JP2010179640A - 熱可塑性樹脂成形体とそれを備える画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面強度の向上効果を有する層(高表面強度層)を備えることによって高い表面強度を示す熱可塑性樹脂成形体であって、少ない含有率で高い表面強度向上効果を示す分子構造を含む高表面強度層を備えた熱可塑性樹脂成形体を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を主成分とし、JIS K5400に準拠して測定した表面の鉛筆硬度がH未満である基体の表面に、α−メチレンラクトン単位を構成単位として有する重合体(A)を含む高表面強度層が配置されており、前記高表面強度層が露出している熱可塑性樹脂成形体とする。
【選択図】なし
【解決手段】熱可塑性樹脂を主成分とし、JIS K5400に準拠して測定した表面の鉛筆硬度がH未満である基体の表面に、α−メチレンラクトン単位を構成単位として有する重合体(A)を含む高表面強度層が配置されており、前記高表面強度層が露出している熱可塑性樹脂成形体とする。
【選択図】なし
Description
本発明は熱可塑性樹脂成形体と、当該成形体を備える画像表示装置とに関する。
ポリカーボネートは、耐衝撃性に代表される優れた機械的特性と、高い透明性とを有しており、これらの特長と、樹脂であるが故の良好な成形性、軽量性とに着目して、ガラスの代替材としての使用が広く試みられている。しかし、ガラスと異なってポリカーボネートの表面強度は低く、異物の接触によって容易に傷が発生し、透明性が損なわれる傾向にある。このため、その用途が制限されているのが実状である。
ポリカーボネート成形体の表面強度を向上させるために、熱または紫外線硬化性のハードコート剤を用いた表面処理(ハードコート処理)、あるいはアクリル樹脂などの表面強度に優れた樹脂のコートが行われている。しかしハードコート処理では、その表面強度を、JIS−K5400に準拠して測定した鉛筆硬度にしてH程度とするのが限界である(特許文献1:特開2003-183577号公報を参照)。特許文献1には、ポリカーボネートからなる基板の表面にアクリル樹脂層を形成し、さらにこの上にハードコート処理を実施してもよいことが記載されているが、この場合においても、ポリカーボネート基板の表面強度は上記鉛筆硬度にして2H程度にしかならない。
これとは別に、特許文献2(特開2002-254544号公報)では、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂のコートによるポリカーボネート成形体の表面強度の向上が提案されている。特許文献2に記載のアクリル樹脂は、水酸基とエステル基とを有するアクリル前駆体を環化縮合反応させて形成したラクトン環構造(X)を分子鎖に有するが、当該文献には、このようなアクリル樹脂のコートによって、上記鉛筆硬度にして2Bであったポリカーボネート成形体の表面強度が4Hに向上することが示されている。
ポリカーボネートには、その用途に応じて様々なグレードがあり、表面強度が上記鉛筆硬度にして4Bであるなど、より低い表面強度を有するグレードもある。特許文献2に開示されているアクリル樹脂によって、このようなグレードのポリカーボネートを用いた成形体の表面強度を十分に向上させることは難しい。アクリル樹脂におけるラクトン環構造(X)の含有率を、当該文献に開示がある約40重量%からさらに大きくすれば、当該樹脂のコートによる表面強度の向上効果も強くなると考えられる。しかし、ラクトン環構造(X)は、水酸基とエステル基とを有するアクリル前駆体(特許文献2には、メタクリル酸メチル/2−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル共重合体がアクリル前駆体として例示されている)の分子内環化縮合反応により形成されるため、その含有率の増加には限界がある。ラクトン環構造(X)がポリカーボネート成形体としての光学特性に影響を与えることも考えられる。これらを考慮すると、少ない含有率で高い表面強度向上効果を示す分子構造を含んだコートの実現が望まれる。
また、このコートの実現によって、ポリカーボネートに限られず、JIS K5400に準拠して測定した表面の鉛筆硬度がH未満であるなど、表面強度が比較的低い熱可塑性樹脂成形体に対する効率的な表面強度向上効果が期待される。
そこで本発明は、表面強度の向上効果を有する層(高表面強度層)を備えることによって高い表面強度を示す熱可塑性樹脂成形体であって、少ない含有率で高い表面強度向上効果を示す分子構造を含む高表面強度層を備えた熱可塑性樹脂成形体の提供を目的とする。
本発明者らは、α−メチレンラクトン単位が、少ない含有率で高い表面強度向上効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂を主成分とし、JIS K5400に準拠して測定した表面の鉛筆硬度がH未満である基体の表面に、α−メチレンラクトン単位を構成単位として有する重合体(A)を含む高表面強度層が配置されており、前記高表面強度層が露出している。
本発明の画像表示装置は、本発明の熱可塑性樹脂成形体と画像表示装置本体とを備え、前記熱可塑性樹脂成形体が、光学的に透明な熱可塑性樹脂を主成分とする前記基体を備えるフィルムまたはシートであり、前記成形体が有する前記高表面強度層が、前記成形体における前記画像表示装置本体に面する面とは反対側の面に露出している。
