JP5079198B2 - アルミニウム蝋付け合金 - Google Patents
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Description
(本発明の分野)
本発明は熱交換器に使用できるアルミニウム合金に関する。理想的には本発明のアルミニウム合金は熱交換装置のフィンストック(fin stock)材料として提供される。さらに本発明は本発明のアルミニウム合金から成る少なくとも一つの機素を含む蝋付けされたアセンブリーに関する。
【0002】
(関連技術の説明)
従来法において熱交換器の用途に対する合金としてアルミニウム合金が選ばれてきた。これらの合金は強度、軽量、良好な熱伝導性および電気伝導性、蝋付け特性、耐食性、および成形性が望ましく組み合わせられるように選ばれる。
【0003】
アルミニウム合金の熱交換器は、所望の形状につくられたアルミニウム合金の合せ板(蝋付け板)を流体の通路(管)が生じるように重ね合わせ、蝋付けによって流体通路の間に波形のアルミニウム合金のフィン(ヒレ)を固定することによってつくることができる。合金の合せ板または管材料とフィンとの間の接合は芯になる板および/またはフィンの材料の充填金属を熔融することによって達成される。蝋付け法としては典型的には真空蝋付け法または融剤蝋付け法が適用される。流体通路の材料の耐蝕性を改善しようとする場合、流体通路材料に対して電気化学的に陽極的な(貴でない)或る種のフィン材料をその材料の犠牲陽極効果(sacrificial anode effect)によって使用することができる。
【0004】
従来の文献に見出だされるアルミニウム蝋付け用シートに関するいくつかを下記に掲げる。
【0005】
技術誌Light Metal Age、1980年12月号、20〜21頁所載の「アルミニウム合金3009:マグネシウムなしでの高強度」と題するJ.Althoffの論文には、マグネシウムを含まない3009合金が記述されている。3009合金は重量%単位で下記の組成をもっている。
【0006】
Si 1.0〜1.8
Fe 最高0.7
Cu 最高0.10
Mn 1.2〜1.8
Mg 最高0.01
Cr 最高0.05
Ni 最高0.05
Zn 最高0.05
Zr 最高0.10
Ti 最高0.10
他の金属 それぞれ最高0.05、全部で最高0.15
残りはアルミニウム。
【0007】
但しここでSi;Feは2:1〜4:1でなければならず、
またMn+Siは2.5〜3.5の範囲でなければならない。
ここに記載された合金は公知のAA3003合金で置き換えることができ、鑞付けの用途に使用することができる。
【0008】
ヨーロッパ特許A−0637481号(Furukawa)には、三層構造の合せ板から成り、芯の層の片側には蝋付け材料が、また芯の層の他の側には犠牲材料が張り合わされているアルミニウム合金の蝋付け用シートが記載されている。ここで規定された芯の材料は非常に広い範囲で変化する組成をもっており、重量%単位で
Si 0.6〜2.5
Cu 0.5〜2.5
Mn 最高2.0
を含み、
Mn 0.03〜0.5
Cr 0.03〜0.3
Zr 0.03〜0.3
Ti 0.03〜0.3
Ni 0.03〜1.5
から成る群から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、
残りはアルミニウムおよび不純物である。
この文献にはさらに三層構造から成り、芯の材料の両側に蝋付け用の材料が張り合わされているアルミニウム合金蝋付け用シートが記載されており、この場合芯の材料は下記のような非常に広い範囲で変化する重量%単位の組成をもっている。
【0009】
Si 0.03〜2.5
Fe 0.05〜2.0
Cu 0.05〜2.0
Mn 0.6〜2.0
を含み、また
Zn 0.05〜5.0
In 0.002〜0.3
Sn 0.002〜0.3
から成る群から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、
残りはアルミニウムおよび不純物である。
【0010】
自動車産業においては、熱交換器の用途に使用でき、改善された蝋付け後の強度が良好な耐食性と組み合わされているアルミニウム合金に対する市場からの需要がある。さらにこのようなアルミニウム合金を製造する側面から見て、再利用を行なう場合、このようなアルミニウム合金の必要な性質を損なうことなしに不純物元素に対して許容度をもった合金に対する需要が存在してい。
【0011】
(本発明の概要)
本発明の目的は、同じ用途に対する従来の合金に比べ改善された蝋付け後の0.2%降伏強さをもつ、熱交換器に使用できるアルミニウム合金を提供することである。本発明の他の目的は、不純物元素に対する改善された許容度をもつアルミニウム合金を提供することである。本発明のさらに他の目的は、熱交換装置のストック材料として理想的に適したアルミニウム合金を提供することである。
