵素原液(113μg/ml)の希釈列10μlをPCR反応プレート(Applied Biosystems社)内にて混合し、50℃もしくは37℃で2時間反応させた。反応後、A液(80mM Diacetyl monoxime(3−hydroxyimino 2−butane)、2mM thiosemicarbazide)を含む)とB液(3M H3PO4、6M H2SO4、2mM NH4Fe(SO4)2を含む)を1:3の比率で混合した溶液を150μlずつ添加した。なお同時に、検量線作成のため、0−400μMのL-シトルリン溶液も別のウェルへ添加し、同様にA液とB液の混合溶液を添加した。混合溶液は、サーマルサイクラー(GeneAmpTMPCR System 9700、Applied Biosystems社)を使用して95℃15分の後室温で10分反応させた。反応後の溶液は150μl分を96ウェルプレート(コーニング社)に移し、Spectra max 250(Molecular Devices社)を用いて540nmの吸光度を測定した。酵素を含まないウェルの測定値をバックグラウンドとして差し引き、検量線作成用シトルリンを添加したウェルでの測定値から検量線を描くことにより、反応によって生成したシトルリンの濃度を求めた(図2B)。
吸光度法を用いてヒトPADI4ハプロタイプV9およびV18の酵素活性を測定し、比較した(図3)。図3から明らかなように、V9はV18に比べて有意に酵素活性が高いことが確認された(P<0.01)。以上より、RA病変に関連したPADI4タイプ(V9)は正常PADI4タイプ(V18)よりもその酵素活性が高く、こうした酵素活性の違いがRA発症と何らかの関連を有することが推測された。
1.抗シトルリン化ペプチド抗体価の測定方法
RA患者血清の抗シトルリン化ペプチド抗体価をMESACUP ACFテストは、医学生物学研究所(名古屋)委託して作製したキットを用いて行った。MESACUP ACFテストとは、リコンビナント ヒトフィラグリンペプチドをPADによりシトルリン化した、シトルリン化フィラグリンを抗原として、ELISA法により抗体価を測定する方法である。
各反応後のサンプルを分光吸光度計を用いてOD450を測定し、Index値を下式を用いて算出した。
PADI4 intron 3 -15 T/C ジェノタイプの決められた、RA患者57人につき、血清中の抗合成シトルリン化フィラグリン抗体価を測定した。
カットオフ値10にて、分割表検定を行ったところ、下表2のようになった。
1.In situ-RT-PCR
RA患者の滑膜組織から調整した組織片にPro STAR HF(Stratagenes社)を添加し、以下の条件でOne step In situ-RT-PCR をHybaid Omnislide (Hybaid Ltd., Middlesex, UK)上にて実施した。
(1) 42℃ 30 分
(2) 94℃ 2 分, 55℃ 45秒, 68℃ 2分
(3) 94℃ 45秒, 55℃ 45秒, 68℃ 2分、25サイクル
PCR反応後のスライドグラスはPBS にて5分間ずつ2回洗浄した。
Forward Primer: 5'-GACCAGAAGGTTCAGATTTCATACTAC-3'(配列番号7)
Reverse Primer: 5'-ACCAGTGTATGGTTTGTGAAGAAGT-3'(配列番号8)
なお、DIG標識はPCR DIG probe synthesis kit (Roche Diagnostics社)を用いて行った。
結果を図4に示した。PADI4 の転写産物はRA患者滑膜組織の表層(lining)と滑膜表層下(sub-lining layer)付近に局在していた。また、シグナルは繊維芽細胞様細胞や血管周囲の球状核細胞(round-nuclear cell)中で観察された。
マウスにコラーゲン誘導関節炎(CIA)を誘導し、その滑膜組織および脾臓組織における、マウス ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ・タイプIV(mPADI4)遺伝子の発現量について検討した。なお、mPADI4は、ヒト ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ・タイプIV(hPADI4)のマウスオーソログである。mPADI4のcDNA配列とアミノ酸配列はそれぞれ配列表の配列番号18および配列番号19に記載した。
DBA/1Jマウス(5週齢の雌、日本チャールスリバー(株)より購入)は、CIA群(N=11)と健常群(N=11)に分けた。CIA群は訓化後、タイプIIコラーゲン2mg/ml(コラーゲン技術研修会)およびADJUVANT COMPLETE FREUND(DIFCO)を等量の割合で混ぜ、超音波によりエマルジョン化したものを、1匹あたり100μl、一週間の間隔をおいて計2回 尾根部に皮内投与した。最終的に、CIA群は発症が見られた5匹7肢を、健常群は11匹22肢を以下の実験に供した。
マウスは2回目の投与後7週目に断頭放血により致死させ、滑膜組織および脾臓組織をハサミおよびピンセットで摘出した。摘出した組織より、RNeasy mini kitまたはRNeasy midi kit (QIAGEN社)を用いて、添付のプロトコールに従い全RNAを調製した。調製した全RNAより、TaKaRa RNA PCRTM Kit (AMV) Ver.2.1(TaKaRa)を用いて、添付プロトコールに従いcDNAを合成した。