本発明によれば、熱可塑性樹脂を主成分とする基体の表面に配置された高表面強度層が、α−メチレンラクトン単位を構成単位として有する重合体(A)を含むことで、少ない含有率で高い表面強度向上効果を示す分子構造を含む高表面強度層を備えた熱可塑性樹脂成形体が得られる。
[基体]
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂を主成分とする基体であって、JIS K5400に準拠して測定した表面の鉛筆硬度がH未満である基体を有する。本発明の熱可塑性樹脂成形体では、上記分子構造を含む高表面強度層により、このように表面強度が比較的低い基体に対して高い表面強度向上効果が得られる。なお、本明細書における主成分とは、当該基体において最も含有率が大きな成分のことであり、通常、その含有率は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。基体は2種以上の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂を主成分とする基体であって、JIS K5400に準拠して測定した表面の鉛筆硬度がH未満である基体を有する。本発明の熱可塑性樹脂成形体では、上記分子構造を含む高表面強度層により、このように表面強度が比較的低い基体に対して高い表面強度向上効果が得られる。なお、本明細書における主成分とは、当該基体において最も含有率が大きな成分のことであり、通常、その含有率は50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。基体は2種以上の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂は、基体としたときの表面強度がJIS K5400に準拠して測定した鉛筆硬度にしてH未満である限り、特に限定されない。例えばポリカーボネート、ゴム強化スチレン系樹脂および塩化ビニルから選ばれる少なくとも1種であり、透明性および耐衝撃性に優れる成形体が得られる観点からは、ポリカーボネートが好ましい。
ゴム強化スチレン系樹脂は、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−アクリレート−スチレン共重合体(AAS)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル−クロロエチレン−スチレン共重合体(ACS)である。
ポリカーボネートは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法で反応させて得られる樹脂である。二価フェノールは、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンであり、なかでもビスフェノールAが好ましい。2種以上の二価フェノールの混合物をカーボネート前駆体と反応させてもよい。
カーボネート前駆体は、例えばカルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメートであり、これらの具体例は、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメートである。
二価フェノールとカーボネート前駆体との反応時には、必要に応じて、触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤などを用いてもよい。
ポリカーボネートは、三官能以上の多官能芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよいし、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。
ポリカーボネートの分子量は、粘度平均分子量Mvにして、10,000〜50,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましい。このようなMvを有するポリカーボネートは、強度に優れるとともに、成形時の溶融流動性が良好である。
基体は2種以上のポリカーボネートを含んでいてもよい。
基体は、熱可塑性樹脂が主成分である限り、必要に応じて任意の材料を含んでいてもよい。当該材料は、例えば亜燐酸エステル、燐酸エステル、ホスホン酸エステルなどの安定剤;ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤;テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェノール、トリス(ジブロムプロピル)ホスフェート、四臭化エチレン、酸化アンチモン、ジンクボレートなどの難燃剤;紫外線吸収剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;アニオン系、カチオン系、非イオン系あるいは両性系の界面活性剤を含む帯電防止剤;滑剤である。これらの材料の添加時期および添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。基体は、一般に、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物を成形することによって得られるが、成形前の当該組成物に上記材料を加えてもよい。
基体の形状は特に限定されず、例えばフィルムまたはシートであり、この場合、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムまたはシートの表面に高表面強度層が配置され、当該高表面強度層が露出した(典型的には当該高表面強度層が最外層にある)積層体となる。
