JP2010186678A - 燃料電池用触媒層 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】開口部の直径が4nm以上の細孔のみを有する担体に触媒微粒子を担持させてなる触媒と高分子電解質とが混合されている燃料電池用触媒層であって、前記担体(A)と前記高分子電解質(B)との重量比(B)/(A)が、カーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.5を乗じた値以下とする。また、前記担体における1μm以下の細孔容積は、カーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.7を乗じた値以下とする。
【選択図】 なし
Description
例えば担体として比表面積が800m2/g以上のカーボンブラックを採用し、これに白金触媒微粒子を50wt%以上担持させることにより白金触媒微粒子の比表面積を100m2/g−Pt以上とすることができた。かかるカーボンブラックとして、ケッチェンブラックEC(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製の商品名、以下同じ)及びケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製の商品名以下同じ、この明細書においてKB600JDと略することがある。)を挙げることができる。
本件に関連する技術を開示する文献として非特許文献1がある。この非特許文献1には0.04μm及び0.1μm径の細孔を有するカーボン担体が開示されている。
本発明者らは白金触媒微粒子の使用量を削減すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、下記の知見を見出した。
図1はカーボン担体としてのKB600JDにPt60wt%担持した触媒の3D−TEM観察結果を示す。図1の3方向スライス像から担体内部に白金触媒微粒子が存在することが確認される。観察対象のPt60%/KB600JDでは白金触媒微粒子数の約6割が担体内部に存在し、その結果、活性点となる白金触媒微粒子の表面の約5割の面積が担体の内部にあることとなる。
この担体内部に存在している白金触媒微粒子が発電に寄与していないのなら、担持した白金触媒微粒子のうちのかなりの割合が無駄に存在していることになる。
触媒微粒子担持量が十分に多ければ、担体外表面に存在する白金触媒微粒子のみで充分な性能を得られるが、触媒微粒子量低減のために触媒微粒子担持量を減らして、かつ、性能を維持するためには白金触媒微粒子が担体内部に存在する比率をできるだけ少なくして、触媒微粒子利用率を上げる必要がある。
図3は、図2の結果に基づき、担体の細孔容積と電解質添加量(N/C比)との関係をグラフ化したものである。図3より、N/C比を大きくしたとき減少する細孔容積は主に細孔径4nm以上のもので、4nm未満の細孔による細孔容積はほとんど変化しないという結果が得られた。
かかる白金触媒微粒子に対して電解質を接触させる方策として、高分子電解質を微細化、あるいは低分子化して、細孔内部まで高分子電解質が入り込めるようにするということが考えられる。
しかし、プロトン導電性の確保のためには高分子電解質の連続性が必要であり、細孔内部での高分子電解質の構造制御は難しい。さらには、4nm未満のような極めて小径な細孔内部において、そもそも白金触媒微粒子に酸素を十分供給し、かつ生成水を排出するといった物質移動が円滑に実行されるか否か疑問のところもある。
かかる触媒によれば、高分子電解質が入り込めない細孔に白金触媒微粒子が入ることを防ぐため、4nm未満の細孔を持たない担体を用いることで白金触媒微粒子利用率を高めることができ、結果として白金の使用量削減が可能になるからである。
かかる触媒は汎用的なものと比べてその物理的特性が異なるため、これを従来の条件にしたがって高分子電解質と混合して触媒層としても、その触媒層はベストパフォーマンスを奏するものとはならない。
即ち、この発明の第1の局面は次のように規定される。
開口部の直径が4nm以上の細孔のみを有する担体に触媒微粒子を担持させてなる触媒と高分子電解質とが混合されている燃料電池用触媒層であって、
前記担体(A)と前記高分子電解質(B)との重量比(B)/(A)が、カーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.5を乗じた値以下である、燃料電池用触媒層。
そして、触媒と高分子電解質との混合比(高分子電解質/触媒)を0.5以下とすることにより、触媒層における燃料電池反応が円滑に進行し、燃料電池触媒層はその機能を充分に発揮できる。
第1の局面に規定される燃料電池用触媒層であって、前記担体における1μm以下の細孔容積は、カーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.7を乗じた値以下である。
このように規定された燃料電池用触媒層は、第1の局面で説明した作用に加えて、無加湿特性に優れる。
開口部の直径が4nm以上の細孔のみを有する担体に触媒微粒子を担持させてなる触媒と高分子電解質とが混合されている燃料電池用触媒層であって、
前記担体における1μm以下の細孔容積は、カーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.7を乗じた値以下である、燃料電池用触媒層。
このように規定された第3の局面の発明によれば、4nm未満の細孔を持たない担体を採用することで、高分子電解質が入り込めないような微細孔に触媒微粒子が入り込むことが防止される。それにより、触媒微粒子利用率を高めることができ、結果として白金の使用量削減が可能になる。
そして、担体における1μm以下の細孔容積をカーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.7を乗じた値以下とすることにより、無加湿特性に優れた燃料電池用触媒層となる。
第1〜第3の局面で規定される燃料電池用触媒層において前記触媒微粒子の平均粒径が4nm未満である。
このように規定された第4の局面の燃料電池用触媒層によれば、触媒微粒子の平均粒径が、担体の細孔の開口部径より小さくされているので、触媒微粒子は担体の、その細孔内面も含めて、全表面に行渡り、そこに担持される。