【0012】
本発明によればその一態様において、重量%単位で
Si 0.7〜1.2
Mn 0.7〜1.2
Mg 最高0.35
Fe 最高0.8
Zn 最高3.0
Ni 最高1.5
Cu 最高0.5
Ti 最高0.20
In 最高0.20
Zr 最高0.25
V 最高0.25
Cr 最高0.25
他の金属 それぞれ最高0.05、全部で最高0.15
Al 残り
の組成をもつアルミニウム合金が提供される。
【0013】
このアルミニウム合金は、必要に応じ犠牲陽極効果を含む良好な耐蝕性が蝋付け後における良好な機械的特性と組み合わされており、同じ熱処理(temper)における従来のフィンストック合金、例えばAA3003に比べ蝋付け後の0.2%降伏強さを少なくとも15%増加させることができる。本発明のアルミニウム合金は少なくとも60MPaの蝋付け後の0.2%降伏強さ(PS)を達成することができ、最良の例では少なくとも65MPa、さらに70MPaまたはそれ以上の値を得ることができる。
【0014】
このアルミニウム合金は熱交換器ユニットの管板、側方支持材およびヘッダー・タンクに使用でき、また他の用途ももっているが、主として熱交換器のフィンストック合金としてつくられたものである。フィンストックに対する耐蝕性の要件は、熱交換器ユニットが腐蝕を受けた場合、フィンの材料が選択的に腐蝕され、管の材料は腐食されないことである。本発明の合金はこのような犠牲陽極効果をもっている。本発明の合金は従来のフィンストック合金、例えばAA3003に比べて強く、従ってフィンストックを薄く軽量にすることができる。フィンストック材料として使用される本発明の合金は蝋付け合金、例えば当業界に公知のAl−Si合金、または同様なAl−Si系合金、例えばAl−Si−Mg合金、Al−Si−Mg−Bi合金、Al−Si−Bi合金等の張り合せ材と組み合わせて使用することができる。
【0015】
熱交換器の市場、特に自動車産業におけるその市場は、フィンストック合金が特性のバランスをもっていること、即ち強度、成形性、蝋付け性および潜在的腐蝕性の間で均衡がとれていることを要求している。本発明の新規合金のキーとなる特徴は、AA3003合金に比べてSi含量が比較的高く、それと組み合わされてMn含量が中程度であることである。これによって蝋付け後の強度は従来のフィンストック合金に比べ15%以上増加する。本発明の合金は特に優れた蝋付け特性を示す。
【0016】
本発明のアルミニウム合金の合金用元素を限定する理由を以下に説明する。以下の説明ですべての組成物の割合は重量によるものとする。
【0017】
Siは本発明の合金において重要な合金用元素である。Siを添加すると合金における固溶硬化(solution hardening)を増加させることができる。0.7%より少ない場合Siの添加の効果は殆どなく、1.2%より多い場合悪影響を与える低融点の共融混合物が生じ、また大きな金属間粒子が生じる。Si含量の対するもっと適切な範囲は0.75〜1.0%である。多くのアルミニウム合金において中程度の範囲のSiレベルは悪影響を及ぼすとは見做されていない。Si含量がこの中程度の範囲にある利点は、この合金が不純物の元素に対する許容度をもち、大量の屑材料からこの合金をつくることができることである。好ましくはSi+Mnの和は1.6〜3.2、さらに好ましくは1.75〜2.1の範囲にあり、蝋付け後の強度およびサグ耐性(sag−resistance)のような合金の所望の性質と良好に妥協することができ、同時に屑材料から困難なく合金をつくることができる。
【0018】
Mnも本発明の合金における重要な合金用元素である。Mnの中間的な添加範囲は0.7〜1.2%である。Mn含量に対するもっと好適な下限は0.8%である。Mn含量に対するもっと好適な上限は1.1%である。さらに好ましくはMnは0.8〜1.0%の範囲で存在しなければならない。Mn含量が非常に高いと悪影響を及ぼす大きなFe−Mn金属間化合物が生成するであろう。Fe含量が比較的高い大量の屑材料から合金をつくることができるようにするためには、Mnのレベルは1.2%を越えてはならない。Mnが1.2%より多いとインゴットの鋳造が困難になる。
【0019】
Mgは合金の強度を著しく増加させるが、使用する融剤と相互作用する傾向があるので、制御された雰囲気の中における蝋付け特性に有害な影響を与える。このためMg含量は最高0.35%に限定され、蝋付け後の強度および蝋付け特性と妥協を図った場合、Mgレベルに対するもっと好適な範囲は0.2〜0.35%である。
【0020】