基体自身の表面強度は特に限定されないが、本発明によれば、当該表面強度がJIS K5400に準拠して測定した鉛筆硬度にして3B以下である場合にも、成形体における高表面強度層の表面(露出面)の鉛筆硬度を4H以上とすることができる。即ち、基体自身の表面の鉛筆硬度が3B以下である場合に、本発明の効果はより顕著となる。
基体の形成方法は特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物を公知の成形法により成形して得ることができる。
[高表面強度層]
高表面強度層は、α−メチレンラクトン単位を構成単位として有する重合体(A)を含む。α−メチレンラクトン単位は、当該単位を構成単位として有する重合体を含む層に対して、その表面強度を向上させる強い作用を有しており、高表面強度層におけるα−メチレンラクトン単位の含有率が少ない場合においても、高い表面強度向上効果が得られる。
高表面強度層は、α−メチレンラクトン単位を構成単位として有する重合体(A)を含む。α−メチレンラクトン単位は、当該単位を構成単位として有する重合体を含む層に対して、その表面強度を向上させる強い作用を有しており、高表面強度層におけるα−メチレンラクトン単位の含有率が少ない場合においても、高い表面強度向上効果が得られる。
また、この強い作用により、低表面強度の熱可塑性樹脂(例えばポリカーボネート)を基体に用いた場合においても、高表面強度層の表面において十分に高い表面強度の実現が可能となる。α−メチレンラクトン単位の構造にもよるが、基体自身の表面強度がJIS K5400に準拠して測定した鉛筆硬度にして3B以下でありながら、当該表面に配置された高表面強度層の表面の鉛筆硬度が4H以上である熱可塑性樹脂成形体(例えばポリカーボネート成形体)を得ることも可能である。
α−メチレンラクトン単位は、α位の炭素にメチレン基が結合したα−メチレンラクトンの重合により形成される。α−メチレンラクトン単位の具体的な構造は特に限定されず、例えばラクトンの環員数は特に限定されないが、環構造の安定性が高く、この高い安定性に基づいてより高い表面強度が得られることから、5員環(γ−ラクトン)または6員環(δ−ラクトン)が好ましい。
ラクトンが5員環または6員環であるα−メチレンラクトン単位の具体例は、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−δ−バレロラクトンである。
重合体(A)は、以下の式(1)に示す構造を有するα−メチレン−γ−ブチロラクトン単位を、構成単位として有することが好ましい。
式(1)におけるR1〜R4は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基である。
このような重合体(A)は、以下の式(2)に示すα−メチレン−γ−ブチロラクトンを含む単量体群の重合により形成できる。
式(2)におけるR1〜R4は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基である。
脂肪族炭化水素基は、例えばアルキル基、ベンジル基であり、当該基を構成する分子鎖が外的な力によって切断されにくく、より高い表面強度が得られることから、アルキル基が好ましい。また炭素数についても、当該基を構成する分子鎖が外的な力によって切断されにくく、より高い表面強度が得られること、ならびに高いガラス転移温度が実現できることから、1〜10の範囲が好ましく、1〜8の範囲がより好ましい。
アルキル基は直鎖でも分岐を有していてもよく、環状でもよい。アルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。なかでも、メチル基、エチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が、分子構造としての安定性が高く、この高い安定性に基づいてより高い表面強度が得られることから好ましい。
芳香族炭化水素基は特に限定されず、例えば複素環構造を含んでいてもよい。具体的な芳香族炭化水素基は、例えばフェニル基、トリル基であり、この場合、当該基を構成する分子鎖が外的な力によって切断されにくく、より高い表面強度が得られる。
即ち、式(1)におけるR1〜R4は、互いに独立して、水素原子、芳香族炭化水素基または炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。このとき、R1が芳香族炭化水素基または炭素数1〜10のアルキル基であり、R2〜R4が水素原子であることがより好ましく、重合体(A)がこのようなα−メチレンラクトン単位を構成単位として有することにより、高表面強度層の表面強度向上効果がより大きくなる。
なお、具体的な置換基の構造にもよるが、一般にα−メチレンラクトン単位の置換基(例えば式(1)におけるR1〜R4)に含まれる炭素数が増加するに従って、高表面強度層の疎水性が増大する(以下の表1参照)。このため、成形体表面に疎水性が求められる場合は、置換基に含まれる炭素数を大きくすればよい。なお、表1には、式(1)に示すα−メチレン−γ−ブチロラクトン単位(R2〜R4は水素原子、R1はメチル基、エチル基またはn−ヘキシル基)のホモポリマーからなる試験片(サイズ3cm×3cm、厚さ100μm)を24時間、水に浸漬させた後の重量増加率(吸水率:%)を示す。また、比較として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ならびに特許文献2に記載されているラクトン環構造(X)を有するアクリル樹脂(メタクリル酸メチル(MMA)と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)との重合環化物)からなる試験片(サイズ、厚さは上記と同じ)の吸水率(%)を示す。各試験片の吸水率は、式([浸漬後の試験片の重量]−[浸漬前の試験片の重量])/[浸漬前の試験片の重量]×100(%)により求めた。
