JP2010177413A - 発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発熱部品と冷却器とをろう付け接合することによって製造される冷却装置において、高い熱疲労耐久性を有する発熱部品冷却装置の製造に用いられる熱応力緩和材として好適な、面接合性に優れたアルミニウム・クラッド材を製造する方法を提供する。
【解決手段】心材20の片面或いは両面にAl−Si系合金ろう材からなる皮材22をクラッドしたアルミニウム・クラッド材16において、心材20が、不可避的不純物の含有量を0.1質量%以下とした、アルミニウム純度が99.9質量%以上の高純度アルミニウムからなる発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材を、熱間合わせ圧延操作により製造する。
【選択図】図3

Description

本発明は、発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材、特に、弗化物系フラックスを用いるろう付け、又は真空ろう付け等の、ろう付け接合により製造される発熱部品冷却装置において、発熱部品と冷却器(ヒートシンクの場合もあり)を接合する部材として、好適に使用されるアルミニウム・クラッド材を製造する方法に関するものである。
従来から、発熱部品冷却装置は、半導体素子や集積回路等の発熱部品と、冷却水通路とヘッダー(必要に応じてフィン)とを組み合わせてなる熱交換器等の構造の冷却器とから構成され、それら発熱部品と熱交換器等の冷却器との間は、はんだ付けやろう付けによって接合されている。具体的には、発熱部品冷却装置の一つである半導体素子冷却装置においては、例えば、図1に示される如く、冷却器たる熱交換器2に対して、発熱部品である半導体素子4が、はんだ(ろう)6により接合されて、かかる熱交換器2内に設けられた冷却水通路8内を流通せしめられる冷却水によって、半導体素子4が冷却されるようになっている。
しかしながら、そのような従来の発熱部品冷却装置にあっては、半導体素子や集積回路等の発熱部品と熱交換器等の冷却器との間の温度差や線膨張係数の差により、熱ひずみが生じ、半導体素子や集積回路、熱交換器のそれぞれに、繰り返し熱応力が作用することとなる結果、熱疲労による割れが惹起され、甚だしい場合にあっては、集積回路の機能が損なわれることとなったり、熱交換器から冷媒の漏洩を生じることがあった。また、半導体素子の場合には、半導体素子と熱交換器との間の膨張率の差によって破壊され、その機能が失われる場合もあったのである。
尤も、それら半導体素子や集積回路等の発熱部品と熱交換器等の冷却器とを接合するはんだやろうは、熱応力緩和材として有効であることが知られているのであるが(非特許文献1)、そのような半導体素子や集積回路等の発熱部品と熱交換器等の冷却器との間の温度差や熱膨張係数の差が大きい場合にあっては、その効果は充分でなく、前記した問題を惹起することとなるものであった。
一方、特許文献1においては、半導体素子や集積回路等の発熱部品とヒートシンクとの間に、純度99重量%以上のアルミニウム箔を介装して、それらを接合することにより、かかるアルミニウム箔を熱応力緩和材として用いるようにした構造が、提案されている。しかしながら、この場合において、アルミニウム箔の表面には、Al−Si合金等をコーティングしたり、又は蒸着したりして、半導体素子や集積回路とヒートシンクとの接合のためのAl融点降下層を設ける必要があるところ、そのようなAl融点降下層を設けた場合にあっても、アルミニウム箔と半導体素子や集積回路との間や、アルミニウム箔とヒートシンクとの間の接合に対し、ろう量が充分でないために、充分な接合を実現することが出来ず、それらの間に、すきまが生じてしまい、その結果、冷却性能が低下する場合が生じていた。
特開平10−270596号公報
社団法人軽金属溶接構造協会発行「アルミニウムブレージングハンドブック」(改訂版)第252〜261頁
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、半導体素子や集積回路等の発熱部品と熱交換器の如き冷却器との間をろう付け接合することによって製造される発熱部品冷却装置において、高い熱疲労耐久性を有する発熱部品冷却装置の製造に用いられる熱応力緩和材として好適な、面接合性に優れたアルミニウム・クラッド材の製造方法を提供することにある。
そして、本発明は、上記した課題、又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