Feはすべての公知のアルミニウム合金の中に存在している。他のものに比べFe含量が高過ぎると、材料の成形性が減少し、また耐蝕特性は減少する。許容できるFe含量は最高0.8%であり、好ましくは最高0.5%である。このように比較的高いFe含量はMn含量を制限することによって許容することができる。適切なFe含量は0.20〜0.45%の範囲であり、合金の所望の特性、例えば蝋付け後の強度およびサグ耐性と良好な妥協を行うことができ、同時に屑材料から大きな困難なく合金を製造することができる。
【0021】
Znを添加すると、一層電気的に陰性な腐蝕電位が得られる。犠牲陽極効果を考慮するためには、フィン材料は管材料のように一層電気的に陰性でなければならない。熱交換器には種々の種類の管材料を使用できまた使用されると思われるので、Zn含量を使用して本発明の合金の腐蝕電位を管材料に適合させることができる。フィン材料があまりにも速く腐食されるのを防ぐためには、Zn含量は3.0重量%より少なくなければならない。Znは最高3.0%まで、好ましくは最高2.0%まで、最も好ましくは最高1.0%まで許容することができるから、これによってこの合金の不純物元素に対する許容度の利点を得ることができ、例えばそれだけには限定されないが廃棄された熱交換器のような大量の屑材料から合金をつくることができる。Znレベルに対する適切な下限は0.2%である。
【0022】
熱伝導度を著しく失うことなく蝋付け後の強度をさらに増加させるためには、Niは最高1.5%の範囲で存在することができる。合金用元素としてのNiの好適範囲は0.3〜1.2%、さらに好ましくは0.5〜0.75%である。これによって本発明の合金は蝋付け後の強度、熱伝導度および耐蝕性の間で良好な望ましいバランスが得られる。
【0023】
Cuは強化成分として含ませることが好ましい。Cuは従来報告されていたような方法で耐蝕性を減少させるとは思われない。Cuは最高0.5%まで許容されるから、これによってこの合金に対し不純物元素が許容される利点が得られ、例えばそれだけには限定されないが廃棄された熱交換器のような大量の屑材料から合金をつくることができる。Cu含量の適切な最高値は最高0.5%、好ましくは最高0.4%である。Cuレベルに対するもっと好適な範囲は蝋付け後の強度、耐蝕性および蝋付け特性を得る上で妥協が得られる値として0.2〜0.4%である。
【0024】
Tiは本発明の合金のインゴットの鋳造を行う際細粒化添加剤として作用させるため最高0.20%存在している。固溶硬化により合金の強度を増加させるためには、例えば屑材料の中に存在していることによりそれ以上のTiを加えることができる。合金中に存在するTiの全量は0.20%を越えてはいけないが、好ましくは0.15%より少ない。
【0025】
もっと電気的に陰性な腐蝕電位に到達するためには最高0.20%の範囲のインジウム元素を加えることができる。さらに本発明に従えばこのアルミニウム合金においてInは、亜鉛を添加した場合に比べ、合金の腐蝕電位を減少する上で遥かに効果的であることが見出だされた。典型的には0.1%のInは2.5%のZnよりも効果的である。故意に合金用の元素として加える場合、さらに好適なInの範囲は0.01〜0.10%である。
【0026】
蝋付け後の条件において合金の強度をさらに改善するためにZrは本発明の合金に最高0.25%の範囲で加えることができる。さらにこの元素は合金の所望の性質を劣化させることなく不純物元素として許容することができる。Zrのもっと適切な添加範囲は0.05〜0.20、さらに好ましくは0.05〜0.15%である。
【0027】
蝋付け後の条件において合金の強度をさらに改善するためにCrは本発明の合金に最高0.25%の範囲で加えることができる。
【0028】
SnおよびVを含む他の成分は本発明の合金において最高0.25%、好ましくは最高0.15%、さらに好ましくは最高0.05%の範囲で許容することができる。このような元素は合金の腐蝕電位を減少させるために存在することができ、Vはさらに蝋付け後の強度を増加させる潜在能力をもっている。
【0029】
残りはアルミニウムおよび避けられない不純物であり、後者はそれぞれ最高0.05%、全部で最高0.15%まで許容される。
【0030】
本発明の他の態様においては、本発明の合金をフィンストック材料として含む蝋付けされたアセンブリー、典型的には熱交換器が提供される。本発明の合金をフィンとして有するこのような熱交換器においては、フィンは犠牲陽極として作用することができる。本発明のアルミニウム合金はその片側または両側の表面に張り合せを行うことができる。このような張り合せを行う目的は実質的に隅肉(fillet)に対する蝋付け材料を提供することであり、また例えば押し出された管からつくられた凝縮器または蛇型の蒸発器に対するような張り合せを行われていない管の場合にも使用することである。典型的には各張り合せ層の厚さは張り合せ製品の全体の厚さの2〜15%の範囲である。張り合せ層の組成は典型的にはSiが5〜15%であり、随時最高2.0%のMg、随時最高3.0%のZnおよび随時最高0.2のBiを含んでいる。