重合体(A)は、本発明の効果が得られる限り、α−メチレンラクトン単位以外の構成単位を有していてもよい。このような構成単位は、例えば(メタ)アクリル酸エステル単位、スチレン単位、ビニルトルエン単位、α−メチルスチレン単位、アクリロニトリル単位、メチルビニルケトン単位、エチレン単位、プロピレン単位、酢酸ビニル単位である。
重合体(A)が(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有する場合、高表面強度層の基体への密着性向上が期待できる。
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチルなどの各(メタ)アクリル酸エステルの重合により形成される構成単位である。
重合体(A)が(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有する場合、重合体(A)はアクリル系重合体であるともいえる。
重合体(A)がα−メチレンラクトン単位以外の構成単位を有する場合、重合体(A)におけるα−メチレンラクトン単位の含有率は、通常2〜60重量%であり、5〜40重量%以上が好ましく、10〜30重量%以上がより好ましい。重合体(A)におけるα−メチレンラクトン単位の含有率が過度に小さいあるいは大きいと、十分な表面強度向上効果が得られなくなる。
重合体(A)は、α−メチレンラクトンを含む単量体群の重合により形成できる。重合方法は特に限定されず、公知の方法に従えばよい。
高表面強度層は、本発明の効果が得られる限り、重合体(A)以外の重合体を含んでいてもよい。このような重合体は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレンおよび酢酸ビニルから選ばれる少なくとも1種の単量体の重合により形成される(共)重合体である。
また、高表面強度層は、本発明の効果が得られる限り、重合体以外の任意の材料、例えば基体の説明において上述した安定剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤などを含んでいてもよい。
高表面強度層が、重合体(A)以外の重合体あるいは重合体以外の材料を含む場合、高表面強度層における重合体(A)の含有率は、通常60重量%以上であり、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。高表面強度層における重合体(A)の含有率が過度に小さいと、十分な表面強度が得られない。
高表面強度層の厚さは特に限定されず、20〜200μm程度が一般的である。当該厚さは20〜150μmが好ましく、40〜120μmがより好ましい。高表面強度層の厚さが過度に小さくなると、十分な表面強度が得られない。一方、高表面強度層の厚さが過度に大きくなると、基体に由来して本来得られるはずの特性、例えばポリカーボネートを主成分とする基体に由来して本来得られるはずの耐衝撃性が、当該層が露出した部分において失われることがある。
高表面強度層の形成方法は特に限定されず、重合体(A)の種類および重合体(A)以外に含まれる材料によって適宜選択できる。例えば、重合体(A)を含む溶液を基体の表面に塗布し、得られた塗布膜を乾燥して高表面強度層としてもよいし、後に基体の表面に配置することを前提として、公知のフィルムまたはシート形成方法により、フィルムまたはシートである高表面強度層を形成してもよい。
[成形体]
本発明の熱可塑性樹脂成形体の具体的な形状、構造は、熱可塑性樹脂を主成分とする基体の表面に高表面強度層が配置されており、当該高表面強度層が露出している限り、特に限定されない。高表面強度層は、その少なくとも一部分が露出していればよい。また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、基体および高表面強度層以外の任意の部材あるいは層を備えていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の具体的な形状、構造は、熱可塑性樹脂を主成分とする基体の表面に高表面強度層が配置されており、当該高表面強度層が露出している限り、特に限定されない。高表面強度層は、その少なくとも一部分が露出していればよい。また、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、基体および高表面強度層以外の任意の部材あるいは層を備えていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の形状は、例えば、フィルムまたはシートである基体の表面に高表面強度層が配置された積層体(積層フィルムあるいは積層シート)である。この場合、高表面強度層は、典型的には最外層に位置する。また、この場合、一対の高表面強度層によって、基体が挟持されていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の形成方法は特に限定されない。