(1) 心材の片面或いは両面に、Al−Si系合金ろう材からなる皮材をクラッドしたアルミニウム・クラッド材であって、該心材が、不可避的不純物の含有量を0.1質量%以下とした、アルミニウム純度が99.9質量%以上の高純度アルミニウムからなる発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材を製造する方法にして、
前記高純度アルミニウムからなる第一の部材と、前記ろう材からなる第二の部材とを用い、該第一の部材の片面或いは両面に該第二の部材を重ね合わせた後、熱間圧延を行なうことを特徴とする発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
(2) 前記熱間圧延が、前記第一及び第二の部材を相互に接合する前段の工程と、それら部材の接合物を目標とする板厚にまで圧延する後段の工程とを含み、且つ該前段工程における圧延速度が、該後段工程における圧延速度よりも低くなるようにした上記態様(1)に記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
(3) 前記熱間圧延の開始温度:T(℃)と開始速度:V(m/分)とが、次式:
V<(T−400)/15
を満たすように、前記熱間圧延が実施される上記態様(1)又は(2)に記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
(4) 前記熱間圧延の開始温度が、500℃以上である上記態様(1)乃至(3)の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
(5) 前記アルミニウム・クラッド材が、0.5mmを超え、3mm以下の厚さを有している上記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
(6) 前記心材が、不可避的不純物の含有量を0.01質量%以下とした、アルミニウム純度が99.99質量%以上の高純度アルミニウムからなることを特徴とする上記態様(1)乃至(5)の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
(7) 前記心材が、不可避的不純物の含有量を0.001質量%以下とした、アルミニウム純度が99.999質量%以上の高純度アルミニウムからなることを特徴とする上記態様(1)乃至(5)の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
(8) 前記皮材のクラッド厚さが、0.005mm〜0.1mmである上記態様(1)乃至(7)の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
このように、本発明に従う発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法にあっては、その心材を与える高純度アルミニウムが、ろう材に比べて、引張強さ及び耐力が極めて小さく、延性が高い特徴を有しているところから、そのような高純度アルミニウムをクラッド材の芯に使用することによって、高い熱ひずみ緩和特性が発揮され得ることとなるのであり、また、そのような高純度アルミニウム心材の片面或いは両面に所定厚さのろう材層を配して、アルミニウム・クラッド材とすることによって、半導体素子や集積回路等の発熱部品と高純度アルミニウムとの接合面や、高純度アルミニウムと熱交換器の如き冷却器の接合面には、充分なろう材が供給され得るようになるのであり、以て、良好な面接合性が得られることとなるのである。
また、かかる本発明に従う発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法によれば、高純度アルミニウム部材とAl−Si系合金ろう部材とを重ね合わせて熱間圧延することにより、生産性良く、また、有利に製造することが出来るものであるが、特に、熱間圧延の開始温度を500℃以上とすることによって、それら二つの部材間の変形抵抗差が小さくなり、クラッド圧延性が有利に向上せしめられ得ることとなる。
従来の半導体素子冷却装置の一例を示す断面説明図である。 本発明にて対象とするアルミニウム・クラッド材を用いて得られた半導体素子冷却装置の一例を示す断面説明図である。 本発明にて対象とするアルミニウム・クラッド材の一例を示す断面説明図である。