Forward Primer: 5'-ACGCTGCCTGTGGTCTTTG-3'(配列番号9)
Reverse Primer: 5'-CCAGCCCAGTGAGCTCTGA-3'(配列番号10)
Probe: 5'-CCTGAAGGATTTCCCTGTCAAGCGAGTT-3'(配列番号11)
Forward Primer: 5'-TACGGGATTGTGGTCATCGA-3'(配列番号12)
Reverse Primer: 5'-CGAACCAGCTCCTCCATCAC-3'(配列番号13)
Probe: 5'-CAACGAGTCACTTCGGCACCACCTAGAG-3'(配列番号14)
結果を図5に示した。CIA群滑膜組織では健常群滑膜組織に比べmPADI4の発現量は19.5倍に上昇していた。また、CIA群脾臓組織では健常群脾臓組織に比べmPADI4の発現量は3倍に上昇していた。以上よりCIA群では、滑膜組織および脾臓組織においてmPADI4遺伝子発現が著しく上昇することが確認された。
ヒトPADI4由来のペプチド配列 ( PAKKKSTGSSTWP-Cys:配列番号15) を合成し(オリエンタル酵母北山ラベス, ペプチド合成機:アプライドバイオシステムズジャパン株式会社,Pioneer, 合成法:Fmocアミノ酸を用いた固相合成)、KHL (Keyhole limpet hemocyanin, CALBIOCHEM )をMBS(PIERCE)法を用いてコンジュゲーションした。
1.関節滑膜組織切片の調製
人工膝関節置換術に際して得られた切離組織より、関節滑膜組織片を得た。得られた滑膜組織片は即座に液体窒素中に漬け、スライドグラス上薄層切片作製まで-80℃で保存した。薄層切片化に際し、凍結組織片を10%中和緩衝ホルマリンにて固定し、70%エタノール、85%エタノール、90%エタノール、100%エタノール(100%エタノールの場合に限り2回)にて各1時間脱水処理し、ついで、50%エタノール50%パラフィン溶液で30分間にて1回、100%パラフィン溶液で30分間にて2回、処理し、組織片をパラフィン化した。その後、組織片をパラフィン中に包埋した。パラフィン包埋組織片はライカミクロトームRM2165で4μmの厚さにスライスし、スライドグラスに固定した。
免疫染色に先立ち、前項で調製したパラフィン包埋切片をキシレンに3分間ずつ2回つけ、脱パラフィン化した後、100%エタノールに1分間ずつ2回、95%エタノールに1分間ずつ2回、さらにPBS(0.13M NaCl, 8.6mM K2HPO4, 1.5mM KH2PO4)に3分間ずつ2回つけ、再水和した。30%H2O2メタノール溶液で3分間処理し、内在性ビオチンを除去した。PBSにて5分間ずつ2回、洗浄し、1000倍希釈したそれぞれの抗体:抗シトルリン化タンパク質抗体(Biogenesis社)と実施例10で調製した抗PADI4抗体とを加えて4℃にて12時間反応させた。反応後、PBSにて5分間ずつ2回洗浄し、SimpleStain MAX-PO(Nichirei)を1スライドにつき100μlずつ加え、25℃にて30分間反応させた。その後、PBSにて5分間ずつ2回洗浄を行った。基質として、SimpleStain AEC(Nichirei)を1スライドにつき100μlずつ加え、シグナルが検出されるまで5分から20分反応させた。反応は超純水につけて停止させた。
結果を図6および図7に示す。RA患者の滑膜組織ではPADI4 を特異的に認識する抗体による反応(Aの枠で囲った箇所の赤い部分)が認められたが、関節リウマチの陰性対照である変形性関節症(OA)患者の滑膜組織にはPADI4 を認識する抗体による反応は認められなかった(図6B)。また、RA患者の滑膜組織では、PADI4 とほぼ同じような部分にシトルリン化タンパク質が認められた(図7)
1.mRNAの調製
2つのPADI4ハプロタイプのmRNAは、以下の方法で調製した。
V9もしくはV18をコードする遺伝子をCMVプロモーターの下流につないだプラスミドを、リポフェクトアミン2000(Invitrogen社)を用い、添付のプロトコールに従ってヒトK562細胞への遺伝子導入を行った。37℃で4時間培養した後、PMA(Sigma社)を最終濃度50ng/mlとなるように添加した。40時間培養した後、アクチノマイシンD(Sigma社)を最終濃度5μg/mlとなるように添加し、0、2、4時間後にそれぞれ細胞を回収した。
図8に示すように、PADI4 V9のmRNAは、PADI4 V18に比べて有意に分解し難い傾向にあることが分かった(T検定より、4時間後でp=0.03)
−変異の説明:(A)と(G)の置換による一塩基多型
−変異の説明:(C)と(T)の置換による一塩基多型
−変異の説明:(C)と(G)の置換による一塩基多型
−変異の説明:(C)と(T)の置換による一塩基多型
−変異の説明:(C)と(T)の置換による一塩基多型
配列番号2−人工配列の説明:プローブ
配列番号3−人工配列の説明:プローブ
配列番号4−人工配列の説明:プローブ
配列番号7−人工配列の説明:プライマー
配列番号8−人工配列の説明:プライマー
配列番号9−人工配列の説明:プライマー
配列番号10−人工配列の説明:プライマー
配列番号11−人工配列の説明:プローブ
配列番号12−人工配列の説明:プライマー
配列番号13−人工配列の説明:プライマー
配列番号14−人工配列の説明:プローブ
配列番号15−人工配列の説明:ヒトPADI4由来ペプチド
Claims (8)