例えば、個別に形成した基体と高表面強度層とを積層し、両者を加熱圧着する方法、個別に形成した基体と高表面強度層とを積層し、両者を接着剤により接着する方法、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物と重合体(A)を含む樹脂組成物とを共押出成形する方法、予め形成しておいた高表面強度層を用いて、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物をインモールド成形する方法、などの各種の方法を適用できる。積層フィルムまたは積層シートである成形体を得る場合、製造コストおよび生産性の観点からは、共押出成形による成形体の形成が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の用途は特に限定されない。一例として、ポリカーボネートを主成分とする基体を備える本発明の成形体は、ポリカーボネートが有する高い耐衝撃性ならびに高表面強度層に基づく高い表面強度に着目すると、例えば、自動販売機カバー、照明カバーなどのカバー類;看板、道路透光板、防音壁、採光板、道路シェルター、カーポートなどの土木建築材料類;建築あるいは車両用のグレージング材;バスタブなどの設備材;ガーニッシュなど、車両の内装または外装部品;各種の家庭用品に使用されるシート;食品あるいは医薬品などに用いる包装材料;などに好適である。また、フィルムまたはシートである当該成形体は、液晶ディスプレー、有機ELディスプレー、プラズマディスプレーなどの画像表示装置に使用する前面板として好適である。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置の構成は、フィルムまたはシートである本発明の熱可塑性樹脂成形体と、画像表示装置本体とを備え、熱可塑性樹脂成形体が、光学的に透明な熱可塑性樹脂を主成分とする基体を備え、当該成形体が有する高表面強度層が、成形体における画像表示装置本体に面する面とは反対側の面に露出している限り、特に限定されない。
本発明の画像表示装置の構成は、フィルムまたはシートである本発明の熱可塑性樹脂成形体と、画像表示装置本体とを備え、熱可塑性樹脂成形体が、光学的に透明な熱可塑性樹脂を主成分とする基体を備え、当該成形体が有する高表面強度層が、成形体における画像表示装置本体に面する面とは反対側の面に露出している限り、特に限定されない。
光学的に透明な熱可塑性樹脂は、例えばポリカーボネートである。
本発明の熱可塑性樹脂成形体がポリカーボネートを主成分とする基体を備える場合、当該成形体を備える本発明の画像表示装置では、ポリカーボネートに由来する高い耐衝撃性および高表面強度層に由来する高い表面強度を有する上記成形体によって、外部からの異物の接触、衝突などに対する画像表示装置本体の保護が確実となる。
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
最初に、本実施例において作製した重合体およびポリカーボネート成形体の評価方法を示す。
[重合体の重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件に従って求めた。
測定システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
測定側カラム構成:東ソー製、TSK-GEL super HZM-M 6.0X150、2本直列接続
東ソー製、TSK-GEL super HZ-L 4.6X35、1本
リファレンス側カラム構成:東ソー製、TSK-GEL SuperH-RC 6.0X150、2本直列接続
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件に従って求めた。
測定システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
溶媒流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
測定側カラム構成:東ソー製、TSK-GEL super HZM-M 6.0X150、2本直列接続
東ソー製、TSK-GEL super HZ-L 4.6X35、1本
リファレンス側カラム構成:東ソー製、TSK-GEL SuperH-RC 6.0X150、2本直列接続
[重合体のガラス転移温度]
重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
[ポリカーボネート成形体の表面強度]
ポリカーボネート成形体の表面強度は、鉛筆硬度として、JIS K5400の8.4節に準拠して求めた。ただし、試験時の負荷荷重は、各実施例、比較例に記載した値とした(JIS K5400が指定する負荷荷重は1.0kgである)。鉛筆硬度の測定には、安田精機製作所製の鉛筆引っかき硬度試験機を用いた。
ポリカーボネート成形体の表面強度は、鉛筆硬度として、JIS K5400の8.4節に準拠して求めた。ただし、試験時の負荷荷重は、各実施例、比較例に記載した値とした(JIS K5400が指定する負荷荷重は1.0kgである)。鉛筆硬度の測定には、安田精機製作所製の鉛筆引っかき硬度試験機を用いた。