ここにおいて、図2には、本発明に従って得られる発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材を用いて接合されてなる、発熱部品冷却装置の一つである半導体素子冷却装置の一例が、図1に対応する断面形態において、概略的に示されている。そこにおいて、半導体素子冷却装置10は、冷却器の一つである、従来と同様な構造の熱交換器12に対して、発熱部品の一つである半導体素子14が、アルミニウム・クラッド材16を介して接合されているのである。なお、熱交換器12には、従来と同様に、冷却水通路18が配設されており、この冷却水通路18内を冷却水が流通せしめられることによって、半導体素子14の冷却が行なわれるようになっている。
また、そこで、クラッド材16は、図3に示される如く、板状の心材20の両面に、所定厚さのろう材22、22が、一体的に設けられてなる構造を有しており、このクラッド材16が熱交換器12の所定の部位に配置され、更にその上に、半導体素子14が配置せしめられた状態下において、加熱されることにより、かかるろう材22を溶融せしめ、以て、心材20を介して、熱交換器12に対して、半導体素子14が一体的に接合されているのである。
ところで、かくの如く、熱交換器12と半導体素子14との接合に用いられるアルミニウム・クラッド材16において、それを構成する心材20は、本発明に従って、不可避的不純物の含有量を0.1質量%以下とした、アルミニウム純度が99.9質量%以上の純アルミニウム(高純度アルミニウム)を、その材質としていることにより、熱応力の緩和が有効に行なわれ得るようになっている。即ち、かかる心材20を与える高純度アルミニウムは、ろう材に比べて、引張強さ及び耐力が極めて小さく、延性が高い特徴を有しており、例えば、99.99質量%Al心材にあっては、引張強さ:30MPa、伸び:30%であって、ろう材の引張強さ:140MPa及びろう材の伸び:10%に比べて、優れた特徴を有しているのである。このため、そのような高純度アルミニウムをクラッド材の心材に用いることによって、高い熱ひずみ緩和性が得られることとなるのである。なお、アルミニウム純度が99.9質量%未満では、そのような効果が充分でなく、熱応力緩和性能が低下することとなる。また、かかるアルミニウム純度は、より好ましくは99.99質量%以上(不可避的不純物の含有量は0.01質量%以下)であり、更に好ましくは99.999質量%以上(不可避的不純物の含有量は0.001質量%以下)である。
また、かかる高純度アルミニウムにおいて、アルミニウムを除く残余の成分は、不可避的不純物であって、精錬方法に応じて、各種の元素が不可避的に存在することとなるのであるが、そのような不可避的不純物は、合計量において、0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0.001質量%以下となるように、調整される。そして、そのような不可避的不純物は、例えば、99.9質量%の高純度アルミニウムにあっては、通常、Fe、Si、Ti、V、Zr、Ga等が10ppm程度或いはそれ以下、更にMnやZn等が数ppm程度若しくはそれ以下の割合とされている。また、99.99質量%の高純度アルミニウムの場合にあっては、Fe、Si、Cu等が数ppm程度若しくはそれ以下の割合で含有され、更に、99.999質量%の高純度アルミニウムにあっては、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Cr、Zn、Ti等が、それぞれ1ppm程度或いはそれ以下の割合で含有されているものである。
なお、かくの如き高純度アルミニウムは、公知の各種の精錬手法に従って得ることが可能であり、例えば、99.9質量%の高純度アルミニウムは、通常の電解精錬法で得られたアルミニウム地金を用いて、分別結晶法(ペシネー法)により、その純度を高めることで、得ることが出来る。また、99.99質量%の高純度アルミニウムは、通常の電解精錬法で得られたアルミニウム地金を用いて、三層電解法により、その純度を高めることで、得ることが出来、更に、99.999質量%の高純度アルミニウムは、上記した三層電解法で得られた高純度地金を用いて、一方向凝固法やゾーンメルティング法によって、その純度を高めることで、得ることが可能である。
そして、そのような高純度アルミニウムからなる心材20の厚さとしては、0.5mmを超え、3mm以下の厚さが採用され、特に、0.6mm以上2mm以下の厚さが、有利に採用されることとなる。なお、心材厚さが0.5mm以下となると、熱ひずみ緩和性が不十分となり、半導体素子冷却装置10の特性に悪影響をもたらすこととなり、また、3mmを超えるようになると、冷却性能が低下する等の問題を惹起することとなる。