上記において、4nm未満の細孔を持たない担体の比表面積は小さく、従来の高性能触媒のような高い担持率にすると触媒微粒子径が大きくて、触媒微粒子比表面積が小さい重量比活性の低い触媒になってしまい、触媒微粒子使用量の低減をすることができない。
そこで、(高比表面積担体に高担持・高分散担持することで、大きい触媒微粒子表面積を確保した高性能触媒とは逆に)、低触媒微粒子担持率にすることで触媒微粒子径を小さくし、もって触媒微粒子表面積を確保しつつ重量比活性の低下を回避する対策をとる。触媒微粒子使用量の削減、即ち触媒層中の触媒微粒子量(担持量あるいは目付量)を少なくする場合には、低担持率触媒でも触媒層の厚さを高性能触媒と同等に抑えれば濃度過電圧増加の懸念はない。
比較例として示したKB600JDでは、4nm未満の細孔が全比表面積の半分以上を占めている。
実施例の担体としてCABOT社製のBP880(商品名)を用いることができる。
実際に作製した触媒微粒子の粒径は表1のようになり、発電前後ともに60wt%担持KB600JD触媒(比較例)とほぼ同等の触媒微粒子比表面積を確保できた。
実施例の触媒と電解質溶液とを混合してペーストを作製し、これをカーボン布等へスクリーン印刷法で塗布して実施例1の触媒層を形成し、これをカソード電極とする。このカソード電極、電解質膜(Nafion(商標名)製)、アノード電極を接合してMEAを作製する。本試験に使用したカソード電極の白金触媒微粒子担持量は0.1mg/cm2である。
比較例の触媒についても上記と同様にして触媒層を形成し、更にMEAを作製する。比較例のカソード電極の白金触媒微粒子担持量は同じく0.1mg/cm2である。
50℃フル加湿の空気性能の比較を図5に示す。同じ白金触媒微粒子担持量(重量ベース)の比較では全電流域で実施例の触媒層を備えたMEAの性能が高かった。
また、低電流領域の性能比較(表2)では、面積比活性、重量比活性ともに実施例の触媒層を備えたMEAが比較例の触媒層を備えたMEAを上回った。
なお、上記明細書の記載において、4nm以上の細孔、4nm未満の細孔、3.5nmの細孔とは、それぞれ担体の細孔の開口部の直径が4nm以上の細孔、4nm未満の細孔、3.5nmの細孔を指す。
この発明を規定するにあたり、担体の細孔の開口部の直径を4nm以上と規定しているが、これは高分子電解質が入り込めない細孔の開口部の直径を規定せんがために発明者らが自らの実験に基づき特定した値である。
したがって、この発明の担体を用いた触媒層においては、担体における実質的に全ての細孔内に触媒粒子が担持されるとともに、当該細孔は高分子電解質で充填されている。
担体には高い電導性と耐蝕性を有し、触媒微粒子を担持できる物理的特性を有する材料を使用することができる。かかる材料として、実施例で使用したカーボン担体の他、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、SrVO3等のペロブスカイト型酸化物などを挙げることができる。
実施例2の触媒層は、カーボン製の担体と高分子電解質の重量比(高分子電解質の質量/担体の質量=N/C、以下同じ)が0.25g−高分子電解質/g−Cとなるよう、実施例1の場合と同様な方法で形成されている。なお、実施例2の触媒層では、担体として、実施例1と同様の低比表面積カーボン担体であるBP800を用いた。
実施例3の触媒層では、担体として東海カーボン製トーカブラック#3885を用いた。
実施例2、3の触媒層及び比較例2、試験例1の触媒層の特性を表4に示す。各実施例及び比較例、試験例とも同一条件でMEAを構成するものとする。
担体としてこれらの材料を用いる場合、カーボン担体の真密度(C)と各材料の真密度(D)の比(C)/(D)を第1〜第3の局面で述べた「触媒担体と高分子電解質の混合比」、および、「触媒担体の1μm以下の細孔容積」に乗じて得た補正値を用いることで対応できる。
例えば、担体として酸化スズ(SnO2)を用いる場合、カーボン担体の密度2g/cm3、SnO2の密度7g/cm3より、
N/Cは、 0.5×2/7=0.14
細孔容積は、0.7×2/7=0.2[cc/g−担体] となる。
酸化ガスとして空気を採用したとき、実施例2と試験例1との比較により、実施例2の触媒層を備えたMEAが高N/Cとした試験例1の触媒層を備えたMEAを上回る結果が得られた。
酸化ガスとして酸素ガスを採用したとき、同じ白金触媒担持量(重量ベース)の比較では全電流域で実施例2の触媒層を備えたMEAの性能が比較例2及び試験例1の触媒層を備えたMEAに比べ高かった。
また図7に示すように、実施例2の触媒層の触媒のPt比表面積と比較例2の触媒層の触媒のPt比表面積がほぼ同じであることを考慮し、酸素ガス供給時における面積比活性を比較すると、実施例2の触媒層では比較例2の触媒層に比べ約15%のPt量の削減が可能であることが示される結果が得られた。
Claims (4)
- 開口部の直径が4nm以上の細孔のみを有する担体に触媒微粒子を担持させてなる触媒と高分子電解質とが混合されている燃料電池用触媒層であって、
前記担体(A)と前記高分子電解質(B)との重量比(B)/(A)が、カーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.5を乗じた値以下である、燃料電池用触媒層。 - 前記担体における1μm以下の細孔容積は、カーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.7を乗じた値以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
- 開口部の直径が4nm以上の細孔のみを有する担体に触媒微粒子を担持させてなる触媒と高分子電解質とが混合されている燃料電池用触媒層であって、
前記担体における1μm以下の細孔容積は、カーボンの真密度(C)と前記担体の真密度(D)の比(C)/(D)に0.7を乗じた値以下である、燃料電池用触媒層。 - 前記触媒微粒子の平均粒径が4nm未満である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層。
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