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、20重量部のα−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、80重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、酸化防止剤として0.02重量部のn−ドデシルメルカプタン、および重合溶媒として100重量部のメチルエチルケトンを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.2重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)を添加し、80℃の環流下で7時間、重合を進行させ、α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン単位とMMA単位とを構成単位として有する重合体(A−1)を得た。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、20重量部のα−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、80重量部のメタクリル酸メチル(MMA)、酸化防止剤として0.02重量部のn−ドデシルメルカプタン、および重合溶媒として100重量部のメチルエチルケトンを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.2重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)を添加し、80℃の環流下で7時間、重合を進行させ、α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン単位とMMA単位とを構成単位として有する重合体(A−1)を得た。
得られた重合体(A−1)の重量平均分子量は8.7万、Tgは128℃であった。
α−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトンの構造を、以下の式(3)に示す。
重合体(A−1)におけるα−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトン単位の含有率は、重合に用いたMMAおよびα−メチレン−γ−メチル−γ−ブチロラクトンの量から計算して、およそ20重量%である。
(製造例2)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、20重量部のα−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、80重量部のMMA、酸化防止剤として0.015重量部のn−ドデシルメルカプタン、および重合溶媒として100重量部のメチルエチルケトンを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.2重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)を添加し、80℃の環流下で7時間、重合を進行させ、α−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトン単位とMMA単位とを構成単位として有する重合体(A−2)を得た。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、20重量部のα−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、80重量部のMMA、酸化防止剤として0.015重量部のn−ドデシルメルカプタン、および重合溶媒として100重量部のメチルエチルケトンを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.2重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)を添加し、80℃の環流下で7時間、重合を進行させ、α−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトン単位とMMA単位とを構成単位として有する重合体(A−2)を得た。
得られた重合体(A−2)の重量平均分子量は11.2万、Tgは126℃であった。
α−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトンの構造を、以下の式(4)に示す。
重合体(A−2)におけるα−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトン単位の含有率は、重合に用いたMMAおよびα−メチレン−γ−エチル−γ−ブチロラクトンの量から計算して、およそ20重量%である。
(製造例3)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、20重量部のα−メチレン−γ−n−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、80重量部のMMA、酸化防止剤として0.015重量部のn−ドデシルメルカプタン、および重合溶媒として100重量部のメチルエチルケトンを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.2重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)を添加し、80℃の環流下で7時間、重合を進行させ、α−メチレン−γ−n−ヘキシル−γ−ブチロラクトン単位とMMA単位とを構成単位として有する重合体(A−3)を得た。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、20重量部のα−メチレン−γ−n−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、80重量部のMMA、酸化防止剤として0.015重量部のn−ドデシルメルカプタン、および重合溶媒として100重量部のメチルエチルケトンを仕込み、これに窒素を通じつつ、80℃まで昇温させた。昇温に伴う環流が始まったところで、重合開始剤として0.2重量部の2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)を添加し、80℃の環流下で7時間、重合を進行させ、α−メチレン−γ−n−ヘキシル−γ−ブチロラクトン単位とMMA単位とを構成単位として有する重合体(A−3)を得た。