【0031】
(実施例)
次に本発明によるアルミニウム合金を本発明を限定しない実施例および対照例によって例示する。
【0032】
試験の実験室的な尺度において工業的規模のDC鋳造で得られるのと同じ範囲の固化速度を用いて6種の合金を鋳造した。この場合試験の実験室的な尺度で製造が行われたが、種々の標準的な工業的規模のDC鋳造法および連続アルミニウム鋳造法を用いた後に高温および/または低温での圧延を使用して本発明のアルミニウム合金を製造することができる。表1に化学組成を示すが、ここで合金1〜4は細粒化剤として作用するレベルのTiを含む本発明の合金であり、合金5および6はMgおよびTiのレベルが幾分増加した本発明の合金であり、合金6ではさらにZnレベルが増加している。本発明のすべての合金において、Ni、InおよびVのレベルは不純物のレベルであった。合金7は対照の目的で国際特許公開明細書97/18946号において公知のH14焼き戻し材(temper)の例であり、合金8ではフィンストック材料として工業的に使用されている公知のAA3003を使用した。4種の鋳造インゴットを予熱し、高温で圧延して5.7mmの厚さにした。次いでこのシートを冷間圧延して0.15mmの厚さにし、2時間360〜400℃で焼鈍した後、冷間厚さにして最終的な厚さ0.10mmにした。これがH14焼き戻し材である。
【0033】
冷間圧延したシートは模擬蝋付けサイクル(590℃で約5分間、空冷)にかける前およびかけた後において下記の機械的性質をもっていた。表2参照。この機械的性質は張り合わせない材料に対しては正しい。しかし或る種の用途においては本発明の合金に対して薄く張り合わせを行ったので、機械的性質は少しばかり、即ち数MPa、典型的には約2〜10MPa程度減少した(蝋付け前および後の両方の条件で)。
【0034】
これらの結果から、本発明のアルミニウム合金は同じ焼き戻し処理における従来使用されてきたAA3003合金に比べ機械的性質が著しく改善され、蝋付けサイクルの前においてユニットのダウン・ゲージング(down gauging)の機械を提供し、フィンが腐蝕される速度が減少していることが分かる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
以上本を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく当業界の専門家には多くの変形および変更を行うことができることは明らかであろう。
Claims (8)
- 重量%単位で
Si 0.7〜1.2
Mn 0.7〜1.2
Mg 0.2〜0.35
Fe 最高0.5
Zn 0.2〜1.0
Cu 0.2〜0.4
Ti 0.01〜0.15
Zr 最高0.25
V 最高0.25
Cr 最高0.25
他の金属 それぞれ最高0.05、全部で最高0.15
Al 残り
の組成をもつことを特徴とするアルミニウム合金。 - Mnのレベルは0.8〜1.1%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金。
- Zrのレベルは0.05〜0.15%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム合金。
- Feのレベルは0.20〜0.45%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金。
- Siのレベルは0.75〜1.0%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム合金。
- フィンストック材料の形をしていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアルミニウム合金。
- 請求項6に記載の合金のフィンを有することを特徴とする蝋付けされた熱交換器。
- 重量%単位で
Si 0.75〜1.0
Mn 0.8〜1.0
Mg 0.2〜0.35
Fe 0.2〜0.45
Zn 0.2〜1.0
Cu 0.2〜0.4
Ti 0.01〜0.15
Zr 最高0.25
V 最高0.25
Cr 最高0.25
他の金属 それぞれ最高0.05、全部で最高0.15
Al 残り
の組成をもつアルミニウム合金から成るフィンを有することを特徴とする蝋付けされた熱交換器。
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