さらに、アルミニウム・クラッド材16における他の一つの構成成分たる皮材22は、Al−Si系合金ろう材を材質とするものであって、そのようなAl−Si系合金ろう材としては、Al−Si系やAl−Si−Mg系等の、公知の4000系合金ろう材を用いることが出来、例えば、Si:4〜13質量%のAl−Si系合金ろう材や、それに、更にMg:0.1〜2.0質量%を含有せしめてなるAl−Si−Mg系合金ろう材を挙げることが出来る。また、そのようなAl合金ろう材には、Cu、ZnやSr等の各種元素の少なくとも1種を更に添加した、公知のろう材を用いることも出来、そこでは、例えば、Cuは5質量%程度以下において、Znは8質量%程度以下において、更に、Feは2質量%程度以下において添加され、更にその他の元素として、Sr:0.005〜0.1質量%程度、Bi:0.2質量%程度以下、Be:0.1質量%程度以下、In:0.001〜0.05質量%程度、Sn:0.001〜0.005質量%程度、Na:1〜100ppm程度において、それぞれ必要に応じて添加される。
そして、かかるAl合金ろう材からなる皮材22は、図3に示される如く、心材20の両側の面に、所定厚さにおいて一体的に設けられる他、そのような心材20の一方の側の面に対してのみ設けて、一体的なクラッド材とすることも可能である。また、そこで、心材20の片面或いは両面にクラッドされる皮材22の厚さとしては、一般に、0.005mm以上0.1mm以下が有利に採用され、そのような厚さの皮材22が、心材20の少なくとも一方の面に一体的に設けられて、クラッド材16とされるのである。かかる皮材22の厚さが0.005mm未満となると、熱交換器12と半導体素子14との間のろう付けが不良となり易く、良好な接合を得ることが困難となるからであり、また0.1mmを超えるようになると、余ったろう材が接合部以外に流れ出し、冷却装置の機能が損なわれる場合が生じるからである。
このように、高純度アルミニウムからなる心材20の片面或いは両面に、Al−Si系合金ろう材からなる皮材22をクラッドしてなるアルミニウム・クラッド材16を用い、これを熱交換器12と半導体素子14との間に配置して、加熱、ろう付けを行なうことによって、熱交換器12と心材20との接合面や、半導体素子14と心材20との接合面には、充分なろう材が供給されることとなり、以て、良好な面接合性が得られ、そしてそれによって、高純度アルミニウムからなる心材20による、それら熱交換器12と半導体素子との間の高い熱ひずみ緩和作用が、効果的に発揮され得ることとなる。
ところで、かくの如き本発明にて対象とされるアルミニウム・クラッド材16を製造するに際しては、熱間合わせ圧延操作が、採用されるのである。そして、そのような熱間合わせ圧延操作においては、前記高純度アルミニウムからなる第一の部材と、前記Al合金ろう材からなる第二の部材とを用い、かかる第一の部材の片面或いは両面に第二の部材を重ね合わせた後、熱間圧延を行ない、以て、第一の部材から構成される心材20に対して、第二の部材からなる皮材22が一体的に接合されてなるクラッド材16が、所定厚さにおいて形成されるのである。
なお、このような熱間合わせ圧延においては、高純度アルミニウムからなる第一の部材と、所定のAl合金ろう材からなる第二の部材との間の変形抵抗差が大きく、通常の熱間合わせ圧延操作では、第一の部材と第二の部材との間にすべりが生じて、それら二つの部材が接合され難いものであるところから、目的とするクラッド材(16)の製造に際しては、熱間圧延時の圧延速度を5m/分以下程度と、極端に低くする必要がある。
このため、本発明にあっては、有利には、重ね合わされた第一の部材と第二の部材とを相互に接合する、熱間圧延開始の1パス目から数パス目まで(前段の工程)においては、通常材の熱間圧延に比べて低速で圧延する一方、それら第一及び第二の部材が接合された後(後段の工程)においては、通常の圧延操作と同様な速い圧延速度で、それら部材の接合物を、目標とする板厚にまで熱間圧延するようにされる。蓋し、最初の数パスにおける圧延速度を高速にし過ぎると、第一の部材と第二の部材が上手く接合出来ず、第二の部材が剥がれてしまって、良好なクラッド材を得ることが困難となるからであり、また、一見良好なクラッド材が得られたように見えても、ろう付け加熱途中で心材と皮材の未接合部分において膨れが発生し、良好なろう付け接合が得られない場合もあるからである。このため、本発明においては、前段工程における圧延速度が、後段工程における圧延速度よりも低くなるように、熱間合わせ圧延操作を実施することが推奨されるのである。