- ヒトゲノムDNAを含む試料において、ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ・タイプIV遺伝子上の遺伝子多型を検出することにより、該試料を提供した被験者が慢性関節リウマチを発症する危険度を判定する方法であって、検出する遺伝子多型が、下記a)〜e)から選ばれるいずれかのペプチジルアルギニン・デイミナーゼ・タイプIV遺伝子上の一塩基多型、またはその二つ以上の組合せからなるハプロタイプであることを特徴とする、前記方法。
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基に存在する一塩基多型
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基に存在する一塩基多型
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基に存在する一塩基多型
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基に存在する一塩基多型
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基に存在する一塩基多型 - ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ・タイプIV遺伝子上の遺伝子多型において、下記a)〜e)から選ばれるいずれか一つまたは二つ以上が検出された場合に、被験者は慢性関節リウマチを発症する危険度が高いと判定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基のシトシンからチミンへの置換
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基のアデニンからグアニンへの置換
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基のシトシンからチミンへの置換
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基のシトシンからグアニンへの置換
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基のシトシンからチミンへの置換 - 検出が、RFLP法、PCR−SSCP法、ASOハイブリダイゼーション、ダイレクトシークエンス法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法、RNaseA切断法、化学切断法、DOL法、TaqMan PCR法、インベーダー法、MALDI−TOF/MS法、TDI法、モレキュラー・ビーコン法、ダイナミック・アレルスペシフィック・ハイブリダイゼーション法、パドロック・プローブ法、UCAN法、DNAチップまたはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、およびECA法からなる群より選択される一つまたは二つ以上の方法を用いて行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 検出が、ダイレクトシークエンス法、および/またはインベーダー法を用いて行われることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
- 配列番号1で示されるペプチジルアルギニン・デイミナーゼ・タイプIV遺伝子断片上において、下記a)〜e)から選ばれるいずれか一つの塩基を含む16〜500塩基長の連続したポリヌクレオチドまたはその標識物からなる、慢性関節リウマチを発症する危険度を判定するためのプローブ。
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基
(ただし、上記ポリヌクレオチドがRNAである場合、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする) - 配列番号1で示されるペプチジルアルギニン・デイミナーゼ・タイプIV遺伝子断片上において、下記a)〜e)から選ばれるいずれか一つの塩基を含む16〜1000塩基長の連続したポリヌクレオチドの一部にハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを特異的に増幅するための、前記遺伝子断片上の連続した15〜30塩基長のオリゴヌクレオチドの相補鎖またはその標識物からなる、慢性関節リウマチを発症する危険度を判定するためのプライマー。
a)第3イントロンの2136番目(配列番号1の6177番目)の塩基
b)第2エクソンの71番目(配列番号1の1071番目)の塩基
c)第2エクソンの153番目(配列番号1の1153番目)の塩基
d)第3エクソンの62番目(配列番号1の4036番目)の塩基
e)第4エクソンの9番目(配列番号1の6200番目)の塩基
(ただし、上記ポリヌクレオチドがRNAである場合、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする) - 請求項5に記載のプローブを固定した固相化試料。
- 以下の1)〜3)から選ばれる少なくとも一つ以上を含む、慢性関節リウマチを発症する危険度を判定するための試薬またはキット。
1)請求項5に記載のプローブ
2)請求項6に記載のプライマー
3)請求項7に記載の固相化試料
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