得られた重合体(A−3)の重量平均分子量は9.5万、Tgは92℃であった。
α−メチレン−γ−n−ヘキシル−γ−ブチロラクトンの構造を、以下の式(5)に示す。
重合体(A−3)におけるα−メチレン−γ−n−ヘキシル−γ−ブチロラクトン単位の含有率は、重合に用いたMMAおよびα−メチレン−γ−n−ヘキシル−γ−ブチロラクトンの量から計算して、およそ20重量%である。
(製造例4)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、40重量部のMMA、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)を添加するとともに、トルエン3.34重量部に0.06重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに5時間の加温、熟成を行った。
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、40重量部のMMA、10重量部の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、および重合溶媒として50重量部のトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤として0.03重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)を添加するとともに、トルエン3.34重量部に0.06重量部のt−アミルパーオキシイソノナノエートを溶解した溶液を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに5時間の加温、熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として0.1重量部のリン酸オクチル/ジオクチル混合物を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、以下の式(6)に示すラクトン環構造(X)を形成するための環化縮合反応を進行させた。
次に、得られた重合溶液を減圧下、240℃で1時間乾燥させて、式(6)に示すラクトン環構造(X)を主鎖に有するアクリル重合体(B)を得た。
得られた重合体(B)の重量平均分子量は13.2万、Tgは130℃であった。なお、重合体(B)におけるラクトン環構造(X)の含有率は、重合に用いたMMAおよびMHMAの量から計算して、およそ40重量%である。
(実施例1)
製造例1で作製した重合体(A−1)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約100μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、基体である厚さ1mmのポリカーボネートシートにおける一方の主面上に配置した後、両者を温度130℃で熱融着させて、表面に重合体(A−1)からなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重500gおよび1.0kgで実施した。
製造例1で作製した重合体(A−1)を、プレス成形機により250℃でプレス成形して厚さ約100μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、基体である厚さ1mmのポリカーボネートシートにおける一方の主面上に配置した後、両者を温度130℃で熱融着させて、表面に重合体(A−1)からなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重500gおよび1.0kgで実施した。
なお、基体として用いたポリカーボネートシート表面の鉛筆硬度を、試験時の負荷荷重を1.0kgとしてJIS K5400に準拠して求めたところ、4Bであった。
(実施例2)
重合体(A−1)の代わりに、製造例2で作製した重合体(A−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面に重合体(A−2)からなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重500gおよび1.0kgで実施した。
重合体(A−1)の代わりに、製造例2で作製した重合体(A−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面に重合体(A−2)からなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重500gおよび1.0kgで実施した。
(実施例3)
重合体(A−1)の代わりに、製造例3で作製した重合体(A−3)を用い、熱融着の温度を100℃とした以外は実施例1と同様にして、表面に重合体(A−3)からなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重500gで実施した。