また、本発明に従う熱間合わせ圧延操作においては、熱間圧延の開始温度:T(℃)と熱間圧延の開始速度:V(m/分)とが、次式:
V<(T−400)/15
を満たすように実施されることが望ましく、これによって、目的とするクラッド材16を与える熱間合わせ圧延材が、有利に製造されることとなる。
特に、本発明にあっては、かくの如き熱間合わせ圧延に際して、その熱間圧延開始温度を高めることが推奨され、これによって、高純度アルミニウムからなる心材(20)と、所定のAl合金ろう材からなる皮材(22)との間の変形抵抗差が小さくなって、クラッド圧延性が有利に向上せしめられ得るのである。なお、好ましい熱間圧延開始温度としては、500℃以上である。これに反して、500℃未満となると、皮材と心材の変形抵抗が異なるため、皮材が反ってしまい、健全なクラッド部材が得られ難くなるのである。熱間圧延開始温度の上限は、一般に、570℃程度とされることとなる。そのような温度を超えると、ろう材の局部溶融により、表面に熱間割れを生じ、このため、健全なクラッド部材を得ることが困難となるからである。
そして、かくの如く、熱間合わせ圧延操作にて得られたクラッド部材(熱間圧延材)には、更に必要に応じて、冷間圧延等の操作や、従来から公知の処理が施されて、目的とする厚さのアルミニウム・クラッド材16が、形成されることとなる。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
−クラッド圧延性の評価−
純度が99.5%(質量基準。以下同じ)、99.9%、99.99%、又は99.999%である心材用Al、及びJIS A4004のろう材用Al合金を、それぞれ、通常の連続鋳造法により造塊し、そして、心材用の鋳塊については600℃×3時間の均質化処理を、またろう材用の鋳塊については500℃×1時間の均質化処理を、それぞれ施す一方、ろう材用Al合金の鋳塊については、更に熱間圧延を行なって、所定の厚さ(約1.5mm)の板材(第二の部材)を得た。
次いで、かかるろう材用Al合金からなる板材(第二の部材)を、前記得られた心材用Alからなる厚さ27mmの鋳塊(第一の部材)の両面に配置して、合わせて厚さ30mmとし、下記表1に示される各種圧延条件下で、熱間合わせ圧延を行ない、クラッド圧延性を評価した。なお、圧延速度に関して、前段工程の圧延速度は1〜5パス目までの速度であり、後段工程の圧延速度は6パス目以降の速度である。また、クラッド圧延性の評価は、得られた熱間圧延クラッド材において、心材とろう材とが相互に接合されているか、どうかにおいて判断し、心材とろう材が一体的に緊密に接合されている場合に○印を、心材とろう材が未接合の状態にある場合に×印を、それぞれ付した。
そして、そのようなクラッド圧延性の評価結果が、下記表1に併せ示されているが、かかる表1における結果の対比から明らかな如く、圧延開始温度を500℃以上とすることにより、クラッド圧延性が有利に向上せしめられ得ることが認められる。
Figure 2010177413
また、上記で得られた各熱間圧延クラッド材をそれぞれ冷間圧延して、その全体の厚さが1.00mmのアルミニウム・クラッド材(16)を得た。なお、このクラッド材(16)におけるクラッド構成は、心材(20)の厚さが0.90mmであり、皮材(22)のそれぞれの厚さが0.05mm(クラッド率として5%)であった。
−ろう付け性の評価−
上記において、純度が99.99質量%の高純度アルミニウムからなる心材(20)を用いて得られたクラッド材(20mm×20mm×1mmt)と、アルミニウム合金(A3003)板材(50mm×50mm×1mmt)とを重ね合わせ、カーボン治具で固定した後、真空ろう付けを行なった。なお、このろう付け時の到達真空度(圧力)は、5×10-5torr以下、最高到達温度は600℃とし、更に、かかる到達温度における保持時間は3分とした。
また、比較のために、純度が99.99%のアルミニウム板(20mm×20mm×1mmt)を用い、その表面にノコロックSilフラックス(ノコロックフラックス:平均粒径20μmのSi粉末=3:1)と合成樹脂バインダの混合物を塗布したものと、アルミニウム合金(A3003)板材(50mm×50mm×1mmt)とを重ね合わせ、カーボン治具で固定した後、窒素ガス雰囲気中でろう付けを行なった。なお、上記の混合物の塗布量は、フラックスとSi粉末を合わせた重量として10〜15g/m2 とし、酸素濃度は100ppm以下、最高到達温度は600℃、到達温度における保持時間は3分とした。
そして、上記のろう付け操作にて得られた二種のろう付け物について、そのろう付け後の重ね合わせ部を超音波探傷し、接合部を二次元マッピングした画像を解析することにより、面接合率を求め、その結果を、下記表2に示した。この表2の結果よりして、本発明に従うクラッド材を用いた場合にあっては、従来のろう材を単に付与したものに比べて、面接合率が高く、効果的な接合面を形成していることが認められる。
Figure 2010177413
−熱応力緩和性の評価−
上記で得られたアルミニウム純度が異なる各種のアルミニウム心材(20)と、アルミニウム合金ろう材(A4004)からなる皮材(22)とにて構成されるクラッド材(16)を用いて、熱応力緩和性を評価した。なお、アルミニウム純度が99.9%のアルミニウム心材(20)の片面に対して、アルミニウム合金ろう材(A4004)からなる皮材(22)が設けられてなるクラッド材(16)にあっては、その一つの皮材(22)の厚さが0.05mmとなるようにされている。そして、ぞれぞれのクラッド材(16)について、その熱応力緩和性を、それぞれの心材(20)の機械的特性により評価し、素子(14)の温度上昇を想定した150℃における耐力が25MPa以下であれば○、それを超えた時に×として、その結果を、下記表3に示した。
Figure 2010177413
かかる表3の結果から明らかな如く、クラッド材(16)を与える心材(20)におけるアルミニウム純度を99.9%以上とすることにより、優れた熱応力緩和性を有していることが認められた。
2,12 熱交換器(冷却器)
4,14 半導体素子
6 はんだ(ろう)
8,18 冷却水通路
10 半導体素子冷却装置
16 クラッド材
20 心材
22 ろう材

Claims (8)

  1. 心材の片面或いは両面に、Al−Si系合金ろう材からなる皮材をクラッドしたアルミニウム・クラッド材であって、該心材が、不可避的不純物の含有量を0.1質量%以下とした、アルミニウム純度が99.9質量%以上の高純度アルミニウムからなる発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材を製造する方法にして、
    前記高純度アルミニウムからなる第一の部材と、前記ろう材からなる第二の部材とを用い、該第一の部材の片面或いは両面に該第二の部材を重ね合わせた後、熱間圧延を行なうことを特徴とする発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
  2. 前記熱間圧延が、前記第一及び第二の部材を相互に接合する前段の工程と、それら部材の接合物を目標とする板厚にまで圧延する後段の工程とを含み、且つ該前段工程における圧延速度が、該後段工程における圧延速度よりも低くなるようにした請求項1に記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
  3. 前記熱間圧延の開始温度:T(℃)と開始速度:V(m/分)とが、次式:
    V<(T−400)/15
    を満たすように、前記熱間圧延が実施される請求項1又は請求項2に記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
  4. 前記熱間圧延の開始温度が、500℃以上である請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
  5. 前記アルミニウム・クラッド材が、0.5mmを超え、3mm以下の厚さを有している請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
  6. 前記心材が、不可避的不純物の含有量を0.01質量%以下とした、アルミニウム純度が99.99質量%以上の高純度アルミニウムからなることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
  7. 前記心材が、不可避的不純物の含有量を0.001質量%以下とした、アルミニウム純度が99.999質量%以上の高純度アルミニウムからなることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
  8. 前記皮材のクラッド厚さが、0.005mm〜0.1mmである請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載の発熱部品冷却装置用アルミニウム・クラッド材の製造方法。
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