重合体(A−1)の代わりに、製造例3で作製した重合体(A−3)を用い、熱融着の温度を100℃とした以外は実施例1と同様にして、表面に重合体(A−3)からなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重500gで実施した。
(比較例1)
ポリメタクリル酸メチル(住友化学製、スミペックスEX)を、プレス成形機により200℃でプレス成形して厚さ約100μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、実施例1で用いたポリカーボネートシートにおける一方の主面上に配置した後、両者を温度130℃で熱融着させて、表面にポリメタクリル酸メチルからなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重1.0kgで実施した。
ポリメタクリル酸メチル(住友化学製、スミペックスEX)を、プレス成形機により200℃でプレス成形して厚さ約100μmのフィルムとした。次に、作製したフィルムを、実施例1で用いたポリカーボネートシートにおける一方の主面上に配置した後、両者を温度130℃で熱融着させて、表面にポリメタクリル酸メチルからなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重1.0kgで実施した。
(比較例2)
重合体(A−1)の代わりに、製造例4で作製した重合体(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面に重合体(B)からなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重500gおよび1.0kgで実施した。
重合体(A−1)の代わりに、製造例4で作製した重合体(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面に重合体(B)からなるフィルムが露出するように配置されたポリカーボネートシートを得た。得られたポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、負荷加重500gおよび1.0kgで実施した。
実施例1〜3および比較例1〜2で作製した各ポリカーボネートシートの鉛筆硬度測定結果を以下の表2に示す。なお、ポリカーボネートシートに対する鉛筆硬度の測定は、各シートにおけるフィルム露出面に対して行った。
表2に示すように、各実施例では、α−メチレンラクトン単位の含有率が約20重量%と、比較例2におけるラクトン環構造(X)の含有率約40重量%よりも大幅に少ないにもかかわらず、同等もしくはより高い表面強度を有するポリカーボネート成形体を実現できた。上記含有率を考えると、α−メチレンラクトン単位がα−メチレン−γ−n−ヘキシル−γ−ブチロラクトン単位の場合(実施例3)においても、重合体(A)における当該単位の含有率を増加させれば、比較例2以上の表面強度が実現できると考えられる。
また、負荷加重が1.0kgのときの基体の鉛筆硬度は4Bであり、比較例1ではH、比較例2では3Hまでしか向上できなかったが、実施例1、2では、それを上回る4Hまで向上できた。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、従来の熱可塑性樹脂成形体と同じ用途に使用できる。例えば、ポリカーボネートを主成分とする基体を備える本発明の熱可塑性樹脂成形体は、画像表示装置において、外部からの異物の接触、衝突などに対して画像表示装置本体を保護する前面板として好適である。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂を主成分とし、JIS K5400に準拠して測定した表面の鉛筆硬度がH未満である基体の表面に、α−メチレンラクトン単位を構成単位として有する重合体(A)を含む高表面強度層が配置されており、
前記高表面強度層が露出している、熱可塑性樹脂成形体。 - 前記脂肪族炭化水素基がアルキル基である請求項2に記載の熱可塑性樹脂成形体。
- 前記重合体(A)が、(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有する請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体。
- JIS K5400に準拠して測定した、前記基体の表面の鉛筆硬度が3B以下であり、当該表面に配置された前記高表面強度層の表面の鉛筆硬度が4H以上である請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ゴム強化スチレン系樹脂および塩化ビニルから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートである請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体と画像表示装置本体とを備え、
前記熱可塑性樹脂成形体が、光学的に透明な熱可塑性樹脂を主成分とする前記基体を備えるフィルムまたはシートであり、
前記成形体が有する前記高表面強度層が、前記成形体における前記画像表示装置本体に面する面とは反対側の面に露出している画像表示装置。
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2009
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